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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成21年4月6日(月)17時03分~17時28分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方からは特にございません。

【質疑応答】

問)

先週2回目となるG20金融サミット(金融・世界経済に関する首脳会合)が閉幕しました。その声明の中で、金融規制・監督の分野では、銀行の自己資本比率規制に対するプロシクリカリティ緩和策を早期に定め、危機後に実施すること、またヘッジファンドなど全ての金融市場、取引、参加者への規制導入の再確認、またさらに金融安定ボードへの再編などが盛り込まれています。G20で決まったこれらの内容をどのようにとらえ、また今後の日本の金融監督に生かしていくのか、お考えをお聞かせください。

答)

先週ロンドンで開催されましたG20のサミットでは、首脳声明などにおいて、一つは成長と雇用の回復、そしてもう一つ大きな固まりとして金融規制・監督強化などが合意されたということでございます。

ご指摘のように、その中では第1に景気循環増幅効果、プロシクリカリティの抑制策に関連いたしまして、自己資本比率規制に関する金融安定化フォーラム(FSF)の提言を本年末までに実施するということが含まれております。その中には、FSFの提言の冒頭に、銀行システムにおける自己資本の質及び水準を好況時に引上げ、経済及び金融のストレス時に取崩しが可能であるようにすべきであると、こういう基本的な考え方が示され、以下幾つか具体的な提言が入っているということでございます。

それから、第2には、ヘッジファンドに関して、金融規制・監督をヘッジファンド等を含むシステム運営上重要な全ての金融機関、金融商品、そして金融市場に拡大していくということとし、ヘッジファンド等には登録制を導入するといったことが盛り込まれています。

また、第3にFSF、フィナンシャル・スタビリティ・フォーラムに関して、金融の安定を促進するための役割が拡大されたことを踏まえ、より強固な組織基盤と拡大した能力を持つフィナンシャル・スタビリティ・ボード、FSBとして再構成するといったことが盛り込まれています。

こうした金融規制・監督に関する国際的な議論は、今般の金融市場の混乱が世界的な規模で発生している、また、伝統的な金融仲介業の財務の健全性の喪失ということだけではなくて、市場発の問題であり、市場そのものが混乱しているといった特徴にかんがみて、各国が国際的に連携・協調して取り組まなければならないと、こういう共通の問題意識が根底にあるのだろうというふうに思っております。

金融庁としては、今般のサミットにおける成果を踏まえ、各国当局や国内の関係当局等と連携・協調しつつ、我が国の状況に応じて、その実施を図るとともに、金融危機の再発防止、金融システムの強化に向けた国際的な議論に引き続き積極的に参画してまいりたいと思っております。

問)

昨日、北朝鮮が人工衛星を搭載しているとされる長距離弾道ミサイル、あるいはロケットを発射しました。この事態が、日本の市場や金融機関に何らかの影響があったのかどうか確認させてください。あと、与党などでは北朝鮮への経済制裁強化を求める声があります。これまでの制裁における金融庁の役割と取組み、また仮に制裁強化が政府の方針として決まった場合、どのようなことができるのか、ご所見を伺わせてください。

答)

現在のところ、金融機関で特段の被害が生じたとの報告はございません。また、市場においても特段の影響はなかったものと承知をいたしております。

それから、これまでの北朝鮮に対する金融庁の対応でございますが、2006年7月の北朝鮮による弾道ミサイルの発射を受けまして、北朝鮮のミサイル又は大量破壊兵器計画に関連する者15団体1個人に対する送金等の停止措置が実施されたわけですが、これを踏まえまして、金融庁として関係金融機関等に対して、2006年9月に、本人確認義務等の履行の徹底及び疑わしい取引の届出の徹底を要請したところでございます。

今後の対応につきましては、我が国として北朝鮮に対しいかなる措置をとるべきかについては、既に官房長官から、国際社会の動き等を踏まえつつ、検討後速やかに結論を得る、いずれにしても4月13日に期限が来る入港禁止措置及び輸入禁止措置については、これを1年間延長する方向で最終的な調整を進めている、こういった旨の発言がなされているところでございまして、現段階で今後の対応についてそれ以上のコメントを申し上げることは差し控えたいと思います。

問)

プロシクリカリティの議論なのですが、国内の銀行の規制に関して、今後どのようなことが想定されるのでしょうか。例えば、自己資本の取崩しが一部認められるという考えもありますから、今の8%というのを一時的に引き下げるとか、逆に、これから景気回復局面においては、積増しを求めていくよう規制を具体的に変えるであるとか、そのあたりの見通しはどうでしょうか。

答)

先ほどご紹介したのは、このプロシクリカリティに対応する基本的なコンセプトと申しましょうか、基本的な考え方として、いわば現時点で国際的に共有されている部分をご紹介したということでございます。

もとより、金融仲介の役割を担っている銀行、及び数多くの銀行で成り立っている金融システムには、個々の銀行として、あるいは銀行セクター、あるいは金融セクター全体として、財務の健全性を維持しながら仲介機能を果たしていっていただくというのが、最も基本的な大前提でございます。したがって先ほど申し上げた、好況時に自己資本の質及び水準を引き上げストレス時に取崩し可能にしていくという話は、今申し上げた大前提、すなわち最低所要自己資本の基準はクリアした上で、好況時にはさらに大きなバッファーを蓄積していただいて、その取崩しがストレス時、不況期においてなされていても、その最低所要自己資本を下回るということはないと、こういう基本的な枠組みというものが想定されているということかと思います。

したがいまして、恐らくこのプロシク対応というのも、どの時点を基点に考えるのかというところは議論の余地があるわけでございますけれども、恐らくこれから具体的にさらに議論していくということですから、国際的なそういった議論の進展及びその議論の結果に基づく国際的な合意、各国共通の枠組みが形成されるということが待たれるということだろうと思います。

そういう意味で、まず一つは我が国独自に、特に国際基準行に関して、独自に基本的な基準そのものをいじるというようなことは当面ないというご理解をしていただいてよろしいかと思います。

それからもう一つは、今どうするかということよりも今後、景気が回復して経済状況が良くなっていったときにより大きな幅でのゆとりと申しましょうか、バッファーを積んでいってもらう、という将来への心構えというのが背景にはあるのかなというふうに思っております。

問)

今の関連で、国内基準行に関しても考え方は同様というような理解でよろしいのですか。

答)

一番基本的なところ、つまり、銀行が金融仲介機能をしっかり果たしていっていただくためには、当然のことながらリスクテイクという要素がありますので、リスクテイクに伴って将来リスクが顕在化し損失が出てくるということへの備えとして自己資本というものがバッファーとして存在しているわけで、そういったバッファーを維持しながら、銀行自身としての財務の健全性を維持しながら、金融仲介機能を果たしていっていただくと。この点は、国際基準行であろうが、国内(基準)行であろうが全く同じでございまして、そこの基本のところは共通だと思っております。

したがって、8%、4%という最低水準についての規制上の差はございますけれども、基本的な位置付けなり心構えは同様であろうと思っております。

問)

先週の、ちょっと前の話になるのですけれども、与党の国際金融危機対応プロジェクトチームが、市場からの株式の買取りの枠組みの整備を設けるべきだという提言といいますかそういうのをまとめたのですけれども、長官はかねて、そういう株価対策については副作用も考えるべきだというお考えも示しておられましたけれども、今回の与党PTの打ち出される提言みたいなことについては、どのように今お考えでしょうか。

答)

先般の国際金融危機対応PTにおいて、与党が中間取りまとめという形でお示しになったものの中に、臨時・異例の措置として市場から株式を買い取るというスキームを整備する、ということが入っております。

従来から、さまざまな政策については、その政策目的の妥当性、そしてあり得べき副作用、そしてそもそもその政策目的に照らして効果があるのかどうか、こういった点を十分勉強する必要があるということを申し上げていて、このあたりの基本的な考え方に私自身の中で変更はございません。

今般、このPTの方でお示しいただいたスキームは、まさに株式市場が、その本来の役割である企業価値を反映した株価すなわち価格を発見するという価格発見機能を一時的に喪失してしまっているような、そういう異常な事態に対する臨時・異例の措置として位置付けておられるということだというふうに理解をいたしております。

いずれにいたしましても、その具体的な制度化に向けた検討作業は現在与党において進められておりますし、今後、法案の提出に向けて与党においてなお作業が続けられていくということだと思っておりますので、詳細については、この時点で私からこれ以上申し上げるということではないのではないかと思っております。大事なことは、株式市場の本来担っている価格発見機能というものを回復させると、そういうところに政策目的が置かれているということであろうかと思っております。

問)

サミットの前後してといいますか、アメリカで会計制度の見直しが公表されましたけれども、これについてのご見解と、あとこれによってまた世界的な流れといいますか、日本の、日本も去年秋から幾つか手を加えましたけれども、そういったことがまた追加的に可能性があるのかを聞かせてください。

答)

ご指摘いただきましたように、米国の財務会計基準審議会、FASBが、4月2日に行われた理事会において、2点、すなわち一つ目は市場が活発でない場合等における有価証券の公正価値の測定、そして第2に有価証券の一時的ではない減損に関する追加の適用指針を採択する決議を行ったということでございます。より具体的には、一つ目に有価証券の公正価値測定-いわゆる時価会計でございますがーに関して、理論値で測定する場合と、市場価格で測定する場合があるわけですが、その場合の理論値で測定することが適当な場合として挙げられている「市場が活発でない場合」及び「取引が投売り状態になっている場合」、これの決定に関するガイダンスを示しているという点、それからもう一つは負債証券、デット性の証券の一時的ではない減損について、これまで純利益に評価損全額を反映していたわけでありますが、今回、信用リスク相当部分のみを反映する、こういったことを内容とするガイダンス、これを採択する決議が行われたということでございます。

一般論として申し上げますと、会計基準を変更することによって、企業の財務状況の実態そのものが変わるものではないということ、この基本認識が大事だと思います。会計基準は、いわば企業の財務状況を図る重要な物差しであって、投資家等の利用者の視点も踏まえ、その透明性、一貫性、信頼性を確保することが非常に重要で、そのことによって、企業の財務諸表、特に上場企業の財務諸表への信頼を確保するということにつながるのではないかというふうに思っております。もちろん企業活動の実態が、時代とともに大きく変化をしていった際に、そういった変化も含めて、できるだけ正確な財務状況の計測が可能になるということは大変重要なことで、そういった計測が可能となるよう、会計基準も実態の変化に合わせて進化していく必要があるとは思っておりますが、投資家から見て、企業実態をわかりにくくするような改変というものはいかがなものかというふうにも思っているところでございます。

いずれにいたしましても、そういった大きな会計基準の役割というものを踏まえつつ、かつまた国際的な動きに注意を払いつつ、適切な対応に努めていくというのが基本的な心構えでございます。

(以上)

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