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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成21年6月22日(月)17時02分~17時49分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

当方から1点ございまして、これは先週金曜日に証券取引等監視委員会事務局からも注意喚起させていただきましたけれども、金融庁や証券取引等監視委員会の名を騙った詐欺が最近増えているということで、利用者保護、投資家保護を最も重要な行政目的の一つとしている金融庁、証券取引等監視委員会の名前がこういうことに使われるということは、由々しきことでございますので、改めて私からも、この点についての情報発信をさせていただきたいということでございます。

最近、金融庁や証券取引等監視委員会、またはこれを連想させる組織を名乗る者から、「未公開株の上場が決まりました」とか「未公開株の買取り交渉を行います」などといった不審な電話があるという情報が、当庁や証券取引等監視委員会の窓口に多数寄せられております。

金融庁や証券取引等監視委員会の職員が、このような電話をしたり、外部に委託したりすることは一切ありませんので、国民の皆様におかれては、改めて、くれぐれもご注意いただきたいと思います。

また、このような電話を受けた場合には、金融庁の金融サービス利用者相談室、又は証券取引等監視委員会の情報受付窓口まで情報をご提供いただくとともに、最寄りの警察署にご相談いただきたいと思います。

私からは以上でございます。よろしくお願いします。

【質疑応答】

問)

先般、アメリカで政府が金融規制の大幅な改革というものを打ち出しまして、その柱になりますのが、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融システム上重要な大手金融機関を一元的に監督するということであります。マクロの金融に責任を持っていたFRBが、ミクロの金融監督にも責任を持つということで、統一的に金融を舵取りしていくという中身になるのかと受け取っておりますが、これに関連しまして、長官のご見解を伺えればと思います。

一つが、アメリカの取組みへの長官の評価ないし見解を伺えればと。

ニつ目が、今回の米国の金融規制改革が、日本のメガバンクなどにどの程度の影響を与えるのか。

三つ目が、米国政府は、各国にこうした金融規制改革について協調を働きかける考えのようですが、日本の金融規制の将来像について長官のご見解を伺えればと。

以上、三つをよろしくお願いします。

答)

先週、米国の現地時間で17日木曜日、米国政府より金融規制改革案が公表されました。この規制改革案の中では、その目的として以下の5点が掲げられております。第1に、金融機関に対する強固な規制・監督の推進。第2に、金融市場における包括的な規制の構築。第3に、金融サービスを利用する消費者や投資者の保護。第4に、金融危機を管理するために必要な破綻処理制度を含む仕組みの整備。そして、第5に、国際的な規制基準の向上と国際的連携の改善、という5点でございます。

今回の米国の規制改革案に掲げられたこうした目的は、サブプライム・ローン問題を契機とするグローバルな金融市場の混乱を受け、このような混乱を再び起こさせないよう、金融システム・金融市場の強靱性を再確立する必要があるという問題意識の下、規制の枠組みの再構築ということがグローバルに共通の課題となっている中で、その考え方が示されたものであると受け止めております。

これを我が国の立場から見ますと、内容的には大きくニつに分類できるのではないかと思います。

一つ目のグループは、主として米国の国内事情に由来して行われる金融規制・監督当局の組織の変更、あるいは、その事務分担と申しましょうか、所掌範囲の再構築といったことでございます。この辺は、いわば米国の現在の金融規制・監督の体制が、業態別に分かれている、あるいは連邦と州で分かれているなど、複雑な形態になっているという米国固有の事情に由来している話だと思いますので、我が国としては、この点については今後の具体的な展開を冷静に見守っていきたいと思っております。

それから、もう一つの大きなグループは、今後の金融規制のあり方の問題として、グローバルな含意を有する諸施策であります。

その中の一つ、非常に大きな柱が、システミック・リスクというものを意識しながら、金融システム全体の安定性を強化していくマクロプルーデンシャル・ポリシー(マクロ健全性政策)のアプローチを軸に据えて施策を位置づけているということでございまして、この点については、我が国としてもその問題意識を深く共有しているところでございまして、我が国自身の規制・監督のあり方の問題として、また、国際的にも整合性のある規制・監督のあり方を目指すという観点から、グローバルな動向によく目を向けると同時に、我が国自身の問題として勉強していくということが必要でしょうし、また、現在も相当程度進んでおりますけれども、海外の監督当局との連携、また国内的には日本銀行との連携というものをさらに深めていきながら、適切な監督に努めていくということであろうかと思います。

このグループの中には、例えばヘッジファンド等への規制・監督といったこと。あるいは、先ほども少し申し上げた、非常に重要なインパクトを持ちうる大規模かつ複雑な金融機関を対象とする破綻処理制度をつくるといった点。さらには、市場規制のあり方の見直しとして、例えば証券化市場の規制・監督の強化。その中には、証券化商品の組成者やスポンサーに対して、証券化されたクレジット・エクスポージャー(信用リスクにさらされている資産)の一定割合の保有を義務づけるという、¬―これは日本自身が2007年の年末、あるいは2008年の年初あたりから主張していた点でございますけれども、―こういったことが織り込まれている。さらには、OTC(店頭販売)デリバティブに関する包括的規制の創設。そして、システミックに重要な支払い・清算・決済システムへの監督強化といったことも盛り込まれておりまして、こういった課題については我が国としても関心を持ちつつ、今後の展開を注意深く見ていきたいと思っております。

それから、今回の米国の金融規制改革が、日本のメガバンク等に対してどういう影響を及ぼすかにつきましては、現段階では骨子が発表されたにとどまるわけでございまして、今後、具体案が策定され、それが法案の形になり、また議会で審議されるというプロセスを経るわけでございますので、現段階で予断を持ってお答えすることは差し控えるべきであろうかと思います。いずれにいたしましても、日本の金融機関ということに関していえば、基本的には各国における金融システムの問題については、(もちろん国際的な連携・協調を図りつつ、)各国の権限と責任ある当局が自国の金融セクターの状況に応じて、それぞれ的確な対応をとることが基本であると思っております。

それから、大変中身の濃いご質問でございまして、日本の金融規制の将来像というお尋ねもございましたけれども、今申し上げたような問題意識をしっかりと抱きつつ、我が国の金融規制のあり方については、足元の現状をよく踏まえつつ、かつ、金融取引の国際性というものも意識しながら、グローバルに整合性のある規制の枠組みを目指していくという心構えを持って、将来の姿を考えていくということだろうと思います。ただし、国際的に整合性があるということは、必ずしもすべての国の金融規制・監督のあり方が全く均一、画一的であるということを求めるものではないと思っておりますので、この辺についても冷静に勉強していくということかと思います。

ほぼ2年前に、金融庁としては、ベター・レギュレーションという、金融規制の質的向上というものを、まとまったパッケージ、イニシアティブとして発表したわけですけれども、その中で四つの柱のうちの二つ目の柱として、「優先課題の早期抽出と重要事項に重点を置いた監督」、「リスク・フォーカス、フォワード・ルッキングなアプローチ」ということを打ち出しております。また、五つの具体的な取組みの中に、海外当局との連携強化、そしてまた、マーケットの動向を注意深くモニターし、それらを日々の監督に活用していくといったことが含まれておりますし、当局のそういった全般的な分析能力、監督能力を強化していくということも織り込んでおりまして、そういったベター・レギュレーションの推進という大きな方向性というものも、我が国の金融規制の将来像を考える上で、重要な一つの方向性であろうかと思います。

問)

金融庁は、先週、ジャパン・デジタル・コンテンツ信託会社、JDC信託に、一部業務停止命令を含む厳しい行政処分を発動しました。その主な理由は、同社が顧客の信託財産を流用していたということなのですが、こういったことは、信託という制度そのものの信頼性を、ある意味、失墜させかねない事態とも言えるものだと思います。

このことに関連して、ニつご見解を伺えればと思いますが、一つは、改めまして厳格な処分に至った理由を説明していただければと思います。それから、信託業法改正によって新たに参入しましたこういった信託会社につきまして、ほかの業者、ほかの信託会社について、今回、JDC信託のような信託財産を流用するといった事態が生じているのかどうか、この2点について、ご見解をお願いします。

答)

ジャパン・デジタル・コンテンツ信託会社に対しては、6月18日木曜日、3か月の信託業務の一部停止命令、及び受益者保護を徹底すること等を求めた業務改善命令を発出したところであります。

同社は、平成20年6月6日に関東財務局長より、法令等遵守態勢、内部管理態勢及び経営管理態勢を充実・強化するため業務改善命令を受けましたが、その後、同社からの不祥事件等届出などもございまして、多数の法令違反行為等が判明いたしました。

具体的には、第1に、信託財産からの広告宣伝費のための貸付金を目的外使用している。第2に、信託報酬の前払いと称しての信託財産の流用。第3に、有価証券報告書等の虚偽記載。第4に、取締役の兼業制限違反。また、今申し上げた四つの法令違反行為を防ぐことのできなかった脆弱な内部管理態勢。第6に、財務上の問題として、純資産額が1億円を割れたということ、こういった問題がございました。

これらを踏まえまして、当庁が公表している処分基準、すなわち被害の程度、当該行為の背景、軽減事由の有無、自主性に委ねることの是非などに照らし合わせて、免許業者である同社が受益者の信頼に反し、重大な法令違反等にあたる行為を行った責任は重大であると考えまして、業務の一部を停止した上で、受益者保護を徹底させる必要があると判断したものでございます。

他の信託会社において、同様の事態が生じているかどうかというお尋ねに関してでございますが、現時点において、他の信託会社に同様の問題が生じているとは認識しておりません。他方、一般論として申し上げれば、信託会社の業務運営の適切性や健全性に問題がある場合には、当局として信託業法等の関係法令に則り適切に監督を行っていきたいと思っております。

問)

先週、「資金決済に関する法律」が国会で成立しまして、銀行以外の事業会社にも為替取引が解禁されることになりました。「資金移動業」だったと思いますが、今後、そういう形で金融庁の登録対象になると思うのですが、どのようなサービス、どのような事業が展開されることを期待されているでしょうか。あと、上限額や法施行のタイミングなどがまだ見えていないのですが、そのあたりを、もしお示しいただければ伺えないでしょうか。

あと、金融審(金融審議会)の議論の中で、収納代行と代引(代金引換)サービスに関しては、両論併記という形でとどめおかれましたが、最高裁判例から見て疑義があるとの見方も残っているようですし、このあたりの法的整合性を・・・。

答)

疑義があるというのは、どの部分を言っているのですか。

問)

グレーゾーンとして、つまり、為替取引に近いサービスを収納代行がしているのではないかという見方だと思うのですが、そのあたりの法的整合性を今後、将来的に再検討される計画というか、お考えはあるでしょうか。

答)

先週、6月17日に資金決済に関する法律が、金商法(金融商品取引法)の一部改正と同時に成立したわけでございまして、関係各位のご協力に対して、深く感謝申し上げたいと思っております。

このうち、資金決済に関する法律は、銀行間の資金決済の仕組みを強化するといった話であるとか、あるいはサーバ型の前払式支払手段についての規制の明確化といったことと併せまして、いわば資金移動業というものが法律上定義されて、これによって、業者の側においてできるだけ利用者の利便に沿うような多様な支払方法、決済方法というものを工夫し、より質の高いサービスが提供されるように促していくという枠組みになったということであります。他方で同時に、その多様化に当たっては、利用者の保護という観点も非常に重要でございますので、小口取引に限定するとか、あるいは業者の側の信頼性を確保するための規定などが設けられているということでございます。

そのうちの上限金額など具体的な点についてのお尋ねがございましたけれども、それらにつきまして金融庁としては、この法律の施行に向けて、政令、府令などの整備を迅速・着実に実施していくということが務めであろうと思っております。利用者保護の充実ということと、利用者の利便性の向上、金融システムの活力の確保と発揮という点、両方のバランスをとって進めていくという心構えであります。

その枠組みの中では、今まで銀行のみに認められていた為替取引、いわゆる送金を、銀行以外の者でも行えるように所要の制度整備を行ったということでございまして、先ほどのご指摘との関係でいけば、こういった業務についての法的な安定性というものを高める効果も併せ持っているのではないかと思っております。

代引と収納代行につきましては、金融審議会の取りまとめの中でも、「今後に向けた課題」と位置づけられているものであると承知いたしておりまして、問題意識は抱きつつ、その時その時のプラグマティック(実利的)な、ベストな解決策を模索していくという対応になっていくかと思います。

問)

JDC信託の件で、追加で1点教えていただきたいのですが、今の既存のお客さんが、他の信託銀行とかに資産の委託先を移そうとしているときに、JDC信託の顧客だったという理由で拒否されているというケースもあるようなのですが、これに関し、金融庁として今後、どのような対応をとっていかれるのか教えていただきたいのですが。

答)

ご指摘のような事例を、現時点において我々として承知しているわけではありませんが、これも一般論として申し上げれば、信託契約を締結するかどうかは、それぞれの契約の当事者間でよく交渉し、決めていただくということだと思いますけれども、受託する信託会社においては、取引関係について何か形式的なファクターがあるからといって、そこだけに着目して機械的に判断するのではなくて、顧客の実態、あるいはその信託契約の中身に応じた対応を工夫していっていただくことが望ましいと思っております。

これとの関連でいきますと、JDC信託に対しては、私どもの業務改善命令の中で、「受益者と協議の上、信託契約の解消、受託者の変更その他受益者保護のために必要な対応を速やかに実施すること」というものを求めているところでございまして、監督当局としてそのあたりの実施状況を注視していきたいと思っています。

問)

金商法の中身でもう一つ、金融ADR(金融分野における裁判外紛争解決制度)の関係があったと思いますが、最近でも、金融をめぐる苦情はなかなか減らずに高止まりというか、過去最高ぐらいになっていますし、一方で、あっせんというものは、なかなか進まない状況にあると思います。法律ができて、今後、そういう苦情処理とか、あっせんの形を、金融庁としてはどのように取り組んでいくのか教えていただけますでしょうか。

答)

金融庁の大きな行政目的の中に利用者の保護、投資家の保護ということが入っているというのはご案内のことでございますが、具体的なオペレーションのあり方として、顧客との間で不適切な取引などを行った業者に対して規制をかける、監督する、実態調査して問題があればそれに対応する、業者に対して金融庁・監督当局が対処するということが、これまではいわばメインストリーム(本流)の対応であったわけです。このことは、当然大きな効果をもたらしてきていると思いますが、他方で行政当局は業者の不適切な顧客対応を問題とすることはできますが、個別の事案について一つずつ「これは業者側に理屈がある」、「これは利用者の側、被害を受けた消費者の側に理屈がある」という形で、一件ずつ個別に対応していくということは、当局にはできないということでございます。

そういった中で、今回この金融ADRの枠組みが整備されたということは、金融行政における利用者保護政策の一つの画期的な出来事であったと思っております。つまり、金融サービスを提供する側と、それを購入する側との間の当事者間でのいわば分権的な問題解決が図られる仕組みになるということでございまして、この仕組みが公正・中立に、かつ効率的に運営されていくということは極めて重要であって、そういう信頼性の高いADRの枠組みが速やかにできていくということを強く期待しているということでございます。金融庁としては、その具体化に向けた必要な法令上の手当をするということはもちろんでありますけれども、その後、具体的に、当面は業態ごとのADR機関ですが、それが設立されていく過程、また設立された後の運営のあり方について、強い関心を持ってフォローしていきたいと思っております。

問)

先週、イギリスのFSA(金融サービス機構)のターナー会長が来日されて、長官と会談されていると思いますが、長官からその概要と、特に最近自己資本規制の関係でいろいろ国際的な議論がありますが、日本の金融庁としてターナー会長に主張したことというか、お話しになったことを教えていただけますでしょうか。

答)

海外の規制・監督当局の方々との意見交換というものは、バイラテラル(二国間)のものとマルチラテラル(多国間)のものを日常的に行っておりますが、その具体的な議論の内容を公表するということは一般的には行っておりませんので、ごく概要だけお答えしたいと思います。

様々な話題について意見交換いたしましたが、その中には我が国の90年代の金融危機の経験、あるいは今般のグローバルな金融危機における我が国の対応といったようなことをお話し申し上げ、その中から我が国として学んだ教訓のようなものについてもお話しいたしました。また、現在進行中のグローバルな金融規制のあり方についても率直な意見交換をしたということでございます。

自己資本比率規制については、これは普段私がいろいろな場でお話ししていることですが、規制当局の観点から見ると、自己資本というものは銀行が予想を超えた損失の発生に直面したときにその損失を吸収するバッファーであって、それがしっかりしていることによって銀行としての健全性が保たれ、存続可能性、業務の継続性が高まるというものであるので、いわばその自己資本の果たしている基本的な役割に着目したバランスのとれた議論をすることが大事だというようなことを、私からは申し上げたかと思います。

問)

先週末、協同組織金融機関の(あり方に関する)ワーキング・グループが、小口の融資に特化した新制度の創設ですとか、信金(信用金庫)・信組(信用組合)の制度の統一化などの業態見直しについて、根本に遡った多面的な検討が必要という中間報告を出しましたが、それについてのご見解をお聞かせいただけますでしょうか。

答)

先週19日金曜日、協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループにおいて、中間論点整理を取りまとめていただいたということでございまして、そこでは協同組織金融機関の本来的な役割というものが、地域金融及び中小企業金融の専門金融機関としての金融仲介機能の発揮にあるということが掲げられていると思います。

今、ご質問の中で触れていただいたような消費者向けの金融、それから地域に密着した零細・中小企業向けの金融、そういったことはそこに当然含まれてくるのだろうと思います。そういう分野で金融仲介機能がしっかりと発揮されるということは大変大事なことだと思っており、いわばその発揮に当たって阻害要因になっているものとしてどんなものがあるかということを特定しつつ、一層の機能発揮のための方策や、制度、環境整備のあり方をご提言いただいていると受け止めております。

その中には、現行の枠組みの中でも実施することが可能な事項も含まれております。関係者の自主的な判断の下に、早期に取り組むことが望ましい事項も多く含まれていると伺っております。今後、そのような取組みを通じて、信用金庫・信用組合の本来的な役割が十全に発揮されることを期待したいと思っております。

問)

金融危機を受けて、与党では過去に、というか現在もですが、株式の買取りが議論されて議員立法という形になっていますが、そういった臨時・異例の緊急の政策対応から、平時の金融政策対応に移行、復帰する時期について時期的なめど、あるいは現下の状況をどう分析されているのか、このあたりをお話しいただけますでしょうか。

答)

これも、いつも申し上げていることでありますが、危機に対処するための臨時・異例の様々な措置、この中には公的セクターによる支援というものもかなり含まれておりますし、金融機関への資本注入の枠組みといったこともその中に分類可能であろうかと思います。こういった臨時・異例の措置というものは、足元の状況が危機的な状況にある場合には必要とされるものであり、タイムリーに行われることは実体経済の底割れを防ぐという意味からも大変重要なことだろうと思っております。

他方で、そのような臨時・異例の措置を漫然と、例えば恒久的に続けるといったようなことになってしまえば、市場規律が失われる、あるいはモラルハザードが蔓延するといった副作用も予想されるということでございまして、そういった副作用も意識しつつ、しかし、危機対応上必要不可欠であるということの範囲内で、現状、施策が組み立てられているということだと思います。

したがって、漫然といつまでも続けていくという心構えではないのは一般的にそうですけれども、それではどういう形で、どういうタイミングで、どれくらいのスピードでその辺を修正し、平時に戻していくかという点については、まずはこの足元の状況を丁寧にモニターし、分析し、その上で検討していくということだろうと思います。一時期に比べると、金融市場の状況、また一部実体経済もやや落ち着いたというような評価も出ているようでございますが、他方で、下振れリスク、リスク要因はまだまだ存在しているというのが現在の状況であろうかと思いますので、出口戦略については、勉強はしつつ、それを具体的にどのように実施に移していくかというものは相当慎重に考えていくべき課題だと思っています。

(以上)

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