英語版はこちら新しいウィンドウで開きます

佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成21年6月11日(木)17時02分~17時22分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

月曜日は、京都への出張で、この会見の日程を繰り延べていただきましてありがとうございました。

あと、特に私からはございません。

【質疑応答】

問)

今日、日経平均株価が一時、去年10月以来8カ月ぶりに1万円を超えるなど株価が回復していますが、これはどういった要因があると見ているのでしょうか。だいぶ、去年のリーマンショック以降、金融市場が混乱していたかと思うのですが、これが安定に向かいつつあると言えるのでしょうか。長官のお考えを聞かせてください。

答)

いつも申し上げていることですけれども、株式市場の動向は、様々な市場参加主体がそれぞれの判断に基づいて投資行動を行った結果として出てくるものでありますので、その要因や背景について、当局として断定的なコメントを申し上げるべきではないと思っております。

せっかくのご質問でございますので、市場関係者の声の中にこんな声もあるという程度のお話ですけれども、一つには、各国の経済対策などを受けて、一部の経済指標が改善、あるいは悪化が止まっているという傾向を示しているということで、国内外の景気底入れに対する期待が高まっている。それから、世界的な金融緩和によって供給されている流動性資金の一部が、商品や株式などに向かっている。あるいは、我が国の市場に関していうと、売買シェアの約5割を占める外国人投資家のリスク許容度の回復によって、4月以降、買い越し基調になっている、こんなことが指摘されております。

それから、金融市場全般についてのお尋ねもありましたので、ちょっと付け加えますと、例えば社債市場では、中低位格付の起債が再開されるようになってきていると承知しています。この状況について、日本銀行は、「ひところに比べて緊張感が後退しているけれども、なお厳しい状況が続いている」、こんな認識を示されております。

いずれにいたしましても、政府全体として、この経済危機対策の着実な実施などに引き続き努めていくことが大事だと思っておりまして、金融庁としても、この金融市場の動向については、引き続き注意深く見ていきたいと思っております。

問)

これは、直接には財務省の話かと思いますが、12日、13日とイタリアでG8の財務大臣会合が開かれます。金融規制に関する議論は、この中でどういったものが行われる見通しで、どういった議論を期待されているのか聞かせてください。

答)

議長国であるイタリアからアジェンダ(議題)が公表されておりませんので、あまり具体的なコメントはしにくいわけでございますが、これまでの経緯等を踏まえて一般的に申し上げれば、金融規制・監督の再構築については、昨年来、G20の首脳会合などの場でも具体的な認識が示され、その実施に向けた共通の意思というものが確認されているということだと思います。

いずれにいたしましても、この金融危機の再発防止、それから足下の金融混乱の安定化という共通の、いわばグローバルな目標に向けて、各国が連携し、これまでの合意を国際的にも整合性をもって、実効性ある形で着実に進めていくということが大事だと思いますし、また同時に、こうした中期的な規制の再構築については、足下の経済に与える影響にも留意して、短期的な危機対応の措置とバランスをとった形で実施していくことも大事だと思っております。今般のG8会合でもこうした点が確認されることを期待しております。

いずれにいたしましても、金融庁としては、今後とも、各国当局や国内の関係当局等と連携・協調し、金融危機の再発防止・金融システムの強化に向けた国際的な議論に積極的に参画していきたいと思っております。

問)

株式市場が戻ってきていますけれども、空売りの規制とか、今行っている市場の緩和策は、まだ続いていると思います。これは、市場の動向を見ながら解除の時期も探るものだと思いますが、そういう、今やっている金融緩和策とか危機対策、このあり方について教えてください。

答)

大きく言って、今もちょっと触れましたけれども、我が国も含めて各国がとっている金融面での対応というのは、ご質問の足下の金融市場の混乱を修復して金融システムを安定化させるというための対応と、それから今回のようなグローバルな金融危機が再び起きることのないように、いわば予防的な措置として規制の枠組みを再構築していくという中・長期的な対応と、二つに分かれるのだろうと思います。

それで、この一つ目の短期的な対策は、恐らく平時であればやることのないような例外的な措置、すなわち、納税者の資金、公的資金なども活用した対応であるとか、あるいは市場の安定化策といったものを含んでおりますので、こういった措置が漫然と続いていくということについては、そのことが市場におけるモラルハザードを助長する、あるいは金融システム全体の機能を中期的には歪めてしまうという副作用も意識しておく必要はあるということだと思います。これは、あくまでも一般論でございます。

したがって、そういった問題意識を持ちつつ、ただし、今の状況というのは、危機が終わったと言えるような状況ではおよそないわけでございますので、足下の状況を注意深く見ながら、そういった問題意識を頭に抱きつつ、今後の対応を考えていくということだろうと思います。

問)

それに関連して、株価回復で金融機関の財務も回復が期待できます。ただ、この前、与謝野大臣は、金融機関は財務が回復したといっても、すぐに貸出姿勢が積極的になるとは限らないということで、貸出姿勢をめぐる検査なり監督なりというのは、引き続きやっていく必要がある、ということをおっしゃっています。株価回復と、金融機関の財務面、及び貸出姿勢の関係について教えてください。

答)

それほどストレートな因果関係が、直ちに働くということでもないとは思いますが、ご指摘のとおり、日本の銀行は比較的株式をたくさん持っておりますので、株価の回復というのが財務の健全性にプラスの影響を及ぼし、その財務面でのゆとりというのが、銀行にとってリスクテイクをしやすくなる一つの要因になるということは、十分考えられると思います。

いずれにいたしましても、昨年の秋以来、金融庁は、金融機関による金融仲介機能の発揮ということに狙いを定めて、様々な施策を講じてきているわけであります。実体経済の状況も、まだまだ安心できる状況からはほど遠いと思いますので、実体経済を支えるという金融セクターのこの役割に着目しつつ、金融仲介機能がしっかり果たされているということを目標にして、金融行政上の対応は引き続き考えていくということだろうと思います。

問)

昨日の審議会で、有識者の方々から、今、長官がおっしゃられたように、銀行が保有する株式の比率が、やはりそうはいってもまだ依然高いということで、このリスクに相当着目したご意見が出たかと思うのです。例えば、もう少し規制を強化せよとか、そういうお話が出たと思うのですが、株が1万円に近づいて、高くなってきて、含み損も解消するという局面で、この持ち高を減らすというふうにもしやすくなってきたのか、環境が整いつつあるのかと思うのですが、例えば金融庁として、そのあたりはどういう促し方をされていくのか。例えば、取得機構をもっと使いやすくするとか、すぐに規制するというのはなかなか難しい面があると思いますが、銀行の持つリスクが財務へのリスクとかぶるという、この大きな問題について、改めてご意見を伺えればと思います。

答)

昨日の(我が国金融・資本市場の国際化に関する)スタディグループの場では、ご指摘のとおり、委員から銀行の株式持合いや保有を禁止する、あるいは制限するべきではないかといった意見が出されたと承知しております。

それから、報告書の案においても、銀行等と事業会社の株式持合いについて、「持合いの解消を進め、株主によるガバナンス機能の強化を図っていく観点からも、銀行等保有株式取得機構の積極的な活用が望まれる」旨の指摘がなされております。この点については、私自身も全く同感でございまして、銀行等が、時限的な措置として今オペレーションをしております銀行等保有株式取得機構のこのオペレーションを積極的に利用されることを期待しております。

他方、各銀行ないし銀行経営者の皆さんも、今般の世界的な金融市場の混乱の経験から、株式の保有には、株価の急激な変化等を通じて自らの財務の健全性に大きな影響を与えるというリスクがあるということについて、十分に教訓を得ておられるものと考えております。各銀行等においては、この経験あるいは教訓を踏まえて、特に株式保有に関するリスク管理をより一層的確に行うための具体的方策を、それぞれにおいて、まずは自主的に講じていくことが求められている状況かと思います。

金融庁としては、当面はこの各行の自助努力を強い関心を持ってフォローしていきたいと思っております。

問)

ちょっと会見の間があいたもので、おられない間に、インサイダー取引が、相も変わらずというか、金融機関で連発して起こりました。まだ、あおぞら(銀行)の件は、なかなか言及しにくいとは思うのですけれども、カブドットコム(証券)とか、それ以前の野村(證券)の状況を踏まえて、金融機関でこれだけ相次ぐことは、やはり異例だと思うのですが、長官のご認識を教えてください。

答)

銀行にせよ、証券会社にせよ、非常に高い公共的な役割を担っている企業であります。なおかつ、その市場仲介といった役割もありますし、金融仲介機能を果たしているというその中で、非常に多くの情報に接する立場にあるということだと思います。この点を踏まえましても、こういった公共性の高い金融機関において、その職員によるインサイダー取引が多発するということは、極めて遺憾なことだと思っております。金融機関の役職員においては、高い法令遵守意識、高い職業倫理と自己規律をもって業務を行っていただきたいと思っております。

金融庁としては、引き続き、各金融機関における内部管理態勢等の整備状況を注視していきたいと思っております。

また、市場における不公正取引全体についてですけれども、そういう不公正取引に及ぶ行為者の皆さんが考えている以上に、市場はきちんと監視されているということを、改めて強調しておきたいと思います。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る