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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成21年1月15日(木)17時03分~17時28分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私のほうから特にございません。

【質疑応答】

問)

最近の民間調査会社の統計で、昨年の企業倒産が複数出ている中で、ここ数年で最悪の件数を記録しました。倒産の要因として、資金繰りの悪化を挙げる企業が増えていますが、金融庁はこの資金繰り対策として、検査や金融機能強化法の改正案の施行など、貸し渋りを防ぐ対策を強化していますが、現状の政策などの評価や、今後追加的な対策をとらなければならないとするならば何か、ご所感をお聞かせ願えますか。

答)

ご案内のとおり、グローバルな金融市場の混乱が、世界的な景気後退に繋がり、我が国の実体経済や株式市場、また地域経済や中小企業等にも大きな影響を及ぼしつつあります。こうした中で、中小企業の業況は大変厳しい状況にあり、金融機関による適切かつ積極的な金融仲介機能の発揮が一層重要になっていると思います。

金融庁としては、これまでに、中小企業等の資金繰りに万全を期すべく、改正金融機能強化法の迅速な施行、貸出条件緩和債権に該当しない場合の取扱いの拡充、自己資本比率規制の一部弾力化など、様々な施策を講じてきました。また、中川大臣と金融機関代表者との意見交換会の実施などを含め、民間金融機関に対し、金融の円滑化に向けた要請を繰り返し行っております。更に、金融検査においても、貸し渋り、貸しはがしと取られかねないような対応がなされていないかなどを重点的に検証しているところであります。更に現在国会でご審議をいただいている平成20年度第2次補正予算において、改正金融機能強化法に基づく国の資本参加枠を、12兆円に拡大するということにしておりまして、全国の財務局などを通じて、金融機関等に対して本制度の活用の積極的な検討について繰り返し呼びかけを行っているところであります。

現状の政策の評価や今後の追加的な対策についてのお尋ねでございますけれども、現在は、今申し上げたような施策をしっかりと進めていくことがまず大事だと思っておりまして、その効果を注意深く見極めていくということが重要だと思っております。金融機関が、適切かつ積極的な資金供給を行い、借り手企業が期待する金融仲介機能を十分果たしていけるよう、年度末に向けて、引き続き努力を傾注してまいりたいと思っております。

問)

米シティが、傘下の証券会社であるスミス・バーニーの売却を発表したと思うのですが、今後更なる事業の売却なども浮上していますが、世界最大のコングロマリット経営の金融機関が行き詰まったことに関してと、また今回のことで、個別のことでなかなかお答えにくいとは思うのですが、日本での金融事業に対する影響についてご所感があればお聞かせください。

答)

1月13日火曜日、米国のシティグループが、モルガン・スタンレーと共同で、ウェルス・マネジメント事業を行う合弁会社の設立について公表したことは承知をいたしております。個別金融グループの事業再編やビジネスモデルといった経営判断に関わる事柄について、逐一コメントすることは差し控えたいと思います。

一般論として申し上げれば、米国のサブプライム・ローン問題を契機とした現在のグローバルな金融・資本市場の混乱の中では、これまで欧米の大手金融機関の大部分が取り組んできたビジネスモデルについて、その一部が破綻(はたん)しているということが顕在化しているということかと思います。高いレバレッジをかけて短期的な利益を最大化する、その中では、複雑で不透明な金融商品の組成・販売などを行う、またオフバランス取引を組み込むといったことがなされてきたわけでございますけれども、こういった問題点については、昨年4月のFSF(金融安定化フォーラム)の報告書にも、今申し上げた以外の様々な問題も含めて、原因分析がなされているわけであります。こういった状況の中で、欧米の主要金融機関においては、統合や再編の動きが一部に起きているということかと思います。各金融機関においては、状況に応じた的確な経営判断を行っていくことが重要かと思います。これはグローバルな話でございますけれども。

今回の公表内容がシティグループの我が国での金融事業に与える影響については、同グループ傘下の我が国金融機関は、今回公表された合弁会社の対象には含まれていないと承知をいたしておりますし、また、現時点では、今回の公表内容が同グループ傘下の我が国金融機関の事業に大きな影響を与える可能性があるといった情報には接していないところでございます。いずれにいたしましても、引き続き状況を注意深く見ていきたいと思っております。グローバルな金融・資本市場の緊張は依然として続いておりまして、このような金融市場の動揺は、実体経済にも深刻な悪影響を及ぼしているところであります。金融庁としては、引き続き高い警戒水準の下で、内外の金融情勢を注意深くフォローし、適切な対応に努めていきたいと思っております。

問)

先週、一部報道で、金融機能強化法の関連で自己資本比率が低いところを中心に数十行に対して、年度末にも一斉注入するというようなことを検討されている旨の報道があったのですが、それで結構民間のほうにも波紋が広がったようなのですが、この事実関係の確認と、そういったことを考えていらっしゃるのかということのご所見をいただけますか。

答)

報道の内容について、逐一コメントすることは差し控えたいと思いますけれども、一部の報道にある、金融庁が今年度末に公的資金を使い、一斉に資本注入する方向で検討に入ったという事実はございません。

ご案内のとおり、改正金融機能強化法は、国の資本参加を通じて、金融機関の金融仲介機能を強化することにより、厳しい状況に直面する地域経済、中小企業を支援することを目的としております。ただし、同法に基づく国の資本参加は、金融機関の申請を受けて行われる枠組みになっております。他方、金融庁としては、この制度が積極的に活用されるよう、昨年末までに全国の財務局で金融機関向けの説明会を開催し、この制度の趣旨・内容について周知徹底を図るということを行いましたし、更に、この制度の活用の検討について、積極的な呼びかけを続けているところでございます。

金融機関においては、中小企業をはじめとする借り手企業が期待する金融仲介機能を適切かつ十分に果たしていくために、いわば「先を読む経営」に取り組んでいただき、その中で資本増強という経営判断をなさる場合には、この制度の存在も踏まえて積極的な検討をお願いしたいと思っております。

いわゆる一斉注入といった議論が出てくる背景には、申請を考えている金融機関の風評リスクの問題というものが指摘されることがございますけれども、私は、この機能強化法の申請を検討していただくということは、言ってみれば、今申し上げた、「先を読む経営」、すなわち、足下の状況に対応するということに汲々とするだけはなくて、半年後、1年後、更には3年後、5年後の経営がどうなっていくのか、営業環境はどうなっていくのか、そういったことをしっかりと読んでいくという努力をしていく中でのご判断ということでありましょうし、また、地域経済あるいは地域の中小企業に対して、金融面から金融仲介機能をしっかり発揮することによって支えていく、サポートしていくことへのコミットメントを表明するという側面もあるのではないかと思っているところであります。

問)

今度の(1月)20日に、アメリカの大統領にオバマさんが就任されて新政権が発足するというわけですが、いろいろ課題は指摘されているわけですが、金融の分野に関してはこれから新たな規制のあり方というか、市場万能主義的なものから今後はどういった規制が必要なのかという議論をしていくというか、模索していくことになると思いますが、金融規制当局、長官としては今度の新政権に対してどの点に着目しているのか、あるいは何を期待されているのか、漠然とした質問ですがその辺についてお願いします。

答)

米国の新政権に対して注文をつけるような立場ではございませんので、そういうお話よりは、今のご質問の中にもございましたように、金融規制のあり方、規制・監督のあり方について一言お話をさせていただきます。

このサブプライム・ローン問題の顕在化、これは一昨年の夏であったわけですが、それ以降、この問題の原因分析とそれに基づいたいわば中期的な規制・監督の枠組みの再構築ということが、我が金融庁も含め、世界の主要な規制・監督当局の間で非常にプライオリティ(優先順位)の高い課題として設定されています。このことは、金融庁も含め世界の主要な規制・監督当局が高い頻度で会合を持ち、そういった中で繰り返し議論がなされ共通の認識として共有されているという状況かと思います。

その中で、当然のことながら今の金融システム・金融市場のあり方について、今のままでいいという人は誰もいないわけであり、この市場メカニズムがきちんと機能していないということを前提に、その原因は何か、その原因に即した規制・監督のあり方の強化が必要だということになっていると思います。そういう意味では、市場万能主義・自由放任が一番良い結果をもたらすという認識というのは、非常に後退している状況だと思っておりますし、その中で必要なところについては規制のあり方を修正する、あるいは強化するということになっているわけであります。

こういった問題点は昨年4月及び10月のG7(七か国財務大臣・中央銀行総裁会議)、そして更には11月のG20サミット(金融市場と世界経済に関する首脳会合)などでもいわばエンドース(支持)されているということだと思います。それは、例えば、銀行についての健全性の維持であるとか、あるいは市場における取引の透明性の確保であるとか、デューデリジェンス(精査)をもっときちんとやらなくてはいけないといったことであるとか、あるいは格付機関の問題であるとか、あるいは欧米の金融機関に関しての報酬体系の問題であるとか、更にはいわゆるプロサイクリカリティ(規制のあり方が景気循環を更に増幅する効果を持つのではないか)というテーマも俎上(そじょう)に乗っているということでございます。

現時点においては、まだ確定的な結論に至っているわけではないと思います。相当程度先行している、ほぼ結論に近いところにきているテーマもございますが、多くのテーマはなお議論として進行中ということであろうかと思います。いずれにいたしましても、市場万能主義というものについては、修正が加えられつつあるということは確かだと思います。世界の金融規制・監督当局においては、米国も含めて、そういった規制の再構築ということに共同して取り組んでいくという流れかと思います。

一点だけ留意しておかなくてはならないのは、こういった中期的な規制の再構築・規制の強化という課題と同時に、今現在、足下で金融市場・金融システムが相当混乱している、そのことが実体経済にも悪影響を及ぼし世界同時不況のような様相を呈している、この実体経済の悪化が跳ね返ってまた金融セクターの健全性を損なう、こういった状況にあるのも事実でございますので、中期的な規制の再構築という課題への取組みが、足下におけるこの厳しい状況を更に悪化させるというようなことにならないように、気をつけながら進めていかなくてはいけないと、こういうことかと思います。

問)

破綻した大和(やまと)生命の引受けの手続きが進んでいると思いますが、こういう金融情勢の中で、いわゆる債務超過額が膨らむのではないかという見通しがあったり、本当に適切なところが引き受けてくれるのかということに関してどのような留意を払っているのか、またその中で、旧大正生命の契約者からみると、二度も減額されるということは、これまで適切な保険会社の引受けとか、監督行政を本当にされていたのかという懸念とか疑問もあると思いますが、そのあたりについてはどのようにお考えですか。

答)

今、会社更生手続中の大和生命の債務超過額が膨らんでいるのではないかという報道がなされていることは承知をいたしております。ただ、ご案内のとおり、現在、大和生命は裁判所の監督の下で更正管財人による更正手続が進められているという段階でありますので、金融庁として、その更正手続の途上の話について個別にコメントすることは差し控えたいと思います。

他方で、保険契約者の保護というのが非常に重要なテーマであることは、申し上げるまでもありません。保険契約については、この更正計画において契約条件の変更などの取扱いが定められることとなります。我が国においては、生命保険契約者保護機構による資金援助を含めたセーフティネットが整備されているわけであり、保険契約者は原則として責任準備金の90%までは補償されるという枠組みでございます。受け皿となる主体の適切性・適格性を含めて、金融庁としては引き続き注意深く事態の推移を見ていきたいと思っておりますし、保険契約者保護の観点から、スポンサーの選定を含めた適切な更正計画が早期に策定されることを期待しているところでございます。

(以 上)

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