III  監督に係る事務処理上の留意点

III -1 関係部局との連携強化

III -1-1 監督部局(監督局担当課又は財務局金融監督担当課)内における連携確保

金融コングロマリットの監督を行うに当たっては、経営管理会社又はグループ内の金融機関の監督権限を有する各部局が適切に情報交換等を行うことにより、単独の業態からの監督では捉えきれないグループとしてのリスクの存在や、問題意識等の共有を図る必要がある。そのため、経営管理会社又はグループ内の金融機関を監督する各部局間及び各部局とコングロマリット室の間で、適宜適切な情報提供を行うとともに、積極的に意見交換を行うことで、連携を強化することとする。

特に、経営管理会社又はグループ内の一の金融機関に対して、業務改善命令等の監督上の厳正な対応を検討している部局においては、コングロマリット室及び他のグループ内会社を監督する部局との連携に十分留意することとする。

III -1-2 検査部局との連携確保

監督部局及び検査部局(金融コングロマリットに金融商品取引業者が含まれる場合の、証券取引等監視委員会を含む。)が、それぞれの独立性を尊重しつつ、適切な連携を図り、オンサイトとオフサイトの双方のモニタリング手法を適切に組み合わせることで、実効性の高い金融コングロマリット監督を実現することが重要である。このため、監督部局においては、検査部局との連携について、以下の点に十分留意することとする。

  • (1)検査を通じて把握された金融コングロマリットの問題点については、監督部局は改善状況をフォローアップし、必要に応じて業務改善命令等の監督上の厳正な対応を図り、その是正につなげていくよう努めること。

    具体的には、例えば

    • イ. 検査結果通知書を踏まえ、金融コングロマリット監督上の必要性に応じ、経営管理会社又はグループ内会社に対し、法令等に基づき、当該通知書において指摘された事項についての事実確認、発生原因分析、改善・対応策、その他をとりまとめた報告書の提出を求めるものとする。

    • ロ. 上記イ.の報告書が提出された段階で、経営管理会社又はグループ内の金融機関から十分なヒアリングを行うものとする。ヒアリングにあたっては、検査部局とも緊密な連携を図るものとする。

    • ハ. 検査結果及びイ.報告書の内容等により、グループとしての法令遵守態勢又はリスク管理態勢の改善に一定の期間を要すると認められる場合、法令等に基づき次回検査までの間定期的に報告を求めるものとする。

  • (2)監督部局がオフサイト・モニタリングを通じて把握したグループの問題点については、次回検査においてその活用が図られるよう、検査部局に還元すること。

    具体的には、監督部局(財務局検査の場合には財務局金融監督担当課、金融庁検査局又は証券取引等監視委員会の検査の場合には監督局コングロマリット室)は、検査部局に対し、以下のような金融コングロマリットの現状等についての説明を行うものとする。

    • イ. 前回検査から当該時点までのグループの主な動き(提携、増資、経営陣の交替等)

    • ロ. 合併等の経営再編に伴うシステム統合等を予定しているグループについては、経営再編のスケジュール等

    • ハ. 直近の連結決算等の分析結果

    • ニ. リスク情報等に係るオフサイト・モニタリングに関する分析結果

    • ホ. ヒアリングの結果

    • へ. 経営管理会社又はグループ内会社に対する監督上の措置(報告徴求、行政処分等)の発動及びフォローアップの状況

    • ト. コングロマリット監督の観点から検査で重視すべきと考える点

    • チ. その他

III -1-3 検査・監督連携会議の開催

金融コングロマリットに対して実効性の高い監督を実現するために、監督局・検査局・証券取引等監視委員会事務局の連携会議を開催することとする。本会議は、原則として事務年度の開始に当たり開催する他必要に応じて適宜開催することとする。

本会議においては、金融コングロマリットに対する検査、監督上の問題点など、必要な事項について意見交換等を行うこととする。

III -1-4 海外監督当局との連携確保

海外監督当局に対して、海外当局による金融コングロマリット監督に資する情報を提供するとともに、積極的な意見交換の働きかけを行うこととする。具体的には、以下のような措置を講じることで、連携を確保することとする。

  • (1)経営管理会社が我が国の法令に準拠して設立された法人である場合

    国際的に活動する金融コングロマリットにおいて、その経営管理会社が我が国の法令に準拠して設立された法人であり、外国に海外拠点を持つ場合には、以下のような措置を講じ、海外当局との連携を図ることとする。

    • マル1海外当局から海外拠点の設置等に関する許認可等についての意見照会等があった場合には、これに積極的かつ適切に対応することとする。

    • マル2海外当局からの情報提供の要望があった場合には、経営管理会社あるいはグループの財務の健全性及び業務の適切性等に関する積極的な情報提供を行うこととする。

    • マル3海外拠点の業務に重大な影響を及ぼすコングロマリット監督政策については、海外現地当局へ通知するよう努めることとする。また、海外拠点に影響を与えるような措置を実施する場合には、事前に海外現地当局と協議するよう努めることとする。

  • (2)経営管理会社が外国持株会社等である場合

    国際的に活動する金融コングロマリットにおいて、経営管理会社が外国持株会社等であり、我が国に国内拠点を持つ場合には、以下のような措置を講じ、海外当局との連携を図ることとする。

    • マル1金融コングロマリットの国内拠点の設置について許認可等を付与する場合、経営管理会社の所在地当局である海外当局からの同意を求めるよう努めることとする。海外当局からの積極的な応答が得られない場合や応答が不適切な場合には、必要に応じ、当該許認可等の付与を拒絶するか、許認可等に条件を付すこととする。

    • マル2海外当局に報告する必要があると思われる金融コングロマリット監督上の問題点を発見した場合、あるいは国内拠点から経営管理会社への不正確な情報の伝達を発見した場合には、海外当局への積極的な連絡を行うこととする。

    • マル3本監督指針に掲げられる監督上の留意点に関して、海外にある経営管理会社に対して何らかの是正措置を講じる必要があると認められる場合には、海外監督当局に事前に通知し、協力を図ることに努めることとする。

    • マル4国内にあるグループ内会社に行政処分を発動する場合には、海外監督当局との情報交換等を行い、連携強化に努めることとする。

    • マル5国内拠点が海外当局の連結監督の対象となっていない場合、当該国内拠点については、現地監督当局として検査・監督を厳格に実施するものとする。

III -2 意見交換制度

経営管理会社又はグループ内の金融機関等に対する報告徴求に係るヒアリング等の過程において、経営管理会社又はグループ内会社に対して不利益処分が行われる可能性が高いと認識した経営管理会社から、監督当局の幹部(注1)と当該経営管理会社の幹部との間の意見交換の機会の設定を求められた場合(注2)であって、監督当局が当該経営管理会社又はグループ内会社に対して聴聞又は弁明の機会の付与を伴う不利益処分を行おうとするときは、緊急に処分をする必要がある場合を除き、聴聞の通知又は弁明の機会の付与の通知を行う前に、行おうとする不利益処分の原因となる事実及びその重大性等についての意見交換の機会を設けることとする。

  • (注1)監督当局の幹部の例:金融庁・財務局等の担当課室長

  • (注2)経営管理会社からの意見交換の機会の設定の求めは、監督当局が、当該不利益処分の原因となる事実についての法律に基づく報告書等を受理したときから、聴聞の通知又は弁明の機会の付与の通知を行うまでの間になされるものに限る。

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