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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成21年7月13日(月)17時01分~17時31分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私からは特にございません。

【質疑応答】

問)

まず株価なのですけれども、一時1万円台をうかがう水準まで上がっていた株価が、今日は9,000円台、9,050円でしたか、終値の水準まで下がってきています。経済の先行きに再び不透明感が出てきていて、かつ、アメリカ経済の行方にも若干懸念が出てきています。金融庁としての現状認識、そして、改めて何か対応を検討されるということがあるようでしたら、以上よろしくお願いいたします。

答)

我が国経済の現状については、政府としての認識が月例経済報告で示されております。先月の月例経済報告では、基調判断として、「景気は、厳しい状況にあるものの、一部に持ち直しの動きが見られる」というふうにされたわけです。ポジティブな要因としては、在庫調整圧力の低下であるとか、あるいは経済対策の効果が景気を下支えするといったことが挙げられておりましたし、また一部、対外経済環境が改善することも挙げられていましたが、他方で、ネガティブな要因としては、生産活動が極めて低い水準にあるということで、雇用情勢の一層の悪化が懸念される、といったことが挙げられておりましたし、また、世界経済の景気下振れ懸念というのも存在しているということで、景気を下押しするリスクが存在するという点も掲げられておりました。

また、米国経済については、「景気は後退しており、金融危機と実体経済悪化の悪循環により、引き続き深刻な状況にあるが、収縮のテンポが緩やかとなる兆しが見られる」というふうにされておりました。

ちょうど、本日、18時前後に今月の月例経済報告が公表される予定と承知しております。金融庁としても、その内容もよく勉強して、引き続き内外の経済・金融動向等について情報収集に努めていきたいと思っております。

金融庁としては、従来から申し上げておりますように、現下の厳しい経済情勢の中で、金融セクターによる金融仲介機能の発揮が一層重要になっていると認識をしておりまして、企業等の資金繰りを支えるということで、そのためのいくつかの施策を講じているところでございます。

我が国の金融市場や一部実体経済については、一時期に比べればやや落ちついたというような評価も見られますが、他方で、先ほど申し上げたような下振れリスクも存在し、また、このところ株価や為替のボラティリティ(変動幅)も大きくなってきているということでございます。金融庁としては、引き続き内外の金融・資本市場や企業金融の動向を注意深く見ていく必要があると思っております。

問)

関連してですが、アメリカの不良債権買取りスキームの概要が公表されまして、当初の想定より買取り規模が小さくなるなど、最初の予定とは違った計画になってきていますが、このことでのご所見をお願いします。

答)

このプログラムは、金融機関のバランスシートから不良資産を取り除き、クレジット・フローを改善する、また、証券化商品を対象とするプログラムの場合には、特に証券化市場の機能の回復を通じて、金融システムの安定化・機能向上を図るものというふうに位置づけられていると承知しております。

言うまでもなく、この米国の取組みは、米国における金融混乱を緩和するという目的で行われている一連の施策の一環であると思っております。また、何度か講演等の機会で私からも申し上げていますが、我が国自身の不良債権問題のときの教訓の一つとして、不良資産をバランスシートから切り離すことによって、将来追加的な損失が顕在化するという因果関係を絶ち切るということが重要だという教訓があったわけですけれども、その教訓に沿ったものと捉えることもできるかと思っております。

今回の米国のプログラムで規模が縮小したことについては、人によっては、金融機関による資本調達がある程度進展して、公的資金の活用も含めてですけれども、それが進展をして、不良資産の切離しというニーズが相対的に低下したのだ、というようなことをおっしゃる方もいらっしゃいますが、おそらく、このプログラムの今後の展開が、米国の金融システムの今後の安定化への道筋の中で評価されていくことになるのではないかと思っております。

問)

今日、解散総選挙の日程が決まりまして、政局が、今、非常に流動的なところにあるのですけれども、この金融行政に対する影響、もろもろ何か考えられることがあるでしょうか。

答)

政局について、コメントする立場にはございません。

いずれにいたしましても、金融庁としては、引き続き、金融行政の3つの大きな目的、すなわち、金融システムの安定、利用者の保護・利用者利便の向上、そして公正・透明で活力ある市場の確立、こういった目標に向かって当面の諸課題にしっかりと取り組みつつ、進んでいくということが大事だと思っております。

問)

今日で最後の長官会見になりますので、先ほどベター・レギュレーション(金融規制の質的向上)についての総括の発表もいただいていますけれども、この2年間を改めて振り返られまして、今までにない時代、金融行政の対応が迫られた時代だと思いますけれども、改めてそのご感想をお願いできればと思います。

答)

長官在任中の全般的な感想については、明日、新旧長官の交代の会見が予定されておりますので、そのときに若干お話をしたいと思います。

ベター・レギュレーションの進捗状況というのを今日発表して、3回目のプログレスレポートを発表させていただきましたので、それについて若干触れさせていただきたいと思います。

ベター・レギュレーションにつきましては、一昨年の夏に私が長官に就任して以降、一貫した金融行政の大きな政策課題と位置づけて推進してきたテーマでございます。万般の取組みがなされているわけですけれども、その中で、分かりやすい例として申し上げれば、例えば、これは昨年の4月だったと思いますけれども、金融サービス業の皆さんと議論を重ねた上で、プリンシプル・ベースの監督の基軸となる14項目の主要なプリンシプルについて共通認識を持ち、これを共有し、そして対外的にも公表させていただいたといった出来事がございました。

金融検査の面では、ベター・レギュレーションの第二の柱で、優先課題への効果的対応というのが入っていたと思いますが、それとの関係で、金融検査については、「重要なリスクに焦点をあてた検証」であるとか、あるいは、「検査結果に対する真の理解(納得感)」などといった、基本的な5項目を検査マニュアルの冒頭部分に掲げまして、検査運営の質的な向上に取り組んできております。その成果として、金融機関との間で率直で建設的な議論ができる関係が、少しずつではありますけれども、着実に構築されつつあるのではないかと感じております。

それから、今の第二の柱との関係では、サブプライム・ローン問題に端を発するグローバルな金融危機への対応の中で、この問題の分析を早い段階で行い、この問題に対して重点的に行政資源の投入を行った、その中で、我が国金融システムへの影響を把握・分析する、あるいは、欧米で発生した大手金融機関の破綻など、そういった出来事に対しても、それが我が国の金融システムを不安定化させることがないように注意深い対応に努めた、さらには、金融セクターそのものは、我が国の場合相対的に健全ですけれども、実体経済が大きなダメージを受けていたという、この我が国特有の状況も踏まえまして、金融の円滑化、実体経済を支える金融と、そういう観点からの各般の措置を講じたといったこともございましたし、また国際的な広がりのある問題でございますので、海外当局との連携・意思疎通が格段に強化され、密度の高いものになった、その中で、監督カレッジの開催なども行われたといったことがあったかと思います。

こういったことで、このグローバルな金融危機とベター・レギュレーションとの関係について、あえて申し上げれば、このサブプライム・ローン問題が典型的に意識されたのは一昨年の8月でございますので、金融庁として、ベター・レギュレーションへの取組みを、いわば明示的なパッケージとして取り組み始めた時期と概ね同じでございまして、予想外に早く、このベター・レギュレーションの真価が試されたのだなというふうに、振り返って感想を抱きます。

リスク・フォーカス、フォワード・ルッキングな対応という話、あるいは、行政対応の透明性・予測可能性の向上といった話、あるいは具体的な対応として、市場動向を的確に把握する、それを監督にいかしていくといったこと、また海外当局との連携・協力の強化、情報発信の強化、こういった項目が、先ほど申し上げた、このグローバルな金融危機への対応の中で実施されてきた、あるいはそういう対応が不可避になったという形で、言ってみればベター・レギュレーションの取組みが、実地に、予想外に加速されて具体的な取組みになっていったということかなという感想を抱いております。

問)

先週、リレーションシップ・バンキング(地域密着型金融)のこれまでの進捗状況についてまとめた発表をされていましたけれども、平成15年からいろいろ取り組んでこられて、これまでの取組みの状況と、今後もし課題があるとすればどのようなところにあるとお考えか、いかがでしょうか。

答)

これは、ここのところ数年間にわたって、金融庁として一貫して取り組んできたテーマでございます。

地域密着型金融、あるいはリレーションシップ・バンキングというテーマでございますけれども、先般公表させていただいたその進捗状況というものに即して申し上げれば、地域金融機関の取組み状況として、融資先企業の経営改善の支援、中小企業再生支援協議会の活用、金融機関独自の再生計画策定による事業再生支援、担保・保証に過度に依存しない融資などの様々な取組みが行われてきており、また蓄積がなされてきていて、これまで総じてみれば相応の実績が上がってきていると思っております。また、金融機関の中には、こうした取組みが融資先中小企業にとって役立つというだけではなくて、金融機関自らの財務の健全性や収益性の向上につながってきているといった認識を持っていただいているところもございました。

他方で、先般発表した中で、いわば今後に向けた課題として意識される項目として「目利き能力」というのがあったかと思います。リレバン全体については、積極的評価が引き続き5割程度になっているということなのですけれども、「目利き能力」、すなわち企業の将来性や技術力、あるいは潜在的な力といったものを的確に評価をして、それを信用供与、あるいは事業再生支援等々にいかしていくということですけれども、この「目利き能力」に関しては、消極的評価が51%、積極的評価が23%ということで、取組みがなお不十分という評価というふうに解釈されるかと思います。

したがって、今後、地域金融機関においては、この「目利き能力」をさらにレベルアップしていただいて、借手企業の経営実態や特性に応じたリスクテイクとリスク管理をきめ細かく行って、創意工夫を凝らした取組みをさらに進めていっていただくことを期待したいと思っております。

問)

先ほどベター・レギュレーションの話で、金融危機を受けて、実地に試されたと、真価が試されたということだったのですけれども、その結果どのように評価されたか、要するに、今までの取組みは有り体に言えば何合目ぐらいに位置するのかというような認識を教えていただけるとありがたいのですけれども。

答)

ベター・レギュレーションの取組みというのは、言ってみれば大きな方向性を示しているものでございますので、目標となるその到達点というものがあらかじめ設定されているものではないということでございます。大きな、ああいった改善の方向というものを明確に意識しつつ、その時々の課題に取り組んでいく、そのときに行政目的に対して、行政手段、政策手段を割り当てていく、その取組みの仕方、行政手法を改善していくということでございますので、いわば継続的な取組みであって、いわば終わりのない努力の方向性ということですので、何合目といった評価は難しいかなと思っております。

いずれにいたしましても、今般のサブプライム・ローン問題を契機とするグローバルな金融危機の中で、まさに昨年の夏の時点で、今後に向けた努力の方向感というのが具体的に必要になったといった感想を申し上げたという程度であります。

問)

ベター・レギュレーションの関係なのですが、金融機関の自律的な規制なり改善を求めるということなのですけれども、はっきり言って、自律的なことができていないところも目立つと思うのです。検査で「ばれなきゃ黙っておけばいい」と、逆に処分件数が下がることによって、金融庁にばれない限り黙っておけばいいという弊害みたいなことも想定されると思うのです。そのあたり、ベター・レギュレーションが抱える問題点とか、金融機関の取組み不足みたいなことについてはどのようにお考えですか。

答)

「ばれなきゃいい」というような発想で業務を行っている金融機関に対しては、相対的にルール・ベースの対応が多くなっていくと、これは結果としてそうなっていくと思っております。

ベター・レギュレーションの第一の柱は、「ルール・ベースの監督とプリンシプル・ベースの監督の最適な組合せ」ということでございますので、その最適な組合せというのは、おそらく監督対象である金融機関によって、あるいは事案の個別ケースごとに、その性格に応じて組み合わせ方は異なっていくのだろうと思っております。

したがって、昨年の4月に、この14項目の主要なプリンシプルをともに議論し、共有することのできた業界、特にその中で大きな存在感のある業者については、当然のことながら、このプリンシプルというものをしっかり抱いていただいていると思っていますので、そのプリンシプルに則って対応していただくということが金融行政を進めていく上でも最も効率的であり、かつ、効果的なものだと思っております。

ルールをとりあえずクリアしているので、この水準でいいのだ、ということではなくて、顧客の保護、あるいは顧客の利便性向上という観点から、さらに付加価値をつけていくことはできないか、ベストプラクティスを狙っていくと、そういう取組みが促される枠組みというのは、実効性の高い行政の中で非常に重要な要素だと思っております。

また、ルールを破っても見つからなければいい、といったような意識のところには、ルール・ベースでの対応が将来適用されていくということですので、そういった、金融機関自身による、よい方向での努力をすると、それがいわば報われると申しましょうか、金融行政上の評価にも差が出てくる、あるいは、一番望ましいのは、それが顧客のより大きな信頼に結びついていって、商売も繁盛し、企業収益の更なる向上に結びつくといった因果関係が意識されるという世界が目標かなと思っております。

(以上)

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