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中川財務大臣兼金融担当大臣初閣議後記者会見の概要

(平成20年9月25日(木)02時43分~03時16分 場所:財務省会見室)

【冒頭発言】

改めましてこの度、財務大臣と金融担当特命大臣を拝命いたしました中川昭一でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。

【質疑応答】

問)

財務相と金融担当相兼任ということですが、財金分離が確立してから初めてのことになるのですが、過去の経緯を踏まえると問題点も多いのではないかという見方もあるのですが、大臣としてこの兼任に対するお考えをお聞かせください。あと、財金分離の今の仕組みを見直す考えがあるのかどうか、その点についてもお聞かせください。

答)

これは麻生総理のお考えでございまして、十数年前に財金分離をしたという経緯は私も承知をしているところでございます。ただ、ずっと日本の景気が私はデフレ状態から脱却していないと。そういう中で、食料品、石油製品等々の世界的な値上がり、それから国民の所得が依然として伸び悩んでいる、更にはここ1年位、アメリカ発のあるいは世界のきっかけとしてはサブプライムローン問題に端を発した証券化商品の大変なマーケットの混乱といった中で、日本としてはバブル崩壊という大変な辛い経験をした訳ですけれども、その結果としての影響が他の国々に比べると大きくない、しかし非常にデリケートな状況だと思っておりますので、そこはやはりオールジャパンできちっと対応を迅速にやっていくということが重要だろうということで、ある意味では財政と金融というのは車の両輪だと思いますので、そういう意味で総理がこういう形で責任者を一人、つまり私に任命をされたというふうに指示を頂いております。このことが即、財政と金融をまたひとつの行政の中に一体化するということに直接的にもうすぐ繋がっていくんだというふうには私は理解はしておりませんが、とにかく柔軟に対応をする非常にデリケートな時期だからこそ、総理のご判断でこういう形で私が任命されたというふうに考えております。

問)

過去の大臣のご主張を見ますと定率減税の復活とか2兆円の法人税の減税、政府系ファンドの創設、ある意味財務省が目を剥きそうな政策を幾つか提案されていると思うのですが、大臣としてこうした政策にこれからどういうふうに取り組まれるのかと、一方で歳出圧力の強いような内容の部分も多いのですが、財政再建との兼ね合いをどう考えているのかお聞かせください。

答)

財政再建というのは、必ずやっていかなければならないことだろうというふうに思っております。他方と言いましょうか、と同時にと言いましょうか、やはり先程から申し上げている日本の経済あるいは暮らしが非常に厳しいという状況の中で、やはり今まで輸出とそれに関連する設備投資がある意味では日本の経済を引っ張っていたわけですけれども、これも先程申し上げた理由で非常に心配な状況になってきている。ですから、赤字国債を出せとか私は言っているつもりではないんですけれども、やはり個人消費というもの、あるいは将来の不安に対する除去というものにできるだけやれることをやっていく。今回の8月中に与党で決めました緊急経済対策も早急に何とか実行していきたいと思いますし、またそれで駄目であれば必要に応じて適時適切に対応を取っていく、まさに機動的な対応というものが日本においても必要なのではないかというふうに考えております。重ねて赤字国債発行ありきということではないという前提で、今回の1.8兆円にしても、あるいは減税の問題にしても税制改正でこれからまた議論が幅広に行われますと思いますけれども、是非こういう形でやれることをどんどんやっていく必要があるんだろうというふうに考えています。

問)

財政運営の基本的な姿勢についてお尋ねします。小泉政権の後半以降、「基本方針2006」などで各分野の歳出削減の目標であるとか社会保障費の自然増の抑制であるとか数値の目標を掲げた上で、全体の財政についても2011年に基礎的財政収支を黒字化させるという目標をこれまで継続してきた訳ですけれども、この評価をお聞かせ願えますでしょうか。

答)

「基本方針2006」が基本で「基本方針2008」という二つの我々にとって非常に大事な基本的な考え方があります。我々としては引き続き何とか2011年に向かって努力をしていかなければいけないというふうに思います。他方2006年以降に発生している先程申し上げたような国際的な状況、あるいは国内的な状況というものもやはり事実として受け入れていかなければいけないことだろうというふうに思っておりますので、ここですぐ2006年の方針を捨て去るということでは決してございませんけれども、状況も変化をしてきているということも頭に入れながら、やはり国民の暮らし、仕事あるいは将来に対する展望というものが持てるような施策というものを、我々とすれば今やっていく必要があるのだろうというふうに考えています。

問)

消費税の問題ですけれども、様々な観点でこれまで議論があったのですけれども、大臣ご自身、この引上げの必要性についてはどのようにお考えでしょうか。

答)

例の年金の2分の1問題なんていうものを考えた時には、大幅な収入が無いとこれが実現出来ない訳でありますけれども、そういう意味でこの2006年の方針というものが、やはり税というものですね、幅広にこれから検討をしていくと。総理は先程、中川が考えるものだよとおっしゃったというやに聞いておりますけれども、なかなか難しい問題だと思いますけれども、皆で知恵を出してやっていくことが、これは避けて通れない議論だというふうに思っています。

問)

その消費税の絡みで、麻生総理をはじめ色々な方がおっしゃっているのは、目先の景気が非常に不安であると、これが回復するまでは消費税を上げるのは難しい、上げるべきではないという考えであるとすればですね、今大臣おっしゃったように基礎年金の国庫負担の2.3兆円はどう手当てするかという問題は避けて通れないわけですけれども、これをやるためにいわゆる埋蔵金と言われるような特別会計の積立金のようなものを活用すべきだという意見もあちこちから出ていますが、このやり方については大臣、どのようにお考えでしょうか。

答)

埋蔵金の議論というものは、私の理解しているところでは、埋蔵金を活用して、そして健全財政に持っていこうということではないかというふうに私は理解しているわけでありますけれども、我々としては、とにかく経済を良くしていくと。勿論赤字財政とか、あるいはまた2011年問題を捨て去るわけではないですけれども、やはり利用できるものは、今回も1.8兆円の中で相当工夫をして財源を確保しているわけでございまして、そこは私自身は、埋蔵金とか何となくイメージがこうはっきりしているようなしていないような考え方ではありますけれども、やはり活用出来るものは大いに活用して景気を回復させていくということが一番のポイントではないかというふうに考えています。

問)

今の消費税の絡みなのですけれども、政府の税制調査会とか、あと与党の税調においても、消費税を含む抜本改革というものに道筋を付けていくということが、これまでの議論の中で決まっていると。それを受けて、前任の伊吹大臣もまた閣内でも与謝野大臣とかが、例えば総選挙を行う場合には与党として将来の行程表、スケジュール表のようなものをまとめて、それを掲げていついつ頃に消費税を含む抜本改革をしますということを国民に示した上で選挙に臨むべきということを繰り返し強調されていました。この考え方について大臣はどのようにお考えでしょうか。

答)

来年からの2分の1の問題、あるいは2011年のプライマリーバランスの問題、いずれにしても目先にスケジュールというものがある、それを我々は捨ててはいないということですからね。年末からの税制改正議論も含めてですね、これはきちっとした議論をやっていくということは当然必要だろうと思っております。

問)

それは、この年末の税制改正論議の中で、将来の消費税引き上げ何時頃までにということを含めた抜本改革というもののスケジュールを決めるという覚悟だというお考えでしょうか。

答)

そういう前提で今物事が進んでいるんだろうというふうに理解してます。

問)

総選挙の前に、そういうものをある程度、年末の議論というものの前に総選挙があるのかもしれませんけれども、総選挙においてある程度の見通しというものを与党としてちゃんと掲げるべきだとお考えでしょうか。

答)

総選挙をするかしないかは、総理のご判断になろうかと思いますけれども、とにかく総理も私も景気を良くしていく、経済を良くしていくということが最も今国民から我々が期待というかやってもらいたいというふうな声、特に私は地方出身でございますのでそういう声を全国で聞くわけでありまして、やはり景気回復というものを最優先にして取り組んでいきたいと考えております。

問)

引き続き、税制につきましてお伺いさせて頂きたいのですけれども、市場参加者、金融界からの注目の関心の高いテーマであるのですが、麻生太郎新総理大臣が自由民主党の幹事長でありました8月の初めに少額貯蓄非課税制度、マル優の証券版の導入を唱えたことに呼応して、金融庁が8月の末に財務省に対して提示した来年度2009年度の税制改正要望で、いわゆる英国の個人の貯蓄口座、「ISA制度」に似た非課税口座制度を設けるとか、高齢者を対象にした配当金の非課税制度を盛り込みました。これは国税ベースで1400億円程度の減税効果があると試算されていまして、政府が推進している「貯蓄から投資へ」(の流れ)ないし投資活動を活性化させるものとして、市場の期待があると。ただ一方で、昨年末に政府・与党が合意した税制改正大綱では、その株式配当に適用している軽減税率10%を本則の20%に戻すと、2008年末で廃止すると明記されており、租税法の専門家からの間からも金融所得の一体課税など課税の中立性の観点から税制を複雑にするといった指摘もあがっていますが、税は政治と言いますけれども、財務省と金融庁、この要望側とそれをどうするか判断する側、両方を所管される大臣として、まさにこの問題にどう取り組んでいかれるかというあたりをお伺いしたいのが1点と、2点目は簡潔に、人事のあり方として、副大臣、政務官人事についても兼務するのが相応しいとお考えかどうか、この点について教えてください。

答)

若干の経過措置があると聞いておりますけれども、私は麻生さんの限定的な証券マル優制度は検討に値すると思っております。もちろん財務省あるいは金融庁というひとつの分担がありますから、その中でよく詰めて頂きたいと思います。私個人的には検討に値するというふうに思います。副大臣、政務官を2つの行政を兼務させるかどうかというのは、総理と相談した方がいいのかなと。総理のお考えをお聞きした上で、この問題を判断したいというふうに思っております。

問)

国際金融市場についての現状についてお伺いしたいのですが、今アメリカ政府の公的資金の投入スキームも含めまして、市場が落ち着きを取り戻すのではないかとの見方がある一方、依然として短期市場では混乱も続いています。国際金融市場についての現状についてどう見ていらっしゃるというのが1点と、来月開催予定のG7に、先ほど大臣は日本の金融システムへの影響はそれ程大きくないというふうにおっしゃいましたけれども、日本としてどのようなスタンスで臨まれるのか、以上2点お願いします。

答)

まず、世界的な約1年にわたるサブプライムローンに端を発した金融、あるいは場合によっては実体経済まで影響が及びかねない状況というのは、日本は大きくないと言っているのではなくて、他に比べれば、日本の経験もございますので、欧米に比べればそうでもないという比較の問題であって、我々も注意して見ておかなければならないことだろうというふうに思っております。それから、日本も短期資金を出しているやに聞いていますけれども、やはりこれは世界各国が協調してやっていくということが非常に大事なことですしね。さっきの官邸でサルコジ大統領のご発言もありましたけれども、そこまですぐやるかどうかは別にして、やはり特にG7、先進国、あるいはそれ以外でも金融にある程度の規模といいましょうか、影響力のある国々が協力してやっていくということは、私は非常に大事なことであり、非常に敏感に対応していく必要があるのだろうというふうに思っております。

問)

大臣、兼ねてから積極的な財政出動による景気刺激策をおっしゃっていますけれども、こういうやり方についてエコノミストとか専門家の中には、今の日本を取り巻く経済状況というのはサブプライム問題であるとか原油のような資源高とかそういう外的な要因が主な原因であって、国内の需要を創出するようなタイプの減税のような対策というのはあまり効果がないのではないか。むしろ将来の増税に繋がるとか、あるいは消費金利の上昇に繋がりかねない、そういう副作用がある、そういう意見もあるのですけれども、こういった考え方にはどのように捉えますか。

答)

あえて財源問題は切り離しができるかどうか別にして、財政出動という面で見れば、やはり日本はもっともっと積極的に技術力を増す、あるいは人材を育成するための民間あるいは国の努力、そしてそれに対する支援というものが必要ではないかと思います。具体的には人材育成、投資のための支援ということを私は常に考えております。更には災害対策もそう放っておけるものではない。今年も大都市で大変な水を中心とする災害が起きている、あるいは地震が起きている、台風もこの前大変な大雨をもたらしたということですから、やはり安全安心ということになりますと、災害対策というのは、もっと災害に強い日本というものを、これはどのくらいお金が掛かるのか私はきちっとした試算はしていませんけれども、やはりそういった安全安心対策というのも、やはり我々としてはきちっと準備していく必要があるのではないかと、私は個人的にそう思っております。

問)

財政分野の関連でお伺いしたいのですが、年末までに定額減税の与党協議も控えておりますし、今回の補正につきましても主計局が大分工夫をして財源を捻出したという点を鑑みますと、大臣最初から赤字国債の発行を考えているわけではないとおっしゃいましたが、どうみてもなかなか赤字国債を発行しなければ財源的に賄うのは難しいのではないかと思うのですけれども、その辺は如何でしょうか。

答)

今回の1.8兆円、あるいは保証を含めれば9兆円というのは、赤字国債とは関係なくやるという大前提で、これは非常にまさに知恵を絞ってやってきたわけであります。これでもって日本の経済に元気が出て、成長過程、回復過程に入っていけばいいですけれども、万が一そうじゃないとするならば、これで打ち止めということを今から言うほど日本の経済は足腰が強くなっていないのではないかという意味で、事態をよく見守っていかなければいけないというふうに考えています。

問)

民主党の小沢代表はですね、先般の記者会見で純計の1割、約20兆円超の財源を捻出して、色々な施策をやるというふうに表明されていましたけれども・・・。

答)

何の1割。

問)

一般会計と特別会計の合計額。その財源捻出の部分というのは今後総選挙になった場合の財源論争にもなると思うのですけれども、民主党のお考えについてはどのようなご印象を持っていらっしゃるでしょうか。

答)

去年私が政調会長で参議院選挙を闘った時には、19兆円の地方への補助金を財源に充てると、確かそういうふうにおっしゃっていたんだろうと思うんですね。それをやると地方のいわゆる補助金、教育とか福祉とか含めて非常に大きな影響が出るのではないかということで、我々はそんなことは出来ないのではないかということで、論争を余り十分じゃなかったのですが、我々としてはそういう考えで行ったわけであります。いずれにしても、これから国会等でも是非そういった与野党通じての財源問題、景気問題、財政再建問題というものをもっともっと積極的にやることによって、国民の皆さん方に理解をして頂くと、ある意味で良いチャンスなのかなというふうに思っておりますので、我々も与党もしっかり勉強して国民の皆さんにご理解頂けるようにして行きたいと思っています。

問)

金融の関係で各地方で貸し渋りが起きているのですが、特に今の地方の金融情勢、特に中小企業に対する金融機関の貸し渋りが起きていることについて、どう思われているかについて聞かせて頂けますか。

答)

私は北海道出身ですので、特にこのコストアップの問題と、特に地方の中小金融機関からの貸し渋り、場合によっては借り渋りみたいな、借りたくても借りないような非常に閉塞感があって、文字通り血液というか潤滑油的な役割であるはずのお金が回っていないなという実感を私自身は率直に感じております。

問)

予算編成のことでお尋ねします。7月末にシーリングを閣議で了解して、それに則って今予算作業が9月くらいから本格的に始まったところでありますけれども、総理も替わられたわけですが、新内閣も7月に決めた予算編成の方針であるシーリングを引き継いでやっていくべきだとお考えでしょうか。

答)

それは21年度という意味ですか。

問)

そうです。

答)

これは、例えば経済財政諮問会議もございますし、総理からは今のところ特に変更というような指示は頂いておりません。総理がどういうふうにお考えになるかは近々総理に指示を仰ぐということで、変えるとも変えないとも私は承知をしておりません。

問)

道路特定財源の一般財源化についてお伺いしますけれども、一般財源化に当たって道路関係諸税の税率のあり方について今のままでいいのか下げるべきだとお考えか、税の存廃そのもの含めてどういうふうに見直すべきかということをどうお考えかということと、それに関連しますが、道路予算、道路建設費については、どれくらい削減すべきだとお考えでしょうか。

答)

これも一昨年私が政調会長の時に安倍総理から頂いた指示というのは、真に必要な道路を造ると、それから受益者の負担ということにさせて頂くという原則でしたけれど、ああいう形で変わってきましたので、これは今後またこれから議論をもう一度していくということで、今後の議論ということになるんだろうと思います。

問)

赤字国債の発行額、小泉政権以来30兆円がひとつの目安になってきたと思うのですが、今年度は税収減というひとつの別のファクターがあると思いますが、それは別として、30兆円を堅持するという考え方について、どのような考えをお持ちでしょうか。

答)

これはやはり、「基本方針2006」ともある意味では絡んでくる話だろうと思っておりますので、基本的には赤字財政は、先程から申し上げているように出来るだけ出さない方が良いと思う前提でお話しをさせて頂いているつもりでございますので、少しでも削減できればいいわけですから、そのための努力というのは、いつも不断の努力をしていかなければいけないというふうに思います。

問)

アメリカがサブプライムローンに関連して、不良資産の公的資金による買取りというのを打ち出して、ポールソンさん(米財務長官)が日本とかヨーロッパとか必要に応じて同じようなことをやってほしいということを促しているのですが、現時点で金融庁が公的資金を使った不良債権の買取りは必要ないという考え方を示しておりますが、大臣はこの件についてどのようにお考えでしょうか。アメリカ政府にどのような支援を、考えられているのであれば伺いたいと思います。

答)

アメリカが思い切ってああいう形で、一体いくらになるのか分かりませんけれども、不良資産を政府が買い取るという、ある意味思い切ったことをやられているわけで、これはこれでアメリカの正常化に向かって役に立つのかなと思います。ただ日本が現時点でそれと同じようなことをやるということは、アメリカの方がかなり証券会社にしても保険会社にしても地銀の方もかなり傷んでいるという話も聞いておりますので、これはアメリカの方がより大きな問題を抱えているのではないでしょうか。

問)

大臣は政調会長時代に日本の核保有について言及されていましたが、現在のところ核保有についてはどのようなお考えをお持ちなのでしょうか。

答)

私は核保有しろとはひとつも言ったことはございません。北朝鮮がああいうミサイル、核実験をやったということについて、日本としては何の議論もしなくて果たしていいのだろうかということを申し上げたのです。

(以上)

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