I .基本的考え方

I −1 保険監督に関する基本的考え方

I −1−1 保険監督の目的と監督部局の役割

保険監督の目的は、保険業の公共性にかんがみ、保険業を行う者の業務の健全かつ適切な運営及び保険募集の公正を確保することにより、保険契約者等の保護を図り、もって国民生活の安定及び国民経済の健全な発展に資することにある。

我が国の保険監督システムは、いわゆる「オンサイト」と「オフサイト」の双方のモニタリング手法から構成されているが、これは、それぞれのモニタリング手法を適切に組み合わせることで、実効性の高い保険監督を実現するためである。行政組織上は、前者を検査部局が、後者を監督部局が担当しているが、両部局が適切な連携の下に、それぞれの機能を的確に発揮することが求められる。

このような枠組みの中で、監督部局の役割は、検査と検査の間の期間においても、継続的に情報の収集・分析を行い、保険会社の業務の健全性や適切性に係る問題を早期に発見するとともに、必要に応じて行政処分等の監督上の措置を行い、問題が深刻化する以前に改善のための働きかけを行っていくことである。

具体的には、保険会社に対して定期的・継続的に経営に関する報告を求める等により、保険会社の業務の状況を常に詳細に把握するとともに、保険会社から徴求した各種の情報の蓄積及び分析を迅速かつ効率的に行い、経営の健全性の確保等に向けた自主的な取組みを早期に促していくことが、監督部局の重要な役割といえる。

I −1−2 保険監督にあたっての基本的考え方

上記を踏まえると、保険監督にあたっての基本的考え方は次のとおりである。

  • (1)検査部局との適切な連携の確保

    監督部局と検査部局が、それぞれの独立性を尊重しつつ、適切な連携を図り、オンサイトとオフサイトの双方のモニタリング手法を適切に組み合わせることで、実効性の高い保険監督を実現することが重要である。このため、監督部局においては、検査部局との連携について、以下の点に十分留意することとする。

    • マル1検査を通じて把握された問題点については、監督部局は、問題点の改善状況をフォローアップし、その是正につなげていくよう努めること。また、必要に応じて、行政処分等厳正な監督上の措置を講じること。

    • マル2監督部局がオフサイト・モニタリングを通じて把握した問題点については、次回検査においてその活用が図られるよう、検査部局に還元すること。

  • (2)保険会社との十分な意思疎通の確保

    保険監督にあたっては、保険会社の経営に関する情報を的確に把握・分析し、必要に応じて、適時適切に監督上の対応につなげていくことが重要である。このため、監督部局においては、保険会社からの報告に加え、保険会社との健全かつ建設的な緊張関係の下で、日頃から十分な意思疎通を図り、積極的に情報収集する必要がある。具体的には、保険会社との定期的な面談や意見交換等を通じて、保険会社との日常的なコミュニケーションを確保し、財務情報のみならず、経営に関する様々な情報についても把握するよう努める必要がある。

  • (3)保険会社の自主的な努力の尊重

    監督当局は、私企業である保険会社の自己責任原則に則った経営判断を、法令等に基づき検証し、問題の改善を促していく立場にある。保険監督にあたっては、このような立場を十分に踏まえ、保険会社の業務運営に関する自主的な努力を尊重するよう配慮しなければならない。

  • (4)効率的・効果的な監督事務の確保

    監督当局及び保険会社の限られた資源を有効に利用する観点から、監督事務は効率的・効果的に行われる必要がある。したがって、保険会社に報告や資料提出等を求める場合には、監督事務上真に必要なものに限定するよう配意するとともに、現在行っている監督事務の必要性、方法等については、常に点検を行い、必要に応じて改善を図るなど、効率性の向上を図るよう努めなければならない。

    既報告や資料提出等については、保険会社の事務負担軽減等の観点を踏まえ、年1回定期的に点検を行う。その際、保険会社の意見を十分にヒアリングするとともに、検査局等との適切な連携に留意する。

I −2 監督指針策定の趣旨

保険業法(以下、「法」という。)は、保険業の公共性にかんがみ、保険業を行う者の業務の健全かつ適切な運営及び保険募集の公正を確保することにより、保険契約者等の保護を図り、もって国民生活の安定及び国民経済の健全な発展に資することを目的としている。さらに、高齢化・少子化の時代を迎え、保険は、社会保障において公的部門を補完する役割を果たすものとなっており、また、eリスク、土壌汚染リスク等新たなリスクの増大に伴って、企業活動等における多様なリスクに対応する手段としての機能が拡大している。

このような状況のなかで、多様化、高度化する消費者ニーズに柔軟に応えられる商品開発、価格設定が行われる環境を整備することが求められる。また、保険契約者等が多様なチャネルを通して、適切かつ十分な情報に基づいて、保険商品を購入できる環境を整備することも求められる。そのため、業務上の規制・慣行を保険業法の目的に照らし常に見直していくことが求められる。また、保険会社のコンプライアンスを更に徹底していくことが求められる。

このような趣旨に基づき、本監督指針においては、保険会社の監督事務に関し、その基本的考え方、監督上の評価項目、事務処理上の留意点について、従来の事務ガイドラインの内容も踏まえ、体系的に整理した。

本監督指針は、保険会社の実態を十分に踏まえ、様々なケースに対応できるように作成したものであり、本監督指針に記載されている監督上の評価項目の全てを各々の保険会社に一律に求めているものではない。

従って、本監督指針の適用にあたっては、各評価項目の字義通りの対応が行われていない場合であっても、保険会社の財務の健全性及び業務の適切性等の確保の観点から問題のない限り、不適切とするものではないことに留意し、機械的・画一的な運用に陥らないように配慮する必要がある。一方、評価項目に係る機能が形式的に具備されていたとしても、保険会社の財務の健全性又は業務の適切性等の確保の観点からは必ずしも十分とは言えない場合もあることに留意する必要がある。

なお、監督指針の策定に伴い、事務ガイドライン(第二分冊:保険会社関係)は、廃止することとする。