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自見内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成23年12月27日(火)9時49分~10時15分 場所:金融庁会見室)

【大臣より発言】

まず二つございます。

1点は、中小企業金融円滑化法の期限の最終延長等について申し上げます。

金融庁は、本年3月の中小企業金融円滑化法の期限延長後、その施行状況や効果・影響等を注視してきたところであり、私自身も、地域の中小企業団体や金融機関の皆様から生の声を伺ってまいりました。これまで把握した状況を踏まえますと、基本的に、中小企業金融円滑化法の取組みは定着してきていると考えられる一方、貸付条件の再変更等が増加しているなどの問題を指摘する声もあります。

このような点を勘案すると、金融規律の確保のための施策を講じる一方、「出口戦略」として、金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮を促すとともに、中小企業者等の真の意味での経営改善につながる支援を強力に推し進めていく必要があります。

このためには、外部機関や関係者の協力も得つつ、総合的な出口戦略を講じることにより、中小企業者等の事業再生等に向けた支援に軸足を移していかなければなりません。

そうした移行を円滑に進めていく「ソフトランディング」を図るため、私は、中小企業円滑化法の期限を今回に限り一年間再延長するとともに、中小企業者等に対し事業再生等の支援措置を集中的に講じていくことが適当と判断をいたしました。

金融庁といたしましては、このような施策を推進することにより、金融機関の業務の健全かつ適切な運営の確保に配意しつつ、金融の円滑化を図るとともに、中小企業者等の経営改善を積極的に支援してまいりたいと思っております。これが1点でございます。

もう一点は、銀行等保有株式取得機構による株式等の買取期限及び生命保険契約者保護機構に対する政府補助の延長についてでございます。

銀行の財務の健全性を確保するためのセーフティネットとしての役割を果たすことを目的とした銀行等保有株式取得機構による銀行保有株式等の買取期限は、平成24年3月末とされております。また、生命保険契約者保護機構が破綻した生命保険会社に対して行う資金援助の財源について、民間負担のみでは賄えない場合に行われる政府の補助も、同じく平成24年3月末までの破綻が対象とされております。

我が国の金融システムは相対的に安定しているところでありますが、東日本大震災の影響や、欧州の債務危機を端緒とする世界的な金融資本市場の混乱等が続いている状況に鑑み、経済・株式市場が互いに悪影響を及ぼし、スパイラル的に悪化することを防ぐため、銀行等保有株式取得機構が、株式処分の受け皿、セーフティネットとしての役割を果たすこと、それから生命保険契約者保護機構がセーフティネットとしての機能を万全に果たすこと、は引き続き重要であります。

このため、株式等の買取期限及び政府補助の期限を5年間延長することが適当であり、次期通常国会にそのための法案を提出することとしたいというふうに考えております。

以上、2点でございます。

【質疑応答】

問)

冒頭ありました(中小企業金融)円滑化法の件ですけれども、最終延長ということで、これ以上延長しないお考えという理解でよろしいかと思うのですけれども、今後景気というのは、悪化する可能性もあるわけで、そういう中で再延長しないという判断に至った経緯をもう少し詳しく教えてください。

答)

中小企業金融円滑化法については、金融機関による円滑化法への対応は、基本的にその取組みは定着してきているというふうに思っております。

その一方、貸付条件の再変更等が増加しているなどの問題を指摘する声もあるところであります。いわゆるリスケが増加しているなどの問題を指摘する声もあるところであります。

このような点に鑑み、中小企業者等の経営改善支援を含む総合的な「出口戦略」を講じるとともに、この事業再生等の支援に軸足を円滑に移していく「ソフトランディング」を図る必要があることから、今回に限り1年間再延長することとしたところであります。

金融庁といたしましては、このような施策を推進することにより金融機関の業務の健全かつ適切な運営の確保に配慮しつつ、金融の円滑化を図るとともに、中小企業者等の経営改善を積極的に支援してまいる所存であり、同法を再延長することは、考えておりません。

問)

冒頭あった後半の部分なのですけれども、5年間延長するということでしたが、これまで延長は3年毎に繰り返してきたと認識しておりますが、5年間にした理由について教えてください。

答)

現下の経済・金融情勢を見ると、東日本大震災の影響や、欧州債務危機を端緒とする世界的な金融市場の混乱が続いている状況に鑑みれば、経済・株式市場が互いに悪影響を及ぼし、スパイラル的に悪化することを防ぐため、銀行等保有株式取得機構が、株式処分の受け皿、セーフティネットとしての役割を果たすこと、それから保険契約者の保護を的確に図るため、生命保険契約者保護機構が、セーフティネットとしての機能を万全に果たすことは、引き続き重要であり、十分な期間延長が必要であるというふうに考えております。

特に、今般の欧州債務危機は、金融システムのみの問題ではなく、国家の信認そのものが揺らいでいる状況であるため、その原因の抜本的解決には、長時間を要するというふうに考えております。

従って、銀行等保有株式取得機構による株式等の買取期限及び生命保険契約者保護機構に係る政府補助は、このような期間をカバーできるものとして5年間延長する必要があるというふうに考えたわけでございます。

問)

オリンパスの問題でお聞きしたいのですけれども、新日本監査法人が設置した検証委員会が、この後、中間報告を行うのですけれども、どういった点を注目されますか。

答)

オリンパスの問題は、私は基本的には個々の問題でございますから、私の立場としてコメントは差し控えておりますが、やはり私が何回も言っておりますように、公正で透明な市場でございますから、そういった観点できちんと注視はしておきたいと思います。

いずれも当局といたしましては、これまでも公認会計士法上問題のある事項があれば、必要な調査を行った上で、法令に則り厳正に対応しているところであり、今後も適切に対応していく所存であります。

問)

新日本監査法人の方は独自の検証委員会というのを設置したのですけれども、一方、その前に担当していたあずさ(監査法人)は、自らでは設置せず公認会計士協会に任せるというふうに言っているのですけれども、どちらが望ましいというふうにお考えですか。

答)

そこのところは、先ほど私が申し上げましたように、個々の監査法人の取組みについて、コメントすることは私の立場としては差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

問)

東洋経済、井下です。

円滑化法なのですが、金融機関の方からは、その取組みが定着しているので、来年3月に期限は切れたとしても対応としては変わることはないというふうに言う銀行も多いのですが、あえて再延長というところの考え方のご説明をいただいたのですけれども、金融機関側からそういうふうなことを言われるのですけれども、再延長の必要性というのがあるという理由を、もう一度ちょっとご説明いただけませんか。

答)

分かりました。

そこのところは非常にポイントだと思っております。金融機関から、今、そのようなことも聞くわけでございますが、確かに法律がなくても定着したということを言われる方もおられますし、そうは言っても、法律があるからやっているのだということを言われる方もおられます。

率直に言いまして、私も金融機関の人の意見を色々聞きましたけれども、信用金庫、信用組合、地方銀行、メガ(バンク)と、色々聞きましたけれども、これはなかなか、ちょうど半分半分ぐらいという印象です。皆さん方にも色々な声が入ってきていると思いますが、やはりそういった意味で、法律というのは非常に象徴的な意味もありますから、こういう東日本大震災や欧州のソブリンリスクの問題が起き、またこれが安定していないというふうな状況で、円高不況、円高による輸出の減少があります。

私が大阪などに行ったとき、大阪の中小企業の団体の首脳から大変強く言われたのですけれども、大阪はああいう町ですから、輸出依存が高いことも結構あるのだと思うのですが、やはり円高になってそういったこともございます。私は、色々な人の意見も聞かせていただいたし、また、金融庁の中でも結構このことについては非常に大事なことですから、色々な方の意見も聞かせていただいて、やはりこういうような結果になったということは、ご理解いただきたいと思っています。

問)

今日配られたPDF紙(PDF:86KB)の2ページ目の(2)の2番で「対象企業の実態に応じた適切な債務者区分・引当ての実施」という記載があるのですが、条件変更を受付けても不良債権としなくてもいいという運用があるのですけれども、条件変更を受付けたところが、本当に債権分類として適切かどうかというところを、従来以上に重点的に見ていくという理解でいいのですか。

答)

今ご質問のことですけれども、この2年間の円滑化法への対応状況を見ると、貸出条件の変更等の累積件数は非常に多いが、貸出金全体に占める条件変更した債権の残高の割合は限定的であります。

そういったこともありまして、今ご質問がございましたように、金融規律の確保に係る取組みとして、対象企業の実態に応じた適切な債務者区分・引当ての実施というのは、きちんと各金融機関がやっていただいているというふうに確信をいたしております。

問)

今の質問なのですが、つまりこれは、これまでの運用を若干変えて、仮にこれは不良債権だという場合には、不良債権としてきちんと区分するということまで、今後は監督・検査の中でやっていくということになるのですか。

答)

自由主義経済ですから、そういうところも含めて、やはり実情によって、それぞれの中小企業というのは経営者の能力、あるいは感覚、あるいは従業員の士気、あるいはどういう業種か、あるいはどういう地域で中小企業をしているかということで、実に千差万別であります。また中小企業は420万社あり、これが日本経済の活性化の源泉であるということは間違いございませんし、私がよく言いますように、2,800万人の方が今ここで雇用をされているわけです。

そういったことを踏まえて、適時適切に法律を変えれば、私は確かこの席でも申し上げたと思いますが、金融界から聞けば、一部条件変更したところ、リスケをしたところ、再リスケをしたところに二極、分極化しているというふうな声も聞いています。また確かにそういう状況もあるだろうと思いますので、やはり法律の基本的精神に基づいて、民間の金融機関がそれぞれ適時適切に判断をしていただけるものだというふうに、私は期待しております。

問)

それは運用も、それから監督の姿勢も変わるということでいいのですね。

答)

基本的には、検査・監督指針は変えないというふうに聞いております。

例えば必要があれば、当然この貸付条件の再変更に応じなさいと。しかし、私が今さっき申しましたように、コンサルタント機能を十分出しなさいとか、あるいは、これは主に経産省が関係する色々な企業診断、最適な解決策の提示・(支援を図るための)コンサルタント機能の発揮等、地域密着型金融の深化を徹底、あと法律によって各県に作っている組織である中小企業再生支援協議会との連携強化、また、東北の被災3県にとりましては、産業復興機構、あるいは議員立法で3党が一緒に作っていただいた東日本大震災事業者再生支援機構等との連携強化、それから事業再生等の支援を図るための、様々な制度・仕組みを作っておりまして、これは日本政策投資銀行が中心になって、この民間金融機関と一緒にファンドを各地で作っております。そういったことを多様に、効果的にきちんと活用することによって、できるだけ中小企業を再生するために努力をさせていただきたいというのが、基本的な思想です。

問)

一方で、再リスケに応じなさいといって、その一方で適切な引当て・債務者区分をしなさいというと、どちらに軸足を置けばいいのか、金融機関側は混乱を生じるのかなと思うのですが。

答)

やはり民間金融機関ですから、一方的にすべて軸足を置きなさいと言うよりも、それはまさにケース・バイ・ケースだと思います。

問)

そうすると、実抜計画(実現性の高い抜本的な経営改善計画)が難しいという企業に対しては、破綻処理ではないですけれども、そういう再リスケに応じないということも容認すると、それもケース・バイ・ケースだという、そういう解釈でいいですか。

答)

それは、何回も申しましたように、今の法律でも、どうしても金融機関として融資できないという、謝絶というのも最初からあるわけです。やはり民間の金融機関の原資は一般の国民から、あるいは色々な企業からお預かりした預金でありますから、それに一定の金利をつけてお返しをするというのが民間の金融機関の大原則です。そこのところはきちんとわきまえ、そのためには金融規律というのは必要なわけでございます。

できるだけ中小企業金融の円滑化をするということは、この法律の大目的でございますが、今の法律でどうしても、それに及ばない場合は、謝絶というのは今でもありますから、当然そういうこともあり得ると思っています。

なお、今後、中小企業者の事業再生等に向けて取組んでいくにあたっては、私が大臣談話でも述べていますように、中小企業者自身の積極的な経営改善等への取組みや、自由主義社会ですから経営者のやる気、そして今申し上げましたように、中小企業団体のサポートが不可欠であり、中小企業者及び関係機関におかれては、こうした取組みに積極的にご協力いただきたいというふうに思っております。

問)

東洋経済の浪川です。このPDFペーパー(PDF:86KB)を読んで、あと大臣のお話を聞いて、要するにこの1年間で金融機関はきちんとした、その25年3月で(円滑化法を)急にやめるから倒産が増えるとか、そういうことがないように1年かけて自主判断できちんとやっていきなさいよという意味ですよね、このペーパーは。

答)

そういう意味も含まれていると思います。

問)

だからこそ、開示とか報告資料の更なる簡素化というのは、これは簡素化するということは、要するに金融機関は法律があるけれども、(金融機関に対し)その判断というのですか、自由にリスケしたほうがいい、再生したほうがいい、どうしたらいいというのを、この1年間の間にきちんと最後の着地を考えなさいよということを示唆されたのですか。

答)

色々な書類、手続きの簡素化というのは、私がこの法律を作るとき、延長するときに、私が責任者にならせていただいて、事の本質は別かも知れませんけれども、役所は書類を要求するのです。

ですから、確か(要求書類を)3分の1にしなさいと私から指示をして、大変金融庁の現場は苦労したようですけれども、それでも3分の1でやっていけたわけですから、本当に必要な書類、それから必要でないとは言いませんけれども、よりあった方がいいに越したことはないと考えるのだと思いますが、書く方にとっては、中小企業にまた色々詳しいデータを書けといっても、中小企業というのはそういう能力がなかなかないというのが、ある意味での日本国の中小企業ですから、これは再延長するときに、私はきちんと提出資料を3分の1にしなさいと、こう言ったわけでございます。その精神を持ってやるということです。

問)

そういうことですか。分かりました。

もう一点、これは実は、前回の全銀協会長の会見のときにもご質問したことなのですけれども、要するに、グローバル取引の問題で、グローバルの金融取引において、円建ての比率というのは非常に少ないと言われてきているわけですけれども、この間、外銀から邦銀に資産の売却とか色々な話がある。あるいは、これからもっと海外進出を日本の銀行がやってくるだろうというところで、円建て取引の拡大というのを色々と考えていくというのは、来年以降の一つのテーマになってもおかしくないのではないかと思っているのですが、大臣のご所見は如何でしょうか。

答)

私も基本的に、今、円高ということで大変輸出企業にはご迷惑をかけておりますけれども、同時に、日本の企業は外国からの資源、あるいは資源に関係したところに色々投資をしやすいというような状況もあるわけです。この前、確か私は新聞紙上でしか知りませんけれども、ロシアの資源をたくさん有している非常に大きな企業に、確か邦銀が3行で協調融資をするというような記事がございました。

聞くところによると、今の日本の金融機関は、世界では比較的安定していますので、日本に寧ろヨーロッパの銀行などで融資しているところは、できるだけ日本に買ってくれというような機会がいっぱい増えているという話を仄聞するわけです。そういった意味で、やはり円高メリットを増やすということは、特に資源だとか、日本というのは残念ながら資源が何もありませんから、そう言ったことで、方向性も私としてはしっかり追求していただきたいというふうに思っています。

(以上)

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