渡辺内閣府特命担当大臣繰上げ閣議後記者会見の概要

(平成19年11月22日(木)17時51分~18時21分 場所:金融庁会見室)

【大臣より発言】

本日の閣議後の閣僚懇談会において、私の方からの報告を申し上げます。

サブプライム・ローン問題の影響についてであります。読み上げます。

「この夏以降、国際金融市場に深刻な影響を与えているサブプライム・ローン問題に関連して、平成19年9月期の我が国金融機関におけるサブプライム・ローン関連証券化商品等の保有に関する計数を取りまとめましたのでご報告いたします。

サブプライム・ローンは、米国住宅市場で、約150兆円を占めるといわれ、証券化・二次証券化され、世界中の投資家によって購入されております。

このようなグローバルな保有状況と比較すると、我が国の預金取扱金融機関全体のサブプライム・ローン関連商品等の保有は限定的であり、9月末時点で、約1兆3,000億円であります。また、評価損、実現損は、それぞれ約1,100億円、約1,200億円となっております。

9月末以降、一部金融機関において追加の損失を見込んでおりますが、これら金融機関の自己資本、40兆円規模や業務純益、6兆円規模等に照らせば、全体としてみれば、これらの商品等にかかるリスクについては、十分対応可能と考えられます。

したがって、現時点において、サブプライム・ローン問題が、我が国の金融システムに深刻な影響を与えるような状況にあるとは考えておりません。

他方、グローバルな金融市場の混乱は続いており、欧米を中心として、その影響もサブプライム・ローンと直接係わりのない証券化商品等の市場にも広範に及び、欧米金融機関の一部が巨額の損失を公表しております。

この問題を巡り、市場の正常化にはある程度の時間が必要であると言われていますが、金融庁といたしましては、引き続き警戒を怠ることなく、このような金融市場の動向等について注視してまいります。」という報告をいたしました。

私の方からは以上です。

【質疑応答】

問)

サブプライム・ローン問題ですが、市場としては(株価が)1万5,000円を割れ、為替も109円台~108円台に突入ということですが、サブプライムの影響についてどのようにお考えでしょうか。

答)

これは、前回も申しあげたかと思いますが、欧米やその他の市場でお金の具合が少し変調をきたしているのだろうと思います。どこまで影響が及ぶかということについて、まだ、見極めがよくできていないあたりに不安の根源があると思います。したがって、我々としてはそのあたりはよく警戒をしながら見ていかなければならないと思っております。一方、日本の経済は拡大基調を続けているわけでございまして、日本の株価については、売られすぎではないかという声が多いのも事実でございます。私としては、現在、サブプライム・ローン関連、あるいは、その他の証券化商品、CDOも含めて、こういったものが日本の金融システムに大ダメージを与えるという状況にはなっていないと、繰り返し申し上げてきております。いずれにしても、油断大敵でございますので、引き続き、警戒を怠らずにこの問題とは取り組んでまいります。

問)

本日、足利銀行の受皿候補選定について、譲受条件の提出が締め切られました。こちらの選考の現状と今後のスケジュール感についてお聞かせください。

答)

本日、譲受条件等の提出を受けました。提出を受けて、信用機構対応室において、その内容について審査を行ってまいります。金融庁としては、いつも申しあげるように、第三段階においても第一段階、与謝野大臣の時から維持されてきた方針、即ち「金融機関としての持続可能性」、「地域における金融仲介機能の発揮」、「公的負担の極小化」の三原則に基づいて、粛々と、厳正に、かつ公正に審査を行ってまいります。

問)

スケジュールの目途というか、見通し感は如何でしょうか。

答)

厳正かつ公正にやってまいりますので、目途については今のところ申し上げられません。

問)

サブプライム関連と思われますが、株から債券の方に資金が流れて、長期金利がここ数年にないほど低くなっております。大臣は先ほど、サブプライム関連は一時的な影響しかないということをおっしゃられましたけれども、長期金利が比較的低いという現実について、どういった背景にあって、どのような影響がありますでしょうか。

答)

一時的な影響とは申し上げたつもりはないのですが、要するに、この問題が正常化するには、ある程度の時間はかかるということは、かねて申し上げてきたとおりでございます。したがって、お金の流れが日本だけでなく、例えば、アメリカでも長期金利が相当低い水準にまできているのかと思います。よく、マーケット関係の方々がJGB(国債)10年物とTOPIXがちょうど1,000倍ぐらいの関係だという話がよくございますが、長期金利が下がる、債券価格が上昇することと、株価が下がることとの間にどういう関連があるのかは申し上げられませんけれども、いずれにしても、日本だけの事情でこうしたマーケットの状況が起こっているのではないところに厄介さもあるし、警戒もしなければいけないところもあるのだろうと思います。

問)

足利銀行の譲受についてですが、これまでもどの陣営がですとか、細かいことは発表されておりませんが、今日受けられた陣営からの譲受条件をご覧になって、最終選考をこれから進めていくわけですが、条件をご覧になって、率直な感想をお聞かせください。また、金額だけでは当然見ないと思いますが、その中でも経営者、人材の面で銀行経営の経験がある方が入った方がいいというお考えでしょうか。その辺の、今後の経営体制についてもお聞かせください。

答)

まず、譲受条件の詳細について、私はまだ、報告を聞いておりませんので情報が全くございません。本日提出があったという報告を聞いているだけでございます。また、受皿の経営体制というのは、まさに、受皿が自ら判断をするわけでございまして、こちらとしては、先ほど申し上げました三原則に則っているかどうかという判断をするわけでございます。今までのいろんな議論も踏まえて、地元からのご要望等も承ってまいりましたので、そういったことは受皿候補において判断をされるものと思います。

問)

一点、足利銀行関連の質問ですが、「公的負担の極小化」というのがありますが、今後、債務超過額、受け渡しする時の債務超過額を預金保険機構が穴埋めするかと思いますが、この際に国民負担というのは発生するのでしょうか。預金保険の中からなのか、危機対応のお金として出るのか、そのあたりの国民負担について教えてください。

答)

足利銀行の決算について、詳しく聞いておりませんので、国民負担が発生するかどうかということについては、お答えをいたしかねます。一般論として、債務超過部分について、受皿にいく場合には預金保険法第102条3号措置によって、埋め合わせが行われるわけであります。その手法については、受皿の譲受条件に係わる問題もあろうかと思います。そのあたりは、今日、今ここで申し上げられる段階にはないということでございます。

問)

サブプライム問題に関連してですが、7月ごろから随時、状況把握を続けてこられたと思いますが、把握してきた過程で増えているようなところもあるかと思いますが、こういうふうな全体、個別、いろいろ含めて、増えている状況をご覧になって、ご感想をお願いします。

答)

増えているといいますか、サブプライム関連のものから、非関連のCDO等に広がっている状況はあろうかと思います。ただ、それぞれの金融機関において、適時適切に開示をしていただくことが大事なことでございまして、ヒアリング等を通じて、そういった状況については把握に努めているところであります。ですから、全く予期せざる損失が突然出てきたというような状況には全くなっていないわけでして、先ほども申し上げましたように、全体として見ればこういった商品のリスクについては、現時点では十分対応可能な状況にあるということが言えるのではないでしょうか。

問)

この段階で公表されたねらいというか、お考えも合わせてお聞かせください。

答)

これは総理の指示もございまして、我が国の金融機関のサブプライム関連証券化商品がどういう影響を与えているか、こうした問題も含めて内閣の中で情報を一元的に収集して、ことにあたるようにというお話でございましたので、今日、それを閣僚懇で報告をしたということでございます。

問)

今日午後、与党と野党による党首会談が行われましたけれども、閣議もしくは閣僚懇でそれに関する説明があったのでしょうか。それから、小沢党首が政策協議について拒否をしたということなのですけれども、今後の見通しについて大臣のお考えをお聞かせ下さい。

答)

党首会談の中身については、官房長官にお聞きいただきたいと思います。来週から、参議院の補給支援法の審議が始まるわけでありますが、我々としては中東情勢その他にかんがみれば、この補給支援法は是非とも今国会で成立させたいという思いでございます。

一方、この前のお見合いが破談になってしまったわけでして、そういたしますと、政策協議、まずはお友達からということがあり得るのだろうと思いますが、こういうことを提案しても、乗ってきていただけないとすれば、それは非常に残念なことだと思います。やはり、国会で透明な議論をするのは大変大事なことですけれども、国会の議論だけで政策協議が行えるという代物でもないと思います。ですから、議事録を取らない席でいろいろな話をし、それを公開の席でさらに行っていくということは大いにあり得るのだろうと思います。例えば、私の行革大臣の任務などは、これから独法の整理合理化計画が大詰めにきておりますし、また公務員制度の全体パッケージもそろそろ佳境にさしかかってきていますので、そうした問題については、大いに政策協議をやりたいなという思いはございます。ですから、政策領域ごとに協議を行う機会ができると私としては大変ありがたいと思っております。ただ、そういう提案をしても乗ってきていただけないとすれば、それは大変残念なことであります。

問)

行革の関係で、公務員の再就職を支援する官民人材交流センターですけれども、今、政府の懇談会の方では、非営利法人をあっせん対象に入れるかどうかということで賛否が分かれていましたけれども、大臣自身の見解をお聞かせ下さい。

答)

これは、有識者懇で精力的な議論をやっていただいていますので、それぞれのお立場で「ごもっともだ」と思う議論だと思います。ですから、これをトンネル機関化させないという思いは、どちらの意見も共通しているわけです。ですからこれは、田中座長がこの前仕切られたように、十分議論を尽くしていただきたいと思っております。

問)

新銀行東京の件なのですけれども、今日、代表執行役が代わりまして、港湾局長が就任することになるという方針のようです。1,000億のうち、累積損失が850億くらいに膨らんでおりまして、経営建て直しが求められている中で、銀行経験のないプロパーがずっとやっているという状況と新銀行東京の現状についてお聞かせ下さい。

答)

個別銀行についてはコメントいたしませんが、新銀行東京においては、6月に公表した「新中期経営計画」をベースに不良債権の抑制や経費削減に努めていると聞いています。引き続き新銀行東京の経営改善努力についてモニタリングは行ってまいります。一般論でございますけれども、ビジネスモデルが上手くいかないというところは、業績も芳しくないというだけのことなのでしょう。

問)

サブプライムの話なのですけれども、その保有が1兆3,000億円という規模感に対するご感想と、現在の実現損と評価損で足しても2,300億なのですが、これから拡大することも見込まれるかと思うのですが、拡大した場合、多少「たられば」ですが、日本への影響はどのような形になるのかという点についてお聞かせ下さい。

答)

先ほども申し上げたように、預金取扱金融機関全体で見ますと、実質業務純益が6兆円あります。また金融機関の自己資本が約40兆円あります。したがって、追加の損失が仮に出てきたとしても、そうしたリスクについては十分呑みこめるという状況だと思っております。

問)

(サブプライム関連の)損失ですけれども、昨日までの6大金融機関の発表ですと、来年3月期までに3,030億という数字もありますけれども、来年3月まで通期で見たときの損失見込み額並びに引当見込み額というのは、数字として把握しているのでしょうか。

答)

来年のでしょうか。

問)

来年3月期です。

答)

来年3月期の見込みについては、それぞれ発表しているのか、していないところもあるのでしょうか。そのあたりは私の方へ情報はきておりません。

問)

銀行株が下がっておりまして、公的資金注入行が含み損の状態になっております。そうした中で回収がなかなか難しい状況かと思われるのですけれども、返済の要請方針について教えていただきたいのですが。

答)

一般論として言えば、株価が下がるのは何らかの理由があって下がっているのでしょう。ですから、一般論でありますけれども、関連会社の業績が悪い、損失を出してしまったなどいろいろな理由があるのだろうと思います。また、今のように世界的な不安心理を受けて下がっているという側面も一部はあるかもしれません。ですから、個別行において対応可能な努力で企業価値が高まるというのは、経営者として当然努力をすべきことであって、その点は大いに努力をしていただきたいと思います。公的資金を投入している立場からしますと、そうした観点も踏まえて経営改善の努力を促していくということだろうと思います。

問)

明後日、土曜日が、山一証券が自主廃業発表をしてからちょうど10年という節目の時期にあたるわけですが、ここ10年の金融不安に対してどういった形で対応してきたのかということと、その金融不安の最後に当たる足利銀行がどういうふうになるのが理想的だと思われますでしょうか。

答)

金融不安というのは、10年前に突如起こったわけではなくて、平成4年くらいから始まっているわけです。いわゆる危機と言われるもの、金融不安と言われるものは実は1回2回だけではなくて、平成4年もあれば、平成7年の住専もあれば、平成9年の山拓ショックもあれば、翌年の長銀破綻もあればというように延々と繰り返されてきたわけです。その歴史の教訓というものを我々は学ぶ必要があると思います。だいたいその当時からプロはわかっていたわけでありますけれども、やはり流動性の危機の根底にはソルベンシーの問題があると。支払い能力に問題ありということだったと思います。

不良債権処理のトラックレコードも相当日本は蓄積をしてきているわけでございます。また、疑心暗鬼を解消するには、何が必要かというノウハウが沢山あるわけです。制度整備もきちんと行われ、不良債権比率も劇的に低下をしてきているわけでありますから、まさにこれから今起こっている世界のお金の不具合、変調状況については、日本はいろいろなノウハウを提供できる立場にあるのだろうと思います。この間も申し上げたように、SECのコックス委員長がIOSCOの会議に来られたときに、お茶飲み話でございますけれども、「是非、日本の教訓、ノウハウを教えて欲しい」と非常に低姿勢で言っておられました。こういうときには、ピンチはチャンスなのではないでしょうか。私のところの金融市場戦略チームのレポートが近々出されますので、乞うご期待でございます。

(以上)

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