II  銀行監督上の評価項目

II −3 業務の適切性

II −3−1 法令等遵守

銀行の業務の公共性を十分に認識し、法令や業務上の諸規則等を厳格に遵守し、健全かつ適切な業務運営に努めることが顧客からの信頼を確立するためにも重要である。

遵守すべき法令等は多岐にわたり、いずれも重要性に差はないが、これまでの様々な経験と最近の政策的な動向を踏まえ、当面、特に留意すべき点は以下のとおりである。

II −3−1−1 不祥事件等に対する監督上の対応

役職員の不祥事件等に対する業務改善命令等の監督上の対応については、以下のとおり、厳正に取り扱うこととする。

  • (1)不祥事件等の発覚の第一報

    銀行において不祥事件等が発覚し、第一報があった場合は、以下の点を確認するものとする。

    • マル1本部等の事務部門、内部監査部門への迅速な報告及びコンプライアンス規定等に則った取締役会等への報告。

    • マル2刑罰法令に抵触しているおそれのある事実については、警察等関係機関等への通報。

    • マル3事件とは独立した部署(内部監査部門等)での事件の調査・解明の実施。

  • (2)不祥事件等届出書の受理

    法第53条に基づき、銀行が不祥事件の発生を知った日から30日以内に不祥事件等届出書が提出されることとなるが、当該届出書の受理時においては、法令の規定に基づき報告が適切に行われているかを確認する。

    なお、銀行から第一報がなく届出書の提出があった場合は、上記(1)の点も併せて確認するものとする。

  • (3)主な着眼点

    不祥事件と業務の適切性の関係については、以下の着眼点に基づき検証する。

    • マル1当該事件への役員の関与はないか、組織的な関与はないか。

    • マル2当該事件の内容が銀行の経営等に与える影響はどうか。

    • マル3内部けん制機能が適切に発揮されているか。

    • マル4改善策の策定や自浄機能は十分か。

    • マル5当該事件の発覚後の対応は適切か。

  • (4)監督上の措置

    不祥事件等届出書の提出があった場合には、事実関係、発生原因分析、改善・対応策等についてヒアリングを実施し、必要に応じ、法第24条に基づき報告を求め、さらに、重大な問題があるときは、法第26条に基づく業務改善命令等を発出することとする。

II −3−1−2 役員による法令等違反行為への対応

II −3−1−2−1 意義

  • (1)銀行業務を遂行するに際しての役員による組織的な法令違反行為については、当該個人の責任の問題に加え、法人としての銀行の責任も問われる重大な問題であり、信用失墜・風評等により銀行の経営に重大な影響を及ぼすことに留意すべきである。

  • (2)さらに、公共性を有し、地域経済において重要な機能を有する銀行において、顧客等とのリレーションシップに基づく信頼関係を阻害するような問題が発生した場合には、地域の金融システムの安定性に大きな影響を及ぼすおそれがあることを銘記する必要がある。

II −3−1−2−2 監督手法・対応

  • (1)検査結果、不祥事件等届出書等により、役員による組織的な法令違反の疑いがあると認められた場合には、厳正な内部調査を行うよう要請し、法第24条に基づき報告を求める。

    特に、重大な法令違反の疑いがある場合には、事案に応じ、弁護士、外部専門家等の完全に独立した第三者(注)による客観的かつ厳正な調査を行うよう要請し、法第24条に基づき報告を求める。

    • (注) 例えば顧問弁護士は、完全な第三者には当たらないことに留意する。

  • (2)当該調査結果及び銀行の対応等を踏まえ、法第27条に基づく行政処分など、法令に則して、厳正な行政上の対応を検討する。

II −3−1−3 組織犯罪等への対応

II −3−1−3−1 取引時確認、疑わしい取引の届出義務等

II −3−1−3−1−1 意義

  • (1)総論

    公共性を有し、地域経済において重要な機能を有する銀行が、例えば総会屋利益供与事件、いわゆるヤミ金融や、テロ資金供与、マネー・ローンダリング等の組織犯罪等に関与し、あるいは利用されることはあってはならないことである。銀行が犯罪組織に利用され犯罪収益の拡大に貢献すること等を防ぐには、全行的に堅牢な法務コンプライアンス体制を構築する必要があるが、特に、犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯収法」という。)に基づく取引時確認及び疑わしい取引の届出に関する内部管理態勢を構築することが求められている。

  • (2)「犯収法」制定の経緯等

    • マル1我が国における反社会的勢力による民事介入暴力等の組織犯罪への対応策の変遷をみると、昭和57年に総会屋への利益提供を禁止する改正商法が施行され、平成4年には「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」が施行される等の法制整備等が積み重ねられてきたところである。

    • マル2また、国際的な資金洗浄(マネー・ローンダリング)規制の変遷をみると、昭和63年の国連・麻薬新条約の採択等を契機として、まず薬物犯罪収益等が対象とされ、金融機関に本人特定事項の確認や疑わしい取引の届出が求められるようになった。その後、冷戦終結後の国際情勢の変化に対応し、国際社会の関心も組織犯罪撲滅へと拡大し、資金洗浄規制の前提犯罪も、薬物犯罪から重大犯罪に拡大された。

    • マル3こうした情勢下、我が国の代表的な銀行を含む一連の総会屋への利益提供事件の発覚を受け、平成9年9月に関係閣僚会議において「いわゆる総会屋対策要綱」の申し合わせがなされた。

      この中で、当面の対応策に加え、「組織犯罪対策のための刑事法の検討」が取り上げられ、検討が進められた結果、平成12年2月から組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組犯法」という。)が施行されている。

    • マル4他方、平成13年9月の米国の同時多発テロ以降の、テロ資金供与に関する国際的な厳しい対応姿勢を受け、テロ資金供与の疑いがある取引についても組犯法の疑わしい取引の届出対象に含められるとともに、平成15年1月から、新たに「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律」(以下「本人確認法」という。)が施行された。

      • (注)その後、いわゆる「振り込め詐欺」等の犯罪に銀行の口座が不正利用されている事態にかんがみ、平成16年12月に本人確認法が改正され(「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律」に改称)、預金通帳等を譲り受ける行為等について罰則が設けられている。また、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(平成20年6月施行、以下「振り込め詐欺救済法」という。)において、金融機関は、「振り込め詐欺」に限らず、詐欺その他の人の財産を害する罪の犯罪行為全般に関して、振込先として利用された預金口座等(犯罪利用預金口座等)である疑いがあると認めるときは、当該預金口座等に係る取引停止等の措置を適切に講ずること等が求められている。

    • マル5そして、近年におけるテロ資金その他の犯罪収益の流通に係る国内の実態及びFATF勧告に基づく国際的な対策強化の動向にかんがみ、本人確認法及び組犯法第5章を母体として、本人特定事項の確認及び疑わしい取引の届出の義務対象事業者を金融機関等以外にも広げること等を定めた犯収法の規定が、平成20年3月に施行された。

    • マル6さらに、最近のマネー・ローンダリングを巡る犯罪への対策やFATF勧告に基づく対策の一層の強化を図る観点から、平成23年4月に、取引時の確認事項の追加並びに取引時確認及び疑わしい取引の届出等の措置を的確に行うための体制の整備等を定めた改正犯収法が成立し、平成25年4月から施行されることとなった。

  • (3)我が国の組織犯罪規制等の概要と金融機関のコンプライアンスにとっての意義

    • マル1我が国の組織犯罪規制は、組犯法における組織的な犯罪に対する刑の加重、犯罪収益の隠匿・収受の処罰(金融機関にも適用)及び犯罪収益の没収・追徴の規定等並びに犯収法における金融機関を含めた特定事業者に対する顧客等に対する取引時確認及び疑わしい取引の届出の義務付け等からなる(なお、平成15年1月から施行されている改正外為法においても、一定の本人特定事項の確認義務が課されていることにも留意する必要がある。)。

    • マル2組犯法及び犯収法は、組織的犯罪に対する刑事法としての意義、及び、国際的な資金洗浄(マネー・ローンダリング)規制の要請に適う国内実施法制としての意義があるが、金融機関にとっては、

      • イ.取引時確認や確認記録、取引記録の作成・保存義務は、テロ資金の提供が金融機関を通じて行われることの防止に資する金融機関等の顧客管理体制の整備の促進であり、「マネー・ローンダリング防止」を単なる取引時確認等の事務手続きの問題からコンプライアンスの問題(金融機関が犯罪組織に利用され犯罪収益の拡大に貢献することを防ぐための態勢整備)へと位置付け直すとともに、

      • ロ.いわゆる総会屋への対応等を含め、民事介入暴力・組織犯罪に対する全行的なコンプライアンス態勢を構築することが必要になった

      という点で極めて重要な意義を有するものである。

    • マル3金融機関においては、犯収法が広く組織犯罪一般に対する厳正な対応を義務付ける枠組みであることを真剣に受け止め、万全の態勢を構築する必要がある。

    • マル4更に、振り込め詐欺救済法は、犯罪利用預金口座等について、被害者の財産的被害の迅速な回復に資する観点から、残された資金を被害者に分配するための手続を規定するものであるが、金融機関にとっては、従来、預金規定に基づいて行っていた口座の取引停止等の措置が法的に求められることとなった点において、適切な口座管理の観点から、極めて重要な意義を有する。金融機関においては、不正利用口座に係る取引停止等の措置を、事務手続きの問題ではなくコンプライアンスの問題として位置付け、迅速かつ適切に実施するための態勢を整備していく必要がある。

  • (4)金融サービス濫用防止にとっての意義

    各金融機関が、犯収法により義務付けられた取引時確認等や疑わしい取引の届出、盗難通帳・偽造印鑑等による預金の不正払戻しを防止するための措置、又は犯罪利用預金口座等の疑いがあると認める場合における取引停止等の措置を的確に実施し得る内部管理態勢を構築することは、組織犯罪等による金融サービスの濫用を防止し、我が国金融システムに対する信頼を確保するためにも重要な意義を有している。

II −3−1−3−1−2 主な着眼点

銀行の業務に関して、犯収法に基づく取引時確認及び疑わしい取引の届出を行うに当たっては、テロ資金供与やマネー・ローンダリング、預金口座の不正利用といった組織犯罪等に利用されることを防止するため、以下のような態勢が整備されているか。

  • (注)取引時確認や疑わしい取引の届出においては、「犯罪収益移転防止法に関する留意事項について」(24年10月金融庁)を参考にすること。

  • (1)取引時確認や疑わしい取引の届出を的確に行うための法務問題に関する一元的な管理態勢が整備され、機能しているか。

    特に、一元的な管理態勢の整備に当たっては、以下の点を十分留意しているか。

    • マル1適切な従業員採用方針や顧客受入方針を有しているか。

    • マル2コルレス契約について、犯収法第10条および犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(以下「犯収法施行規則」という。)第25条に基づき、以下の体制が整備されているか。

      • (注) 犯収法施行規則第25条の「外国所在為替取引業者との間で委託契約又は受託契約を締結して為替取引を行う場合」とは、国際決済のために外国所在為替取引業者(コルレス先)との間で電信送金の支払、手形の取立、信用状の取次、決済等の為替業務、資金管理等の銀行業務について委託契約又は受託契約(コルレス契約)を締結して為替取引を行う場合をいう。

      • イ.コルレス先の顧客基盤、業務内容、テロ資金供与やマネー・ローンダリングを防止するための体制整備の状況及び現地における監督当局の当該コルレス先に対する監督体制等について情報収集に努め、コルレス先を適正に評価した上で、上級管理職による意思決定を含め、コルレス契約の締結・継続を適切に審査・判断しているか。

      • ロ.コルレス先とのテロ資金供与やマネー・ローンダリングの防止に関する責任分担について文書化する等して明確にするよう努めているか。

      • ハ.コルレス先が営業実態のない架空銀行(いわゆるシェルバンク)でないこと、及びコルレス先がその保有する口座を架空銀行に利用させないことについて確認することとしているか。

        また、確認の結果、コルレス先が架空銀行であった場合又はコルレス先がその保有する口座を架空銀行に利用されることを許容していた場合、当該コルレス先との契約の締結・継続を遮断することとしているか。

    • マル3取引時確認や確認記録・取引記録の作成・保存、疑わしい取引の届出を含む顧客管理方法について、マニュアル等の作成・従業員に対する周知が行われるとともに、従業員がその適切な運用が可能となるように、適切かつ継続的な研修が行われているか。

    • マル4取引時確認や疑わしい取引の検出を含め、従業員が発見した組織的犯罪による金融サービスの濫用に関連する事案についての適切な報告態勢(方針・方法・情報管理体制等)が整備されているか。

    • マル5取引時確認や顧客管理の中で、公的地位等の顧客属性に照らして、問題等が認められた顧客や取引等について、上級管理職による意思決定を含め適正に管理・対応するための態勢を有しているか。

    • マル6取引時確認や疑わしい取引の届出を含めた顧客管理を的確に行うため、管理職レベルのテロ資金供与及びマネー・ローンダリング対策のコンプライアンス担当者を配置しているか。

  • (2)疑わしい取引の届出を行うに当たって、顧客の属性、取引時の状況その他銀行の保有している当該取引に係る具体的な情報を総合的に勘案する等適切な検討・判断が行われる態勢が整備されているか。

    特に、疑わしい取引の届出のための態勢整備に当たっては、以下の点を十分留意しているか。

    • マル1銀行の行っている業務内容・業容に応じて、システム、マニュアル等により、疑わしい顧客や取引等を検出・監視・分析する態勢が構築されているか。

    • マル2上記態勢整備に当たっては、国籍(例:FATFが公表するマネー・ローンダリング対策に非協力的な国・地域)、公的地位、顧客が行っている事業等の顧客属性や、外為取引と国内取引との別、顧客属性に照らした取引金額・回数等の取引態様が十分考慮されているか。

  • (3)下記イ.〜ハ.のような厳格な顧客管理を行う必要性が特に高いと認められる取引を行う場合には、顧客の本人特定事項を、通常と同様の方法に加え、追加で本人確認書類又は補完書類の提示を受ける等、通常の取引よりも厳格な方法で確認するなど、適正に(再)取引時確認を行う態勢が整備されているか。また、資産及び収入の状況の確認が義務づけられている場合について、適正に確認を行う態勢が整備されているか。

    • イ.取引の相手方が関連取引時確認に係る顧客等又は代表者等になりすましている疑いがある場合における当該取引

    • ロ.関連取引時確認が行われた際に当該関連取引時確認に係る事項を偽っていた疑いがある顧客等との取引

    • ハ.犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令第12条第2項に定める、犯罪による収益の移転防止に関する制度の整備が十分に行われていないと認められる国又は地域に居住し又は所在する顧客等との取引等

  • (4)口座の不正利用等を防止するため、預金の支払や口座開設等に当たって、必要に応じ、取引時確認の実施や口座の利用目的等の確認を行うなど、適切な口座管理を実施するための内部管理態勢が整備されているか。また、口座の不正利用による被害防止のあり方について検討を行い、必要な措置を講じているか。

    特に、いわゆるヤミ金融業者等が預金口座を利用して違法な取立てを行ったり、架空請求書を送り付けて銀行の預金口座に振込みを請求したりするなど、預金口座を不正に利用した悪質な事例が大きな社会問題となっている。また、犯罪資金の払出は被害者の財産的被害の回復を困難ならしめるものである。これらを踏まえ、被害にあった顧客からの届出等、口座の不正利用に関する情報を速やかに受け付ける体制を整備するとともに、こうした情報等を活用して、預金規定や振り込め詐欺救済法に定められている預金取引停止・口座解約等の措置を迅速かつ適切に講ずる態勢を整備しているか。その際、同一名義であることなどから不正利用が疑われる口座等についても、取引状況の調査を行うなど、必要な措置を講ずることとしているか。

  • (5)振込みを利用した犯罪行為の被害者の財産的被害を迅速に回復するため、振り込め詐欺救済法に規定する犯罪利用預金口座等に係る預金等債権の消滅手続や、振込利用犯罪行為の被害者に対する被害回復分配金の支払手続等について、社内規則で明確に定めることなどにより、円滑かつ速やかに処理するための態勢を整備しているか。その際、消滅手続期間中における被害申出者に対し、支払申請に関し利便性を図るための措置を、また、被害が疑われる者に対し、支払手続実施等について周知するため、必要な情報提供その他の措置を、適切に講ずるものとしているか。

  • (6)預金口座の不正利用に関する裁判所からの調査嘱託や弁護士法に基づく照会等に対して、個々の具体的事案毎に、銀行に課せられた守秘義務も勘案しながら、これらの制度の趣旨に沿って、適切な判断を行う態勢が整備されているか。

  • (7)盗難通帳・偽造印鑑等による預金の不正払戻しを防止するため、窓口での預金の支払等に当たって、必要に応じ取引時確認を行う態勢が整備されているか。また、通帳の印影から印鑑の偽造を防止するための措置を講じているか。

    不正払戻しの被害にあった顧客からの届出を速やかに受け付ける体制が整備されているか。また、損失の補償については、偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律(以下「預貯金者保護法」という。)の趣旨を踏まえ、利用者保護を徹底する観点から、約款、顧客対応方針等において統一的な対応を定めるほか、真摯な顧客対応を行う態勢が整備されているか。

    不正払戻しに関する記録を適切に保存するとともに、顧客や捜査当局から当該資料の提供などの協力を求められたときは、これに誠実に協力することとされているか。

    • (注)不正払戻し発生防止に向けた施策が、顧客利便を大きく損なうことのないよう配慮する必要がある。

II −3−1−3−1−3 監督手法・対応

検査結果、不祥事件等届出書、盗難通帳に係る犯罪発生報告書等により、上記(1)から(7)の着眼点等に照らして取引時確認義務及び疑わしい取引の届出義務の確実な履行、盗難通帳・偽造印鑑等による預金の不正払戻しを防止するための措置、又は犯罪利用預金口座等の疑いがあると認める場合における取引停止等の措置を適切に実施するための内部管理態勢に問題があると認められる場合には、必要に応じ法第24条に基づき報告(追加の報告を含む。)を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき、業務改善命令を発出するものとする。

また、内部管理態勢が極めて脆弱であり、反社会的勢力・テロリスト等の組織的犯罪等に利用され続けるおそれがあると認められるときは、法第26条に基づき、業務改善に要する一定期間に限った業務の一部停止命令を発出するものとする。

さらに、取引時確認義務及び疑わしい取引の届出義務に違反し、又は犯罪利用預金口座等であると疑うに足りる相当な理由があると認めるときに取引停止等の措置を怠り、著しく公益を害したと認められる場合など、重大な法令違反と認められる場合には、法第27条に基づく業務の一部停止命令を発出するものとする。

(参考)

  • 「預金等の不正な払戻しへの対応」について(平成20年2月19日:全国銀行協会)

II −3−1−3−2 偽造紙幣・硬貨等

刑法第152条が、偽造・変造通貨の流通を阻止しようとする趣旨であることにかんがみ、銀行においても適正な内部管理態勢の構築のために、例えば、以下のような取組みが行われているか。

  • (1)顧客より提示のあった紙幣等が偽造・変造であると判明した段階で、警察への届出や疑わしい取引の届出が速やかになされる体制となっているか。

  • (2)偽造・変造紙幣等を再流通させないために銀行がとるべき行動について、適切な規定・要領等の整備や役職員への徹底がなされているか。

  • (注) 組織犯罪等への対応としては、以上のほか、偽造・盗難キャッシュカード対策( II −3−4−2 ATMシステムのセキュリティ対策)、インターネットバンキング( II −3−5 インターネットバンキング)のフィッシング対策等も参照のこと。

II −3−1−4 反社会的勢力による被害の防止

II −3−1−4−1 意義

反社会的勢力を社会から排除していくことは、社会の秩序や安全を確保する上で極めて重要な課題であり、反社会的勢力との関係を遮断するための取組みを推進していくことは、企業にとって社会的責任を果たす観点から必要かつ重要なことである。特に、公共性を有し、経済的に重要な機能を営む金融機関においては、金融機関自身や役職員のみならず、顧客等の様々なステークホルダーが被害を受けることを防止するため、反社会的勢力を金融取引から排除していくことが求められる。

もとより金融機関として公共の信頼を維持し、業務の適切性及び健全性を確保するためには、反社会的勢力に対して屈することなく法令等に則して対応することが不可欠であり、金融機関においては、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)の趣旨を踏まえ、平素より、反社会的勢力との関係遮断に向けた態勢整備に取り組む必要がある。

特に、近時反社会的勢力の資金獲得活動が巧妙化しており、関係企業を使い通常の経済取引を装って巧みに取引関係を構築し、後々トラブルとなる事例も見られる。こうしたケースにおいては経営陣の断固たる対応、具体的な対応が必要である。

なお、役職員の安全が脅かされる等不測の事態が危惧されることを口実に問題解決に向けた具体的な取組みを遅らせることは、かえって金融機関や役職員自身等への最終的な被害を大きくし得ることに留意する必要がある。

  • (参考)「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)

    • マル1反社会的勢力による被害を防止するための基本原則

      • 組織としての対応

      • 外部専門機関との連携

      • 取引を含めた一切の関係遮断

      • 有事における民事と刑事の法的対応

      • 裏取引や資金提供の禁止

    • マル2反社会的勢力のとらえ方

      暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標榜ゴロ、政治活動標榜ゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である(平成23年12月22日付警察庁次長通達「組織犯罪対策要綱」参照)。

II −3−1−4−2 主な着眼点

反社会的勢力とは一切の関係をもたず、反社会的勢力であることを知らずに関係を有してしまった場合には、相手方が反社会的勢力であると判明した時点で可能な限り速やかに関係を解消するための態勢整備及び反社会的勢力による不当要求に適切に対応するための態勢整備の検証については、個々の取引状況等を考慮しつつ、例えば以下のような点に留意することとする。

  • (1)組織としての対応

    反社会的勢力との関係の遮断に組織的に対応する必要性・重要性を踏まえ、担当者や担当部署だけに任せることなく取締役等の経営陣が適切に関与し、組織として対応することとしているか。また、銀行単体のみならず、グループ一体となって、反社会的勢力の排除に取り組むこととしているか。さらに、グループ外の他社(信販会社等)との提携による金融サービスの提供などの取引を行う場合においても、反社会的勢力の排除に取り組むこととしているか。

  • (2)反社会的勢力対応部署による一元的な管理態勢の構築

    反社会的勢力との関係を遮断するための対応を総括する部署(以下「反社会的勢力対応部署」という。)を整備し、反社会的勢力による被害を防止するための一元的な管理態勢が構築され、機能しているか。

    特に、一元的な管理態勢の構築に当たっては、以下の点に十分留意しているか。

    • マル1反社会的勢力対応部署において反社会的勢力に関する情報を積極的に収集・分析するとともに、当該情報を一元的に管理したデータベースを構築し、適切に更新(情報の追加、削除、変更等)する体制となっているか。また、当該情報の収集・分析等に際しては、グループ内で情報の共有に努め、業界団体等から提供された情報を積極的に活用しているか。さらに、当該情報を取引先の審査や当該金融機関における株主の属性判断等を行う際に、適切に活用する体制となっているか。

    • マル2反社会的勢力対応部署において対応マニュアルの整備や継続的な研修活動、警察・暴力追放運動推進センター・弁護士等の外部専門機関との平素からの緊密な連携体制の構築を行うなど、反社会的勢力との関係を遮断するための取組みの実効性を確保する体制となっているか。特に、平素より警察とのパイプを強化し、組織的な連絡体制と問題発生時の協力体制を構築することにより、脅迫・暴力行為の危険性が高く緊急を要する場合には直ちに警察に通報する体制となっているか。

    • マル3反社会的勢力との取引が判明した場合及び反社会的勢力による不当要求がなされた場合等において、当該情報を反社会的勢力対応部署へ迅速かつ適切に報告・相談する体制となっているか。また、反社会的勢力対応部署は、当該情報を迅速かつ適切に経営陣に対し報告する体制となっているか。さらに、反社会的勢力対応部署において実際に反社会的勢力に対応する担当者の安全を確保し担当部署を支援する体制となっているか。

  • (3)適切な事前審査の実施

    反社会的勢力との取引を未然に防止するため、反社会的勢力に関する情報等を活用した適切な事前審査を実施するとともに、契約書や取引約款への暴力団排除条項の導入を徹底するなど、反社会的勢力が取引先となることを防止しているか。

    提携ローン(4者型)(注)については、暴力団排除条項の導入を徹底の上、銀行が自ら事前審査を実施する体制を整備し、かつ、提携先の信販会社における暴力団排除条項の導入状況や反社会的勢力に関するデータベースの整備状況等を検証する態勢となっているか。

    • (注)提携ローン(4者型)とは、加盟店を通じて顧客からの申込みを受けた信販会社が審査・承諾し、信販会社による保証を条件に金融機関が当該顧客に対して資金を貸付けるローンをいう。

  • (4)適切な事後検証の実施

    反社会的勢力との関係遮断を徹底する観点から、既存の債権や契約の適切な事後検証を行うための態勢が整備されているか。

  • (5)反社会的勢力との取引解消に向けた取組み

    • マル1反社会的勢力との取引が判明した旨の情報が反社会的勢力対応部署を経由して迅速かつ適切に取締役等の経営陣に報告され、経営陣の適切な指示・関与のもと対応を行うこととしているか。

    • マル2平素から警察・暴力追放運動推進センター・弁護士等の外部専門機関と緊密に連携しつつ、預金保険機構による特定回収困難債権の買取制度の積極的な活用を検討するとともに、当該制度の対象とならないグループ内の会社等においては株式会社整理回収機構のサービサー機能を活用する等して、反社会的勢力との取引の解消を推進しているか。

    • マル3事後検証の実施等により、取引開始後に取引の相手方が反社会的勢力であると判明した場合には、可能な限り回収を図るなど、反社会的勢力への利益供与にならないよう配意しているか。

    • マル4いかなる理由であれ、反社会的勢力であることが判明した場合には、資金提供や不適切・異例な取引を行わない態勢を整備しているか。

  • (6)反社会的勢力による不当要求への対処

    • マル1反社会的勢力により不当要求がなされた旨の情報が反社会的勢力対応部署を経由して迅速かつ適切に取締役等の経営陣に報告され、経営陣の適切な指示・関与のもと対応を行うこととしているか。

    • マル2反社会的勢力からの不当要求があった場合には積極的に警察・暴力追放運動推進センター・弁護士等の外部専門機関に相談するとともに、暴力追放運動推進センター等が示している不当要求対応要領等を踏まえた対応を行うこととしているか。特に、脅迫・暴力行為の危険性が高く緊急を要する場合には直ちに警察に通報を行うこととしているか。

    • マル3反社会的勢力からの不当要求に対しては、あらゆる民事上の法的対抗手段を講ずるとともに、積極的に被害届を提出するなど、刑事事件化も躊躇しない対応を行うこととしているか。

    • マル4反社会的勢力からの不当要求が、事業活動上の不祥事や役職員の不祥事を理由とする場合には、反社会的勢力対応部署の要請を受けて、不祥事案を担当する部署が速やかに事実関係を調査することとしているか。

  • (7)株主情報の管理

    定期的に自社株の取引状況や株主の属性情報等を確認するなど、株主情報の管理を適切に行っているか。

II −3−1−4−3 監督手法・対応

検査結果、不祥事件等届出書等により、反社会的勢力との関係を遮断するための態勢に問題があると認められる場合には、必要に応じて法第24条に基づき報告を求め、当該報告を検証した結果、業務の健全性・適切性の観点から重大な問題があると認められる場合等には、法第26条に基づく業務改善命令の発出を検討するものとする。その際、反社会的勢力への資金提供や反社会的勢力との不適切な取引関係を認識しているにもかかわらず関係解消に向けた適切な対応が図られないなど、内部管理態勢が極めて脆弱であり、その内部管理態勢の改善等に専念させる必要があると認められるときは、法第26条に基づく業務改善に要する一定期間に限った業務の一部停止命令の発出を検討するものとする。

また、反社会的勢力であることを認識しながら組織的に資金提供や不適切な取引関係を反復・継続するなど、重大性・悪質性が認められる法令違反又は公益を害する行為などに対しては、法第27条に基づく厳正な処分について検討するものとする。

II −3−1−5 資本金の額の増加の届出の手続等

II −3−1−5−1 意義

  • (1)銀行の増資(普通株式及び優先株式)の形態には、公募増資、第三者割当増資等があるが、公募増資など金融商品取引業者を引受人として行われる増資の場合には、法令等遵守の観点からも相応のチェック機能が働くと考えられる(注1)。

    • (注1) 金融商品取引業者の引受けに関するルールについては、「有価証券の引受け等に関する規則(日本証券業協会公正慣習規則第14号)」等を参照。

  • (2)しかしながら、預金及び貸出等の業務を営む銀行の増資が取引先等に対し直接に割当てを行う第三者割当増資である場合には、「資本充実の原則」との関係や「優越的な地位の濫用」の防止等、法令等遵守に係る内部管理態勢の確立について、健全性や誠実さ等の観点から、特に十分な経営努力が払われる必要がある。

    また、増資は恒常的に行われるものではないことから、こうした増資に関するコンプライアンス態勢については、増資の都度、取締役会の責任において、全行的に構築され、行内に徹底される必要がある。ただし、増資を行う銀行を子会社とする銀行持株会社等を割当先とする第三者割当増資については、この限りでない。

  • (3)ついては、銀行法上、増資は届出事項とされていることを踏まえ、第三者割当増資時のコンプライアンスについては、以下のように取り扱うものとする。

  • (4)なお、以下の事務手続きは、一般的な第三者割当増資のスケジュール(注2)を想定して監督上の事務フローを定めたものであり、ケースにより異なる対応が必要な場合、あるいは銀行持株会社の行う第三者割当増資については、適宜、読み替えて対応するものとする。

    • (注2) 一般的な第三者割当増資のスケジュール

      • マル1取締役会において、第三者割当増資を行う方針決議

      • マル2割当先名簿の作成

      • マル3取締役会において、新株発行(条件)決議

      • マル4有価証券届出書の提出

      • マル5取得の申込みの勧誘、申込み及び払込み

    • (注3) 告示第6条第4項又は第7条第4項等に定める国際統一基準行又は特別目的会社等が発行するその他Tier1資本調達手段又はTier2資本調達手段の取扱いについては、主要行等向けの総合的な監督指針を参照のこと。

II −3−1−5−2 着眼点と監督手法・対応

  • (1)銀行が第三者割当増資を行う方針を決定したときにおける取扱い

    銀行が取締役会において、第三者割当増資を行う方針を決議したときは、当該銀行に対し、速やかに法第53条第1項第4号(注1)に定める届出(様式・参考資料編 様式4−7−1)を求めるとともに、会社法、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)及び金融商品取引法等の諸法令に従い適切に実施するための法令等遵守に係る内部管理態勢全般(注2)に関する資料の添付を求めることとする。

    • (注1) 負債性のその他Tier1資本調達手段又はTier2資本調達手段については、銀行法施行規則(以下「施行規則」という。)第35条第1項第22号に定める届出

    • (注2)マル1基本的な経営姿勢

    • マル2資本充実の原則の遵守等

    • マル3優越的な地位の濫用等不公正な取引の防止

    • マル4商品性の適切な説明等

    • マル5適正なディスクロージャーの確保

    • マル6遵守状況の事後的な点検体制の整備

  • (2)届出を受けた内部管理態勢全般を検証し、その適切性に疑義が認められる場合には、必要に応じ、法第24条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

    以下は、検証の際の着眼点を類型化して例示したものである。

    • マル1基本的な経営姿勢

      • イ.取締役会が、第三者割当増資に関する法令等遵守の重要性を理解し、全行的な態勢整備を行っているか。

        • 例えば、適切に区分された事務の区分毎に、決定権限と責任の所在(担当役員、統括部門等の特定を含む。)が明確になっているか。
      • ロ.取締役会は、単に行内規則の制定、通知の発出等にとどまらず、行員への周知・徹底を確実に図ることとしているか。また、行内における監視・けん制機能を実効性あるものとしているか。

      • ハ.取締役会が、会社法、独占禁止法及び金融商品取引法等の法令等に関し、必要に応じ、弁護士や監査法人から文書による意見を求める等、コンプライアンス上万全な対応をとることとしているか。

      • ニ.銀行持株会社が第三者割当増資を行う場合、子銀行の関与のあり方について、適切に対応することとしているか。

    • マル2特に留意すべき事項

      増資に際し遵守すべき全ての法令等に対して、十分なコンプライアンスを確保することとしているか。

      特に下記の点について、十分な遵守態勢が構築されているか。

      • イ.会社法の「資本充実の原則」の遵守及び銀行の自己資本としての健全性(安定性・適格性)の確保

        • a.割当先名簿の作成及び取得の申込みの勧誘に係る方針は、「資本充実の原則」及び自己資本としての健全性の確保の観点を十分踏まえたものとなっているか。必要があれば、融資取引先に対する割当てについて、その適法性等に関する弁護士等の意見書を踏まえて対応することとしているか。

        • b.少なくとも、以下のような問題のあるケースについての取扱いは、明確にされているか。

          • 財務の実態等を勘案すると、返済能力や意思のない先に、直接又は迂回して融資等の信用供与を行い、その融資等の信用供与による資金で増資払込みを行わせる場合
          • 増資引受先の株式保有リスクを何らかの形で銀行又は銀行グループが肩代わりしている場合
        • (注) なお、信用リスク管理の観点からは、経営改善支援に注力すべき融資取引先に増資払込みを行わせることのないよう、業況や財務内容等を十分見極める必要があることに留意する。例えば、「要管理先」以下の債務者に対し、増資払込みを行わせることは、信用リスク管理の適正の観点から問題であることに留意する。

      • ロ.不公正な取引の防止(独占禁止法、金融商品取引法等)

        • a.独占禁止法関係

          独占禁止法が禁止している不公正な取引方法に該当する行為、例えば「優越的な地位の濫用」の発生をどのように防止しようとしているか。

        • b.金融商品取引法関係

          金融商品取引法が禁止している不公正な取引(インサイダー取引、有利買付け等の表示の禁止等)に該当する行為の発生をどのように防止しようとしているか。

      • ハ.適正なディスクロージャーの確保(金融商品取引法等)

        • a.増資に当たっては、金融商品取引法に定める手続き(有価証券届出書の提出と勧誘行為、目論見書の作成・交付、有価証券届出書の効力発生等)を遵守するための措置が講じられているか。

          • 例えば、有価証券届出書の提出前における割当先名簿の作成は行内の準備作業であり、取得の申込みの勧誘は有価証券届出書が提出されていなければすることができないこと等、基本的な留意事項を行員に徹底することとしているか。
        • b.中でも、有価証券届出書及び目論見書作成に当たって、自己資本比率規制等の銀行特有の規制及び当局による金融検査の存在等を踏まえ、投資家保護上万全を期すこととされているか。また、真に重要な「リスク情報」を、分かりやすく、かつ、簡潔に開示することとしているか。

          • 例えば、「組込方式」又は「参照方式」の有価証券届出書及び目論見書を作成する場合でも、有価証券届出書の提出日現在の「リスク情報」を記載する必要があることを認識して、対応することとしているか。
          • 例えば、有価証券届出書提出後においても、投資家保護上重要な事実が発生した場合には、訂正届出書を提出する必要があることを認識して、対応することとしているか。
        • c.その他、財務内容等について誤認を与えるような表示の防止

          • 増資の勧誘に当たって、目論見書(及び有価証券届出書)以外の情報を利用する場合、目論見書の内容と異なる内容となっていないか。
          • 実際には、勧誘に当たっての資料として、業績予想修正(注1)、四半期開示(注2)、IR資料及び役員の記者会見等、当該銀行に関する(特に財務内容に関する)表示が利用されることが多い。

          こうした現状にかんがみ、増資を予定している銀行は、こうした表示が割当先に対し、当行の財務内容について誤認を与えることのないよう万全の措置を講じることとしているか。

        • (注1) 経済情勢の大幅な変化又は当局による金融検査の結果等により必要となった場合に、当期の業績予想を適切に修正発表しているか。

        • (注2) 例えば、第一四半期(4月〜6月)及び第三四半期(10月〜12月)の四半期開示においては、それぞれ9月末及び3月末の見込み自己資本比率に関する予想値が記載されているが、明確な根拠のない見込値又は蓋然性の検討を欠いた見込値となっていないか。

      • 二.商品性の適切な説明等(コンシューマー・コンプライアンス)

        • a.増資の勧誘等に際しての顧客への説明方法及び内容が、民法、金融商品の販売等に関する法律(以下「金融商品販売法」という。)等の観点から、適切なものとなっているか。

          • (注) 銀行が第三者割当増資を行うことは、金融商品販売法の「金融商品販売業者等」に該当し、同法の説明義務を負うこととなる可能性に対して、弁護士等の意見を踏まえて対応することとしているか。

        • b.特に、銀行の場合、預金等との誤認を防止することが重要であり、そのための十分な措置を講じているか。

          • 割当先の知識、経験及び財産の状況を踏まえ、書面の交付その他の適切な方法により、預金等との誤認を防止するための説明を行うこととしているか。
            • (注) 少なくとも個人に対しては、書面の交付による対面説明、書面への双方の署名・捺印、一定期間の記録保管等の措置を講ずることとしているか。

          • 誤認防止のための説明内容は、預金等ではないこと、預金保険の対象とはならないこと、元本が保証されていないこと等を含む十分なものとなっているか。
    • マル3遵守状況の事後的な点検体制の整備

      増資手続きの進行に応じて、コンプライアンスの遵守状況について全行的な事後点検を行う体制を整えているか。

  • (3)銀行が新株発行(条件)の決議を行ったときにおける取扱い

    • マル1法第53条第1項第4号に定める届出(様式・参考資料編 様式4−7−2)の速やかな提出を求めるとともに、内部管理態勢全般の点検結果等に関する資料の添付を求めるものとする。

    • マル2届出等において、銀行の対応の適切性に疑義が認められる場合には、必要に応じ、

      • イ.法第24条に基づき報告を求め、

      • ロ.重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出し、

      • ハ.さらに、有価証券届出書に記載すべき重要な事項の記載が不十分である場合、又は、記載すべき重要な事項又は誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている場合等に該当することが明らかなときには、その旨を証券監査担当部局へ連絡する

      等の対応を行うものとする。

  • (4)資本金の額の増加の届出

    払込期日に法第53条第1項第4号に定める届出(様式・参考資料編 様式4−7−3)を求めるものとする。

  • (5)第三者割当増資終了後の取扱い

    • マル1第三者割当増資終了後6か月間、銀行は法令等遵守に関する内部管理態勢について事後点検を行い、その結果について、法第53条第1項第4号に定める届出の添付資料の追加提出を求める。

    • マル2届出等において、銀行の対応の適切性に疑義が認められる場合には、必要に応じ、法第24条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

II −3−1−6 不適切な取引等

II −3−1−6−1 履行保証

銀行が、いわゆる履行ボンド等、建設工事等の履行保証を行う場合には、保証履行の際に、銀行が、自ら工事を完成させる等法第12条に照らして銀行が行うことができない業務を行う必要が生じない契約内容となっているか。

II −3−1−6−2 正常な取引慣行に反する不適切な取引の発生の防止

過度な協力預金、過当な歩積両建預金等の受入れ、他金融機関への過度な預金紹介、銀行の業務範囲に含まれない商品等の紹介斡旋、顧客の印鑑等の預かり、関連会社等との取引の強要等独占禁止法上問題となる優越的な地位の濫用や顧客の実際の資金需要に基づかない決算期を跨った短期間の与信取引の依頼など正常な取引慣行に反する不適切な取引の発生をどのように防止しているか。

II −3−2 利用者保護等

II −3−2−1 与信取引等(貸付契約並びにこれに伴う担保・保証契約及びデリバティブ取引)に関する顧客への説明態勢

II −3−2−1−1 意義

  • (1)法第12条の2第2項及び施行規則第13条の7は、銀行に対し、その営む業務の内容及び方法に応じ、顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的を踏まえた重要な事項の顧客に対する説明その他の健全かつ適切な業務の運営を確保するための措置(書面の交付その他の適切な方法による商品又は取引の内容及びリスクの説明並びに犯罪を防止するための措置を含む。)に関する社内規則等(社内規則その他これに準ずるものをいう。)を定めるとともに、従業員に対する研修その他の当該社内規則等に基づいて業務が運営されるための十分な体制を整備することを義務付けている。

    また、銀行はその業務に関し、顧客に対し虚偽のことを告げる行為、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤認させるおそれのあることを告げる行為等をしてはならないとされている(法第13条の3、施行規則第14条の11の3)。これらの行為は、そもそも法第12条の2第2項で定める業務の健全かつ適切な運営が確保されるための措置に違反する行為として禁止されてきたものである。

  • (2)「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」(平成15年3月28日公表)において「銀行法等に義務付けられた、貸付契約、保証契約の内容等重要事項に関する債務者への説明態勢の整備に対する監督のあり方を事務ガイドラインに明示する」こととされたことを契機として、広く貸し手の責任において整備すべき与信取引等(貸付契約並びにこれに伴う担保・保証契約及びデリバティブ取引)に関する説明態勢及びそれを補完する相談苦情処理機能について、主として中小企業向け取引、個人向け貸付(住宅ローンを含む。)及び個人保証関係を念頭において、当局が銀行の内部管理態勢の検証を行う際の着眼点を類型化して例示している。

    • (注1) 以下は、説明義務・説明責任(アカウンタビリティ)の徹底を中心に顧客との情報共有の拡大と相互理解の向上に向けた取組みまで幅広い領域を対象としている(別紙1参照)。

    • (注2) 上記(1)の説明体制の整備は銀行の営む全ての業務が対象となっており、資産運用商品の販売に関しては金融商品販売法の施行等に対応した体制整備が必要である( II −3−2−5参照)。

II −3−2−1−2 主な着眼点

  • (1)全行的な内部管理態勢の確立

    • マル1顧客への説明態勢に関する全行的な内部管理態勢の確立に関し、取締役会が適切に機能を発揮しているか。

    • マル2法令の趣旨を踏まえた社内規則等の作成

      • イ.業務の内容及び方法に応じた説明態勢が社内規則等で明確に定められているか。

        与信取引には、例えば、手形割引、貸付金(手形貸付、証書貸付、当座貸越)、債務保証、外国為替等の多様な取引があり、また、保証契約についても、保証約定書形式や手形保証等の類型があるが、それぞれの類型に応じた態勢整備がなされているか。

        さらに、インターネット取引等の異なる取引方法に応じた態勢整備がなされているか。

      • ロ.顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的に応じた説明態勢が社内規則等で明確に定められているか。

        特に、中小企業や個人については実態に即した取扱いとなっているか。

    • マル3法令の趣旨を踏まえた行内の実施態勢の構築

      • イ.社内規則等に基づいて業務が運営されるよう、研修その他の方策(マニュアル等の配付を含む。)が整備されているか。

      • ロ.説明態勢等の実効性を確保するため、検査・監査等の内部けん制機能は十分発揮されているか。

    • マル4説明態勢

      経営相談機能を充実・強化するための環境整備として、与信後における顧客との情報の相互共有に向けた説明態勢が整備されているか( II −3−2−1−2(5)を参照)。

  • (2)契約時点等における説明

    以下の事項について、社内規則等を定めるとともに、従業員に対する研修その他の当該社内規則に基づいて業務が運営されるための十分な体制が整備されているか検証する。

    • マル1商品又は取引の内容及びリスク等に係る説明

      契約の意思形成のために、顧客の十分な理解を得ることを目的として、必要な情報を的確に提供することとしているか。

      なお、検証に当たっては、特に以下の点に留意する。

      • イ.融資取引にオプション・スワップ等のデリバティブ取引が含まれているとき(デリバティブ取引のみを行う場合を含む。)には、法第13条の3各号並びに金融商品取引法第38条各号及び第40条各号の規定に抵触することのないよう、顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的を踏まえ、商品内容やそのリスクに応じて以下の事項に留意しているか。

        • a.当該デリバティブ取引の商品内容やリスクについて、例示等も入れ、具体的に分かりやすい形で解説した書面を交付して、適切かつ十分な説明をすることとしているか。

          • 例えば、

          • 当該デリバティブ取引の対象となる金融指標等の水準等(必要に応じてボラティリティの水準を含む。以下同じ。)に関する最悪のシナリオ(過去のストレス時のデータ等合理的な前提を踏まえたもの。以下同じ。)を想定した想定最大損失額について、前提と異なる状況になればさらに損失が拡大する可能性があることも含め、顧客が理解できるように説明しているか。

          • 当該デリバティブ取引において、顧客が許容できる損失額を確認し、上記の最悪のシナリオに至らない場合でも許容額を超える損失を被る可能性がある場合は、これについて顧客が理解できるように説明しているか。

          • 金融指標等の状況がどのようになれば、当該デリバティブ取引により、顧客自らの経営又は財務状況に重大な影響が生じる可能性があるかについて、顧客が理解できるように説明しているか。

          • 説明のために止むを得ず実際のデリバティブ取引と異なる例示等を使用する場合は、当該例示等は実際の取引と異なることを説明しているか。

          b.当該デリバティブ取引の中途解約及び解約清算金について、具体的に分かりやすい形で解説した書面を交付して、適切かつ十分な説明をすることとしているか。

          • 例えば、

          • 当該デリバティブ取引が原則として中途解約できないものである場合にはその旨について、顧客が理解できるように説明しているか。

          • 当該デリバティブ取引を中途解約すると解約清算金が発生する場合にはその旨及び解約清算金の内容(金融指標等の水準等に関する最悪のシナリオを想定した解約清算金の試算額及び当該試算額を超える額となる可能性がある場合にはその旨を含む。)について、顧客が理解できるように説明しているか。

          • 銀行取引約定書等に定める期限の利益喪失事由に抵触すると、デリバティブ取引についても期限の利益を喪失し、解約清算金の支払義務が生じる場合があることについて、顧客が理解できるように説明しているか。

          • 当該デリバティブ取引において、顧客が許容できる解約清算金の額を確認し、上記の最悪のシナリオに至らない場合でも許容額を超える損失を被る可能性がある場合は、これについて顧客が理解できるように説明しているか。

          c.提供するデリバティブ取引がヘッジ目的の場合、以下を確認するとともに、その確認結果について、具体的に分かりやすい形で、適切かつ十分な説明をすることとしているか。

          • 顧客の事業の状況(仕入、販売、財務取引環境など)や市場における競争関係(仕入先、販売先との価格決定方法)を踏まえても、継続的な業務運営を行う上で有効なヘッジ手段として機能することを確認しているか(注1)。

          • 上記に述べるヘッジ手段として有効に機能する場面は、契約終期まで継続すると見込まれることを確認しているか(注2)。

          • 顧客にとって、今後の経営を見通すことがかえって困難とすることにならないことを確認しているか(注3)。

          • (注1)例えば、為替や金利の相場が変動しても、その影響を軽減させるような価格交渉力や価格決定力の有無等を包括的に判断することに留意する。

          • (注2)例えば、ヘッジ手段自体に損失が発生していない場合であっても、前提とする事業規模が縮小されるなど顧客の事業の状況や市場における競争関係の変化により、顧客のヘッジニーズが左右されたりヘッジの効果がそのニーズに対して契約終期まで有効に機能しない場合があることに留意する。

          • (注3)ヘッジによる仕入れ価格等の固定化が顧客の価格競争力に影響を及ぼし得る点に留意する。

          d.上記a.からc.に掲げる事項を踏まえた説明を受けた旨を顧客から確認し、その記録を書面(確認書等)として残すこととしているか。

          e.不確実な事項について、断定的な判断と誤認させる表示や説明を防ぐ態勢となっているか。

          f.不招請勧誘の禁止の例外と考えられる先に対するデリバティブ取引の勧誘については、法令を踏まえたうえ(注)、それまでの顧客の取引履歴などによりヘッジニーズを確認し、そのニーズの範囲内での契約を勧誘することとしているか。

          • (注)不招請勧誘の禁止の例外とされている「外国貿易その他の外国為替取引に関する業務を行う法人」(金融商品取引業等に関する内閣府令第116条第2号)には、例えば、国内の建設業者が海外から材木を輸入するにあたって、海外の輸出者と直接取引を行うのではなく、国内の商社を通じて実態として輸出入を行う場合は含まれるが、単に国内の業者から輸入物の材木を仕入れる場合は含まれないことに留意する必要がある。

          g.勧誘されたデリバティブ取引に係る契約締結の有無は、融資取引に影響を及ぼすのではないかと顧客が懸念する可能性があることを前提(注1)に、必要に応じ、こうした懸念を解消するための説明を行うこととしているか(注2)。

          • (注1)例えば、デリバティブ取引の勧誘や説明を行った状況(与信取引等の相談中や複数回の勧誘の後かどうかなど)によっては、顧客の立場からは、往々にして銀行は優越的地位を濫用していると見られる可能性があることを意識した販売態勢となっているか。

          • (注2)例えば、勧誘したデリバティブ取引等に応じなくとも、そのことを理由に今後の融資取引に何らかの影響を与えるものではない旨を説明し、優越的地位の濫用がないことの説明を受けた旨を顧客から確認する態勢としているか。

          h.デリバティブ契約締結後、定期的かつ必要に応じて適時、当該顧客の業況及び財務内容を踏まえ、実需の存続状況等に応じたヘッジの有効性とその持続可能性の確認を行い、顧客からの問合せに対して分かりやすく的確に対応するなど、適切なフォローアップに取り組むための態勢を整備しているか。

          また、顧客の要請があれば、定期的又は必要に応じて随時、顧客のポジションの時価情報や当該時点の解約清算金の額等を提供又は通知する等、顧客が決算処理や解約の判断等を行うために必要となる情報を適時適切に提供しているか。

      • ロ.住宅ローン契約については、利用者に適切な情報提供とリスク等に関する説明を行うこととしているか。特に、金利変動型又は一定期間固定金利型の住宅ローンに係る金利変動リスク等について、十分な説明を行うこととしているか。

        説明に当たっては、例えば、「住宅ローン利用者に対する金利変動リスク等に関する説明について」(平成16年12月21日:全国銀行協会申し合わせ)に沿った対応がなされる態勢となっているか。また、適用金利が将来上昇した場合の返済額の目安を提示する場合には、その時点の経済情勢において合理的と考えられる前提に基づく試算を示すこととしているか。

      • ハ.個人保証契約については、保証債務を負担するという意思を形成するだけでなく、その保証債務が実行されることによって自らが責任を負担することを受容する意思を形成するに足る説明を行うこととしているか。

        例えば、保証契約の形式的な内容にとどまらず、保証の法的効果とリスクについて、最悪のシナリオ即ち実際に保証債務を履行せざるを得ない事態を想定した説明を行うこととしているか。

        また、必要に応じ、保証人から説明を受けた旨の確認を行うこととしているか。

      • 二.経営者等との間で保証契約を締結する場合には、「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、以下の点について、主債務者と保証人に対して丁寧かつ具体的に説明を行うこととしているか(II−10−2参照)。

        • a.保証契約の必要性

        • b.原則として、保証履行時の履行請求は、一律に保証金額全額に対して行うものではなく、保証履行時の保証人の資産状況等を勘案した上で、履行の範囲が定められること

        • c.経営者保証の必要性が解消された場合には、保証契約の変更・解除等の見直しの可能性があること

      • ホ.連帯保証契約については、補充性や分別の利益がないことなど、通常の保証契約とは異なる性質を有することを、相手方の知識、経験等に応じて説明することとしているか。

        • (注1) 「補充性」とは、主たる債務者が債務を履行しない場合にはじめてその債務を履行すればよいという性質をいう。

        • (注2) 「分別の利益」とは、複数人の保証人が存在する場合、各保証人は債務額を全保証人に均分した部分(負担部分)についてのみ保証すれば足りるという性質をいう。

      • ヘ.経営者以外の第三者との間で個人連帯保証契約を締結する場合(II−11参照)には、契約者本人の経営への関与の度合いに留意し、原則として、経営に実質的に関与していない場合であっても保証債務を履行せざるを得ない事態に至る可能性があることについての特段の説明を行うこととしているか。併せて、保証人から説明を受けた旨の確認を行うこととしているか。

        • (注)契約者本人が経営に実質的に関与していないにもかかわらず、自発的に連帯保証契約の申し出を行った場合には、金融機関から特段の説明を受けた上で契約者本人が自発的な意思に基づき申し出を行った旨が記載され、自署・押印された書面の提出を受けるなどにより、当該契約について金融機関から要求されたものではないことを確認しているかに留意する。

      • ト.経営者以外の第三者と根保証契約を締結する場合には、原則として、契約締結後、保証人の要請があれば、定期的又は必要に応じて随時、被保証債務の残高・返済状況について情報を提供することとしているか。

      • チ.信用保証協会の保証付き融資については、利用する保証制度の内容や信用保証料の料率などについて、顧客の知識、経験等に応じた適切な説明を行うこととしているか。

    • マル2契約締結の客観的合理的理由の説明

      顧客から説明を求められたときは、事後の紛争等を未然に防止するため、契約締結の客観的合理的理由についても、顧客の知識、経験等に応じ、その理解と納得を得ることを目的とした説明を行う態勢が整備されているか。

      なお、以下のイ.からハ.の検証に関しては、各項に掲げる事項について顧客から求められれば説明する態勢(ハ.の検証にあっては、保証契約を締結する場合に説明する態勢)が整備されているかに留意する。

      • イ.貸付契約

        貸付金額、金利、返済条件、期限の利益の喪失事由、財務制限条項等の契約内容について、顧客の財産の状況を踏まえた契約締結の客観的合理的理由

      • ロ.担保設定契約

        極度額等の契約内容について、債務者との取引状況や今後の取引見通し、担保提供者の財産の状況を踏まえた契約締結の客観的合理的理由

      • ハ.保証契約

        保証人の立場及び財産の状況、主債務者や他の保証人との関係等を踏まえ、当該保証人との間で保証契約を締結する客観的合理的理由

        • a.根保証契約については、設定する極度額及び元本確定期日について、主債務者との取引状況や今後の取引見通し、保証人の財産の状況を踏まえた契約締結の客観的合理的理由

        • b.経営者以外の第三者との間で個人連帯保証契約を締結する場合には、「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立」するとの観点に照らし、必要に応じ、「信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止について」における考え方にも留意しつつ(II−11−2(1)参照)、当該第三者と保証契約を締結する客観的合理的理由。

        • c.経営者等に保証を求める場合には、「経営者保証に関するガイドライン」に基づき(II−10−2参照)、当該経営者等と保証契約を締結する客観的合理的理由

    • マル3契約の意思確認

      • イ.契約の内容を説明し、借入意思・担保提供意思・保証意思・デリバティブ取引の契約意思があることを確認した上で、行員の面前で、契約者本人(注)から契約書に自署・押印を受けることを原則としているか。特に、保証意思の確認に当たっては、契約者本人の経営への関与の度合いについても確認することとしているか。

        • (注)いわゆる「オーナー経営」の中小企業等との重要な契約に当たっては、形式的な権限者の確認を得るだけでは不十分な場合があることに留意する必要がある。

          特に、デリバティブ取引が、顧客の今後の経営に大きな影響を与えるおそれのある場合、当該中小企業等の取締役会等で意思決定された上での契約かどうか確認することが重要である。

      • ロ.例外的な書面等による対応については、顧客保護及び法令等遵守の観点から十分な検討を行った上で、社内規則等において明確に取扱い方法を定め、遵守のための実効性の高い内部けん制機能が確立されているか。

      • ハ.いわゆる捨印慣行の不適切な利用、及び契約の必要事項を記載しないで自署・押印を求め、その後、行員等が必要事項を記載し書類を完成する等の不適切な取扱いを防止するため、実効性の高い内部けん制機能が確立されているか。

      • ニ.銀行として貸付の決定をする前に、顧客に対し「融資は確実」と誤認させる不適切な説明を行わない態勢が整備されているか。

    • マル4契約書等の書面の交付

      貸付契約、担保設定契約又は保証契約を締結したときは、原則として契約者本人に契約書等の契約内容を記載した書面を交付することとしているか。

      なお、検証に当たっては、特に以下の点に留意する。

      • イ.銀行取引約定書は、双方署名方式を採用するか、又はその写しを交付することとしているか。

      • ロ.貸付契約書、担保設定契約書及び保証契約書については、その写しを交付すること等により顧客が契約内容をいつでも確認できるようになっているか。

      • ハ.取引の形態から貸付契約の都度の契約書面の作成が馴染まない手形割引や手形貸付については、契約条件の書面化等、契約面の整備を適切に行うことにより顧客が契約内容をいつでも確認できるようになっているか。

  • (3)貸付けに関する基本的な経営の方針(クレジットポリシー等)との整合性

    与信取引面における説明態勢については、各銀行の貸付けに関する基本的な経営の方針(クレジットポリシー等)との整合性についても検証する必要がある。

    その際、例えば以下の点に留意する。

    • マル1健全な融資慣行の確立と担保・保証に過度に依存しない融資の促進の観点

      健全な融資慣行はできる限り担保・保証に頼ることなく、貸付けは、借り手の経営状況、資金使途、回収可能性等を総合的に判断して行うものであることを認識し、また、「事業からのキャッシュフローを重視し、担保・保証に過度に依存しない融資の促進を図る」、「経営者保証に依存しない融資の一層の促進を図る」(II−10−2参照)、「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立する」(II−11参照)との観点から、経営の方針としてどのように対応しようとしており、当該方針が実際の説明態勢にどのように反映されているか。

    • マル2地域貢献

      地域銀行の貸付に関する基本的な経営の方針等において「地域経済の発展への寄与」、「地域の中小企業の育成・健全化」等の姿勢を掲げている場合に、当該方針が実際の説明態勢にどのように反映されているか。

  • (4)銀行取引約定書ひな型の廃止への対応

    平成12年4月に全国銀行協会の「銀行取引約定書ひな型」が廃止されたことを受け、各銀行が自己責任に基づいて一層の創意工夫を発揮すること及び顧客のより自由な選択を可能とすることが求められているが、この点に関する顧客への説明態勢が整備されているか。

    なお、検証に当たっては、例えば以下の点に留意する。

    • マル1ひな型廃止と新銀行取引約定書の導入の趣旨等について、既存の顧客にも適切に説明を行う態勢が整備されているか。

    • マル2従来の銀行取引約定書を差し入れている債務者及び当該約定書に連署している連帯保証人からの求めがあれば、新しい約定書及び保証契約書への差し替えに応じる態勢が整備されているか。

    • マル3なお、新銀行取引約定書を導入しないこととしている場合には、顧客から求められれば、下記の金融制度調査会答申の考え方を踏まえ、客観的合理的理由について説明する態勢が整備されているか。

      • (参考)「我が国金融システムの改革について」(平成9年6月13日 金融制度調査会答申 抜粋)

        • 4.金融機関等の利用者の保護

          • (4)各種約款等について

            銀行等との取引における各種約款については、例えば、約款等の写しの交付が必ずしも徹底されていない。また、条項によっては利用者にとって一方的、あるいは不明確であるという批判がある。今後、こうした指摘があることを踏まえ、銀行等と利用者との衡平の観点、利用者にとって契約関係をより明確に分かりやすくする観点から、銀行取引約定書、消費者ローンひな型等の各種約款等の見直しについて直ちに関係業者において検討が開始され、98年度中にも所要の措置が講ぜられることが必要であると考えられる。

  • (5)顧客との情報共有の拡大と相互理解の向上に向けた取組み

    貸し手銀行と借り手企業がリレーションシップバンキング(間柄重視の地域密着型金融)に伴うリスクを的確に認識し、リスク情報を共有し、リスクの共同管理やコストの共同負担を行うという基本的方向性を踏まえれば、地域密着型金融の機能強化のためには、貸し手と借り手の相互の共通理解を築き、その基盤の下でリスクを共同管理しながら必要に応じ経営改善支援・早期事業再生等に取り組んでいくことが重要である。

    こうした観点から、説明態勢に関連して、以下のような態勢が整備されているかについても検証するものとする。

    • マル1相互の共通理解に向けた基盤整備の取組み

      • イ.銀行側からの意思疎通

        各銀行においては、与信後における債務者の業況把握、貸出条件の履行状況、資金使途の確認、事業計画の遂行状況といった債務者の実情にあった適切な管理を十分行うことが必要であるが、こうした過程における借り手企業の業況や財務内容、担保提供を受けた資産の評価等に関する銀行の判断について、借り手企業との相互の共通理解を得ることを目的とした説明態勢が整備されているか。

      • ロ.借り手企業からの意思疎通

        借り手企業に対し、長期継続的な信頼関係をもとに、経営内容について早め早めに銀行と相談することが地域密着型金融のメリットを享受することになることを理解してもらうための説明態勢が整備されているか。

    • マル2経営相談・支援機能の充実・強化に向けた取組み

      経営改善支援(経営改善計画や借入金返済計画の策定を含む。)や早期事業再生に向けた取組みが必要と認められる場合には、相互の共通理解の下、顧客の業況や財務内容、さらには事業の将来性等についての銀行の判断を率直に説明した上で、顧客との相談・顧客への助言を行うこととしているか。

  • (6)取引関係の見直し等の場合の対応

    借り手企業との取引関係の見直し等を行う場合の対応については、銀行の営業上の判断に即した本来の説明を的確に行う態勢が整備されることが必要であり、その際、金融検査や金融検査マニュアル等を口実とするなどの不適切な説明が行われないよう留意することが必要である。

    このため、下記のマル1からマル3の場合において、それぞれ下記のような適切な説明等の対応を行う態勢が整備されているかどうかについて検証するものとする。

    • マル1契約締結後の金利の見直し、返済条件の変更、保証契約の見直し、担保追加設定・解除等の場合

      これまでの取引関係や、顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的を踏まえ、II −3−2−1−2(2)(契約時点等における説明)と基本的に同様に、顧客の理解と納得を得ることを目的とした説明態勢が整備されているか。

      特に、借り手企業の事業承継時においては、「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、前経営者が負担する保証債務について、後継者に当然に引き継がせるのではなく、必要な情報開示を得た上で、保証契約の必要性等について改めて検討するとともに、その結果、保証契約を締結する場合には、保証契約の必要性等について主債務者及び後継者に対して丁寧かつ具体的な説明を行う態勢が整備されているか。

      また、前経営者から保証契約の解除を求められた場合には、前経営者が引き続き実質的な経営権・支配権を有しているか否か、当該保証契約以外の手段による既存債権の保全の状況、法人の資産・収益力による借入返済能力等を勘案しつつ、保証契約の解除についての適切な判断を行う態勢が整備されているか(II−10−2参照)。

    • マル2顧客の要望を謝絶し貸付契約に至らない場合

      これまでの取引関係や、顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的に応じ、可能な範囲で、謝絶の理由等についても説明する態勢が整備されているか。

      • 例えば、長期的な取引関係を継続してきた顧客に係る手形貸付について更なる更改を謝絶する場合、信義則の観点から顧客の理解と納得が得られるよう、原則として時間的余裕をもって説明することとしているか。

      • 例えば、信用保証協会の保証付き融資について、営業上の判断に即した本来の説明を的確に行うことなく、平成19年10月より「責任共有制度」が導入されたことを口実として融資を謝絶するといった不適切な対応を行っていないか。

    • マル3延滞債権の回収(担保処分及び個人保証の履行請求によるものを含む。)、債権譲渡、企業再生手続(法的整理・私的整理)及び債務者や保証人の個人再生手続等の場合

      • イ.これまでの取引関係や、顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的に応じ、かつ、法令に則り、一連の各種手続を段階的かつ適切に執行する態勢が整備されているか。

        • 例えば、経営者以外の第三者の保証人個人に保証債務の履行を求める場合は、基本的に保証人が主債務者の状況を当然には知り得る立場にないことに留意し、事後の紛争等を未然に防止するため、必要に応じ、一連の各種手続について正確な情報を提供する等適切な対応を行う態勢となっているか(II−11−2(2)参照)。
      • ロ.手続の各段階で、顧客から求められれば、その客観的合理的理由を説明することとしているか。

      • ハ.特に経営者保証における保証債務の履行に際しては、「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、保証人の手元に残すことのできる残存資産の範囲について、必要に応じ支援専門家とも連携しつつ、保証人の履行能力、経営者たる保証人の経営責任や信頼性、破産手続における自由財産の考え方との整合性等を総合的に勘案して決定する態勢となっているか(II−10−2参照)。

      • ニ.貸付債権の流動化

        • 対象債権を有する銀行は、原債務者の保護に十分配慮しているか。
        • 債務者等を圧迫し又はその私生活若しくは業務の平穏を害するような者に対して貸付債権を譲渡していないか。
  • (7)苦情等処理機能の充実・強化

    • マル1苦情等の事例の蓄積と分析を行い、契約時点等における説明態勢の改善を図る取組みや苦情が多く寄せられる商品、取引の販売を継続するかどうかの検討を行うこととしているか。

      また、説明態勢の改善に取り組んだ後に販売、契約した商品、取引に関する苦情相談等を確認し、当該取組みの効果を確認することとしているか。

      なお、検証に当たっては、特に、II −3−2−1−2(6)(取引関係の見直し等の場合の対応)に関する苦情等の取扱体制の実効性や II −3−2−6−2(苦情等対処に関する内部管理態勢の確立)に留意する。

    • マル2優越的地位の濫用が疑われる等の重大な苦情等の検証にあたっては、検証の客観性・適切性を確保する観点から、苦情等の発生原因となった営業店担当者等の報告等のみを判断の根拠とせず、必要に応じ、本部等の検証部署の担当者が苦情者等に直接確認するなどの措置を適切に講じる態勢となっているか。

    • マル3反社会的勢力との絶縁等民事介入暴力に対する適切な対応態勢が整備されているか。

      • イ.融資・担保解除の強要や回収妨害等の不当な行為に対する対応態勢が確立されているか。

      • ロ.与信取引関連も含め、犯収法に基づく疑わしい取引の届出を的確に行うための法務問題に関する一元的な管理態勢が整備され、機能しているか。

  • (8)不公正取引との誤認防止

    • マル1独占禁止法上問題となる優越的な地位の濫用と誤認されかねない説明を防止する態勢が整備されているか。

      平成18年6月に公正取引委員会から「金融機関と企業との取引慣行に関する調査報告書」が公表され、優越的な地位の濫用として問題となる行為の例が示されているが、これを踏まえた顧客への説明態勢が整備されているか。上記報告書を単に営業店に配付するにとどまらず、実務に即した具体的な説明態勢の整備を行っているか。

      なお、検証に当たっては、例えば、以下の点に留意する。

      • イ.問題となる行為の例として「借り手企業に対し、その責めに帰すべき正当な事由がないのに、要請に応じなければ今後の融資等に関し不利な取扱いをする旨を示唆すること等によって、契約に定めた金利の引上げを受け入れさせ、又は、契約に定めた返済期限が到来する前に返済させること」、「債権保全に必要な限度を超えて、過剰な追加担保を差し入れさせること」が示されているが、こうした行為が行われないように法令等遵守態勢を確立する一方で、金利の見直し等の客観的合理的理由について、顧客の理解と納得を得ることを目的とした説明態勢が整備されているか。

      • ロ.問題となる行為の例として「借り手企業に対し、要請に応じなければ融資等に関し不利な扱いをする旨を示唆して、自己の提供するファームバンキング、デリバティブ商品、社債受託管理等の金融商品・サービスの購入を要請すること」が示されているが、こうした要請を行わないように法令等遵守態勢を確立することとしているか。

      • ハ.同一の顧客に対する複数の取引の採算性を一括してみる、いわゆる「総合採算取引」を行う場合(抱き合わせ販売に該当する取引を除く)にあっても、上記イ.及びロ.の態勢を整備させた上で行うこととしているか。

    • マル2金融商品取引法に規定されたいわゆるインサイダー取引規制等の不公正取引と誤認されかねない説明を防止する態勢が整備されているか。

II −3−2−1−3 監督手法・対応

  • (1)顧客への説明態勢及びそれを補完する相談苦情処理機能が構築され機能しているかどうかは、顧客保護及び利用者利便の観点も含め、銀行の健全かつ適切な業務運営の基本にかかわることから、関係する内部管理態勢は高い実効性が求められる。

    検査結果、不祥事件等届出書等により、こうした内部管理態勢の実効性等に疑義が生じた場合、顧客を誤解させるおそれのある表示を行うなど禁止行為に該当する疑義がある場合は、必要に応じ報告(法第24条に基づく報告を含む。)を求めて検証し、業務運営の適切性、健全性に問題があると認められれば、法第24条に基づき改善報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

  • (2)上記の報告又は業務改善状況等を検証した結果、経営として II −3−2−1−1(1)の法令の趣旨に反し重要な社内規則等の作成自体を怠っていたことや顧客に対し虚偽の説明を行っていたことが確認された場合など重大な法令違反と認められるときは、法第27条に基づく行政処分(例えば、社内規則等の作成等の十分な体制整備がなされるまでの間の業務の一部停止)を検討する必要があることに留意する。ただし、個々の金融商品取引に係る行為が金融商品取引法に違反するおそれがある場合は、登録金融機関の監督担当部門と十分に連携する必要があることに留意する。

  • (参考)

    • マル1「地域密着型金融の取組みについての評価と今後の対応について−地域の情報集積を活用した持続可能なビジネスモデルの確立を−」(平成19年4月5日:金融審議会)

    • マル2金融機関と企業との取引慣行に関する調査報告書(平成18年6月21日:公正取引委員会)

    • マル3地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム(平成17〜18年度)(平成17年3月29日:金融庁)

    • マル4新しい中小企業金融の法務に関する研究会報告書(平成15年7月16日:新しい中小企業金融の法務に関する研究会)

    • マル5リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム(平成15年3月28日:金融庁)

    • マル6リレーションシップバンキングの機能強化に向けて(平成15年3月27日:金融審議会)

    • マル7「中期的に展望した我が国金融システムの将来ビジョン」(平成14年9月30日:金融審議会)

    • マル8金融機関と企業との取引慣行に関する調査報告書(平成13年7月4日:公正取引委員会)

    • マル9銀行取引約定書ひな型の廃止と留意事項の作成について(平成12年4月18日:全国銀行協会)

    • マル10我が国金融システムの改革について(平成9年6月13日:金融制度調査会)

(別紙1) 与信取引に関する顧客への説明態勢及び相談苦情処理機能に関する監督指針
−説明義務・説明責任(アカウンタビリティ)の徹底、顧客との情報共有の拡大と相互理解の向上に向けた取組み−(PDF:140KB)

II −3−2−2 顧客の誤認防止等

II −3−2−2−1 意義

顧客に対する利便性の向上や事務の合理化の観点から、当該銀行が、その営業所を他者の店舗と同一の建物内に設置するなどの場合があるが、その際、顧客に対する弊害防止措置が講じられていることが重要である。

II −3−2−2−2 主な着眼点

銀行が、その営業所を他者の本支店等と同一建物、同一フロアに設置する場合には、顧客の誤認防止、顧客情報の保護及び防犯上の観点から、適切な措置が講じられているか。また、コンピュータ設備を共用する場合に銀行自らの情報管理規定が遵守できるよう体制が整備されているか。

II −3−2−2−3 監督手法・対応

検査結果、不祥事件等届出書等により、顧客の誤認防止等に問題があると認められる場合には、必要に応じ、法第24条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。

II −3−2−3 顧客等に関する情報管理態勢

II −3−2−3−1 意義

顧客に関する情報は金融取引の基礎をなすものである。したがって、その適切な管理が確保されることが極めて重要であり、銀行は、その業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じなければならないとされている(法第12条の2第2項)。

特に、個人である顧客に関する情報については、施行規則、個人情報の保護に関する法律、金融分野における個人情報保護に関するガイドライン(以下「保護法ガイドライン」という。)及び金融分野における個人情報保護に関するガイドラインの安全管理措置等についての実務指針(以下「実務指針」という。)の規定に基づく適切な取扱いが確保される必要がある。

また、クレジットカード情報(カード番号、有効期限等)を含む個人情報(以下「クレジットカード情報等」という。)は、情報が漏えいした場合、不正使用によるなりすまし購入など二次被害が発生する可能性が高いことから、厳格な管理が求められる。

さらに、銀行は、法人関係情報(金融商品取引業等に関する内閣府令第1条第4項第14号)を入手し得る立場であることから、その厳格な管理と、インサイダー取引等の不公正な取引の防止が求められる。

以上を踏まえ、銀行は、顧客に関する情報及び法人関係情報(以下「顧客等に関する情報」という。)を適切に管理し得る態勢を確立することが重要である。

II −3−2−3−2 主な着眼点

  • (1)顧客等に関する情報管理態勢

    • マル1経営陣は、顧客等に関する情報管理の適切性を確保する必要性及び重要性を認識し、適切性を確保するための組織体制の確立(部門間における適切なけん制の確保を含む)、社内規程の策定等、内部管理態勢の整備を図っているか。

    • マル2顧客等に関する情報の取扱いについて、具体的な取扱基準を定めた上で、研修等により役職員に周知徹底しているか。特に、当該情報の他者への伝達については、コンプライアンス(顧客に対する守秘義務、説明責任)及びレピュテーションの観点から検討を行った上で取扱基準を定めているか。

    • マル3顧客等に関する情報へのアクセス管理の徹底(アクセス権限を付与された本人以外が使用することの防止等)、内部関係者による顧客等に関する情報の持出しの防止に係る対策、外部からの不正アクセスの防御等情報管理システムの堅牢化、店舗の統廃合等を行う際の顧客等に関する情報の漏えい等の防止などの対策を含め、顧客等に関する情報の管理が適切に行われているかを検証できる体制となっているか。

      また、特定職員に集中する権限等の分散や、幅広い権限等を有する職員への管理・けん制の強化を図る等、顧客等に関する情報を利用した不正行為を防止するための適切な措置を図っているか。

    • マル4顧客等に関する情報の漏えい等が発生した場合に、適切に責任部署へ報告され、二次被害等の発生防止の観点から、対象となった顧客等への説明、当局への報告及び必要に応じた公表が迅速かつ適切に行われる体制が整備されているか。

      また、情報漏えい等が発生した原因を分析し、再発防止に向けた対策が講じられているか。更には、他社における漏えい事故等を踏まえ、類似事例の再発防止のために必要な措置の検討を行っているか。

    • マル5独立した内部監査部門において、定期的又は随時に、顧客等に関する情報管理に係る幅広い業務を対象にした監査を行っているか。

      また、顧客等に関する情報管理に係る監査に従事する職員の専門性を高めるため、研修の実施等の方策を適切に講じているか。

  • (2)個人情報管理

    • マル1個人である顧客に関する情報については、施行規則第13条の6の5に基づき、その安全管理及び従業者の監督について、当該情報の漏えい、滅失又はき損の防止を図るために必要かつ適切な措置として以下の措置が講じられているか。

      • イ.保護法ガイドライン第10条及び第11条の規定に基づく措置

      • ロ.実務指針 I 、II 及び別添2の規定に基づく措置

    • マル2個人である顧客に関する人種、信条、門地、本籍地、保健医療又は犯罪経歴についての情報その他の特別の非公開情報(注)を、施行規則第13条の6の7に基づき、保護法ガイドライン第6条第1項各号に列挙する場合を除き、利用しないことを確保するための措置が講じられているか。

      (注)「その他の特別の非公開情報」とは、以下の情報をいう。

      • イ.労働組合への加盟に関する情報

      • ロ.民族に関する情報

      • ハ.性生活に関する情報

    • マル3クレジットカード情報等については、以下の措置が講じられているか。

      • イ.クレジットカード情報等について、利用目的その他の事情を勘案した適切な保存期間を設定し、保存場所を限定し、保存期間経過後適切かつ速やかに廃棄しているか。

      • ロ.業務上必要とする場合を除き、クレジットカード情報等をコンピューター画面に表示する際には、カード番号を全て表示させない等の適切な措置を講じているか。

      • ハ.独立した内部監査部門において、クレジットカード情報等を保護するためのルール及びシステムが有効に機能しているかについて、定期的又は随時に内部監査を行っているか。

  • (3)法人関係情報を利用したインサイダー取引等の不公正な取引の防止

    • マル1役職員による有価証券の売買その他の取引等に係る社内規則を整備し、必要に応じて見直しを行う等、適切な内部管理態勢を構築しているか。

    • マル2役職員によるインサイダー取引等の不公正な取引の防止に向け、職業倫理の強化、関係法令や社内規則の周知徹底等、法令等遵守意識の強化に向けた取組みを行っているか。

    • マル3法人関係情報を入手し得る立場にある銀行の役職員が当該法人関係情報に関連する有価証券の売買その他の取引等を行った際には報告を義務付ける等、不公正な取引を防止するための適切な措置を講じているか。

II −3−2−3−3 監督手法・対応

検査結果、不祥事件等届出書等により、顧客等に関する情報管理態勢に問題があると認められる場合には、必要に応じ、法第24条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。

(注) 個人情報については、必要に応じて別途、個人情報保護に関する法律に基づき、個人である顧客に関する情報の取扱いについての報告の徴収・助言、同法の違反を是正するために必要な措置をとるべき旨等の勧告・命令を行うものとする。

II −3−2−4 外部委託

II −3−2−4−1 意義

銀行が、その業務を第三者に委託すること(以下「外部委託」という。)は、経営の効率化を図ることにとどまらず、より専門性を有する者に業務を委託することで、多様な顧客ニーズへの対応や急速な技術革新を踏まえた迅速な対応等を図ることも期待できる。しかしながら、銀行が外部委託を行う場合には、顧客を保護するとともに、外部委託に伴う様々なリスクを適切に管理するなど業務の健全かつ適切な運営を確保することが求められることから、法令により、銀行は委託業務の的確な遂行を確保するための措置を講じなければならないとされている(法第12条の2第2項、施行規則第13条6の8)。

以下に示す観点は、外部委託が行われている場合の一般的な着眼点であるが、委託業務の内容等に応じ、追加的に検証を必要とする場合があることに留意するものとする。

  • (注1) 外部委託には、銀行がその業務を営むために必要な事務を第三者に委託することを含む(形式上、外部委託契約が結ばれていなくとも、その実態において外部委託と同視しうるものを含む。)。

  • (注2) 銀行の固有業務を営むために必要な業務の一部について外部委託が行われている場合(法第52条の36第1項の許可を受けて銀行代理業を営む場合を除く。)には、以下の着眼点のほか、当該外部委託が銀行代理業に該当するものとなっていないかどうかについても、検証を行うよう配意するものとする。

  • (注3) 例えば、銀行の付随業務のみを外部委託することは銀行法上の許可を必要とする銀行代理業には該当するものではないが、こうした外部委託が行われている場合には、委託者である銀行に対する総合的なヒアリング等により、定期的に以下の着眼点を踏まえた状況把握等に努めるものとする。

  • (注4) 銀行と当該銀行の子会社等との間で外部委託が行われている場合には、本監督指針 III −4−7等も参照するものとする。

II −3−2−4−2 主な着眼点

  • (1)顧客保護の観点から以下の態勢整備(委託契約等において外部委託先に対して態勢整備を求めることを含む。)が図られているか。

    • マル1委託契約によっても当該銀行と顧客との間の権利義務関係に変更がなく、顧客に対しては、当該銀行自身が業務を行ったのと同様の権利が確保されていることが明らかとなっているか。

    • マル2委託業務に関して契約どおりサービスの提供が受けられないときに、銀行において顧客利便に支障が生じることを未然に防止するための態勢整備が行われているか。

    • マル3委託先における目的外使用の禁止も含めて顧客等に関する情報管理が整備されており、委託先に守秘義務が課せられているか。

    • マル4個人である顧客に関する情報の取扱いを委託する場合には、施行規則第13条の6の5に基づき、その委託先の監督について、当該情報の漏えい、滅失又はき損の防止を図るために必要かつ適切な措置として以下の措置が講じられているか。

      • イ.保護法ガイドライン第12条の規定に基づく措置

      • ロ.実務指針 III の規定に基づく措置

    • マル5外部委託先の管理について、責任部署を明確化し、外部委託先における業務の実施状況を定期的又は必要に応じてモニタリングする等、外部委託先において顧客等に関する情報管理が適切に行われていることを確認しているか。

    • マル6外部委託先において漏えい事故等が発生した場合に、適切な対応がなされ、速やかに委託元に報告される体制になっていることを確認しているか。

    • マル7外部委託先による顧客等に関する情報へのアクセス権限について、委託業務の内容に応じて必要な範囲内に制限しているか。

      その上で、外部委託先においてアクセス権限が付与される役職員及びその権限の範囲が特定されていることを確認しているか。

      さらに、アクセス権限を付与された本人以外が当該権限を使用すること等を防止するため、外部委託先において定期的又は随時に、利用状況の確認(権限が付与された本人と実際の利用者との突合を含む。)が行われている等、アクセス管理の徹底が図られていることを確認しているか。

    • マル8二段階以上の委託が行われた場合には、外部委託先が再委託先等の事業者に対して十分な監督を行っているかについて確認しているか。また、必要に応じ、再委託先等の事業者に対して自社による直接の監督を行っているか。

    • マル9クレーム等について顧客から銀行への直接の連絡体制を設けるなど適切な苦情相談態勢が整備されているか。

  • (2)銀行は、以下に示す点など、その経営の健全性の確保の観点から総合的な検証を行い、必要な態勢整備(委託契約等において外部委託先に対して態勢整備を求めることを含む。)を図っているか。

    • マル1リスク管理

      銀行は、当該委託契約に沿ってサービスの提供を受けられなかった場合の銀行業務への影響等外部委託に係るリスクを総合的に検証し、リスクが顕在化した場合の対応策等を検討しているか。

    • マル2委託先の選定

      銀行経営の合理性の観点からみて十分なレベルのサービスの提供を行い得るか、契約に沿ったサービス提供や損害等負担が確保できる財務・経営内容か、銀行のレピュテーション等の観点から問題ないか等の観点から、委託先の選定を行っているか。

    • マル3契約内容

      契約内容は、例えば以下の項目について明確に示されるなど十分な内容となっているか。

      • イ.提供されるサービスの内容及びレベル並びに解約等の手続き

      • ロ.委託契約に沿ってサービスが提供されない場合における委託先の責務。委託に関連して発生するおそれのある損害の負担の関係(必要に応じて担保提供等の損害負担の履行確保等の対応を含む。)

      • ハ.銀行が、当該委託業務及びそれに関する委託先の経営状況に関して委託先より受ける報告の内容

      • ニ.金融当局の銀行に対する検査・監督上の要請に沿って対応を行う際の取決め

    • マル4銀行に課せられた法令上の義務等

      当該委託業務を銀行自身が行った場合に課せられる法令上の義務等の履行に支障が生じる外部委託となっていないか。

    • マル5銀行側の管理態勢

      委託業務に関する管理者の設置、モニタリング、検証態勢(委託契約において、銀行が委託先に対して業務の処理の適切性に係る検証を行うことができる旨の規定を盛り込む等の対応を含む。)等の行内管理態勢が整備されているか。

    • マル6情報提供

      委託業務の履行状況等に関し委託先から銀行への定期的なレポートに加え、必要に応じ適切な情報が迅速に得られる態勢となっているか。

    • マル7監査

      銀行において、外部委託業務についても監査の対象となっているか。

    • マル8緊急対応

      委託契約に沿ったサービスの提供が行われない場合にも、銀行業務に大きな支障が生じないよう対応が検討されているか。また、顧客に対して委託先に代わりサービス提供が可能な態勢等が整備されているか。

    • マル9グループ会社への外部委託

      委託契約が銀行とグループ会社との間において締結される場合に、契約の内容が実質的に委託先への支援となっており、アームズ・レングス・ルールに違反していないか。

II −3−2−4−3 監督手法・対応

  • (1)銀行の管理態勢に問題が認められる場合

    検査結果、不祥事件等届出書等により、銀行の業務の外部委託に係る内部管理態勢に問題があると認められる場合には、必要に応じ、法第24条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。

  • (2)外部委託先の業務運営態勢等に問題が認められる場合

    • マル1銀行に対する対応

      検査結果等により外部委託先の業務運営態勢に問題があると認められる場合や、不祥事件等届出書等により外部委託先において不適切な業務運営が行われていると認められる場合には、先ずは委託者である銀行を通じて、事実関係等(当該銀行の管理態勢等を含む。)の把握等に努めることを基本とすることとする。この場合においても、当該銀行に対しては、必要に応じ、法第24条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。ただし、事案の緊急性や重大性等を踏まえ、以下マル2の対応を並行して行うことを妨げるものではない。

    • マル2外部委託先に対する対応

      上記マル1による対応では十分な実態把握等が期待できない場合などには、外部委託先に対して、直接、ヒアリングを行うなど事実関係の把握等に努めることとするが、特に必要があると認められる場合(例えば、当該外部委託先に対して多数の他の金融機関が同種の外部委託を行っている場合や決済システム全体に影響を及ぼしかねない場合など)には、当該外部委託先に対して、事実関係や発生原因分析及び改善・対応策等必要な事項について、法第24条第2項に基づく報告を求めることとする。

      • (注) 外部委託先に対してヒアリングを実施するに際しては、必要に応じ、委託者である銀行の同席を求めるものとする。

II −3−2−5 預金・リスク商品等の販売・説明態勢

II −3−2−5−1 意義

銀行は、預金等の受入れに際し預金等に関する情報提供を行わなければならないとされており(法第12条の2第1項、施行規則第13条の3及び第13条の4)、特に施行規則第13条の5第1項各号に掲げる商品を取り扱う場合には、預金等との誤認を防止するために適切な説明を行うこととされている。また、銀行は、その営む業務の内容及び方法に応じ適切な業務運営を確保するための措置に関する社内規則等を整備し、当該社内規則等に基づいて業務が運営されるための十分な体制を整備することとされている(法第12条の2第2項、第13条の3、施行規則第13条の5、第13条の7、第14条の11の3)。

リスク商品の販売に当たっては、銀行法のみならず金融商品取引法などの関係法令の規定も踏まえたうえで、上記の体制整備を行う必要がある。

特に、金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動によりその元本に損失が生ずるおそれがある預金又は定期積金等(以下「特定預金等」という。)については、金融商品取引法の行為規制が準用され、契約締結前の書面交付義務、広告等の規制等の対象とされていることにも留意する必要がある。(法第13条の4、施行規則第14条の11の4から第14条の11の30)

II −3−2−5−2 主な着眼点

こうした観点から、以下のような態勢が整備されているかについても検証するものとする。

  • (1)全行的な内部管理態勢の確立

    • マル1顧客への説明態勢に関する全行的な内部管理態勢の確立に関し、取締役会が適切に機能を発揮しているか。

    • マル2法令の趣旨を踏まえた社内規則等の作成

      • イ.業務の内容及び方法に応じた説明態勢が社内規則等で明確に定められているか。

        特に、特定預金等や投資信託等のリスク商品を取り扱う場合には、それぞれの類型に応じた態勢整備がなされているか。

        さらに、インターネット取引等の異なる取引方法に応じた態勢整備がなされているか。

      • ロ.顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的に応じた説明態勢が社内規則等で明確に定められているか。

    • マル3法令の趣旨を踏まえた行内の実施態勢の構築

      • イ.社内規則等に基づいて業務が運営されるよう、研修その他の方策(マニュアル等の配布を含む。)が整備されているか。

      • ロ.説明態勢等の実効性を確保するため、検査・監査等の内部けん制機能は十分発揮されているか。

      • ハ.説明態勢等の実効性の検証を踏まえて、金融商品の内容や販売態勢の見直しを行っているか。

    • マル4金融商品販売法等を踏まえた対応

      法第12条の2第2項、施行規則第13条の5及び第13条の7並びに金融商品販売法等の観点から、金融商品の販売に際しての顧客への説明方法及び内容が適切なものとなっているか。また、金融商品販売法上の勧誘方針の策定・公表義務の趣旨にかんがみ、適正な勧誘の確保に向けた説明態勢の整備に努めているか。

    • マル5不公正取引との誤認防止

      優越的な地位の濫用の防止のための態勢整備に当たっては、顧客が「当該取引が融資に影響を与えるのではないか」との懸念を有している可能性があることを前提に、優越的な地位の濫用と誤認されるおそれのある説明を防止する態勢が整備されているか。

  • (2)預金等の受入れ(特定預金等の受入れを除く。)

    法第12条の2第1項及び施行規則第13条の3の規定の趣旨を踏まえ、預金等の受入れに関し、預金者等に対する情報提供や預金者等の求めに応じた商品情報の説明を適切に行うための態勢が整備されているか。例えば、以下の点に留意する。

    • マル1変動金利預金で金利設定の基準や方法が定められている場合には、これらの基準等及び金利情報の適切な提供を行う態勢が整備されているか。

    • マル2預金商品に係る提携契約等に基づき、提携金融機関に対して販売・説明態勢に係る助言等を行う場合に、当該預金商品のリスクや商品性等に関する情報を適切に提供しているか。

  • (3)リスク商品に係る業務

    • マル1有価証券関連商品の販売

      公共債、投資信託の窓口販売及び金融商品仲介業等、金融商品取引法の適用対象となる業務については、同法等に定められている投資家保護等のための規制に沿った業務運営が確保されているか。例えば、外務員登録未了者による取扱いや、特定されている窓口以外での取扱い等といった、投資家保護に支障となり得る事態を未然に防止するための態勢が整備されているかについて、留意するものとする。その他監督上の着眼点については、「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」の「 VIII .監督上の評価項目と諸手続(登録金融機関)」等を参照するものとする。

      特に、適合性原則を踏まえた説明態勢の整備に当たっては、銀行の顧客は預金者が中心であって投資経験が浅いことが多いことを前提に、元本欠損が生ずるおそれがあることや預金保険の対象とはならないことの説明の徹底等、十分な預金との誤認防止措置が取られているか。

    • マル2特定預金等の受入れ

      特定預金等については、金融商品取引法の行為規制が準用されていることにかんがみ、監督上の着眼点については、「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」の「III−2−3−1適合性原則」、「III−2−3−3広告等の規制」、「III−2−3−4顧客に対する説明態勢」、「IV−3−1−2(3)高齢顧客への勧誘に係る留意事項」等を参照するものとする。

      特に、金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動によりその元本について損失が生ずるおそれがあること等の詳細な説明を行う態勢が整備されているかに留意するものとする。

      例えば、以下の事項について、契約締結前交付書面を交付して説明することとしているか。

      • イ.中途解約時に、違約金等により元本欠損が生ずるおそれがある場合には、その違約金等の計算方法(説明時の経済情勢において合理的と考えられる前提での違約金等の資産額を含む。)。

      • ロ.外貨通貨で表示される特定預金等であって、元本欠損が生ずるおそれのある場合にあってはその旨及びその理由。

      • ハ.払戻時の通貨等を選択できる権利や満期日を選択できる権利を銀行が有している場合には、権利行使によって預金者等が不利となる可能性があること。

    • マル3特定預金等のうち金融商品取引法第2条第20項に規定するデリバティブ取引又は商品先物取引法第2条第15項に規定する商品デリバティブ取引を組み込んだ預金(いわゆる「仕組預金」)で、店頭デリバティブ取引に類する複雑な仕組みを有するものの勧誘・受入れ

      特定預金等については、金融商品取引法の各種行為規制を定めた規定が準用されていることにかんがみ、特に店頭デリバティブ取引に類する複雑な仕組みを有する複雑な仕組預金を受け入れるときには、以下の態勢が整備されているかに留意するものとする。

      • イ.複雑な仕組預金に関する注意喚起文書の配布に係る留意事項

        i) リスクに関する注意喚起、ii ) トラブルが生じた場合の指定ADR機関等の連絡先等を分かりやすく大きな文字で記載した簡明な文書(注意喚起文書)を配布し、顧客属性等に応じた説明を行うことにより、顧客に対する注意喚起を適切に行っているか。また、その実施状況を適切に確認できる態勢となっているか。

      • ロ.複雑な仕組預金の勧誘に係る留意事項(合理的根拠適合性・勧誘開始基準)

        個人顧客に対して複雑な仕組預金の勧誘を行うにあたっては、顧客保護の充実を図る観点から、適合性原則等に基づく勧誘の適正化を図ることが重要であり、例えば、以下の点に留意して検証することとする。

        • 顧客へ提供する仕組預金としての適合性(合理的根拠適合性)の事前検証を行っているか。
        • 仕組預金のリスク特性や顧客の性質に応じた勧誘開始基準を適切に定め、当該基準に従い適正な勧誘を行っているか。
      • ハ.複雑な仕組預金のリスク説明に関する留意事項

        複雑な仕組預金のリスク説明の監督上の着眼点については、「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」の「 IV −3−3−2勧誘・説明態勢(6)」を参照するものとする。

    • マル4特定保険契約の募集

      保険業法第300条の2に規定する特定保険契約の販売・勧誘態勢については、「保険会社向けの総合的な監督指針」の特定保険契約に係る留意点に特に留意するものとする。

  • (4)保険募集

    • マル1総論

      保険募集に関する法令等の遵守、保険商品及び契約に関する正確な説明並びに顧客情報の取扱い等について、マニュアルを策定して研修を実施するとともに内部監査を行うなど、適切な保険募集態勢が確保されているか。

      例えば、銀行等生命保険募集制限先等に対し手数料その他の報酬を得て保険募集を行わないなど適正な保険募集の取組み、消費者の希望や適合性をよく考慮したうえで説明責任を果たす取組み、商品説明や非公開金融情報保護等について消費者の確認・同意を十分に得る取組みのための態勢が整備されているか。

    • マル2募集にあたっての態勢整備について

      • イ.施行規則第13条の5の規定の趣旨を踏まえ、顧客に対し、預金等ではないことや預金保険の対象とはならないこと等について書面を交付して説明するなど、保険契約と預金等との誤認を防止する態勢が整備されているか。誤認防止に係る説明を理解した旨を顧客から書面(確認書等)により確認し、その記録を残すことにより、事後に確認状況を検証できる態勢が整備されているか。

      • ロ.施行規則第14条の11の3の規定の趣旨を踏まえ、銀行の影響力を行使した販売、銀行取引に影響を与えないことの説明の未実施、募集人登録未了者による取扱い等といった、契約者保護に支障となり得る事態を未然に防止するための態勢が整備されているか。特に、保険募集業務に係る取引強制、優越的地位の濫用、抱き合わせ販売等の不公正な取引方法が具体的に認められた場合には、独占禁止法の観点からも問題となり得るが、こうした事態を未然に防止するための態勢が整備されているか。

    (参考)

    • 「高齢者に多い個人年金保険の銀行窓口販売に関するトラブル」(平成17年7月6日:独立行政法人国民生活センター)
    • 「金融機関の業態区分の緩和及び業務範囲の拡大に伴う不公正な取引方法について」(平成16年12月1日:公正取引委員会)

    その他監督上の着眼点については、「保険会社向けの総合的な監督指針」を参照するものとする。

II −3−2−5−3 監督手法・対応

  • (1)リスク商品等の販売・説明態勢等については、金融商品取引法、保険業法などの関係法令等に定められている規制に沿った業務運営を通じ確保されていくものであるが、例えば、検査結果、不祥事件等届出書の受理、相談・苦情等の分析等により、関係法令等に定められている規制に沿った業務運営の確保、適切なリスク商品等の販売・説明態勢等の有効性等に疑義が生じた場合、顧客を誤解させるおそれのある表示を行うなど禁止行為に該当する疑義がある場合、複雑な仕組預金に関する適切な受入れ・説明態勢等の有効性等に疑義がある場合には、原因及び改善策等について関係法令等に照らしつつ深度あるヒアリングを行い、必要な場合には、関係法令に基づく報告徴求等に併せて法第24条に基づく報告を求めることを通じて、着実な改善を促すものとする。

    また、重大な問題があると認められる場合には、関係法令に基づく業務改善命令等に併せて法第26条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

  • (2)さらに、検証の結果、経営陣が II −3−2−5−1の法令の趣旨に反し重要な社内規則等の作成自体を怠っていたことや顧客に対し虚偽の説明を行っていたことが確認された場合など重大な法令違反と認められるときは、法第27条に基づく行政処分(例えば、社内規則等の作成等の十分な体制整備がなされるまでの間の業務の一部停止)を検討する必要があることに留意する。

II −3−2−6 苦情等への対処(金融ADR制度への対応も含む)

II −3−2−6−1 意義

  • (1)相談・苦情・紛争等(苦情等)対処の必要性

    金融商品・サービスは、リスクを内在することが多く、その専門性・不可視性等とも相俟ってトラブルが生じる可能性が高いと考えられる。このため、金融商品・サービスの販売・提供に関しては、トラブルを未然に防止し顧客保護を図る観点から情報提供等の事前の措置を十分に講じることに加え、苦情等への事後的な対処が重要となる。

    近年、金融商品・サービスの多様化・複雑化により金融商品・サービスに関するトラブルの可能性も高まっており、顧客保護を図り金融商品・サービスへの顧客の信頼性を確保する観点から、苦情等への事後的な対処の重要性もさらに高まっている。

    このような観点を踏まえ、簡易・迅速に金融商品・サービスに関する苦情処理・紛争解決を行うための枠組みとして金融ADR制度(ADRについて(注)参照)が導入されており、銀行においては、金融ADR制度も踏まえつつ、適切に苦情等に対処していく必要がある。

    (注)ADR (Alternative Dispute Resolution)

    訴訟に代わる、あっせん・調停・仲裁等の当事者の合意に基づく紛争の解決方法であり、事案の性質や当事者の事情等に応じた迅速・簡便・柔軟な紛争解決が期待される。

  • (2)対象範囲

    銀行の業務に関する申出としては、相談のほか、いわゆる苦情・紛争などの顧客からの不満の表明など、様々な態様のものがありうる。銀行には、これらの様々な態様の申出に対して適切に対処していくことが重要であり、かかる対処を可能とするための適切な内部管理態勢を整備することが求められる。

    加えて、銀行には、金融ADR制度において、苦情と紛争のそれぞれについて適切な態勢を整備することが求められている。

    もっとも、これら苦情・紛争の区別は相対的で相互に連続性を有するものである。特に、金融ADR制度においては、指定ADR機関(注)において苦情処理手続と紛争解決手続の連携の確保が求められていることを踏まえ、銀行においては、顧客からの申出を形式的に「苦情」「紛争」に切り分けて個別事案に対処するのではなく、両者の相対性・連続性を勘案し、適切に対処していくことが重要である。

    (注)指定ADR機関とは、法第2条第17項に規定する「指定紛争解決機関」をいう。

II −3−2−6−2 苦情等対処に関する内部管理態勢の確立

II −3−2−6−2−1 意義

苦情等への迅速・公平かつ適切な対処は、顧客に対する説明責任を事後的に補完する意味合いを持つ重要な活動の一つでもあり、金融商品・サービスへの顧客の信頼性を確保するため重要なものである。銀行は、金融ADR制度において求められる措置・対応を含め、顧客から申出があった苦情等に対し、自ら迅速・公平かつ適切に対処すべく内部管理態勢を整備する必要がある。

II −3−2−6−2−2 主な着眼点

銀行が、苦情等対処に関する内部管理態勢を整備するに当たり、業務の規模・特性に応じて、適切かつ実効性ある態勢を整備しているかを検証する。その際、機械的・画一的な運用に陥らないよう配慮しつつ、例えば、以下の点に留意することとする。

特に、与信取引及び預金・リスク商品等の苦情等対処の検証にあたっては、苦情等対処が説明態勢を補完するものであることに留意し、必要に応じ、II −3−2−1−2、II −3−2−5−2を参照する。

  • (1)経営陣の役割

    取締役会は、苦情等対処機能に関する全行的な内部管理態勢の確立について、適切に機能を発揮しているか。

  • (2)社内規則等

    • マル1社内規則等において、苦情等に対し迅速・公平かつ適切な対応・処理を可能とするよう、苦情等に係る担当部署、その責任・権限及び苦情等の処理手続(事務処理ミスがあった場合等の対応も含む。)を定めるとともに、顧客の意見等を業務運営に反映するよう、業務改善に関する手続を定めているか。

    • マル2苦情等対処に関し社内規則等に基づいて業務が運営されるよう、研修その他の方策(マニュアル等の配布を含む。)により、社内規則等を行内に周知・徹底をする等の態勢を整備しているか。

      特に顧客からの苦情等が多発している場合には、まず社内規則等(苦情等対処に関するものに限らない。)の営業店に対する周知・徹底状況を確認し、実施態勢面の原因と問題点を検証することとしているか。

  • (3)苦情等対処の実施態勢

    • マル1苦情等への対処に関し、適切に担当者を配置しているか。

    • マル2顧客からの苦情等について、関係部署が連携のうえ、速やかに処理を行う態勢を整備しているか。特に、苦情等対処における主管部署及び担当者が、個々の職員が抱える顧客からの苦情等の把握に努め、速やかに関係部署に報告を行う態勢を整備しているか。

    • マル3苦情等の解決に向けた進捗管理を適切に行い、長期未済案件の発生を防止するとともに、未済案件の速やかな解消を行う態勢を整備しているか。

    • マル4苦情等の発生状況に応じ、受付窓口における対応の充実を図るとともに、顧客利便に配慮したアクセス時間・アクセス手段(例えば、電話、手紙、FAX、eメール等)を設定する等、広く苦情等を受け付ける態勢を整備しているか。また、これら受付窓口、申出の方式等について広く公開するとともに、顧客の多様性に配慮しつつ分かりやすく周知する態勢を整備しているか。

    • マル5苦情等対処に当たっては、個人情報について、個人情報の保護に関する法律その他の法令、保護法ガイドライン等に沿った適切な取扱いを確保するための態勢を整備しているか( II −3−2−3参照)。

    • マル6銀行代理業者を含め、業務の外部委託先が行う委託業務に関する苦情等について、銀行自身への直接の連絡体制を設けるなど、迅速かつ適切に対処するための態勢を整備しているか( II −3−2−4−2(1)マル5、IV −5−2−2(9)参照)。

    • マル7反社会的勢力による苦情等を装った圧力に対しては、通常の苦情等と区別し、断固たる対応をとるため関係部署に速やかに連絡し、必要に応じ警察等関係機関との連携を取った上で、適切に対処する態勢を整備しているか。

  • (4)顧客への対応

    • マル1苦情等への対処について、単に処理の手続の問題と捉えるにとどまらず事後的な説明態勢の問題として位置付け、苦情等の内容に応じ顧客から事情を十分にヒアリングしつつ、可能な限り顧客の理解と納得を得て解決することを目指しているか。

    • マル2苦情等を申し出た顧客に対し、申出時から処理後まで、顧客特性にも配慮しつつ、必要に応じて、苦情等対処の手続の進行に応じた適切な説明(例えば、苦情等対処手続の説明、申出を受理した旨の通知、進捗状況の説明、結果の説明等)を行う態勢を整備しているか。

    • マル3申出のあった苦情等について、自ら対処するばかりでなく、苦情等の内容や顧客の要望等に応じて適切な外部機関等を顧客に紹介するとともに、その標準的な手続の概要等の情報を提供する態勢を整備しているか。

      なお、複数ある苦情処理・紛争解決の手段(金融ADR制度を含む。)は任意に選択しうるものであり、外部機関等の紹介に当たっては、顧客の選択を不当に制約していないか留意することとする。

    • マル4外部機関等において苦情等対処に関する手続が係属している間にあっても、当該手続の他方当事者である顧客に対し、必要に応じ、適切な対応(一般的な資料の提供や説明など顧客に対して通常行う対応等)を行う態勢を整備しているか。

  • (5)情報共有・業務改善等

    • マル1苦情等及びその対処結果等が類型化の上で内部管理部門や営業部門に報告されるとともに、重要案件は速やかに監査部門や経営陣に報告されるなど、事案に応じ必要な関係者間で情報共有が図られる態勢を整備しているか。

    • マル2苦情等の内容及び対処結果について、自ら対処したものに加え、外部機関が介在して対処したものを含め、適切かつ正確に記録・保存しているか。また、これらの苦情等の内容及び対処結果について、指定ADR機関より提供された情報等も活用しつつ、分析し、その分析結果を継続的に顧客対応・事務処理についての態勢の改善や苦情等の再発防止策・未然防止策に活用する態勢を整備しているか。

    • マル3苦情等対処機能の実効性を確保するため、検査・監査等の内部けん制機能が十分発揮されるよう態勢を整備しているか。

    • マル4苦情等対処の結果を業務運営に反映させる際、業務改善・再発防止等必要な措置を講じることの判断並びに苦情等対処態勢の在り方についての検討及び継続的な見直しについて、経営陣が指揮する態勢を整備しているか。

  • (6)外部機関等との関係

    • マル1苦情等の迅速な解決を図るべく、外部機関等に対し適切に協力する態勢を整備しているか。

    • マル2外部機関等に対して、自ら紛争解決手続の申立てを行う際、自らの手続を十分に尽くさずに安易に申立てを行うのではなく、顧客からの苦情等の申出に対し、十分な対応を行い、かつ申立ての必要性につき行内で適切な検討を経る態勢を整備しているか。

II −3−2−6−3 金融ADR制度への対応

II −3−2−6−3−1 指定紛争解決機関(指定ADR機関)が存在する場合

II −3−2−6−3−1−1 意義

顧客保護の充実及び金融商品・サービスへの顧客の信頼性の向上を図るためには、銀行と顧客との実質的な平等を確保し、中立・公正かつ実効的に苦情等の解決を図ることが重要である。そこで、金融ADR制度において、指定ADR機関によって、専門家等関与のもと、第三者的立場からの苦情処理・紛争解決が行われることとされている。

なお、金融ADR制度においては、苦情処理・紛争解決への対応について、主に銀行と指定ADR機関との間の手続実施基本契約(法第2条第22項)によって規律されているところである。

銀行においては、指定ADR機関において苦情処理・紛争解決を行う趣旨を踏まえつつ、手続実施基本契約で規定される義務等に関し、適切に対応する必要がある。

II −3−2−6−3−1−2 主な着眼点

銀行が、上記意義を踏まえ、金融ADR制度への対応に当たり、業務の規模・特性に応じて適切かつ実効性ある態勢を整備しているかを検証する。その際、機械的・画一的な運用に陥らないよう配慮しつつ、例えば、以下の点に留意することとする。

なお、「 II −3−2−6−2 苦情等対処に関する内部管理態勢の確立」における留意点も参照すること。

  • (1)総論

    • マル1手続実施基本契約

      • イ.自らが営む銀行業務(法第2条第18項で定義する「銀行業務」を指す。)について、指定ADR機関との間で、速やかに手続実施基本契約を締結しているか。

        また、例えば、指定ADR機関の指定取消しや新たな指定ADR機関の設立などの変動があった場合であっても、顧客利便の観点から最善の策を選択し、速やかに必要な措置(新たな苦情処理措置・紛争解決措置の実施、手続実施基本契約の締結など)を講じるとともに、顧客へ周知する等の適切な対応を行っているか。

      • ロ.指定ADR機関と締結した手続実施基本契約の内容を誠実に履行する態勢を整備しているか。

    • マル2公表・周知・顧客への対応

      • イ.手続実施基本契約を締結した相手方である指定ADR機関の商号又は名称、及び連絡先を適切に公表しているか。

        公表の方法について、例えば、ホームページへの掲載、ポスターの店頭掲示、パンフレットの作成・配布又はマスメディアを通じての広報活動等、業務の規模・特性に応じた措置をとることが必要である。仮に、ホームページに掲載したとしても、これを閲覧できない顧客も想定される場合には、そのような顧客にも配慮することとしているか。

        公表する際は、顧客にとって分かりやすいように表示しているか(例えば、ホームページで公表する場合において、顧客が容易に金融ADR制度の利用に関するページにアクセスできるような表示が望ましい。)。

      • ロ.手続実施基本契約も踏まえつつ、顧客に対し、指定ADR機関による標準的な手続のフローや指定ADR機関の利用の効果(時効中断効等)等必要な情報の周知を行う態勢を整備しているか。

      • ハ.金融商品取引業者、保険会社が組成した金融商品や保険商品を銀行が販売する場合、当該商品を組成した金融商品取引業者、保険会社や、当該商品を販売した銀行といった、業態の異なる複数の業者が関係することになるため、顧客の問題意識を把握した上で、問題の発生原因に応じた適切な指定ADR機関を紹介するなど、丁寧な対応を行っているか。

        • (注)保険商品の場合、銀行(保険募集人)による販売時の説明等の問題であっても、所属保険会社等は、保険業法第283条第1項の規定により保険募集人が保険募集について保険契約者に加えた損害を賠償する責任を負う(同条第2項に掲げる場合を除く。)とされていることから、顧客は、銀行が手続実施基本契約を締結する指定ADR機関のみならず、保険会社が手続実施基本契約を締結する指定ADR機関に対しても、原則として申立てを行うことができることに留意する。

  • (2)苦情処理手続・紛争解決手続についての留意事項

    銀行が手続実施基本契約により手続応諾・資料提出・特別調停案尊重等の各義務を負担することを踏まえ、検証に当たっては、例えば、以下の点に留意することとする。

    • マル1共通事項

      • イ.指定ADR機関から手続応諾・資料提出等の求めがあった場合、正当な理由がない限り、速やかにこれに応じる態勢を整備しているか。

      • ロ.指定ADR機関からの手続応諾・資料提出等の求めに対し拒絶する場合、苦情・紛争の原因となった部署のみが安易に判断し拒絶するのではなく、その判断(正当な理由)について、組織として適切に検討を実施する態勢を整備しているか。また、可能な限り、その理由(正当な理由)について説明する態勢を整備しているか。

    • マル2紛争解決手続への対応

      • イ.紛争解決委員から和解案の受諾勧告又は特別調停案の提示がされた場合、速やかに受諾の可否を判断する態勢を整備しているか。

      • ロ.和解案又は特別調停案を受諾した場合、担当部署において速やかに対応するとともに、その履行状況等を検査・監査部門等が事後検証する態勢を整備しているか。

      • ハ.和解案又は特別調停案の受諾を拒絶する場合、業務規程(法第52条の67第1項)等を踏まえ、速やかにその理由を説明するとともに、訴訟提起等の必要な対応を行う態勢を整備しているか。

II −3−2−6−3−2 指定ADR機関が存在しない場合

II −3−2−6−3−2−1 意義

金融ADR制度においては、指定ADR機関が存在しない場合においても、代わりに苦情処理措置・紛争解決措置を講ずることが法令上求められている。銀行においては、これらの措置を適切に実施し、金融商品・サービスに関する苦情・紛争を簡易・迅速に解決することにより、顧客保護の充実を確保し、金融商品・サービスへの顧客の信頼性の向上に努める必要がある。

II −3−2−6−3−2−2 主な着眼点

銀行が、苦情処理措置・紛争解決措置を講じる場合、金融ADR制度の趣旨を踏まえ、顧客からの苦情・紛争の申出に関し、業務の規模・特性に応じ、適切に対応する態勢を整備しているかを検証する。その際、機械的・画一的な運用に陥らないよう配慮しつつ、例えば、以下の点に留意することとする。

なお、「 II −3−2−6−2 苦情等対処に関する内部管理態勢の確立」における留意点も参照すること。

  • (1)総論

    • マル1苦情処理措置・紛争解決措置の選択

      • イ.自らが営む銀行業務の内容、苦情等の発生状況及び営業地域等を踏まえて、法令で規定されている以下の各事項のうちの一つ又は複数を苦情処理措置・紛争解決措置として適切に選択しているか。なお、その際は、例えば、顧客が苦情・紛争を申し出るに当たり、顧客にとって地理的にアクセスしやすい環境を整備するなど、顧客の利便の向上に資するような取組みを行うことが望ましい。

        • a.苦情処理措置

          • 苦情処理に従事する従業員への助言・指導を一定の経験を有する消費生活専門相談員等に行わせること
          • 自行で業務運営体制・社内規則を整備し、公表等すること
          • 金融商品取引業協会、認定投資者保護団体を利用すること
          • 国民生活センター、消費生活センターを利用すること
          • 他の業態の指定ADR機関を利用すること
          • 苦情処理業務を公正かつ的確に遂行できる法人を利用すること
        • b.紛争解決措置

          • 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律に定める認証紛争解決手続を利用すること
          • 金融商品取引業協会、認定投資者保護団体を利用すること
          • 弁護士会を利用すること
          • 国民生活センター、消費生活センターを利用すること
          • 他の業態の指定ADR機関を利用すること
          • 紛争解決業務を公正かつ的確に遂行できる法人を利用すること
      • ロ.苦情・紛争の処理状況等のモニタリング等を継続的に行い、必要に応じ、苦情処理措置・紛争解決措置について検討及び見直しを行う態勢を整備しているか。

      • ハ.苦情処理業務・紛争解決業務を公正かつ的確に遂行できる法人を利用する場合、当該法人が苦情処理業務・紛争解決業務を公正かつ的確に遂行するに足りる経理的基礎及び人的構成を有する法人であること(施行規則第13条の8第1項第5号、同条第2項第5号)について、相当の資料等に基づいて、合理的に判断しているか。

      • ニ.外部機関を利用する場合、必ずしも当該外部機関との間において業務委託契約等の締結までは求められていないが、標準的な手続のフローや、費用負担に関する事項等について予め取決めを行っておくことが望ましい。

      • ホ.外部機関の手続を利用する際に費用が発生する場合について、顧客の費用負担が過大とならないような措置を講じる等、苦情処理・紛争解決の申立ての障害とならないような措置を講じているか。

    • マル2運用

      苦情処理措置・紛争解決措置の適用範囲を過度に限定的なものとするなど、不適切な運用を行っていないか。なお、苦情処理措置と紛争解決措置との間で適切な連携を確保しているかについても留意する(「 II −3−2−6−1(2)対象範囲」参照)。

  • (2)苦情処理措置(自行で態勢整備を行う場合)についての留意事項

    • マル1消費生活専門相談員等による従業員への助言・指導態勢を整備する場合

      • イ.定期的に消費生活専門相談員等による研修を実施する等、苦情処理に従事する従業員のスキルを向上させる態勢を整備しているか。

      • ロ.消費生活専門相談員等との連絡体制を築く等、個別事案の処理に関し、必要に応じ、消費生活専門相談員等の専門知識・経験を活用する態勢を整備しているか。

    • マル2自行で業務運営体制・社内規則を整備する場合

      • イ.苦情の発生状況に応じ、業務運営体制及び社内規則を適切に整備するとともに、当該体制・規則に基づき公正かつ的確に苦情処理を行う態勢を整備しているか。

      • ロ.苦情の申出先を顧客に適切に周知するとともに、苦情処理にかかる業務運営体制及び社内規則を適切に公表しているか。

        周知・公表の内容として、必ずしも社内規則の全文を公表する必要はないものの、顧客が、苦情処理が適切な手続に則って行われているかどうか自ら確認できるようにするため、苦情処理における連絡先及び標準的な業務フロー等を明確に示すことが重要であることから、それに関連する部分を公表しているかに留意する必要がある。

        なお、周知・公表の方法について、II −3−2−6−3−1−2(1)マル2を参照のこと。

  • (3)苦情処理措置(外部機関を利用する場合)及び紛争解決措置の留意事項

    • マル1周知・公表等

      • イ.銀行が外部機関を利用している場合、顧客保護の観点から、例えば、顧客が苦情・紛争を申し出るに当たり、外部機関を利用できることや、外部機関の名称及び連絡先、その利用方法等、外部機関に関する情報について、顧客にとって分かりやすいように、周知・公表を行うことが望ましい。

      • ロ.苦情処理・紛争解決の申立てが、地理又は苦情・紛争内容その他の事由により、顧客に紹介した外部機関の取扱範囲外のものであるとき、又は他の外部機関等(苦情処理措置・紛争解決措置として銀行が利用している外部機関に限らない。)による取扱いがふさわしいときは、他の外部機関等を顧客に紹介する態勢を整備しているか。

      • ハ.金融商品取引業者、保険会社が組成した金融商品や保険商品を銀行が販売する場合については、II−3−2−6−3−1−2(1)マル2ハ.を参照すること。

    • マル2手続への対応

      • イ.外部機関から苦情処理・紛争解決の手続への応諾、事実関係の調査又は関係資料の提出等を要請された場合、当該外部機関の規則等も踏まえつつ、速やかにこれに応じる態勢を整備しているか。

      • ロ.苦情処理・紛争解決の手続への応諾、事実関係の調査又は関係資料の提供等の要請を拒絶する場合、苦情・紛争の原因となった部署のみが安易に判断し拒絶するのではなく、苦情・紛争内容、事実・資料の性質及び外部機関の規則等を踏まえて、組織として適切に検討を実施する態勢を整備しているか。

        また、当該外部機関の規則等も踏まえつつ、可能な限り拒絶の理由について説明する態勢を整備しているか。

      • ハ.紛争解決の手続を開始した外部機関から和解案、あっせん案等の解決案(以下、「解決案」という。)が提示された場合、当該外部機関の規則等も踏まえつつ、速やかに受諾の可否を判断する態勢を整備しているか。

      • ニ.解決案を受諾した場合、担当部署において速やかに対応するとともに、その履行状況等を検査・監査部門等が事後検証する態勢を整備しているか。

      • ホ.解決案の受諾を拒絶する場合、当該外部機関の規則等も踏まえつつ、速やかにその理由を説明するとともに、必要な対応を行う態勢を整備しているか。

II −3−2−6−4 各種書面への記載

銀行は、各種書面(預金者等に対する情報の提供、契約締結前交付書面等)において金融ADR制度への対応内容を記載することが、法令上、義務付けられている。それら書面には、指定ADR機関が存在しない場合は苦情処理措置・紛争解決措置の内容を記載する必要があるが、例えば、銀行が外部機関を利用している場合、当該外部機関(苦情処理・紛争解決にかかる業務の一部を他の機関に委託等している場合、当該他の機関も含む。)の名称及び連絡先など、実態に即して適切な事項を記載するべきことに留意する。

II −3−2−6−5 行政上の対応

金融ADR制度への対応を含む苦情等対処態勢が構築され機能しているかどうかは、顧客保護・銀行への信頼性確保の観点も含め、銀行の健全かつ適切な業務運営の基本にかかわることから、関係する内部管理態勢は高い実効性が求められる。

当局としては、銀行の対応を全体的・継続的にみて、業務の健全かつ適切な運営を確保するため問題があると認められる場合は、必要に応じ、法第24条に基づき報告を求め、また、重大な問題があると認められる場合は、法第26条に基づく業務改善命令の発出を検討するものとする。更に、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、業務停止命令等の発出も含め、必要な行政処分を検討するものとする。

この点、指定ADR機関が存在する場合において、銀行に手続応諾義務等への違反・懈怠等の問題が認められた場合であっても、一義的には銀行と指定ADR機関との手続実施基本契約にかかる不履行であるため、直ちに行政処分の対象となるものではなく、当局としては、前述のように、銀行の対応を全体的・継続的にみて判断を行うものとする。

なお、一般に顧客と銀行との間で生じる個別の紛争は、私法上の契約に係る問題であり、基本的にADRや司法の場を含め当事者間で解決されるべき事柄であることに留意する必要がある。

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