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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成21年3月2日(月)17時02分~17時29分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方から特にございません。

【質疑応答】

問)

株価対策についてお聞きしたいと思います。年度末を控えて与野党から株価対策の必要性を訴える声が高まっています。先日、与謝野大臣も検討に言及いたしました。人為的な株価対策であるとか需給改善を目的とした対策について、長官がどのようにお考えなのかお聞きしたいと思います。

答)

この問題は、大きく捉えると、株価の変動によって金融セクターの金融仲介機能が低下する、そのことをいかに防止するかというテーマと、株価そのものの過度な変動を緩和するというテーマと二つの側面があると思っております。第一の側面に関していえば、既に昨年来、行政上の対応として、条件緩和債権の取扱いの見直しとか自己資本比率規制の一部弾力化といったこと、また更に大きなスキームとしては、金融機能強化法の改正及び政府保証枠の大幅な拡大ということをやっているということです。それから、第二の側面に関しては、現在、参議院で銀行等保有株式取得機構に関する法案の審議がまさに行われているところでございますし、また日本銀行におかれても、確か先週だったと思いますが、銀行からの株式の買取りの業務を再開していただいたということが行われているわけであります。現時点では、これ以上のコメントはご勘弁いただきたいと思います。

あくまで広く一般論として申し上げれば、あらゆる政策措置は、その政策目的、そして政策効果、またその副作用などなどを注意深く十分に勉強していくということが大事であろうかと思っております。

問)

先週末、アメリカの政府がシティグループの普通株式36%を保有して、筆頭株主になるということを発表しました。イギリス政府も同様に大手行に対する公的資金を使った追加支援策を公表しています。ドイツでも同様に銀行国有化の動きがあると、こうした金融システム安定化を目指した各国当局の動きが再び活発になっているというふうに見えるのですが、長官は現状の局面をどのように見ていらっしゃるのかご所見をお聞きしたいと思います。

答)

最近の動きの概要ですが、米国においては2月27日、シティグループが、米国政府が保有する優先株式のうち最大250億ドル分を普通株式へ転換することに合意した旨、公表したものと承知をしております。また英国においては、2月26日、ロイヤルバンク・オブ・スコットランドが通期決算で240.5億ポンドの純損失となった旨公表がなされております。同行については、英国財務省が資産保護スキームや公的資金の追加的注入などの政府支援を行うことについて、基本合意に達した旨公表されたものと承知しております。さらにドイツにおいては、2月18日、金融市場や金融システムの安定化に向け、政府が金融機関の株式を既存株主から強制的に取得し政府管理下に置くことも可能にする法案を閣議決定したものと承知いたしております。

こうした欧米各国の取組みは、関係当局及び金融機関において、金融危機の解決に向けて、あるいは現下の金融混乱を緩和するという目的に向けて更なる対応が図られたものと理解しております。各国の個別の措置について逐一コメントすることは差し控えたいと思いますが、今般の措置が金融機関の財務基盤を強化する効果を持ち、金融市場の安定化に資することを期待しているところでございます。

我が国の金融システムそのものは欧米に比べれば相対的には安定しておりますが、株式市場等の大幅な変動や実体経済の悪化からくる影響が大きくなってきており、各国当局とも連携しつつ、引き続き高い緊張感の下で状況を注意深く見ていきたいと思っております。

問)

企業業績の悪化に伴って、例えば従業員の方の賃金やボーナスが減っていく中で、住宅ローンとかの審査基準が上がったりとか、ノンバンクの方でも消費者ローンが借りにくくなっているとか、そういった個人の方への資金の回り具合がちょっと厳しくなっているのではないかという指摘がありますが、そのことについての現状認識と行政上の対応が何かあるのでしたら教えていただけますか。

答)

そういったお話はここへきて時々伺うようになってきたということかと思います。昨年夏以来、まずは中小企業向けの金融に光を当てて、中小企業金融の円滑化ということに対して様々な取組みを金融庁としても行ってきているわけでございますが、秋以降、中小企業だけではなく直接金融、市場金融の方の目詰まりが出てきたりして、中堅企業、大企業の方の資金繰りについても一部目詰まりが出てくるといった状況になってきているわけでございます。そこに加えて、今ご質問で出していただいた個人向け金融についても、もしそういう目詰まりが大きくなるような兆候が見て取られるようであれば、ここにも光を当てて注意深く見ていくということが必要になろうかと思います。そういう意味では、中小企業金融に加えて中堅・大企業向けの金融、そして個人向けの金融、三つの大きな分野それぞれに光を当てていくということが必要かなと思っております。

問)

先ほど、昨年、経営破綻(はたん)した大和(やまと)生命保険の方で、引受け先がアメリカのプルデンシャルグループに決まったと発表があったようなのですが、引受けに当たって生命保険契約者保護機構の資金援助をする方針を示していまして、その支援額が大体報道ベースだと300億円程度になるのではないかといわれています。今回の事例を長官としてどのようにご覧になっているのか、特に契約者に一定の影響が出るとしたらそれをどのようにご覧になっているのか、また生命保険あるいは損害保険も含めた上での保険のセーフティネットが現状で万全といっていいのか、何らかの追加的なものが必要な状況なのか、そのあたりの認識を伺えないでしょうか。

答)

本日15時頃でしょうか、大和生命の更生管財人から会社再建の支援を受けるため米国プルデンシャル・ファイナンシャル・グループに属するジブラルタ生命とスポンサー契約を締結したという旨の公表がなされたということでございます。

金融庁としては保険契約者保護の観点から、適切な更生計画が早期に策定されることが重要だと考えておりまして、今般スポンサー契約締結の運びとなったことは、まずは保険契約者保護の観点から喜ばしいことと考えております。更生計画の詳細については、今後、管財人、スポンサー等の関係者間で協議されることとなりますが、その過程においては金融庁としても、保険業法の趣旨を踏まえ、保険契約者保護の観点から適切に対応してまいりたいと思っております。

契約者保護機構からの資金援助の規模につきましては、管財人、スポンサー、保護機構などの関係者が、今後保険契約者の保護等の観点から協議を行った上で決められるものというふうに承知をいたしております。

それからセーフティネットについてのお尋ねですが、これまでの生命保険会社の破綻事例においても、同じセーフティネットに基づいて、ルールに則った、かつ、透明性の高い処理がなされてきているというふうに思っております。責任準備金の90%は最低限保護されるという中でできるだけの契約者保護を図っていくと、こういう枠組みでございまして、これまで行ってきた対応との整合性の観点からも、今回の取組みというのは、粛々と枠組みに沿った中で、契約者保護の観点からのできるだけの取組みが当事者において行われるというふうに理解をしております。

問)

冒頭の株式市場対策に関連してお聞きしたいのですが、銀行等保有株式取得機構の機能を強化しようという議論が与党を中心に出ておりますが、例えばETF(上場投資信託)を買うとか直接ダイレクトに市場から買い取ろうという話も浮上しているようですが、もともと機構の成り立ちからいいますと、銀行が株式を過度に保有することを制限するという法律とセットになってできている、受け皿になるという側面ももともとあったと思いますが、そのあたりの生い立ちとか関連する法律との整合性について、機構の機能を強化していろいろなものを買えるようにするというアイディアについて、整合性についてどのように考えておられますか。

答)

銀行等保有株式取得機構については、先ほども申し上げましたように与党から提出された改正法案が参議院で現在審議されている最中ですので、ご質問の件について政府として具体的なコメントを申し上げることは差し控えるべきだと思います。

あくまでも一般論として確認的なことを申し上げれば、銀行等保有株式取得機構は、銀行の保有する株式の価格変動が銀行の財務の健全性に影響を与える、銀行株の株価が下落してそのことが銀行に対する信用低下を招く、こういった事態が生じることを通じて過度な信用収縮が生じることを未然に防止するということのために、銀行等を会員として設立されたものでございます。そういう意味では、現在ある法律の基本的な目的や枠組み、機構の根本的な趣旨、目的というのはご質問の中で触れていただいたようなものになっていると思います。

今般、日本銀行が銀行からの株式買取りを再開された時の説明でも、銀行自身が株式の保有から来るダウンサイドリスクを遮断するために株式を手放すという判断をされるときに、そのことが株価をさらに押し下げるというような悪循環に陥らないように、そのための受け皿を用意しておくというご趣旨の説明をされていたと記憶していますが、今の株式取得機構というのは基本的にそういった趣旨でできあがっていると思います。

問)

過去の証券不況の際に、例えば昭和40年不況の際に民間主導で売られる株式の受け皿を作るという事例もあります。今回のこういう株安の局面で、そういった観点から民間の金融界に当局から期待するものがもしあれば。

答)

民間当事者のイニシアティブで仮に何かが進められるということであれば、そのことについて我々当局が何か注文をつけるというのは、全体の金融システムの安定や利用者・投資家保護といった観点から見たときに何か懸念があるケースだと思います。

先ほど、あらゆる政策措置は政策目的、政策効果、そして副作用などを注意深く十分に勉強することが大事だと申しましたが、こういった勉強は民間当事者の方が何かを検討されるときにも大事なことだと思います。

問)

先ほどのシティの話ですが、今回の救済策が日本のシティバンクの預金者に与える影響はどのように見ていらっしゃいますか。また、傘下に日興コーディアルなどのグループがありますが、その辺の営業譲渡に関する影響をどのように見ていらっしゃいますか。

答)

日本国内で営業を行っているエンティティー(事業体)、それは我が国の現地法人であることもあるでしょうし、支店形態であることもあろうかと思いますが、その場合には銀行法や金融商品取引法など我が国の法令に則って業務が行われていると思っています。株主の変更、今回の場合は場合によって議決権が米国政府に一部移転するというケースが考えられますが、株主の変更については法令に則って認可事項になっているケースが多いかと思いますが、金融庁としては法令に基づいて、利用者保護、投資家保護などの観点から適切に対応していくということかと思います。

問)

買取りの話に戻りますが、そもそも政府が市場に介入して市中の株式を買い取ることによる副作用の部分もあるかと思いますが、例えば香港政府が1998年(発言どおり)にハンセン指数が一定水準を超えて下落した場合には外貨準備を使って無制限に買うと発表し、結果として成功したと言われていますが、そもそも政府が株式市場に介入して買い取ることについての御所見をお願いします。

答)

過去における香港のケースそのものについてはコメントは差し控えたいと思いますが、副作用の具体的な中身について、先ほども申し上げましたように、現時点で具体的なコメントを申し上げることは差し控えたいと思います。いずれにいたしましても、政策の目的、効果、副作用等を十分に勉強することが大事だと思います。

問)

先ほどの質問で、大企業、中堅企業、個人の資金繰りに光をということでしたが、何か今現在、具体的に政策的にご検討されていることはあるのですか。また、中小企業の点で言えば中小企業庁と連携を取られてきたわけですが、中堅企業、大企業ということになると、経済産業省と今後提携していくということでよろしいでしょうか。

答)

先ほど三つの分野について改めて光を当てていきたいと申し上げましたのは、大きな心構えとしてそういう問題意識を持っているという趣旨で申し上げました。

それから、中堅企業や大企業に光を当てる場合に、当然のことながら、経済産業省や日本銀行と、政策金融ということであれば財務省であるとか、こういった様々な当局と意思疎通を図りながら考えていくということが大事だろうと思っています。中堅企業、大企業の場合にはこれまで相当程度が間接金融ではなく直接金融で資金調達をしていたので、直接金融と間接金融との間の代替関係というか補完関係という問題も出てきているわけで、現にCP(コマーシャル・ペーパー)市場、社債市場について既に日本銀行や政策金融において対応に踏み出していただいておりますので、当然のことながら、そういった関係当局と緊密な意思疎通を図っていくことは大事だと思っています。

(以上)

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