英語版はこちら新しいウィンドウで開きます

茂木内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成20年9月16日(火)11時32分~11時54分 場所:金融庁会見室)

【大臣より発言】

今日、閣僚懇におきまして2点、1点は中小企業金融の円滑化に向けた直近の取組みについてご報告を申し上げますとともに、昨日来大きな関心を集めておりますリーマン・ブラザーズの問題について、私の方から閣僚懇で説明をさせていただきました。

リーマンに関しましては、米国の投資銀行第4位でありますリーマン・ブラザーズは住宅業や商業用の不動産証券化業務を拡大しておりましたが、サブプライム・ローン問題の発生・深刻化によって、仕入れたローンが証券化できにくくなるということによって経営不振に陥っておりました。同社は資産売却や増資を進める等の財務の強化に取り組んできたわけでありますけれど、市場の評価は厳しく株価が急落をいたしました。株価で言いますと、過去一年間の最高値が67ドルに対して先週は10ドルを割り込みまして、金曜日には3ドル59セントを付ける事態に至ったわけであります。この週末まで、アメリカのバンク・オブ・アメリカ、そしてイギリスのバークレイズといった他の金融機関によります救済買収等が検討されましたが、これも不成立に終わりまして、日本時間の昨日の午後、リーマン・ブラザーズの米国持株会社が倒産手続きの申立てを行ったわけであります。

我が国には同持株会社の下にリーマン・ブラザーズ証券株式会社がありまして、金融庁といたしましては、昨日、リーマン・ブラザーズの顧客等を保護するための所要の行政処分を午後3時に発出いたしまして、また、午後9時半には業務停止命令を発出させていただきました。

我が国の金融機関への影響についてですが、我が国の金融機関のリーマン・ブラザーズ等に対するエクスポージャー(リスクにさらされている額)、債権等につきまして、相当の確認を進めさせていただきました。その上で、現状におきまして、各金融機関の自己資本の厚みに照らして、我が国の金融機関の経営に重大な影響を与えるような事項は確認されていない、と報告をさせていただきました。

金融庁といたしましては、米金融当局が今後とも金融市場に重大な混乱が発生しないよう適切に対応することを期待するとともに、国内外の関係当局と連携し、国際的な金融市場の安定に向けて役割を果たしてまいりたい、と報告をさせていただきました。

閣議、閣僚懇の後、総理の方から招集がございまして、同じく官邸におきまして、官房長官、財務大臣、与謝野経済財政担当大臣、経済産業大臣、日銀総裁、そして、金融庁長官、財務省の篠原財務官、それに私も加わり、このリーマンの問題につきまして意見交換をさせていただきました。冒頭私の方から今申し上げたような説明を細かくさせていただいて、また、日銀総裁の方からも、全体としては、先ほど申し上げました我が国の金融機関に対する影響ということにつきまして、我が国の金融機関のリーマン・ブラザーズに対する債権等の保有状況を相当程度確認した段階において、各金融機関の自己資本の厚み等に照らして、我が国の各金融機関の経営に重大な影響を与えるような事項は確認されていない、と説明がございました。

ただ、国際金融市場は混乱の中にあり、更に警戒水準を高めて、米国における本件にかかる進展であったりとか、金融機関のリスク管理状況、様々な市場の動向につきまして、関係当局とも緊密に連携をとり、また、政府内におきましても各省庁で連携をとりながら、いかなる事態にあってもしっかり対応できるようにするということにつき、関係閣僚間で共通認識を確立させていただきました。

私の方からは以上です。

【質疑応答】

問)

今お話で出ましたリーマン・ブラザーズの経営破綻の影響ですが、一応、日本の金融機関に対して重大な影響を与えるものは今のところないというご発言がございましたけれど、とは言え、リーマン・ブラザーズが組成しました証券化商品等の影響が今後いろいろと波及してくる可能性はあると思うのですが、その更なる拡大等についてはどうお考えでしょうか。

答)

今後の事態につきましては、推移というものをきちんと見たいと思いますし、情報収集に努めてまいりたいと思っております。また、先ほど申し上げました金融機関への影響等につきましても、主要行のエクスポージャーが今どういう状態になっているか、それから地銀がどうであるか、また保険、それから生保、損保、更に申し上げると、大手の証券グループと、こういった形で、状況の把握はしっかりしているつもりであります。

問)

それと、閣議後の金融関係閣僚懇で総理から何かご発言等はありましたでしょうか。

答)

総理の方から、「状況につきましては理解をした」と、そういった中で、「関係閣僚がきちんと連絡を取って、いかなる事態に対しても対応できるように万全の措置を取って欲しい」というご指示がございました。

問)

結果として、現状、東京株式市場も急落し、為替相場の方も結果的に円高ドル安が急速に進んでいます。資本市場がかなり混乱しているのは現実に数字として表れているわけですけれども、こういった混乱が今後どれくらい続くというふうに大臣としては認識をお持ちですか。

答)

株式市場の今後について予想するということはなかなか難しいと思いますし、当局として、こういった問題につきましては従前からコメントを行っておりませんが、何にいたしましてもまず、アメリカにおきまして当局が市場の安定に向けて最大限の措置を取っているということが何よりも重要であると、こんなふうに考えております。

問)

大臣、リーマン・ブラザーズが破綻したことに対してご感想とか、ご意見を率直におっしゃっていただけませんか。

答)

米国で第4位の投資銀行ということであり、大変大きな事態であると考えております。そういった中において、今金融市場はグローバルにつながっているわけでありますから、まさに各国の当局間で更に緊密な連携を深めていくことが重要であると思っておりますし、また、我が国としても、警戒水準を高めて今後の状況というのを注視していきたいと思っております。

問)

日本法人も民事再生法の申請ということなのですが、それへの感想と影響についてお願いします。

答)

日本法人につきましては、先ほど申し上げましたように、昨日も休みでありましたけれど、金融庁の幹部総出で情報収集を行ってきました。投資家の保護を行うということを中心にしながら、午後の3時には財産保全、そして業務改善命令を出させていただきまして、また9時半には業務停止命令と、こういう形で取り得るべき措置は速やかに取ってきた、少なくともこの時点においてはそのように考えております。

問)

日本の金融機関のリーマン・ブラザーズ向けの債権、あるいは証券化商品のエクスポージャーの規模について、現状金融庁としてどのくらいの額を把握していらっしゃるのでしょうか。

答)

ご案内のとおり、一つの金融機関であったり、一つの企業の倒産等により、それ以外の例えば金融機関、それから企業に対してどういう影響が出るかということについては、従前から表には当局としては公表しておりません。ただ、そういった中で、エクスポージャー全体でどうなっているのか、融資、債権、デリバティブ、とこういう項目に分けまして、主要行はじめ先ほど言いました金融機関につきましては大方の状況はしっかりつかんでいるという思いであります。

そういった中で、先ほど申し上げたように、今の日本の各金融機関の自己資本の厚み等に照らして、少なくとも今日時点でつかんでいる情報からいたしまして、我が国の各金融機関の経営に重大な影響を与えるような事項は確認されておりません。

問)

2点あります。1点目はメリルリンチとBOA(バンク・オブ・アメリカ)の合併に関連して、もう1点はアメリカの大手保険会社AIGが資本増強ということがありましたが、何らかの影響が出た場合に、今後どのように対処するのかについていかがでしょうか。

答)

まず、バンク・オブ・アメリカのメリルリンチの買収につきましては、まさにこれは個々の金融機関の経営判断において行われたものでありますので、当局としてのコメントというのは差し控えたいと、このように考えています。

それから、AIGに関しましては、報道そのものについてはもちろん承知いたしておりますが、この段階では特段のコメントにつきましては差し控えたいと思います。

問)

閣僚懇の中で、今後、金融の不安がどのように実体経済へ影響を広げるのかについて、そういった話は具体的なところはどうでしたか。

答)

閣僚懇におきましては、そのような意見は出ておりません。その後も、先ほど申し上げた、総理の招集されました会議におきましては、当然アメリカと日本で状況というのは違うわけでありますけれど、アメリカの場合はサブプライムの問題が金融機関に影響を与えて、それが最終的には信用収縮につながる、そしてそれが実体経済に影響を及ぼすというのに対して、日本の状況は若干違ってくるわけでありますけれど、当然、今後の株価の動向であったり為替の動向、さらにまた、原油価格の動向、こういうものについては、今後足下の経済にも影響を与える可能性がありますから十分注視していく必要がある、ということで認識は一致しております。

問)

茂木大臣の方から閣議後の閣僚懇において、具体的にこういうことをやっていくと、ご説明されたのですか。

答)

先ほど申し上げたような全体の状況についての話を申し上げ、それから金融庁として昨日来取ってきた措置について説明をし、さらには、先ほど申し上げましたような、「日本の金融機関のリーマンに対するエクスポージャーがどのような感じなのか、こういうことについてしっかり把握をした段階で、今の日本の金融機関の資本の厚み等からして、少なくとも経営に重大な影響を与える事態には金融庁として接していない、把握していない」というふうに申し上げました。

問)

リーマンの日本法人に対してなのですが、昨日夜にかけて行政処分を出しましたけれど、今朝になって民事再生法を出したわけですが、それによって対応は若干変わることがあるのでしょうか。

答)

そういったことを想定した上で業務停止命令はかけさせていただきました。

問)

新たな対応というのはないわけですね。

答)

はい。

問)

金融関係の閣僚懇では、原油とか株価の状況を注視していくということで一致したということと、更に今後の対応で何かあれば各省で連携していくということで一致したと思うのですが、その他にこの懇談で一致したことは何かあるのでしょうか。

答)

基本的にはそういうことだと思います。冒頭申し上げましたように、いかなる事態になっても、迅速にしっかりした対応が出来るように、ということで閣僚の間の意見の一致を、総理大臣の下でみたということであります。

問)

確認なのですが、現状把握しているところで、各金融機関にとって重大な影響は出ないということなのですが、これは地域金融機関―地銀、第二地銀、信用金庫、信用組合―を含めてそういうご認識だということで受け取ってよろしいでしょうか。

答)

全体として、ということであります。

問)

エクスポージャーに関連してもう一つ質問なのですが、リーマン・ブラザーズの米国本社が裁判所に提出した資料で、日本の金融機関のエクスポージャーが8機関で16億7,000万ドルというふうに出ているのですけれども…。

答)

16億ドルということは…。

問)

1,753億円くらいなのですが、この中で、あおぞら銀行とみずほコーポレート銀行がそれぞれ、あおぞら銀行が4億6,300万ドル、みずほコーポレート銀行が3億8,200万ドルとなっているのですけれど…。

答)

もう一回言って下さい。

問)

エクスポージャーが、あおぞらが4億6,300万ドル、みずほコーポレート銀行が3億8,200万ドル…。

答)

それは、みずほコーポレート銀行ですか。

問)

そうです、裁判所に提出した資料によるとですが。

答)

もう一回言って下さい。みずほコーポレート銀行はいくらですか。

問)

みずほコーポレート銀行が3億8,200万ドル、新生銀行が2億3,100万ドル、旧UFJ銀行が1億8,500万ドル、三井住友銀行が1億7,700万ドルとあるのですけれども、金融庁としてはこの認識と一致しているのでしょうか。あるいは、違う金額を把握されているのでしょうか。

答)

個別の数字については、先ほども申し上げましたように、申し上げられません。ただ、数字については金融庁としてしっかり把握をしているつもりでおります。

問)

今言った主要行で総額16億ドルー1,800億円弱になるのですけれども、それくらいの金額ということでよろしいでしょうか。

答)

もう一回言って下さい。

問)

8機関、主要行で1,800億円弱ということですけれども、このくらいの金額でよろしいでしょうか。

答)

要するに、リーマン・ブラザーズに対してどれだけ与信を与えているか、という問題も確かに重要でありますけれども、与信の額だけではなくて担保等によってどれくらい取得出来るのか、また引当金の状況がどうなっているのか、そういったことは債務者の破綻処理の結果によって相当異なってくるのではないか、というふうに考えておりまして、このエクスポージャーだけを引き出して数字を挙げるということは、かえって誤解を招くのではないかと思っております。金融庁としては、エクスポージャーはもちろんでありますが、そこの中での保全の状況、融資に対する保全の状況も含めて、デリバティブに対してはどうかと、こういったこともしっかり把握をしているつもりでおります。

問)

大手行も含めまして、自己資本が著しく毀損する事態となる可能性というのは少ないということですけれども、いずれにしても、経営悪化というか、そういう可能性というものについて、大手も含めまして、今回の影響をどのように見ていらっしゃいますでしょうか。

答)

昨日の今日でありますから、この事態でどこまで経営に悪影響が出るか、ということについてはなかなか予測をし難い部分はありますが、少なくとも経営に重大な影響を与える、こういう事象であったりとか、事項であったりとか、数値というものは確認しておりません。

問)

各国の金融当局との連携体制なのですが、昨日までの情報交換はどういう形でやっていたのかということと、今後、どういう形で連携、情報交換されていくのでしょうか。

答)

当然、今はいろいろな通信手段もあるわけでありますから、ほぼ連日のように状況というのは意見交換をしていきたいと、こんなふうに思っておりますし、また事態の進展等によりましては、様々な形での協議ということが必要になってきたら、適時そういうことは進めていくということです。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る