I 基本的考え方

I -1 金融監督に関する基本的考え方

  • (1)金融監督の目的は、信用秩序の維持、預金者保護の確保、金融の円滑を図る観点から、金融機関の業務の健全かつ適切な運営を確保することにある(銀行法(以下「法」という。)第1条参照)。

  • (2)金融庁としては、明確なルールに基づく透明かつ公正な行政を確立することを基本としている。

    このため、監督をはじめ検査・監視を含む各分野において、行政の効率性・実効性の向上を図り、更なるルールの明確化や行政手続き面での整備等を行うこととしている。

    また、金融機関の経営の透明性を高め、市場規律により経営の自己規正を促し、預金者等の自己責任原則の確立を図るため、金融機関のディスクロージャーをより一層推進することも重要である。

  • (参考) 「金融庁発足に当たって」(談話:平成12年7月3日)

I -2 監督部局の役割と監督事務の基本的考え方

I -2-1 監督部局の役割

我が国の金融監督システムは、いわゆる「オンサイト」と「オフサイト」の双方のモニタリング手法から構成されているが、これは、それぞれのモニタリング手法を適切に組み合わせることで、実効性の高い金融監督を実現するためである。行政組織上は、前者を検査部局が、後者を監督部局が担当しているが、両部局が適切な連携の下に、それぞれの機能を的確に発揮することが求められる。

このような枠組みの中で、監督部局の役割は、検査と検査の間の期間においても、継続的に情報の収集・分析を行い、金融機関の業務の健全性や適切性に係る問題を早期に発見するとともに、必要に応じて行政処分等の監督上の措置を行い、問題が深刻化する以前に改善のための働きかけを行っていくことである。

具体的には、金融機関に対して定期的・継続的に経営に関する報告を求める等により、金融機関の業務の状況を常に詳細に把握するとともに、金融機関から徴求した各種の情報の蓄積及び分析を迅速かつ効率的に行い、経営の健全性の確保等に向けた自主的な取組みを早期に促していくことが、監督部局の重要な役割といえる。

特に、監督部局は、個別金融機関の状況のみならず、金融機関全体の状況についても幅広く知る立場にあることから、他金融機関との比較分析を通じて、当該金融機関が全体の中でどのような状況に置かれているかを的確に把握し、分析結果の金融機関への還元及びヒアリングなどを通じて、問題改善が適切になされるよう図っていくことが重要である。

I -2-2 監督事務の基本的考え方

上記を踏まえると、監督部局による監督事務の基本的考え方は次のとおりである。

  • (1)検査部局との適切な連携の確保

    監督部局と検査部局が、それぞれの独立性を尊重しつつ、適切な連携を図り、オンサイトとオフサイトの双方のモニタリング手法を適切に組み合わせることで、実効性の高い金融監督を実現することが重要である。このため、監督部局においては、検査部局との連携について、以下の点に十分留意することとする。

    • マル1検査を通じて把握された問題点については、監督部局は、問題点の改善状況をフォローアップし、その是正につなげていくよう努めること。また、必要に応じて、行政処分等厳正な監督上の措置を講じること。

    • マル2監督部局がオフサイト・モニタリングを通じて把握した問題点については、次回検査においてその活用が図られるよう、検査部局に還元すること。

  • (2)金融機関との十分な意思疎通の確保

    金融監督に当たっては、金融機関の経営に関する情報を的確に把握・分析し、必要に応じて、適時適切に監督上の対応につなげていくことが重要である。このため、監督部局においては、金融機関からの報告に加え、金融機関との健全かつ建設的な緊張関係の下で、日頃から十分な意思疎通を図り、積極的に情報収集する必要がある。具体的には、金融機関との定期的な面談や意見交換等を通じて、金融機関との日常的なコミュニケーションを確保し、財務情報のみならず、経営に関する様々な情報についても把握するよう努める必要がある。

  • (3)金融機関の自主的な努力の尊重

    監督当局は、私企業である金融機関の自己責任原則に則った経営判断を、法令等に基づき検証し、問題の改善を促していく立場にある。金融監督に当たっては、このような立場を十分に踏まえ、金融機関の業務運営に関する自主的な努力を尊重するよう配慮しなければならない。

  • (4)効率的・効果的な監督事務の確保

    監督当局及び金融機関の限られた資源を有効に利用する観点から、監督事務は、金融機関の規模や特性を十分に踏まえ、効率的・効果的に行われる必要がある。したがって、金融機関に報告や資料提出等を求める場合には、監督事務上真に必要なものに限定するよう配意するとともに、現在行っている監督事務の必要性、方法等については常に点検を行い、必要に応じて改善を図るなど、効率性の向上を図るよう努めなければならない。

    既報告や資料提出等については、金融機関の事務負担軽減等の観点を踏まえ、年1回定期的に点検を行う。その際、金融機関の意見を十分にヒアリングするとともに、検査局等との適切な連携に留意する。

    また、金融機関の小規模な営業所等に関して、金融機関に報告や資料提出等を求める場合には、取り扱うサービスや商品などに関する当該営業所等の特性を十分に踏まえ、業務の円滑な遂行に支障が生じないよう配意する。

  • (参考) 金融監督の原則と監督部局職員の心得(行動規範)(平成17年9月2日、様式・参考資料編 資料1)

I -3 監督指針策定の趣旨

I -3-1 監督指針策定の経緯

金融審議会金融分科会第二部会報告「リレーションシップバンキングの機能強化に向けて」(平成15年3月27日)を踏まえ、中小・地域金融機関(注)の不良債権問題の解決に向けて、「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」が、平成15年3月に公表された。

同プログラムにおいては、「各金融機関の資産、自己資本、収益力、流動性リスク、市場リスク等従来の早期是正措置及び早期警戒制度が視野に入れていた領域に加え、コーポレートガバナンスや経営の質、地域貢献が収益力・財務の健全性に与える影響等の観点も取り入れた、より多面的な評価に基づく総合的な監督体系を確立し、業務改善命令を含め監督上の対応を的確に行うこととする。このため、平成15年度中を目途に『中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針』(以下「本監督指針」という。)を策定するとともに、ルールの明確化を図る」こととされた。

これを踏まえ、本監督指針を策定することとしたものである。

  • (注) 中小・地域金融機関については、上記金融審議会金融分科会第二部会報告を踏まえ、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合とする。なお、本監督指針においては、労働金庫についても規定している。

  • (参考) リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム(平成15年3月29日、様式・参考資料編 資料2)

I -3-2 監督指針策定の趣旨

本監督指針策定の趣旨については、上記金融審議会金融分科会第二部会報告において、以下のとおりとされている。

  • マル1中小・地域金融機関の業務については、

    • 営業地域が限定されており、特定の地域、業種に密着した営業展開を行っている
    • 中小企業又は個人を主要な融資対象としている

    等の基本的特性を有しており、リレーションシップバンキング、すなわち、金融機関が顧客との間で親密な関係を長く維持することにより顧客に関する情報を蓄積し、この情報を基に貸出等の金融サービスの提供を行うビジネスモデルを展開している。

  • マル2本来、このようなビジネスモデルは、中小企業や地域経済の実態に根差した情報が活用されることで、地域の中小企業への金融の円滑、貸し手・借り手双方の健全性の確保が図られるものであり、これにより、中小企業の再生と地域経済の活性化に果たす役割は大きいと考えられる。

  • マル3一方、中小・地域金融機関は、地方経済を取り巻く厳しい環境の下、中小企業や地域経済から期待される役割を果たすため、取引先や地域への過大なコミットメントコストを負担することにより、かえって収益力や健全性の低下といった状況を招いている場合がある。このように、中小・地域金融機関の実態は、リレーションシップバンキング本来のあり方から乖離している面があり、リレーションシップバンキングの機能強化を図り、地域の金融ニーズへの一層適切な対応や、持続可能性(サステイナビリティ)の確保を図る必要があると考えられる。

  • マル4さらに、リレーションシップバンキングが有効に機能するためには、

    • 中小・地域金融機関、とりわけ非上場行や協同組織金融機関は、市場による経営チェックが行われにくいため、相対的にガバナンスが弱いのではないか等の指摘があること
    • 中小・地域金融機関の経営の健全性が損なわれた過去の事例をみると、「創業者一族による長期経営」、「経営トップによる過度なワンマン経営」、「特定大口先の融資拡大」等の弊害が明らかとなっていること

    等を踏まえると、中小・地域金融機関自らの取組みに加え、経営に対する外部からの規律付けを十分に図っていく必要があり、情報開示等による規律付けとともに、当局による規律付けの必要性も大きいと考えられる。

  • マル5以上の点を踏まえれば、これまでの早期是正措置や早期警戒制度が視野に入れている領域にとどまらず、コーポレートガバナンスや経営(マネジメント)の質、地域社会や取引先企業へのコミットメント(地域貢献)が収益力や財務の健全性に与える影響等の観点も取り入れた、より多面的な評価に基づく総合的な監督体系を構築する方向で検討することが必要であると考えられる。

I -3-3 監督指針の位置付け

  • (1)本監督指針においては、中小・地域金融機関の監督事務に関し、その基本的考え方、監督上の評価項目、事務処理上の留意点について、従来の事務ガイドラインの内容も踏まえ、体系的に整理した。

    また、中小・地域金融機関の監督を直接担当する財務局(福岡財務支局及び沖縄総合事務局を含む。以下同じ。)の職員の事務の利便に資するよう、必要な情報を極力集約したオールインワン型の手引書(ハンドブック)として位置付けることとした。

  • (2)財務局は本監督指針に基づき中小・地域金融機関の監督事務を実施するものとする。

    また、金融庁担当課室にあっても同様の取扱いとする。

    その際、本監督指針が、金融機関の自主的な努力を尊重しつつ、その業務の健全かつ適切な運営を確保することを目的とするものであることにかんがみ、本監督指針の運用に当たっては、各金融機関の個別の状況等を十分踏まえ、機械的・画一的な取扱いとならないよう配慮するものとする。

I -3-4 「主要行等向けの総合的な監督指針」との関係

I -3-4-1 「主要行等向けの総合的な監督指針」の位置付け

主要行等(注)は、規模が非常に大きく我が国経済に大きな影響力を有し国際的な金融活動を展開しているケースも多いので、世界最高水準の金融サービスを提供し、我が国経済の発展と国民生活の向上に寄与することが期待されていると考えられる。

このためには、主要行等は、金融仲介において不可欠な要素であるリスク管理について特に高度な対応を行うとともに、利用者利便と国際競争力の向上を目指し、業態に相応しい適切な経営管理(ガバナンス)を行うことが必要である。

このような考え方に基づき、平成17年10月、主要行等の監督事務に関し、従来の事務ガイドライン及び本監督指針の内容も踏まえ、「主要行等向けの総合的な監督指針」が策定・公表された。

(注) 主要行等とは、いわゆる主要行及び新生銀行、あおぞら銀行、シティバンク銀行、ゆうちょ銀行を指すが、同監督指針においては、事務の便宜上、マル1長期信用銀行、マル2外国銀行支店、マル3信託兼営銀行等についても規定している。

I -3-4-2 「主要行等向けの総合的な監督指針」の規定の準用について

「主要行等向けの総合的な監督指針」は基本的に主要行等を対象とするものであるが、中小・地域金融機関についても、以下、個別項目において言及している場合を含め、その業務や活動範囲(海外に営業拠点を有する場合など)、リスク管理態勢の状況等に応じて必要がある場合には、適宜同監督指針を参照し、これに準じることとする。

I -3-5 その他の監督指針等との関係

I -3-5-1 「預金等受入金融機関に係る検査マニュアル」との関係

  • (1)検査マニュアルは、検査官が金融機関を検査する際に用いる手引書として位置付けられるものであるが、監督上も有効な着眼点を示すものとなっている。

  • (2)監督部局は、オフサイト・モニタリングを実施しつつ、検査(オンサイト)・監督(オフサイト)で得た情報に基づき必要に応じて行政処分等の監督上の措置を行い、金融機関経営の健全性の確保等に向けた自主的な取組みを早期に促していくという役割を担っている。また、監督部局は、許認可等の申請に基づく行政処分を行う事務も担当している。したがって、

    • マル1検査マニュアルに加えて、こうした監督事務のための指針・マニュアルが必要となる。

    • マル2さらに、明確なルールに基づく透明かつ公正な行政の確立という観点からは、金融機関に対して行政処分等の予見可能性についても可能な限り明確化していく必要もある。

  • (3)こうしたことから、監督部局の職員(特に財務局の職員)向けの手引書として、行政処分等の前提となる監督上の評価項目、オフサイト・モニタリングや不利益処分及び申請等に対する行政処分等の事務処理方法、法令等の解釈等について、「監督指針」の形でその留意点等を取りまとめ、公表するものである。

I -3-5-2 「金融コングロマリット監督指針」との関係

  • (1)銀行持株会社の監督指針については、「金融コングロマリット監督指針」及び本監督指針の銀行に関する規定に準じることを基本とする。

  • (2)なお、金融コングロマリット監督指針の対象は銀行持株会社に限定されておらず、同指針の監督上の着眼点等は必ずしも銀行持株会社の特性を十分考慮したものとはなっていないものもあること、また、本監督指針の銀行に係る部分も必ずしも持株会社に必要な規定を網羅していないことから、銀行持株会社特有の留意事項等については、本監督指針の銀行持株会社に関する部分( III -4-11)において補足して規定している。

I -3-5-3 金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律及び預金保険法等に基づき公的資本増強等を受けた金融機関等に対するフォローアップとの関係

  • (1)金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律(以下「早期健全化法」という。)に基づき公的資本増強を受けた銀行・銀行持株会社に対するフォローアップ事務は、本監督指針とは別に定められている、一連の金融再生委員会の決定や金融庁作成のガイドライン(注)に基づき行われることに留意する。なお、預金保険法第102条第1項第1号に基づき公的資本増強を受けた金融機関等に対するフォローアップ事務については、これらを準用することとする。

    • (注) 主要なルールは、以下のとおりである。

      • マル1金融再生委員会決定

        • イ.早期健全化法により資本増強を受けた金融機関のフォローアップ(骨子)(平成11年6月29日)

        • ロ.転換権付優先株の転換権行使について(平成11年6月29日)

        • ハ.経営健全化計画の見直しについての基本的考え方(平成11年9月30日)

        • 二.資本増強行に対するフォローアップに係る行政上の措置について(平成11年9月30日)

      • マル2金融庁作成ガイドライン

        • イ.資本増強行に対するフォローアップに係る行政上の措置についての考え方の明確化について(平成13年6月11日)

        • ロ.公的資金による資本増強行(主要行)に対するガバナンスの強化について(平成15年4月4日(平成15年8月7日一部改正))

        • ハ.公的資金による資本増強行(地域銀行等)に対するガバナンスの強化について(平成15年6月30日)

        • ニ.資本増強行に対するフォローアップに係る行政上の措置についての考え方の明確化について(その2)(平成16年7月30日)

  • (2)早期健全化法及び預金保険法に基づく公的資本増強行においては、マル1経営健全化計画の策定・公表、マル2経営健全化計画の履行状況報告の公表等が行われるとともに、上記(1)のルールに基づくフォローアップ及び行政処分が行われているので、本監督指針による銀行法等に基づく監督事務においても、可能な限りこれらの成果を活用する等により、効率的・効果的な監督事務の確保に努めることとする( I -2-2(4)参照)。

  • (3)金融機能の強化のための特別措置に関する法律(以下「金融機能強化法」という。)に基づき公的資本参加を受けた金融機関に対するフォローアップ事務については、本監督指針に基づき行う( III -4-16参照)。

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