III  主要行等監督上の評価項目

III -3 業務の適切性等

III -3-1 法令等遵守(特に重要な事項)

銀行の業務の公共性を十分に認識し、法令や業務上の諸規則等を厳格に遵守し、健全かつ適切な業務運営に努めることが顧客からの信頼を確立するためにも重要である。

遵守すべき法令等は多岐にわたり、いずれも重要性に差はないが、これまでの様々な経験と最近の政策的な動向を踏まえ、当面、特に留意すべき点は以下のとおりである。

III -3-1-1 不祥事件等に対する監督上の対応

役職員の不祥事件等に対する業務改善命令等の監督上の対応については、以下のとおり、厳正に取り扱うこととする。

  • (1)不祥事件等の発覚の第一報

    銀行において不祥事件等が発覚し、第一報があった場合は、以下の点を確認するものとする。

    • マル1本部等の事務部門、内部監査部門への迅速な報告及びコンプライアンス規定等に則った取締役会等への報告。

    • マル2刑罰法令に抵触しているおそれのある事実については、警察等関係機関等への通報。

    • マル3事件とは独立した部署での事件の調査・解明の実施。

  • (2)不祥事件等届出書の受理

    法第53条に基づき、銀行が不祥事件の発生を知った日から30日以内に不祥事件等届出書が提出されることとなるが、当該届出書の受理時においては、法令の規定に基づき報告が適切に行われているかを確認する。

    なお、銀行から第一報がなく届出書の提出があった場合は、上記(1)の点も併せて確認するものとする。

  • (3)主な着眼点

    不祥事件と業務の適切性の関係については、以下の着眼点に基づき検証する。

    • マル1当該事件への役員の関与はないか、組織的な関与はないか。

    • マル2当該事件の内容が銀行の経営等に与える影響はどうか。

    • マル3内部けん制機能が適切に発揮されているか。

    • マル4改善策の策定や自浄機能が十分か。

    • マル5当該事件の発覚後の対応が適切か。

  • (4)監督上の措置

    不祥事件等届出書の提出があった場合には、事実関係、発生原因分析、改善・対応策等についてヒアリングを実施し、必要に応じ、法第24条に基づき報告を求め、さらに、重大な問題があるときは、法第26条に基づく業務改善命令等を発出することとする。

III -3-1-2 役員による法令等違反行為への対応

III -3-1-2-1 意義

  • (1)銀行業務を遂行するに際しての役員による組織的な法令違反行為については、当該個人の責任の問題に加え、法人としての銀行の責任も問われる重大な問題であり、信用失墜・風評等により銀行の経営に重大な影響を及ぼすことに留意すべきである。

  • (2)さらに、公共性を有し、経済的に重要な機能を営む銀行の中でも、特に大規模に事業を営む主要行等がそのような事態に陥った場合には、金融システムの健全性を損ね、これに対する国民の信頼を著しく傷つけることとなり、その社会的影響は看過できないことを銘記する必要がある。

III -3-1-2-2 監督手法・対応

  • (1)検査結果、不祥事件等届出書等により、役員による組織的な法令違反の疑いがあると認められた場合には、厳正な内部調査を行うよう要請し、法第24条に基づき報告を求める。

    特に、重大な法令違反の疑いがある場合には、事案に応じ、弁護士、外部専門家等の完全に独立した第三者(注)による客観的かつ厳正な調査を行うよう要請し、法第24条に基づき報告を求める。

    • (注) 例えば顧問弁護士は、完全な第三者には当たらないことに留意する。

  • (2)当該調査結果及び銀行の対応等を踏まえ、法第27条に基づく行政処分など、法令に則して、厳正な行政上の対応を検討する。

III -3-1-3 組織犯罪等への対応

III -3-1-3-1 取引時確認等の措置

III -3-1-3-1-1 意義

  • (1)総論

    公共性を有し、経済的に重要な機能を営む銀行が、例えば総会屋利益供与事件、いわゆるヤミ金融や、テロ資金供与、マネー・ローンダリング等の組織犯罪等に関与し、あるいは利用されることはあってはならないことである。銀行が犯罪組織に利用され犯罪収益の拡大に貢献すること等を防ぐには、全行的に堅牢な法務コンプライアンス体制を構築する必要があるが、特に、犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯収法」という。)に基づく取引時確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置(犯収法第11条に定める取引時確認等の措置をいう。以下「取引時確認等の措置」という。)に関する内部管理態勢を構築することが求められている。

  • (2)「犯収法」制定・改正の経緯等

    • マル1我が国における反社会的勢力による民事介入暴力等の組織犯罪への対応策の変遷をみると、昭和57年に総会屋への利益提供を禁止する改正商法が施行され、平成4年には暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律が施行される等の法制整備等が積み重ねられてきたところである。

    • マル2また、国際的な資金洗浄(マネー・ローンダリング)規制の変遷をみると、昭和63年の国連・麻薬新条約の採択等を契機として、まず薬物犯罪収益等が対象とされ、金融機関に本人特定事項の確認や疑わしい取引の届出が求められるようになった。その後、冷戦終結後の国際情勢の変化に対応し、国際社会の関心も組織犯罪撲滅へと拡大し、資金洗浄規制の前提犯罪も、薬物犯罪から重大犯罪に拡大された。

    • マル3こうした情勢下、我が国の代表的な銀行を含む一連の総会屋への利益提供事件の発覚を受け、平成9年9月に関係閣僚会議において「いわゆる総会屋対策要綱」の申し合わせがなされた。

      この中で、当面の対応策に加え、「組織犯罪対策のための刑事法の検討」が取り上げられ、検討が進められた結果、平成12年2月から組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組犯法」という。)が施行されている。

    • マル4他方、平成13年9月の米国の同時多発テロ以降の、テロ資金供与に関する国際的な厳しい対応姿勢を受け、テロ資金供与の疑いがある取引についても組犯法の疑わしい取引の届出対象に含められるとともに、平成15年1月から、新たに「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律」(以下「本人確認法」という。)が施行された。

      • (注)その後、いわゆる「振り込め詐欺」等の犯罪に銀行の口座が不正利用されている事態にかんがみ、平成16年12月に本人確認法が改正され(「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律」に改称)、預金通帳等を譲り受ける行為等について罰則が設けられている。また、振り込め詐欺救済法において、金融機関は、「振り込め詐欺」に限らず、詐欺その他の人の財産を害する罪の犯罪行為全般に関して、振込先として利用された預金口座等(犯罪利用預金口座等)である疑いがあると認めるときは、当該預金口座等に係る取引停止等の措置を適切に講ずること等が求められている。

    • マル5そして、近年におけるテロ資金その他の犯罪収益の流通に係る国内の実態及びFATF勧告に基づく国際的な対策強化の動向にかんがみ、本人確認法及び組犯法第5章を母体として、本人特定事項の確認及び疑わしい取引の届出の義務対象事業者を金融機関等以外にも広げること等を定めた犯収法の規定が、平成20年3月から新たに施行された。

    • マル6その後、最近のマネー・ローンダリングを巡る犯罪への対策やFATF勧告に基づく対策の一層の強化を図る観点から、取引時の確認事項の追加並びに取引時確認及び疑わしい取引の届出等の措置を的確に行うための体制の整備等を定めた改正犯収法が平成25年4月から施行され、さらに平成26年11月には、疑わしい取引の届出に関する判断の方法や上記体制整備の拡充等を定めた改正犯収法が成立した。

  • (3)我が国の組織犯罪規制等の概要と金融機関のコンプライアンスにとっての意義

    • マル1我が国の組織犯罪規制は、組犯法における組織的な犯罪に対する刑の加重、犯罪収益の隠匿・収受の処罰(金融機関にも適用)及び犯罪収益の没収・追徴の規定等並びに犯収法における金融機関を含めた特定事業者に対する取引時確認及び疑わしい取引の届出の義務付け等からなる(なお、平成15年1月から施行されている改正外為法においても、一定の本人特定事項の確認義務が課されていることにも留意する必要がある。)。

    • マル2組犯法及び犯収法は、組織的犯罪に対する刑事法としての意義、及び、国際的な資金洗浄(マネー・ローンダリング)規制の要請に適う国内実施法制としての意義があるが、金融機関にとっては、

      • イ.取引時確認や確認記録、取引記録の作成・保存義務は、テロ資金の提供が金融機関を通じて行われることの防止に資する金融機関等の顧客管理体制の整備の促進であり、「マネー・ローンダリング防止」を単なる取引時確認等の事務手続きの問題からコンプライアンスの問題(金融機関が犯罪組織に利用され犯罪収益の拡大に貢献することを防ぐための態勢整備)へと位置付け直すとともに、

      • ロ.いわゆる総会屋への対応等を含め、民事介入暴力・組織犯罪に対する全行的なコンプライアンス態勢を構築することが必要になったという点で極めて重要な意義を有するものである。

    • マル3金融機関においては、犯収法が広く組織犯罪一般に対する厳正な対応を義務付ける枠組みであることを真剣に受け止め、万全の態勢を構築する必要がある。

    • マル4更に、振り込め詐欺救済法は、犯罪利用預金口座等について、被害者の財産的被害の迅速な回復に資する観点から、残された資金を被害者に分配するための手続を規定するものであるが、金融機関にとっては、従来、預金規定に基づいて行っていた口座の取引停止等の措置が法的に求められることとなった点において、適切な口座管理の観点から、極めて重要な意義を有する。金融機関においては、不正利用口座に係る取引停止等の措置を、事務手続きの問題ではなくコンプライアンスの問題として位置付け、迅速かつ適切に実施するための態勢を整備していく必要がある。

  • (4)金融サービス濫用防止にとっての意義

    各金融機関が、犯収法により義務付けられた取引時確認等や疑わしい取引の届出、盗難通帳・偽造印鑑等による預金の不正払戻しを防止するための措置、又は犯罪利用預金口座等の疑いがあると認める場合における取引停止等の措置を的確に実施しうる内部管理態勢を構築することは、組織犯罪等による金融サービスの濫用を防止し、我が国金融システムに対する信頼を確保するためにも重要な意義を有している。

    特に、国際的かつ全国的に活動する主要行等においては、国際社会の厳しい要請に応えていく必要があるとともに、組織犯罪の多い都市部に集中して業務展開をしていることなどから「振り込め詐欺」等の組織犯罪に「利用されやすい」というリスク特性を有することにも留意する必要がある。

III -3-1-3-1-2 主な着眼点

銀行の業務に関して、取引時確認等の措置及びリスクベース・アプローチを含む「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(以下「マネロン・テロ資金供与対策ガイドライン」という。)記載の措置を的確に実施し、テロ資金供与やマネー・ローンダリング、預金口座の不正利用といった組織犯罪等に利用されることを防止するため、以下のような態勢が整備されているか。

  • (注1)取引時確認等の措置の的確な実施に当たっては、「犯罪収益移転防止法に関する留意事項について」(平成24年10月金融庁)を参考にすること。

  • (注2)リスクベース・アプローチとは、自己のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与リスクを特定・評価し、これを実効的に低減するため、当該リスクに見合った対策を講ずることをいう。

  • (1)取引時確認等の措置及びマネロン・テロ資金供与対策ガイドライン記載の措置を的確に行うための一元的な管理態勢が整備され、機能しているか。

    特に、一元的な管理態勢の整備に当たっては、以下の措置を講じているか。

    • マル1管理職レベルのテロ資金供与及びマネー・ローンダリング対策のコンプライアンス担当者など、犯収法第11条第3号の規定による統括管理者として、適切な者を選任・配置すること。

    • マル2テロ資金供与やマネー・ローンダリング等に利用されるリスクについて調査・分析し、その結果を勘案した措置を講じるために、以下のような対応を行うこと。

      • イ.犯収法第3条第3項に基づき国家公安委員会が作成・公表する犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案し、取引・商品特性や取引形態、取引に関する国・地域、顧客属性等の観点から、自らが行う取引がテロ資金供与やマネー・ローンダリング等に利用されるリスクについて適切に調査・分析した上で、その結果を記載した書面等(以下「特定事業者作成書面等」という。)を作成し、定期的に見直しを行うこと。

      • ロ.特定事業者作成書面等の内容を勘案し、必要な情報を収集・分析すること、並びに保存している確認記録及び取引記録等について継続的に精査すること。

      • ハ.犯収法第4条第2項前段に定める厳格な顧客管理を行う必要性が特に高いと認められる取引若しくは犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(以下「犯収法施行規則」という。)第5条に定める顧客管理を行う上で特別の注意を要する取引又はこれら以外の取引で犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案してテロ資金供与やマネー・ローンダリング等の危険性の程度が高いと認められる取引(以下「高リスク取引」という。)を行う際には、統括管理者が承認を行い、また、情報の収集・分析を行った結果を記載した書面等を作成し、確認記録又は取引記録等と共に保存すること。

    • マル3適切な従業員採用方針や顧客受入方針を策定すること。

    • マル4必要な監査を実施すること。

    • マル5取引時確認等の措置を含む顧客管理方法について、マニュアル等の作成・従業員に対する周知を行うとともに、従業員がその適切な運用が可能となるように、適切かつ継続的な研修を行うこと。

    • マル6取引時確認や疑わしい取引の検出を含め、従業員が発見した組織的犯罪による金融サービスの濫用に関連する事案についての適切な報告態勢(方針・方法・情報管理体制等)を整備すること。

  • (2)法人顧客との取引における実質的支配者の確認や、外国PEPs(注)該当性の確認、個人番号や基礎年金番号の取扱いを含む本人確認書類の適切な取扱いなど、取引時確認を適正に実施するための態勢が整備されているか。

    (注)犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令(以下「犯収法施行令」という。)第12条第3項各号及び犯収法施行規則第15条各号に掲げる外国の元首及び外国政府等において重要な地位を占める者等をいう。

    とりわけ、犯収法第4条第2項前段及び犯収法施行令第12条各項に定める、下記イ.~二.のような厳格な顧客管理を行う必要性が特に高いと認められる取引を行う場合には、顧客の本人特定事項を、通常と同様の方法に加え、追加で本人確認書類又は補完書類の提示を受ける等、通常の取引よりも厳格な方法で確認するなど、適正に(再)取引時確認を行う態勢が整備されているか。また、資産及び収入の状況の確認が義務づけられている場合について、適正に確認を行う態勢が整備されているか。

    • イ.取引の相手方が関連取引時確認に係る顧客等又は代表者等になりすましている疑いがある場合における当該取引

    • ロ.関連取引時確認が行われた際に当該関連取引時確認に係る事項を偽っていた疑いがある顧客等との取引

    • ハ.犯収法施行令第12条第2項に定める、犯罪による収益の移転防止に関する制度の整備が十分に行われていないと認められる国又は地域に居住し又は所在する顧客等との特定取引等

    • 二.外国PEPsに該当する顧客等との特定取引

    このほか、敷居値以下であるが1回当たりの取引の金額を減少させるために一の取引を分割したものであることが一見して明らかな取引(犯収法施行令第7条第3項各号に掲げる取引に限る。)については、特定取引とみなして、取引時確認を適切に実施することとしているか。

  • (3)疑わしい取引の届出を行うに当たって、顧客の属性、取引時の状況その他銀行の保有している当該取引に係る具体的な情報を総合的に勘案した上で、犯収法第8条第2項及び犯収法施行規則第26条、第27条に基づく適切な検討・判断が行われる態勢が整備されているか。

    当該態勢整備に当たっては、特に以下の点に十分留意しているか。

    • マル1銀行の行っている業務内容・業容に応じて、システム、マニュアル等により、疑わしい顧客や取引等を検出・監視・分析する態勢を構築すること。

    • マル2犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案の上、国籍(例:FATFが公表するマネー・ローンダリング対策に非協力的な国・地域)、外国PEPs該当性、顧客が行っている事業等の顧客属性や、外為取引と国内取引との別、顧客属性に照らした取引金額・回数等の取引態様その他の事情を十分考慮すること。また、既存顧客との継続取引や高リスク取引等の取引区分に応じて、適切に確認・判断を行うこと。

  • (4)コルレス契約について、犯収法第9条、第11条及び犯収法施行規則第28条、第32条並びにマネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに基づき、以下の態勢が整備されているか。

    • (注)犯収法第9条の「外国所在為替取引業者との間で、為替取引を継続的に又は反復して行うことを内容とする契約」とは、国際決済のために外国所在為替取引業者(コルレス先)との間で電信送金の支払、手形の取立、信用状の取次、決済等の為替業務、資金管理等の銀行業務について委託又は受託する旨の契約(コルレス契約)をいう。

    • イ.コルレス先の顧客基盤、業務内容、テロ資金供与やマネー・ローンダリングを防止するための体制整備の状況及び現地における監督当局の当該コルレス先に対する監督体制等について情報収集し、コルレス先を適正に評価した上で、統括管理者による承認を含め、コルレス契約の締結・継続を適切に審査・判断すること。

    • ロ.コルレス先とのテロ資金供与やマネー・ローンダリングの防止に関する責任分担について文書化する等して明確にすること。

    • ハ.コルレス先が営業実態のない架空銀行(いわゆるシェルバンク)でないこと、及びコルレス先がその保有する口座を架空銀行に利用させないことについて確認すること。

      また、確認の結果、コルレス先が架空銀行であった場合又はコルレス先がその保有する口座を架空銀行に利用されることを許容していた場合、当該コルレス先との契約の締結・継続を遮断すること。

  • (5)口座の不正利用等を防止するため、預金の支払や口座開設等に当たって、必要に応じ、取引時確認の実施や口座の利用目的等の確認を行うなど、適切な口座管理を実施するための内部管理態勢が整備されているか。また、口座の不正利用による被害防止のあり方について検討を行い、必要な措置を講じているか。

    特に、いわゆるヤミ金融業者等が預金口座を利用して違法な取立てを行ったり、架空請求書を送り付けて銀行の預金口座に振込みを請求したりするなど、預金口座を不正に利用した悪質な事例が大きな社会問題となっている。また、犯罪資金の払出は被害者の財産的被害の回復を困難ならしめるものである。これらを踏まえ、被害にあった顧客からの届出等、口座の不正利用に関する情報を速やかに受け付ける体制を整備するとともに、こうした情報等を活用して、預金規定や振り込め詐欺救済法に定められている預金取引停止・口座解約等の措置を迅速かつ適切に講ずる態勢を整備しているか。その際、同一名義であることなどから不正利用が疑われる口座等についても、取引状況の調査を行うなど、必要な措置を講ずることとしているか。

  • (6)振込みを利用した犯罪行為の被害者の財産的被害を迅速に回復するため、振り込め詐欺救済法に規定する犯罪利用預金口座等に係る預金等債権の消滅手続や、振込利用犯罪行為の被害者に対する被害回復分配金の支払手続等について、社内規則で明確に定めることなどにより、円滑かつ速やかに処理するための態勢を整備しているか。その際、消滅手続期間中における被害申出者に対し、支払申請に関し利便性を図るための措置を、また、被害が疑われる者に対し、支払手続実施等について周知するため、必要な情報提供その他の措置を、適切に講ずるものとしているか。

  • (7)預金口座の不正利用に関する裁判所からの調査嘱託や弁護士法に基づく照会等に対して、個々の具体的事案毎に、銀行に課せられた守秘義務も勘案しながら、これらの制度の趣旨に沿って、適切な判断を行う態勢が整備されているか。

  • (8)盗難通帳・偽造印鑑等による預金の不正払戻しを防止するため、窓口での預金の支払等に当たって、必要に応じ取引時確認を行う態勢が整備されているか。また、通帳の印影から印鑑の偽造を防止するための措置を講じているか。

    不正払戻しの被害にあった顧客からの届出を速やかに受け付ける体制が整備されているか。また、損失の補償については、偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律(以下「預貯金者保護法」という。)の趣旨を踏まえ、利用者保護を徹底する観点から、約款、顧客対応方針等において統一的な対応を定めるほか、真摯な顧客対応を行う態勢が整備されているか。

    不正払戻しに関する記録を適切に保存するとともに、顧客や捜査当局から当該資料の提供などの協力を求められたときは、これに誠実に協力することとされているか。

    (注)不正払戻し発生防止に向けた施策が、顧客利便を大きく損なうことのないよう配慮する必要がある。

  • (9)電子決済等取扱業者に取引記録の作成・保存、取引モニタリング等の犯収法上の義務の履行に必要な事務を委託する場合には、以下の態勢が整備されているか。

    • マル1電子決済等取扱業者が委託された事務を確実に行うよう、適切な監督を行うこと。

      • (注)適切な監督としては、例えば、委託先である電子決済等取扱業者の管理について、責任部署を明確化し、当該電子決済等取扱業者における業務の実施状況を定期的又は必要に応じてモニタリングする等、当該電子決済等取扱業者において顧客等に関する情報管理が適切に行われていることを確認すること等が求められる。

    • マル2電子決済等取扱業者との間の委託契約等において、銀行からの求めに応じて、一定期間内に、当該銀行に必要な記録・書類を送付すべきことを規定すること。

    • マル3電子決済等取扱業者に対して取引モニタリング等を委託する場合は、電子決済等取扱業者による取引の分析結果について定期的に共有を受け、確認・保存するとともに、当該分析結果を踏まえて、銀行において疑わしい取引の届出を適切に行うための態勢整備を行うこと。

    • マル4電子決済等取扱業者との間の委託契約等において、電子決済等取扱業者が行う分析の内容・方法、銀行が共有を受けるべき分析結果の範囲・共有を受ける頻度等について規定すること。

    (注)以上のほか、「Ⅲ-3-3-4 外部委託」も参照のこと。

III -3-1-3-1-3 監督手法・対応

検査結果、不祥事件等届出書、盗難通帳に係る犯罪発生報告書等により、上記(1)から(8)及びマネロン・テロ資金供与対策ガイドラインの着眼点等に照らして取引時確認等の措置の確実な履行、同ガイドライン記載の措置、盗難通帳・偽造印鑑等による預金の不正払戻しを防止するための措置、又は犯罪利用預金口座等の疑いがあると認める場合における取引停止等の措置を適切に実施するための内部管理態勢に問題があると認められる場合には、必要に応じ法第24条に基づき報告(追加の報告を含む。)を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき、業務改善命令を発出するものとする。

また、内部管理態勢が極めて脆弱であり、反社会的勢力・テロリスト等の組織的犯罪等に利用され続けるおそれがあると認められるときは、法第26条に基づき、業務改善に要する一定期間に限った業務の一部停止命令を発出するものとする。

さらに、取引時確認義務及び疑わしい取引の届出義務に違反し、又は犯罪利用預金口座等であると疑うに足りる相当な理由があると認めるときに取引停止等の措置を怠り、著しく公益を害したと認められる場合など、重大な法令違反と認められる場合には、法第27条に基づく業務の一部停止命令を発出するものとする。

(参考)

  • 「預金等の不正な払戻しへの対応」について(平成20年2月19日:全国銀行協会)

III -3-1-3-2 偽造紙幣・硬貨等

刑法第 152条が、偽造・変造通貨の流通を阻止しようとする趣旨であることにかんがみ、銀行においても適正な内部管理体制の構築のために、例えば、以下のような取組みが行われているか。

  • (1)顧客より提示のあった紙幣等が偽造・変造であると判明した段階で、警察への届出や疑わしい取引の届出が速やかになされる体制となっているか。

  • (2)偽造・変造紙幣等を再流通させないために銀行が採るべき行動について、適切な規定・要領等の整備や役職員への徹底がなされているか。

  • (注) 組織犯罪等への対応としては、以上のほか、偽造・盗難キャッシュカード対策( III -3-7-2 ATMシステムのセキュリティ対策)、インターネットバンキング( III -3-8 インターネットバンキング)のフィッシング対策等も参照のこと。

III -3-1-4 反社会的勢力による被害の防止

III -3-1-4-1 意義

反社会的勢力を社会から排除していくことは、社会の秩序や安全を確保する上で極めて重要な課題であり、反社会的勢力との関係を遮断するための取組みを推進していくことは、企業にとって社会的責任を果たす観点から必要かつ重要なことである。特に、公共性を有し、経済的に重要な機能を営む金融機関においては、金融機関自身や役職員のみならず、顧客等の様々なステークホルダーが被害を受けることを防止するため、反社会的勢力を金融取引から排除していくことが求められる。

もとより金融機関として公共の信頼を維持し、業務の適切性及び健全性を確保するためには、反社会的勢力に対して屈することなく法令等に則して対応することが不可欠であり、金融機関においては、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)の趣旨を踏まえ、平素より、反社会的勢力との関係遮断に向けた態勢整備に取り組む必要がある。

特に、近時反社会的勢力の資金獲得活動が巧妙化しており、関係企業を使い通常の経済取引を装って巧みに取引関係を構築し、後々トラブルとなる事例も見られる。こうしたケースにおいては経営陣の断固たる対応、具体的な対応が必要である。

なお、役職員の安全が脅かされる等不測の事態が危惧されることを口実に問題解決に向けた具体的な取組みを遅らせることは、かえって金融機関や役職員自身等への最終的な被害を大きくし得ることに留意する必要がある。

(参考)「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)

  • マル1反社会的勢力による被害を防止するための基本原則

    • ○組織としての対応

    • ○外部専門機関との連携

    • ○取引を含めた一切の関係遮断

    • ○有事における民事と刑事の法的対応

    • ○裏取引や資金提供の禁止

  • マル2反社会的勢力のとらえ方

    暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標榜ゴロ、政治活動標榜ゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である(平成23年12月22日付警察庁次長通達「組織犯罪対策要綱」参照)。

III -3-1-4-2 主な着眼点

反社会的勢力とは一切の関係をもたず、反社会的勢力であることを知らずに関係を有してしまった場合には、相手方が反社会的勢力であると判明した時点で可能な限り速やかに関係を解消するための態勢整備及び反社会的勢力による不当要求に適切に対応するための態勢整備の検証については、個々の取引状況等を考慮しつつ、例えば以下のような点に留意することとする。

  • (1)組織としての対応

    反社会的勢力との関係の遮断に組織的に対応する必要性・重要性を踏まえ、担当者や担当部署だけに任せることなく取締役等の経営陣が適切に関与し、組織として対応することとしているか。また、銀行単体のみならず、グループ一体となって、反社会的勢力の排除に取り組むこととしているか。さらに、グループ外の他社(信販会社等)との提携による金融サービスの提供などの取引を行う場合においても、反社会的勢力の排除に取り組むこととしているか。

  • (2)反社会的勢力対応部署による一元的な管理態勢の構築

    反社会的勢力との関係を遮断するための対応を総括する部署(以下「反社会的勢力対応部署」という。)を整備し、反社会的勢力による被害を防止するための一元的な管理態勢が構築され、機能しているか。

    特に、一元的な管理態勢の構築に当たっては、以下の点に十分留意しているか。

    • マル1反社会的勢力対応部署において反社会的勢力に関する情報を積極的に収集・分析するとともに、当該情報を一元的に管理したデータベースを構築し、適切に更新(情報の追加、削除、変更等)する体制となっているか。また、当該情報の収集・分析等に際しては、グループ内で情報の共有に努め、業界団体等から提供された情報を積極的に活用しているか。さらに、当該情報を取引先の審査や当該金融機関における株主の属性判断等を行う際に、適切に活用する体制となっているか。

    • マル2反社会的勢力対応部署において対応マニュアルの整備や継続的な研修活動、警察・暴力追放運動推進センター・弁護士等の外部専門機関との平素からの緊密な連携体制の構築を行うなど、反社会的勢力との関係を遮断するための取組みの実効性を確保する体制となっているか。特に、平素より警察とのパイプを強化し、組織的な連絡体制と問題発生時の協力体制を構築することにより、脅迫・暴力行為の危険性が高く緊急を要する場合には直ちに警察に通報する体制となっているか。

    • マル3反社会的勢力との取引が判明した場合及び反社会的勢力による不当要求がなされた場合等において、当該情報を反社会的勢力対応部署へ迅速かつ適切に報告・相談する体制となっているか。また、反社会的勢力対応部署は、当該情報を迅速かつ適切に経営陣に対し報告する体制となっているか。さらに、反社会的勢力対応部署において実際に反社会的勢力に対応する担当者の安全を確保し担当部署を支援する体制となっているか。

  • (3)適切な事前審査の実施

    反社会的勢力との取引を未然に防止するため、反社会的勢力に関する情報等を活用した適切な事前審査を実施するとともに、契約書や取引約款への暴力団排除条項の導入を徹底するなど、反社会的勢力が取引先となることを防止しているか。

    提携ローン(4者型)(注)については、暴力団排除条項の導入を徹底の上、銀行が自ら事前審査を実施する体制を整備し、かつ、提携先の信販会社における暴力団排除条項の導入状況や反社会的勢力に関するデータベースの整備状況等を検証する態勢となっているか。

    • (注)提携ローン(4者型)とは、加盟店を通じて顧客からの申込みを受けた信販会社が審査・承諾し、信販会社による保証を条件に金融機関が当該顧客に対して資金を貸付けるローンをいう。

  • (4)適切な事後検証の実施

    反社会的勢力との関係遮断を徹底する観点から、既存の債権や契約の適切な事後検証を行うための態勢が整備されているか。

  • (5)反社会的勢力との取引解消に向けた取組み

    • マル1反社会的勢力との取引が判明した旨の情報が反社会的勢力対応部署を経由して迅速かつ適切に取締役等の経営陣に報告され、経営陣の適切な指示・関与のもと対応を行うこととしているか。

    • マル2平素から警察・暴力追放運動推進センター・弁護士等の外部専門機関と緊密に連携しつつ、預金保険機構による特定回収困難債権の買取制度の積極的な活用を検討するとともに、当該制度の対象とならないグループ内の会社等においては株式会社整理回収機構のサービサー機能を活用する等して、反社会的勢力との取引の解消を推進しているか。

    • マル3事後検証の実施等により、取引開始後に取引の相手方が反社会的勢力であると判明した場合には、可能な限り回収を図るなど、反社会的勢力への利益供与にならないよう配意しているか。

    • マル4いかなる理由であれ、反社会的勢力であることが判明した場合には、資金提供や不適切・異例な取引を行わない態勢を整備しているか。

  • (6)反社会的勢力による不当要求への対処

    • マル1反社会的勢力により不当要求がなされた旨の情報が反社会的勢力対応部署を経由して迅速かつ適切に取締役等の経営陣に報告され、経営陣の適切な指示・関与のもと対応を行うこととしているか。

    • マル2反社会的勢力からの不当要求があった場合には積極的に警察・暴力追放運動推進センター・弁護士等の外部専門機関に相談するとともに、暴力追放運動推進センター等が示している不当要求対応要領等を踏まえた対応を行うこととしているか。特に、脅迫・暴力行為の危険性が高く緊急を要する場合には直ちに警察に通報を行うこととしているか。

    • マル3反社会的勢力からの不当要求に対しては、あらゆる民事上の法的対抗手段を講ずるとともに、積極的に被害届を提出するなど、刑事事件化も躊躇しない対応を行うこととしているか。

    • マル4反社会的勢力からの不当要求が、事業活動上の不祥事や役職員の不祥事を理由とする場合には、反社会的勢力対応部署の要請を受けて、不祥事案を担当する部署が速やかに事実関係を調査することとしているか。

  • (7)株主情報の管理

    定期的に自社株の取引状況や株主の属性情報等を確認するなど、株主情報の管理を適切に行っているか。

III -3-1-4-3 監督手法・対応

検査結果、不祥事件等届出書等により、反社会的勢力との関係を遮断するための態勢に問題があると認められる場合には、必要に応じて法第24条に基づき報告を求め、当該報告を検証した結果、業務の健全性・適切性の観点から重大な問題があると認められる場合等には、法第26条に基づく業務改善命令の発出を検討するものとする。その際、反社会的勢力への資金提供や反社会的勢力との不適切な取引関係を認識しているにもかかわらず関係解消に向けた適切な対応が図られないなど、内部管理態勢が極めて脆弱であり、その内部管理態勢の改善等に専念させる必要があると認められるときは、法第26条に基づく業務改善に要する一定期間に限った業務の一部停止命令の発出を検討するものとする。

また、反社会的勢力であることを認識しながら組織的に資金提供や不適切な取引関係を反復・継続するなど、重大性・悪質性が認められる法令違反又は公益を害する行為などに対しては、法第27条に基づく厳正な処分について検討するものとする。

III -3-1-5 第三者割当増資のコンプライアンス

III -3-1-5-1 意義

  • (1)銀行の増資(普通株式及び優先株式)の形態には、公募増資、第三者割当増資等があるが、公募増資など金融商品取引業者を引受人として行われる増資の場合には、法令等遵守の観点からも相応のチェック機能が働くと考えられる。(注1)

    • (注1) 金融商品取引業者の引受けに関するルールについては、「有価証券の引受け等に関する規則(日本証券業協会公正慣習規則第14号)」等を参照。

  • (2)しかしながら、預金及び貸出等の業務を営む銀行の増資が取引先等に対し直接に割当てを行う第三者割当増資である場合には、「資本充実の原則」との関係や「優越的な地位の濫用」の防止等、法令等遵守に係る内部管理態勢の確立について、健全性や誠実さ等の観点から、特に十分な経営努力が払われる必要がある。

    また、増資は恒常的に行われるものではないことから、こうした増資に関するコンプライアンス態勢については、増資の都度、取締役会の責任において、全行的に構築され、行内に徹底される必要がある。ただし、増資を行う銀行を子会社とする銀行持株会社等を割当先とする第三者割当増資については、この限りでない。

  • (3)ついては、銀行法上、増資は届出事項とされていることを踏まえ、第三者割当増資時のコンプライアンスについては、以下のように取り扱うものとする。

  • (4)なお、以下の事務手続きは、一般的な第三者割当増資のスケジュール(注2)を想定して監督上の事務フローを定めたものであり、ケースにより異なる対応が必要な場合、あるいは銀行持株会社の行う第三者割当増資については、適宜、読み替えて対応するものとする。

    • (注2) 一般的な第三者割当増資のスケジュール

      • マル1取締役会において、第三者割当増資を行う方針決議

      • マル2割当先名簿の作成

      • マル3取締役会において、新株発行(条件)決議

      • マル4有価証券届出書の提出

      • マル5取得の申込みの勧誘、申込み及び払込み

  • (5)また、告示第6条第4項又は第7条第4項等に定める国際統一基準行又は特別目的会社等が発行するその他Tier1資本調達手段又はTier2資本調達手段についても、具体的事情に応じて適宜、読み替えて対応するものとする(注3)。

    • (注3) 資本充実の原則の遵守の観点等から、少なくとも以下の報告を求めて必要な検証を行う。

      • イ.内部管理態勢の構築状況

      • ロ.当該その他Tier1資本調達手段又はTier2資本調達手段の引受先との取引の実態(発行後6か月間の事後点検を含む。)

III -3-1-5-2 着眼点と監督手法・対応

  • (1)銀行が第三者割当増資を行う方針を決定したときにおける取扱い

    銀行が取締役会において、第三者割当増資を行う方針を決議したときは、当該銀行に対し、速やかに法第53条第1項第4号(注1)に定める届出(様式・参考資料編 様式4-7-1)を求めるとともに、会社法、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)及び金融商品取引法等の諸法令に従い適切に実施するための法令等遵守に係る内部管理態勢全般(注2)に関する資料の添付を求めることとする。

    • (注1)負債性のその他Tier1資本調達手段又はTier2資本調達手段については、施行規則第35条第1項第32号に定める届出

    • (注2)

      • マル1基本的な経営姿勢

      • マル2資本充実の原則の遵守等

      • マル3優越的な地位の濫用等不公正な取引の防止

      • マル4適正なディスクロージャーの確保

      • マル5商品性の適切な説明等

      • マル6遵守状況の事後的な点検体制の整備

  • (2)届出を受けた内部管理態勢全般を検証し、その適切性に疑義が認められる場合には、必要に応じ、法第24条に基づき報告を求め、又は、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

    以下は、検証の際の着眼点を類型化して例示したものである。

    • マル1基本的な経営姿勢

      • イ.取締役会が、第三者割当増資に関する法令等遵守の重要性を理解し、全行的な態勢整備を行っているか。

        • 例えば、適切に区分された事務の区分毎に、決定権限と責任の所在(担当役員、統括部門等の特定を含む。)が明確になっているか。
      • ロ.取締役会は、単に行内規則の制定、通知の発出等にとどまらず、行員への周知・徹底を確実に図ることとしているか。また、行内における監視・けん制機能を実効性あるものとしているか。

      • ハ.取締役会が、会社法、独占禁止法及び金融商品取引法等の法令等に関し、必要に応じ、弁護士や監査法人から文書による意見を求める等、コンプライアンス上万全な対応をとることとしているか。

      • ニ.銀行持株会社が第三者割当増資を行う場合、子銀行の関与のあり方について、適切に対応することとしているか。

    • マル2特に留意すべき事項

      増資に際し遵守すべき全ての法令等に対して、十分なコンプライアンスを確保することとしているか。

      特に下記の点について、十分な遵守態勢が構築されているか。

      • イ.会社法の「資本充実の原則」の遵守及び「銀行の自己資本としての健全性(安定性・適格性)」の確保

        • a.割当先名簿の作成及び取得の申込みの勧誘に係る方針は、「資本充実の原則」及び自己資本としての健全性の確保の観点を十分踏まえたものとなっているか。必要があれば、融資取引先に対する割当てについて、その適法性等に関する弁護士等の意見書を踏まえて対応することとしているか。

        • b.少なくとも、以下のような問題のあるケースについての取扱いは、明確にされているか。

          • 財務の実態等を勘案すると、返済能力や意思のない先に、直接又は迂回して融資等の信用供与を行い、その融資等の信用供与による資金で増資払込みを行わせる場合

          • 増資引受先の株式保有リスクを何らかの形で銀行又は銀行グループが肩代わりしている場合

        • (注) なお、信用リスク管理の観点からは、経営改善支援に注力すべき融資取引先に増資払込みを行わせることのないよう、業況や財務内容等を十分見極める必要があることに留意する。例えば、「要管理先」以下の債務者に対し、増資払込みを行わせることは、信用リスク管理の適正の観点から問題であることに留意する。

      • ロ.不公正な取引の防止(独占禁止法、金融商品取引法等)

        • a.独占禁止法関係

          独占禁止法が禁止している不公正な取引方法に該当する行為、例えば「優越的な地位の濫用」の発生をどのように防止しようとしているか。

        • b.金融商品取引法関係

          金融商品取引法が禁止している不公正な取引(インサイダー取引、有利買付け等の表示の禁止等)に該当する行為の発生をどのように防止しようとしているか。

      • ハ.適正なディスクロージャーの確保(金融商品取引法等)

        • a.増資に当たっては、金融商品取引法に定める手続き(有価証券届出書の提出と勧誘行為、目論見書の作成・交付、有価証券届出書の効力発生等)を遵守するための措置が講じられているか。

          • 例えば、有価証券届出書の提出前における割当先名簿の作成は行内の準備作業であり、取得の申込みの勧誘は有価証券届出書が提出されていなければすることができないこと等、基本的な留意事項を行員に徹底することとしているか。
        • b.中でも、有価証券届出書及び目論見書作成に当たって、自己資本比率規制等の銀行特有の規制及び当局による金融検査の存在等を踏まえ、投資家保護上万全を期すこととされているか。また、真に重要な「リスク情報」を、分かりやすく、かつ、簡潔に開示することとしているか。

          • 例えば、「組込方式」又は「参照方式」の有価証券届出書及び目論見書を作成する場合でも、有価証券届出書の提出日現在の「リスク情報」を記載する必要があることを認識して、対応することとしているか。
          • 例えば、有価証券届出書提出後においても、投資家保護上重要な事実が発生した場合には、訂正届出書を提出する必要があることを認識して、対応することとしているか。
        • c.その他、財務内容等について誤認を与えるような表示の防止

          • 増資の勧誘に当たって、目論見書(及び有価証券届出書)以外の情報を利用する場合、目論見書の内容と異なる内容となっていないか。
          • 実際には、勧誘に当たっての資料として、業績予想修正(注1)、四半期開示(注2)、IR資料及び役員の記者会見等、当該銀行に関する(特に財務内容に関する)表示が利用されることが多い。
            こうした現状にかんがみ、増資を予定している銀行は、こうした表示が割当先に対し、当行の財務内容について誤認を与えることのないよう万全の措置を講じることとしているか。
          • (注1) 経済情勢の大幅な変化又は当局による金融検査の結果等により必要となった場合に、当期の業績予想を適切に修正発表しているか。

          • (注2) 例えば、第1四半期(4月~6月)及び第3四半期(10月~12月)の四半期開示においては、それぞれ9月末及び3月末の見込み自己資本比率に関する予想値が記載されているが、明確な根拠の無い見込値又は蓋然性の検討を欠いた見込値となっていないか。

      • ニ.商品性の適切な説明等(コンシューマー・コンプライアンス)

        • a.増資の勧誘等に際しての顧客への説明方法及び内容が、民法、金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律(以下「金融サービス提供法」という。)等の観点から、適切なものとなっているか。

          • (注) 銀行が第三者割当増資を行うことは、金融サービス提供法の「金融商品販売業者等」に該当し、同法の説明義務を負うこととなる可能性に対して、弁護士等の意見を踏まえて対応することとしているか。

        • b.特に、銀行の場合、預金等との誤認を防止することが重要であり、そのための十分な措置を講じているか。

          • 割当先の知識、経験及び財産の状況を踏まえ、書面の交付その他の適切な方法により、預金等との誤認を防止するための説明を行うこととしているか。
          • (注) 少なくとも個人に対しては、書面の交付による対面説明、説明内容の双方による確認、一定期間の記録保管等の措置を講ずることとしているか。

          • 誤認防止のための説明内容は、預金等ではないこと、預金保険の対象とはならないこと、元本が保証されていないこと等を含む十分なものとなっているか。
    • マル3遵守状況の事後的な点検体制の整備

      増資手続きの進行に応じて、コンプライアンスの遵守状況について全行的な事後点検を行う体制を整えているか。

  • (3)銀行が新株発行(条件)の決議を行ったときにおける取扱い

    • マル1法第53条第1項第4号に定める届出(様式・参考資料編 様式4-7-2)の速やかな提出を求めるとともに、内部管理態勢全般の点検結果等に関する資料の添付を求めるものとする。

    • マル2届出等において、銀行の対応の適切性に疑義が認められる場合には、必要に応じ、

      • イ.法第24条に基づき報告を求め、又は、

      • ロ.重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出し、

      • ハ.さらに、有価証券届出書に記載すべき重要な事項の記載が不十分である場合、又は、記載すべき重要な事項又は誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている場合等に該当することが明らかなときには、その旨を証券監査担当部局へ連絡する

      等の対応を行うものとする。

  • (4)資本金の額の増加の届出

    払込期日に法第53条第1項第4号に定める届出(様式・参考資料編 様式4-7-3)を求めるものとする。

  • (5)第三者割当増資終了後の取扱い

    • マル1第三者割当増資終了後6か月間、銀行は法令等遵守に関する内部管理態勢について事後点検を行い、その結果について、法第53条第1項第4号に定める届出の添付資料の追加提出を求める。

    • マル2届出等において、銀行の対応の適切性に疑義が認められる場合には、必要に応じ、法第24条に基づき報告を求め、又は、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

III -3-1-6 不適切な取引等

III -3-1-6-1 履行保証

銀行が、いわゆる履行ボンド等、建設工事等の履行保証を行う場合には、保証履行の際に、銀行が、自ら工事を完成させる等、法第12条に照らして銀行が行うことができない業務を行う必要が生じない契約内容となっているか。

III -3-1-6-2 正常な取引慣行に反する不適切な取引の発生の防止

過度な協力預金、過当な歩積両建預金等の受入れ、他金融機関への過度な預金紹介、銀行の業務範囲に含まれない商品等の紹介斡旋、顧客の印鑑等の預かり、関連会社等との取引の強要等独占禁止法上問題となる優越的な地位の濫用や顧客の実際の資金需要に基づかない決算期を跨った短期間の与信取引の依頼など正常な取引慣行に反する不適切な取引の発生をどのように防止しているか。

III -3-2 情報開示(ディスクロージャー)の適切性・十分性

III -3-2-1 意義

情報開示(ディスクロージャー)を充実させることは、銀行の経営の透明性を高め、市場規律により経営の自己規正を促すものであるとともに、預金者の自己責任原則の確立のための基盤としても重要である。開示に期待されるこうした機能が適切に果たされるためには、銀行の経営内容がより正確に反映された財務諸表が作成されることがその前提であり、最近の経済・社会環境の変化等を踏まえ、適切な開示が図られる必要がある。

III -3-2-2 財務報告に係る内部統制

開示に当たって、財務諸表等が適正に作成される内部統制システムを構築するとともに、それが機能していたかを経営者自らが確認し、そのシステムを不断に見直すことにより、銀行経営のガバナンスが発揮されることが重要である。

主要行等においては、平成15年3月期より、銀行の代表者が有価証券報告書等に記載された事項が適正であると確認し、その旨を記載した書面(いわゆる代表者確認書)を有価証券報告書等に添付しているが、この書面作成に当たっては、内部統制システムの有効性の確認が必要となっている。また、金融商品取引法の施行に伴い、上場会社及び店頭登録会社である主要行等においては、平成20年4月1日以後に開始する事業年度より、有価証券報告書等の記載内容が適正である旨を記載した確認書を有価証券報告書、半期報告書等と併せて提出するとともに、財務報告に係る内部統制の有効性を評価した結果等を記載した報告書(内部統制報告書)についても、事業年度毎に作成する有価証券報告書等と併せて提出する必要がある。

  • (参考) 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)(企業会計審議会、平成19年2月15日)

    Internal Control-Integrated Framework (the Committee of Sponsoring Organization of the Treadway Commission, 1992)

    財務諸表の正確性、内部監査の有効性についての経営者責任の明確化について(要請)(平成17年10月7日)

III -3-2-3 銀行に求められる開示の類型

  • (1)銀行法上の開示

    銀行法のディスクロージャー義務は、法第20条に基づく「貸借対照表等の公告等」と法第21条に基づく「業務及び財産の状況に関する説明書類の縦覧等」(「ディスクロージャー誌」)の2つの制度から構成されている。

    法第20条の公告は、会社法に基づき株式会社一般に課される決算公告の特則と位置付けられており、リスク管理債権は、この注記事項とされている。

    法第21条に基づき作成される中間事業年度及び事業年度に係る説明書類の開示項目については、内閣府令(施行規則第19条の2及び第19条の3)で明確に定められている(なお、当該開示項目について、虚偽の記載等をして公衆の縦覧に供した者は法第63条により罰せられる。)。さらに、罰則の適用はないが、法第21条第7項において「預金者その他の顧客が当該銀行及びその子会社等の業務及び財産の状況を知るために参考となるべき事項の開示に努めなければならない。」とされている。

  • (2)「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号、以下「再生法」という。)に基づく開示

    再生法第6条に基づく資産査定の結果は、内閣総理大臣に報告されるとともに、同法第7条の規定により公表されることとなっている。さらに、同法第78条及び第86条の規定により、内閣総理大臣に対する報告に虚偽の記載があった場合には、罰則が適用されることとされている。

    なお、「金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第143号)第3条第2項第1号の規定により、再生法第6条第2項に規定する基準に従い資産の査定を行う必要のある金融機関は、銀行、信託銀行、長期信用銀行、信用金庫、信用協同組合、労働金庫、信金中央金庫、全国信用協同組合連合会、労働金庫連合会、農林中央金庫、信用農業協同組合連合会、信用漁業協同組合連合会及び銀行持株会社等である。

  • (3)金融商品取引法上の開示

    株式を公開している会社である主要行等においては、投資家の判断を誤らせないように、法令等に基づき、適切な開示がなされる必要がある。

    したがって、財務諸表の計数の正確性に加え、例えば、マル1平成16年3月期から導入されている「コーポレートガバナンスの状況」、「事業等のリスク」及び「財政状態及び経営成績の分析」に関する情報についての開示の適切性、マル2平成17年3月期から強化される「コーポレートガバナンスの状況」の開示の適切性、については留意を要する。

  • (4)任意開示

    現状では、投資判断に大きな影響を与えている業績予想発表及びその修正発表等は法律に基づかない任意開示である。また、IR(インベスターリレーションズ)活動や広告等の任意の開示も投資家、預金者等にとって重要な判断材料となる。

  • (5)会計基準

    特例企業会計基準等適用法人等にあっては、Ⅲ-3-2-4に記載されている留意事項について、一部異なる取扱いが存在するので留意すること。

III -3-2-4 開示に当たっての留意事項

III -3-2-4-1 重要性の原則の適用

  • (1)連結の範囲・持分法の適用範囲に関する重要性の原則については、金融商品取引法に基づいて作成する連結財務諸表等はもとより、法に基づいて作成する銀行の中間連結財務諸表・連結財務諸表(法第19条第2項、施行規則第18条第3項及び第4項)、銀行の中間連結貸借対照表等・連結貸借対照表等(法第20条第2項)、銀行持株会社の中間連結財務諸表・連結財務諸表(法第52条の27第1項、施行規則第34条の24第1項及び第2項)、銀行持株会社の中間連結貸借対照表等・連結貸借対照表等(法第52条の28第1項)も対象となることに留意する。

    • (注) 連結して記載する中間事業年度及び事業年度に係る説明書類については施行規則上明定されている(施行規則第19条の3及び第34条の26)。

  • (2)その内容については、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則第5条第2項及び日本公認会計士協会監査委員会報告第52号「連結の範囲及び持分法の適用範囲に関する重要性の原則の適用に係る監査上の取扱い」(平成5年7月21日付)に従っているか。

    また、重要性の判断に当たっては、銀行グループの財政状態及び経営成績を適正に表示させる観点から、量的側面と質的側面の両面で並行的に判断され、金融業を営む個々の子会社等の特性が十分考慮されているか。

III -3-2-4-2 ディスクロージャー誌の記載項目について(施行規則第19条の2及び第19条の3関係)

  • (1)一般的な留意事項

    • マル1各記載項目については、本監督指針に定めるもののほか、企業内容等の開示に関する内閣府令、連結財務諸表規則等も参考として、適切かつ分かりやすい表示がなされているか

    • マル2各記載項目について自行において該当がない場合、注釈が必要な場合等には、その旨適切な表示がなされているか。

    • マル3施行規則に定められた義務的な開示項目以外の情報を自主的・積極的に開示することは、その内容の正確性・適切性が確保される限り、何ら差し支えないことに留意する。特に、市場の関心の強い分野に係るエクスポージャー等については、国際的なベストプラクティスを踏まえつつ、自行のリスク特性に即した有用な情報を積極的に開示することが望ましい。

  • (2)個別の記載項目についての留意事項

    • マル1「経営の組織」については、組織図等を用いて系統的に分かりやすい説明がなされているか。

    • マル2「主要な業務の内容」には、預金業務、貸出業務、商品有価証券売買業務、有価証券投資業務、内国為替業務、外国為替業務、社債受託及び登録業務、デリバティブ取引等の受託等業務、附帯業務等の区分毎にその内容が記載されているか。

    • マル3「直近の中間事業年度又は事業年度における事業の概況」には、業況、事業実績、損益の状況等についての概括的な説明、自行が対処すべき課題等について説明されているか。

    • マル4「リスク管理の体制」には、リスク内容、リスク管理に対する基本方針及び審査体制・検査体制・ALM管理体制等のリスク管理体制等について記載されているか。

    • マル5「法令遵守の体制」には、法令等遵守(コンプライアンス)に対する基本方針及び運営体制について記載されているか。

    • マル6「中小企業の経営の改善及び地域の活性化のための取組の状況」には、以下の事項等について、利用者等が興味や関心を持てるような具体的で分かりやすい内容が記載されているか。

      • イ.中小企業(小規模事業者を含む。以下このマル6において同じ。)の経営支援に関する取組み方針

      • ロ.中小企業の経営支援に関する態勢整備(外部専門家・外部機関等との連携を含む。)の状況

      • ハ.中小企業の経営支援に関する取組状況(支援内容、外部専門家・外部機関等との連携、取組事例等)

        • a.創業・新規事業開拓の支援

        • b.成長段階における支援

        • c.経営改善・事業再生・業種転換等の支援

      • ニ.地域の活性化に関する取組状況

      • (注1)上記ハ及びニの取組状況については、具体的な実績や成果を記載するよう努めているか確認する。

      • (注2)上記ハ及びニの取組状況については、地域経済の成長や活性化に資する取組み等を具体的に記載しているか確認する。

      • (注3)「外部専門家」とは、税理士、弁護士、公認会計士、中小企業診断士、経営指導員等をいう。

      • (注4)「外部機関」とは、地方公共団体、経済産業局、商工会議所、商工会、中小企業団体中央会、よろず支援拠点、JETRO、JBIC、地域経済活性化支援機構、東日本大震災事業者再生支援機構、中小企業活性化協議会、中小企業基盤整備機構、認定経営革新等支援機関、事業再生ファンド、地域活性化ファンド等をいう。

    • なお、上記に掲げた事項に限らず、「中小企業の経営の改善及び地域の活性化のための取組の状況」について、各金融機関の自主的な判断により記載事項を追加することを妨げるものではない。

    • マル7手続実施基本契約の相手方となる指定ADR機関の商号又は名称及び連絡先が記載されているか。指定ADR機関が存在しない場合には、苦情処理措置及び紛争解決措置の内容について、実態に即して適切に記載されているか(例えば、外部機関を利用している場合は当該外部機関の名称及び連絡先など)。

    • マル8銀行単体及び銀行グループに係る「自己資本(基本的項目に係る細目を含む。)の充実の状況」には、決算状況表の「自己資本比率の状況」の内容と同程度のものが記載されているか。

    • マル9「貸倒引当金」については、個別貸倒引当金、一般貸倒引当金及び特定海外債権引当勘定(租税特別措置法第55条の2の海外投資等損失準備金を含む。)毎の内訳も併せて記載されているか。

    • マル10「銀行及びその子会社等の主要な事業の内容及び組織の構成」については、銀行グループにおける主要な事業の内容、当該事業を構成しているグループ会社の当該事業における位置付け等について系統的に分かりやすい説明がなされるとともに、その状況が事業系統図等によって示されているか。

III -3-2-4-3 銀行法及び再生法に基づく債権の額の開示区分

銀行法施行規則第19条の2第1項第5号ロ及び再生法施行規則第4条に定める基準に従い、以下のとおり区分する開示対象についても、銀行法施行規則第19条の2第1項第5号ロ及び再生法施行規則第4条に定める基準に従う。なお、仮払金については貸出金に準ずるもの(支払承諾に基づき代位弁済を行ったことにより発生する求償権及び貸出金と関連のある仮払金)として差し支えない。ただし、その際には、以下に掲げる基準を機械的・画一的に適用するのではなく、債務者の実態的な財務内容、資金繰り、収益力等により、その返済能力を検討し、債務者に対する貸出条件及びその履行状況を確認の上、業種等の特性を踏まえ、事業の継続性と収益性の見通し、キャッシュフローによる債務償還能力、経営改善計画等の妥当性、金融機関等の支援状況等を総合的に勘案した上で、区分することが適当である。特に債務者が中小企業である場合は、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、当該企業の経営実態を踏まえて区分することが適当である。

  • (1)破産更生債権及びこれらに準ずる債権

    破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、「破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権」をいい、破産、清算、会社更生、民事再生、手形交換所の取引停止処分等の事由により経営破綻に陥っている債務者のほか、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権である。なお、特定調停法の規定による特定調停の申立てについては、申立が行われたことをもって経営破綻に陥っているものとはしないこととし、当該債務者の経営実態を踏まえて判断する。

    具体的には、事業を形式的に継続しているが、財務内容において多額の不良債権を内包し、あるいは債務者の返済能力に比して明らかに過大な借入金が残存し、実質的に大幅な債務超過の状態に相当期間陥っており、事業好転の見通しがない状況、天災、事故、経済情勢の急変等により多大な損失を被り(あるいは、これらに類する事由が生じており)、再建の見通しがない状況で、元金又は利息について実質的に長期間延滞(原則として6カ月以上遅延しており、一過性の延滞とは認められないものをいう。)している債務者や、自主廃業により営業所を廃止しているなど、実質的に営業を行っていないと認められる債務者に対する債権が含まれる。

    このほか、経営改善計画等の進捗状況が計画を大幅に下回っており、今後も急激な業績の回復が見込めず、経営改善計画等の見直しが行われていない場合、又は一部の取引金融機関において経営改善計画等に基づく支援を行うことについて合意が得られない場合で、今後、経営破綻に陥る可能性が確実と認められる債務者については、「深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にある」ため、破産更生債権及びこれらに準ずる債権に該当するものと判断して差し支えない。

  • (2)危険債権

    危険債権とは、「債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権」をいい、現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者(金融機関等の支援継続中の債務者を含む)に対する債権である。

    具体的には、現状、事業を継続しているが、実質債務超過の状態に陥っており、業況が著しく低調で貸出金が延滞状態にあるなど元本及び利息の最終の回収について重大な懸念があり、従って損失の発生の可能性が高い状況で、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者に対する債権をいう。

    なお、会社更生法、民事再生法等の規定による更生計画等の認可決定が行われた債務者に対する債権については、危険債権と判断して差し支えない。さらに、更生計画等の認可決定が行われている債務者については、以下の要件のいずれかを充たしている場合には、更生計画等が合理的であり、その実現可能性が高いものと判断し、当該債務者に対する債権は要管理債権又は正常債権に該当するものと判断して差し支えない。

    • マル1更生計画等の認可決定後、当該債務者が、原則として概ね5年以内に、業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる状態(当該債務者が金融機関等の再建支援を要せず、自助努力により事業の継続性を確保することが可能な状態となる場合は、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある状態、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある状態のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある状態など今後の管理に注意を要する状態を含む。)となる計画であり、かつ、更生計画等が概ね計画どおりに推移すると認められること。

    • マル2当該債務者が、5年を超え概ね10年以内に、業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる状態(当該債務者が金融機関等の再建支援を要せず、自助努力により事業の継続性を確保することが可能な状態となる場合は、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある状態、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある状態のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある状態など今後の管理に注意を要する状態を含む。)となる計画であり、かつ、更生計画等の認可決定後一定期間が経過し、更生計画等の進捗状況が概ね計画以上であり、今後も概ね計画どおりに推移すると認められること。

  • (3)貸出条件緩和債権

    貸出条件緩和債権とは、「債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の債務者に有利となる取決めを行つた貸出金」をいう。

    • マル1施行規則第19条の2第1項第5号ロ(4)の「債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として」いるかどうかの判定においては、債務者の経営状況及び金融機関の意図等に基づき判断することとし、当該条件変更が、債務者の経営再建又は支援を図ることを目的としていないと認められる場合には、債務者に有利となる取決めを行っている場合であっても、貸出条件緩和債権には該当しないことに留意する。

      (注)債務者の経営再建又は支援を図る目的の有無については、単に融資形態のみをもって判断するのではなく、債務者の状況や資金の性格等を総合的に勘案して判断する必要がある。例えば、書換えが継続している手形貸付であっても、いわゆる正常運転資金については、そもそも債務者の支援を目的とした期限の延長ではないことから、貸出条件緩和債権には該当しないことに留意する。

    • マル2施行規則第19条の2第1項第5号ロ(4)の「債務者に有利となる取決め」とは、債権者と債務者の合意によるものか法律や判決によるものであるかは問わないことに留意する。また、その具体的な事例としては、例えば、以下のような約定条件の改定を行った債権又はその組み合わせで、かつ当該債務者に関する他の貸出金利息、手数料、配当等の収益、担保・保証等による信用リスク等の増減、競争上の観点等の当該債務者に対する取引の総合的な採算を勘案して、当該貸出金に対して、基準金利(当該債務者と同等な信用リスクを有している債務者に対して通常適用される新規貸出実行金利をいう。)が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていない債権が考えられるが、これらにかかわらず施行規則の定義に合致する貸出金は開示の対象となることに留意する。

      • イ.金利減免債権:金利を引き下げた貸出金

      • ロ.金利支払猶予債権:金利の支払を猶予した貸出金

      • ハ.経営支援先に対する債権:債権放棄やDES(デット・エクイティ・スワップ)などの支援を実施し、今後も再建計画の実施に際し追加的支援の蓋然性が高い債務者に対する貸出金

      • ニ.元本返済猶予債権:元本の支払を猶予した貸出金

      • ホ.一部債権放棄を実施した債権:私的整理における関係者の合意や会社更生、民事再生手続における認可決定等に伴い、元本の一部又は利息債権の放棄を行った貸出金の残債

      • ヘ.代物弁済を受けた債権:債務の一部弁済として、不動産や売掛金などの資産を債務者が債権者に引き渡した貸出金(担保権の行使による引き渡しを含む。)の残債

      • ト.債務者の株式を受け入れた債権:債務の一部弁済として、債務者の発行した株式を受領した貸出金の残債。ただし、当初の約定に基づき貸出金を債務者の発行した株式に転換した場合は除く

      (注)上記の事例に係る判定に当たっては、例えば、以下の点に留意する。

      • 適用金利が基準金利を下回る場合であっても、金利の減免や元本支払猶予等の貸出条件の変更を行っていない貸出金であれば、貸出条件緩和債権には該当しないこと。

      • ただし、金利の減免や元本支払猶予等の貸出条件の変更を行っていない貸出金であっても、新規貸出時に、債務者の経営状況、資金使途、及び設定された貸出条件等からして、実質的に当該債務者に対する既存債権の条件緩和、又は既存の貸出条件緩和債権の返済を目的として実施されたものであることが明らかな場合は、貸出条件緩和債権に該当すること。

      • 基準金利は経済合理性に従って設定されるべきであること。

        具体的には、

        • 設定に際し、信用リスクに基づく適切かつ精緻な区分を設け、その区分に応じた新規貸出約定平均金利を基準金利とすること。
        • ただし、新規貸出約定平均金利が、その区分において、信用リスク等に見合ったリターンが確保されている旨を合理的・客観的に証明できる方法により求めた金利を著しく下回る場合には、当該方法により求めた金利を基準金利とすること。
      • 開示の判断は、「ハ.経営支援先に対する債権」の場合は債務者単位で行うこと。また、「ホ.一部債権放棄を実施した債権」、「ヘ.代物弁済を受けた債権」及び「ト.債務者の株式を受け入れた債権」であって、開示を逃れるために意図的に債権を分割していると認められる場合は、当該債務者に対する分割をする前の当該貸出金の残債を開示する必要がある。これらの場合を除いては、個々の債権単位で開示の判断を行うこと。

        特に債務者が中小企業である場合は、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、当該企業の経営実態を踏まえて区分すること。

        条件変更を実施している債権であっても、当該企業が保有する資産の売却等の見通しが確実であり、それにより返済財源が確保されている場合等には、信用リスクそのものが軽減されていること。

    • マル3過去において債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として金利減免、金利支払猶予、債権放棄、元本返済猶予、代物弁済や株式の受領等を行った債務者に対する貸出金であっても、金融経済情勢等の変化等により新規貸出実行金利が低下した結果、又は当該債務者の経営状況が改善し信用リスクが減少した結果、当該貸出金に対して基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていると見込まれる場合、又は当該債務者の業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる状態となった場合には、当該貸出金は貸出条件緩和債権には該当しないことに留意する。

      特に、実現可能性の高い(注1)抜本的な(注2)経営再建計画(注3)に沿った金融支援の実施により経営再建が開始されている場合(注4)には、当該経営再建計画に基づく貸出金は貸出条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えない。また、債務者が実現可能性の高い抜本的な経営再建計画を策定していない場合であっても、債務者が中小企業であって、かつ、貸出条件の変更を行った日から最長1年以内に当該経営再建計画を策定する見込みがあるとき(注5)には、当該債務者に対する貸出金は当該貸出条件の変更を行った日から最長1年間は貸出条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えない。

      • (注1)「実現可能性の高い」とは、以下の要件を全て満たす計画であることをいう。ただし、債務者が中小企業であって、その進捗状況が概ね1年以上順調に進捗している場合には、その計画は「実現可能性の高い」計画であると判断して差し支えない。

        • 計画の実現に必要な関係者との同意が得られていること。

        • 計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、当該計画を超える追加的支援が必要と見込まれる状況でないこと。

        • 計画における売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分に厳しいものとなっていること。

      • (注2)「抜本的な」とは、概ね3年(債務者企業の規模又は事業の特質を考慮した合理的な期間の延長を排除しない。)後の当該債務者の業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる状態となることをいう。なお、債務者が中小企業である場合は、大企業と比較して経営改善に時間がかかることが多いことから、Ⅲ-3-2-4-3(4)における「合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画」が策定されている場合には、当該計画を実現可能性の高い抜本的な計画とみなして差し支えない。

      • (注3)中小企業活性化協議会又は株式会社整理回収機構が策定支援した再生計画、中小企業の事業再生等に関するガイドライン第三部に定める再生型私的整理手続により策定した再生計画、(小規模事業者の債務減免等を含まない計画であって同ガイドライン第三部4.(4)②ロ及びハのみを満たす計画を除く)、産業復興相談センターが債権買取支援業務において策定支援した事業計画、事業再生ADR手続(特定認証紛争解決手続(産業競争力強化法第2条第16項)をいう。)に従って決議された事業再生計画、株式会社地域経済活性化支援機構が買取決定等(株式会社地域経済活性化支援機構法第31条第1項)した事業者の事業再生計画(同法第25条第2項)及び株式会社東日本大震災事業者再生支援機構が買取決定等(株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法第25条第1項)した事業者の事業再生計画(同法第19条第2項第1号)については、当該計画が(注1)及び(注2)の要件を満たしていると認められる場合に限り、「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」であると判断して差し支えない。

      • (注4) 既存の計画に基づく経営再建が(注1)及び(注2)の要件を全て満たすこととなった場合も、「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画に沿った金融支援の実施により経営再建が開始されている場合」と同様とする。例えば、金融機関が債務者に対して貸付条件の変更を行う場合であって、当該債務者が経営改善計画等を策定しているとき(他の金融機関(政府系金融機関等を含む。)が行う貸付条件の変更等に伴って当該債務者が経営改善計画等を策定しているとき及び信用保証協会による既存の保証の条件変更に伴って当該債務者が経営改善計画等を策定しているときを含む。)は、当該計画が(注1)及び(注2)の要件を満たしていると認められるものであれば、金融機関が当該債務者に対して行う貸付条件の変更等に係る貸出金は貸出条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えない。

        なお、(注3)の場合を含め、(注1)及び(注2)の要件を当初全て満たす計画であっても、その後、これらの要件を欠くこととなり、当該計画に基づく貸出金に対して基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていないと見込まれるようになった場合には、当該計画に基づく貸出金は貸出条件緩和債権に該当することとなることに留意する。

      • (注5) 「当該経営再建計画を策定する見込みがあるとき」とは、銀行と債務者との間で合意には至っていないが、債務者の経営再建のための資源等(例えば、売却可能な資産、削減可能な経費、新商品の開発計画、販路拡大の見込み)が存在することを確認でき、かつ、債務者に経営再建計画を策定する意思がある場合をいう。

  • (4)要管理債権

    要管理債権とは、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者に対する債権のうち、「三月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権」をいう。

    なお、形式上は延滞が発生していないものの、実質的に三月以上遅延している債権も、要管理債権に該当する。実質的な延滞債権となっているかどうかは、返済期日近くに実行された貸出金の資金使途が元金又は利息の返済原資となっていないか等により判断する。

    金融機関等の支援を前提として経営改善計画等が策定されている債務者については、以下の全ての要件を充たしている場合には、経営改善計画等が合理的であり、その実現可能性が高いものと判断し、当該債務者に対する債権は要管理債権又は正常債権に該当するものと判断して差し支えない(当該計画を「合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画」という。)。

    なお、債務者が中小企業である場合、企業の規模、人員等を勘案すると、大企業の場合と同様な大部で精緻な経営改善計画等を策定できない場合がある。債務者が経営改善計画等を策定していない場合であっても、例えば、今後の資産売却予定、役員報酬や諸経費の削減予定、新商品等の開発計画や収支改善計画等のほか、債務者の実態に即して金融機関が作成・分析した資料を踏まえて債権区分の判断を行うことが必要である。

    また、債務者が中小企業である場合、必ずしも精緻な経営改善計画等を作成できないことから、景気動向等により、経営改善計画等の進捗状況が計画を下回る(売上高等及び当期利益が事業計画に比して概ね8割に満たない)場合がある。その際には、経営改善計画等の進捗状況のみをもって機械的・画一的に判断するのではなく、計画を下回った要因について分析するとともに、今後の経営改善の見通し等を検討することが必要である(ただし、経営改善計画の進捗状況が計画を大幅に下回っている場合には、「合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画」とは取り扱わない)。なお、経営改善計画等の進捗状況や今後の見通しを検討する際には、バランスシート面についての検討も重要であるが、キャッシュフローの見通しをより重視することが適当である。

    このほか、債務者が制度資金を活用して経営改善計画等を策定しており、当該経営改善計画等が国又は都道府県の審査を経て策定されている場合には、債務者の実態を踏まえ、国又は都道府県の関与の状況等を総合的に勘案して判断する。

    本基準は、あくまでも経営改善計画等の合理性、実現可能性を検証するための目安であり、債権区分を検討するに当たっては、本基準を機械的・画一的に適用すべきものではない。

    • マル1経営改善計画等の計画期間が原則として概ね5年以内であり、かつ、計画の実現可能性が高いこと。

      ただし、経営改善計画等の計画期間が5年を超え概ね10年以内となっている場合で、経営改善計画等の策定後、経営改善計画等の進捗状況が概ね計画どおり(売上高等及び当期利益が事業計画に比して概ね8割以上確保されていること)であり、今後も概ね計画どおりに推移すると認められる場合を含む。

    • マル2計画期間終了後の当該債務者の業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる状態(ただし、計画期間終了後の当該債務者が金融機関等の再建支援を要せず、自助努力により事業の継続性を確保することが可能な状態となる場合は、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある状態、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある状態のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある状態など今後の管理に注意を要する状態を含む。)となる計画であること。

    • マル3全ての取引金融機関等において、経営改善計画等に基づく支援を行うことが合意されていること。

      ただし、単独で支援を行うことにより再建が可能な場合又は一部の取引金融機関等が支援を行うことにより再建が可能な場合は、当該支援金融機関等が経営改善計画等に基づく支援を行うことについて合意されていれば足りるものと判断する。

    • マル4金融機関等の支援の内容が、金利減免、融資残高維持等に止まり、債権放棄、現金贈与などの債務者に対する資金提供を伴うものではないこと。

      ただし、経営改善計画等の開始後、既に債権放棄、現金贈与などの債務者に対する資金提供を行い、今後はこれを行わないことが見込まれる場合、及び経営改善計画等に基づき今後債権放棄、現金贈与などの債務者に対する資金提供を計画的に行う必要があるが、既に支援による損失見込額を全額引当金として計上済で、今後は損失の発生が見込まれない場合を含む。

      なお、制度資金を利用している場合で、当該制度資金に基づく国が補助する都道府県の利子補給等は債権放棄等には含まれないことに留意する。

  • (5)正常債権

    正常債権とは、「債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、要管理債権、危険債権、破産更生債権及びこれらに準ずる債権以外のものに区分される債権」をいう。

    なお、国、地方公共団体及び被管理金融機関に対する債権は正常債権に該当する。

III -3-2-4-4 自己資本の充実の状況等の開示(施行規則第19条の2第1項第5号ニ、第19条の3第1項第3号ハ、第19条の5、第34条の26第1項第4号ハ、及び第34条の27の2関係)

自己資本比率規制及びレバレッジ比率規制の第3の柱(市場規律)に基づく自己資本の充実の状況等の開示は、第1の柱(最低所要自己資本比率及び最低レバレッジ比率)及び第2の柱(金融機関の自己管理と監督上の検証)を補完し、市場による外部評価の規律づけにより金融機関の経営の健全性を維持することを目的としており、開示告示に従って、以下の事項に留意し、適切に実施される必要がある。また、金融機関は、開示の対象となる情報の重要性に照らしつつ、利用者にとって有益な情報開示のあり方を検討する必要がある。情報開示の省略等が当該情報の利用者による経済的な意思決定を変更させる可能性のある情報については、その適切な開示に特に留意するものとする。

ただし、財産的価値を有する情報及び守秘義務に係る情報については、これらの情報を公開することで銀行の地位に大きな損害を与えるおそれがある場合には、当該項目に関するより一般的な情報とともに、その特定の情報項目が開示されなかった事実及びその理由を開示することで差し支えないものとする。

(注)Ⅲ-3-2-4-4は、主に銀行が単体自己資本比率及び単体レバレッジ比率を算出するに当たっての開示事項を定めたものであり、銀行が連結自己資本比率及び連結レバレッジ比率を算出する場合や銀行持株会社が連結自己資本比率及び連結レバレッジ比率を算出する場合には、適宜読み替えて適用するものとする。

  • (1)定性的な開示事項   【国際統一基準行・国際統一基準持株会社】

    • マル1「連結の範囲に関する次に掲げる事項」について

      • イ.「連結自己資本比率を算出する対象となる会社の集団(連結グループ)に属する会社と連結財務諸表規則第5条に規定する連結の範囲(会計連結範囲)に含まれる会社との相違点及び当該相違点の生じた原因」

        • 告示第3条又は持株自己資本比率告示第3条の規定に従った場合と連結財務諸表規則に基づく場合の連結の範囲及び方法の違い(例えば、連結、持分法適用、比例連結等)
        • 連結の範囲及び方法の違いが生じた原因
      • ロ.「連結グループに属する会社であって会計連結範囲に含まれないもの及び連結グループに属しない会社であって会計連結範囲に含まれるものの名称、貸借対照表の総資産の額及び純資産の額並びに主要な業務の内容」には、一覧表示等の方法により、同じ取扱いを受けるものの区分ごとに、それらの名称、貸借対照表の総資産の額及び純資産の額並びに主要な業務の内容

    • マル2「銀行全体のリスクの特性並びにリスク管理の方針、手続及び体制の概要」

      • イ.銀行のビジネスモデルとリスクプロファイルとの整合性がどのように確保されているかの説明(例えば、ビジネスモデルに係る主要なリスクの説明と、その主要なリスクが、それぞれのリスクカテゴリーのなかでどのように管理され、開示されているかの説明等)及び銀行のリスクプロファイルが、取締役会で承認されたリスク許容量とどのように関連付けられているかの説明

      • ロ.リスク・ガバナンス体制。例えば、銀行内における責任の所在(それぞれの権限、権限の委譲、リスクカテゴリー別及び事業部門別の責任の分担等)、リスク管理プロセスに関与する組織、部門間の関係(取締役会、取締役、各リスク委員会、各リスク管理部門、コンプライアンス部門、内部監査部門等)

      • ハ.銀行内でリスク文化を醸成するための方法(行動規範、リミットの管理方法や抵触した場合の手続、業務担当者(ビジネスライン)とリスク管理部署との間でリスクに係る課題を提起、共有するための手続等)

      • ニ.リスク計測システムの対象範囲と主な特徴

      • ホ.取締役及び取締役会等へのリスク情報の報告手続き。特に、エクスポージャーに関する報告の範囲と主な内容

      • ヘ.ストレス・テストに関する定性的情報(ストレス・テストの対象となるポートフォリオ、採用したシナリオと使用した手法、リスク管理におけるストレス・テストの利用等)

      • ト.銀行のビジネスモデルから生じるリスクを管理、ヘッジ、削減するための戦略と手順、ヘッジと削減策の継続的な有効性をモニタリングするための手順

    • マル3「信用リスクに関する次に掲げる事項」

      • イ.「リスクの特性並びにリスク管理の方針、手続及び体制の概要」

        • ビジネスモデルに基づいた信用リスクプロファイルの説明
        • 信用リスク管理方針を決定し、信用リスク限度額を設定する基準と方法
        • 信用リスク管理・コントロールに関する体制と組織
        • 信用リスク管理部門、与信管理部門、コンプライアンス部門、内部監査部門の関係
        • 信用リスクエクスポージャーと信用リスクの管理機能に係る報告の範囲と主な内容
      • ロ.「会計上の引当て及び償却に関する基準の概要」

        • 引当て・償却の方針及び方法(信用格付付与、債務者区分、債権区分、資産分類の概要(区分の定義、区分方法及び対象資産の範囲に関する説明を含む。)と引当て・償却の額の算定方法を含む。)
        • 債権を危険債権以下に区分しない(あるいは破綻懸念先以下に区分されている先に対する債権と判定しない)ことを許容する三月以上延滞債権の延滞日数の程度、及びその理由
        • 貸出条件の緩和を実施した債権(三月以上延滞債権及び危険債権以下に該当するものを除く)の定義(三月以上延滞債権及び危険債権以下に区分しない条件、貸出条件の緩和を実施したことに伴い引当金の額を増加させる条件の説明を含む。)
        • 引当金及び自己資本比率それぞれの算定に利用する信用リスクのパラメーターの主要な差異(デフォルトの定義やパラメーターの算出方法の差異を含む。差異がない場合は差異がないことの説明を含む。)
      • ハ.「標準的手法採用行にあっては、エクスポージャーの種類ごとのリスク・ウェイトの判定に使用する適格格付機関等の名称」については、告示第51 条第1項又は持株自己資本比率告示第29 条第1 項に基づき、個別格付が付与されていない債権に、当該債務者が負っている他の債務の個別格付を適用している場合、その適用に当たっての運用プロセス及び適用状況の説明

      • ニ.「内部格付手法採用行にあっては、次に掲げる事項」のうち、「内部格付制度の概要及び当該制度に関する次に掲げる事項の概要」

        • a.「資産区分ごとの格付付与手続」については、各ポートフォリオにおいて用いられる主なモデルの数、同一のポートフォリオに含まれるモデル間の主な差異に関する説明

        • b.「パラメーター推計及びその検証体制」

          • PD:推計と検証のための定義、方法、データに係る説明(デフォルトの可能性が低いポートフォリオ(LDP:LowDefault Portfolio)のPDの推計方法、規制上のフロアの適用状況、少なくとも過去3期分のPDの推計値と実績デフォルト率の間の差異の主な要因等)
          • LGD:景気後退期LGDの推計方法、LDPのLGDの推計方法、デフォルト時からエクスポージャーの清算(終結)までに要する期間に係る説明等
          • EAD:EAD推計に当たって用いられた前提や仮定等
        • c.「内部格付制度並びに使用するモデルの開発及び管理等に係る運営体制」

          • 使用するモデルの開発、承認、変更手続きを行う部門の役割
          • リスク管理部門と内部監査部門との関係、モデルの検証機能がモデル開発から独立していることを確保する手続
          • モデルに係る報告の範囲と主な内容
    • マル4「信用リスク削減手法に関するリスクの特性並びにリスク管理の方針、手続及び体制の概要」

      • イ.ネッティングを利用する方針及びプロセスの基本的な特徴並びにネッティングの利用状況に係る説明

      • ロ.担保評価・担保管理の方針・プロセスの基本的な特徴

      • ハ.使用する信用リスク削減手法におけるマーケット・リスク又は信用リスクの集中状況に関する説明(例えば、保証人の種類別、担保の種類別又はクレジット・デリバティブにおけるプロテクションの提供者別にエクスポージャーを集計したときの、特定の区分へのエクスポージャーの集中状況)

    • マル5「派生商品取引及びレポ形式の取引等の相手方に対する信用リスクに関するリスクの特性並びにリスク管理の方針、手続及び体制の概要」

      • イ.カウンターパーティ及び中央清算機関に対するエクスポージャーに関するリスク資本及び与信限度枠の割当方法に関する方針

      • ロ.担保、保証、ネッティングその他の信用リスク削減手法に関する評価並びに担保等の管理の方針及び処分手続の概要

      • ハ.誤方向リスクの特定、モニタリング及び管理のための方針

      • ニ.自行の信用力悪化により担保を追加的に提供することが必要となる場合の影響度に関する説明

    • マル6「証券化取引に係るリスクに関する次に掲げる事項」

      • イ.「リスクの特性並びにリスク管理の方針、手続及び体制の概要」については、銀行の証券化取引についての方針(証券化によるリスク移転の程度及びリスクの種類を含む。)(銀行勘定と特定取引勘定を区別すること。また、再証券化取引を行っている場合は、区別すること。以下この⑥において同じ。)

      • ロ.「体制の整備及びその運用状況の概要」については、再証券化エクスポージャーを保有している場合は、証券化エクスポージャーとの差異

      • ハ.「証券化目的導管体の名称及び当該証券化取引に係る証券化エクスポージャーを保有しているかどうかの別」については、少なくとも当事業年度に行った証券化取引のほか、銀行が自己資本比率を算出する上で当該証券化目的導管体を連結の範囲に含めているかどうかの別

      • ニ.「連結自己資本比率を算出する対象となる会社の集団の子法人等及び関連法人等のうち、当該連結グループが行った証券化取引に係る証券化エクスポージャーを保有し、かつ、当該連結グループがその経営に関与し又は助言を提供しているものの名称」については、少なくとも当事業年度に行った証券化取引

      • ホ.「内部評価方式を使用している場合には、その概要」

        • 内部評価のプロセス及び内部評価のプロセスを統制する仕組み(統制を行う者の独立性、説明責任、内部評価のプロセスに対する評価結果等を含む。)
        • 内部評価と適格格付機関の付与する外部格付との関係(当該適格格付機関についての情報も含む。)
        • 所要自己資本の計算目的以外の内部評価の利用方法
        • 内部評価方式が適用される証券化エクスポージャーの種類及びエクスポージャーの種類毎の信用補完の水準を定めるためのストレス・ファクター
    • マル7「マーケット・リスクに関する次に掲げる事項」【新規制導入先は除く。なお、新規制導入先は改正後の告示(令和4年金融庁告示第24号をいう。以下同じ。)を参照すること。】

      • イ.「リスクの特性並びにリスク管理の方針、手続及び体制の概要」

        • 銀行のトレーディング活動の戦略目標及びマーケット・リスク管理のプロセス
        • マーケット・リスク管理部署の体制及び役割
        • リスク量に関する報告及び計測システムの範囲と主な内容
      • ロ.「内部モデル方式を使用する場合におけるモデルの概要及び適用範囲」

        • a.バリュー・アット・リスク及びストレス・バリュー・アット・リスク

          • ⅰ)内部モデル方式の適用範囲(リスクカテゴリーの別、拠点の別又は個別リスク若しくは一般市場リスクの別)

          • ⅱ)グループ内の異なる拠点において、複数のモデルを使用している場合には、拠点別の使用しているモデルに関する説明

          • ⅲ)モデルの概要

          • ⅳ)内部管理に用いるモデルと規制上のモデルに差異がある場合には、その差異に関する説明

          • ⅴ)バリュー・アット・リスクに関する以下の事項

            • ヒストリカル・データの更新頻度
            • ヒストリカル・データの観測期間
            • ヒストリカル・データの重み付けの方法
            • 10 営業日を下回る保有期間によって算出したバリュー・アット・リスクについては保有期間の換算方法
            • バリュー・アット・リスクの合算方法(一般市場リスクと個別リスクの合算、リスク・ファクター間の合算等)
            • 価格再評価の手法(フルバリュエーション法、センシティビティ法等)
            • リスク・ファクターの変動の捕捉(絶対リターン、相対リターン等)
          • ⅵ)ストレス・バリュー・アット・リスクに関する以下の事項

            • ストレス期間の選定方法とその根拠
            • 価格再評価の手法(フルバリュエーション法、センシティビティ法等)
            • 10 営業日を下回る保有期間によって算出したストレス・バリュー・アット・リスクについては保有期間の換算方法
          • ⅶ)ストレス・テストに関する説明

          • ⅷ)バックテスティングに関する説明

          • ⅸ)内部モデルに使用するパラメーターの検証体制

          • ⅹ)その他モデル検証手法に関する説明

        • b.追加的リスク

          • ⅰ)モデルの概要

          • ⅱ)デフォルト及び格付遷移の織り込み方法

          • ⅲ)各種パラメーターの推定方法(PD/LGD、遷移確率、相関等)

          • ⅳ)流動性ホライズンの設定方法に関する説明

          • ⅴ)モデル検証手法

        • c.包括的リスク

          • ⅰ)モデルの概要

          • ⅱ)デフォルト及び格付遷移の織り込み方法

          • ⅲ)各種パラメーターの推定方法(PD/LGD、遷移確率、相関等)

          • ⅳ)流動性ホライズンの設定方法に関する説明

          • ⅴ)モデル検証手法

    • マル8「オペレーショナル・リスクに関する次に掲げる事項」のうち、「リスク管理の方針及び手続の概要」については、リスクを確実に認識し、評価・計測し、報告するための体制【新規制導入先は除く。なお、新規制導入先は改正後の告示を参照すること。】

    • マル9「株式と同等の性質を有するものに対するエクスポージャー又は株式等エクスポージャーに関するリスクの特性並びにリスク管理の方針、手続及び体制の概要」【新規制導入先に限る。なお、新規制導入先以外の金融機関は、なお従前の例による。】

      • イ.リスクを確実に認識し、評価・計測し、報告するための体制

      • ロ.その他有価証券、子会社株式及び関連会社株式の区分ごとのリスク管理の方針

      • ハ.株式等エクスポージャーの評価等重要な会計方針(会計方針を変更した場合については、財務諸表規則第8条の3に準じた事項を含む。)

    • マル10「金利リスクに関する次に掲げる事項」

      • イ.「リスク管理の方針及び手続の概要」

        • リスク管理及び計測の対象とする金利リスクの考え方及び範囲に関する説明
        • リスク管理及びリスク削減の方針に関する説明
        • 金利リスク計測の頻度
        • ヘッジ等金利リスクの削減手法(ヘッジ手段の会計上の取扱いを含む)に関する説明
      • ロ.「金利リスクの算定手法の概要」

        • 開示告示に基づく定量的開示の対象となるΔEVE及びΔNII(銀行勘定の金利リスクのうち、金利ショックに対する算出基準日から12 ヶ月を経過する日までの間の金利収益の減少額として計測されるものであって、開示告示に定められた金利ショックにより計算されるものをいう。以下この⑩において同じ。)並びに銀行がこれらに追加して自ら開示を行う金利リスクに関する以下の事項
          ― 流動性預金に割り当てられた金利改定の平均満期
          ― 流動性預金に割り当てられた最長の金利改定満期
          ― 流動性預金への満期の割当て方法(コア預金モデル等)及びその前提
          ― 固定金利貸出の期限前返済や定期預金の早期解約に関する前提
          ― 複数の通貨の集計方法及びその前提
          ― スプレッドに関する前提(計算にあたって割引金利やキャッシュフローに含めるか否か等)
          ― 内部モデルの使用等、ΔEVE及びΔNIIに重大な影響を及ぼすその他の前提
          ― 前事業年度末の開示からの変動に関する説明
          ― 計測値の解釈や重要性に関するその他の説明
        • 銀行が、自己資本の充実度の評価、ストレス・テスト、リスク管理、収益管理、経営上の判断その他の目的で、開示告示に基づく定量的開示の対象となるΔEVE及びΔNII以外の金利リスクを計測している場合における、当該金利リスクに関する以下の事項
          ― 金利ショックに関する説明
          ― 金利リスク計測の前提及びその意味(特に、開示告示に基づく定量的開示の対象となるΔEVE及びΔNIIと大きく異なる点)
    • マル11「貸借対照表の科目が別紙様式第一号に記載する項目のいずれに相当するかについての説明」

      本項目については、開示告示別紙様式第13号(連結自己資本比率を算出する銀行においては同告示別紙様式第14号)に従って記載するものとする。

    • マル12「自己資本比率規制上のエクスポージャーの額と貸借対照表計上額との差異及びその要因に関する説明」

      • イ.開示告示別紙様式第2号第2面で複数のリスク区分にまたがる勘定科目やリスク区分との紐づけが困難な勘定科目についての定性的な説明

      • ロ.自己資本比率規制上のエクスポージャーの額と貸借対照表計上額との差異について、開示告示別紙様式第2号第3面で示される主要な差異項目の説明

  • (2)定性的な開示事項 【国内基準行・国内基準持株会社】

    • マル1「連結の範囲に関する次に掲げる事項」について

      • イ.「連結自己資本比率を算出する対象となる会社の集団(連結グループ)に属する会社と会計連結範囲に含まれる会社との相違点及び当該相違点の生じた原因」には、以下の内容が記載されているか。

        • 告示第26 条又は持株自己資本比率告示第15 条の規定に従った場合と連結財務諸表規則に基づく場合の連結の範囲及び方法の違い(例えば、連結、持分法適用、比例連結等)
        • 連結の範囲及び方法の違いが生じた原因
      • ロ.「連結グループに属する会社であって会計連結範囲に含まれないもの及び連結グループに属しない会社であって会計連結範囲に含まれるものの名称、貸借対照表の総資産の額及び純資産の額並びに主要な業務の内容」には、同じ取扱いを受けるものの区分ごとに、それらの名称、貸借対照表の総資産の額及び純資産の額並びに主要な業務の内容が、一覧表示等の方法により適切に記載されているか。

    • マル2「自己資本調達手段の概要」には、告示第25条若しくは第37条又は持株自己資本比率告示第14条の算式における「自己資本の額」にその発行額の全部又は一部が含まれる自己資本調達手段(経過措置により自己資本の額に含まれる適格旧非累積的永久優先株及び適格旧資本調達手段を含む。)に係る以下の情報を記載しているか。

      • 発行主体
      • 資本調達手段の種類
      • コア資本に係る基礎項目の額に算入された額
    • (以下は該当する場合に記載)

      • 配当率又は利率(公表されている場合)
      • 償還期限がある場合は、その旨及び日付
      • 一定の事由が生じた場合に償還等を可能とする特約がある場合は、その概要(初回償還可能日、償還金額、対象となる事由等)
      • 他の種類の資本調達手段への転換に係る特約がある場合は、その概要
      • 元本の削減に係る特約がある場合は、その概要
      • 配当等停止条項がある場合は、その旨及び停止した未払の配当又は利息に係る累積の有無
      • ステップ・アップ金利等に係る特約その他の償還等を行う蓋然性を高める特約がある場合は、その概要
    • マル3「信用リスクに関する次に掲げる事項」について

      • イ.「リスク管理の方針及び手続の概要」には、以下の内容が記載されているか。

        • リスクを確実に認識し、評価・計測し、報告するための態勢
        • 貸倒引当金の計上基準
        • 信用リスクの算出に当たり、基礎的内部格付手法あるいは先進的内部格付手法を採用しているにもかかわらず、銀行が採用していない手法を部分的に適用している場合には、各手法が適用されるエクスポージャーの性質及びエクスポージャーを適切な手法に完全に移行させるための計画の説明
      • ロ.「エクスポージャーの種類ごとのリスク・ウェイトの判定に使用する適格格付機関等の名称」について、すべての法人等向けエクスポージャー(中小企業等向けエクスポージャーを除く。)に100%のリスク・ウェイトを適用している場合には、それを開示しているか。【新規制導入先は除く。】

      • ハ.「内部格付手法が適用されるポートフォリオについて、次に掲げる事項」について

        • a.「使用する内部格付手法の種類」について、内部格付手法について段階的適用を行う場合は、移行期間を記載しているか。

        • b.「内部格付制度の概要」には、以下の内容が記載されているか。

          • 内部格付制度の構造(内部格付を付与するに当たり、外部格付を主要な要素として用いている場合は、両者の関係についての説明を含む。)
          • 自己資本比率算出目的以外での各種推計値の利用状況
          • 内部格付制度の管理と検証手続
      • ニ.「次に掲げるポートフォリオごとの格付付与手続の概要」には、各ポートフォリオについて以下の内容が記載されているか。

        • 各ポートフォリオに含まれるエクスポージャーの種類
        • PD(先進的内部格付手法を採用している場合には加えてLGD及びEAD)の推計及び検証に用いた定義、方法及びデータ(これらの変数の導出に用いられた前提を含む。)
        • 告示及び持株自己資本比率告示で定められたデフォルトの定義との相違点が存在し、かつ、当該相違点が重要であると判断される場合には、当該相違点の内容に関する説明(当該相違点が影響を与えるポートフォリオの種類の説明を含む。)
    • マル4「信用リスク削減手法に関するリスク管理の方針及び手続の概要」には、以下の内容が記載されているか。

      • 貸出金と自行預金の相殺を用いるに当たっての方針及び手続の概要並びにこれを用いている取引の種類、範囲等
      • 派生商品取引並びにレポ形式の取引及び信用取引その他これに類する海外の取引について法的に有効な相対ネッティング契約を用いるに当たっての方針及び手続の概要並びにこれを用いている取引の種類、範囲等【新規制導入先に限る。なお、新規制導入先以外の金融機関は、なお従前の例による。】
      • 担保に関する評価、管理の方針及び手続の概要
      • 主要な担保の種類
      • 保証人及びクレジット・デリバティブの主要な取引相手の種類及びその信用度の説明
      • 信用リスク削減手法の適用に伴う信用リスク及びマーケット・リスクの集中に関する情報
    • マル5「派生商品取引及び長期決済期間取引の取引相手のリスクに関するリスク管理の方針及び手続の概要」には、以下の内容が記載されているか。

      • リスク資本及び与信限度枠の割当方法に関する方針
      • 担保による保全及び引当金の算定に関する方針
      • 自行の信用力の悪化により担保を追加的に提供することが必要となる場合の影響度に関する説明
    • マル6「証券化エクスポージャーに関する次に掲げる事項」について

      • イ.「リスク管理の方針及びリスク特性の概要」には、以下の内容が記載されているか。

        • リスクを確実に認識し、評価・計測し、報告するための態勢
        • 銀行の証券化取引についての方針(証券化によるリスク移転の程度及びリスクの種類を含む(再証券化取引を行っている場合は、区別して記載すること。)。)
        • 銀行の証券化取引における役割(オリジネーター、投資家、サービサー、信用補完の提供者、ABCPのスポンサー、流動性の提供者、スワップの提供者等)及び関与の度合
        • 証券化エクスポージャーに内在する信用リスク及びマーケット・リスク以外のリスク(例えば、流動性リスク)がある場合には、その性質
      • ロ.「体制の整備及びその運用状況の概要」には、再証券化エクスポージャーを保有している場合は、証券化エクスポージャーとの差異を含めて記載されているか。

      • ハ.「当該証券化目的導管体の種類及び当該銀行が当該証券化取引に係る証券化エクスポージャーを保有しているかどうかの別」には、少なくとも当事業年度に行った証券化取引について記載されているか。また、保有する証券化エクスポージャーをオンバランス取引又はオフバランス取引のいずれとして取り扱っているかの別を含めて記載されているか。

      • ニ.「銀行の子法人等(連結子法人等を除く。)及び関連法人等のうち、当該銀行が行った証券化取引(銀行が証券化目的導管体を用いて行った証券化取引を含む。)に係る証券化エクスポージャーを保有しているものの名称」には、少なくとも当事業年度に行った証券化取引について記載されているか。

      • ホ.「証券化取引に関する会計方針」には、以下の内容が記載されているか。

        • 証券化取引を資産の売却あるいは資金の調達等どのように会計上認識しているか。
        • 資産の売却をどの時点で認識しているか。
        • 証券化エクスポージャーの留保持分評価の前提等。変更があった場合は、その概要と影響。
        • デリバティブ等他の会計方針と合成型証券化の会計方針が異なる場合は、その説明。
        • 証券化取引を目的として保有している資産についての評価方法及び銀行勘定又は特定取引勘定のいずれに計上しているか。
        • 証券化エクスポージャーに提供している流動性補完、信用補完、その他の事前の資金の払込みを行わない信用供与について、貸借対照表において負債として認識するための方針。
      • ヘ.「内部評価方式を用いている場合には、その概要」には、以下の内容が記載されているか。

        • 内部評価のプロセス及び内部評価のプロセスを統制する仕組み(統制を行う者の独立性、説明責任、内部評価のプロセスに対する評価結果等を含む。)
        • 内部評価と適格格付機関の付与する外部格付との関係(当該適格格付機関についての情報も含む。)
        • 所要自己資本の計算目的以外の内部評価の利用方法
        • 内部評価方式が適用される証券化エクスポージャーの種類及びエクスポージャーの種類毎の信用補完の水準を定めるためのストレス・ファクター
      • ト.「定量的な情報に重要な変更が生じた場合には、その内容」の例としては、証券化取引を目的として保有している資産の額に重要な変更が生じた場合及び銀行勘定と特定取引勘定との間の移動があった場合等が考えられる。

    • マル7「マーケット・リスクに関する次に掲げる事項」について【新規制導入先は除く。なお、新規制導入先は改正後の告示を参照すること。】

      • イ.「リスク管理の方針及び手続の概要」には、リスクを確実に認識し、評価・計測し、報告するための態勢が記載されているか。

      • ロ.「追加的リスクを内部モデルで計測している場合には、当該内部モデルの概要」には、追加的リスクの計測対象としているデフォルトの定義及び格付区分の概要、流動性ホライズンの決定方法並びに追加的リスク計測モデルの検証方法を含めて記載されているか。

      • ハ.「包括的リスクを内部モデルで計測している場合には、当該内部モデルの概要」には、包括的リスクの計測対象としているリスクの種類及びその評価方法並びに包括的リスク計測モデルの検証方法(ストレス・テストの活用方法を含む。)を含めて記載されているか。

    • マル8「オペレーショナル・リスクに関する次に掲げる事項」について、「リスク管理の方針及び手続の概要」には、リスクを確実に認識し、評価・計測し、報告するための態勢が記載されているか。【新規制導入先は除く。なお、新規制導入先は改正後の告示を参照すること。】

    • マル9「出資等又は株式等エクスポージャーに関するリスク管理の方針及び手続の概要」には、以下の内容が記載されているか。

      • リスクを確実に認識し、評価・計測し、報告するための態勢
      • その他有価証券、子会社株式及び関連会社株式の区分ごとのリスク管理の方針
      • 株式等エクスポージャーの評価等重要な会計方針(会計方針を変更した場合には、財務諸表規則第8条の3に準じた事項を含む。)
    • マル10「金利リスクに関する次に掲げる事項」

      • イ.「リスク管理の方針及び手続の概要」

        • リスク管理及び計測の対象とする金利リスクの考え方及び範囲に関する説明
        • リスク管理及びリスク削減の方針に関する説明
        • 金利リスク計測の頻度
        • ヘッジ等金利リスクの削減手法(ヘッジ手段の会計上の取扱いを含む)に関する説明
      • ロ.「金利リスクの算定手法の概要」

        • 開示告示に基づく定量的開示の対象となるΔEVE及びΔNII(銀行勘定の金利リスクのうち、金利ショックに対する算出基準日から12 ヶ月を経過する日までの間の金利収益の減少額として計測されるものであって、開示告示に定められた金利ショックにより計算されるものをいう。以下この⑩において同じ。)並びに銀行がこれらに追加して自ら開示を行う金利リスクに関する以下の事項
          ― 流動性預金に割り当てられた金利改定の平均満期
          ― 流動性預金に割り当てられた最長の金利改定満期
          ― 流動性預金への満期の割当て方法(コア預金モデル等)及びその前提
          ― 固定金利貸出の期限前返済や定期預金の早期解約に関する前提
          ― 複数の通貨の集計方法及びその前提
          ― スプレッドに関する前提(計算にあたって割引金利やキャッシュフローに含めるか否か等)
          ― 内部モデルの使用等、ΔEVE及びΔNIIに重大な影響を及ぼすその他の前提
          ― 前事業年度末の開示からの変動に関する説明
          ― 計測値の解釈や重要性に関するその他の説明
        • 銀行が、自己資本の充実度の評価、ストレス・テスト、リスク管理、収益管理、経営上の判断その他の目的で、開示告示に基づく定量的開示の対象となるΔEVE及びΔNII以外の金利リスクを計測している場合における、当該金利リスクに関する以下の事項
          ― 金利ショックに関する説明
          ― 金利リスク計測の前提及びその意味(特に、開示告示に基づく定量的開示の対象となるΔEVE及びΔNIIと大きく異なる点)
  • (3)定量的な開示事項 【国際統一基準行・国際統一基準持株会社】
    定量的な開示事項について、前期から大幅な変化があった場合に、その要因に係る説明。

    • マル1 「信用リスクに関する次に掲げる事項」について、本項目の記載に当たっては、銀行の保有する資産の質(Credit Quality of Assets)に係る定量的な開示事項の情報を補完する目的を踏まえる。

      • イ.「主な種類別の内訳」の例として(a)貸出金、コミットメント及びその他のデリバティブ以外のオフ・バランスシート・エクスポージャー、(b)債券の2類型等が考えられる。

      • ロ.「地域別」については、少なくとも国内及び国外の区分

      • ハ.延滞期間別のエクスポージャーの期末残高(危険債権以下に該当するものを除く。延滞期間は、「1ヵ月未満」「1ヵ月以上2ヵ月未満」「2ヵ月以上3ヵ月未満」「3ヵ月以上」等の区分を行うものとする。)

    • マル2 開示告示第2条第5項に規定する定量的な開示事項のうち、別紙様式第2号第32面によるG-SIBs 選定指標に係る開示に規定する定量的な開示事項について、バーゼル銀行監督委員会が公表するG-SIBs の選定指標に係るインストラクションに従った適切な開示。

  • (4)定量的な開示事項 【国内基準行・国内基準持株会社】

    • マル1「自己資本の充実度に関する次に掲げる事項」について

      • イ.「内部格付手法が適用されるポートフォリオ及びこのうち次に掲げるポートフォリオごとの内訳」について、基礎的内部格付手法及び先進的内部格付手法の両方を部分的に使用する銀行にあっては、手法ごとに記載しているか。

      • ロ.「内部格付手法が適用されるポートフォリオにおける株式等エクスポージャーに係る信用リスクに対する所要自己資本の額及びこのうち次に掲げる区分ごとの額」には、所要自己資本の算出における区分に沿った形での株式のポートフォリオ別の所要自己資本の額を記載しているか。【新規制導入先に限る。なお、新規制導入先以外の金融機関は、なお従前の例による。】

    • マル2「信用リスクに関する次に掲げる事項」について

      • イ.「信用リスクに関するエクスポージャーの期末残高(期末残高がその期のリスク・ポジションから大幅に乖離している場合には期中平均残高の開示も要する。)及びエクスポージャーの主な種類別の内訳」には、以下の内容が記載されているか。

        • 期中平均残高の計算に日次平均を用いていない場合は、計算方法
        • 信用リスクの計算に当たって複数の手法を使用している銀行にあっては、使用している手法ごとのエクスポージャーの期末残高
      • ロ.「エクスポージャーの主な種類別の内訳」の例として (a)貸出金、コミットメント及びその他のデリバティブ以外のオフ・バランスシート・エクスポージャー、(b)債券、(c)OTCデリバティブの3類型等が考えられる。

      • ハ.「地域別」には、少なくとも国内及び国外に区分しているか。

      • ニ.「一般貸倒引当金、個別貸倒引当金及び特定海外債権引当勘定」の「増減額」について、増減の内訳を記載しているか。

      • ホ.「標準的手法が適用されるエクスポージャーについて、リスク・ウェイトの区分ごとの信用リスク削減手法の効果を勘案した後の残高」について、リスク・ウェイトの区分ごとの保有残高は格付の有無についても区分しているか。【新規制導入先は除く。】

      • ヘ.「内部格付手法が適用されるポートフォリオについて、次に掲げる事項」について

        • a.債務者格付あるいはプールを統合して開示する場合には、内部格付手法において使用される債務者格付あるいはプールの全体的な分布状況が理解し得るような方法で統合を行っているか。

        • b.「適切な数のEL区分を設けた上でのプール単位でのエクスポージャーの分析」について、このようにEL区分を用いた開示を実施する場合には、開示の利用者に対して十分意味のある信用リスクの分解という観点で適切なEL区分となっているか。

      • ト.「内部格付手法を適用する」「エクスポージャーごとの直前期における損失の実績値及び当該実績値と過去の実績値との対比並びに要因分析」について、要因分析には、PD、LGD及びEADの水準についての分析が記載されているか。

      • チ.「内部格付手法を適用する」「エクスポージャーごとの長期にわたる損失額の推計値と実績値の対比」について、対比期間は内部格付制度及び推計値の精度を評価するために十分に長期であるか。

    • マル3「信用リスク削減手法に関する次に掲げる事項」について、合成型証券化取引の一部として扱われるクレジット・デリバティブは、信用リスク削減手法の情報開示から除き、証券化エクスポージャーに関する情報開示に含めているか。

    • マル4「証券化エクスポージャーに関する次に掲げる事項」について

      • イ.「主な原資産の種類別の内訳」の例として、クレジットカード与信、住宅ローン、自動車ローン等が考えられる。

      • ロ.「銀行がオリジネーターである場合における信用リスク・アセットの算出対象となる証券化エクスポージャーに関する次に掲げる事項」及び「銀行がオリジネーターである場合におけるマーケット・リスク相当額の算出対象となる証券化エクスポージャーに関する次に掲げる事項」について

        • オリジネーターである銀行が、当事業年度に行った証券化取引のうち、当該銀行が証券化エクスポージャーを保有しない証券化取引については、別に記載されているか。
        • スポンサー業務のみにより生じる証券化エクスポージャーとその他の証券化エクスポージャーがある場合は、必要があれば両者が区別して記載されているか。
      • ハ.「当期の損失額」には、償却・引当及びI/Oストリップスの償却が含まれているか。

      • ニ.「保有する証券化エクスポージャーの額及び主な原資産の種類別の内訳」には、オンバランス取引とオフバランス取引とが区別して記載されているか。

      • ホ.「保有する証券化エクスポージャーの適切な数のリスク・ウエイトの区分ごとの残高及び所要自己資本の額」には、オンバランス取引とオフバランス取引とが区別して記載されているか。

      • ヘ.「自己資本から控除した証券化エクスポージャー」には、信用補完機能を持つI/Oストリップスが含まれているか。

    • マル5「出資等又は株式等エクスポージャーに関する次に掲げる事項」の「貸借対照表計上額及び時価」について、上場証券の株価と公正価値が大きく乖離している場合、対比を開示しているか。

  • (5)連結レバレッジ比率又は単体レバレッジ比率に関する開示事項 【国際統一基準行・国際統一基準持株会社】

    「前連結会計年度の連結レバレッジ比率との間に著しい差異を生じた原因」又は「前事業年度の単体レバレッジ比率との間に著しい差異を生じた原因」について、例えば、前連結会計年度末における連結レバレッジ比率又は前事業年度末における単体レバレッジ比率から0.5%以上の増加又は減少がある場合のほか、主要な連結子会社の異動による連結レバレッジ比率の増加又は減少が生じた場合にはその変動が連結レバレッジ比率の分子(資本の額)又は分母(総エクスポージャーの額)のいずれの変動によって生じたか、その主な要因について開示しているか。

  • (6)四半期ごとの開示事項  【国際統一基準行・国際統一基準持株会社】

    • マル1開示告示第6条及び第9条に規定する事項につき、バーゼル合意の趣旨を踏まえ、四半期ごとの開示が適切になされる必要がある。なお、これらの開示事項(過去情報も含む。)をウェブサイト上に開示する場合には、その記載箇所を預金者、投資家等の利用者が容易に特定できるようにすることが適当である。
       
      また、開示告示第6条に掲げる銀行における四半期の開示事項のうち、第1項第2号、第3号及び第5号並びに第2項第2号から第4号まで及び第6号から第11号までに掲げる事項又は第9条第1項に掲げる銀行持株会社における四半期の開示事項のうち、第2号、第3号及び第5号から第10号までに掲げる事項を開示する場合には、対象となる四半期の末日を基準日とする金融商品取引法第24条第1項若しくは第3項の規定に基づく有価証券報告書、同法第24条の5第1項の規定に基づく半期報告書又は金融商品取引所の規則等に基づく四半期決算短信の公表後、速やかに行うことが適当である。
       開示告示第6条及び第9条に掲げる開示事項のうち、同告示別紙様式第8号第二面及び第三面に基づいて開示する場合には、同四半期決算短信の公表後、変動要因の分析に要する時間を勘案しつつ、速やかに行うことが望ましい。
       他方、これ以外の開示事項については、同四半期決算短信の公表後、速やかに行うことが望ましい。

    • マル2開示告示第6条第1項第4号又は第9条第1項第4号に掲げる「自己資本調達手段に関する契約内容の詳細」については、第6条第1項第3号又は第9条第1項第3号に掲げる「自己資本調達手段に関する契約内容の概要」に加えて、当該自己資本調達手段に関する契約の具体的な内容を預金者、投資家等の利用者が容易に知ることができるように記載することが適当である。
      なお、これらの自己資本調達手段に関する開示事項については、金融機関が自己資本調達手段の発行、償還又は内容の変更等を行った場合には更新する等、利用者が最新の情報を参照できることが望ましい。

    • マル3「前四半期の連結レバレッジ比率との間に著しい差異を生じた原因」又は「前四半期の単体レバレッジ比率との間に著しい差異を生じた原因」について、例えば、前四半期における連結レバレッジ比率又
      は単体レバレッジ比率から0.5%以上の増加又は減少がある場合のほか、主要な連結子会社の異動による連結レバレッジ比率の増加又は減少が生じた場合にはその変動が連結レバレッジ比率の分子(資本の額)又は分母(総エクスポージャーの額)のいずれの変動によって生じたか、その主な要因。

  • (7)四半期ごとの開示事項 【国内基準行・国内基準持株会社】

    内部格付手法を採用する国内基準行においては、開示告示第14条及び第17条に規定する事項につき、四半期ごとの開示が適切になされる必要がある。また、その他の国内基準行においても、預金者、投資家等の利用者にとって有用な情報につき、四半期ごとに開示することが望ましい。

III -3-2-4-5 報酬体系の開示(施行規則第19条の2第1項第6号、第19条の3第4号及び第34条の26第1項第5号関係)

  • (1)一般的な留意事項

    報酬体系の開示は、「銀行法施行規則第十九条の二第一項第六号等の規定に基づき、報酬等に関する事項であって、銀行等の業務の運営又は財産の状況に重要な影響を与えるものとして金融庁長官が別に定めるものを定める件」(以下「報酬告示」という。)に定められた事項について、市場や預金者等による外部評価の規律づけを通じ、報酬体系が役職員の過度なリスクテイクを引き起こさないことを確保し、金融機関の経営の健全性を維持するという趣旨を十分に踏まえ、適切に実施される必要がある。

    ただし、公にすることにより金融機関の競争上の地位等を大きく害するおそれのある情報、若しくは、個人が特定され、個人の権利利益が不当に害されるおそれのある情報、又は、守秘義務に係る情報等については、より一般的な内容の記載に止めるとともに、その理由を記載することで差し支えないものとする。また、報酬告示に定められた事項に該当する事項がない場合には、該当する事項がない旨を記載することで差し支えないものとする。

    • (参考)
      バーゼル銀行監督委員会「第3の柱における報酬についての開示要件」(2011年7月)
      バーゼル銀行監督委員会「開示要件(第3の柱)の統合及び強化―第2フェーズ」(2017年3月)

    また、主要行等がグループ(銀行又は銀行持株会社及びそれらの主要な連結子法人等をいう。以下この(1)及びこの(2)において同じ。)を形成している場合で、報酬告示に定められた事項について、グループ内で開示する内容に重複があるときには、当該内容を纏めて記載し、説明するなど、分かりやすい開示に努めているかに留意するものとする。

  • (2)個別の記載事項に関する留意事項

    • マル1開示の対象となる報酬告示に規定する「対象役員」及び「対象従業員等」(以下この(2)において「対象役職員」という。)について、例えば、下記の点について適切な記載がなされているか。

      • イ.「対象役員」の範囲について

        • 「対象役員」から社外取締役又は社外監査役を除く場合は適切な注釈を加えているか。
        • 直近の事業年度中に退任した者が含まれているか。
      • ロ.「対象従業員等」の範囲について

        • a.「主要な連結子法人等」の範囲について

          • 「主要な連結子法人等」の範囲について、報酬体系の開示の趣旨を損なわず、預金者等の合理的な判断を妨げないよう、グループの財政状態又は経営成績に与える影響の重要性を勘案し、主要な連結子法人等を選定しているか。また、主要な連結子法人等の範囲に関する説明が適切に記載されているか。例えば、「銀行又は銀行持株会社の連結総資産に対する連結子法人等の総資産の割合が2%を超えない場合には、主要な連結子法人等に該当しないものとする。」など、具体的な基準を用いた記載が考えられる。ただし、連結子法人等の規模等が僅少であっても、経営上重要な連結子法人等は主要な連結子法人等に含めて記載しているかに留意するものとする。
        • b.「高額の報酬等を受ける者」の範囲について

          • 「高額の報酬等を受ける者」の選定に当たっては、対象役員が受ける報酬等の平均額を基礎とし、必要に応じ、過去の実績の変動等を勘案し、自行又はグループの実態に即した適切かつ合理的な基準を設けて選定しているか。また、当該基準の設定根拠及びその合理性について適切に記載されているか。例えば、業績不振等により、対象役員が受ける報酬等が減少している場合、過去の実績の変動等を勘案し、調整の上、「高額の報酬等を受ける者」の基準を設定することが考えられるが、当該基準の合理性について適切な注釈を加えているか。また、グループ共通の基準を参照する場合は、その合理性について適切に記載しているか。
          • 「報酬等」の範囲について、対象役員が従業員を兼務しており、従業員として賃金を支給されている場合で、当該賃金のうち重要なものがあるときには、当該賃金を含めるなど、報酬、給与、賃金、給料、手当又は賞与その他名称の如何を問わず、職務の執行の対価又は労働の対償として受ける財産上の利益が含まれているか。
        • c.「銀行又は銀行持株会社及びそれらの主要な連結子法人等の業務の運営又は財産の状況に重要な影響を与えるもの」の範囲について

          • 対象従業員等のリスクテイクの状況について把握した上で、グループの業務の運営又は財産の状況に重要な影響を与える者が適切に選定されているか。また、その選定方法について適切な説明を行っているか。
    • マル2報酬告示に規定する「対象役員及び対象従業員等の報酬等の決定及び報酬等の支払その他の報酬等に関する業務執行の監督を行う委員会その他の主要な機関等の名称、構成及び職務に関する事項」として、例えば、以下の内容が記載されているか。

      • イ.報酬委員会等の整備・確保の状況(報酬委員会等の名称、構成員、権限及び職務その他報酬委員会等がその監視・けん制機能を業務推進部門(担当役員を含む)から独立して発揮するための措置(報酬委員会等による監視・けん制の対象となる地域、業務部門又は対象役職員の範囲等))

      • ロ.報酬委員会等が外部コンサルタントに報酬等に関する助言等の依頼・委託を行っている場合は、当該外部コンサルタントの名称並びに当該依頼・委託の趣旨及び概要

      • ハ.報酬体系の設計・運用の適切性の評価に関し、報酬委員会等とリスク管理部門が連携している場合はその連携状況等

      • ニ.報酬委員会等の構成員に対して支払われた報酬等の総額(報酬委員会等の職務執行に係る対価に相当する部分のみを切り離して算出することが不可能である場合等は、記載することを要しない。)及び報酬委員会等の会議の開催回数

    • マル3報酬告示に規定する「対象役員及び対象従業員等の報酬等の体系の設計及び運用の適切性の評価に関する事項」として、例えば、以下の内容が記載されているか。

      • イ.対象役職員の報酬等の決定に関する方針(報酬等の種類及び支払方法に関する方針を含む。)を定めている場合はその概要、及び適用範囲(当該方針が適用される地域、業務部門又は対象役職員の範囲等)並びに当該方針を採用した趣旨及び背景

      • ロ.対象役職員に含まれる者の類型の説明及びその区分ごとの人数(例えば、対象役員、対象従業員等のそれぞれの内訳及び各区分についての説明)

      • ハ.報酬体系の設計・運用に重要な変更が生じた場合はその理由、概要及び当該変更が報酬等に与える影響

      • ニ.報酬等の全体の水準が、各行又はグループの財務の健全性の現状及び将来の見通しと整合的であり、将来の自己資本の十分性に重要な影響を及ぼさないことを確認している場合はその説明

      • ホ.報酬体系の運用状況の監視を通じ、報酬額が短期的な収益獲得に過度に連動し、また、過度の成果主義を反映するといった問題が生じていないこと等を確認している場合はその説明

    • マル4報酬告示に規定する「対象役員及び対象従業員等の報酬等の体系とリスク管理の整合性に関する事項」として、例えば、以下の内容が記載されているか。

      • イ.リスク管理部門・コンプライアンス部門の職員の報酬体系の設計・運用が、被管理・監視対象である他の業務部門から独立して行われている場合はその説明(特に、リスク管理部門・コンプライアンス部門の職員の報酬に係る業績の測定が、職責の重要性を適切に反映したものとなっており、また、リスク管理や法令等遵守の達成度に加え、リスク管理態勢や法令等遵守態勢の構築への貢献度が反映されたものとなっているかについての説明)

      • ロ.対象役職員の報酬等の決定において、リスクを勘案している場合には、勘案するリスクの種類、当該リスクの計測・評価手法及び勘案方法の概要(前事業年度から重要な変更が生じた場合はその概要を含む)

    • マル5報酬告示に規定する「対象役員及び対象従業員等の報酬等と業績の連動に関する事項」として、例えば、以下の内容が記載されているか。

      • イ.対象役職員の報酬等の額のうち相当部分を業績連動とする場合について

        • 対象役職員の報酬等の額に占める業績連動部分の割合を決定する際、対象役職員の職責や実際の業務内容、グループの財務の健全性又はグループとして抱えることのできるリスクの程度に関する方針を勘案している場合はその勘案方法の概要
        • グループ、銀行、業務部門又は当該対象役職員の業績を報酬等へ反映させる方法又は業績を測定する方法の概要
        • 業績に連動する報酬等の支払いを繰り延べている場合は、報酬等の額が確定するまでの間に生じうる財務上のリスクへの対応状況(必要な自己資本や流動性の確保の見込み)を踏まえた設計となっていることの説明
        • 当該業績連動部分を業績不振の場合に縮小させるための措置等の概要(特に、業績不振の該当性を判断するための基準についての説明)
        • 報酬等の額の算定にリスク調整後利益を用いることなどにより、リスク管理と整合的な報酬体系を設計している場合であっても、対象役職員がその設計趣旨を損ないかねないような行為(一時的にリスクを削減し、表面的にリスクを減少させるような取引等)を行うおそれについて、適切に監視・けん制するための態勢の概要
      • ロ.リスク管理に悪影響を及ぼしかねない報酬体系(複数年にわたる賞与支払額の最低保証、業績やリスクの状況等に鑑み、不相応に高額な退職一時金等)を付与している場合は改善策・対応策の概要

      • ハ.対象役職員の職責や業務内容に応じ、より長期的な企業価値の創出を重視する報酬等の種類(例えば、株式での支払いやストックオプションの付与)及びリスクが顕在化するまでの期間も考慮した報酬等の支払方法(例えば、株式で支払う場合の一定期間の譲渡制限、ストックオプションを付与する場合の権利行使時期の設定、報酬支払の繰延べ・業績不振の場合の減額又は取戻し)を採用している場合はその方針及び概要(対象役職員の所属部門により繰延報酬割合が異なる場合には、その割合及び割合を決定する要因に関する説明
        を含む。)

    • マル6国際統一基準行及び国際統一基準持株会社においては、報酬告示に規定する「定量的な開示事項」として、報酬告示の別紙様式に従った記載がなされているか。

    • ⑦国内基準行及び国内基準持株会社においては、報酬告示に規定する「対象役員及び対象従業員等の報酬等の種類、支払総額及び支払方法に関する事項」として、例えば、以下の内容が記載されているか。

      • イ.報酬等の種類(基本報酬、株式、ストックオプション、賞与、退職慰労金、給与、賃金、給料等)及び支払方法(株式で支払う場合の一定期間の譲渡制限、ストックオプションを付与する場合の権利行使時期の設定、報酬支払の繰延べ・業績不振の場合の取戻し等)の概要並びに当該報酬等の種類及び当該支払方法を採用した趣旨・背景等

      • ロ.対象役員全体及び対象従業員等全体のそれぞれについて、報酬等の総額及び対象となる者の数、固定報酬及び変動報酬の総額並びに対象となる者の数並びに報酬等の種類別及び支払方法別の総額並びに対象となる者の数

      • ハ.次に掲げる事項について該当がある場合には、その事項

        • ボーナス保証、採用時一時金、割増退職金その他これらに類似する報酬体系別の総額及び対象となる者の数
        • 支払いが繰り延べられている報酬等の残高並びに種類別及び支払方法別の総額、繰り延べられていた報酬等で直近の事業年度に支払われた額等
    • ⑧その他報酬等の体系に関する重要な事項がある場合には、報酬告示に規定する「報酬等の体系に関し参考となるべき事項」として、当該事項を適切に記載しているか。

III -3-2-4-6 流動性に係る経営の健全性の状況の開示(施行規則第19条の2第1項第5号ホ、第19条の3第3号ニ、第19条の5、第34条の26第1項第4号ニ及び第34条の27の2関係)(国際統一基準行)

  • (1)一般的な留意事項

    流動性に係る経営の健全性の状況の開示は、流動性カバレッジ比率及び安定調達比率の最低水準及び銀行の自己管理と監督上の検証を補完し、市場による外部評価の規律づけにより銀行の経営の健全性を維持することを目的としており、「銀行法施行規則第19条の2第1項第5号ホ等の規定に基づき、流動性に係る経営の健全性の状況について金融庁長官が別に定める事項」(以下「流動性比率開示告示」という。)の趣旨に従って適切に実施される必要がある。また、銀行は、開示の対象となる情報の重要性に照らしつつ、利用者にとって有益な情報開示のあり方を検討する必要がある。特に情報開示の省略等が当該情報の利用者による経済的な意思決定を変更させる可能性のある情報については、その適切な開示に留意するものとする。

    ただし、財産的価値を有する情報及び守秘義務に係る情報については、これらの情報を公開することで銀行の地位に大きな損害を与えるおそれがある場合には、当該項目に関するより一般的な情報とともに、その特定の情報項目が開示されなかった事実及びその理由を開示することで差し支えないものとする。

  • (2)単体流動性カバレッジ比率に関する定性的開示事項

    • マル1「時系列における単体流動性カバレッジ比率の変動に関する事項」については、過去2年間の流動性カバレッジ比率の主要な変動及びその要因について定性的な説明が記載されているか。また、本項目を説明するに当たっては、「単体流動性カバレッジ比率に関する定量的開示事項」(直近の四半期に係るものであり、かつ流動性比率開示告示別紙様式を使用して作成したもの)を使用しているか。

    • マル2「単体流動性カバレッジ比率の水準の評価に関する事項」については、以下の内容が記載されているか。

      • イ.銀行による流動性カバレッジ比率の水準に関する評価

      • ロ.上記イ.において課題があると評価された場合には、課題に対する実務上の対応策

      • ハ.銀行による今後の流動性カバレッジ比率の見通しが開示された比率と大きく乖離することが想定される場合には、その見通しに関する定性的な説明

      • ニ.ハ.について、実績値が当初の見通しと大きく異なる場合には、その異なった理由の追加的な説明

    • マル3「算入可能適格流動資産の合計額の内容に関する事項」については、必要に応じ、例えば、以下の内容が記載されているか。

      • イ.算入可能適格流動資産の通貨又は種類等の構成や所在地に著しい変動があった場合には、その変動に関する説明

      • ロ.主要な通貨(例えば、当該通貨建て負債合計額が、銀行の負債合計額の5%以上を占める通貨)において算入可能適格流動資産の合計額と純資金流出額の間に著しい通貨のミスマッチがある場合には、そのミスマッチに関する評価及びミスマッチへの実務上の対応策に関する説明

    • マル4「その他単体流動性カバレッジ比率に関する事項」については、必要に応じ、例えば、以下の内容が記載されているか。また、以下の内容に限らず、重要な事項が記載されているか。

      • イ.流動性比率告示第29条に定める「適格オペレーショナル預金に係る特例」を適用している場合には、以下の内容に関する説明

        • a.適格オペレーショナル預金に係る特例の適用対象

        • b.適格オペレーショナル預金の金額の推定方法

      • ロ.流動性比率告示第38条に定める「シナリオ法による時価変動時所要追加担保額」を適用している場合には、シナリオ法による時価変動時所要追加担保額の推定方法に関する説明

      • ハ.流動性比率告示第53条に定める「その他偶発事象に係る資金流出額」、同告示第60条に定める「その他契約に基づく資金流出額」又は同告示第73条に定める「その他契約に基づく資金流入額」に重要な項目がある場合には、当該項目に関する定性的な説明

  • (注)流動性カバレッジ比率(日次平均の値をいう。)の内訳のうち、流動性カバレッジ比率に与える影響に鑑み、重要性が乏しく、かつ、実務上の観点(会計上の制約等)から日次データを使用しない項目がある場合には、その情報の利用者にとって有益であると考えられる項目について、日次データを使用しない内容及び説明について記載すること。なお、その日次データを使用しない項目については定期的に見直すこととし、見直しを行った場合にはその理由とともに説明すること。

  • (3)単体安定調達比率に関する定性的開示事項

    • マル1「時系列における単体安定調達比率の変動に関する事項」については、過去3年間の安定調達比率の主要な変動及びその要因について定性的な説明が記載されているか。また、本項目を説明するに当たっては、「単体安定調達比率に関する定量的開示事項」(直近及び前四半期にかかるものであり、かつ流動性比率開示告示別紙様式を使用して作成したもの)を使用しているか。

    • マル2「流動性比率告示第百一条各号に掲げる要件を満たす場合には、その旨」については、以下の内容が記載されているか。

      • イ.流動性比率告示第101条に定める「相互に関係する資産・負債の特例」を適用している場合には、その適用対象と相互関係性に関する説明

      マル3「その他単体安定調達比率に関する事項」については、以下の内容が記載されているか。

      • イ.銀行による安定調達比率の水準に関する評価

      • ロ.上記イ.において課題があると評価された場合には、課題に対する実務上の対応策

      • ハ.銀行による今後の安定調達比率の見通しが開示された比率と大きく乖離することが想定される場合には、その見通しに関する定性的な説明

      • ニ.ハ.について、実績値が当初の見通しと大きく異なる場合には、その異なった理由の追加的な説明

  • (4)単体流動性リスク管理に係る開示事項

    • マル1「流動性に係るリスク管理の方針及び手続の概要に関する事項」には、銀行の流動性リスクを確実に認識し、計測・評価し、報告するための態勢が記載されているか。

    • マル2「流動性に係るリスク管理上の指標に関する事項」には、必要に応じ、マル1において計測・評価するリスク管理上の主要な指標等の考え方や活用状況について、例えば、以下の指標等が含まれているか。

      • イ.銀行の内部管理上の流動性資産

      • ロ.オンバランス及びオフバランス項目の満期区分別の資金流入・資金流出に係るギャップ

      • ハ.内部管理上モニタリングしているその他の主要な指標等

      • ニ.上記イ.からハ.の指標等への限度値の活用状況

      • ホ.ストレステストの概要及びその活用方法

    • マル3その他流動性に係るリスク管理に関する事項」については、必要に応じ、例えば、以下の内容が記載されているか。また、以下の内容に限らず、重要な事項が記載されているか。

      • イ.流動性リスクを削減するための取組み

      • ロ.流動性ストレス時の対応策(コンティンジェンシー・ファンディング・プラン(CFP))

  • (5)四半期ごとの開示事項

    流動性比率開示告示第6条に規定する「単体流動性カバレッジ比率に関する定量的開示事項」及び「単体安定調達比率に関する定量的開示事項」について、バーゼル合意の趣旨を踏まえ、四半期ごとの開示が適切になされる必要がある。なお、これらの開示事項(過去情報も含む。)をウェブサイト上に開示する場合には、その記載箇所を預金者、投資家等の利用者が容易に特定できるようにすることが適当である。

    また、開示に当たっては、対象となる四半期の末日又は最終営業日(Ⅲ-2-3-4-4-3-1(1)(注)参照。)を基準日とする金融商品取引法第24条第1項若しくは第3項に規定する有価証券報告書、同法第24条の5第1項に規定する半期報告書又は金融商品取引所の規則等に基づく四半期決算短信の公表後、速やかに行うことが望ましい。

  • (注)上記は、流動性比率開示告示に定める開示事項のうち、施行規則第19条の2第1項第5号ホに規定する「経営の健全性の状況について金融庁長官が別に定める事項」のうち流動性に係る経営の健全性の状況に係る事項について定めたものであり、第19条の3第3号ニ、第19条の5、第34条の26第1項第4号ニ及び第34条の27の2の規定に基づく場合には、適宜読み替えて対応するものとする。

III -3-2-4-7 TLAC に係る経営の健全性の状況の開示(施行規則第19条の3第3号ニ、第19条の5、第34条の26第1項第4号ニ、及び第34条の27の2関係)(TLAC規制対象会社)

  • (1)一般的な留意事項

    TLAC に係る経営の健全性の状況の開示は、TLAC 比率の最低水準及び銀行の自己管理と監督上の検証を補完し、市場による外部評価の規律づけにより銀行の総損失吸収力及び資本再構築力に係る経営の健全性を維持することを目的としており、開示告示に従って、以下の事項に留意し、適切に実施される必要がある。

    また、TLAC 適用対象となる金融機関は、開示の対象となる情報の重要性に照らしつつ、利用者にとって有益な情報開示のあり方を検討する必要がある。情報開示の省略等が当該情報の利用者による経済的な意思決定を変更させる可能性のある情報については、その適切な開示に特に留意するものとする。

    ただし、財産的価値を有する情報及び守秘義務に係る情報については、これらの情報を公開することで銀行の地位に大きな損害を与えるおそれがある場合には、当該項目に関するより一般的な情報とともに、その特定の情報項目が開示されなかった事実及びその理由を開示することで差し支えないものとする。

    (参考)

    • バーゼル銀行監督委員会「開示要件(第3の柱)の統合及び強化―第2フェーズ」(2017 年3月)
  • (2)個別の記載事項に関する留意事項

    TLAC に係る開示事項は、開示告示第4条第7項(第5条第6項で準用する場合を含む。)、第6条第3項第12号から第14号までに掲げる事項となる。具体的には以下の点について留意が必要である。

    • 定量的な開示事項について、前期から大幅な変化があった場合には、その要因に係る説明を行うこと。
    • 四半期ごとの開示事項について
    • マル1自己資本の充実の状況等(Ⅲ-3-2-4-4参照)に加え、TLACについても、開示告示第6条に規定する事項につき、バーゼル合意の趣旨を踏まえ、四半期ごとの開示が適切になされる必要がある。なお、これらの開示事項(過去情報も含む。)をウェブサイト上に開示する場合には、その記載箇所を預金者、投資家等の利用者が容易に特定できるようにすることが適当である。開示告示第6条に掲げる開示事項のうち、TLACに係る事項を同告示別紙様式第7号又は第16号に基づいて開示する場合には、対象となる四半期の末日を基準日とする金融商品取引法第24条第1項若しくは第3項の規定に基づく有価証券報告書、同法第24条の5第1項の規定に基づく半期報告書又は金融商品取引所の規則等に基づく四半期決算短信の公表後、速やかに行うことが望ましい。

    • マル2開示告示第6条第3項第14号に掲げる「その他外部TLAC調達手段に関する契約内容の詳細」については、第6条第3項第13 号に掲げる「その他外部TLAC調達手段に関する契約内容の概要」に加えて、当該その他外部TLAC調達手段に関する契約の具体的な内容を預金者、投資家等の利用者が容易に知ることができるように記載することが適当である。
       なお、これらのその他外部TLAC調達手段に関する開示事項については、金融機関がその他外部TLAC調達手段の発行、償還又は内容の変更等を行った場合には更新する等、利用者が最新の情報を参照できることが望ましい。

    (注)上記は、開示告示に定める開示事項のうち、施行規則第19条の3第3号ニに規定する「経営の健全性の状況について金融庁長官が別に定める事項」のうちTLACに係る経営の健全性の状況に係る事項について定めたものであり、第19条の5、第34条の26第1項第4号ニ及び第34条の27の2の規定に基づく場合には、適宜読み替えて対応するものとする。

III -3-2-5 主な着眼点

  • (1)経営陣の姿勢

    経営陣は、銀行の経営の健全性の維持、それに対する信頼性の確保の観点から、通常の企業以上に、その経営内容のディスクロージャーが重要な意義を有していることを十分に認識し、常に、積極的かつ正確なディスクロージャーをすすめるための態勢整備やその充実を図るよう取り組んでいるか。

  • (2)開示方針の策定【国際統一基準行・国際統一基準持株会社】

    • マル1取締役会による、開示に係る手続及び体制を定めた開示方針の策定並びに行内への周知

    • マル2当該開示方針の主要な内容に係るディスクロージャー誌等への記載

    • マル3取締役会及び上級管理職による、当該開示方針に従った適切な開示を行うための体制整備

    • マル4ディスクロージャー誌等における当該開示方針に従った適切な開示が行われていることを経営陣等が確認している旨の記載

  • (3)財務報告に係る内部統制システム

    • マル1経営陣は、銀行が行うディスクロージャーの適切性及び正確性を確保するための内部管理態勢の整備に努めているか。

    • マル2適正な開示の前提として、例えば、財務報告プロセスを的確に文書化しているか。

    • マル3財務諸表等の記載事項に関する全てのリスクを識別・評価・統制・監視する体制が構築されているか。

    • マル4内部統制システムの妥当性と有効性を検証する内部管理体制(内部監査を含む。)が機能しているか。

  • (4)利用者・投資家に分かりやすい開示

    • マル1法定開示事項について、預金者、取引先等の利用者が銀行の業務内容、財務状況を適切に判断できるように、正確かつ平易な表示・記載となっているか。

    • マル2特にリスク管理債権の開示は適切に行われているか。

    • マル3法第21条第4項の趣旨を踏まえ、参考となる事項の開示に努めているか。例えば、主要な事業部門別・顧客セグメント別の収益性について、的確な開示に努めているか。

    • マル4特に、将来の見込み等を開示する場合においては、十分慎重な見通しをもって経営判断が行われる態勢となっているか。

    • マル5市場の関心の強い分野に係るエクスポージャー等については、国際的なベストプラクティスを踏まえつつ、自行のリスク特性に即した有用な情報の積極的な開示に努めているか。

III -3-2-6 監督手法・対応

  • (1)決算ヒアリング等において、開示の適切性等について確認する。併せて、いわゆる代表者確認書の作成に当たって、内部統制システムの有効性の確認をどのようにして行ったか確認する。

  • (2)リスク管理債権・再生法に基づく開示債権については、その計数の信頼性が極めて重要であること等にかんがみ、検査結果通知後、法第24条に基づく報告を求め( II -1-2(2)二.参照)、正当な理由がないにもかかわらず自己査定と検査結果の格差が大幅に認められる場合など当該銀行の自主的な改善努力に委ねたのでは当該銀行の法令等遵守態勢やリスク管理態勢の整備等に支障を来たすと認められる場合には、法第26条に基づく業務改善命令を発出するものとする。

  • (3)その他、上記の着眼点に照らし、改善が必要と認められる銀行に関しては、必要に応じて法第24条に基づき報告を求めることを通じて、改善を促すものとする。また、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

  • (4)なお、検査結果、オフサイト・モニタリング等に基づき、有価証券報告書の虚偽記載等に該当することが明らかなときには、その旨を証券監査担当部局へ連絡する。

III -3-3 利用者保護のための情報提供・相談機能等

III -3-3-1 与信取引等(貸付契約並びにこれに伴う担保・保証契約及びデリバティブ取引)に関する顧客への説明態勢

III -3-3-1-1 意義

  • (1)法第12条の2第2項及び施行規則第13条の7は、銀行に対し、その営む業務の内容及び方法に応じ、顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的を踏まえた重要な事項の顧客に対する説明その他の健全かつ適切な業務の運営を確保するための措置(書面の交付その他の適切な方法による商品又は取引の内容及びリスクの説明並びに犯罪を防止するための措置を含む。)に関する社内規則等(社内規則その他これに準ずるものをいう。)を定めるとともに、従業員に対する研修その他の当該社内規則等に基づいて業務が運営されるための十分な体制を整備することを義務付けている。

    また、銀行はその業務に関し、顧客に対し虚偽のことを告げる行為、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤認させるおそれのあることを告げる行為等をしてはならないとされている(法第13条の3、施行規則第14条の11の3)。これらの行為は、そもそも法第12条の2第2項で定める業務の健全かつ適切な運営が確保されるための措置に違反する行為として禁止されてきたものである。

  • (2)以下は、広く貸し手の責任において整備すべき与信取引等(貸付契約並びにこれに伴う担保・保証契約及びデリバティブ取引)に関する説明態勢及びそれを補完する相談苦情処理機能について、主として中小企業向け取引、個人向け貸付(住宅ローンを含む。)及び個人保証関係を念頭において、当局が銀行の内部管理態勢の検証を行う際の着眼点を類型化して例示している。

    • (注1) 以下は、説明義務・説明責任(アカウンタビリティ)の徹底を中心に顧客との情報共有の拡大と相互理解の向上に向けた取組みまで幅広い領域を対象としている。

    • (注2) 上記(1)の説明体制の整備は銀行の営む全ての業務が対象となっており、資産運用商品の販売に関しては金融サービス提供法の施行等に対応した体制整備が必要である( III -3-3-2参照)。

III -3-3-1-2 主な着眼点

  • (1)全行的な内部管理態勢の確立

    • マル1顧客への説明態勢に関する全行的な内部管理態勢の確立に関し、取締役会が適切に機能を発揮しているか。

    • マル2法令の趣旨を踏まえた社内規則等の作成

      • イ.業務の内容及び方法に応じた説明態勢が社内規則等で明確に定められているか。

        与信取引には、例えば、手形割引、貸付金(手形貸付、証書貸付、当座貸越)、債務保証、外国為替等の多様な取引があり、また、保証契約についても、保証約定書形式や手形保証等の類型があるが、それぞれの類型に応じた態勢整備がなされているか。

        さらに、インターネット取引等の異なる取引方法に応じた態勢整備がなされているか。

      • ロ.顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的に応じた説明態勢が社内規則等で明確に定められているか。特に、中小企業や個人については実態に即した取扱いとなっているか。

    • マル3法令の趣旨を踏まえた行内の実施態勢の構築

      • イ.社内規則等に基づいて業務が運営されるよう、研修その他の方策(マニュアル等の配布を含む。)が整備されているか。

      • ロ.説明態勢等の実効性を確保するため、検査・監査等の内部けん制機能は十分発揮されているか。

    • マル4経営相談機能と説明態勢の連携

      企業との長期的な取引関係を前提とした貸出を行っている場合には、経営相談機能を充実・強化するための環境整備として、与信後における顧客との情報の相互共有に向けた説明態勢が整備されているか( III -3-3-1-2(5)参照)。

  • (2)契約時点等における説明

    以下の事項について、社内規則等を定めるとともに、従業員に対する研修その他の当該社内規則に基づいて業務が運営されるための十分な体制が整備されているか検証する。

    • マル1商品又は取引の内容及びリスク等に係る説明

      契約の意思形成のために、顧客の十分な理解を得ることを目的として、必要な情報を的確に提供することとしているか。

      なお、検証に当たっては、特に以下の点に留意する。

      • イ.融資取引にオプション・スワップ等のデリバティブ取引が含まれているとき(デリバティブ取引のみを行う場合を含む。)には、法第13条の3各号並びに金融商品取引法第38条各号及び第40条各号の規定に抵触することのないよう、顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的を踏まえ、商品内容やそのリスクに応じて以下の事項に留意しているか。

        • a.当該デリバティブ取引の商品内容やリスクについて、例示等も入れ、具体的に分かりやすい形で解説した書面を交付して、適切かつ十分な説明をすることとしているか。

          例えば、

          • 当該デリバティブ取引の対象となる金融指標等の水準等(必要に応じてボラティリティの水準を含む。以下同じ。)に関する最悪のシナリオ(過去のストレス時のデータ等合理的な前提を踏まえたもの。以下同じ。)を想定した想定最大損失額について、前提と異なる状況になればさらに損失が拡大する可能性があることも含め、顧客が理解できるように説明しているか。
          • 当該デリバティブ取引において、顧客が許容できる損失額を確認し、上記の最悪のシナリオに至らない場合でも許容額を超える損失を被る可能性がある場合は、これについて顧客が理解できるように説明しているか。
          • 金融指標等の状況がどのようになれば、当該デリバティブ取引 により、顧客自らの経営又は財務状況に重大な影響が生じる可能性があるかについて、顧客が理解できるように説明しているか。
          • 説明のために止むを得ず実際のデリバティブ取引と異なる例示等を使用する場合は、当該例示等は実際の取引と異なることを説明しているか。
        • b.当該デリバティブ取引の中途解約及び解約清算金について、具体的に分かりやすい形で解説した書面を交付して、適切かつ十分な説明をすることとしているか。

          例えば、

          • 当該デリバティブ取引が原則として中途解約できないものである場合にはその旨について、顧客が理解できるように説明しているか。
          • 当該デリバティブ取引を中途解約すると解約清算金が発生する場合にはその旨及び解約清算金の内容(金融指標等の水準等に関する最悪のシナリオを想定した解約清算金の試算額及び当該試算額を超える額となる可能性がある場合にはその旨を含む。)について、顧客が理解できるように説明しているか。
          • 銀行取引約定書等に定める期限の利益喪失事由に抵触すると、デリバティブ取引についても期限の利益を喪失し、解約清算金の支払義務が生じる場合があることについて、顧客が理解できるように説明しているか。
          • 当該デリバティブ取引において、顧客が許容できる解約清算金の額を確認し、上記の最悪のシナリオに至らない場合でも許容額を超える損失を被る可能性がある場合は、これについて顧客が理解できるように説明しているか。
        • c.提供するデリバティブ取引がヘッジ目的の場合、以下を確認するとともに、その確認結果について、具体的に分かりやすい形で、適切かつ十分な説明をすることとしているか。

          • 顧客の事業の状況(仕入、販売、財務取引環境など)や市場における競争関係(仕入先、販売先との価格決定方法)を踏まえても、継続的な業務運営を行う上で有効なヘッジ手段として機能することを確認しているか(注1)。
          • 上記に述べるヘッジ手段として有効に機能する場面は、契約終期まで継続すると見込まれることを確認しているか(注2)。
          • 顧客にとって、今後の経営を見通すことがかえって困難とすることにならないことを確認しているか(注3)。

          (注1)例えば、為替や金利の相場が変動しても、その影響を軽減させるような価格交渉力や価格決定力の有無等を包括的に判断することに留意する。

          (注2)例えば、ヘッジ手段自体に損失が発生していない場合であっても、前提とする事業規模が縮小されるなど顧客の事業の状況や市場における競争関係の変化により、顧客のヘッジニーズが左右されたりヘッジの効果がそのニーズに対して契約終期まで有効に機能しない場合があることに留意する。

          (注3)ヘッジによる仕入れ価格等の固定化が顧客の価格競争力に影響を及ぼし得る点に留意する。

        • d.上記a.からc.に掲げる事項を踏まえた説明を受けた旨を顧客から確認し、その記録を書面(確認書等)として残すこととしているか。

        • e.不確実な事項について、断定的な判断と誤認させる表示や説明を防ぐ態勢となっているか。

        • f.不招請勧誘の禁止の例外と考えられる先に対するデリバティブ取引の勧誘については、法令を踏まえたうえ(注)、それまでの顧客の取引履歴などによりヘッジニーズを確認し、そのニーズの範囲内での契約を勧誘することとしているか。

          (注)不招請勧誘の禁止の例外とされている「外国貿易その他の外国為替取引に関する業務を行う法人」(金融商品取引業等に関する内閣府令第116条第2号)には、例えば、国内の建設業者が海外から材木を輸入するにあたって、海外の輸出者と直接取引を行うのではなく、国内の商社を通じて実態として輸出入を行う場合は含まれるが、単に国内の業者から輸入物の材木を仕入れる場合は含まれないことに留意する必要がある。

        • g.勧誘されたデリバティブ取引に係る契約締結の有無は、融資取引に影響を及ぼすのではないかと顧客が懸念する可能性があることを前提(注1)に、必要に応じ、こうした懸念を解消するための説明を行うこととしているか(注2)。

          (注1)例えば、デリバティブ取引の勧誘や説明を行った状況(与信取引等の相談中や複数回の勧誘の後かどうかなど)によっては、顧客の立場からは、往々にして銀行は優越的地位を濫用していると見られる可能性があることを意識した販売態勢となっているか。

          (注2)例えば、勧誘したデリバティブ取引等に応じなくとも、そのことを理由に今後の融資取引に何らかの影響を与えるものではない旨を説明し、優越的地位の濫用がないことの説明を受けた旨を顧客から確認する態勢としているか。

        • h.デリバティブ契約締結後、定期的かつ必要に応じて適時、当該顧客の業況及び財務内容を踏まえ、実需の存続状況等に応じたヘッジの有効性とその持続可能性の確認を行い、顧客からの問合せに対して分かりやすく的確に対応するなど、適切なフォローアップに取り組むための態勢を整備しているか。

          また、顧客の要請があれば、定期的又は必要に応じて随時、顧客のポジションの時価情報や当該時点の解約清算金の額等を提供又は通知する等、顧客が決算処理や解約の判断等を行うために必要となる情報を適時適切に提供しているか。

      • ロ.住宅ローン契約については、利用者に適切な情報提供とリスク等に関する説明を行うこととしているか。特に、金利変動型又は一定期間固定金利型の住宅ローンに係る金利変動リスク等について、十分な説明を行うこととしているか。

        説明に当たっては、例えば、「住宅ローン利用者に対する金利変動リスク等に関する説明について」(平成16年12月21日全国銀行協会申し合わせ)に沿った対応がなされる態勢となっているか。また、適用金利が将来上昇した場合の返済額の目安を提示する場合には、その時点の経済情勢において合理的と考えられる前提に基づく試算を示すこととしているか。

      • ハ.個人保証契約については、保証債務を負担するという意思を形成するだけでなく、その保証債務が実行されることによって自らが責任を負担することを受容する意思を形成するに足る説明を行うこととしているか。

        例えば、保証契約の形式的な内容にとどまらず、保証の法的効果とリスクについて、最悪のシナリオ即ち実際に保証債務を履行せざるを得ない事態を想定した説明を行うこととしているか。

        また、保証人に対し説明をした旨を確認し、その結果等を書面又は電子的方法で記録することとしているか。

      • ニ.経営者等との間で保証契約を締結する場合には、「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、以下の点について、主債務者と保証人に対して丁寧かつ具体的に説明を行うこととしているか、また、保証人に対し、下記に掲げる事項を踏まえた説明をした旨を確認し、その結果等を書面又は電子的方法で記録することとしているか(III-9-2参照)。

        • a.どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか、個別具体の内容(注)

        • b.どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか、個別具体の内容(注)

        • c.原則として、保証履行時の履行請求は、一律に保証金額全額に対して行うものではなく、保証履行時の保証人の資産状況等を勘案した上で、履行の範囲が定められること

        • (注)「経営者保証に関するガイドライン」第4項(2)に掲げられている要素を参照の上、債務者の状況に応じた内容を説明。
           その際、可能な限り、資産・収益力については定量的、その他の要素については客観的・具体的な目線を示すことが望ましい。

      • ホ.連帯保証契約については、補充性や分別の利益がないことなど、通常の保証契約とは異なる性質を有することを、相手方の知識、経験等に応じて説明することとしているか。

        • (注1) 「補充性」とは、主たる債務者が債務を履行しない場合にはじめてその債務を履行すればよいという性質をいう。

        • (注2) 「分別の利益」とは、複数人の保証人が存在する場合、各保証人は債務額を全保証人に均分した部分(負担部分)についてのみ保証すれば足りるという性質をいう。

      • へ.経営者以外の第三者との間で個人連帯保証契約を締結する場合(III-10参照)には、契約者本人の経営への関与の度合いに留意し、原則として、経営に実質的に関与していない場合であっても保証債務を履行せざるを得ない事態に至る可能性があることについての特段の説明を行うこととしているか。併せて、保証人から説明を受けた旨の確認を行うこととしているか。

        (注)契約者本人が経営に実質的に関与していないにもかかわらず、自発的に連帯保証契約の申し出を行った場合には、金融機関から特段の説明を受けた上で契約者本人が自発的な意思に基づき申し出を行った旨を証した書面の提出を受けるなどにより、当該契約について金融機関から要求されたものではないことを確認しているかに留意する。

      • ト.経営者以外の第三者と根保証契約を締結する場合には、原則として、契約締結後、保証人の要請があれば、定期的又は必要に応じて随時、被保証債務の残高・返済状況について情報を提供することとしているか。

      • チ.信用保証協会の保証付き融資については、利用する保証制度の内容や信用保証料の料率などについて、顧客の知識、経験等に応じた適切な説明を行うこととしているか。

    • マル2契約締結の客観的合理的理由の説明

      顧客から説明を求められたときは、事後の紛争等を未然に防止するため、契約締結の客観的合理的理由についても、顧客の知識、経験等に応じ、その理解と納得を得ることを目的とした説明を行う態勢が整備されているか。

      なお、以下のイ.及びロ.の検証に関しては、各項に掲げる事項について顧客から求められれば説明する態勢、また、ハ.の検証に関しては、保証契約を締結する場合において上記ニ.a.からc.を説明する態勢及びその結果等を書面又は電子的方法で記録する態勢が整備されているかに留意する。

      • イ.貸付契約

        貸付金額、金利、返済条件、期限の利益の喪失事由、財務制限条項等の契約内容について、顧客の財産の状況を踏まえた契約締結の客観的合理的理由

      • ロ.担保設定契約

        極度額等の契約内容について、債務者との取引状況や今後の取引見通し、担保提供者の財産の状況を踏まえた契約締結の客観的合理的理由

      • ハ.保証契約

        保証人の立場及び財産の状況、主債務者や他の保証人との関係等を踏まえ、当該保証人との間で保証契約を締結する客観的合理的理由

        • a.根保証契約については、設定する極度額及び元本確定期日について、主債務者との取引状況や今後の取引見通し、保証人の財産の状況を踏まえた契約締結の客観的合理的理由

        • b.経営者以外の第三者との間で個人連帯保証契約を締結する場合には、「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立」するとの観点に照らし、必要に応じ、「信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止について」における考え方にも留意しつつ(III-10-2(1)参照)、当該第三者と保証契約を締結する客観的合理的理由。

        • c.経営者等に保証を求める場合には、「経営者保証に関するガイドライン」に基づき(III-9-2参照)、当該経営者等と保証契約を締結する客観的合理的理由(注)

        • (注)客観的合理的理由の説明に当たっては、どの部分が十分ではないために保証契約が必要なのか、どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか、について、債務者の状況に応じて、個別具体的に説明を行う。
           その際、可能な限り、資産・収益力については定量的、その他の要素については客観的・具体的な目線を示すことが望ましい。

    • マル3契約の意思確認

      • イ.契約の内容を説明し、借入意思・担保提供意思・保証意思・デリバティブ取引の契約意思があることを確認した上で、契約者本人(注)から契約内容への同意の記録を求めることを原則としているか。特に、保証意思の確認に当たっては、契約者本人の経営への関与の度合いについても確認することとしているか。

        (注)いわゆる「オーナー経営」の中小企業等との重要な契約に当たっては、形式的な権限者の確認を得るだけでは不十分な場合があることに留意する必要がある。

        特に、デリバティブ取引が、顧客の今後の経営に大きな影響を与えるおそれのある場合、当該中小企業等の取締役会等で意思決定された上での契約かどうか確認することが重要である。

      • ロ.例外的な書面等による対応については、顧客保護及び法令等遵守の観点から十分な検討を行った上で、社内規則等において明確に取扱い方法を定め、遵守のための実効性の高い内部けん制機能が確立されているか。

      • ハ.いわゆる捨印慣行の不適切な利用、及び契約の必要事項を記載しないで自署・押印を求め、その後、行員等が必要事項を記載し書類を完成する等の不適切な取扱いを防止するため、実効性の高い内部けん制機能が確立されているか。

      • ニ.銀行として貸付の決定をする前に、顧客に対し「融資は確実」と誤認させる不適切な説明を行わない態勢が整備されているか。

    • マル4契約書等の書面の交付

      貸付契約、担保設定契約又は保証契約を締結したときは、契約者本人に契約書等の契約内容を記載した書面を交付することとしているか。

      なお、検証に当たっては、特に以下の点に留意する。

      • イ.銀行取引約定書は、双方署名方式を採用するか、又はその写しを交付することとしているか。

      • ロ.貸付契約書、担保設定契約書及び保証契約書については、その写しを交付すること等により、顧客が契約内容をいつでも確認できるようになっているか。

      • ハ.取引の形態から貸付契約の都度の契約書面の作成が馴染まない手形割引、手形貸付については、契約条件の書面化等、契約面の整備を適切に行うことにより顧客が契約内容をいつでも確認できるようになっているか。

  • (3)貸付けに関する基本的な経営の方針(クレジットポリシー等)との整合性

    与信取引面における説明態勢については、各銀行の貸付けに関する基本的な経営の方針(クレジットポリシー等)との整合性についても検証する必要がある。

    その際、例えば以下のような健全な融資慣行の確立と担保・保証に過度に依存しない融資の促進の観点に留意する。

    健全な融資慣行はできる限り担保・保証に頼ることなく、貸付けは、借り手の経営状況、資金使途、回収可能性等を総合的に判断して行うものであることを認識し、また、「事業からのキャッシュフローを重視し、担保・保証に過度に依存しない融資の促進を図る」、「経営者保証に依存しない融資の一層の促進を図る」(III-9-2参照)、「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立する」(III-10参照)との観点から、経営の方針としてどのように対応しようとしており、当該方針が実際の説明態勢にどのように反映されているか。

  • (4)顧客との情報共有の拡大と相互理解の向上に向けた取組み

    企業との長期的な取引関係を前提に貸出を行っている場合には、貸し手と借り手の相互の共通理解を築き、その基盤の下でリスクを共同管理しながら必要に応じ、経営改善支援・早期事業再生等に取り組んでいくことが重要である。

    こうした観点から、説明態勢に関連して、以下のような態勢が整備されているかについても検証するものとする。

    • マル1相互の共通理解に向けた基盤整備の取組み

      • イ.銀行側からの意思疎通

        各銀行においては、与信後における債務者の業況把握、貸出条件の履行状況、資金使途の確認、事業計画の遂行状況といった債務者の実情にあった適切な管理を十分行うことが必要であるが、こうした過程における借り手企業の業況や財務内容、担保提供を受けた資産の評価等に関する銀行の判断について、借り手企業との相互の共通理解を得ることを目的とした説明態勢が整備されているか。

      • ロ.借り手企業からの意思疎通

        借り手企業に対し、長期継続的な信頼関係を基本とする取引のメリットを享受するためには、経営内容について早め早めに銀行と相談することが重要であることを理解してもらうための説明態勢が整備されているか。

    • マル2経営相談・支援機能の充実・強化に向けた取組み

      経営改善支援(経営改善計画や借入金返済計画の策定を含む。)や早期事業再生に向けた取組みが必要と認められる場合は、相互の共通理解の下、顧客の業況や財務内容、さらには事業の将来性等についての銀行の判断を率直に説明した上で、顧客との相談、顧客への助言を行うこととしているか。

  • (5)取引関係の見直し等の場合の説明

    借り手企業との取引関係の見直し等を行う場合の説明については、銀行の営業上の判断に即した本来の説明を的確に行う態勢が整備されることが必要であり、その際、金融検査等を口実とするなどの不適切な説明が行われないよう留意することが必要である。

    このため、下記のマル1からマル3の場合において、それぞれ下記のような適切な説明等の対応を行う態勢が整備されているかどうかについて検証するものとする。

    • マル1契約締結後の金利の見直し、返済条件の変更、保証契約の見直し、担保追加設定・解除等の場合

      これまでの取引関係や、顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的を踏まえ、 III -3-3-1-2(2)(契約時点等における説明)と基本的に同様に、顧客の理解と納得を得ることを目的とした説明態勢が整備されているか。

      特に、借り手企業の事業承継時においては、「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、前経営者が負担する保証債務について、後継者に当然に引き継がせるのではなく、必要な情報開示を得た上で、保証契約の必要性等について改めて検討するとともに、その結果、保証契約を締結する場合には、保証契約の必要性等について主債務者及び後継者に対して丁寧かつ具体的な説明を行う態勢が整備されているか。

      また、前経営者から保証契約の解除を求められた場合には、前経営者が引き続き実質的な経営権・支配権を有しているか否か、当該保証契約以外の手段による既存債権の保全の状況、法人の資産・収益力による借入返済能力等を勘案しつつ、保証契約の解除についての適切な判断を行う態勢が整備されているか(III-9-2参照)。

    • マル2顧客の要望を謝絶し貸付契約に至らない場合

      これまでの取引関係や、顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的に応じ、可能な範囲で、謝絶の理由等についても説明する態勢が整備されているか。

      • 例えば、長期的な取引関係を継続してきた顧客に係る手形貸付について更なる更改を謝絶する場合、信義則の観点から顧客の理解と納得が得られるよう、原則として時間的余裕をもって説明することとしているか。
      • 例えば、信用保証協会の保証付き融資について、営業上の判断に即した本来の説明を的確に行うことなく、平成19年10月より「責任共有制度」が導入されたことを口実として融資を謝絶するといった不適切な対応を行っていないか。
    • マル3延滞債権の回収(担保処分及び個人保証の履行請求によるものを含む。)、債権譲渡、企業再生手続(法的整理・私的整理)及び債務者や保証人の個人再生手続等の場合

      • イ.これまでの取引関係や、顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的に応じ、かつ、法令に則り、一連の各種手続を段階的かつ適切に執行する態勢が整備されているか。

        例えば、経営者以外の第三者の保証人個人に保証債務の履行を求める場合は、基本的に保証人が主債務者の状況を当然には知り得る立場にないことに留意し、事後の紛争等を未然に防止するため、必要に応じ、一連の各種手続について正確な情報を提供する等適切な対応を行う態勢となっているか(III-10-2(3)参照)。

      • ロ.手続の各段階で、顧客から求められれば、その客観的合理的理由を説明することとしているか。

      • ハ.特に経営者保証における保証債務の履行に際しては、「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、保証人の手元に残すことのできる残存資産の範囲について、必要に応じ支援専門家とも連携しつつ、保証人の履行能力、経営者たる保証人の経営責任や信頼性、破産手続における自由財産の考え方との整合性等を総合的に勘案して決定する態勢となっているか(III-9-2参照)。

  • (6)苦情等処理機能の充実・強化

    • マル1苦情等の事例の蓄積と分析を行い、契約時点等における説明態勢の改善を図る取組みや苦情が多く寄せられる商品、取引の販売を継続するかどうかの検討を行うこととしているか。

      また、説明態勢の改善に取り組んだ後に販売、契約した商品、取引に関する苦情相談等を確認し、当該取組みの効果を確認することとしているか。

      なお、検証に当たっては、特に、 III -3-3-1-2(5)(取引関係の見直し等の場合の説明)や III -3-5-2 (苦情等対処に関する内部管理態勢の確立)に関する苦情等の取扱体制の実効性に留意する。

    • マル2優越的地位の濫用が疑われる等の重大な苦情等の検証にあたっては、検証の客観性・適切性を確保する観点から、苦情等の発生原因となった営業店担当者等の報告等のみを判断の根拠とせず、必要に応じ、本部等の検証部署の担当者が苦情者等に直接確認するなどの措置を適切に講じる態勢となっているか。

    • マル3反社会的勢力との絶縁等民事介入暴力に対する適切な対応態勢が整備されているか。

      • イ.融資・担保解除の強要や回収妨害等の不当な行為に対する対応態勢が確立されているか。

      • ロ.与信取引関連も含め、犯収法に基づく疑わしい取引の届出を的確に行うための法務問題に関する一元的な管理態勢が整備され、機能しているか。

  • (7)不公正取引との誤認防止

    • マル1独占禁止法上問題となる優越的な地位の濫用と誤認されかねない説明を防止する態勢が整備されているか。

      平成18年6月に公正取引委員会から「金融機関と企業との取引慣行に関する調査報告書」が公表され、優越的な地位の濫用として問題となる行為の例が示されているが、これを踏まえた顧客への説明態勢が整備されているか。上記報告書を単に営業店に配布するにとどまらず、実務に即した具体的な説明態勢の整備を行っているか。

      なお、検証に当たっては、例えば、以下の点に留意する。

      • イ.問題となる行為の例として「借り手企業に対し、その責めに帰すべき正当な事由がないのに、要請に応じなければ今後の融資等に関し不利な取扱いをする旨を示唆すること等によって、契約に定めた金利の引上げを受け入れさせ、又は、契約に定めた返済期限が到来する前に返済させること」、「債権保全に必要な限度を超えて、過剰な追加担保を差し入れさせること」が示されているが、こうした行為が行われないように法令等遵守態勢を確立する一方で、金利の見直し等の客観的合理的理由について、顧客の理解と納得を得ることを目的とした説明態勢が整備されているか。

      • ロ.問題となる行為の例として「借り手企業に対し、要請に応じなければ融資等に関し不利な扱いをする旨を示唆して、自己の提供するファームバンキング、デリバティブ商品、社債受託管理等の金融商品・サービスの購入を要請すること」が示されているが、こうした要請を行わないように法令等遵守態勢を確立することとしているか。

      • ハ.同一の顧客に対する複数の取引の採算性を一括してみる、いわゆ る「総合採算取引」を行う場合(抱き合わせ販売に該当する取引を除く)にあっても、上記イ.及びロ.の態勢を整備させた上で行うこととしているか。

    • マル2金融商品取引法に規定されたいわゆるインサイダー取引規制等の不公正取引と誤認されかねない説明を防止する態勢が整備されているか。

III -3-3-1-3 監督手法・対応

  • (1)顧客への説明態勢及びそれを補完する相談苦情処理機能が構築され機能しているかどうかは、顧客保護及び利用者利便の観点も含め、銀行の健全かつ適切な業務運営の基本にかかわることから、関係する内部管理態勢は高い実効性が求められる。

    当局としては、こうした内部管理態勢の実効性等に疑義が生じた場合、顧客を誤解させるおそれのある表示を行うなど禁止行為に該当する疑義がある場合は、必要に応じ、報告(法第24条に基づく報告を含む。)を求めて検証し、業務運営の適切性、健全性に問題があると認められれば、法第24条に基づき報告を求め、又は、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

  • (2)上記の報告又は業務改善状況等を検証した結果、経営として III -3-3-1-1(1)の法令の趣旨に反し重要な社内規則等の作成自体を怠っていたことや顧客に対し虚偽の説明を行っていたことが確認された場合など重大な法令違反と認められるときは、法第27 条に基づく行政処分(例えば、社内規則等の作成等の十分な体制整備がなされるまでの間の業務の一部停止)を検討する必要があることに留意する。ただし、個々の金融商品取引に係る行為が金融商品取引法に違反するおそれがある場合は、証券課と十分に連携する必要があることに留意する。

    (参考)

    • マル1新しい中小企業金融の法務に関する研究会報告書(平成15年7月16日:新しい中小企業金融の法務に関する研究会)

    • マル2「中期的に展望した我が国金融システムの将来ビジョン」(平成14年9月30日:金融審議会)

    • マル3リレーションシップバンキングの機能強化に向けて(平成15年3月27日:金融審議会)

    • マル4「地域密着型金融の取組みについての評価と今後の対応について-地域の情報集積を活用した持続可能なビジネスモデルの確立を-」(平成19年4月5日:金融審議会)

    • マル5金融機関と企業との取引慣行に関する調査報告書(平成13年7月4日:公正取引委員会)

    • マル6金融機関と企業との取引慣行に関する調査報告書(平成18年6月21日:公正取引委員会)

    • マル7銀行取引約定書ひな型の廃止と留意事項の作成について(平成12年4月18日:全国銀行協会)

    • マル8我が国金融システムの改革について(平成9年6月13日:金融制度調査会)

III -3-3-2 預金・リスク商品等の販売・説明態勢

III -3-3-2-1 意義

銀行は、預金等の受入れに際し預金等に関する情報提供を行わなければならないとされており(法第12条の2第1項、施行規則第13条の3及び第13条の4)、特に施行規則第13条の5第1項各号に掲げる商品を取り扱う場合には、預金等との誤認を防止するために適切な説明を行うこととされている。また、銀行は、その営む業務の内容及び方法に応じ適切な業務運営を確保するための措置に関する社内規則等を整備し、当該社内規則等に基づいて業務が運営されるための十分な体制を整備することとされている(法第12条の2第2項、第13条の3、施行規則第13条の5、第13条の7、第14条の11の3)。

リスク商品の販売に当たっては、銀行法のみならず金融商品取引法などの関係法令の規定も踏まえたうえで、上記の体制整備を行う必要がある。

特に、金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動によりその元本に損失が生ずるおそれがある預金又は定期積金等(以下「特定預金等」という。)については、金融商品取引法の行為規制が準用され、契約締結前の書面交付義務、広告等の規制等の対象とされていることにも留意する必要がある。(法第13条の4、施行規則第14条の11の4から第14条の11の30)

III -3-3-2-2 主な着眼点

こうした観点から、以下のような態勢が整備されているかについても検証するものとする。

  • (1)全行的な内部管理態勢の確立

    • マル1顧客への説明態勢に関する全行的な内部管理態勢の確立に関し、取締役会が適切に機能を発揮しているか。

    • マル2法令の趣旨を踏まえた社内規則等の作成

      • イ.業務の内容及び方法に応じた説明態勢が社内規則等で明確に定められているか。

        特に、特定預金等や投資信託等のリスク商品を取り扱う場合には、それぞれの類型に応じた態勢整備がなされているか。

        さらに、インターネット取引等の異なる取引方法に応じた態勢整備がなされているか。

      • ロ.顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的に応じた説明態勢が社内規則等で明確に定められているか。

    • マル3法令の趣旨を踏まえた行内の実施態勢の構築

      • イ.社内規則等に基づいて業務が運営されるよう、研修その他の方策(マニュアル等の配布を含む。)が整備されているか。

      • ロ.説明態勢等の実効性を確保するため、検査・監査等の内部けん制機能は十分発揮されているか。

      • ハ.説明態勢等の実効性の検証を踏まえて、金融商品の内容や販売態勢の見直しを行っているか。

    • マル4金融サービス提供法等を踏まえた対応

      法第12条の2第2項、施行規則第13条の5及び第13条の7並びに金融サービス提供法等の観点から、金融商品の販売に際しての顧客への説明方法及び内容が適切なものとなっているか。また、金融サービス提供法上の勧誘方針の策定・公表義務の趣旨にかんがみ、適正な勧誘の確保に向けた説明態勢の整備に努めているか。

    • マル5不公正取引との誤認防止

      優越的な地位の濫用の防止のための態勢整備に当たっては、顧客が「当該取引が融資に影響を与えるのではないか」との懸念を有している可能性があることを前提に、優越的な地位の濫用と誤認されるおそれのある説明を防止する態勢が整備されているか。

  • (2)預金等の受入れ(特定預金等の受入れを除く。)

    法第12条の2第1項及び施行規則第13条の3の規定の趣旨を踏まえ、預金等の受入れに関し、預金者等に対する情報提供や預金者等の求めに応じた商品情報の説明を適切に行うための態勢が整備されているか。例えば、以下の点に留意する。

    • マル1変動金利預金で金利設定の基準や方法が定められている場合には、これらの基準等及び金利情報の適切な提供を行う態勢が整備されているか。

    • マル2預金商品に係る提携契約等に基づき、提携金融機関に対して販売・説明態勢に係る助言等を行う場合に、当該預金商品のリスクや商品性等に関する情報を適切に提供しているか。

  • (3)リスク商品に係る業務

    • マル1有価証券関連商品の販売

      公共債、投資信託の窓口販売及び金融商品仲介業等、金融商品取引法の適用対象となる業務については、同法等に定められている投資家保護等のための規制に沿った業務運営が確保されているか。例えば、外務員登録未了者による取扱いや、特定されている窓口以外での取扱い等といった、投資家保護に支障となり得る事態を未然に防止するための態勢が整備されているかについて、留意するものとする。その他監督上の着眼点については、「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」の「VIII .監督上の評価項目と諸手続(登録金融機関)」等を参照するものとする。

      特に、適合性原則を踏まえた説明態勢の整備に当たっては、銀行の顧客は預金者が中心であって投資経験が浅いことが多いことを前提に、元本欠損が生ずるおそれがあることや預金保険の対象とはならないことの説明の徹底等、十分な預金との誤認防止措置が取られているか。

    • マル2特定預金等の受入れ

      特定預金等については、金融商品取引法の行為規制が準用されて いることにかんがみ、監督上の着眼点については、「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の「III-2-3-1適合性原則」、「III-2-3-3広告等の規制」、「III-2-3-4顧客に対する説明態勢」、「IV-3-1-2(3)高齢顧客への勧誘に係る留意事項」等を参照するものとする。

      特に、金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動によりその元本について損失が生ずるおそれがあること等の詳細な説明を行う態勢が整備されているかに留意するものとする。

      例えば、以下の事項について、契約締結前交付書面を交付して説明することとしているか。

      • イ.中途解約時に、違約金等により元本欠損が生ずるおそれがある場合には、その違約金等の計算方法(説明時の経済情勢において合理的と考えられる前提での違約金等の試算額を含む。)。

      • ロ.外貨通貨で表示される特定預金等であって、元本欠損が生ずるおそれのある場合にあってはその旨及びその理由。

      • ハ.払戻時の通貨等を選択できる権利や満期日を選択できる権利を銀行が有している場合には、権利行使によって預金者等が不利となる可能性があること。

    • マル3特定預金等のうち金融商品取引法第2条第20項に規定するデリバティブ取引又は商品先物取引法第2条第15項に規定する商品デリバティブ取引を組み込んだ預金(いわゆる「仕組預金」)で、店頭デリバティブ取引に類する複雑な仕組みを有するものの勧誘・受入れ

      特定預金等については、金融商品取引法の各種行為規制を定めた規定が準用されていることにかんがみ、特に店頭デリバティブ取引に類する複雑な仕組みを有する複雑な仕組預金を受け入れるときには、以下の態勢が整備されているかに留意するものとする。

      • イ.複雑な仕組預金に関する注意喚起文書の配布に係る留意事項

        (i)リスクに関する注意喚起、(ii)トラブルが生じた場合の指定ADR機関等の連絡先等を分かりやすく大きな文字で記載した簡明な文書(注意喚起文書)を配布し、顧客属性等に応じた説明を行うことにより、顧客に対する注意喚起を適切に行っているか。また、その実施状況を適切に確認できる態勢となっているか。

      • ロ.複雑な仕組預金の勧誘に係る留意事項(合理的根拠適合性・勧誘開始基準)

        個人顧客に対して複雑な仕組預金の勧誘を行うにあたっては、顧客保護の充実を図る観点から、適合性原則等に基づく勧誘の適正化を図ることが重要であり、例えば、以下の点に留意して検証することとする。

        • 顧客へ提供する仕組預金としての適合性(合理的根拠適合性)の事前検証を行っているか。
        • 仕組預金のリスク特性や顧客の性質に応じた勧誘開始基準を適切に定め、当該基準に従い適正な勧誘を行っているか。
      • ハ.複雑な仕組預金のリスク説明に関する留意事項

        複雑な仕組預金のリスク説明の監督上の着眼点については、「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」の「IV―3-3-2勧誘・説明態勢(6)」を参照するものとする。

    • マル4特定保険契約の募集

      保険業法第300条の2に規定する特定保険契約の販売・勧誘態勢については、「保険会社向けの総合的な監督指針」の特定保険契約に係る留意点に特に留意するものとする。

  • (4)保険募集

    • マル1総論

      保険募集に関する法令等の遵守、保険商品及び契約に関する正確な説明並びに顧客情報の取扱い等について、マニュアルを策定して研修を実施するとともに内部監査を行うなど、適切な保険募集態勢が確保されているか。

      例えば、銀行等生命保険募集制限先等に対し手数料その他の報酬を得て保険募集を行わないなど適正な保険募集の取組み、消費者の希望や適合性をよく考慮したうえで説明責任を果たす取組み、商品説明や非公開金融情報保護等について消費者の確認・同意を十分に得る取組みのための態勢が整備されているか。

      • (参考)「高齢者に多い個人年金保険の銀行窓口販売に関するトラブル」(平成17年7月6日:独立行政法人国民生活センター)

    • マル2募集にあたっての態勢整備について

      • イ.施行規則第13条の5の規定の趣旨を踏まえ、顧客に対し、預金等ではないことや預金保険の対象とはならないこと等について書面を交付して説明するなど、保険契約と預金等との誤認を防止する態勢が整備されているか。誤認防止に係る説明を理解した旨を顧客から書面(確認書等)により確認し、その記録を残すことにより、事後に確認状況を検証できる態勢が整備されているか。

      • ロ.施行規則第14条の11の3の規定の趣旨を踏まえ、銀行の影響力を行使した販売、銀行取引に影響を与えないことの説明の未実施、募集人登録未了者による取扱い等といった、契約者保護に支障となり得る事態を未然に防止するための態勢が整備されているか。特に、保険募集業務に係る取引強制、優越的地位の濫用、抱き合わせ販売等の不公正な取引方法が具体的に認められた場合には、独占禁止法の観点からも問題となり得るが、こうした事態を未然に防止するための態勢が整備されているか。

      • (参考)「金融機関の業態区分の緩和及び業務範囲の拡大に伴う不公正な取引方法について」(平成16年12月1日:公正取引委員会)

        その他監督上の着眼点については、「保険会社向けの総合的な監督指針」を参照するものとする。

III -3-3-2-3 監督手法・対応

  • (1)リスク商品等の販売・説明態勢等については、金融商品取引法、保険業法などの関係法令等に定められている規制に沿った業務運営を通じ確保されていくものであるが、例えば、検査結果通知のフォローアップ、不祥事件等届出書の受理、相談・苦情等の分析などを端緒として、関係法令等に定められている規制に沿った業務運営の確保、適切なリスク商品等の販売・説明態勢等の有効性等に疑義が生じた場合、顧客を誤解させるおそれのある表示を行うなど禁止行為に該当する疑義がある場合、複雑な仕組預金に関する適切な受入れ・説明態勢等の有効性等に疑義がある場合には、原因及び改善策等について関係法令等に照らしつつ深度あるヒアリングを行い、必要な場合には、関係法令に基づく報告徴求等に併せて法第24 条に基づく報告を求めることを通じて、着実な改善を促すものとする。

    また、重大な問題があると認められる場合には、関係法令に基づく業務改善命令等に併せて法第26条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

  • (2)さらに、検証の結果、経営として III -3-3-2-1の法令の趣旨に反し重要な社内規則等の作成自体を怠っていたことや顧客に対し虚偽の説明を行っていたことが確認された場合など重大な法令違反と認められるときは、法第27条に基づく行政処分(例えば、社内規則等の作成等の十分な体制整備がなされるまでの間の業務の一部停止)を検討する必要があることに留意する。

III -3-3-3 顧客等に関する情報管理態勢

III -3-3-3-1 意義

顧客に関する情報は金融取引の基礎をなすものである。したがって、その適切な管理が確保されることが極めて重要であり、銀行は、その業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じなければならないとされている(法第12条の2第2項)。

特に、個人である顧客に関する情報については、施行規則、個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)、個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)、同ガイドライン(外国にある第三者への提供編)、同ガイドライン(第三者提供時の確認・記録義務編)及び同ガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)(以下、合わせて「保護法ガイドライン」という。)、金融分野における個人情報保護に関するガイドライン(以下「金融分野ガイドライン」という。)及び金融分野における個人情報保護に関するガイドラインの安全管理措置等についての実務指針(以下「実務指針」という。)の規定に基づく適切な取扱いが確保される必要がある。

また、クレジットカード情報(カード番号、有効期限等)を含む個人情報(以下「クレジットカード情報等」という。)は、情報が漏えいした場合、不正使用によるなりすまし購入など二次被害が発生する可能性が高いことから、厳格な管理が求められる。

さらに、銀行は、法人関係情報(金融商品取引業等に関する内閣府令第1条第4項第14号に掲げる法人関係情報をいう。以下同じ。)を入手し得る立場であることから、その厳格な管理と、インサイダー取引等の不公正な取引の防止が求められる。

以上を踏まえ、銀行は、顧客に関する情報及び法人関係情報(以下「顧客等に関する情報」という。)を適切に管理し得る態勢を確立することが重要である。

III -3-3-3-2 主な着眼点

  • (1)顧客等に関する情報管理態勢

    • マル1経営陣は、顧客等に関する情報へのアクセス及びその利用は業務遂行上の必要性のある役職員に限定されるべきという原則(以下「Need to Know原則」という。)を踏まえ、顧客等に関する情報管理の適切性を確保する必要性及び重要性を認識し、業務の内容・規模等に応じて、そのための組織体制の確立(部門間における適切なけん制の確保を含む。)、社内規程の策定、金融グループ内の他の金融機関(持株会社を含む。)との連携等、内部管理態勢の整備を図っているか。

    • マル2顧客等に関する情報の取扱いについて、具体的な取扱基準を定めた上で、研修等により役職員に周知徹底を図っているか。当該取扱基準は、顧客等に関する情報に関し、銀行の行内若しくは行外、又は行内の同一の部門内若しくは異なる部門間、いずれの共有についても、Need to Know原則を踏まえたものとなっているか。また、当該情報の他者への伝達については、上記の法令、保護法ガイドライン、金融分野ガイドライン、実務指針の規定等に従い手続きが行われるよう十分な検討を行った上で取扱基準を定めているか。

    • マル3顧客等に関する情報へのアクセス管理の徹底(アクセス権限を有する者の範囲がNeed to Know原則を逸脱したものとなることやアクセス権限を付与された本人以外が使用することの防止等)、内部関係者による顧客等に関する情報の持ち出しの防止に係る対策、外部からの不正アクセスの防御等情報管理システムの堅牢化、店舗の統廃合等を行う際の顧客等に関する情報の漏えい等の防止などの対策を含め、顧客等に関する情報を適切に管理するための態勢が構築されており、コンプライアンス部門の関与のもと当該顧客等に関する情報の管理状況を適時・適切に検証できる体制となっているか。

      また、特定職員に集中する権限等の分散や、幅広い権限等を有する職員への管理・けん制の強化を図る等、顧客等に関する情報を利用した不正行為を防止するための適切な措置を図っているか。

    • マル4顧客等に関する情報の漏えい等が発生した場合に、適切に責任部署へ報告され、二次被害等の発生防止の観点から、対象となった顧客等への説明、当局への報告及び公表が迅速かつ適切に行われる体制が整備されているか。

      また、情報漏えい等が発生した原因を分析し、再発防止に向けた対策が講じられているか。更には、他社における漏えい事故等を踏まえ、類似事例の再発防止のために必要な措置の検討を行っているか。

      顧客に重大な影響を及ぼす可能性があるなど、経営上重要な事案については、対応方針の意思決定に経営陣が適切に関与しているか。

    • マル5独立した内部監査部門において、定期的又は随時に、顧客等に関する情報管理に係る幅広い業務を対象にした監査を行っているか。当該業務が金融グループ全体で統一的に行われている場合、グループ内の他の金融機関(持株会社を含む。)の内部監査部門等との連携が図られているか。

      また、顧客等に関する情報管理に係る監査に従事する職員の専門性を高めるため、研修の実施等の方策を適切に講じているか。

  • (2)個人情報管理

    • マル1個人である顧客に関する情報については、施行規則第13条の6の5に基づき、その安全管理及び従業者の監督について、当該情報の漏えい、滅失又はき損の防止を図るために必要かつ適切な措置として以下の措置が講じられているか。

      • イ.金融分野ガイドライン第8条及び第9条の規定に基づく措置

      • ロ.実務指針 I 、 II 及び別添2の規定に基づく措置

    • マル2個人である顧客に関する人種、信条、門地、本籍地、保健医療又は犯罪経歴についての情報その他の特別の非公開情報(注)を、施行規則第13条の6の7に基づき、金融分野ガイドライン第5条第1項各号に列挙する場合を除き、利用しないことを確保するための措置が講じられているか。

      (注)その他の特別の非公開情報とは、以下の情報をいう。

      • イ.労働組合への加盟に関する情報

      • ロ.民族に関する情報

      • ハ.性生活に関する情報

      • ニ.個人情報の保護に関する法律施行令第2条第4号に定める事項に関する情報

      • ホ.個人情報の保護に関する法律施行令第2条第5号に定める事項に関する情報

      • へ.犯罪により害を被った事実に関する情報

      • ト.社会的身分に関する情報

    • マル3クレジットカード情報等については、以下の措置が講じられているか。

      • イ.クレジットカード情報等について、利用目的その他の事情を勘案した適切な保存期間を設定し、保存場所を限定し、保存期間経過後適切かつ速やかに廃棄しているか。

      • ロ.業務上必要とする場合を除き、クレジットカード情報等をコンピューター画面に表示する際には、カード番号を全て表示させない等の適切な措置を講じているか。

      • ハ.独立した内部監査部門において、クレジットカード情報等を保護するためのルール及びシステムが有効に機能しているかについて、定期的又は随時に内部監査を行っているか。

    • マル4個人データの第三者提供に関して、金融分野ガイドライン第12条等を遵守するための措置が講じられているか。特に、その業務の性質や方法に応じて、以下の点にも留意しつつ、個人である顧客から適切な同意の取得が図られているか。

      • イ.金融分野ガイドライン第3条を踏まえ、個人である顧客からPC・スマートフォン等の非対面による方法で第三者提供の同意を取得する場合、同意文言や文字の大きさ、画面仕様その他同意の取得方法を工夫することにより、第三者提供先、当該提供先に提供される情報の内容及び当該提供先における利用目的について、個人である顧客が明確に認識できるような仕様としているか。

      • ロ.過去に個人である顧客から第三者提供の同意を取得している場合であっても、第三者提供先や情報の内容が異なる場合、又はあらかじめ特定された第三者提供先における利用目的の達成に必要な範囲を超えた提供となる場合には、改めて個人である顧客の同意を取得しているか。

      • ハ.第三者提供先が複数に及ぶ場合や、第三者提供先により情報の利用目的が異なる場合、個人である顧客において個人データの提供先が複数に及ぶことや各提供先における利用目的が認識できるよう、同意の対象となる第三者提供先の範囲や同意の取得方法、時機等を適切に検討しているか。

      • ニ.第三者提供の同意の取得にあたって、優越的地位の濫用や個人である顧客との利益相反等の弊害が生じるおそれがないよう留意しているか。例えば、個人である顧客が、第三者提供先や第三者提供先における利用目的、提供される情報の内容について、過剰な範囲の同意を強いられる等していないか。

  • (3)法人関係情報を利用したインサイダー取引等の不公正な取引の防止

    • マル1プライベート部門(営業部門のうち、恒常的に法人関係情報を取得することが想定される部門をいう。)とパブリック部門(営業部門のうち、プライベート部門以外の部門をいい、例えば、有価証券の売買その他の取引等の勧誘やその取引の媒介・取次ぎ・代理を行う部門や、自己取引又は委託取引の執行を行う部門などが考えられる。)との間に、チャイニーズウォール(情報管理のための組織上、物理上又はシステム上の障壁をいう。以下同じ。)を設ける等、法人関係情報を利用したインサイダー取引等の不公正な取引を防止するための適切な措置を講じているか。例外的にウォールクロス(チャイニーズウォールを跨いだ情報共有をいう。以下同じ。)を行う場合、情報共有を行った各部門の役職員の氏名、日付、関連銘柄等を記録し、コンプライアンス部門の事前承認を要する等の、法人関係情報の不正利用を実効的に防止する観点から必要となる手続を具体的に定めているか。

      また、経営管理上の必要性から役員等に法人関係情報へのアクセスを認めている場合、当該役員等による法人関係情報の漏えいや不正利用を実効的に防止する観点から必要となる措置が講じられているか。

      (注)「組織上の障壁」としては、例えば、部門やレポーティングラインの分離、役職員の兼職の制限等の措置を講じることが、「物理上の障壁」としては、例えば、法人関係情報を管理する部署への入出制限や文書管理等の措置を講じることが、「システム上の障壁」としては、例えば、法人関係情報へのアクセス権限の管理等の措置を講じることが考えられる。

    • マル2役職員及びその関係者による、有価証券の売買その他の取引等に係る社内規則を整備し、当該社内規則に従い事前承認等の手続きを要することとした取引については、コンプライアンス部門による適切な関与を行わせる等し、また、必要に応じて見直しを行う等、適切な内部管理態勢を構築しているか。

    • マル3役職員によるインサイダー取引等の不公正な取引の防止に向け、職業倫理の強化、関係法令や社内規則の周知徹底等、法令等遵守意識の強化に向けた取組みを行っているか。

    • マル4法人関係情報を入手し得る立場にある銀行の役職員及びその関係者による有価証券の売買その他の取引等の実態把握を行い、必要に応じてその方法の見直しを行う等、適切な措置を講じているか。

    • マル5銀行が海外営業拠点を有している場合や国際的に活動する金融グループに属している場合、法人関係情報の管理について、例えば国内だけでなく、グローバルのグループベースで組織的・一元的な方針、手続き、システム等による管理を行うなど、各国法規制を遵守しつつ、グローバルに提供される業務の内容・規模等にふさわしい水準の適切な管理態勢が確立されているか。

III -3-3-3-3 監督手法・対応

検査結果及び不祥事件等届出書等により、顧客等に関する情報管理態勢に問題があると認められる場合には、必要に応じ、法第24条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。

なお、上記の銀行法に基づく対応の他、個人である顧客に関する情報については、必要に応じて、個人情報保護法における事業所管大臣への権限委任の状況に従い、必要な措置をとる場合があることに留意すること。

III -3-3-4 外部委託

III -3-3-4-1 意義

銀行が、その業務を第三者に委託すること(以下「外部委託」という。)は、経営の効率化を図ることにとどまらず、より専門性を有する者に業務を委託することで、多様な顧客ニーズへの対応や急速な技術革新を踏まえた迅速な対応等を図ることも期待できる。しかしながら、銀行が外部委託を行う場合には、顧客を保護するとともに、外部委託に伴う様々なリスクを適切に管理するなど業務の健全かつ適切な運営を確保することが求められることから、法令により、銀行は委託業務の的確な遂行を確保するための措置を講じなければならないとされている(法第12条の2第2項、施行規則第13条6の8)。

以下に示す観点は、外部委託が行われている場合の一般的な着眼点であるが、委託業務の内容等に応じ、追加的に検証を必要とする場合があることに留意するものとする。

  • (注1) 外部委託には、銀行がその業務を営むために必要な事務を第三者に委託することを含む(形式上、外部委託契約が結ばれていなくともその実態において外部委託と同視しうる場合や当該外部委託された業務等が海外で行われる場合も含む。)。

  • (注2) 銀行の固有業務を営むために必要な業務の一部について外部委託が行われている場合(法第52条の36第1項の許可を受けて銀行代理業を営む場合又は金融サービス提供法第12条の登録を受けて金融サービス仲介業(同法第11条第2項に定める預金等媒介業務に限る。以下同じ。)を行う場合を除く。)には、以下の着眼点のほか、当該外部委託が銀行代理業及び金融サービス仲介業に該当するものとなっていないかどうかについても、検証を行うよう配意するものとする。

  • (注3) 例えば、銀行の付随業務のみを外部委託することは銀行法上の許可を必要とする銀行代理業及び金融サービス提供法上の登録を必要とする金融サービス仲介業には該当するものではないが、こうした外部委託が行われている場合には、委託者である銀行に対するヒアリング等により、定期的に以下の着眼点を踏まえた状況把握等に努めるものとする。

  • (注4) 銀行と当該銀行の子会社等との間で外部委託が行われている場合には、 V -3-3等も参照するものとする。

III -3-3-4-2 主な着眼点

  • (1)顧客保護の観点から以下の態勢整備(委託契約等において外部委託先に対して態勢整備を求めることを含む。)が図られているか。

    • マル1委託契約によっても当該銀行と顧客との間の権利義務関係に変更がなく、顧客に対しては、当該銀行自身が業務を行ったのと同様の権利が確保されていることが明らかとなっているか。

    • マル2委託業務に関して契約どおりサービスの提供が受けられないときに、銀行において顧客利便に支障が生じることを未然に防止するための態勢整備が行われているか。

    • マル3委託先における目的外使用の禁止も含めて顧客等に関する情報管理が整備されており、委託先に守秘義務が課せられているか。

    • マル4個人である顧客に関する情報の取扱いを委託する場合には、施行規則第13条の6の5に基づき、その委託先の監督について、当該情報の漏えい、滅失又はき損の防止を図るために必要かつ適切な措置として以下の措置が講じられているか。

      • イ.金融分野ガイドライン第10条の規定に基づく措置

      • ロ.実務指針 III の規定に基づく措置

    • マル5外部委託先の管理について、責任部署を明確化し、外部委託先における業務の実施状況を定期的又は必要に応じてモニタリングする等、外部委託先において顧客等に関する情報管理が適切に行われていることを確認しているか。

    • マル6外部委託先において漏えい事故等が発生した場合に、適切な対応がなされ、速やかに委託元に報告される体制になっていることを確認しているか。

    • マル7外部委託先による顧客等に関する情報へのアクセス権限について、委託業務の内容に応じて必要な範囲内に制限しているか。

      その上で、外部委託先においてアクセス権限が付与される役職員及びその権限の範囲が特定されていることを確認しているか。

      さらに、アクセス権限を付与された本人以外が当該権限を使用すること等を防止するため、外部委託先において定期的又は随時に、利用状況の確認(権限が付与された本人と実際の利用者との突合を含む。)が行われている等、アクセス管理の徹底が図られていることを確認しているか。

    • マル8二段階以上の委託が行われた場合には、外部委託先が再委託先等の事業者に対して十分な監督を行っているかについて確認しているか。また、必要に応じ、再委託先等の事業者に対して自社による直接の監督を行っているか。

    • マル9クレーム等について顧客から銀行への直接の連絡体制を設けるなど適切な苦情相談態勢が整備されているか。

  • (2)銀行は、以下に示す点など、その経営の健全性の確保の観点から総合的な検証を行い、必要な態勢整備(委託契約等において外部委託先に対して態勢整備を求めることを含む。)を図っているか。

    • マル1リスク管理

      銀行は、当該委託契約に沿ってサービスの提供を受けられなかった場合の銀行業務への影響等外部委託に係るリスクを総合的に検証し、リスクが顕在化した場合の対応策等を検討しているか。

    • マル2委託先の選定

      銀行経営の合理性や銀行のレピュテーション等の観点から問題ないか等の観点から、委託先の選定を行っているか。

    • マル3契約内容

      契約内容は、例えば、以下の項目について明確に示されるなど十分な内容となっているか。

      • イ.提供されるサービスの内容及びレベル並びに解約等の手続き

      • ロ.委託契約に沿ってサービスが提供されない場合における委託先の責務委託に関連して発生するおそれのある損害の負担の関係(必要に応じて担保提供等の損害負担の履行確保等の対応を含む。)

      • ハ.銀行が、当該委託業務及びそれに関する委託先の経営状況に関して委託先より受ける報告の内容

      • ニ.金融当局の銀行に対する検査・監督上の要請に沿って対応を行う際の取決め

    • マル4銀行に課せられた法令上の義務等

      当該委託業務を銀行自身が行った場合に課せられる法令上の義務等の履行に支障が生じる外部委託となっていないか。

    • マル5銀行側の管理態勢

      委託業務に関する管理者の設置、モニタリング、検証態勢(委託契約において、銀行が委託先に対して業務の適切性に係る検証を行うことができる旨の規定を盛り込む等の対応を含む。)等の行内管理態勢が整備されているか。

    • マル6情報提供

      業務の重要性に応じて、委託業務の履行状況等に関し、委託先から必要かつ適切な情報が迅速に得られる態勢となっているか。

    • マル7監査

      銀行において、外部委託業務についても監査の対象となっているか。

    • マル8緊急対応

      委託契約に沿ったサービスの提供が行われない場合にも、銀行業務に大きな支障が生じないよう対応が検討されているか。また、業務の重要性に応じて、顧客に対して委託先に代わりサービス提供が可能な態勢等が整備されているか。

    • マル9グループ会社への外部委託

      委託契約が銀行とグループ会社との間において締結される場合に、契約の内容が実質的に委託先への支援となっており、アームズ・レングス・ルールに違反していないか。

III -3-3-4-3 監督手法・対応

  • (1)銀行の管理態勢に問題が認められる場合

    検査結果及び不祥事件等届出書等により、銀行の業務の外部委託に係る内部管理態勢に問題があると認められる場合には、必要に応じ、法第24条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。

  • (2)外部委託先の業務運営態勢等に問題が認められる場合

    • マル1銀行に対する対応

      検査結果等により外部委託先の業務運営態勢に問題があると認められる場合や、不祥事件等届出書等により外部委託先において不適切な業務運営が行われていると認められる場合には、先ずは委託者である銀行を通じて、事実関係等(当該銀行の管理態勢等を含む。)の把握等に努めることを基本とすることとする。この場合においても、当該銀行に対しては、必要に応じ、法第24条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。ただし、事案の緊急性や重大性等を踏まえ、以下マル2の対応を並行して行うことを妨げるものではない。

    • マル2外部委託先に対する対応

      上記マル1による対応では十分な実態把握等が期待できない場合などには、外部委託先に対して、直接、ヒアリングを行うなど事実関係の把握等に努めることとするが、特に必要があると認められる場合(例えば、当該外部委託先に対して多数の他の金融機関が同種の外部委託を行っている場合や決済システム全体に影響を及ぼしかねない場合など)には、当該外部委託先に対して、事実関係や発生原因分析及び改善・対応策等必要な事項について、法第24条第2項に基づく報告を求めることとする。

  • (注) 外部委託先に対してヒアリングを実施するに際しては、必要に応じ、委託者である銀行の同席を求めるものとする。

サイトマップ

ページの先頭に戻る