参議院財政金融委員会における麻生財務大臣兼金融担当大臣の所信表明

(平成27年3月19日)

(はじめに)

財務大臣兼金融担当大臣の麻生太郎でございます。今後の財政政策等につきましては、先般の財政演説において所信を申し述べたところでありますが、本委員会において重ねて所信の一端として、財政政策及び金融行政等の基本的な考え方について申し述べます。

(日本経済の現状と財政政策等の基本的な考え方)

安倍内閣では、日本経済の再生に向けて、「三本の矢」の政策を一体的に推進してまいりました。こうした政策の下で、有効求人倍率は二十二年ぶりの高水準となり、企業の経常利益は過去最高水準となるなど、「経済の好循環」が確実に生まれつつあります。

こうした成果を地方に広く早く行き渡らせるために、「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」を迅速かつ着実に実行してまいります。

また、三年目に入った安倍内閣の重要課題として、人口減少の克服と地方の創生に本格的に取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かして、自律的で持続的な社会を形成することを促してまいります。

さらに、経済の好循環を確立するためには、昨年末の政労使会議における三者の共通認識を踏まえ、賃金引上げの流れを継続するとともに、生産性の向上や賃金体系の見直しを進めていくことが重要です。

あわせて、コーポレートガバナンスの強化や法人税改革、岩盤規制の撤廃など、攻めの姿勢で成長戦略を果断に実行し、日本経済を確実な成長軌道に乗せてまいります。

民需主導の持続的な経済成長を実現するためにも、また、日本銀行が現在取り組んでいる金融緩和を円滑に進める上でも、財政の持続可能性を維持することは必要不可欠です。

しかし、公的債務残高がGDPの二倍程度までに累積するなど、日本の財政は、極めて厳しい状況にあり、引き続き、歳出・歳入両面における最大限の努力を行わなければなりません。

消費税率の一〇%への引上げは、経済状況等を総合的に勘案し一年半延期することといたしました。その上で、社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場及び国際社会における国の信認を確保するため、景気判断条項を付すことなく、平成二十九年四月に消費税率の一〇%への引上げを確実に実施いたします。そうした状況をつくり出すという決意の下、経済運営に万全を期してまいります。

そして、国と地方を合わせた基礎的財政収支を二〇二〇年度までに黒字化するという目標をしっかりと堅持し、その達成に向けた具体的な計画を本年夏までに策定することとしております。その策定に当たっては、安倍内閣のこれまでの取組をさらに強化し、デフレ脱却・経済再生、歳出改革、歳入改革の三つの柱を軸に検討を進めてまいります。

これらの取組を通じて、経済再生と両立する財政健全化を実現してまいります。

(平成二十七年度予算及び税制改正の大要)

続いて、平成二十七年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。

平成二十七年度予算は、経済対策・平成二十六年度補正予算や平成二十七年度税制改正とあわせ、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算です。地方創生、子育て支援など、日本の諸課題への対応を強力に推進するとともに、社会保障の「自然増」を含め聖域なく見直しを行い、歳出の徹底的な重点化・効率化を図っております。こうした取組により、平成二十七年度予算は、新規国債発行額が平成二十一年度当初予算以来の三十兆円台となります。また、公債依存度は約三十八%に下がるとともに、二○一五年度の財政健全化目標を達成する予算となっております。

平成二十七年度税制改正におきましては、デフレ不況からの脱却・経済再生に向けた税制上の対応、地方創生に係る税制上の対応、消費税率一〇%への引上げ時期の変更、BEPSプロジェクト等の国際的取組を踏まえた税制上の対応、震災からの復興支援のための税制上の対応等を行うこととしております。

具体的には、成長志向に重点を置いた法人税改革として、課税ベースを拡大して税率を引き下げることで、企業が収益力を高め、賃金引上げに積極的に取り組むよう促してまいります。消費税につきましては、税率一〇%への引上げ時期を平成二十九年四月とすること等としております。さらに、住宅取得等の資金に係る贈与税の非課税制度の延長・拡充や地方拠点強化税制の創設等を行うこととしております。

(今後の金融行政の在り方)

続いて、現下の金融行政について申し述べます。

冒頭に申し上げた安倍内閣の「三本の矢」を一体的かつ強力に推し進めていくにあたり、地方をはじめ、日本全体で資金が円滑に供給されるよう、直接金融と間接金融のそれぞれが、適切に資金仲介機能を発揮していくことが重要です。

このため、金融機関に対しては、担保や保証に必要以上に依存することなく、企業の事業性を評価した融資等に一層積極的に取り組むこと等を促してまいります。

また、適格機関投資家等特例業務をめぐる昨今の状況を踏まえ、成長資金の円滑な供給を確保しつつ、投資者の保護を図るため、適格機関投資家等特例業務について、所要の制度整備を行うこととしております。

このほか、アジア諸国への金融技術支援に全力をあげて取り組むとともに、国際金融規制改革にも積極的に貢献してまいります。

現在、日本の金融システムは、総体として健全であり、安定しておりますが、内外の経済・市場動向や、それが日本の金融システムに与える影響につきましては、引き続き、高い関心を持って注視してまいります。

(提出法律案の概要)

今後、御審議をお願いすることを予定している財務省関係の法律案は、「所得税法等の一部を改正する法律案」、「関税法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案」及び「株式会社日本政策投資銀行法の一部を改正する法律案」でございます。

また、金融庁関係の法律案は、「金融商品取引法の一部を改正する法律案」でございます。

法律案の詳しい内容につきましては、改めて御説明をいたしますので、よろしくお願い申し上げます。

(むすび)

以上、財政政策及び金融行政等に関する、私の考えの一端を申し述べました。今後とも、皆様のお力添えを得て、政策運営に最善を尽くしてまいる所存であります。

古川委員長をはじめ、委員各位におかれましては、御理解と御協力をお願い申し上げます。

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