三國谷金融庁長官記者会見の概要

(平成21年8月24日(月)17時00分~17時23分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私からは特にありません。

【質疑応答】

問)

先週、本事務年度の監督方針が発表されました。狙いとか重点項目について改めて教えていただけますでしょうか。

答)

ご案内のことかと思いますけれども、金融庁におきましては、監督に当たりましての重点事項を明確化するために、事務年度のできるだけ最初の時期に監督方針を策定・公表することとしているところであります。本事務年度におきましては、8月18日に公表させていただきました。

中身でありますが、大きく基本的に「金融危機の経験と今後の金融監督の基本的考え方」ということの認識を記した上で、その後、重点事項といたしましては、リスク管理と金融システムの安定、それから円滑な金融仲介機能の発揮、それから顧客保護と利用者利便の向上、ということで全体を概ね構成しているところであります。もちろん、主要行、それ以外にも地域金融機関、金融商品取引業者、保険会社、様々でございますが、大きくそういった構成でございます。

最初の基本的な認識と申しますか、「金融危機の経験と今後の金融監督の基本的考え方」ということにつきましては、これはやはり、昨事務年度は、サブプライム・ローン問題に端を発します国際的な金融市場の混乱の影響が金融市場にとどまらず、世界経済全体に及ぶ1年となった、といった一つの認識がございますけれども、そういった状況の中で、ベター・レギュレーションの考え方を踏まえながら、金融危機への対応に取り組んできておりまして、その考え方の重要性が再認識されたと考えているところであります。

こういったことを踏まえまして、その大きな基本的な考え方の中でも4点ほど申し上げますと、1点目は個々の金融機関や金融システムに内在するリスクを早期に発見するリスク感応度の高い行政、2点目は顧客保護や利用者利便の一層の向上に向け国民の目線・利用者の立場に立った行政、3点目は短期的な対応にとどまらず、国際的議論の動向も十分把握しつつ環境変化を展望し、中長期的な対応も並行して行う将来を見据えた行政、4点目として率直かつ深度ある対話や情報発信等を通じ金融機関の自主的な経営改善・経営判断に資する行政、といったことを基本的な考え方のところで述べているところであります。

その上で、何点かの重要項目のうち、まず「リスク管理と金融システムの安定」というところでは、例えば、経営陣による主導性と強いコミットメントの下でのリスク管理や財務基盤の強化を促しつつ、当局としても、マクロ経済等の動向と金融仲介機能や銀行財務の健全性との間の相関関係を認識して、金融システム全体の持続的・安定的な発展が見込めるかといった洞察にも努めること、次に、「円滑な金融仲介機能の発揮」として、例えば、中小・中堅企業をはじめとした借手企業を巡る経営環境は引き続き厳しいことから、金融機関による適切かつ積極的な金融仲介機能の十全なる発揮を促していくこと、それから、「顧客保護と利用者利便の向上」という点につきましては、例えば、金融機関による顧客保護・利用者利便の向上に向けて、情報セキュリティ管理の徹底、顧客への説明態勢の充実、相談・苦情処理態勢の充実といった点について重点的に監督すること、といったことをうたっているところでございます。

私どもといたしましては、こういった監督方針及び監督指針等を踏まえながら、各金融機関の自助努力や創意工夫が行われまして、そういった中で、実効性のある監督行政、それからすぐれた金融システムというものが適正に運営されていくことを願っているところでございます。

問)

株価の回復などで、メガバンクとか地方銀行を含め自己資本比率が回復傾向にあると思います。一方で、国際的な自己資本の規制強化の動きであるとか、不良債権処理費用の増加も見込まれていて、資本増強が今後求められていくということもあるかと思います。資本増強のあり方について、メガバンクと地方銀行のそれぞれについて教えてください。

今日もみずほとかSMBCがSPCなりを使って優先出資証券を出すというような発表もあったかと思いますが、それにも触れていただければと思います。

答)

まず、21年6月末の自己資本比率でありますが、これは3メガバンクがそろって連結で11から13%程度となっておりまして、それから、自己資本比率を公表している地域銀行の多くにおきましても、21年3月末に比べて上昇したと承知をしております。8月21日までに、地域銀行109行のうち68行が6月末の自己資本比率を公表しておりますが、このうち58行が上昇しているといった状態であります。

この公表されました自己資本比率を見ますと、やはり一つには株式市場の回復によりまして、有価証券評価差損、これが大幅に改善されたということ、それから各行における自己資本増強の取組みなどが、プラスの影響を与えたものと理解しているところであります。

それから、ご指摘のとおり、今日、三井住友フィナンシャルグループが優先出資証券を発行することを公表したと承知をしておりますし、それから、みずほフィナンシャルグループも優先出資証券の条件決定に関する公表を行ったと承知しております。

今後の自己資本比率ということでございますが、これは今後の経済動向にも影響されるところが多いかと考えております。そこで経済動向ということを見ますと、グローバルな金融市場の状況が我が国の金融システムそのものの健全性に与える直接の影響は、欧米と比較して相対的に限定されていると考えておりますが、他方、我が国の景気は、このところ持ち直しの動きも見られるものの、依然として厳しい状況にあり、今後についても、実体経済の下振れ等のリスクが存在していると考えているわけでございます。

ただ、そういった中で、言うまでもなく自己資本は、積極的なリスクテイクの基盤でありまして、市場の信認を得るための基礎であります。

主要行、地域銀行を問わず、ただ今申し上げましたような経済状況や国際的な議論を踏まえた将来のストレスに対する実質的な耐性を高める観点から、自己資本の充実に努めていくことが重要であると考えております。私どもといたしましても、各金融機関に対して、自己資本の充実に向けた取組みを促していきたいと考えております。

問)

次に、保険会社についてですが、保険会社は株価回復基調で含み益も戻ってきたということで、ソルベンシー・マージン(比率)も上昇しているかと思います。また一方で、国際的なソルベンシー・マージン比率の算出方法の厳格化とか、そういう規制をより厳格化しようという動きもあると思います。保険会社についても、そういう銀行の自己資本比率と同様に健全性向上が求められていくと思いますが、そのあたりのお考えはございますでしょうか。

答)

まず、足もとの平成21年6月(期)の決算の状況を見ますと、平成21年の3月(期)、前年度末に比べまして、やはり株価の回復によりまして含み益が拡大するなど、全体としてソルベンシー・マージン比率が上昇していると承知をしております。

ただ、このソルベンシー・マージン(比率)の件につきまして、これは先ほど質問がありました平成21事務年度の保険会社向けの監督方針の中におきまして、ソルベンシー評価の見直し等にも触れているところでございまして、2点であります。一つは、ソルベンシー・マージン比率について、まずは現行制度の枠組みの下で、最近の金融市場の変動等も踏まえ、リスク評価の精緻化等の改善に取り組むという点、それから、もう一つは、もう少し時間軸が長い話でございますが、国際的には現在、保険監督者国際機構におきまして経済価値ベースでのソルベンシー規制等の検討が行われておりまして、我が国としても、中期的には、こうした国際的な議論も踏まえつつ検討をしていくこととしているところでございます。

こうしたソルベンシー規制の信頼性向上に向けた取組みを行いながら、引き続き保険会社に対しましても一層の健全性の向上に向けた取組みを促していくこととしたいと考えております。

また、昨年度におきましても、保険会社におきまして、増資等の様々な努力が行われたわけでございますけれども、こういった保険会社の健全性につきましても、今後、取組みを促していきたいと考えているところでございます。

問)

本日、北海道銀行と北陸銀行の金融持株会社のほくほくフィナンシャルグループが、早期健全化法に基づく公的資金の完済を発表しました。各注入行、返済に苦労しているところもあるわけですけれども、およそ1年前倒しで返済を表明したということについてのご見解をお聞かせください。

答)

ご質問のとおり、本日、ほくほくフィナンシャルグループからの公的優先株式、これは約199億円でございますが、この処分の申出がありまして、預金保険機構が、これを承認したと承知しております。預金保険機構の場合には、いわゆる「3原則」というものがございまして、1点目は経営の健全性の維持、2点目は国民負担の回避、3点目は市場への悪影響の回避という、この3原則に則して判断するわけでありますが、これらに照らしまして検討を行った結果、承認されたということでございます。

これによりまして、買入償却の完了、これは8月27日の木曜日になるかと思いますが、これをもって、当社の公的資金は全額返済されることになるものであります。

金融庁といたしましては、今後とも、公的資本増強行が様々な経営努力によりまして十分な財務基盤を維持しながら、それぞれの資本政策などに取り組んでいくことを通じまして、各行の経営の健全性の確保、そして金融システムの安定、あるいは公的資金の返済、こういったことが図られることを期待しているところでございます。

問)

今日、株価が、一時落ち込んでいたのですけれども、また年初来というか、高値が戻ってきました。前回のときにも幹事社質問で聞いたのですが、足もとの状況と、一段と出口戦略への注目が高まってくると思いますが。

答)

本日、日経平均が、342円85銭上がったということでございますが、他方、先週1週間を見ますと、1週間で359円13銭下がっております。株価の動向でございますので、様々な市場の関係者がポジティブに見る要素、それからネガティブに見る要素、様々なことがいつも入りまじるわけでございます。

それにつきまして、行政として、その水準や背景、要因につきまして、断定的なコメントを申し述べることは差し控えたいと思いますが、本日の相場につきまして、市場関係者の見方ということで、ヒアリングベースでどういうことが言われているかということだけを申し上げますと、一つは、朝方は、前週末から続きました欧米株式市場の大幅高、あるいは円高の一服等で、輸出関連株を中心に買いが入る、あるいは、海外商品市場が堅調なことから、やはり、素材・資源関連株の上昇が目立ったという話、午後は、アジア株式市場も総じて堅調に推移したといったことかと思います。

ただ、相場の動向につきまして、私どもの方から、今後につきまして断定的なことを申し述べることは差し控えさせていただきたいと思いますが、引き続き、内外の動向を十分注視してまいりたいと考えております。

問)

週末、一部の報道で、長官が、金曜日に日銀の副総裁とお会いになって会合が開かれたということがあったのですけれども、かねて長官は日銀との連携に努めていくというお話がありましたけれども、この会合の狙いと、今後もこういう形で開かれていくのかどうか、その辺の背景等々を教えていただければと思います。

答)

これは、まさしくご質問のとおり、こういった世界的な経済情勢の中で、私どもも昨年から、日銀とは緊密に連携を取り合ってきましたし、また、海外当局とも緊密な連携を取り合ってまいりました。その連携の必要性は一層高まっているということでございまして、したがいまして、私と、それから日銀の副総裁を含む幹部間で、幅広く連携を強化する観点から、定期的あるいは必要に応じて意見交換を行うということで、そういった会を持った次第でございます。

これからも、四半期に1回ぐらいは行いたいと思いますし、また必要があれば、それ以外ということもありますでしょうし、また、私と副総裁ということだけではなくて、これは普段から様々なレベルで意見交換しておりますので、こういったことにつきましては、さらに努めていきたいと考えております。

問)

最初の監督方針の関係で、今年はリスク管理の部分が金融危機の影響を受けて充実されるというのと、同時に、リスクテイクの部分、円滑化というところで、去年は、どちらかというとリスクテイクの方を当初は重視されていたかなと思うのですけれども、一般的に考えると、やはりこの概念で二つは基本的に反対の話であって、そのときに、やはり金融機関にしてもどちらに重きを置いているのかと結構迷うところだと思うのですけれども、多分、金融庁としての答えは両立ということだと思うのですが、長官としては、これはどう実際の現場で両立して、金融というものをやっていってもらいたいと考えていますか。

答)

まさしく金融セクターの役割というものは、一つには金融仲介機能を果たし、また金融システムの安定というものを図っていくということかと思います。こういった現下の情勢の中におきまして、金融システムの安定というのは、金融セクターのみならず、実体経済、そういったものの安定とお互いに支え合うところがあるわけでございまして、したがって、金融機能の円滑化という側面に着目しましたリスクテイクとリスク管理、それから自らの財務の健全性、これを両立させていただくということが非常に大事かと思っております。このことにつきましては、相対峙するという概念のみで捉えることではなくて、やはりそういった中で、金融セクターと実体経済の好循環を目指していくということも必要でございまして、昨年来、様々な形でこういう取組みを行ってきているところでございます。

今回の監督方針におきましても、そういった観点から、このリスクテイクとリスク管理の適切なバランスの確保が重要な現在の経済状況に鑑み、借手企業に対する円滑な資金供給の確保と、金融機関自らの財務の健全性の維持とが両立する状況を目指していく、としているわけでございまして、このことに向けまして、また各金融機関も取り組んでいっていただきたいと思っているところでございます。

問)

先ほどの、日銀の幹部との意見交換の件なのですけれども、もう少し具体的に話し合う内容とか、あるいは話し合われた内容を教えていただけるとありがたいのですけれども。

答)

それぞれの立場で、様々な情報交換をするということでございますので、個々の内容について、どういう話をしたかということは差し控えさせていただきたいと思いますが、幅広く、やはり日銀さんとは、それぞれの立場で様々な情報を常に交換していくという必要性から、そういった連携が一層強まっているという観点から、こういった会合を開いているということでご理解いただければと思います。

問)

金融検査について、外部有識者による評価委員会設置というのが、6月公表のアクションプラン II に盛り込まれていたと思うのですけれども、これを今打ち出されている理由、これまでやられてこなかった理由と併せて教えていただけるとありがたいのですけれども。

答)

この報道されている第三者機関の話につきましては、現時点でその設置自体や検証の具体的な枠組みを決めているということではございませんが、一般的な考え方といたしまして、金融庁としては、金融検査等に対しまして、金融機関などから、不信や誤解を受けることがないように、今後とも、検査運営等についての考え方をきめ細かく説明するとともに、ベター・レギュレーションの実践を徹底して、双方向の議論や率直な対話に努めていく必要があると考えております。

現在、金融検査につきましても、ベター・レギュレーションの取組みを進めておりますが、その更なる浸透を図るための施策の一つとして、外部の方の目線で、金融検査の取組状況の点検や施策の提言を行っていただくことは有意義と考えておりまして、今後、具体的な枠組み等について検討してまいりたいと考えておりますが、現時点で、その設置自体や検証の具体的な枠組みを決めているということではございません。

(以上)

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