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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成21年4月20日(月)17時06分~17時28分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

お待たせしました。私からは特にございません。

【質疑応答】

問)

まず、株価対策に関してなのですけれども、与党が市場から直接株式を買い取る枠組みの概要をまとめました。3年間の時限措置であるとか、首相が招集する金融危機対応会議が買取りを判断することなどが柱となっています。以前に長官がご指摘されていた費用対効果の問題、そして副作用の観点から、どう評価しているのか、改めてお聞きしたいと思います。

答)

従来から申し上げているとおり、株価は、発行体である上場企業の企業価値によって決定されるものであって、市場の価格形成に任せるというのが本来のあり方でございます。ただ、他方で極めて不安定な経済情勢、金融情勢の下では、例外的に株式市場の価格形成に関する機能に極めて重大な支障が発生するということも完全に排除はできないのかもしれません。

本件につきましては、引き続き与党において検討が行われておりますので、その具体的な検討内容についてコメントすることについては差し控えるべきだと思いますけれども、今申し上げたような基本的な問題意識というのがベースにあると考えております。

これまでに与党の方からお示しいただいている制度の骨格について、金融庁としての受け止め方を申し上げれば、まず費用対効果についてですけれども、市場が価格発見機能を失い、その状況が継続するような場合、そういった例外的な場合に備えた臨時・異例の措置として、いわばセーフティネットとしての買取りの枠組みを整備しておくということによって、国民経済に深刻な影響が及ぶ事態を未然に防止するという効果が期待されているものであると思っております。ここで改めて確認をしておきたいと思いますのは、今回のご提案も、その政策目的は株価水準そのものではなく、あくまでも市場の価格発見機能を回復させるというところにあると理解をいたしております。それから、政策効果については、こういった枠組みが存在していることによる安心感と申しましょうか、あるいは抑止力と申しましょうか、まずはその効果が期待されているということだと思います。

それから、次に副作用については、市場の価格形成を歪める、あるいは我が国市場への信頼性を損なう、こういったことにつながってしまうと大変困ったことになると思います。したがいまして、こういった副作用が極力排除されるようにする必要があるということだと思いますし、先ほど来申し上げている、極めて異例な事態への備えだという位置付けをしっかりしておく必要があるということか思います。与党の方でお示しいただいているスキームの中にも、発動に当たっては厳格な要件と厳格な手続きを規定するということが入っておりますし、また政策目的についても、改めて申し上げますけれども、市場の価格発見機能を回復させるということを目的としているものと、こういう文言が入っていたかと思っています。

問)

顧客情報の流出の問題に関してですけれども、三菱UFJ証券の情報流出問題に関して、先週、同社が、流出先が当初の13社から77社に上っているということを公表しました。顧客からは苦情も寄せられているということですけれども、流出拡大に歯止めをかける有効な方策もないということですけれども、事態の悪化について金融庁としてどう見ているのか、対応も含めてお聞きしたいと思います。

答)

本件につきましては、三菱UFJ証券が、まず4月8日に顧客情報の流出について公表し、更に4月17日に当該事案への対応状況を公表する中で、元社員から顧客情報を入手した名簿業者の転売先が拡大しているということなどを明らかにしたところでございます。

これは先般も申し上げましたけれども、顧客情報は金融商品取引、またその仲介を行う仲介業において、その基礎をなすものであって、個人情報保護の観点からもその適切な管理が極めて重要でございます。こうした観点から、今回のような事案が発生したことは、改めて、極めて遺憾であると思っております。

もともと証券会社においては、個人情報の漏えい等を防止するため、情報の安全管理や従業員の監督等について、必要かつ適切な措置を講ずることが求められているわけであります。また、万一、こういった顧客情報の流出等が発生した場合におきましては、まず影響のあった顧客に対して迅速かつ的確な対応を行うこと、また二次被害等の発生防止に向けて実効性のある対策を講じること、更にそういった緊急対応に加えて、再発防止に向けた取組みを行い信頼回復に努めていくといった取組みが重要であると思っております。

こういった観点から、とりあえず現在までの当社の対応を見てみますと、当社の顧客情報を入手した可能性のある業者に対し、当該情報を利用した勧誘の停止と、勧誘リストからの削除を求めるとともに、当社の代理人弁護士から警告書を送付するといったことをやっていると承知しております。また、秋草社長を本部長とする「お客様情報流出対策本部」において、顧客対応に万全を期するとともに、事実解明を行うために第三者による徹底した調査を行い、再発防止策を策定していくというふうにしていると承知しております。

金融庁といたしましても、先ほど申し上げたような観点から、引き続き当社の対応状況を注視するとともに、必要に応じて、法令等に則り、適切に対応してまいりたいと思っております。

問)

情報流出に関してですが、当初、三菱UFJ証券の発表では、20数件のものが疑われるという、流出の範囲の規模が全くつかめていないというのが3月末の状況だったと思います。利用者からすると、やはり会社側の流出範囲の拡大とか転売の拡大が遅れたのではないかという見方もありますし、金融庁に対しても、そのあたりの指導・監督が適切だったのかどうかという疑念もあると思うのですが、どのような対応をなされてきたのでしょうか。

答)

今お尋ねのような疑問点を含めて、先ほどちょっと紹介させていただいた事柄の経緯も含めて、第三者による徹底した調査が行われるということが重要でしょうし、これまでの対応の中で、不適切、不十分であった部分があるとすれば、そこのところはきちんと特定をし、その上で再発防止に結び付けていくということが大事だろうと思っております。

金融庁の監督上の対応につきましては、従来より、法令に基づいて、監督指針等で、この顧客情報管理の重要性については繰り返し注意喚起をしてきているということでございまして、本件についての当社の対応について、改めて実態をよく見た上で、今後、監督上更に改善すべき点があるかどうかも含めて、検討をしていくということになるのではないかと思っております。

問)

また三菱UFJ証券の関係なのですけれども、先週の会見では、「三菱UFJの対応状況を注視したい」というふうにおっしゃっていましたけれども、「法令等に則り適切に対応したい」というふうにはおっしゃっていなかったと思うのですけれども、これはこの1週間で何か違いが出てきたのでしょうか。

答)

先週も、明示的に言葉に出しては申し上げてはおりませんけれども、この手の問題が起きた場合に、まず初動として大事なことは、できるだけ迅速に正確な事実関係を確認するということでございますので、先週はまずはその点に触れたということでございます。正確な事実確認をした上で、何らかの更なる対応が必要な場合には、それについて検討していくというのは、これはあくまでも一般論でございますけれども、普段から申し上げている考え方であると思います。

問)

最初の株式市場対策の話なのですけれども、長官もお答えの中で、「例外的に価格形成機能に支障が発生することを排除できない」というふうにおっしゃいましたけれども、一方で、金融庁は従来から「貯蓄から投資へ」ということを言って、広くそういう政策をやっている中で、こういう価格形成機能ができないような市場があるかもしれないということをおっしゃるというのは、ある意味、政策としては一貫しない部分があるのかなというふうに思うのですけれども、そのあたりの考え方についてどういうふうに整合性をとっているのか。あるいは、ちょっと言いづらい部分かもしれませんけれども、やはりそこはちょっと(整合性を)欠いているということなのかどうかについて聞かせてください。

答)

価格形成機能を有していない市場があるという認識は全く持っておりません。現在の我が国の株式市場というのも日々価格形成機能を発揮しているということだろうと思います。

ただし、今般のようなグローバルな、深刻な金融市場の混乱というものが続いていると、例えばこういった状況の下で、一時的に、本来企業の企業業績、ファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映した形で価格形成がなされる、そういう場としての株式市場が、そういった役割を果たしていないといったような状況が一時的に出てくることはあり得るということだろうと思います。マーケットというのは、時にオーバーシュートする(行き過ぎる)ということはよく言われることでございまして、そういった一時的なオーバーシューティングについて、それはマーケットについてそういうものが起こり得るということを前提として、我々の市場経済というのは成り立っているのでありまして、そのこと自体、一切許容できないとかというそういう考え方ではないと思いますけれども、今申し上げたような、マーケットが価格形成機能を失っているような状態が継続的に起きていると、持続しているといった場合には、その価格形成機能を早く回復してもらうようにするために、当局が最小限の関与をするという考え方でございます。

もとより、我が国の金融・資本市場の競争力を強化するという大きな目標に何ら変更はございませんし、こういった取組みもそういう大きな市場のあり方、また我が国の市場を強化していくという方向感と整合性を持ったものとして考えていく必要があると思います。

問)

法律の所管は経産省なのかもしれませんけれども、産業活力再生法の改正案が、国会審議が順調に進んでおりまして、そろそろ成立しそうな見通しだという状況になっております。この法律に基づきまして、普通の事業会社等にも公的な資本支援が可能になるという状況なのですが、改めまして、この産活法に基づいた公的な資本支援という制度に対する期待と、また金融庁の所管企業がこれを活用する可能性、また、もしそういう検討状況があれば、あわせて教えていただければと思います。

答)

この法案及びその制度の所管は経済産業省でございますので、私から直接的なコメントを申し上げる立場にはないと思います。

広く一般論として考えた場合に、企業の業績が落ちて、市場等からも厳しい評価を受けているというような状況の場合に、その当該企業について、例えばコアのビジネスは順調に推移をしていて、然るべき必要なリストラクチャリング(事業再編成)、構造面での改善を行えば、企業としての価値を維持できる、存続の可能性を高められるというようなケースがあるときに、ケース・バイ・ケースでさまざまだと思いますけれども、デット性の資金だけではなくて、エクイティ性の資金も組み合わせることによって、そういった取組みがうまくいく蓋然性が高まるといったケースはあり得るのではないかと思っております。

金融庁所管業種についてのお尋ねでございますけれども、今現在、まだこの法案は審議されている段階かと思います。特定の業種を念頭に置いたコメントは差し控えた方がよろしいかと思います。

問)

更問で恐縮なのですけれども、以前この質問が出た時に、長官は、所管の業種、所管の業態でこういった制度を必要とする状況にはないというお話をされたかと記憶しているのですね。なので、状況が少しずつ変わりつつあるのかなというふうな印象も受けたのですが、それはちょっと考え過ぎなのでしょうか。

答)

考え過ぎだと思います。

(以上)

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