英語版はこちら新しいウィンドウで開きます

佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成21年6月29日(月)17時02分~17時35分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私からは特にございません。

【質疑応答】

問)

(6月)26日から27日にかけまして、スイス・バーゼルで金融安定理事会、FSBが設立総会を開きました。これは、FSF(金融安定化フォーラム)を拡大する格好で発足した機関でありますが、日本の金融当局として、その運営や将来の金融規制を巡る議論にどのように貢献されていくのか、また、9月のG20首脳会合(金融・世界経済に関する首脳会合)をにらみましてどのような報告をされるのか、その活動の方向性について長官のお考えを伺えればと思います。

答)

6月26日、27日にスイスのバーゼルで、金融安定理事会(FSB、フィナンシャル・スタビリティ・ボード)としての最初の総会が開催されました。これはご案内のとおり、以前に存在していたフィナンシャル・スタビリティ・フォーラム(FSF)を拡充し、格上げした形で発足したものであります。

この中で、組織面では、このFSBに運営委員会、ステアリング・コミッティを設置すること、また3つの常設委員会、スタンディング・コミッティを設置すること。この3つというのは、脆弱性の評価、規制・監督上の協調、そして基準・規範の実施といった担当でございます。

内容的には、例えば世界のマクロ経済見通し等につきまして議論が行われて、金融市場に改善の兆しは見られるものの、システミックな強靱性を強化するための政策の実施をやり遂げることが重要であるといったことが確認されました。さらに、先般のロンドン・サミット(第2回金融・世界経済に関する首脳会合)での合意に関する進捗状況の報告なども行われたと承知しております。

金融庁は、これまで、このFSFの作業部会に我が国を代表して一貫して参加をしてきておりまして、昨年4月のいわば記念碑的なFSF報告書の策定をはじめ、監督カレッジの設立をめぐる議論や、本年4月のFSFにおける、例えばプロシクリカリティ(景気循環増幅効果)に関する提言であるとか、あるいは国際的な危機管理の原則等の策定、といったことに積極的に貢献してきたところでございます。今後は、このFSBの下に設立された、先ほど申し上げた運営委員会(ステアリング・コミッティ)、これがFSF作業部会の役割を担っていくとも考えられます。このステアリング・コミッティのメンバーなどとして、金融規制・監督の国際協調に関する議論に引き続き積極的に貢献していきたいというふうに思っております。

来たる9月のG20首脳会合において、FSBからどのような報告がなされるかについては、確たることは申し上げられませんが、金融規制・監督の再構築について、これまでの首脳会合等で各国際機関や各国において取り組むべきとされた事項の進捗状況について、FSBが中心となって今後取りまとめられるものと予想しております。

いずれにいたしましても、これまでの首脳会合等で確認されてきた具体的方向性を踏まえ、金融危機の再発防止・金融システムの強化という、いわばグローバルな目標に向け、各国が連携し、これまでの合意について国際的に整合性を持って、かつ実効性のある形で着実に進めていくことが確認される、そういうことが大事だというふうに思っております。

金融庁としては、今後とも各国当局や国内の関係当局等と連携、協調し、金融危機の再発防止・金融システムの強化に向けた国際的な議論に積極的に参画していきたいと思っております。

問)

先般、先週の金曜日でしたか、銀行等保有株式取得機構の買取り対象の拡大などを盛り込みました、「改正・銀行株式保有制限法」が参議院で可決、成立いたしました。この改正法の成立にあたりまして、長官として期待されることを改めて伺えればと思います。また、新たに買取り対象に加わりました上場不動産投信、J-REITと呼ばれるものですが、この具体的な買取り基準等について、ご見解があれば伺えればと思います。

答)

議員立法として提出された「銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律」が、先般6月26日に成立しました。これを受け、金融庁としても関係政令・命令等の整備を行い、早急に制度を実施に移していきたいと思っております。

同法は、先般の参議院財政金融委員会における附帯決議を受け、本年3月に株式の買取りを再開した銀行等保有株式取得機構の更なる機能強化を図るために、機構による買取り対象を優先株・優先出資、ETF(上場投資信託)、J-REITといったところまで拡大することを内容とするものでございます。

今般の世界的な金融市場の混乱の経験から、銀行等による有価証券の保有には、急激な価格変化等を通じて財務の健全性に大きな影響を与えるリスクがあることが改めて認識されたものと考えております。各銀行等では、こうした経験や教訓を踏まえて、有価証券保有にかかるリスク管理を一層的確なものにしていくための具体的な方策を講じていくことが重要だと考えております。

金融庁としては、このような各銀行の有価証券保有にかかるリスク管理についての自主的な取組みの一環として、今般の改正でさらに機能強化が図られた機構による有価証券の買取り制度が積極的に活用されることを期待しております。

なお、J-REITの買取り要件については、今般の改正にあたり衆・参の各委員会で付された附帯決議をも踏まえ、内閣府令においてその具体的な内容を定めることとしております。例えば、銀行等が6か月以上継続して保有していること、発行体にトリプルBマイナス(BBB-)以上の格付が付与されていること、発行体がその規約において主として国内にある不動産を資産運用の対象として定めていること、こういったことが予定されております。

問)

金融機関への行政処分に関する質問です。先週ですが、シティバンク銀行や三菱UFJ証券など、金融機関の行政処分が相次ぎました。中身は、マネー・ローンダリング(資金洗浄)の点検ですとか顧客情報の管理といった、金融機関として基本的な業務に属する分野で重大な不備が見つかったということなのですが、この件に関して長官としてどのように受け止めていらっしゃるか、伺えればと思います。

答)

先週は、25日に三菱UFJ証券、26日にシティバンク銀行に対する業務改善命令等が発出されました。

多少繰り返しになりますけれども、三菱UFJ証券について申し上げれば、顧客情報等の流出事案の発覚以降、報告徴求命令に対する同社からの報告書や、同社が設置した調査委員会の報告を踏まえて検討したところ、「個人顧客情報の管理をはじめとする内部管理態勢が十分でない」という事実が認められました。これを受けまして、同社に対して情報セキュリティ管理態勢の充実・強化等を図るため、金融商品取引法に基づく業務改善命令、また個人情報保護法に基づく勧告を発出いたしました。

シティバンク銀行につきましては、これは平成16年9月の業務改善命令においても改善を求めていたところですが、マネー・ローンダリングをはじめとする疑わしい取引の届出義務を的確に履行するための態勢が整備されていないという実態が確認されました。これを受けまして、本年7月15日から1か月間、個人金融部門における販売業務を一部停止するように命じ、また同時に、現行の経営管理態勢・内部管理態勢等を抜本的に見直し、再整備するため、所要の業務改善命令を発出したところでございます。

こういった事例の発覚などに関連いたしまして、ここのところ証券界・銀行界において、本件のような情報漏えい事案であるとか、あるいは職員によるインサイダー取引への関与などといった情報管理に関連した不適切事例が相次いでおります。こういった状況を踏まえまして、両業界に対して6月25日に「情報セキュリティ管理等の徹底について」という要請文を発出したところであります。

もとより金融機関は、金融仲介機能、市場仲介機能を担っている大変公共性の高い主体でございます。またその中で顧客情報というものは、金融取引の基礎をなすものでありまして、個人情報保護の観点からもその適切な管理が極めて重要でございます。さらに口座等の不正利用を防止する観点からも、法令等遵守態勢を適切に構築していくことが重要であります。

いずれの事案につきましても、金融庁としては、今回の業務改善命令等を受けた両社が、業務運営・管理態勢の見直しを行い、再発の防止に努めることを強く期待するとともに、他の金融機関においても、経営陣のリーダーシップの下で、類似事案の発生防止のため、内部管理態勢の一層の強化に努めていただきたいと思っております。

問)

その情報管理に関連することではありますが、先般、公認会計士のインサイダー取引に関連しまして、当該会計士に対して課徴金と業務停止の処分を出されたかと思います。これと同時に、インサイダー情報を会計士に提供していたとされる大手証券会社の社員も、懲戒解雇という処分を会社から出されました。金融商品取引法には、法令違反がなくても投資家保護の観点などから、必要な場合には行政処分を発動できるという第51条の規定がありますが、この大手証券会社に対する今後の行政対応を金融庁としてはどう考えていらっしゃるのか、伺えればと思います。

答)

6月23日、公認会計士によるインサイダー取引事案に関しまして、行為者である公認会計士に対する課徴金納付命令を決定するとともに、同人に対して、公認会計士法に基づき、業務停止3か月の懲戒処分を命じたところでございます。

本件については、市場の公正性・透明性の確保のため公共的な役割を担っている公認会計士が、インサイダー取引を実行したものであること、また、市場仲介者として公共的な役割を担う証券会社の元社員が、公認会計士に対してインサイダー情報を提供していたことが認定されておりまして、こういった事案が生じたことは、誠に遺憾でございます。

この大手証券会社、野村證券への対応について申し上げれば、同社に関してはご案内のとおり、昨年も同社元社員のインサイダー取引による逮捕・起訴の事案が発生しておりまして、その際、金融庁は、同社が業務の多様化・国際化を進める中で、法令違反とまでは言えないまでも、内部管理態勢に不十分な点があったということで、昨年7月3日に、同社に対して内部管理態勢の整備等についての業務改善命令を発出しているところであります。

今回の事案は、昨年の業務改善命令の対象となった事案と同じ時期に発生しているものでございます。同社は、これまで業務改善命令を受けたこと等から、内部管理態勢の改善に取り組んできているわけでございまして、金融庁としては、こうした点も踏まえて、同社に対して、同社として行ってきている対応状況について、今回の問題をカバーできているのかどうかといった趣旨での報告を求めたところでございます。昨年の業務改善命令等を踏まえた同社の内部管理態勢の改善状況を、引き続き、注意深く見てまいりたいと思っております。

なお、先ほども申し上げましたように、証券界・銀行界においては、こういった情報管理に関連した不適切事案が相次いでいることから、25日に要請文を発出したということでございます。

問)

その処分の関係でシティバンクの件を聞きたいのですが、シティバンクは、長官が監督局長の時代だったと思いますが、そのときにも重い処分をして、当時の五味長官は、要するに「企業風土と企業統治(ガバナンス)の問題」で「最低限のことができていな」いということを言っていたにもかかわらず、改善ができていないということで、ちょっとほかの事案と悪質性なり経緯が違うと思いますが、当時も携わった長官として、今回の処分に対してどのような感想をお持ちでしょうか。

答)

当時確認されました事案の深刻さというものに対応して、当時として相応の厳しい処分をしたというふうに認識をしております。

今回明らかになったことは、平成16年の処分を受けてそれなりの対応に努めてきていたということはあるわけですが、問題は、計画を作ったり、あるいは組織上の枠組みを作ったりということはある程度やっていたものの、その実質を担う取組みの実効性が極めて不足していた、ずさんであったということであろうかと思います。今度こそ名実ともに実効性のある取組みをしていただき、その上でその取組みが持続するような、しっかりとしたチェック・アンド・バランスの仕組みを含めて、取組みを本当に真剣に進めていっていただきたいというふうに思っています。

問)

計画を作っただけで実質性を伴わないという改善状況だったと思いますが、金融庁はそれに対して改善計画を了承して、結果的にそういう実体を伴っていなかったものを見過ごしていたという状況になると思います。その結果、暴力団関係者の口座が数百件あるとか、実際に不正な取引も行われた可能性が高いとなると、金融庁の監視体制、監督体制もやはり結果責任を負わなければいけないと思いますが、それに対してはどうでしょうか。

答)

ご案内のとおり、金融行政の手法としては確認された事実に基づいてその悪質性、重大性、深刻さなどに即した行政対応をその都度行うということがまずあって、その後に、一般的には業務改善の取組みを業務改善計画という形でまとめてもらって、その計画の実施状況というものを一定期間フォローアップしていくと、こういう枠組みになっているわけでございまして、一般論になりますが、極めて限られた行政資源をできるだけ優先順位の高い事案に振り向けながら取り組んできているということであります。そういう取組みの中で、本件については、結果的に実効性が欠けていたという点についてはとても悔しく思っております。

問)

話題は変わり足利銀行の関係ですが、一時国有化が終わって野村グループの下で再出発してから間もなく1年となりますが、足利銀行のこの1年間の経営再建というか、その動きをどう評価されているのか、長官の見解をお願いします。

これに関連して、地域金融機関、地銀・第二地銀・信金・信組含めて、不良債権増加が見込まれるなど経営環境は厳しい状況にあると思いますが、改めて地域金融機関についての長官の現状認識についてお願いしたいと思います。

答)

民営化後の足利銀行の経営状況につきましては、一般的に言えば概ね想定された範囲内で経営がなされているということかと思います。特段、深刻な問題が起きているといった報告には接しておりません。

それから、地域銀行全般についての経営環境は、ご指摘のとおり実体経済の悪化、あるいは地域経済の疲弊、これは地域によってばらつきがある面もございますが、そういったことを要因として、一般的な傾向としては与信コストが上昇していく要因というのはあるということだろうと思います。そういう中で大切なことは、それぞれの銀行がリスク管理をしっかりと行いながら、債務者企業に対する様々な経営上のアドバイスなども含めて債権管理をしっかりと行っていく、またそういったことを行っていく中で先を見通しながら早目早目の対応をしていくということであろうかと思います。そういう意味ではいつも申し上げていることですが、リスク管理、財務の健全性の維持ということと、リスクテイク、金融仲介機能の発揮、実体経済を支えると、こういう役割とのバランスをしっかりととることに努めていっていただきたいというふうに思っております。

問)

FSBの関連で、「国際的に整合性のある規制を」というお話なのですが、国際的に相当、金融規制をめぐる議論というのは本格的に始まっていると思いますが、そうはいいましても各国地域の規制の多様性というのが非常に出てきていると思います。それを許すような話になっているかなと思いますが、例えばイギリスの自己資本規制とか流動性の規制が強化されたりとか、アメリカでもFRB(連邦準備制度理事会)の下に大手金融機関の監督が一元化されて、その後に自己資本比率規制も見直すというお話になっていますが、それぞれ各国の独自の規制に動いている一方で、国際的な影響というか、そういうのもなかなか議論されないでいるのではないかなと思いますが、例えば非常に言葉は悪いですが、「金融保護主義的な動きが出ている」という人もいますが、こういう現状についてどのようなご見解をお持ちか伺えればと思います。

答)

「金融保護主義的な行動は慎むべきである」というのは、たしか4月のロンドン・サミットの首脳宣言にも入っているわけで、ある程度国際的に共有されている重要な留意事項であると思っております。

それからもう一つ共有されている大きな目的意識というのは、今回のような金融混乱、金融危機を再び生じさせないような強靱な金融システム、金融市場を作らなければいけないと、こういう目的意識でございます。それを我が日本も当然のことながら共有しているわけですが、その共有を前提としつつ、ただし、金融機関のリスク・プロファイルというのは個々の銀行ごとに異なる面がある、あるいはその銀行が営業を行っている国、地域、市場によってある程度差が出てくるということも事実でございまして、そういった金融機関ごとの多様性、あるいは市場、国ごとの多様性といったことにも注意を払いながら、できるだけ国際的に整合性のある、かつ、将来再び今回のような混乱を起こさせないような実効性のある金融規制の枠組みを作っていくということが大事であると思っております。

そういった心構えで、我が国としてもこれまでもそういう心構えでやってきていますけれども、今後とも国際的な議論に積極的に参画していきたいというふうに思っています。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る