II  金融コングロマリット監督上の評価項目(着眼点)

II -1  経営管理

グループ内の金融機関の健全性等の確保のためには、まずは各金融機関において、経営陣が自らの役割を十分に理解し、経営に対する規律付けを含め、有効かつ責任ある経営管理の態勢が構築され、適切に遂行されていることが重要である。(注)

更に、金融コングロマリットにおける持株会社等の経営管理会社は、グループ全体としての適切な経営管理の態勢構築・遂行に責任ある役割を果たさなければならない。そのためには、経営管理会社の代表取締役、取締役・取締役会、監査役・監査役会及び内部監査部門が果たす責務が重大である。

また、内部管理に関する業務が、共通の役職員によって行われている場合には、そうした兼職態勢が健全かつ適切に機能している必要がある。

以上を踏まえ、グループの経営管理のモニタリングに当たっては、例えば、以下のような着眼点に基づき、その機能が適切に発揮されているかどうかを検証することとする。

(注) 特に、グループ内の金融機関の経営に対し、当該金融機関やその経営管理会社の経営陣でない個人、又は当該金融機関の経営管理会社以外の会社等が実質的に関与していることにより、当該金融機関自身において有効かつ責任ある経営管理の態勢構築・遂行がなされていないと認められる場合には、監督当局として特段の留意が必要となる。

  • (1)代表取締役、取締役及び取締役会

    • マル1経営管理会社の取締役(以下「取締役」という。)は、グループ内の金融機関等の経営管理を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者であるか。

    • マル2経営管理会社の代表取締役(以下「代表取締役」という。)は、内部監査の重要性を認識し、内部監査の目的を適切に設定するとともに、内部監査部門の機能が十分発揮できる機能を構築(内部監査部門の独立性の確保を含む)し、定期的にその機能状況を確認しているか。また、内部監査の結果等を踏まえて適切な措置を講じているか。

    • マル3取締役は、業務執行にあたる代表取締役等の独断専行を牽制・抑止し、経営管理会社の取締役会(以下「取締役会」という。)における業務執行の意思決定及び取締役の業務執行の監督に積極的に参加しているか。

    • マル4取締役会は、グループが目指すべき全体像等に基づいた経営方針を明確に定めているか。更に、経営方針に沿った経営計画を明確に定め、それをグループ全体に周知しているか。また、その達成度合いを定期的に検証し必要に応じ見直しを行っているか。

    • マル5取締役及び取締役会は、法令等遵守に関し、誠実かつ率先垂範して取り組み、経営管理会社及びグループ全体の内部管理態勢の確立のため適切に機能を発揮しているか。

    • マル6取締役及び取締役会は、グループの業務・財務内容を把握し、グループの抱えるリスクの特性を十分理解した上で、リスクの状況を適切に把握しているか。また、リスク管理部門を軽視することが企業収益に重大な影響を与えることを十分認識し、リスク管理部門を重視しているか。特に担当取締役はグループにおけるリスクの所在及びリスクの種類を理解した上で、各種リスクの測定・モニタリング・管理等の手法について深い認識と理解を有しているか。

    • マル7取締役及び取締役会は、金融コングロマリットを形成することに伴う組織の複雑性の増大や、それに伴う経営管理の困難化について十分理解し、適切な経営管理態勢を整備しているか。

    • マル8取締役及び取締役会は、戦略に沿ってグループ全体の適切な経営資源の配分を行い、かつ、それらの状況を機動的に管理し得る体制を整備しているか。

    • マル9取締役及び取締役会は、リスクに見合った資本政策の重要性を認識し、資本の充実に努め、グループとしての適切な資本の維持を図っているか。

  • (2)監査役及び監査役会

    • マル1経営管理会社の監査役会(以下「監査役会」という。)は、制度の趣旨に則り、その独立性が確保されているか。

    • マル2監査役会は、付与された広範な権限を適切に行使し、会計監査に加え業務監査を実施しているか。

    • マル3監査役会が設けられている場合であっても、各監査役は、あくまでも独任制の機関であることを自覚し、自己の責任に基づき積極的な監査を実施しているか。

  • (3)内部監査部門

    • マル1経営管理会社に、グループ全体の内部管理態勢を評価する内部監査部門(以下「内部監査部門」という。)が整備されているか。

    • マル2経営管理会社の内部監査部門は、被監査部門に対して十分牽制機能が働くよう独立し、かつ、実効性ある内部監査が実施できる体制となっているか。

    • マル3内部監査部門は、被監査部門におけるリスク管理状況等を把握した上、リスクの種類・程度に応じて、頻度・深度に配慮した効率的かつ実効性ある内部監査計画を立案するとともに、内部監査計画に基づき効率的・実効性ある内部監査を実施しているか。

    • マル4グループ内のリスクに的確に対応できるよう、法令等に抵触しない範囲で、必要に応じ、内部監査部門が、グループ内の金融機関の内部監査部門と協力して監査を実施できる体制を整備しているか。特に、グループ内の金融機関において重要なリスクにさらされている業務等がある場合、法令等に抵触しない範囲で、必要に応じ、内部監査部門が直接監査できる態勢を構築しているか。

    • マル5内部監査部門は、内部監査で指摘した重要な事項について遅滞なく代表取締役及び取締役会に報告しているか。また、内部監査で指摘した事項について、被監査部門における改善状況等を適切に把握する体制となっているか。

  • (注)経営管理会社が指名委員会等設置会社又は監査等委員会設置会社である場合には、取締役会、各委員会(指名委員会等設置会社にあっては、指名委員会、監査委員会及び報酬委員会、監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員会をいう。)、執行役等の機関等が、それぞれ与えられた権限等を適切に行使しているかどうかといった観点から検証する必要がある。この場合においては、本監督指針の趣旨を踏まえ、実態に即して検証を行うこととなる。

  • (4)グループ内の金融機関の内部管理の兼職態勢

    内部管理に関する業務は、本来、各金融機関において独立し、かつ、適切に遂行されるための態勢が整備されている必要がある。

    一方、グループ内の金融機関が内部管理に関する業務を経営管理会社又は他のグループ内会社と共通の役職員によって行わせている場合がある。この場合には、以下のような態勢整備が図られているか。

    • マル1内部管理に関する業務を公正かつ的確に遂行することができる人的構成及び業務運営体制が確保されていること。

      • イ. 特に、グループ内の複数の金融機関の内部管理に関する業務を兼務する役職員が、当該業務を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験を有していること。

      • ロ. また、その人的構成及び業務運営体制は、グループ内金融機関等の業務規模及び範囲に照らし適切なものとなっていること。

    • マル2内部管理に関する業務を遂行するための社内規則が整備されていること。

    • マル3内部管理に関する業務を行う部門から非公開情報が漏洩しない措置が的確に講じられていること。

    • マル4内部管理に関する業務に従事する者が営業を行う部門から独立していること。

II -2 財務の健全性

II -2-1 自己資本の適切性

金融コングロマリットを構成する金融機関(銀行(長期信用銀行を含む。)、保険会社(小額短期保険業者を含む)、金融商品取引業者(第一種金融商品取引業(有価証券関連業に限る。)を行う者に限る。) II -2-1において同じ。)は、各機関及びグループ全体に対する利用者等からの信認を確保するため、各々が自己資本の充実を図り、リスクに応じた十分な財務基盤を保有することが極めて重要である。従って、金融コングロマリットの監督に際しても、まずはグループ内の各金融機関が、それぞれの業法等で求められている適切な自己資本の基準(保険会社についてはソルベンシーマージン比率に基づく基準)を満たしているかどうかを確認することが基本となる。

一方、金融コングロマリットを構成する金融機関においては、風評リスクの波及やリスクの集中等の、グループとしてのリスクを追加的に有することとなるため、金融コングロマリットの監督に当たっては、グループ内の各金融機関の自己資本の充実に加え、グループとしての自己資本の充実の適切性を検証する必要がある。

そのような考え方の下、以下のような着眼点に基づき、金融コングロマリットの自己資本の適切性を確認することとする。

  • (1)グループ内の金融機関の自己資本の適切性

    • マル1グループ内の各金融機関は、法令等に基づく適切な自己資本を確保している状態にあるか。

    • マル2経営管理会社の取締役は、グループ内の金融機関の自己資本の充実の状況を的確に把握し、金融機関の業務の健全かつ適切な運営が確保されるよう、適切な方策を講じているか。

    • マル3グループ内の各金融機関には、自己資本比率等について、適時・適切かつ正確なディスクロージャーが行われる態勢が確保されているか。

    • マル4単体の自己資本比率等の算出に当たっては、法令等に基づき、グループ内の企業間での株式持合い等による意図的なダブルギアリング又はマルチプルギアリングが適切に排除されているか。

  • (2)金融コングロマリットの自己資本の適切性

    • マル1金融コングロマリットは、経営管理会社又はグループ内の金融機関に係る個別法等によって連結自己資本比率の計算及びそれに基づく連結自己資本の充実等が求められている場合を除き、以下の計算に基づき算出したグループの合算自己資本が、所要自己資本を下回ることのないよう、合算自己資本の適切性確保のための方策を講じなければならない。

      • (注1)合算自己資本の計算には、経営管理会社が作成する連結財務諸表(外国持株会社等の場合は当該会社が外国において作成する同等の連結財務諸表)に含まれる銀行、金融商品取引業者又は金融持株会社の自己資本を必ず含むこととし、自己資本の計測に必要な情報の入手等が法的に困難な国にある会社、自己資本比率の算出上無視しうるほどに規模の小さい会社(それらを合算して無視できない規模になる場合を除く)、その会社を計算に含めることが不適当或いは誤解を招くこととなると考えられる会社の自己資本を除くこととする。

      • (注2)グループ内の保険会社については、通常の予測を超えて発生するリスクに対して、資本・準備金等の支払能力が十分に確保されていることが必要である。

    • マル2算定方法

      【合算自己資本】

      • 合算自己資本の額は、経営管理会社が作成する連結財務諸表に基づいて計算する。
      • 合算自己資本には、経営管理会社又はグループ内の金融機関に係る業法等(健全性に係るもの)により算定される自己資本の額(業法等に規定された控除項目を除く)を組み入れることとする。
      • 健全性に係る規制の対象となっていない会社(以下「規制対象外会社」という。)については、下記【規制対象外会社の取扱い】の規定に従い算定した額を組み入れることとする。

      【所要自己資本】

      • 金融コングロマリットの所要自己資本の額は、経営管理会社が作成する連結財務諸表に含まれる会社の所要自己資本の額の合計とする。
      • 所要自己資本には、経営管理会社又はグループ内の金融機関に係る業法等(健全性に係るもの)により算定される所要自己資本の額を組み入れることとする。
      • 規制対象外会社については、下記【規制対象外会社の取扱い】の規定に従い算定した額を組み入れることとする。

      【規制対象外会社の取扱い】

      • 規制対象外会社の自己資本の額ならびに所要自己資本の額の算定にあたっては、当該会社が所在する国の規制で、かつ当該会社の事業内容に類似する適当な金融機関に適用されている健全性規制を準用することとする。
      • 所在国に類似の健全性規制が存在しない、又は所在国の類似の健全性規制に従った場合に算出される自己資本及び所要自己資本が不適切な場合、所在国の類似の健全性規制の代わりに、日本の適切な法令で代替することとする。
    • マル3監督当局は、グループの合算自己資本及び所要自己資本について、必要に応じ、経営管理会社又はグループ内の金融機関から報告を求めることとする。

II -2-2 リスク管理態勢

金融コングロマリットにおいては、異なるリスクを有する金融機関の経営管理を一体的に行うことにより、単体での経営に比べ多様なリスクを内包することとなる一方、各金融機関のリスクの適切な分散が図られる結果、金融コングロマリット全体としてのリスクが軽減されることもあり得る。また、グループ内の特定の企業においてリスクを一元管理することによるコスト削減も期待できる。

このように、金融コングロマリットにおいては、リスクの存在そのものよりも、それをどのように適切に把握し、管理していくかが重要となる。従って、以下のような着眼点に基づき、金融コングロマリットのリスク管理態勢を検証することとする。(なお、ここでいうリスク管理態勢は、「 II -1経営管理」における検証項目に関するリスク管理態勢及び「 II -3 業務の適切性」におけるグループ内取引、事務リスク、システムリスク、システム統合リスクの管理態勢や危機管理体制を含む。)

  • マル1経営管理会社の取締役会の承認によって、グループの戦略目標を踏まえ、想定される全ての主要なリスクを盛り込んだグループのリスク管理の方針を明確に定めているか。また、当該方針は定期的(少なくとも年1回)あるいは戦略目標の変更等必要に応じ随時見直されているか。

  • マル2経営管理会社のリスク管理の方針は役職員及びグループ内会社に周知され、グループ内の金融機関によって当該方針と整合的なリスク管理の方針が策定されているか。

  • マル3経営管理会社に、グループの規模、特性及びグループ内会社の業務内容等に応じ、グループに内在する各種リスクを管理するリスク管理部門が整備されているか。

  • マル4リスク管理部門は適時適切にグループが抱える各種リスクを把握し、経営管理会社の取締役に定期的に報告しているか。

  • マル5経営管理会社の取締役は、リスク状況の報告に基づき、必要な意思決定を行うなど、把握されたリスク情報を業務の執行及びグループのリスク管理体制の整備に活用しているか。

  • マル6リスクモニタリングシステムの適切性を検証できる態勢となっているか。経営管理会社によるグループ全体のリスクの計測、監視、管理に資するよう、グループ内の金融機関のモニタリングシステムが統一されたものとなっているか。

II -2-2-1 リスク管理共通編

  • (1)リスクの伝播に対する管理態勢

    経営管理会社及びグループ内会社は、それぞれ法人として独立した存在であるが、経営管理会社又はグループ内会社で顕在化したリスクが、資本関係や外部の評判(レピュテーション)又はグループ内取引等を通じて、グループ内の他の会社に波及し、グループ内の金融機関又はグループ全体に損害が生じる可能性がある。経営管理会社においては、グループ内のリスク波及がグループ内の金融機関の健全性等に与える影響について十分理解され、その上で、これに的確に対応するための態勢が整備されているか。

  • (2)リスクの偏在に対する管理態勢

    経営管理会社の取締役は、グループの特定の企業又は領域にリスクが偏在することにより、グループ内の金融機関、或いはグループ全体の健全性の確保等に重大な影響を与えることを認識し、このようなリスクの偏在を特定した上で、これを的確に監視、管理するための態勢を整備しているか。

  • (3)リスクの集中に対する管理態勢

    • マル1経営管理会社は、グループにおけるリスクの集中を特定し、それを適切に測定、監視、管理するための態勢を整備しているか。具体的には、グループに集中するようなリスクを適切に特定するプロセス、包括的なリスク計測システム、大口のエクスポージャーとその他のリスクの集中を管理するための限度枠の設定、ストレステストやシナリオ分析、及び相関分析等のプロセスを通じ、市場価値の変動、信用度の低下、自然災害といった不利な事象が、グループ内の金融機関又はグループ全体に対して及ぼす影響を適切に評価しているか。

    • マル2経営管理会社の取締役は、リスクの集中による懸念は、優れたリスク管理と内部管理方針によって軽減でき、また、十分な自己資本の確保によって補完され得ることに十分留意しているか。

    • マル3経営管理会社の取締役は、定量化し得ないリスクや異なる業態の金融機関等が経営統合等を行った場合の新たなリスクの集中にも十分留意しているか。

    • マル4監督当局は、金融コングロマリットのリスクの集中の検証に際し、グループ内で合算した場合にグループ全体の財務に重大な影響を与える可能性のあるエクスポージャー(信用リスク、投資リスク、市場リスク、保険引受けリスク、その他のリスク、又はこれらのリスクの組合せによって発生するエクスポージャー)について、必要に応じ、報告を求めることとする。

  • (4)その他のリスクに対する管理態勢

    • マル1グループ内の金融機関が、他のグループ内会社等と共同で金融商品を開発する場合や、他のグループ内会社等の組成した金融商品の販売を行う場合などに想定されるリスクについて、経営管理会社の取締役及びそれに関わるグループ内会社の取締役が十分な認識を持ち、適切な対応を講じているか。また、顧客保護の観点から適切な説明態勢が整備されているか。

    • マル2経営管理会社は、グループ内の金融機関の業務の健全かつ適切な運営の確保に重大な影響を及ぼす可能性があるグループ内取引が行われないよう、必要かつ適切な措置を講じているか。

    • マル3グループ内に事業会社が含まれる場合(経営管理会社が事業会社である場合を含む)においては、経営管理会社は、事業会社が含まれることにより生じる各種リスクを適切に管理する態勢を構築しているか。

II -2-2-2 信用リスク管理態勢

  • マル1グループの経営方針等に沿ったグループの信用供与戦略目標が明確に定められているか。当該戦略目標は、特定の業種又は特定のグループなどに対する短期的な収益確保を目的とした信用リスクの集中を排除するなど、信用リスク管理の観点からも適切なものとなっているか。

  • マル2経営管理会社又はグループ内会社において、グループとしての信用リスクの計量化が行われ、自己資本に見合った信用リスクリミットの設定などが適切に行われているか。

  • マル3グループが抱える信用リスク量があらかじめ定めた許容範囲を超えた場合、適切な方策を講じることができる体制を整備しているか。

  • マル4グループ内の与信管理の状況等について、法令等に抵触しない範囲で、総合的に管理できる体制となっているか。特に、グループとしてのポートフォリオの状況(特定の業種又は特定のグループに対する与信集中の状況等)についても、適切に管理しているか。

  • マル5経営管理会社又はグループ内会社が抱える問題債権の管理・回収状況が、的確に把握されているか。また、経営管理会社又はグループ内会社からグループ内の他の会社に問題債権が移管された場合においても、そのリスク管理が適切に行われていることを把握しているか。

II -2-2-3 市場リスク管理態勢

  • マル1グループの経営方針等に沿ったグループの市場関連リスクを有する資産での運用戦略の目標が明確に定められているか。当該戦略目標は、短期的な収益確保を目的とした市場関連リスクの集中を排除するなど、市場関連リスク管理の観点からも適切なものとなっているか。

  • マル2経営管理会社又はグループ内会社において、市場関連リスクの計量化が行われ、自己資本に見合った市場関連リスクリミットの設定などが適切に行われているか。

  • マル3グループが抱える市場関連リスク量があらかじめ定めた許容範囲を超えた場合、適切な方策を講じることができる体制を整備しているか。

II -2-2-4 流動性リスク管理態勢

  • マル1グループの流動性リスク管理の方針を明確に定めた上で、グループとして抱えることのできる流動性リスクの程度を、適時に把握し、明確に定めているか。

  • マル2グループの流動性リスク管理の方針に沿って、グループの資金繰りの状況をその資金繰りの逼迫度に応じて区分し、各区分時における管理方法、報告方法、決済方法等の規定を取締役会等の承認を得た上で整備しているか。

  • マル3グループの流動性リスクを管理する部門は、適切な頻度で、グループ内会社の流動性リスク管理等に係る情報について報告を受けているか。

  • マル4グループの流動性リスクを管理する部門は、グループの資金調達可能時点・金額を常時把握するとともに、危機時を想定した資金調達手段が確保されていることを把握しているか。

II -2-3 海外監督当局におけるコングロマリット監督の同等性

外国持株会社等グループに該当する金融コングロマリットのグループとしての財務の健全性に関しては、まずは経営管理会社の所在地の外国監督当局によるコングロマリット監督態勢について、本監督指針に定める監督上の留意点を含む我が国の監督態勢との同等性を検証することとする。

II -3 業務の適切性

II -3-1 コンプライアンス(法令等遵守)態勢

金融コングロマリットにおけるグループとしてのコンプライアンス態勢については、以下のような着眼点に基づき、検証することとする。

  • (1)経営管理会社によるコンプライアンス態勢の整備

    • マル1経営管理会社の取締役は、法令等遵守をグループ経営上の重要課題の一つとして位置付け、率先して経営管理会社及びグループ内会社の法令等遵守態勢の構築に取り組んでいるか。

    • マル2法令等遵守に係るグループの基本方針及び遵守基準が経営管理会社の取締役会において策定され、グループ内会社に周知徹底されているか。また、その内容は単に倫理規定に止まらず、具体的な行動指針や基準を示すものとなっているか。

    • マル3経営管理会社に、グループのコンプライアンスに関する事項を統括して管理する部門(以下「コンプライアンス統括部門」という。)を設置し、グループの或いはグループ内会社の法令等遵守態勢を適切に監視することとしているか。

  • (2)グループ内会社によるコンプライアンス態勢の整備

    • マル1グループ内の金融機関において、適切なファイヤーウォールが整備されて、機能しているか。

    • マル2グループ内会社等において個人情報を取扱う場合には、各業法及び個人情報保護法等に基づき、適切な安全管理及び共同利用等のための態勢が整備されているか。

    • マル3グループ内会社等や業務部署間の利益相反関係の明確化・役職員に対する周知徹底や、潜在的な利益相反のリスクが明確化され、それらに対する具体的な対応や回避策が定められているか。

    • マル4グループ内の各金融機関にコンプライアンス担当部門が設置されており、コンプライアンス統括部門との有効な連携関係が確保されているか。

    • マル5グループにおいて、独占禁止法が禁止している不公正な取引方法に該当する行為(優越的な地位の濫用)の発生を防止する措置が講じられているか。

    • マル6グループにおいて、金融商品取引法が禁止している不公正な取引(インサイダー取引、有利買付け等の表示の禁止等)に該当する行為の発生を防止する措置が講じられているか。

    • マル7グループ内会社等において、テロ資金供与やマネー・ローンダリン グの防止等に適切に対処するため、「犯罪による収益の移転防止に関 する法律(平成19年法律第22号)」に基づく取引時確認を行うなど、 適切な顧客管理体制が整備されているか。

    • マル8反社会的勢力への対応については、グループとして適切な対応ができる体制が整備されているか。また、警察等関係機関等とも連携して、断固とした姿勢で臨んでいるか。

  • (3)不祥事件への対応

    グループ内会社において不祥事件が発覚した場合のグループの態勢について、以下の着眼点に基づき検証する。

    • マル1当該事件への経営管理会社の関与はないか、組織的な関与はないか。

    • マル2当該事件の内容がグループ内の他の会社の経営等に与える影響はどうか。

    • マル3当該事件が金融コングロマリットの経営に重大な影響を与えるような場合には、当該不祥事件について、速やかに経営管理会社の取締役会、内部監査部門等へ報告する体制となっているか。

    • マル4当該事件の発覚後の被害者・顧客等への対応が適切か。

    • マル5当該事件の発覚後、当局への報告が迅速になされているか。

    • マル6改善策の策定や自浄機能が十分か。

II -3-2 グループ内取引の適切性

グループ内取引は、グループ内会社間等のシナジー効果を生み出し、コストの最小化と利益の最大化、リスク管理の向上及び効果的な自己資本と資金調達の管理に資するものであるが、他方で、グループ内取引は、グループ内でのリスク移転を伴う側面があることから、金融機関の業務の健全性等に重大な影響を及ぼす可能性があり、また、法令等に則した適切な対応等が行われていない場合には、グループ内において取引の公正性が歪められたり、金融機関の業務の適切性が損なわれたりする可能性がある。

従って、まずはグループ内の各金融機関において、グループ内取引に係る法令等遵守及びリスク管理に関して適切な態勢を構築することが求められるが、その上で、経営管理会社は、グループ内取引がグループ内の金融機関の健全性等の確保に及ぼす影響を十分に理解した上で、適切な管理態勢を構築する必要がある。

  • (1)グループ内取引の適切性

    グループ内取引の適切性については、以下の着眼点に基づき、検証することとする。

    • マル1グループ内の一部の会社の経営改善を目的として、グループ内の金融機関の業務の健全かつ適切な運営の確保に重大な影響を及ぼす可能性のあるグループ内取引が行われていないか。

    • マル2法令等に違反する、又は法令等の趣旨に鑑み不適切と判断されるような取引がグループ内会社間等で行われていないか。

    • マル3経営管理会社がグループ内の金融機関から受け取る配当、収入等については、当該金融機関の業務の健全かつ適切な運営を損なうようなものとなっていないか。

    • マル4グループ内取引が、グループ内の金融機関からの自己資本や利益の不適切な移転をもたらしていないか。

    • マル5グループ内取引が、グループ外の会社との間では通常同意しないような、又はグループ内の金融機関に不利であるような条件や状況で行われていないか。

    • マル6その他、経営管理会社又はグループ内会社の支払能力、流動性、収益性に悪影響を及ぼし得るようなグループ内取引が行われていないか。

    • マル7グループ内取引が、自己資本その他の規制を回避するための手段として用いられていないか。

  • (2)経営管理会社のグループ内取引管理態勢

    経営管理会社のグループ内取引の管理態勢については、以下の着眼点に基づき、その適切性について検証することとする。

    • マル1経営管理会社の取締役は、グループ内取引はグループ内の金融機関の業務の健全かつ適切な運営の確保に重大な影響を及ぼす可能性があることを認識した上で、そのリスクを特定し、適切に測定、監視、管理するための態勢を整備しているか。また、定量化し得ないリスクや異なる業態の金融機関等が経営統合等を行った場合のグループ内取引の潜在的な規模、量、複雑性の増大にも十分留意しているか。

    • マル2経営管理会社の取締役は、グループ内取引において、利益相反の可能性があることを十分に理解しているか。また、不健全なグループ内取引が行われる可能性があることを十分に理解し、グループ内取引に係る基本方針を明確に策定し、役職員及びグループ内会社に周知しているか。

    • マル3グループ内の金融機関の業務の適切性及び財務の健全性の確保に重大な影響を及ぼす可能性があるグループ内取引をグループ内会社等が行おうとする場合には、事前に経営管理会社の取締役会に協議するなどの規定を整備しているか。

    • マル4監督当局は、金融コングロマリットのグループ内取引のうち、グループ全体の財務に重大な影響を与える可能性のあるものについて、当該取引の実態等の報告を、必要に応じ、経営管理会社又はグループ内会社から求めることとする。

      • (注)グループ内取引とは、金融コングロマリット内において、例えば以下のような多様な方法で発生しうるものである。

        • イ. 株式持合い

        • ロ. あるグループ内会社が他のグループ内会社と取引し、又はあるグループ内会社が他のグループ内会社のために行うトレーディング業務

        • ハ. コングロマリット内の短期流動性の集約的管理

        • ニ. 他のグループ内会社から受け、又はそれに供与する保証、貸付、コミットメント

        • ホ. 管理その他のサービス・アレンジメントの提供

        • へ. 主要株主への信用供与等

        • ト. 顧客資産を他のグループ内会社に委託することによって生じる信用供与等

        • チ. 他のグループ内会社との間での資産購入又は販売

        • リ. 再保険を通じたリスクの移転

        • ヌ. グループ内会社間において第三者に関係するリスク・エクスポージャーを移転するための取引

II -3-3 事務リスク管理態勢

  • マル1経営管理会社の取締役は、組織の複雑化(指揮命令系統の不透明化や複雑な内部取引の発生等)に伴う事務リスクの増大について適切に認識し、所要の権限委譲や責任分掌態勢の明確化とともに、最終管理責任の明確化など、適切な方策を講じているか。

  • マル2経営管理会社の取締役は、定期的にグループ内会社の事務リスクの状況の報告を受け、必要な意思決定を行うなど、把握されたリスク情報を業務の執行及びグループのリスク管理態勢の整備等に活用しているか。

  • マル3経営管理会社においては、経営管理会社自身、又はグループ内会社において不祥事件の発生の原因を分析し、未然防止の観点から各業務部門長に分析結果を還元するとともに、再発防止のための措置を速やかに講じているかを検証する態勢が整備されているか。

  • マル4経営管理会社が、自身の顧客又はグループ内会社の顧客から受けた苦情等については、明確な処理手続きを定め、これに従い内部監査部門等及び当該グループ内会社に報告するとともに、苦情等の内容について記録・保存しているか。

II -3-4 システムリスク管理態勢

  • マル1経営管理会社の取締役会は、コンピュータシステムのネットワーク化の進展等により、リスクが顕在化した場合、その影響が連鎖し、広域化・深刻化する傾向にあるなど、経営に重大な影響を与える可能性があるということを十分踏まえ、グループ全体のリスク管理態勢を整備しているか。

  • マル2経営管理会社においては、グループのシステムに係る戦略目標を定めているか。戦略目標には、情報技術革新を踏まえ、経営戦略の一環としてシステムを捉えるシステム戦略方針を含んでいるか。

  • マル3グループの戦略目標を踏まえた、グループのシステムリスク管理の方針が明確に定められているか。システムリスク管理の方針には、セキュリティポリシー(組織の情報資産を適切に保護するための基本方針)及び外部委託先に関する方針が含まれているか。

II -3-4-1 システム統合リスク管理態勢

金融コングロマリットが形成される過程、又は形成された金融コングロマリットの再編に係る金融機関の合併、事業譲渡、持株会社化、子会社化及び業務提携等(以下「経営統合」という。)がなされる場合において、システムを統合、分割又は新設(システムの共同開発・運営を含む。以下「システム統合」という。)する際には、以下のような着眼点に基づき、システム統合リスク管理態勢を検証することとする。

  • マル1経営管理会社及びシステム統合を行おうとするグループ内の金融機関の取締役(以下「取締役」という。)は、システム統合における事務・システム等の統合準備が不十分なことにより、事務の不慣れ等から役職員が正確な事務を誤り、あるいはコンピュータシステムのダウン又は誤作動等が発生し、その結果、顧客サービスに混乱をきたす、場合によっては金融機関としての存続基盤を揺るがす、さらには決済システムに重大な影響を及ぼす等のリスク(システム統合リスク)の存在を十分に認識しているか。

  • マル2経営管理会社又はシステム統合を行おうとする金融機関においては、システム統合に係る計画・作業を統括管理する役員及び部門(以下「統括役員及び部門」という。)が設置され、システム統合する金融機関間において十分な意思疎通が図られる体制が整備されているか。また、統合に係る業務が外部委託される場合、当該委託先と統括部門との間の意思疎通が十分に図られる体制を整備しているか。

  • マル3取締役会並びに統括役員及び部門は、統合プロジェクトの進捗状況を的確に把握できる体制を整備しているか。また、統合の各段階において経営資源が適切に配分されているか等、統合の段階ごとの進捗について検証を行い、仮に問題点が把握された場合には、それに対し速やかに適切な方策を講じることとしているか。

  • マル4統括役員及び部門は、適切に策定され取締役会の承認を得た業務の移行判定基準(システムの移行判定基準を含む。)に従い、システムを含む統合後の業務運営体制への移行の可否を判断し、取締役会での承認を経て実行することとしているか。

  • マル5レビューやテスト不足が原因で、顧客に影響が及ぶような障害や経営判断に利用されるリスク管理用資料等の重大な誤算が発生しないようなテスト体制を整備しているか。具体的には、工程毎のレビュー実施状況を検証し、品質状況を管理するためのレビュー実施計画や、システム統合に伴う開発内容に適合したテスト計画が策定され、実施するための体制が整備されているか。

  • マル6取締役会並びに統括役員及び部門は、万一、何らかの理由により統合が遅延する等、不測の事態が生じた場合に適切に対応できる体制を整備しているか。具体的には、システム統合が計画に比して遅延した場合にスケジュールを見直す基準が策定された上で取締役会の承認を得ており、それに基づいて適切な対応が図られる体制が整備されているか。

  • マル7既存のコンティンジェンシープランについて、システム統合後のシステムの構成や組織体制に基づいた見直しを行った上で、取締役会の承認を受けているか。

  • マル8システム統合日前後における不測の事態への対応プラン(システム統合の中止を含む。)が策定され、取締役会の承認を得ているか。

  • マル9システム障害等の不測の事態が発生した場合、顧客に対する情報開示や顧客からの問い合わせに、迅速かつ正確に対応できる体制が整備されているか。

  • マル10システム統合を行おうとする金融機関の内部監査部門(以下、「内部監査部門」という。)は、協調して業務監査及びシステム監査を行うことができる体制となっているか。また、システムの開発過程等プロセス監査に精通した要員を確保しているか。

II -3-5 危機管理体制

  • マル1経営管理会社又はグループ内の金融機関においては、グループ内の一会社においてリスクが顕在化した場合、当該会社のみならず、グループ内の一部又はグループ全体に損害が生じる可能性があることが十分に認識され、これに的確に対応できるための体制が整備されているか。

  • マル2危機対応(注)を的確に行うためのグループのコンティンジェンシープランが整備されているか。また、コンティンジェンシープランには、グループ内の報告・伝達体制について明確にされているか。

  • マル3コンティンジェンシープランは、環境の変化等に応じて、適宜見直しているか。また、見直す基準を定めているか。

  • マル4グループ内の金融機関において、コンティンジェンシープランに基づく訓練を実施しているか。

  • マル5リスクが顕在化し、グループ内の金融機関の財務の健全性及び業務の適切性の確保に重大な影響を与える事態が発生した場合を想定し、広報体制等を整備しているか。

  • (注)「危機」とは、例えば、(i)大口与信先の倒産など、そのまま放置すると回復困難になりかねないほど、財務内容が悪化するような事態、(ii)風評等により資金調達環境が急激に変動し、対応が困難なほど流動性に問題が生ずるような事態、(iii)システムトラブルや不祥事件等により信用を著しく失いかねないような事態、のほか、(iv)大規模自然災害や大規模テロなどの災害・事故等により損害を被り、業務の継続的遂行が困難となるような事態、などをいう。

II -3-6 増資

経営管理会社又はグループ内会社の増資の形態には、公募増資、第三者割当増資等があるが、公募増資など証券会社を引受人として行われる増資の場合には、法令等遵守の観点からも相応のチェック機能が働くと考えられる。(注)

しかしながら経営管理会社又はグループ内会社の増資が、取引先等に対し直接に割当てを行う第三者割当増資であって、例えばグループ内の金融機関が関与する場合には、「資本充実の原則」との関係や「優越的な地位の濫用」の防止等、法令等遵守に係る内部管理態勢の確立について、健全性や誠実さ等の観点から、一層の経営努力が払われる必要がある。そのため、以下の着眼点に基づき、その適切性について検証することとする。

(注) 証券会社の引受けに関するルールについては、「有価証券の引受け等に関する規則(日本証券業協会公正慣習規則第14号)」を参照。

  • (1)基本的な経営姿勢

    • マル1経営管理会社の取締役会(以下「取締役会」という。)は、経営管理会社又はグループ内会社の第三者割当増資に関する法令等遵守の重要性を理解し、決定権限や責任の所在の明確化を含むグループ全体の態勢整備を行っているか。

    • マル2取締役会は、単に規則の制定、通知の発出等にとどまらず、グループ内会社の役職員への周知・徹底を確実に図ることとしているか。また、実効性ある監視・牽制機能を構築しているか。

    • マル3取締役会は、会社法、独占禁止法及び金融商品取引法等の法令等に関し、必要に応じ、弁護士や監査法人から文書による意見を求める等、コンプライアンス上万全な対応をとることとしているか。

    • マル4経営管理会社は、経営管理会社自身、あるいはグループ内会社の第三者割当増資にグループ内の金融機関が関与する場合には、当該金融機関においても適切な対応が行われるよう、法令等遵守態勢の整備を図っているか。

  • (2)特に留意すべき事項

    増資に際し遵守すべき全ての法令等に対して、十分なコンプライアンスを確保することとしているか。特に下記の点について、十分な遵守態勢が構築されているか。

    • イ. 割当先名簿の作成及び取得の申込みの勧誘に係る方針は、「資本充実の原則」及び自己資本としての健全性の確保の観点を十分踏まえたものとなっているか。

    • ロ. 以下のような問題のあるケースについての取扱いは、明確にされているか。

      • 財務の実態等を勘案すると、返済能力や意思のない先に、グループ内の金融機関が直接又は迂回して融資等の信用供与を行い、その融資等の信用供与による資金で増資払込みを行わせると疑われるようなケース。特に、グループ内の金融機関及び増資引受先の双方が、仮装の増資を企図していると疑われるようなケース。
      • 増資引受先の株式保有リスクを何らかの形でグループが肩代わりしていると疑われるようなケース。
  • (3)不公正な取引の防止

    • マル1グループにおいて、独占禁止法が禁止している不公正な取引方法に該当する行為(優越的な地位の濫用)の発生を防止する措置が講じられているか。特に、グループ内の金融機関の取引先に対する割当については、不適切な取引を防止する措置が講じられているか。

    • マル2グループにおいて、金融商品取引法が禁止している不公正な取引(インサイダー取引、有利買付け等の表示の禁止等)に該当する行為の発生を防止する措置が講じられているか。

  • (4)適正なディスクロージャーの確保(金融商品取引法等)

    • マル1金融商品取引法に定める増資手続き(有価証券届出書の提出と勧誘行為、目論見書の作成・交付、有価証券届出書の効力発生等)の遵守のための措置が講じられているか。

    • マル2有価証券届出書及び目論見書作成に当たっては、投資家保護上万全を期すような措置が講じられているか。また、真に重要な「リスク情報」を、分かりやすく、かつ、簡潔に開示しているか。

      • 「組込方式」又は「参照方式」の有価証券届出書及び目論見書を作成する場合でも、有価証券届出書の提出日現在の「リスク情報」を記載する必要があることを認識して、対応しているか。
      • 有価証券届出書提出後においても、投資家保護上重要な事実が発生した場合には、訂正届出書を提出する必要があることを認識して、対応しているか。
    • マル3財務内容等について誤認を与えるような表示の防止措置を講じているか。

      • 増資の勧誘に当たって、目論見書(及び有価証券届出書)以外の情報を利用する場合、目論見書の内容と異なる内容となっていないか。
      • 勧誘に当たっての資料が、グループの財務内容について誤認を与えることのないよう、適切な措置を講じているか。
  • (5)商品性の適切な説明等(コンシューマー・コンプライアンス)

    • マル1増資の勧誘等に際しての説明方法及び内容が、民法、金融商品販売法等の観点から、適切なものとなっているかを検証しているか。

    • マル2グループ内の銀行が、預金等との誤認を防止するための以下のような措置を講じていることを把握しているか。

      • 割当先の知識、経験及び財産の状況を踏まえ、書面の交付その他の適切な方法により、預金等との誤認を防止するための説明を行っているか。
      • 誤認防止のための説明内容は、預金等ではないこと、預金保険の対象とはならないこと、元本が保証されていないこと等を含む十分なものとなっているか。
  • (6)遵守状況の事後的な点検体制の整備

    増資手続きの進行に応じて、コンプライアンスの遵守状況について適切な事後点検を行う体制を整備しているか。

II -3-7 顧客情報保護

顧客情報の保護は、個々の金融機関が適切な業務運営を営む上で必須の事項であるが、金融コングロマリットにおいては、グループとしてのシナジー(相乗)効果を図る観点から、顧客情報を相互に活用することが予想される。そのため、各業法及び個人情報保護法等に則り、個人を含む顧客情報の保護が十分図られているかどうかについて確認する必要がある。

特に、グループ内での顧客情報の共有が図られる場合には、以下のような着眼点に基づき、顧客情報管理の適切性を検証することとする。

  • マル1グループ内で顧客情報の相互利用を行う場合、グループとして統一的かつ具体的な取り扱い基準を定めた上で、グループ内会社の役職員に周知徹底しているか。

  • マル2グループ内で個人顧客情報を共同して利用する場合、その旨並びに共同して利用される個人顧客情報の項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的及び当該個人顧客情報の管理について責任を有する者の氏名又は名称について、あらかじめ、当該個人顧客情報によって識別される特定の個人に通知し、又は当該特定の個人が容易に知り得る状態に置いているか。

  • マル3上記マル2の対応を行っていない場合であって、グループ内で個人顧客情報を共同利用しようとする場合には、個人情報保護法第23条第1項各号、第2項、第4項第1号及び第2号に掲げる場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ることとしているか。また、同意を得ずにグループ内会社間等で個人顧客情報の流用等が生じた場合、漏洩事案として的確に認識され、顧客及び当局への報告を含む対応を速やかに図るための態勢が整備されているか。

  • マル4経営管理会社が単体で個人情報保護法第2条第3項に規定する個人情報取扱事業者に該当する場合、個人情報保護法を遵守する態勢が整備されているか。特に、経営管理会社が金融分野における個人情報保護に関するガイドライン第1条に規定する金融分野における個人情報取扱事業者に該当する場合、当該ガイドライン及び金融分野における個人情報保護に関するガイドラインの安全管理措置等についての実務指針の規定に基づく適切な措置が講じられているか。

  • マル5グループ内において個人顧客に関する非公開個人情報(注)を利用する場合、金融分野における個人情報保護に関するガイドライン第6条第1項各号に列挙する場合を除き、利用しないことを確保するための措置が講じられているか。

    • (注) 非公開個人情報とは、以下の情報をいう。

      • 信条(政治的見解、信教、宗教及び思想を含む)に関する情報
      • 労働組合への加盟に関する情報
      • 人種及び民族、門地及び本籍地に関する情報
      • 保健医療に関する情報
      • 性生活に関する情報
      • 犯罪歴に関する情報
  • マル6顧客情報が漏洩、滅失又は毀損した場合に、当局への報告が迅速かつ適切に行われる態勢が整備されているか。

II -3-8 顧客の利益の保護のための体制整備

利益相反の弊害は、同一グループ内の親会社・子会社・兄弟会社・関連会社のいずれとの間でも起こり得る問題である。また、情報管理態勢が整備されていることを前提に、同一グループ内での情報共有範囲が拡大されたことを踏まえ、従前以上に利益相反管理の重要性を認識し、適切な経営管理態勢を構築する必要がある。

したがって、グループ内における利益相反による弊害を防止するため、自己責任に基づく規律付けをもって内部管理を行う必要がある。なお、利益相反を管理するためのルール等は、金融機関が自主的な努力により適切な経営管理態勢やコンプライアンス態勢を構築することによって、有効に機能するものであることに留意する必要がある。

また、利益相反管理態勢を整備するにあたっては、経営管理会社又はグループ内会社の営む業務内容や規模、特性等を勘案するとともに、レピュテーショナル・リスクについても配慮する必要がある。

  • (1)利益相反のおそれがある取引の特定等

    • マル1利益相反のおそれがある取引をあらかじめ特定・類型化するとともに、継続的に評価する態勢を整備しているか。

    • マル2利益相反を特定するプロセスは、経営管理会社又はグループ内会社の業務活動の内容、規模・特性を反映したものとなっているか。

      また、新規の業務活動や、法規制・業務慣行の変更等に的確に対応し得るものとなっているか。

  • (2)利益相反管理の方法

    利益相反の特性に応じ、例えば以下のような管理方法を選択し、又は組み合わせることができる体制(社内規則を含む)が整備され、定期的に管理方法の検証が行われているか。

    • マル1部門間の分離

      情報共有先の制限を行うにあたっては、利益相反を発生させる可能性のある部門間において、システム上のアクセス制限や物理的な遮断を行う等、業務内容や実態を踏まえた適切な情報遮断措置が講じられているか。

    • マル2一方の取引の中止又は取引条件若しくは方法の変更

      一方の取引の中止等を行うにあたり、経営管理会社又はグループ内会社の間で、権限及び責任体制を明確にしているか。

    • マル3利益相反事実の顧客への開示

      顧客に利益相反の事実を開示する場合には、利益相反の内容、開示する方法を選択した理由(他の管理方法を選択しなかった理由を含む)等を明確かつ公正に書面等の方法により開示した上で顧客の同意を得るなど、顧客の公正な取扱いを確保する態勢となっているか。また、開示内容の水準は対象となる顧客の属性に十分に適合したものとなっているか。

  • (3)利益相反管理方針の策定、及びその概要の公表

    • マル1利益相反管理方針には、利益相反の特定方法、類型、管理体制(役職員の責任・役割等を含む)や管理方法、管理対象の範囲等が明確化されているか。また、当該管理方針は、経営管理会社又はグループ内会社の営む業務活動の内容や規模及び複雑さが十分に反映されているか。

    • マル2利益相反管理方針の概要を公表するに際しては、利益相反管理方針の趣旨が明確に現れているものとなっているか。また、公表方法は、例えば、店頭でのポスター掲示やホームページへの掲載等、顧客等に対して十分に伝わる方法となっているか。

  • (4)利益相反管理態勢等

    • マル1利益相反を管理・統括する部署(以下「利益相反管理統括部署」という。)をグループ内に設置するなど、利益相反を一元的に管理できる態勢となっているか。

    • マル2利益相反管理統括部署は、独立性が確保され、十分な牽制が働く態勢となっているか。また、利益相反管理態勢の構築や役職員の意識の向上に努める等の役割を果たし、定期的に利益相反管理態勢の検証を行っているか。

    • マル3利益相反のおそれがある取引を特定するプロセス、管理・統括部署の権限・責任の範囲の明確化、顧客管理の方法等を定めた社内規則を整備しているか。

    • マル4研修・教育等により、利益相反管理方針の内容を役職員に周知徹底させる態勢を確保しているか。

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