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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成21年4月27日(月)17時02分~17時39分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方から特にございません。

【質疑応答】

問)

まず、新生、あおぞらの件から聞きたいと思うのですけれども、公的資金注入行の新生、あおぞら両行が経営統合に向けて交渉に入ったということが報道で伝えられています。国は、両行の株主でもあり、金融庁には金融システムの強化や効率化という使命があると思うのですけれども、監督官庁としての判断というのがあると思うのですけれども、株主と監督官庁という判断の、どこに軸足を置いて、こういった個別の企業の話ですけれども、一般論として、個別の企業の経営判断について見ていくのかということについて、まず最初にお聞きしたいと思います。

答)

まず、お尋ねの個別事案につきましては、両方の銀行から、銀行として決定した事実はないという旨の発表がなされているというところでございまして、もともと経営統合というのは個別金融機関の経営判断の問題でもございますので、当局からコメントすることは差し控えたいと思います。

あくまでも一般論でございますけれども、今お尋ねの、公的資金が注入されている銀行に対する関与のあり方につきましては、ご指摘のとおり、金融庁には監督官庁としての立場と株主としての立場の両方があるということでございます。ただし、株主が一般的に求める、例えば収益力の強化・企業価値の向上といったことは、金融システムの安定・強化にも資する面があって、一般的に、監督官庁としての立場と株主としての立場が矛盾するケースというのは多くないと思っております。

なお、公的資金注入行のうち、国が議決権を有する銀行、あるいは場合によって、議決権のない優先株であっても無配になった場合には議決権が発生するという仕組みになっていますけれども、この議決権行使につきましては、預金保険機構の「議決権行使の基本的な考え方」というものが公表されております。以下のような点に留意していくということでございまして、一つ目に、株主総会で提案された議題が、銀行経営の健全性の維持に資するものかどうか、それから、公的資金の返済財源の確保に資するものであるかどうか、その他、金融の円滑化など公的資本増強、資本注入の根拠となった法律の趣旨にかなうものであるかどうか、こういった点に留意しながら、株主としての利益確保の観点から株主総会で議決権を行使していくという基本的な考え方でございます。

問)

それから、次に、週末のG7(七か国財務大臣・中央銀行総裁会議)についてなのですけれども、週末のG7声明で、世界経済の先行きについて「年内に回復する」という指摘がありました。一方で、IMF(国際通貨基金)は先週、日米欧の金融機関の損失額が2007年から2010年までで約400兆円に上るという試算を公表しています。景気回復には金融システムの安定化が不可欠だと思いますけれども、G7声明とIMFの試算について、金融庁としてはどういう見方をされているのかということをお聞きしたいと思います。

答)

まず、IMFの世界金融安定性報告(GFSR、グローバル・フィナンシャル・スタビリティー・レポート)についてですけれども、4月21日に公表されました。その中で、米国、欧州及び日本で組成されたローン及び証券について、2007年から2010年までに生じる損失額が累計で4兆540億ドル、約400兆円になると推計されております。

今回のこのIMFによる推計は、一定の前提に基づいてやや機械的に推計されたものという面がございますが、これによりますと、米国の金融資産に係る損失推計額は、実体経済悪化に伴う貸倒償却率の上昇等を反映し、前回1月に公表された2.2兆ドルから5,000億ドル増加して、2.7兆ドルとなっております。それから、今回初めて推計が行われた欧州と日本についてですけれども、まず、欧州では約1.2兆ドルの損失ということでございまして、他方で、我が国につきましては、桁が一つ小さくて1,490億ドルの損失見込みということになっております。

この全体の損失額4兆500億ドルのうち、米国が2.7兆ドルということで、損失額のシェアとしては67%を占めている、欧州の1.2兆ドルというのは29%、それから日本の1,490億ドルというのは4%ということになっております。これは、残高としての資産の額と比べますと、米国の場合は資産のシェア46%に対して損失額67%という関係、欧州の場合には、資産の残高41%に対して損失額は29%というシェア、日本の場合は、資産のシェア13%に対して損失額のシェアは4%となっております。

ここから何を読み取るかということですけれども、グローバルなベースで見てみると、これまでも欧米の大手金融機関を中心に巨額の損失が認識をされ、決算でもそれが計上されてきているということではございますけれども、これを見る限り、今後も相当大きな損失が発生すると予想されるという読み方になるかなと思っております。それから、今申し上げた数字の比較からしますと、米国、欧州に比べて、我が国における、我が国の金融セクターの相対的な健全性の高さというのが読み取れるかなと思っております。それは、同じレポートに入っております、損失見込み額を資産の残高で割り算した損失率の予想を見ますと、米国が10.2%、欧州が5.0%、そして日本が2.0%ということでございますので、そういったことを示唆する数字になっているかなと思っております。

それで、今般のG7とも関わりますけれども、こういった事態の中で、世界でどういう対応がなされているかということですが、米国では、ご案内のとおり、各金融機関における資本増強ということも見据えた、当局によるストレステストが進行中であるということでありましょうし、また、不良資産を銀行のバランスシートから切り離すための資産買取りスキームの実施が進められているということだろうと思います。

他方、我が国の場合ですけれども、先ほど米国、欧州と比べると相対的には健全性の度合いが高いというふうに読めると申しましたけれども、ご案内のとおり、直近に出てきている様々な、日本の大手金融機関を中心とする平成21年3月期の決算の動向を見てみますと、大幅減益、そのうちの相当部分は赤字決算という姿になる見通しでございまして、この一番大きな要因は、一つには株価の下落による減損処理等の拡大、それからもう一つは実体経済の悪化に伴う与信コストの増加と、この二つが非常に大きな要因として働いているということでございますので、日本についても、当然、高い警戒水準を維持しながら注意深く見ていく必要があると思います。

それで、ご質問の中でもご指摘いただきましたように、現在のグローバルな状況を改善していくには、金融の安定ということと実体経済の改善、この両方の取組みが同時並行して進められる必要があるという認識は、そのとおりであると思います。また、今般のG7の声明にも、マクロ経済対策、財政面での取組みという話と、金融面において貸出を回復する、流動性支援を行う、金融機関の健全性を改善する、と両方のことが書かれているということで、今回のG7声明にも反映されているのかなと思っております。

また、この金融の安定については、更によく見ていきますと、いつも申し上げております、短期的な危機対応策と申しましょうか、足下の状況を安定化させるという対策と、そしてやや中期的な規制改革、金融規制・監督のあり方の改革、今回のような大混乱を再び起こさせないように枠組みを再構築していくという課題と両方が認識をされていて、その両方の面について、今回のG7でもコミットされていると理解しております。

問)

新生、あおぞらの件なのですけれども、そもそも金融庁としてはどのように評価されているのか、ということを教えていただけませんでしょうか。

答)

先ほどもお答えしましたとおり、両行から、現時点においては銀行として決定した事実はないという旨の公表がなされている話でありまして、個別金融機関の経営統合というのは、まさにそれぞれの金融機関の経営判断の問題でございますので、この時点で当局の方からコメントすることは差し控えるべきだろうと思っております。

問)

個別事案によって異なることもあるかとは思うのですけれども、こういう局面下での事業統合という判断、一般論で結構なのですけれども、それはどのように見ていらっしゃるのかということを。

答)

全くの一般論で申し上げれば、今のような局面であろうがあるまいが、それぞれの金融機関が現状をきちんと分析し、そこから課題を抽出し、そういった現状認識の下で将来に備える、先を読むという経営姿勢の中で、仮に経営統合ということが選択肢に入ってきた場合には、それは経営判断の問題として進めていかれる話であろうかと思います。

仮に、経営統合ということを決めた場合には、そのことが全体としての金融機関としての機能の強化、ガバナンスの強化、全体としての顧客サービスの質の水準の向上、そして企業価値の向上といったことに結び付けていくということが大事だろうと思います。全くの一般論です。

問)

豚インフルエンザについてなのですけれども、人から人への感染が確認されたということで、世界的な拡散が懸念されているわけですけれども、今日、朝、関係閣僚会議が開催されたということで、金融庁としては、これを受けて、国内金融機関の状況などの把握に努めているのではないかと思うのですけれども、現時点での金融庁としての対応についてお聞きしたいと思います。

答)

今回の豚インフルエンザの発生について、WHO(世界保健機関)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に該当する」という認識を示したこと等を踏まえ、本日、「豚インフルエンザ対策に関する関係閣僚会合」というのが開かれまして、「当面の政府対処方針」が決定されました。

金融庁としての対応ですけれども、金融庁は、かねてより、金融機関に対して、新型インフルエンザ等への対応を求めてきておりまして、例えば、監督指針において、伝染病を含む災害発生時の業務継続体制、いわゆるBCPですが、この整備に関する監督上の着眼点を明らかにしているところです。また、昨年2月には、新型インフルエンザの発生に備えた感染防止対策や事業態勢の維持について、情報の収集や計画の策定など、事前の準備を行うことを金融機関に要請しております。

今般の事態に関して、現時点においては、米国及びメキシコに拠点を有する我が国の金融機関については、特段支障なく営業が行われていると聞いております。なお、一部の金融機関では、職員の渡航制限、一時帰国、あるいは対策委員会の設置といった対応について検討を行っているものと聞いております。

金融庁としては、金融機関における取組状況等について、引き続き情報収集に努めるとともに、先ほど申し上げました、本日決定の「当面の政府対処方針」を踏まえ、適切に対応していきたいと思っております。

問)

先週のアメリカの話もあるのですけれども、アメリカとか欧州の金融当局の間で、最近、銀行の自己資本をめぐる議論というのがかなり本格的になっていまして、その中で、一つの大きな議論として、中核的な、コアな、コア自己資本というのを非常に重視していこうという姿勢を、アメリカなんかも鮮明に打ち出してきたところなのですけれども、こういう普通株を中心とした、コア自己資本を重視していくという金融当局間の議論について長官はどのようにご見解を持たれているかということと、コア自己資本で見ると、日本のメガバンクを中心にしたコア自己資本比率は、国際的に見てもそう高くないと言われておりますが、こういう議論が、将来国際的な金融規制の流れになるのかどうか、なった場合の日本の対応はどうなるのかということを伺えればと。

答)

先ほども申し上げました、やや中期的な課題として、今回のようなグローバルな金融混乱を再び起こさせないための中期的なアジェンダ(論点)として、銀行の財務の健全性をより確かなものにしていくという方向感があります。その中で、銀行に対する自己資本規制について様々な議論が進行していると思いますけれども、その中の一つに、「分子」である自己資本の質を改善していくべきではないか、という議題が設定されているということは事実でございます。

自己資本比率そのものの話にせよ、この自己資本の質の話にせよ、あるいは分母としてのリスクアセット、リスクの捕捉の信頼性の問題にせよ、あるいは先般も出ましたいわゆる景気循環増幅効果の削減、プロサイクリカリティの抑止、こういった議題にせよ、いずれも国際的な場で今後、まずはしっかりと議論をしていくということが大事であろうかと思っております。

自己資本の質という面に関して言えば、バランスシートに載っている資産のリスク、あるいはバランスシートの外にあるリスクというのもあろうかと思いますけれども、そういった、銀行が業務をやっていく上で抱えているリスクが顕在化したときに、その損失を吸収し、そして財務の健全性を維持して銀行業務の存続可能性を高めるというのが自己資本の役割であると思います。そういった自己資本の本来の役割に照らして、自己資本の質というものが議論されていくのかなと思っております。

ただ、特定の形態の自己資本が全てであって、それ以外の形態のエクイティというのは、一概に質が劣るのだというふうに決めつける議論もいかがかなと思います。様々な形の自己資本がバーゼル合意では認められていて、それぞれ異なった性格、異なる役割を担っているということであろうかと思います。

この、いわゆるコア・ティア1(自己資本の基本的項目のうち普通株、内部留保等)に照らしたときに、日本の銀行がどうなのかという点に関しましては、これは恐らく銀行ごとに、だいぶばらつきのある話ではないかと思っております。

問)

公的資金の関係ですが、地方銀行で第三銀行が検討をやるというのが出たので、今後の地銀等の検討の状況と、それと大手行に関しては、全銀協の会長が、メガバンクはとりあえずそういう状況にはない、という趣旨の発言をしていますが、それも併せて教えていただければと思います。

答)

お尋ねの第三銀行は、先週、22日でしたか、(金融)機能強化法に基づく公的資金の申請に向けた検討を開始するというメッセージを発表されたところだと思います。同行の発表では、この「長引く金融経済環境の低迷や実体経済の悪化に立ち向かい、真に地域経済活性化のお役に立つためには、フォワードルッキングの経営という考え方の下、資本増強が必要であると判断」したというふうにされておりまして、こういった発想、こういった取組み姿勢というのは歓迎をしたいと思っております。

この機能強化法の活用の促進については、これまでと同様でございまして、今我が国の状況というのは、金融セクターそのものは、欧米等に比べれば、相対的に健全性を維持しているということだと思いますが、実体経済の方は急速に悪化をしているということですので、いわば金融セクターが実体経済を支える役割というものは、日本経済全体の中でますます大きくなってきているということであります。そういう文脈からも、ぜひ個々の金融機関においては、金融仲介機能をしっかりと果たしていただきたいと思っております。

そういう中で、「先を読む経営」というアプローチをしたときに、資本増強ということが選択肢になる場合には、この機能強化法の活用も積極的にご検討いただきたいということでございまして、制度面の説明、あるいはもうすぐ定例の株主総会の時期になりますけれども、例えばそういう機会において、迅速な意思決定ができるように優先株受入れのための定款変更に取り組んでいただくというようなことも含めて、取組みを促していきたい、お願いしたいと思っております。

メガバンクについてのお尋ねがございましたけれども、これは従来から申し上げているとおりでありまして、この機能強化法は、もともと申請をなさる金融機関における経営判断に基づくものであろうかと思います。この機能強化法に基づく資本注入をすること、それがなされることが我々の政策目標ではなくて、あくまでも一番大事な政策目標は、各金融機関にしっかりと金融仲介機能を果たしていっていただくということでありますので、その一番大事な政策目標に沿った銀行経営がなされるということであれば、この機能強化法の活用について、当局がそれ以上うるさく云々するものではないと思います。

問)

5月4日にアメリカの金融機関の査定の発表がなされると思いますが、長官の方から、米国の金融の状況であるとか、アメリカ当局の査定の状況をどのように思われているか教えてください。

答)

従来から申し上げていることですけれども、こういった金融危機においては、まず大事なことは、各金融機関における不良資産と申しましょうか、不良債権と申しましょうか、その実態を正確につかむということだと思います。その中で、その不良資産からどれくらいの損失が発生するかということにつき、できるだけ正確な推計をするということが大事だろうと思います。その推計に基づいて、その後の資本増強を含めた対応が決まってくるということだと思います。そういう意味では、損失の認識、あるいは資産の内容についての精査というのが進められているということで、現在、米国が取り組んでおられるストレステストというのは、重要なステップであると思っております。

外国当局のお取組みについて、これ以上直接に、評価するとかしないとかというコメントは差し控えたいと思います。

問)

日興コーディアル証券と日興シティグループ証券の売却について、三井住友フィナンシャルグループの方で、今、優先的な交渉が始まっているのですけれども、大手のメガバンクと大手の証券会社がこれほど一体になるということはこれまでなかったかと思うのですけれども、そういった銀証一体が進む状況についてどのように見ていらっしゃるのか、お願いできますでしょうか。

答)

平成の比較的早い年代に、いわゆる業態間の相互進出ということに関して、ある時期までは子会社方式というようなことでございましたけれども、ある時期から、持株会社形態で同一のグループに銀行なり証券会社なりが入るという形態が制度上認められて、現在までに、かなりの程度、一つの金融グループの中に銀行と証券会社が併存しているというのが一般化してきたのかなと思います。

お尋ねは、大手銀行と大手証券会社が同じグループの中にあるという意味では、今回の話というのは、見方によっては一つの新しい動きという捉え方もあり得るのかもしれませんけれども、我々、金融監督当局、規制当局の立場からしますと、大事なことは、グループ化された後においても、きちんとしたリスク管理が行われ、法令等遵守の態勢がきちんと機能をし、全体としてガバナンスの効いた経営が行われることによって、安定的な経営の下で、顧客に対して質の高いサービスがきちんと提供されるということであろうかと思います。我々としては、そういった観点から経営の中身をチェックさせていただくということであろうかと思います。

もちろん、大手の銀行と大手の証券会社、あるいは銀行と証券一般でも同じことですけれども、例えば、銀行・証券にまたがる様々な金融サービスの提案が総合的に行えるようになるということが一つあろうかと思います。これは、きちんとしたそういう体制の下で、質の高いサービスが提供されれば、それは顧客にとってのメリットにもつながるという面があろうかと思います。

他方で、そういった場合には、いわゆる利益相反の問題というのは生じ得るわけでございますので、その利益相反をしっかりと管理していくということが大事になるかと思っております。ちなみに、今度6月1日からファイアーウォール規制の緩和が実施されるわけですけれども、ここにおいてはプリシンプルベースで、それぞれのケースに応じた最も的確な利益相反の管理を個々の金融機関においてしっかりとやってもらうということを求める、そういう枠組みを整備しているというところでございますので、こういった利益相反の管理といったことも大変重要なテーマの一つになってくるかなと思います。一例を申し上げました。

(以 上)

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