IV. 監督上の評価項目と諸手続(第一種金融商品取引業)

IV-4 諸手続(第一種金融商品取引業)

IV-4-1 登録

  • (1)商号

    申請に係る商号が金商法第29条の4第1項第6号ロに抵触しないか確認するため、申請書を受理した財務局は、必要に応じて金融庁又は他の財務局に照会するものとする。

  • (2)体制審査の項目

    金商法第29条の4第1項第1号ホに規定する金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者であるか否かの審査にあたっては、登録申請書、同添付書類及びヒアリングにより次の点を確認するものとする。なお、金商法第29条の4第1項第1号ヘに規定する金融商品取引業を適確に遂行するための必要な体制が整備されていると認められない者であるか否かについても、以下の事項を確認することを通じて審査するものとする。

    • マル1その行う業務に関する十分な知識及び経験を有する役員又は使用人の確保の状況及び組織体制として、以下の事項に照らし、当該業務を適正に遂行することができると認められるか。

      • イ. 経営者が、その経歴及び能力等に照らして、金融商品取引業者としての業務を公正かつ的確に遂行することができる十分な資質を有していること。

      • ロ. 常務に従事する役員が、金商法等の関連諸規制や監督指針で示している経営管理の着眼点の内容を理解し、実行するに足る知識・経験、及び金融商品取引業の公正かつ的確な遂行に必要となるコンプライアンス及びリスク管理に関する十分な知識・経験を有すること。

      • ハ. 常勤役職員の中に、その行おうとする第一種金融商品取引業の業務を3年以上経験した者が複数確保されていること。

      • ニ. 行おうとする業務の適確な遂行に必要な人員が各部門に配置され、内部管理等の責任者が適正に配置される組織体制、人員構成にあること。(特に元引受け業務を行う際には当該業務を公正かつ的確に遂行することができる態勢・人員を確保すること。)

      • ホ. 営業部門とは独立してコンプライアンス部門(担当者)が設置され、その担当者として知識及び経験を有する者が確保されていること。

      • ヘ. 行おうとする業務について、次に掲げる体制整備が可能な要員の確保が図られていること。

        • a. 帳簿書類・報告書等の作成、管理

        • b. ディスクロージャー

        • c. 顧客資産の分別管理

        • d. リスク管理

        • e. 電算システム管理

        • f. 売買管理、顧客管理

        • g. 広告審査

        • h. 顧客情報管理

        • i. 苦情・トラブル処理

        • j. 内部監査

    • マル2暴力団又は暴力団員との関係その他の事情として、以下の事項を総合的に勘案した結果、役員又は使用人のうちに、業務運営に不適切な資質を有する者があることにより、金融商品取引業の信用を失墜させるおそれがあると認められることはないか。

      • イ. 本人が暴力団員であること(過去に暴力団員であった場合を含む。)。

      • ロ. 本人が暴力団と密接な関係を有すること。

      • ハ. 金商法等我が国の金融関連法令又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたこと。

      • ニ. 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定(同法第32条の2第7項の規定を除く。)若しくはこれに相当する外国の法令の規定に違反し、又は刑法若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたこと。

      • ホ. 禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたこと(特に、刑法第246条から第250条まで(詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺、恐喝及びこれらの未遂)の罪に問われた場合に留意すること。)。

        • (注)なお、金融商品取引業者の主要株主における上記マル2イからホまでの事項等を総合的に勘案した結果、当該主要株主がその影響力を不当に行使することで、結果的に金融商品取引業の信用を失墜させるおそれがあると認められる場合も、当該金融商品取引業者は「金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない」と認められる可能性があることに留意する必要がある。

  • (3)業務の内容及び方法を記載した書類等

    • マル1個人向けの通貨関連店頭デリバティブ取引及び有価証券関連店頭デリバティブ取引を取扱う場合は、業務の内容及び方法を記載した書類において、業として行うデリバティブ取引の種類の欄にその旨が明確に記載されていることを確認するものとする。

    • マル2電子取引基盤運営業者が、金商法第40条の7第2項に基づく公表に関し、公表業務を外部委託する場合には、金商業等府令第8条第6号ト(8)「法第四十条の七第二項に基づく公表を行う方法」において、その旨及び外部委託先が記載されていることを確認するものとする。

    • マル3商品関連市場デリバティブ取引を取扱う場合は、業務の内容及び方法を記載した書類において、勧誘受諾意思の確認に係る社内手続き・ルールが設けられ、その履行状況を事後検証できる態勢が整備されていることを確認するものとする。

    • マル4暗号等資産関連店頭デリバティブ取引を取扱う場合は、金商業等府令第9条第10号に基づき、暗号等資産及び金融指標の概要を説明した書類(③において「概要説明書」という。)を登録申請書に添付することが求められるが、添付すべき概要説明書の内容は、金融商品取引業協会が別に公表する様式等に準拠するものとする。

      (注)概要説明書は、新たに暗号等資産関連店頭デリバティブ取引の対象とする暗号等資産等を事前に届け出る際においても必要となることに留意する。

  • (4)金融商品取引業者登録簿の認可事項欄

    金融商品取引業者登録簿の認可事項欄には、金商法第30条第1項の認可を行った旨を記載する。また、本庁は、本庁監理金融商品取引業者に対して認可を行った場合は、1ヵ月分を取りまとめて翌月15日までに、当該金融商品取引業者の登録を行った財務局に対して通知するものとする。

  • (5)金融商品取引業協会に加入する予定がない業者に係る留意事項

    登録申請時において金融商品取引業協会に加入する予定がない業者に対しては、以下の事項を通知し、適切な対応を求めることとする。

    • マル1登録後に、協会規則に準ずる内容の社内規則を作成していない又は当該社内規則を遵守するための体制を整備していない場合はIV-3-7に準じた監督上の対応がとられること。

    • マル2協会規則に改正等があった場合にそれに応じて社内規則の見直しを行わない場合には、上記マル1に該当する場合があること。

  • (6)新規登録申請に係る留意事項

    新規に登録を申請する業者に対しては、原則として、以下の書類の提出を求めることにより、登録拒否要件等に該当しないかを確認することとする。

    なお、疎明資料のうち金融機関が発行する預金等の残高証明書については、原本によるものとする。

    • マル1純財産額(金商法第29条の4第1項第5号ロに規定する純財産額をいう。)を算出した書面の疎明資料

    • マル2金商法第29条の4第1項第6号イに規定する比率を算出した書面の疎明資料

    • マル3直近月の純財産額及び自己資本規制比率を算出した書面の疎明資料

    • マル4通貨関連デリバティブ取引等(金商業等府令第143条第3項に規定する通貨関連デリバティブ取引等をいう。)を業務として行おうとする業者については、金銭の区分管理を行うため信託会社又は信託業務を営む金融機関に開設した信託口座に係る信託契約書の写し又はそれに準ずる書面

IV-4-2 承認及び届出等

IV-4-2-1 認可

私設取引システム(Proprietary Trading System;PTS)は取引所類似の機能を有しており、そのためこれを運営する業務は、金商法においても旧証券取引法から引き続き認可制を維持することとされた。こうしたことを踏まえ、金商法第2条第8項第10号に規定する業務の認可については、以下の留意事項を踏まえて検討することが必要である。

  • マル1私設取引システムに該当するか否かを判断する際には、次の点に留意するものとする。

    • イ. 取引所金融商品市場又は店頭売買有価証券市場における有価証券の売買の取次ぎを行い、又は他の単一の金融商品取引業者に有価証券の売買の取次ぎを行うシステムについては、私設取引システム及び取引所金融商品市場等に該当しないものとする。

      • (注)例えば、金商業等府令第70条の2第7項に規定する価格その他の取引の条件の決定又はこれに類似する行為を行うものを使用して行う同項に規定する取次ぎは、基本的に、私設取引システム及び取引所金融商品市場等に該当しない。一方、当該取次ぎであっても、システム内で注文の集約又は相殺等を行うような場合は、私設取引システム又は取引所金融商品市場等に該当する可能性がある。

    • ロ. 顧客との間で有価証券の売買を行う自己対当売買のシステムであっても、多数の注文による有価証券の需給を集約した提示気配に基づき売買を成立させていくものについては、私設取引システム又は取引所金融商品市場等に該当する場合がある。

    • ハ. 株価や金融情報を提供している金融商品取引業者や情報ベンダーについても、複数の金融商品取引業者等が提示している気配に一覧性があり(気配の競合)、専用情報端末の配布や注文・交渉のためのリンク等の設定をはじめとする取引条件に係る合意手段が提供されている場合には、金融商品取引業(媒介)に該当し、かつPTS業務の認可を併せて要することに留意する。

  • マル2当該業務の認可に当たっては、次の点に留意するものとする。

    • イ. 内部管理

      当該業務に係る内部管理の態勢について、次の事項が整備されているか。

      • a. 当該業務を管理する責任者が有価証券関連業務の経験を原則として5年以上有する者であり、当該業務を行う部署が業務の遂行に必要な組織及び人員配置となっていること。

      • b. 当該業務において犯収法に基づく取引時確認を的確に実施する方法が確立していること。

      • c. 当該業務において、インサイダー取引、相場操縦、作為的相場形成、空売り規制に抵触することとなる空売り等の取引の公正を害する売買等を排除する方法及び態勢が確立していること。また、当該方法及び態勢が、金商業等府令第17条第13号に規定する「取引の公正の確保に関する重要な事項」として、認可に係る業務の内容及び方法に記載されていること。

      • d. 当該業務において特定投資家向け有価証券を取扱う場合は、金商法第40条の4において制限されている取引を禁止する方法及び態勢が確立していること。また、この場合においては当該事項が金商業等府令第17条第5号に規定する「顧客との取引開始基準及び顧客の管理方法」として認可に係る業務の内容及び方法に記載されていること。

      • e. 当該業務に関し、金商法等の法令及び諸規則に則った社内規則が整備されていること。

      • f. 当該業務において金融商品取引業者が信用取引を取扱う場合は、以下の措置が講じられていること。

         i)当該金融商品取引業者やそのグループ会社等が実質的な資金・株券の提供者とならない等、利益相反防止の観点からの適切な措置

         ii)日本証券業協会の自主規制規則を踏まえ、当該業務における信用取引の取扱いに係る規則を整備するとともに、当該整備した規則を当該業務における信用取引に参加する者に遵守させること等を通じて、当該業務における信用取引の取扱いに関し、金融商品取引所における信用取引に係る自主規制機能と同等の措置

    • ロ. 顧客への説明義務等

      当該業務に係る顧客への説明に当たり、次の事項について、事前に十分な説明を行うことのできる体制が整備されているか。

      • a. 売買価格の決定方法

      • b. 注文から約定及び決済に至るまでの取引ルール

      • c. 決済不履行の場合の取扱い

      • d. 提示された価格による約定可能性

    • ハ. システムの容量等の安全性・確実性の確保

      当該業務に係るシステムの容量等の安全性・確実性の確保について、次の事項が整備されているか。

      • a. 将来の注文、約定等の件数を合理的に見込み、それに見合ったシステムの容量を確保すること。

      • b. 上記見込みに基づいて、十分なテストを実施すること。

      • c. システムの容量の超過や障害等について、その発生を防止し、かつ、早期に発見するための監視手法及びその態勢が確立されていること。

      • d. システムの異常発生時における対処方法(顧客への説明・連絡方法等)及びその体制が確立されていること。

      • e. システムが二重化(バックアップ)されていること。

      • f. 上記事項について、第三者(外部機関)の評価を受け、システムの容量等の安全性・確実性が確認されていること。

    • ニ. 取引情報の機密保持のための予防措置

      当該業務に係る顧客の取引情報の機密の保持について、次の事項を含む十分な方策が講じられているか。

      • a. 当該業務部門とその他の部門で、業務に従事する者を明確に区別すること。

      • b. 当該業務に従事する者がその他の業務に関する情報を利用して当該業務を行い、又はその他の業務に従事する者が当該業務に関する情報を利用してその他の業務を行うことが禁止されていること。

      • c. 顧客の取引情報について、外部に漏洩しない措置が的確に講じられていること。

      • d. 上記方策について、社内規則が整備されていること。

  • マル3当該業務の認可に際しては、次に掲げる条件を付すものとする。

    • イ. 価格情報等の外部公表(当該業務において株券等(金融商品取引業協会等に関する内閣府令第14条各号に規定する有価証券をいう。)を対象とする場合に限る。)「当該私設取引システムの最良気配・取引価格等を他の私設取引システムと比較可能な形で、リアルタイムで外部から自由にアクセスすることが可能な方法により公表すること。

      ただし、他の私設取引システムと比較可能な形での公表形態が整うまでの間は、外部から自由にアクセスすることが可能な方法により公表すること。」

    • ロ. 取引量に係る数量基準

      取引量に係る数量基準には私設取引システムの取引量の数値を用いる。ただし、当該私設取引システムが属する私設取引システムネットワーク(私設取引システム及び当該私設取引システムにおける注文を電子情報処理組織を使用して他の私設取引システムにおける注文との間で約定させることができる場合の当該他の私設取引システムで構成されるネットワークをいう。)における取引量をもって算定した数値についても、数量基準に抵触しないよう留意する必要がある。

      • a. 競売買以外の方法により価格決定を行う私設取引システム業務において株券又は新株予約権付社債券(金融商品取引所に上場されているもの又は金商法第67条の11第1項の規定により登録を受けたものに限る。)を対象とする場合

        「1 過去6ヵ月において、株券及び新株予約権付社債券(金融商品取引所に上場されているもの及び金商法第67条の11第1項の規定により登録を受けたものに限る。)の一日平均売買代金のすべての取引所金融商品市場及び店頭売買有価証券市場における売買代金の合計額に対する比率が、個別銘柄いずれかについて10%以上、かつ、当該株券及び新株予約権付社債券全体について5%以上となった場合には、次の措置を講ずること。
        • 取引の公正性を確保するため、売買管理及び審査を行う態勢(組織及び人員)を拡充・整備すること。

        • 決済履行の確実性を確保するため、金融商品取引所における違約損失準備金制度と同様の制度を整備すること。

        • システムの容量等の安全性・確実性を確保するため、十分なチェックを定期的に行うこと。

         過去6ヵ月において、当該比率が、個別銘柄いずれかについて20%以上、かつ、当該株券及び新株予約権付社債券全体について10%以上となった場合には、金融商品市場開設の免許の取得を行うこと。
         これらの他、取引量の拡大等に対応して、公益又は投資者保護のため必要があるときは、その限度において、新たな基準を設けることがある。」
      • b. その他の場合

        「取引量の拡大等に対応して、公益又は投資者保護のため必要があるときは、その限度において、新たな基準を設けることがある。」

    • ハ. 取引量に係る報告

      • a. 競売買の方法により価格決定を行う私設取引システムの場合、

        「金融商品取引業者は、金商法施行令第1条の10第1号及び第2号に定める比率等について、毎月末現在の状況を翌月20日までに、当該金融商品取引業者を所管する金融庁長官又は財務局長宛てに報告すること。」

        • (注)金商法施行令第1条の10第1号及び第2号に規定する私設取引システムに係る「総取引高」については、上記「ロ.取引量に係る数量基準」ただし書に基づき算定した数値についても報告を求めることとする。

      • b. 競売買以外の方法により価格決定を行う私設取引システムの場合、

        「金融商品取引業者は、上記ロa1及び2に定める比率等について、毎月末現在の状況を翌月20日までに、当該金融商品取引業者を所管する金融庁長官又は財務局長宛てに報告すること。」

    • ニ. 「公益又は投資者保護のため必要があるときは、その限度において、新たな条件を付すことがある。」

  • マル4当該業務の認可の後、監督上の対応においては、次の点に留意するものとする。

    • イ. 認可条件が充足されているかどうかについては、取引高等について報告書等により確認すること。

    • ロ. 認可の際に審査した諸方策についての履行状況について、必要に応じ、報告徴求等により確認すること。

    • ハ. 認可後、売買価格の決定方法、受渡しその他の決済の方法を始めとする業務の方法等を変更しようとする場合には、速やかに変更認可申請を行うよう求めること。

IV-4-2-2 承認

  • (1) 金商法第35条第4項の規定に基づくその他業務の承認に当たっては、次の点に留意するものとする。

    • マル1当該業務が関係する法令に抵触するものとなっていないか。

    • マル2当該業務に係る損失の危険相当額の算定方法が妥当と認められるものであり、算定された損失の危険相当額が承認を申請する金融商品取引業者の自己資本規制比率に適切に反映されることとなっているか。

    • マル3当該業務の損失の危険相当額の算定及び管理を行う部署が営業部門から独立しているか。

    • マル4顧客との契約締結等を伴う業務については、当該契約締結等に当たって投資者保護に必要な方策等が具体的に整備されているか。

    • マル5当該業務に係る社内規則が整備されているか。

    • マル6申請する金融商品取引業者の自己資本規制比率が140%以上となっているか。     

  • (2) 暗号等資産の預託等に係る留意事項

    金商法第2条の2に基づき、暗号等資産は、有価証券の売買に係る金銭とみなされるが、金融商品取引業者が有価証券の売買に関連して、顧客から暗号等資産の預託等を受ける場合であっても、金融商品取引業に付随する業務とはいえないときは、金商法第35条第4項の規定に基づくその他業務の承認を要する点に留意する。

IV-4-2-3 届出

金商法に定める各種届出の受理又は処理に関しては、以下の点に留意して取り扱うこととする。特に、金商法第35条第2項に規定する業務の届出の受理に当たっては、当該業務を規制する法令上必要となる手続きがとられているか留意するほか、次の業務については、その内容及び方法等が次の内容に合致するものとなっているか留意するものとする。この場合において、書面の交付又は書面による手続については、当該書面の交付等に代えて、顧客の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により提供することができるものとする。なお、合致しない業務については、金商法第35条第4項の規定による承認申請を行わせるものとする。

  • (1)民法第667条に規定する組合契約の締結又はその媒介、取次ぎ若しくは代理に係る業務及び商法第535条に規定する匿名組合契約の締結の媒介、取次ぎ若しくは代理に係る業務(金商法第2条第8項第9号に掲げる行為を行う業務を除く。)

  • 金融商品取引業者又は金融商品取引業者の役員若しくは使用人は、顧客に対し組合契約の締結等の勧誘を行うに当たっては、契約内容につき十分な説明を行うとともに、顧客の意向、当該組合に関する知識及び経験並びに資力及び資金の性質等に応じた適正な勧誘が行われているか。また、契約の締結に当たっては、当該契約内容に関し、書面を作成し顧客に交付しているか。

  • (2)貸出参加契約の締結又はその媒介、取次ぎ若しくは代理に係る業務

    • マル1取扱対象

      貸出参加契約とは、平成7年6月1日に日本公認会計士協会が公表した「ロ-ン・パ-ティシペ-ションの会計処理及び表示」において想定されるものをいう。

    • マル2業務の運営等

      業務の運営等について、以下の諸点が遵守されているか。

      • イ. 業務遂行に当たっては、原債務者及び譲受者の保護に十分に配慮すること。

      • ロ. 取扱債権等の性格・内容等について譲受者に対し十分な説明を行うこと。

      • ハ. 取扱債権等に対する評価体制を整え、適正な価格形成を行うこと。

      • ニ. 譲受者の意向、経験及び資力に照らして適切な勧誘を行うこと。

      • ホ. 契約の締結に当たっては、当該契約内容に関し、書面を作成し譲受者に交付すること。

IV-4-2-4 累積投資業務に係る留意事項

金商法第35条第1項第7号に規定する累積投資契約の締結業務の状況については、以下の点に留意して検証することとする。

  • (1)累積投資業務において取り扱う有価証券の種類

    • マル1国債証券

    • マル2地方債証券

    • マル3金融債その他特別の法律により法人の発行する債券

    • マル4電気事業会社の発行する社債券等定期的に相当額の発行が行われると認められる社債券

    • マル5投資信託受益証券(上場投資信託受益証券を除く。IV-4-2-4において同じ。)

      • イ. 単位型投資信託

      • ロ. 追加型投資信託(公社債投資信託を除く。IV-4-2-4において同じ。)

      • ハ. 公社債投資信託

    • マル6外国投資信託受益証券

    • マル7投資法人の投資証券(上場投資証券を除く。IV-4-2-4において同じ。)

    • マル8外国投資証券

    • マル9株券(ただし、金融商品取引所に上場されている株券又は日本証券業協会に備える店頭売買有価証券登録原簿に登録されている株券であり、かつ、(10)によるものに限る。IV-4-2-4において同じ。)

    • マル10上場投資信託受益証券((11)によるものに限る。IV-4-2-4において同じ。)

    • マル11上場投資証券((12)によるものに限る。IV-4-2-4において同じ。)

  • (2)累積投資業務における有価証券の買付けの方法

    • マル1買い付ける有価証券は、新規発行分に限るものとし(株券、上場投資信託受益証券及び上場投資証券についてはこの限りでない。)、あらかじめ契約によりその種類及び買付けのための預り金の充当方法を定めておくこと。ただし、契約において予定している買付時期に新規発行がない場合その他新規発行分を手当てできない場合においては、あらかじめ契約で定めるところに従い、同一種類の既発行分の有価証券を買い付けることができるものとする。

    • マル2顧客からの払込金又は顧客が寄託している有価証券(以下「寄託有価証券」という。)の果実若しくは償還金の受入れに基づいて発生した金融商品取引業者の預り金(以下「払込金等」という。)が顧客の買い付ける有価証券の買付価額(又はその整数倍)に達したときは、金融商品取引業者は、遅滞なく当該有価証券の買付けを行うこと。ただし、顧客はいつでも金融商品取引業者に指示し、有価証券の買付けを中止することができるものとする。

    • マル3有価証券の買付価額は次によるものとする。

      • イ. 国債証券、地方債証券、金融債その他特別の法律により法人の発行する債券及び社債券については、公募又は売出価額。ただし、上記マル1のただし書に規定する場合においては、あらかじめ契約で指定する金融商品取引所における時価その他の適正な価額

      • ロ. 次に掲げる投資信託受益証券については、次に定める価額

        • a. 単位型投資信託 募集価額

        • b. 追加型投資信託 買付日の前日の基準価額(買付時に信託財産留保額を徴収する追加型投資信託においては、当該信託財産留保額を基準価額に加えた額)

        • c. 追加型公社債投資信託 買付日又は買付日の前日の基準価額

      • ハ. 外国投資信託受益証券については、買付日の前日の基準価額

      • ニ. 投資証券又は外国投資証券については、規約又はこれに相当する書類に定める価額

      • ホ. 株券については、あらかじめ契約で指定する金融商品取引所における時価(当該銘柄についての取引所における約定単価が複数のときは、その加重平均価額)

      • ヘ. 上場投資信託受益証券については、あらかじめ契約で指定する金融商品取引所における時価(当該銘柄についての取引所における約定単価が複数のときは、その加重平均価額)

      • ト. 上場投資証券については、あらかじめ契約で指定する金融商品取引所における時価(当該銘柄についての取引所における約定単価が複数のときは、その加重平均価額)

  • (3)累積投資業務における金銭の払込み及び預り金の管理方法

    • マル1顧客は、有価証券の買付代金の一部又は全部を随時払い込むことができること。ただし、下記(8)から(12)までにおいては、別によるものとする。

    • マル2顧客からの払込金等は、累積投資預り金として区分経理するものとし、当該預り金については、顧客に対し利子等の果実を支払わないこと。

  • (4)累積投資業務における有価証券の所有権の移転及び引渡しの時期

    共同買付けの場合には、買付有価証券の回記号及び番号が当該顧客について確定したときに共有が終了し、当該顧客に当該有価証券の所有権が移転するものであること。また、当該有価証券の果実又は元本に対する顧客の請求権は、当該買付の日から発生すること。

  • (5)累積投資業務における有価証券の保管方法

    • マル1累積投資業務において買付けた有価証券の保管は次により行うこと。

      • イ. 累積投資業務に基づく有価証券の寄託残高、新たな寄託高及び償還高は他の有価証券と分別して管理すること。

        この場合、金融商品取引業者と顧客が共有している有価証券は、更に分別すること。

      • ロ. 当該有価証券を自ら管理することに代えて、金融商品取引業者名義をもって証券金融会社、銀行又は信託会社に再寄託することができること。

        なお、顧客の権利又は利益を害さないと認める場合には、顧客の同意を得たうえで、保管又は再寄託に当たり、大券をもってすることができること。

      • ハ. 顧客からの申出により寄託有価証券を返還する場合には、当該有価証券を市場価格(所定の手数料を含む。)で売却した代金の返還をもって有価証券の返還に代えることができる旨を契約において定めることができること。

    • マル2累積投資契約によらないで買付けた有価証券について、顧客から申出があった場合には、これを累積投資契約に基づく有価証券として保管することができること。ただし、当該有価証券は、当該累積投資契約によって買い付ける有価証券と同一種類のものに限ること。

  • (6)累積投資業務における契約の解約

    • マル1顧客の申出があったときに解約されること。なお、顧客はいつでも解約の申出をすることができること。

    • マル2顧客が有価証券の買付代金の全部又は一部の払込みを引き続き1年を超えて行わなかったときに解約されること。ただし、顧客が累積投資契約に基づいて有価証券を金融商品取引業者に寄託した場合において、当該有価証券の果実又は償還金による預り金のみを対価として前回買付の日より1年以内に有価証券の買付けを行うことができる場合の当該契約及び下記(7)に規定する契約についてはこの限りでないこと。

    • マル3金融商品取引業者が累積投資業務を行うことができなくなったときに解約されること。

    • マル4上記のほか、金融商品取引業者は、顧客が有価証券の買付代金の全部又は一部の払込みを引き続き3月を超えて行わなかったときは、解約することができること。ただし、上記マル2ただし書に規定する契約があるもの(以下イからニまでの条件を全て満たす場合を除く。)についてはこの限りでないこと。

      • イ. 顧客に対する報告書等が転居先不明等により返戻されていること。

      • ロ. 当該顧客の所在について確認の努力をしたにもかかわらず、なお不明であること。

      • ハ. 上記イの報告書等の返戻後1年間を超えて買付代金の払込み又は売却がないこと。

      • ニ. 残高が少額(1万円未満)であること。

  • (7)金融商品取引業者は、顧客から申出があった場合には、寄託有価証券の一部及び当該有価証券の果実又は償還金の全部又は一部を定期的に返還する契約をすることができるものとする。

  • (8)国債の共同買付累積投資業務については、次によることができるものとする。

    • マル1金融商品取引業者が、国債について、他の顧客と共同して買い付ける旨の申込みを行う顧客との間に、累積投資業務により、当該国債の買付けを行う旨の契約をすること。この場合において、上記(3)マル1にかかわらず顧客からの第2回目以降の払込金については、払込最低金額に満たない金額を受け入れることができるものとし、一の顧客からの払込金等と他の顧客の払込金等とを合算して、国債の買付価額(又はその整数倍)に達するときは、金融商品取引業者は、遅滞なく、当該国債の買付けを行うものとする。

    • マル2上記マル1の場合、顧客からの払込金等の合算額について国債の買付価額に満たない金額が生ずるときは、金融商品取引業者は、最小単位の買付価額と当該金額との差額を払い込むことにより、顧客と共同して買い付けること。

    • マル3共同して買付けた顧客(上記マル2の場合においては、金融商品取引業者を含む。)がその持分に応じて持分権を取得(共有)すること。

    • マル4金融商品取引業者は、顧客の共有持分及び共有持分に係る国債の果実又は償還金の受入れ並びに払込金等を管理するため、顧客ごとに口座を設けて処理すること。

  • (9)勤労者財産形成促進法(以下「財形法」という。)に基づく累積投資(以下「財形貯蓄」という。)業務については、次によることができるものとする。

    • マル1有価証券の買付けの方法のうち、上記(1)マル5ロに掲げる有価証券の買付価額については、上記(2)マル3ロb)にかかわらず次によること。

      • イ. 財形法第6条第1項に規定する勤労者財産形成貯蓄契約に基づく買付けについては、買付日の基準価額(買付時に信託財産留保額を徴収する追加型投資信託においては、当該信託財産留保額を基準価額に加えた額)

      • ロ. 財形法第6条第2項に規定する勤労者財産形成年金貯蓄契約及び同条第4項に規定する勤労者財産形成住宅貯蓄契約に基づく買付けについては、買付日の基準価額

    • マル2金銭の払込み及び預り金の管理については、上記(3)マル1及びマル2にかかわらず次によること。

      • イ. 顧客が有価証券の買付代金に充てるため払い込む金額は、1,000円以上(ただし、下記ロbからeまでに掲げる払込みの場合は1円以上)とする。

      • ロ. 金銭の払込みは、事業主が金融商品取引業者との間にあらかじめ締結した契約に基づき、以下の方法により行うこと。

        • a. 当該顧客に支払う賃金等から控除して行う払込み

        • b. 事業主が財形貯蓄を奨励する目的をもって当該顧客口座に対して行う払込み

        • c. 当該顧客の財産形成給付金又は財産形成基金給付金から行われる払込み

        • d. 当該顧客の転職等により転職前の事業所の財形貯蓄取扱機関から行われる払込み

        • e. 事業主が財形法第6条第1項に定める返還貯蓄金を当該顧客口座に対して行う払込み

      • ハ. 顧客からの払込金等は、財形貯蓄預り金として区分経理すること。

      • ニ. 顧客からの払込金等については、普通預金利子相当額を付して、これを当該顧客の有価証券の買付代金に充てるものとする。ただし、寄託有価証券の果実又は償還金の受入れに基づいて生じた預り金については、顧客に対し利子等の果実を支払わないこと。

    • マル3財形貯蓄につき顧客との間に、他の顧客と共同して国債を買い付け、一の顧客の当該国債の買付残高と払込金等の合計額が1万円の整数倍に達したときは、当該国債を売却して、一の顧客につき1万円の整数倍を単位として社債を他の顧客と共同して買い付ける旨の契約をすることができるものとする。

      この場合において、上記(8)マル2からマル4までの規定は、社債の買付けについても適用する。

    • マル4財形貯蓄業務に基づく有価証券の寄託残高及び償還高は、他の累積投資業務に基づく有価証券と分別して管理すること。

      なお、当該有価証券を自ら保管することに代えて、金融商品取引業者名義をもって、証券金融会社、銀行又は信託銀行に再寄託できるものとする。

    • マル5解約については上記(6)にかかわらず、次によること。

      • イ. 財形貯蓄に関する契約は次の場合に解約されるものとする。

        • a. 顧客の申出があったとき。なお、顧客はいつでも解約の申出をすることができる。

        • b. 顧客が財形法に規定する財形貯蓄の要件を満たさなくなったとき。

        • c. 金融商品取引業者が「財形貯蓄」業務を行うことができなくなったとき。

      • ロ. 上記aのほか、顧客が最初の払込みの後、勤労者財産形成貯蓄契約にあっては3年、勤労者財産形成年金貯蓄契約及び勤労者財産形成住宅貯蓄契約にあっては5年を経過し、引き続き1年を超えて有価証券の買付代金の全部又は一部の払込みを行わなかったときは、当該契約を解約することができるものとする。

        ただし、顧客が当該契約に基づいて有価証券を金融商品取引業者等に寄託した場合において、当該有価証券の果実又は償還金による預り金のみを対価として前回買付けの日より1年以内に有価証券の買付けを行うことができる場合の当該契約についてはこの限りでない。

    • マル6顧客に対する残高の報告等については、当該顧客の事業主を経由して行える。

  • (10)株券の共同買付累積投資業務については、次によることができるものとする。

    • マル1株券について、他の顧客と共同して買付ける旨の申込みを行う顧客との間に、累積投資業務により、当該株券の買付けを行う旨の契約をすることができるものとする。

      この場合、金融商品取引業者は、あらかじめ顧客との間で買付銘柄、一回当たりの顧客の払込金額、買付の執行時期等を定めた契約を締結し、当該契約に基づき買付け等を執行すること。

    • マル2一の顧客からの払込金等と他の顧客の払込金等とを合算して、株券の買付価額(又はその整数倍)に達するときは、遅滞なく、当該株券の買付けを行うこと。

    • マル3上記マル2の場合、一の顧客からの払込金等と他の顧客の払込金等との合算額について株券の買付価額に満たない金額が生ずるときは、金融商品取引業者は、当該端数部分については次回買付時まで預かるか、最小単位の買付価額と当該金額との差額を払い込むことにより買付けること。

    • マル4買付けられた株券は、顧客(上記マル3の場合において金融商品取引業者が顧客と共同で買付けた株券については、金融商品取引業者を含む。)が共同して持分権を取得(共有)し、払込金額(上記マル3の場合において金融商品取引業者が端数部分の金額を預かるものとするときには、当該金額を除く。)の割合に応じて持分を有するものとする。当該顧客が共同して買付けた株券の名義は金融商品取引業者名義とするが、一の顧客の共有持分が単位株数に達した場合には、それ以降はじめて到来する当該株券の発行会社の期末日等、会社法第124条第1項の規定に基づく基準日までに単位株に分割することとし、当該単位株については、本累積投資契約の適用を受けないこと。

    • マル5顧客が共有している株券に係る配当金を、各顧客の持分に応じて配分し、再投資すること。

    • マル6顧客が共有している株券を他の有価証券と分別して管理し、顧客ごとに口座を設けて顧客の持分及び持分に係る配当金等を管理すること。

  • (11)上場投資信託受益証券の共同買付累積投資業務については、次によることができるものとする。

    • マル1上場投資信託受益証券について、他の顧客と共同して買付ける旨の申込みを行う顧客との間に、累積投資業務により、当該上場投資信託受益証券の買付けを行う旨の契約をすることができるものとする。

      この場合、金融商品取引業者は、あらかじめ顧客との間で買付銘柄、1回当たりの顧客の払込金額、買付の執行時期等を定めた契約を締結し、当該契約に基づき買付等を執行すること。

    • マル2一の顧客からの払込金等と他の顧客の払込金等とを合算して、上場投資信託受益証券の買付価額(又はその整数倍)に達するときは、遅滞なく、当該上場投資信託受益証券の買付けを行うこと。

    • マル3上記マル2の場合、一の顧客からの払込金等と他の顧客の払込金等との合算額について上場投資信託受益証券の買付価額に満たない金額が生ずるときは、金融商品取引業者は、当該端数部分については次回買付時まで預かるか、最小単位の買付金額と当該金額との差額を払い込むことにより買い付けること。

    • マル4買付けられた上場投資信託受益証券は、顧客(上記マル3の場合において金融商品取引業者が顧客と共同で買付けた上場投資信託受益証券については、金融商品取引業者を含む。)が共同して所有権を有し、払込金額(上記マル3の場合において金融商品取引業者が端数部分の金額を預かるものとするときには、当該金額を除く。)の割合に応じて持分を有すること。当該顧客が共同して買付けた上場投資信託受益証券の名義は金融商品取引業者名義とするが、一の顧客の共有部分が単位口数に達した時点で単位口に分割することとし、当該単位口については、本累積投資契約の適用を受けないこと。

    • マル5顧客が共同して所有権を有する上場投資信託受益証券に係る分配金を、各顧客の持分に応じて配分し、再投資すること。

    • マル6顧客が共同して所有する上場投資信託受益証券を他の有価証券と分別して管理し、顧客ごとに口座を設けて顧客の持分及び持分に係る分配金等を管理すること。

  • (12)上場投資証券の共同買付累積投資業務については、次によることができるものとする。

    • マル1上場投資証券について、他の顧客と共同して買付ける旨の申込みを行う顧客との間に、累積投資業務により、当該上場投資証券の買付けを行う旨の契約をすることができるものとする。

      この場合、金融商品取引業者は、あらかじめ顧客との間で買付銘柄、一回当たりの顧客の払込金額、買付の執行時期等を定めた契約を締結し、当該契約に基づき買付け等を執行すること。

    • マル2一の顧客からの払込金等と他の顧客の払込金等とを合算して、上場投資証券の買付価額(又はその整数倍)に達するときは、遅滞なく、当該上場投資証券の買付けを行うこと。

    • マル3上記マル2の場合、一の顧客からの払込金等と他の顧客の払込金等との合算額について上場投資証券の買付価額に満たない金額が生ずるときは、金融商品取引業者は、当該端数部分については次回買付時まで預かるか、最小単位の買付価額と当該金額との差額を払い込むことにより買付けること。

    • マル4買い付けられた上場投資証券は、顧客(上記マル3の場合において金融商品取引業者が顧客と共同で買付けた上場投資証券については、金融商品取引業者を含む。)が共同して持分権を取得(共有)し、払込金額(上記マル3の場合において金融商品取引業者が端数部分の金額を預かるものとするときには、当該金額を除く。)の割合に応じて持分を有するものとする。当該顧客が共同して買付けた上場投資証券の名義は金融商品取引業者名義とするが、一の顧客の共有持分が単位口数に達した場合には、それ以降初めて到来する当該上場投資証券の発行投資法人の期末日等投信法第77条の3第2項の規定に基づく基準日までに単位口に分割することとし、当該単位口については、本累積投資契約の適用を受けないこと。

    • マル5金融商品取引業者は、顧客が共有している上場投資証券に係る分配金を、各顧客の持分に応じて配分し、再投資すること。

    • マル6金融商品取引業者は、顧客が共有している上場投資証券を他の有価証券と分別して管理し、顧客ごとに口座を設けて顧客の持分及び持分に係る分配金等を管理すること。

IV-4-3 外務員登録

  • (1)登録対象となる外務員の範囲

    金融商品取引業者の店内業務(店頭業務を含む。)に従事する役員又は使用人のうち、金商法第64条第1項に規定する外務員登録原簿に登録を必要とする者は、以下のいずれかの業務を行う者とする。

    • マル1勧誘を目的とした金融商品取引等の内容説明

    • マル2金融商品取引等の勧誘

    • マル3注文の受注

    • マル4勧誘を目的とした情報の提供等(バックオフィス業務に関すること及び顧客の依頼に基づく客観的情報の提供を除く。)

    • マル5金商法第64条第1項第1号又は第2号に掲げる行為を行う者

  • (2)届出事項

    金融商品取引業者内の人事異動に伴い一時的に外務員としての業務を行わなくなった場合は、金商法第64条の4第4号には該当しないことに留意するものとする。

IV-4-4 金融商品取引責任準備金

金商法第46条の5に規定する金融商品取引責任準備金は、次の要件を満たす場合に限り取崩しをすることができることに留意するものとする。

  • マル1金融商品取引業者の役員又は使用人による違法又は不当行為等の事実が認められること。

  • マル2取崩し額が、損失の補填に必要な額に応じた適正な額であること。

IV-4-5 電子募集取扱業務に関する帳簿書類関係

金商業等府令第157条第1項第18号ロに規定する「第146条の2第1項の規定により電子計算機の映像面に表示されたものの記録」には、当該事項を表示したホームページを印刷したものを含み、当該書類を電磁的記録をもって作成する場合においては当該ホームページを電磁的方法で保存することを含むものとする。

IV-5 指定親会社グループについて

大規模で複雑な業務を行う金融商品取引業者グループについては、リスクの集中によって、金融システムに与える潜在的なリスクが高まっている。一方、特に国際的に活動するグループを中心に、組織の巨大化・縦割り化に伴って、グループ全体の経営管理が難しくなり、グループ全体のリスクの所在についても不明確になってきている。そのため、金融商品取引業者が大規模かつ複雑な業務をグループ一体として行っている場合に、当該金融商品取引業者がグループ内の親会社・子会社・兄弟会社からもたらされる財務・業務上の問題等によって突然の破綻に至ることで、金融商品取引業者の市場仲介機能が不全に陥り、広範な投資者に悪影響が及び、引いては金融システムへの悪影響が懸念されるおそれがある。

こうしたことを踏まえ、大規模かつ複雑な業務をグループ一体として行う金融商品取引業者について、連結ベースの規制・監督の対象とする観点から、大規模な金融商品取引業者のうち、グループ一体で金融業務を行っていると認められるものについては、親会社を含むグループ全体に係る連結規制・監督(いわゆる「川上連結」)の対象とすることとされたところである。

この川上連結の対象となる指定親会社グループについては、適切な経営管理の下で、グループベースでの強固で包括的なリスク管理を徹底させることが重要であり、特に以下の点にも留意して監督を行うこととする。

なお、「指定親会社グループ」とは、指定親会社及びその子法人等で構成されるグループをいう。

IV-5-1 経営管理

指定親会社グループの経営管理については、III-1のほか、以下の点にも留意するものとする。

  • マル1指定親会社の取締役は、海外拠点を含むグループ各社の経営管理を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者であるか。

  • マル2指定親会社は、グループが目指すべき全体像等に基づいた経営方針・経営計画を明確に定め、海外拠点を含むグループ全体に周知しているか。また、海外拠点を含めて計画の達成度合いを定期的に検証し、必要に応じ、その設置の意義やグループ内での位置づけを含め、見直しを行っているか。

  • マル3指定親会社は、指定親会社グループを形成することに伴う組織の複雑性の増大や、それに伴う経営管理の困難化について十分理解し、適切な経営管理態勢を整備しているか。特に、海外拠点の適切な運営を確保するための態勢として、経営管理会社による直接的な管理と海外拠点の経営陣への必要な権限の付与とを適切に組み合わせるとともに、かつ、責任分掌の明確化を図っているか。

  • マル4指定親会社は、海外拠点の業務内容やリスク特性等を勘案の上で、グループ全体または海外拠点の内部監査部門において適切に内部監査を実施する態勢を整備しているか。また、内部監査の結果等を踏まえて適切な措置を講じているか。

  • マル5指定親会社は、海外拠点の位置づけやその業務戦略・業務計画 を踏まえ、実際の業務内容やリスク特性等も勘案して、海外拠点における十分な内部管理態勢の整備を図っているか。

  • マル6指定親会社は、海外拠点を含むグループ全体の業務・財務内容 を把握し、各拠点の抱えるリスクの特性を十分理解した上で、リスクの状況を適切に把握し、必要な対応を行っているか。

IV-5-1-1 監査役設置会社である指定親会社の場合

  • (1)代表取締役

    • マル1法令等遵守を経営上の重要課題の一つとして位置付け、代表取締役が率先して法令等遵守態勢の構築に取り組んでいるか。

    • マル2代表取締役は、リスク管理部門を軽視することが企業収益に重大な影響を与えることを十分認識し、リスク管理部門を重視しているか。

    • マル3代表取締役は、財務情報その他企業情報を適正かつ適時に開示するための内部管理態勢を構築しているか。

    • マル4代表取締役は、内部監査の重要性を認識し、内部監査の目的を適切に設定するとともに、内部監査部門の機能が十分発揮できる態勢を構築(内部監査部門の独立性の確保を含む。)し、定期的にその有効性を検証しているか。また、内部監査態勢に関し、監査役監査又は検査部局による検査等で指摘された問題点を踏まえ、実効性ある態勢整備に積極的に取り組んでいるか。

      また、内部監査の結果等については速やかに適切な措置を講じているか。

    • マル5代表取締役は、監査役監査の重要性及び有用性を十分認識し、監査役監査の有効性確保のための環境整備が重要であることを認識しているか。

      特に、監査役監査を取り巻く環境の変化に対応した動き、例えば監査役監査基準(公益社団法人日本監査役協会)等を理解し、監査役の円滑な監査活動を保障しているか。

    • マル6代表取締役は、断固たる態度で反社会的勢力との関係を遮断し排除していくことが、指定親会社グループに対する公共の信頼を維持し、指定親会社グループの業務の適切性及び健全性の確保のため不可欠であることを十分認識し、政府指針の内容を踏まえて取締役会で決定された基本方針を社内外に宣言しているか。

  • (2)取締役及び取締役会

    • マル1取締役は、業務執行にあたる代表取締役等の独断専行をけん制・抑止し、取締役会における業務執行の意思決定及び取締役の業務執行の監督に積極的に参加しているか。

    • マル2社外取締役が選任されている場合には、社外取締役は、経営の意思決定の客観性を確保する等の観点から自らの意義を認識し、積極的に取締役会に参加しているか。また、社外取締役の選任議案を決定する場合には、社外取締役に期待される役割を踏まえ、指定親会社グループとの人的関係、資本的関係又は取引関係その他の利害関係を検証し、その独立性・適格性等を慎重に検討しているか。

      また、社外取締役が取締役会で適切な判断をし得るよう、例えば、情報提供を継続的に行う等、何らかの枠組みを設けているか。

    • マル3取締役会は、例えば、法令等遵守やリスク管理等に関する経営上の重要な意思決定・経営判断に際し、必要に応じ、外部の有識者の助言、外部の有識者を委員とする任意の委員会等を活用するなど、その妥当性・公正性を客観的に確保するための方策を講じているか。

    • マル4取締役会は、指定親会社グループが目指すべき全体像等に基づいた経営方針を明確に定めているか。さらに、経営方針に沿った経営計画を明確に定め、それを組織全体に周知しているか。また、その達成度合いを定期的に検証し必要に応じ見直しを行っているか。

    • マル5取締役及び取締役会は、法令等遵守に関し、誠実に、かつ率先垂範して取り組み、全社的な内部管理態勢の確立のため適切に機能を発揮しているか。

    • マル6取締役会は、リスク管理部門を軽視することが企業収益に重大な影響を与えることを十分認識し、リスク管理部門を重視しているか。特に担当取締役はリスクの所在及びリスクの種類を理解した上で、各種リスクの測定・モニタリング・管理等の手法について深い認識と理解を有しているか。

    • マル7取締役会は、戦略目標を踏まえたリスク管理の方針を明確に定め、社内に周知しているか。また、リスク管理の方針は、定期的又は必要に応じ随時見直しているか。さらに、定期的にリスクの状況の報告を受け、必要な意思決定を行うなど、把握したリスク情報を業務の執行及び管理体制の整備等に活用しているか。

    • マル8取締役会は、あらゆる職階における職員に対し経営管理の重要性を強調・明示する風土を組織内に醸成するとともに、適切かつ有効な経営管理を検証し、その構築を図っているか。

    • マル9取締役会は内部監査の重要性を認識し、内部監査の目的を適切に設定するとともに、内部監査部門の機能が十分発揮できる態勢を構築(内部監査部門の独立性の確保を含む。)し、定期的にその有効性を検証しているか。また、内部監査態勢に関し、監査役監査又は検査部局による検査等で指摘された問題点を踏まえ、実効性ある態勢整備に積極的に取り組んでいるか。

      また、被監査部門等におけるリスク管理の状況等を踏まえた上で、監査方針、重点項目等の内部監査計画の基本事項を承認しているか。

      さらに、内部監査の結果等については速やかに適切な措置を講じているか。

    • マル10取締役は、監査役監査の重要性及び有用性を十分認識し、監査役監査の有効性確保のための環境整備が重要であることを認識しているか。また、監査役選任議案を決定するに際し、監査役としての独立性・適格性等を慎重に検討しているか。特に、社外監査役が監査体制の中立性・独立性を一層高める観点からその選任が義務付けられている趣旨を認識しているか。

      さらに、社外監査役が適切な判断をし得るよう、例えば、情報提供を継続的に行う等、何らかの枠組みを設けているか。

    • マル11法令等遵守態勢、リスク管理態勢及び財務報告態勢等の内部管理態勢(いわゆる内部統制システム)を構築することは、取締役の善管注意義務及び忠実義務の内容を構成することを理解し、その義務を適切に果たそうとしているか。

    • マル12取締役会は、政府指針を踏まえた基本方針を決定し、それを実現するための体制を整備するとともに、定期的にその有効性を検証するなど、法令等遵守・リスク管理事項として、反社会的勢力による被害の防止を内部統制システムに明確に位置付けているか。

    • マル13指定親会社の常務に従事する取締役の選任議案の決定プロセス等においては、その適格性について、例えば以下のような要素が適切に勘案されているか。

      • イ. 経営管理を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験

        金商法等の関連諸規制や監督指針で示している経営管理の着眼点の内容を理解し、実行するに足る知識・経験、指定親会社グループ業務の健全かつ適切な運営に必要となるコンプライアンス及びリスク管理に関する十分な知識・経験、その他金融商品取引業者の行うことができる業務を適切に遂行することができる知識・経験を有しているか。

      • ロ. 十分な社会的信用

        • a. 反社会的行為に関与したことがないか。

        • b. 暴力団員(過去に暴力団員であった者を含む。)ではないか、又は暴力団と密接な関係を有していないか。

        • c. 金商法等我が国の金融関連法令又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し、又は刑法若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないか。

        • d. 禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないか。

        • e. 過去において、所属した法人等又は現在所属する法人等が金融監督当局より法令等遵守に係る業務改善命令、業務停止命令又は免許、登録若しくは認可の取消し等の行政処分を受けており、当該処分の原因となる事実について、行為の当事者として又は当該者に対し指揮命令を行う立場で、故意又は重大な過失(一定の結果の発生を認識し、かつ回避し得る状態にありながら特に甚だしい不注意)によりこれを生ぜしめたことがないか。

        • f. 過去において、金融監督当局より役員等の解任命令を受けたことがないか。

        • g. 過去において、金融機関等の破綻時に、役員として、その原因となったことがないか。

  • (3)監査役及び監査役会

    • マル1監査役及び監査役会は、制度の趣旨に則り、その独立性が確保されているか。

    • マル2監査役及び監査役会は、独立の機関として取締役の職務執行を監査することにより、指定親会社グループの健全で持続的な成長を確保することが基本責務であることを認識し、付与された広範な権限を適切に行使し、会計監査に加え業務監査を的確に実施し必要な措置を適時に講じているか。

    • マル3監査役及び監査役会は、監査の実効性を高め監査職務を円滑に遂行するため、監査役の職務遂行を補助する体制等を確保し有効に活用しているか。

    • マル4各監査役は、あくまでも独任制の機関であることを自覚し、自己の責任に基づき積極的な監査を実施しているか。特に社外監査役は、監査体制の中立性・独立性を一層高める観点からその選任が義務付けられていることを自覚し、客観的に監査意見を表明することが特に期待されていることを認識し、監査を実施しているか。また、常勤監査役は、常勤者としての特性を踏まえ、監査環境の整備及び情報収集に積極的に努めるなど、社内の経営管理態勢及びその運用状況を日常的に監視・検証しているか。

    • マル5監査役会は、取締役が株主総会に提出する監査役の選任議案について、同意の審議に際し、その独立性・適格性等を慎重に検討しているか。

      特に社外監査役については、指定親会社グループとの人的関係、資本的関係又は取引関係その他の利害関係を検証しているか。

    • マル6指定親会社の監査役は業務監査の職責を担っていることから、取締役が内部管理態勢(いわゆる内部統制システム)の構築を行っているか否かを監査する職務を担っており、これが監査役としての善管注意義務の内容を構成することを理解し、その義務を適切に果たそうとしているか。

    • マル7指定親会社の監査役の選任議案の決定プロセス等においては、その適格性について、例えば以下のような要素が適切に勘案されているか。

      • イ. 指定親会社の取締役の職務の執行の監査を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験

        独任制の機関として自己の責任に基づき積極的な監査を実施するに足る知識・経験、その他独立の立場から取締役の職務の執行を監査することにより、指定親会社グループ業務の健全かつ適切な運営を確保するための知識・経験を有しているか。

      • ロ. 十分な社会的信用

        • a. 反社会的行為に関与したことがないか。

        • b. 暴力団員ではないか、又は暴力団と密接な関係を有していないか。

        • c. 金商法等我が国の金融関連法令又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し、又は刑法若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないか。

        • d. 禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないか。

        • e. 過去において、所属した法人等又は現在所属する法人等が金融監督当局より法令等遵守に係る業務改善命令、業務停止命令又は免許、登録若しくは認可の取消し等の行政処分を受けており、当該処分の原因となる事実について、行為の当事者として又は当該者に対し指揮命令を行う立場で、故意又は重大な過失(一定の結果の発生を認識し、かつ回避し得る状態にありながら特に甚だしい不注意)によりこれを生ぜしめたことがないか。

        • f. 過去において、金融監督当局より役員等の解任命令を受けたことがないか。

        • g. 過去において、金融機関等の破綻時に、役員として、その原因となったことがないか。

    • (参考)「監査役監査基準」(公益社団法人日本監査役協会)

  • (4)内部監査部門

    • マル1内部監査部門は、被監査部門に対して十分けん制機能が働くよう独立する一方、被監査部門の業務状況等に関する重要な情報を適時収集する態勢・能力を有し、指定親会社グループを取り巻く環境や業務状況に的確に対応した、実効性ある内部監査が実施できる体制となっているか。

    • マル2内部監査部門は、被監査部門におけるリスク管理状況等を把握した上、リスクの種類・程度に応じて、頻度・深度に配慮した効率的かつ実効性ある内部監査計画を立案し、状況に応じて適切に見直すとともに、内部監査計画に基づき効率的・実効性ある内部監査を実施しているか。

    • マル3内部監査部門は、内部監査で指摘した重要な事項について遅滞なく代表取締役及び取締役会に報告しているか。内部監査部門は、指摘事項の改善状況を的確に把握しているか。

  • (5)外部監査の活用

    • マル1実効性ある外部監査が、指定親会社グループの業務の健全かつ適切な運営の確保に不可欠であることを十分認識し、有効に活用されているか。

    • マル2外部監査が有効に機能しているかを定期的に検証するとともに、外部監査の結果等について適切な措置を講じているか。

    • マル3関与公認会計士の監査継続年数等が、適切に取り扱われているか。

  • (6)監査機能の連係

    外部監査機能と内部監査部門又は監査役・監査役会の連係が有効に機能しているか。

IV-5-1-2 指名委員会等設置会社である指定親会社の場合

  • (1)取締役及び取締役会

    • マル1取締役会は、経営の基本方針、執行役の職務の分掌及び指揮命令関係その他の執行役の相互の関係に関する事項など業務執行の決定権限等を明確にしているか。

      また、執行役の職務の執行が法令等に適合することを確保するための体制や業務の適正を確保するために必要な体制等を整備し、定期的にその有効性を検証しているか。また、内部監査態勢に関し、監査委員会又は検査部局による検査等で指摘された問題点を踏まえ、実効性ある態勢整備に積極的に取り組んでいるか。

    • マル2取締役会は、監査委員会の職務の遂行のために必要な体制(監査補助要員体制、情報報告・管理体制、内部統制体制)整備等に積極的に取り組んでいるか。

    • マル3取締役会は、あらゆる職階における職員に経営管理の重要性を強調・明示する風土を組織内に醸成させるとともに、適切かつ有効な経営管理を検証し、その構築を図っているか。

    • マル4取締役会は、各委員会を活用し、かつ、各委員会と連携し、業務執行の監督権限を適確に行使しているか。

    • マル5取締役会は、財務情報その他企業情報を適正かつ適時に開示するための内部管理態勢を構築しているか。

    • マル6取締役は、取締役会における業務執行の決定、取締役及び執行役の職務の執行の監督等に積極的に参加しているか。法令等遵守態勢、リスク管理態勢及び財務報告態勢等の内部管理態勢(いわゆる内部統制システム)を構築することは、取締役の善管注意義務及び忠実義務の内容を構成することを理解し、その義務を適切に果たそうとしているか。

    • マル7取締役会は、政府指針を踏まえた基本方針を決定し、それを実現するための体制を整備するとともに、定期的にその有効性を検証するなど、法令等遵守・リスク管理事項として、反社会的勢力による被害の防止を内部統制システムに明確に位置付けているか。

    • マル8指定親会社の常務に従事する取締役の選任議案の決定プロセス等においては、その適格性について、例えば以下のような要素が適切に勘案されているか。

      • イ. 経営管理を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験

        取締役会における経営の基本方針や内部統制システム等に係る事項及び業務執行の決定並びに取締役及び執行役の職務の執行の監督等を積極的に実施するに足る知識・経験、その他金商法等の関連諸規制や監督指針で示している経営管理を行うことにより、指定親会社グループ業務の健全かつ適切な運営を確保するための知識・経験を有しているか。

      • ロ. 十分な社会的信用

        • a. 反社会的行為に関与したことがないか。

        • b. 暴力団員ではないか、又は暴力団と密接な関係を有していないか。

        • c. 金商法等我が国の金融関連法令又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し、又は刑法若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないか。

        • d. 禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないか。

        • e. 過去において、所属した法人等又は現在所属する法人等が金融監督当局より法令等遵守に係る業務改善命令、業務停止命令又は免許、登録若しくは認可の取消し等の行政処分を受けており、当該処分の原因となる事実について、行為の当事者として又は当該者に対し指揮命令を行う立場で、故意又は重大な過失(一定の結果の発生を認識し、かつ回避し得る状態にありながら特に甚だしい不注意)によりこれを生ぜしめたことがないか。

        • f. 過去において、金融監督当局より役員等の解任命令を受けたことがないか。

        • g. 過去において、金融機関等の破綻時に、役員として、その原因となったことがないか。

  • (2)監査委員会等

    • マル1各委員会は、制度の趣旨に則り、その独立性が確保されているか。

    • マル2監査委員会は、付与された広範な権限を適切に行使し、会計監査に加え業務監査を的確に実施し必要な措置を適時に講じているか。

    • マル3監査委員会は、取締役及び執行役の職務の執行の適法性及び妥当性等を監査するため、監査委員会の職務を補助すべき使用人、内部監査部門、会計監査人等を有効に活用しているか。

      監査役設置会社における監査役がいわゆる実査を行うことができることに比べ、社外取締役中心の監査委員会は、内部統制システムを通じたいわゆる組織監査を行うという制度的な基盤を踏まえて、特に内部監査部門が監査委員会をサポートする体制が整備されているか。

    • マル4監査委員の選任プロセス等においては、その適格性について、例えば以下のような要素が適切に勘案されているか。

      • イ. 指定親会社の執行役及び取締役の職務の執行の監査を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験

        内部統制システムの構築・運用の状況を監視及び検証し、内部統制システムの構築・運用に係る取締役会の審議等において、積極的な役割を果たすに足る知識・経験、その他独立した立場から執行役及び取締役の職務を監査することにより、指定親会社グループ業務の健全かつ適切な運営を確保するための知識・経験を有しているか。

      • ロ. 十分な社会的信用

        • a. 反社会的行為に関与したことがないか。

        • b. 暴力団員ではないか、又は暴力団と密接な関係を有していないか。

        • c. 金商法等我が国の金融関連法令又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し、又は刑法若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないか。

        • d. 禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないか。

        • e. 過去において所属した法人等又は現在所属する法人等が金融監督当局より法令等遵守に係る業務改善命令、業務停止命令又は免許、登録若しくは認可の取消し等の行政処分を受けており、当該処分の原因となる事実について、行為の当事者として又は当該者に対し指揮命令を行う立場で、故意又は重大な過失(一定の結果の発生を認識し、かつ回避し得る状態にありながら特に甚だしい不注意)によりこれを生ぜしめたことがないか。

        • f. 過去において、金融監督当局より役員等の解任命令を受けたことがないか。

        • g. 過去において、金融機関等の破綻時に、役員として、その原因となったことがないか。

    • (参考)「監査委員会監査基準」(公益社団法人日本監査役協会)

  • (3)執行役(代表執行役を含む。)

    • マル1執行役は、取締役会の決議に基づき委任された権限と責任を十分認識し、取締役会で決定された経営の基本方針を踏まえた業務執行の意思決定を実施しているか。

    • マル2執行役は、経営の基本方針に沿った業務計画を明確に定め、社内に周知しているか。また、その達成度合いを定期的に検証し必要に応じ見直しを行っているか。

    • マル3執行役は、法令等遵守に関し、誠実かつ率先垂範して取り組み、全社的な内部管理態勢の確立・執行のため適切に機能を発揮しているか。

    • マル4執行役は、リスク管理部門を軽視することが企業収益に重大な影響を与えることを十分認識し、リスク管理部門を重視しているか。特に担当執行役はリスクの所在及びリスクの種類を理解した上で、各種リスクの測定・モニタリング・管理等の手法について深い認識と理解を有しているか。

    • マル5執行役は、経営の基本方針を踏まえたリスク管理の方針を明確に定め、社内に周知しているか。また、リスク管理の方針は、定期的又は必要に応じ随時見直しているか。さらに、定期的にリスクの状況の報告を受け、必要な意思決定を行うなど、把握したリスク情報を業務の執行及び管理体制の整備等に活用しているか。

    • マル6執行役は、内部監査の重要性を認識し、内部監査機能が十分発揮できる措置を講じるとともに、内部監査の結果等について適切な措置を講じているか。

    • マル7執行役は、断固たる態度で反社会的勢力との関係を遮断し排除していくことが、指定親会社グループに対する公共の信頼を維持し、指定親会社グループの業務の適切性及び健全性の確保のため不可欠であることを十分認識し、政府指針の内容を踏まえて取締役会で決定された基本方針を社内外に宣言しているか。

    • マル8執行役の選任プロセス等においては、その適格性について、例えば以下のような要素が適切に勘案されているか。

      • イ. 経営管理を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験

        金商法等の関連諸規制や監督指針で示している経営管理の着眼点の内容を理解し、実行するに足る知識・経験、指定親会社グループ業務の健全かつ適切な運営に必要となるコンプライアンス及びリスク管理に関する十分な知識・経験、その他金融商品取引業者の行うことができる業務を適切に遂行することができる知識・経験を有しているか。

      • ロ. 十分な社会的信用

        • a. 反社会的行為に関与したことがないか。

        • b. 暴力団員ではないか、又は暴力団と密接な関係を有していないか。

        • c. 金商法等我が国の金融関連法令又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し、又は刑法若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないか。

        • d. 禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないか。

        • e. 過去において、所属した法人等又は現在所属する法人等が金融監督当局より法令等遵守に係る業務改善命令、業務停止命令又は免許、登録若しくは認可の取消し等の行政処分を受けており、当該処分の原因となる事実について、行為の当事者として又は当該者に対し指揮命令を行う立場で、故意又は重大な過失(一定の結果の発生を認識し、かつ回避し得る状態にありながら特に甚だしい不注意)によりこれを生ぜしめたことがないか。

        • f. 過去において、金融監督当局より役員等の解任命令を受けたことがないか。

        • g. 過去において、金融機関等の破綻時に、役員として、その原因となったことがないか。

  • (4)内部監査部門

    • マル1内部監査部門は、被監査部門に対して十分けん制機能が働くよう独立する一方、被監査部門の業務状況等に関する重要な情報を適時に収集する態勢・能力を有し、指定親会社グループを取り巻く環境や業務状況に的確に対応した、実効性ある内部監査が実施できる体制となっているか。

    • マル2内部監査部門は、被監査部門におけるリスク管理状況等を把握した上、リスクの種類・程度に応じて、頻度・深度に配慮した効率的かつ実効性ある内部監査計画を立案し、状況に応じて適切に見直すとともに、内部監査計画に基づき効率的・実効性ある内部監査を実施しているか。

    • マル3内部監査部門は、内部監査で指摘した重要な事項について遅滞なく代表執行役及び監査委員会等に報告しているか。内部監査部門は、指摘事項の改善状況を的確に把握しているか。

  • (5)外部監査の活用

    • マル1実効性ある外部監査が、指定親会社グループの業務の健全かつ適切な運営の確保に不可欠であることを十分認識し、有効に活用されているか。

    • マル2外部監査が有効に機能しているかを定期的に検証するとともに、外部監査の結果等について適切な措置を講じているか。

    • マル3関与公認会計士の監査継続年数等が、適切に取り扱われているか。

  • (6)監査機能の連係

    外部監査機能と内部監査部門又は監査委員会の連係が有効に機能しているか。

IV-5-1-3 監査等委員会設置会社である指定親会社の場合

  • (1)代表取締役

    • マル1法令等遵守を経営上の重要課題の一つとして位置付け、代表取締役が率先して法令等遵守態勢の構築に取り組んでいるか。

    • マル2代表取締役は、リスク管理部門を軽視することが企業収益に重大な影響を与えることを十分認識し、リスク管理部門を重視しているか。

    • マル3代表取締役は、財務情報その他企業情報を適正かつ適時に開示するための内部管理態勢を構築しているか。

    • マル4代表取締役は、内部監査の重要性を認識し、内部監査の目的を適切に設定するとともに、内部監査部門の機能が十分発揮できる態勢を構築(内部監査部門の独立性の確保を含む。)し、定期的にその有効性を検証しているか。また、内部監査態勢に関し、監査等委員会による監査又は検査部局による検査等で指摘された問題点を踏まえ、実効性ある態勢整備に積極的に取り組んでいるか。

      また、内部監査の結果等については速やかに適切な措置を講じているか。

    • マル5代表取締役は、監査等委員会による監査の重要性及び有用性を十分認識し、監査等委員会による監査の有効性確保のための環境整備が重要であることを認識しているか。

    • マル6代表取締役は、断固たる態度で反社会的勢力との関係を遮断し排除していくことが、指定親会社グループに対する公共の信頼を維持し、指定親会社グループの業務の適切性及び健全性の確保のため不可欠であることを十分認識し、政府指針の内容を踏まえて取締役会で決定された基本方針を社内外に宣言しているか。

  • (2)取締役及び取締役会

    • マル1取締役は、業務執行にあたる代表取締役等の独断専行をけん制・抑止し、取締役会における業務執行の意思決定及び取締役の業務執行の監督に積極的に参加しているか。

    • マル2社外取締役は、経営の意思決定の客観性を確保する等の観点から自らの意義を認識し、積極的に取締役会に参加しているか。また、社外取締役の選任議案を決定する場合には、社外取締役に期待される役割を踏まえ、指定親会社グループとの人的関係、資本的関係又は取引関係その他の利害関係を検証し、その独立性・適格性等を慎重に検討しているか。

      また、社外取締役が取締役会で適切な判断をし得るよう、例えば、情報提供を継続的に行う等、何らかの枠組みを設けているか。

    • マル3取締役会は、例えば、法令等遵守やリスク管理等に関する経営上の重要な意思決定・経営判断に際し、必要に応じ、外部の有識者の助言、外部の有識者を委員とする任意の委員会等を活用するなど、その妥当性・公正性を客観的に確保するための方策を講じているか。

    • マル4取締役会は、指定親会社グループが目指すべき全体像等に基づいた経営方針を明確に定めているか。さらに、経営方針に沿った経営計画を明確に定め、それを組織全体に周知しているか。また、その達成度合いを定期的に検証し必要に応じ見直しを行っているか。

    • マル5取締役及び取締役会は、法令等遵守に関し、誠実に、かつ率先垂範して取り組み、全社的な内部管理態勢の確立のため適切に機能を発揮しているか。

    • マル6取締役会は、リスク管理部門を軽視することが企業収益に重大な影響を与えることを十分認識し、リスク管理部門を重視しているか。特に担当取締役はリスクの所在及びリスクの種類を理解した上で、各種リスクの測定・モニタリング・管理等の手法について深い認識と理解を有しているか。

    • マル7取締役会は、戦略目標を踏まえたリスク管理の方針を明確に定め、社内に周知しているか。また、リスク管理の方針は、定期的又は必要に応じ随時見直しているか。さらに、定期的にリスクの状況の報告を受け、必要な意思決定を行うなど、把握したリスク情報を業務の執行及び管理体制の整備等に活用しているか。

    • マル8取締役会は、あらゆる職階における職員に対し経営管理の重要性を強調・明示する風土を組織内に醸成するとともに、適切かつ有効な経営管理を検証し、その構築を図っているか。

    • マル9取締役会は内部監査の重要性を認識し、内部監査の目的を適切に設定するとともに、内部監査部門の機能が十分発揮できる態勢を構築(内部監査部門の独立性の確保を含む。)し、定期的にその有効性を検証しているか。また、内部監査態勢に関し、監査等委員会による監査又は検査部局による検査等で指摘された問題点を踏まえ、実効性ある態勢整備に積極的に取り組んでいるか。

      また、被監査部門等におけるリスク管理の状況等を踏まえた上で、監査方針、重点項目等の内部監査計画の基本事項を承認しているか。

      さらに、内部監査の結果等については速やかに適切な措置を講じているか。

    • マル10取締役は、監査等委員会による監査の重要性及び有用性を十分認識し、監査等委員会による監査の有効性確保のための環境整備が重要であることを認識しているか。また、監査等委員である取締役の選任議案を決定するに際し、監査等委員としての独立性・適格性等を慎重に検討しているか。特に、監査等委員である社外取締役が監査体制の中立性・独立性を一層高める観点からその選任が義務付けられている趣旨を認識しているか。

      さらに、監査等委員である社外取締役が適切な判断をし得るよう、例えば、情報提供を継続的に行う等、何らかの枠組みを設けているか。

    • マル11法令等遵守態勢、リスク管理態勢及び財務報告態勢等の内部管理態勢(いわゆる内部統制システム)を構築することは、取締役の善管注意義務及び忠実義務の内容を構成することを理解し、その義務を適切に果たそうとしているか。

    • マル12取締役会は、政府指針を踏まえた基本方針を決定し、それを実現するための体制を整備するとともに、定期的にその有効性を検証するなど、法令等遵守・リスク管理事項として、反社会的勢力による被害の防止を内部統制システムに明確に位置付けているか。

    • マル13指定親会社の常務に従事する取締役の選任議案の決定プロセス等においては、その適格性について、例えば以下のような要素が適切に勘案されているか。

      • イ. 経営管理を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験

        金商法等の関連諸規制や監督指針で示している経営管理の着眼点の内容を理解し、実行するに足る知識・経験、指定親会社グループ業務の健全かつ適切な運営に必要となるコンプライアンス及びリスク管理に関する十分な知識・経験、その他金融商品取引業者の行うことができる業務を適切に遂行することができる知識・経験を有しているか。

      • ロ. 十分な社会的信用

        • a. 反社会的行為に関与したことがないか。

        • b. 暴力団員ではないか、又は暴力団と密接な関係を有していないか。

        • c. 金商法等我が国の金融関連法令又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し、又は刑法若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないか。

        • d. 禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないか。

        • e. 過去において、所属した法人等又は現在所属する法人等が金融監督当局より法令等遵守に係る業務改善命令、業務停止命令又は免許、登録若しくは認可の取消し等の行政処分を受けており、当該処分の原因となる事実について、行為の当事者として又は当該者に対し指揮命令を行う立場で、故意又は重大な過失(一定の結果の発生を認識し、かつ回避し得る状態にありながら特に甚だしい不注意)によりこれを生ぜしめたことがないか。

        • f. 過去において、金融監督当局より役員等の解任命令を受けたことがないか。

        • g. 過去において、金融機関等の破綻時に、役員として、その原因となったことがないか。

  • (3)監査等委員会

    • マル1監査等委員会は、制度の趣旨に則り、その独立性が確保されているか。

    • マル2監査等委員会は、付与された広範な権限を適切に行使し、会計監査に加え業務監査を的確に実施し必要な措置を適時に講じているか。

    • マル3監査等委員会は、取締役の職務の執行の適法性及び妥当性等を監査するため、監査等委員会の職務を補助すべき使用人、内部監査部門、会計監査人等を有効に活用しているか。

      監査役設置会社における監査役がいわゆる実査を行うことができることに比べ、社外取締役中心の監査等委員会は、内部統制システムを通じたいわゆる組織監査を行うという制度的な基盤を踏まえて、特に内部監査部門が監査等委員会をサポートする体制が整備されているか。

    • マル4監査等委員会は、取締役が株主総会に提出する監査等委員である取締役の選任議案について、同意の審議に際し、その独立性・適格性等を慎重に検討しているか。

      特に監査等委員である社外取締役については、指定親会社グループとの人的関係、資本的関係又は取引関係その他の利害関係を検証しているか。

    • マル5指定親会社の監査等委員である取締役の選任議案の決定プロセス等においては、その適格性について、例えば以下のような要素が適切に勘案されているか。

      • イ. 指定親会社の取締役の職務の執行の監査を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験

        内部統制システムの構築・運用の状況を監視及び検証し、内部統制システムの構築・運用に係る取締役会の審議等において、積極的な役割を果たすに足る知識・経験、その他独立した立場から取締役の職務を監査することにより、指定親会社グループ業務の健全かつ適切な運営を確保するための知識・経験を有しているか。

      • ロ. 十分な社会的信用

        • a. 反社会的行為に関与したことがないか。

        • b. 暴力団員ではないか、又は暴力団と密接な関係を有していないか。

        • c. 金商法等我が国の金融関連法令又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し、又は刑法若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないか。

        • d. 禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないか。

        • e. 過去において、所属した法人等又は現在所属する法人等が金融監督当局より法令等遵守に係る業務改善命令、業務停止命令又は免許、登録若しくは認可の取消し等の行政処分を受けており、当該処分の原因となる事実について、行為の当事者として又は当該者に対し指揮命令を行う立場で、故意又は重大な過失(一定の結果の発生を認識し、かつ回避し得る状態にありながら特に甚だしい不注意)によりこれを生ぜしめたことがないか。

        • f. 過去において、金融監督当局より役員等の解任命令を受けたことがないか。

        • g. 過去において、金融機関等の破綻時に、役員として、その原因となったことがないか。

    • (参考)「監査等委員会監査等基準」(公益社団法人日本監査役協会)

  • (4)内部監査部門

    • マル1内部監査部門は、被監査部門に対して十分けん制機能が働くよう独立する一方、被監査部門の業務状況等に関する重要な情報を適時収集する態勢・能力を有し、指定親会社グループを取り巻く環境や業務状況に的確に対応した、実効性ある内部監査が実施できる体制となっているか。

    • マル2内部監査部門は、被監査部門におけるリスク管理状況等を把握した上、リスクの種類・程度に応じて、頻度・深度に配慮した効率的かつ実効性ある内部監査計画を立案し、状況に応じて適切に見直すとともに、内部監査計画に基づき効率的・実効性ある内部監査を実施しているか。

    • マル3内部監査部門は、内部監査で指摘した重要な事項について遅滞なく代表取締役及び監査等委員会に報告しているか。内部監査部門は、指摘事項の改善状況を的確に把握しているか。

  • (5)外部監査の活用

    • マル1実効性ある外部監査が、指定親会社グループの業務の健全かつ適切な運営の確保に不可欠であることを十分認識し、有効に活用されているか。

    • マル2外部監査が有効に機能しているかを定期的に検証するとともに、外部監査の結果等について適切な措置を講じているか。

    • マル3関与公認会計士の監査継続年数等が、適切に取り扱われているか。

  • (6)監査機能の連係

    外部監査機能と内部監査部門又は監査等委員会の連係が有効に機能しているか。

    • (参考)経営管理(ガバナンス)態勢に関する監督に当たっての着眼点については、以下が参考となる。

    • マル1バーゼル銀行監督委員会「銀行組織における内部管理体制のフレームワーク」(1998 年9月)

    • マル2バーゼル銀行監督委員会「銀行組織にとってのコーポレート・ガバナンスの強化」(2006 年2月)

    • マル3「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)

    • マル4バーゼル銀行監督委員会「コーポレート・ガバナンスを強化するための諸原則」(2010年10月)

    • マル5バーゼル銀行監督委員会「銀行のためのコーポレート・ガバナンス諸原則」(2015年7月)

    (注)以下、本監督指針においては、原則として監査役設置会社である指定親会社の場合を前提に記載するが、指名委員会等設置会社又は監査等委員会設置会社である指定親会社の場合には、本監督指針の趣旨を踏まえ、実態に即して適宜読み替えて検証等を行うこととする。

IV-5-2 業務の適切性

指定親会社グループの業務の適切性については、以下の点にも留意するものとする。

  • マル1グループ全体として各国の関連法令諸規則の遵守を徹底するため、海外拠点の規模や業務の特性にも応じて、たとえば必要な人的構成の確保(現地の関連法令諸規則に精通した役職員の配置等)や規程類の整備など、適切な法令等遵守態勢を確立しているか。指定親会社は、継続的に、海外拠点等において十分な態勢が確保されているかを検証しているか。

  • マル2指定親会社は、海外拠点等の役職員による現地の関係法令諸規則の精通度合いを継続的に確認し、必要に応じて研修・教育を適切に実施するための態勢が確保されているかを検証しているか。

  • マル3法令違反その他の不適切な業務運営を未然に防止する観点から、指定親会社と海外拠点等の役割分担も明確にしつつ、営業部門等への牽制機能や監視機能を適切に発揮できる態勢となっているか。

  • マル4海外拠点における問題を把握した場合には、指定親会社と海外拠点との間の情報共有及び必要な対応を迅速に行うとともに、我が国及び関連する監督当局にも速やかに報告を行う態勢を整備しているか。

IV-5-3 自己資本の充実

指定親会社グループの自己資本の充実に関しては、以下の点にも留意するものとする。

(注)指定親会社グループに該当しないグループのうち、海外進出先の監督当局からグループとしての(連結ベース等での)財務の健全性についてのモニタリングを我が国で受けていることが求められているものについて、当該グループ内の金融商品取引業者が自己資本規制告示第10条の規定等に基づき内部管理モデル方式の承認を得ているときは、同方式を用いてグループとしての市場リスク相当額を算出できるものとする。

IV-5-3-1 最終指定親会社における自己資本の適切性・十分性

最終指定親会社が、市場等の信認を確保するため、自己資本の充実を図り、リスクに応じた十分な財務基盤を保有することは極めて重要である。このため、最終指定親会社は、リスク特性に照らした全体的な自己資本の充実の程度を評価するプロセスを有し、十分な自己資本を維持するための適切な方策を講じる必要がある。

IV-5-3-1-1 取締役及び取締役会

  • (1)取締役は、最終指定親会社が取っているリスクの性質及び水準並びにリスクと適切な自己資本の水準との関係について理解しているか。

  • (2)取締役及び取締役会は、戦略目標を達成するためには、それに見合う資本計画が不可欠な要素であることを理解し、戦略目標に照らして適切な資本計画を策定しているか。

  • (3)取締役会は、経営計画の策定に当たって、現在及び将来において必要となる自己資本の額を戦略目標と関連付けて分析し、同計画において、戦略目標に照らして望ましい自己資本の水準、必要となる資本調達額及び適切な資本調達方法等についての概要を示しているか。

  • (4)取締役は、リスク特性に照らした全体的な自己資本の充実の程度を評価するプロセス及び質・量ともに十分な自己資本を維持するための適切な方策を講じることに十分に関与しているか。

  • (5)「最終指定親会社及びその子法人等の保有する資産等に照らし当該最終指定親会社及びその子法人等の自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準を定める件」(以下「最終指定親会社告示」という。)第2条に基づき連結自己資本規制比率の算出を行っている最終指定親会社については、取締役及び取締役会は、資本計画の策定に当たり、バーゼル銀行監督委員会「バーゼルIII:より強靭な銀行および銀行システムのための世界的な規制の枠組み」(2010年12月)(以下「バーゼルIII」という。)及びバーゼル銀行監督委員会「グローバルにシステム上重要な銀行に対する評価手法と追加的な損失吸収力の要件」(2011年7月)(以下これらの文書を含むバーゼル銀行監督委員会における合意を「バーゼル合意」と総称する。)に従い、平成28年以降に段階的に積立てが求められる資本バッファーを十分に勘案しているか。

IV-5-3-1-2 自己資本の充実度の評価

  • (1)最終指定親会社がリスク特性に照らした全体的な自己資本の充実の程度を評価する態勢は、以下の内容を含む適切なものとなっているか。

    • マル1あらゆるリスクを確実に認識し、評価・計測し、報告するための方針と手続き

    • マル2上記マル1において認識し、評価・計測したリスクとの対比において自己資本の充実の程度を評価するプロセス

    • マル3戦略目標及び経営計画を考慮した上で、リスクとの対比での自己資本の目標を設定するためのプロセス

    • マル4最終指定親会社のリスク管理プロセス全体が適切なものであることを確保するための内部監査部門による検証を含む内部統制のプロセス

  • (2)最終指定親会社告示第2条に基づき連結自己資本規制比率の算出を行っている最終指定親会社においては、バーゼル合意の趣旨を踏まえて最終指定親会社告示により、最終指定親会社告示に定める水準以上の普通株式等Tier1資本、Tier1資本及び総自己資本を自己資本として保有することが求められるが、当該最終指定親会社が自己資本の充実度を評価するに当たっては、自己資本の量のみならず、少なくとも以下の点を含む自己資本の質について分析を行っているか。

    • マル1普通株式等Tier1資本は、普通株式に係る株主資本が中心の資本構成となっており、普通株式に係る資本金、資本剰余金及び利益剰余金が普通株式等Tier1資本の主要な部分を占めているか。普通株式等Tier1資本がその他有価証券評価差額金等のその他の包括利益累計額に過度に依存することにより、普通株式等Tier1比率が大きく変動するリスクが存在していないか。

    • マル2普通株式、その他Tier1資本調達手段及びTier2資本調達手段は、最終指定親会社告示に規定する要件を全て満たしており、バーゼル合意の趣旨を十分に踏まえた内容となっているか。

    • マル3普通株式は議決権を有する単一の種類の株式によって構成されているか。株主総会において議決権を行使することができる事項について制限のある種類の株式を最終指定親会社告示上の普通株式として発行する場合には、議決権に関する事項を除き、議決権を有する普通株式と同一の内容を有し、最終指定親会社告示に定める要件を全て満たすものとなっているか。

    • マル4最終指定親会社がその資本調達手段の保有者に対して取得に必要な資金を直接又は間接に融通しておらず、また、当該資本調達手段を当該最終指定親会社の子会社等又は関連会社等が取得していないか。

    • マル5資本調達手段が金銭以外の財産によって払い込まれる場合には、現物出資財産の価額は適切に算定されており、かつ、かかる払込みがなされることについて監督当局の承認を得ているか。

  • (3)繰延税金資産

    自己資本の質と関連する事項として、繰延税金資産の額又はその自己資本に対する割合が大きいことは最終指定親会社の健全性の観点から問題となり得ることから、以下の点にも留意するものとする。

    • マル1繰延税金資産について、その資産性が将来の課税所得に依存していること等の脆弱性にかんがみ、税効果会計に関する会計基準等の趣旨を踏まえ適正に計上されているか。

    • マル2繰延税金資産の算入根拠と計算手続きに関して、繰延税金資産の計上額に対する信頼性を高めるために、決算短信(中間決算を含む。)の公表時その他の適切な時期に下記イ.~へ.の項目について開示するとともに、開示する計数等を基に計算手続き等に即した分かりやすい説明を行っているか。

      • イ.繰延税金資産の算入根拠(過去の業績等の状況を主たる判断基準とした場合には実務指針(注)の例示区分(4号但書の場合には非経常的な特別な原因を含む。))及び将来の課税所得の見積り期間(X年間)。

      • ロ.過去5年間の課税所得(繰越欠損金使用前の各年度の実績値)。

      • ハ.見積りの前提とした実質業務純益の見込み額(X年間の合計値)。

      • ニ.見積りの前提とした税引前当期純利益の見込み額(X年間の合計値)。

      • ホ.調整前課税所得の見積り額(X年間の合計値)。

      • へ.繰延税金資産・負債の主な発生原因について、共通に開示すべき項目。

        • a.繰延税金資産:貸倒引当金、有価証券有税償却、その他有価証券評価差額金、退職給付引当金、繰越欠損金、その他。

        • b.繰延税金負債:退職給付信託設定益、その他有価証券評価差額金、リース取引に係る未実現利益、その他。

        (注)「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(平成11年11月9日、日本公認会計士協会)

  • (4)最終指定親会社告示第2条に基づき連結自己資本規制比率の算出を行っている最終指定親会社については、バーゼル合意を踏まえて最終指定親会社告示に定める水準以上の資本保全バッファー、カウンター・シクリカル・バッファーに係る普通株式等Tier1資本を、自己資本として追加的に保有することが求められる。また、最終指定親会社告示第2条の2第5項第1号の規定に基づき指定された最終指定親会社(以下、「最終指定親会社告示に指定されたG-SIBs」という。)又は最終指定親会社告示第2条の2第5項第2号の規定に基づき指定された最終指定親会社(以下、「最終指定親会社告示に指定されたD-SIBs」という。)については、G-SIBsバッファー又はD-SIBsバッファーとして、最終指定親会社告示に定める水準以上の普通株式等Tier1資本を自己資本として追加的に保有することが求められる。

    資本保全バッファーとは、金融及び経済のストレス期において損失の吸収に使用できる資本のバッファーをいう。

    カウンター・シクリカル・バッファーとは、金融市場における信用の供与が過剰な場合に、将来の景気の変動によって生じるおそれのある損失に対するバッファーであり、各国又は各地域の金融当局が定める比率に当該国又は地域に係る信用リスクアセットの額を保有する信用リスクアセットの額の合計額で除して得た割合を乗じ、国又は地域に応じて得られた値を合計して算出する。最終指定親会社告示第2条の2第4項第1号における金融庁長官が別に指定した比率(以下「カウンター・シクリカル・バッファー比率」という。)については、金融庁が適切と認める指標(例えば、総与信・GDP比率、金融機関の貸出態度DIなど)等を参考にしつつ、日本銀行との協議を踏まえ、総合判断を行い、カウンター・シクリカル・バッファー比率を決定する。カウンター・シクリカル・バッファー比率の引上げを行う場合、当該比率を公にした日から1年以内にその適用を開始する。カウンター・シクリカル・バッファー比率の引下げを行う場合には、当該比率を公にした日からその適用を開始する。

    G-SIBsバッファー、D-SIBsバッファーとは、それぞれ、最終指定親会社告示に指定されたG-SIBs、最終指定親会社告示に指定されたD-SIBsに対し、当該最終指定親会社等のシステム上の重要性に鑑み、破綻の可能性を低減させる目的で損失の吸収のため資本を増強させるものであり、これらのバッファー水準は、システム上の重要性を勘案した上で最終指定親会社告示に定める。

    グローバルなシステム上重要な銀行(Global Systemically Important Banks; G-SIBs)の選定に係るシステム上の重要性評価は、金融安定理事会によって行われるものであり、国際的に活動する銀行等のうち、「金融庁長官が定める場合において、最終指定親会社が自己資本の充実の状況を記載した書面に記載すべき事項を定める件」(以下、「開示告示」という。)第3条第5項に規定する定量的な開示事項のうち、別紙様式第2号第32面項番3の額(バーゼルIIIレバレッジ比率のエクスポージャー合計額)を直近に終了した事業年度末の為替レートでユーロに換算して得られたものが二千億ユーロを超える銀行等が評価対象とされ、マル1「規模」、マル2「相互連関性」、マル3「代替可能性/金融インフラ」、マル4「複雑性」、マル5「国際的活動」の5基準に基づきG-SIBsが選定されており、これに鑑み最終指定親会社告示で指定する。

    国内のシステム上重要な銀行(Domestic Systemically Important Banks; D-SIBs)の選定に係るシステム上の重要性評価は、各国当局によって行われる。我が国におけるシステム上の重要性評価に際しては、まず、連結ベース総資産が十五兆円以上の国内の銀行等が評価対象とされ、マル1「規模」、マル2「相互連関性」、マル3「代替可能性/金融インフラ」、マル4「複雑性」の4つの基準に関連する13指標を用いて、各銀行等のスコアを算出する。次に、これら銀行等に含まれる国際統一基準の適用を受ける者(最終指定親会社を含む。)のうち、当該スコアに加え、特定の市場における重要性等、各銀行等の特性も踏まえた総合的判断を行い、システム上重要と評価された銀行等をD-SIBsに選定し、うち最終指定親会社については最終指定親会社告示で指定する。

    なお、4つの基準に関連する13指標と各指標のスコア算出上のウェイトは下の表のとおり。

    評価基準 評価指標 ウェイト

    規模

    バーゼルIIIレバレッジ比率のエクスポージャー合計額(※)

    25%

    相互連関性

    金融機関等向け与信に関する以下の残高の合計額(※)

    • 金融機関等向け預金及び貸出金の額(コミットメントの未引出額を含む。)

    • 金融機関等が発行した有価証券(担保付社債、一般無担保社債、劣後債、短期社債、譲渡性預金及び株式)の保有額

    • 金融機関等とのレポ形式の取引のカレント・エクスポージャーの額(法的に有効な相対ネッティング契約の効果を勘案できるものとし、ゼロを下回らないものに限る。)

    • 金融商品市場等によらないで行う金融機関等との派生商品取引及び長期決済期間取引に係る公正価値評価額及びカレント・エクスポージャー方式で計算したアドオンの額(法的に有効な相対ネッティング契約の効果を勘案できるものとし、ゼロを下回らないものに限る。)

    5%

    金融機関等に対する債務に関する以下の残高の合計額(※)

    • 金融機関等からの預金及び借入金の額(コミットメントの未引出額を含む。)

    • 金融機関等とのレポ形式の取引のカレント・エクスポージャーの額(法的に有効な相対ネッティング契約の効果を勘案できるものとし、ゼロを上回らないものに限る。)

    • 金融商品市場等によらないで行う金融機関等との派生商品取引及び長期決済期間取引に係る公正価値評価額及びカレント・エクスポージャー方式で計算したアドオンの額(法的に有効な相対ネッティング契約の効果を勘案できるものとし、ゼロを上回らないものに限る。)

    5%

    発行済有価証券(担保付社債、一般無担保社債、劣後債、短期社債、譲渡性預金及び株式)の残高(※)

    5%

    時価のあるその他有価証券のうち株式の額

    5%

    一般預貯金等のうち、残高が1,000万円を超える場合のその超過する部分の額

    5%

    代替可能性

    /金融インフラ

    直近に終了した事業年度における日本銀行金融ネットワークシステム、全国銀行資金決済ネットワークその他これらに類する決済システムを通じた決済の年間の合計額(日本円での決済分に限る。)

    8.33%

    信託財産及びこれに類する資産の残高(国内居住者からの預り分に限る。)

    8.33%

    直近に終了した事業年度における債券及び株式に係る引受けの年間の合計額(国内の債券市場及び株式市場における引受けに限る。)

    4.165%

    トレーディング量の合計額 4.165%

    複雑性

    金融商品市場等によらないで行う金融機関等との派生商品取引及び長期決済期間取引に係る想定元本の額の残高(※)

    8.33%

    対外与信の残高

    8.33%

    対外債務の残高

    8.33%

      (※)保険子会社のエクスポージャー額を含める。
        
  • (5)最終指定親会社については、自己資本の充実の状況が適当であるかを判断するための基準の補完的指標であって、過度なレバレッジの積み上がりを抑制するための簡素かつ非リスクベースの指標である連結レバレッジ比率(最終指定親会社及びその子法人等の保有する資産等に照らし当該最終指定親会社及びその子法人等の自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準の補完的指標として定めるレバレッジに係る健全性を判断するための基準(以下「連結レバレッジ比率告示」という。)第2条に定める連結レバレッジ比率をいう。)について、連結レバレッジ比率告示に定める水準以上のTier1資本を保有することが求められる。

    連結レバレッジ比率告示第2条ただし書の規定に基づき、日本銀行が、金融機関の日本銀行に対する預け金の額に大きな変動を生じせしめる金融政策を実施するような例外的なマクロ経済環境下においては、日本銀行が行う金融政策との調和を図るため、連結レバレッジ比率の分母となる総エクスポージャーの額から日本銀行に対する預け金の額を除外しつつ、最低所要比率の見直しを行うこととし、当該比率については金融庁長官が別に指定する。なお、見直し後の最低所要比率については、マクロ経済環境等を踏まえ、適宜見直しを行うこととする。

IV-5-3-1-3 資本調達手段の連結自己資本規制比率上の自己資本としての適格性の確認

自己資本の充実度の評価に関連して、最終指定親会社告示第2条に基づき連結自己資本規制比率の算出を行っている最終指定親会社について、海外特別目的会社が発行する優先出資証券、劣後特約付借入金及び劣後特約付社債といった資本調達手段に係る発行等の届出があった場合等において、これらが連結自己資本規制比率規制上の自己資本として適格であるかについては、最終指定親会社告示及びバーゼル合意の趣旨を十分に踏まえて確認するものとし、その際の着眼点の詳細については、必要に応じ、主要行等向けの総合的な監督指針 III-2-1-1-3を参照するものとする。

また、最終指定親会社告示第4条に基づき連結自己資本規制比率の算出を行っている最終指定親会社の劣後特約付借入金及び劣後特約付社債の適格性の確認については、必要に応じ、本監督指針IV-2-1(1)を参照するものとする。

IV-5-3-2 最終指定親会社における連結自己資本規制比率の正確性

連結自己資本規制比率のリスクアセットの計算については、特に以下の点に留意してチェックするものとする。

IV-5-3-2-1 意図的保有の該当性の判断・比例連結の方法の使用に関するチェック

  • (1)金融システム内での資本調達(いわゆるダブル・ギアリング)は、「ある金融機関における問題が他の金融機関に迅速に伝播することから金融システムを脆弱なものにする」というバーゼル合意における指摘を踏まえ、我が国においては、最終指定親会社告示において、最終指定親会社告示第2条に基づき連結自己資本規制比率を算出する最終指定親会社の自己資本から「控除項目」として控除しなければならない場合として、他の金融機関等の自己資本の向上のため、意図的に当該他の金融機関等の株式その他の資本調達手段を保有している場合(以下、「意図的な保有」という。)を規定している。

    この「意図的な保有」の判断における着眼点の詳細については、必要に応じ、主要行等向けの総合的な監督指針III-2-1-2-2((2-2)を除く。)を参照するものとする。

  • (2)連結自己資本規制比率を算出する際に金融業務を営む関連会社等について比例連結の方法の使用の届出があった場合においては、必要に応じ、主要行等向けの総合的な監督指針III-2-1-2-2(4)を参照するものとする。

IV-5-3-2-2 リスクアセットの計算方法

  • (1)資産の流動化が行われた場合には、法形式上の譲渡に該当する場合であっても、リスクの移転が譲受者に完全に行われている等、実質的な譲渡が行われているか。

  • (2)買戻し権利付債権譲渡については、原則としてリスクアセットの削減効果を認める。

    ただし、決算期を跨いで買戻し権利付債権譲渡を行った場合、当該決算期以降1年以内に当該権利を行使して買戻しを行うインセンティブを与えるような契約を結んでいるものについては、リスクアセットの削減効果を認めない。

    なお、一時的な連結自己資本規制比率の引上げを行う意図をもって買戻し権利付債権譲渡を行っている場合には、上記にかかわらずリスクアセットの削減効果を認めない。

  • (3)決算期を跨いで又は決算期日に保有債権に銀行保証等を付している場合には、原則、当該債権の残存期間と保証等の期間が等しい場合にのみリスクアセットの削減効果を認める。

    ただし、保証等の残存期間が債権の残存期間を下回っている場合であっても、当該保証等につき正当な理由があり、かつ、継続して信用リスクの削減が期待できる場合(注)にはリスクアセットの削減効果を認める。

    なお、一時的な連結自己資本規制比率の引上げを行う意図をもって保証契約等を結んでいる場合は、上記にかかわらずリスクアセットの削減効果を認めない。

    (注)当面、保証等の残存期間が1年以上の場合を目途とする(ただし、保証等の残存期間が1年以上のものでも、実質的に1年以内に保証契約等を解除するインセンティブを与えるような契約を結んでいるものについては、リスクアセットの削減効果を認めない。)。

  • (4)最終指定親会社告示第2条に基づき連結自己資本規制比率を算出する最終指定親会社のマーケット・リスク相当額算出時における外国為替リスクの算出対象ポジションのうち、財務諸表上、取得価額で表示されている外貨建ての長期にわたる出資等に係るポジションについては、当面、外国為替リスクの対象から除外することを認める。

IV-5-3-2-3 トレーディング業務にかかる資産及び取引に関する内部管理等

最終指定親会社告示第2条に基づき連結自己資本規制比率を算出する最終指定親会社においては、マーケット・リスク規制の適用対象取引は最終指定親会社告示第11条に規定するトレーディング業務に係る資産及び負債がその主たる内容となるが、最終指定親会社はマーケット・リスク規制の適用対象取引を明確化し、不適当な取引(注)を排除するとともに、適用対象取引が適切に管理される必要がある。こうした観点から、以下の点について確認するものとする。

  • (1)マーケット・リスク規制の適用対象取引及びその管理方法(想定される保有期間及び保有期間が想定を超える蓋然性などを踏まえ、取引の特性に応じて適切に価格を評価するための方法を含む。)を文書により明確化しているか。

  • (2)当該文書により適切に運用していることが定期的な内部監査(価格評価の方法及びその運用の適切性については、内部監査及び会計監査)により確認されているか。

    (注)「トレーディング業務に対するバーゼル II の適用およびダブル・デフォルト効果の取扱い」(平成17年バーゼル銀行監督委員会)では、ヘッジされていないヘッジファンド持分や私募株式等が不適当なものとして例示されている(パラグラフ271)。

IV-5-3-3 最終指定親会社における連結レバレッジ比率の正確性

IV-5-3-3-1 意義

連結レバレッジ比率については、最終指定親会社の財務の健全性を示す基本的指標であることから、正確に計算されなければならない。

連結レバレッジ比率の計算の正確性については、連結レバレッジ比率告示及びバーゼル合意の趣旨を十分に踏まえる必要がある。

IV-5-3-3-2 連結レバレッジ比率の計算方法の一貫性

例えば連結レバレッジ比率告示における経過措置の適用等、連結レバレッジ比率の計算方法に関して最終指定親会社に一定の裁量が認められている場合、合理的な理由に基づく変更の場合を除き、一貫した計算方法が採用されなければならない。

IV-5-3-4 自己資本の充実の状況等の開示

  • (1)自己資本比率規制及びレバレッジ比率規制の第3の柱(市場規律)に基づく自己資本の充実の状況等の開示は、第1の柱(最低所要自己資本比率及び最低レバレッジ比率)及び第2の柱(金融機関の自己管理と監督上の検証)を補完し、市場による外部評価の規律づけにより金融機関の経営の健全性を維持することを目的としている。したがって、最終指定親会社告示第2条に基づき連結自己資本規制比率を算出し、連結レバレッジ比率告示第2条に基づき連結レバレッジ比率を算出する最終指定親会社が、開示告示に基づき開示を行う場合には、市場による外部評価の規律づけという開示告示の趣旨に従って、経営実態やリスク特性等に照らし重要な事項が適切に実施される必要がある。

  • (2)一方で、最終指定親会社の経営実態やリスク特性等に照らして必ずしも重要ではない事項については、これらの情報の詳細な開示が行われることで市場による外部評価の規律づけという開示告示の趣旨が却って妨げられる可能性も否定できない。このため、経営実態やリスク特性等に照らして重要ではない項目がある場合には、開示を行わなかった項目及び重要ではないと判断をした理由等を開示することで差し支えないものとする。

  • (3)財産的価値を有する情報及び守秘義務に係る情報については、これらの情報を公開することで最終指定親会社の地位に大きな損害を与えるおそれがある場合には、当該項目に関するより一般的な情報とともに、開示を行わなかった項目及びその理由を開示することで差し支えないものとする。

  • (4)開示の状況の確認に際しては、開示告示に定められた項目の網羅性に着目すべきではなく、最終指定親会社の経営実態やリスク特性等に照らして重要な事項が適切に開示され、市場による外部評価の規律づけに有用な内容となっているかを確認する必要がある。

    (注)着眼点の詳細については、必要に応じ、主要行等向けの総合的な監督指針III-3-2-4-5及びIII-3-2-5(2)を参照。

IV-5-3-5 早期是正措置

IV-5-3-5-1 意義

財務の健全性を確保するためには、最終指定親会社が主体的に自己資本の充実を図り、リスクに応じた十分な財務基盤を保有することが極めて重要であるが、当局としても、最終指定親会社の取組みを補完する役割として、連結自己資本規制比率及び連結レバレッジ比率という客観的な基準を用い、必要な是正措置命令を迅速かつ適切に発動し、最終指定親会社の経営の早期是正を促していく必要がある。

IV-5-3-5-2 監督手法・対応

「最終指定会社及びその子法人等の経営の健全性の状況に係る区分及びこれに応じた命令の内容を定める件」(以下、「区分告示」という。)において具体的な措置内容等を規定する早期是正措置について、以下のとおり運用することとする。

  • (1)命令発動の前提となる連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率

    区分告示第1条第1項第1号、第3号及び第4条の表の区分(以下、「早期是正措置区分」という。)に係る連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率は、次の連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率によるものとする。

    • マル1連結決算状況表により報告された連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率(ただし、事業報告書の提出後は、これにより報告された連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率、金商法第57条の17第2項の規定に基づき経営の健全性の状況を記載した書面の届出が行われた後は、これにより報告された連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率)

    • マル2上記マル1が報告された時期以外に、当局の検査結果等を踏まえた最終指定親会社と監査法人等との協議の後、当該最終指定親会社から報告された連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率

      (注)最終指定親会社の連結自己資本規制比率は、連結普通株式等Tier1比率、連結Tier1比率及び連結総自己資本規制比率の3つの比率並びに資本バッファー比率によって構成される。早期是正措置の命令発動の前提となる連結自己資本規制比率は、このうち連結普通株式等Tier1比率、連結Tier1比率及び連結総自己資本規制比率である。

  • (2)早期是正措置区分に基づく命令

    • マル1第1区分・レバレッジ第1区分の命令、第2区分・レバレッジ第2区分の命令及び第3区分・レバレッジ第3区分の命令の相違

      第1区分又はレバレッジ第1区分の「経営の健全性を確保するために合理的と認められる計画(原則として資本の増強に係る措置を含むものとする。)の提出及びその実行の命令」は、経営の健全性が確保されている基準として、第1区分に係る連結自己資本規制比率又はレバレッジ第1区分に係る連結レバレッジ比率の範囲を上回る水準の達成を着実に図るためのものである。したがって、計画全体として経営の健全性が確保されるものであることを重視し、その実行に当たっては、基本的に最終指定親会社の自主性を尊重することとする。

      第2区分又はレバレッジ第2区分の「次の各号に掲げる最終指定親会社及びその子法人等の自己資本の充実に資する措置に係る命令」は、連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率が、経営の健全性を確保する水準をかなり下回っており、これを早期に改善するためのものである。したがって、個々の措置は、当該最終指定親会社の経営実態を踏まえたものにする必要があることから当該最終指定親会社の意見は踏まえるものの、当局の判断によって措置内容を定めることとする。なお、最終指定親会社が当該措置を実行するに当たっては、基本的に個々の措置毎に命令を達成する必要がある。

      第3区分又はレバレッジ第3区分の「最終指定親会社及びその子法人等の自己資本の充実、合併又は三月以内の期間を定めて対象特別金融商品取引業者の親会社(金商法第五十七条の二第八項に規定する親会社をいう。以下この条及び次条において同じ。)でなくなるための措置のいずれかを選択した上、当該選択に係る措置を実施することの命令」は、自己資本の充実の状況が特に著しい過小資本の状況にある最終指定親会社に対し、これを速やかに改善するか、最終指定親会社としての業務継続を断念するかを迫るものである。

    • マル2改善までの期間

      連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率を改善するための所要期間については、最終指定親会社が策定する経営改善のための計画等が、当該最終指定親会社に対する市場等の信認を早急に維持・回復するために十分なものでなければならない。したがって、少なくとも1年以内(原則として翌決算期まで)に第1区分に係る連結自己資本規制比率又はレバレッジ第1区分に係る連結レバレッジ比率の範囲を上回る水準を回復するための計画等であることが必要である。

      なお、最終指定親会社が、区分告示第2条第1項の規定により、その連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率を当該最終指定親会社が該当する早期是正措置区分に係る連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率の範囲を超えて確実に改善するために合理的と認められる計画を提出した場合であって、当該最終指定親会社に対し、当該最終指定親会社が該当する同表の区分に係る連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率の範囲を超える連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率に係る同表の区分に掲げる命令を発出するときは、上記の連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率を改善するための所要期間には、以下(3)の連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率を当該最終指定親会社が該当する同表の区分に係る連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率の範囲を超えて確実に改善するための期間は含まないものとする。

  • (3)区分告示第2条第1項に規定する合理性の判断基準

    区分告示第2条第1項の「その区分の範囲を超えて確実に改善するために合理的と認められる計画」の合理性の判断基準は、次のとおりとする。

    • 最終指定親会社の業務の健全かつ適切な運営を図り当該最終指定親会社に対する市場等の信頼をつなぎ止めることができる具体的な資本増強計画等を含み、連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率が、原則として3か月以内に当該最終指定親会社が該当する早期是正措置区分に係る連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率の範囲を超えて確実に改善する内容の計画であること。

    (注)増資等の場合は、出資予定者等の意思が明確であることが必要である。

  • (4)命令区分の根拠となる連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率

    区分告示第2条第1項の適用に当たり「実施後に見込まれる連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率以下の同表の区分(非対象区分又はレバレッジ非対象区分を除く。)に定める命令」は、原則として3か月後に確実に見込まれる連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率の水準に係る区分(非対象区分又はレバレッジ非対象区分を除く。)に掲げる命令とする。

  • (5)計画の進捗状況の報告等

    計画の進捗状況は、その実施完了までの間、毎期(中間期を含む。)報告させることとし、その後の実行状況が計画と大幅に乖離していない場合は、原則として計画期間中新たな命令は行わないものとする。ただし、第3区分又はレバレッジ第3区分の命令を行った最終指定親会社にあっては、その後、当該命令の区分の根拠となった連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率が第1区分・レバレッジ第1区分又は第2区分・レバレッジ第2区分に係る連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率の範囲に達したときは、当該時点における連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率に係る区分に掲げる命令を行うことができるものとし、第2区分又はレバレッジ第2区分の命令を行った最終指定親会社にあっては、その後、当該命令の区分の根拠となった連結自己資本規制比率が第1区分に係る連結自己資本規制比率の範囲に達したとき、又は当該命令の区分の根拠となった連結レバレッジ比率がレバレッジ第1区分の範囲に達したときは、当該時点において第1区分又はレバレッジ第1区分の命令を行うことができるものとする。

    また、最終指定親会社が、区分告示第2条第1項の規定により、その連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率を当該最終指定親会社が該当する早期是正措置区分に係る連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率の範囲を超えて確実に改善するために合理的と認められる計画を提出し、当該最終指定親会社に対し、当該最終指定親会社が該当する同表の区分に係る連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率の範囲を超える連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率に係る同表の区分に掲げる命令を発出した場合においては、原則として増資等の手続きに要する期間の経過後直ちに、当該最終指定親会社の連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率が、当該最終指定親会社が発出を受けた命令が掲げられた同表の区分に係る連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率以上の水準を達成していないときは、当該時点における連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率に係る同表の区分に掲げる命令を発出するものとする。

  • (6)区分告示第2条第2項に掲げる資産の評価基準

    • マル1第1号「有価証券」

      区分告示第2条第2項第1号の「公表されている最終価格」とは、取引所取引価格、基準気配値、基準価格等とする。また、「これに準ずるものとして合理的な方法により算出した価額」とは、金融商品取引業者等から算出日の時価情報として入手した評価額又は最終指定親会社の独自の評価方法によるもので合理的と認められるものとする。

      なお、算出に当たっては、以下の点に留意する。

      • イ.株式又は社債で発行会社が大幅な債務超過に陥っていること等により、償還等に重大な懸念があるものについては、実態に即して評価し算出する。

      • ロ.外貨建有価証券は、円貨に換算することとし、算出日のTT仲値により算出する。

    • マル2第2号「有形固定資産」

      • イ.土地

        鑑定評価額(1年以内に鑑定したもの。)又は直近の路線価、公示価格、基準地価格及び客観的な売買実例等を参考として算出した妥当と認められる評価額とする。

      • ロ.建物及び動産

        原則、帳簿価格とする。

    • マル3第3号「前二号に掲げる資産以外の資産」

      金銭の信託(有価証券運用を主目的とする単独運用のものに限る。)において信託財産として運用されている有価証券(外国有価証券を含む。)の評価は、区分告示第2条第2項第1号及び上記マル1に準ずるものとする。なお、デリバティブ取引を組み入れている金銭の信託については、当該取引に係る未決済の評価損益も加え算出する。

      (注)指定国際会計基準又は米国会計基準を採用している最終指定親会社にあっては、当該採用する会計基準によって資産を評価するものとする。

  • (7)その他

    • マル1区分告示第1条第1項第1号、第3号及び第2条の規定に係る命令を行う場合は、行政手続法等の規定に従うこととし、同法第13条第1項第2号に基づく弁明の機会の付与等の適正な手続きを取る必要があることに留意する。

    • マル2第1区分に係る連結自己資本規制比率又はレバレッジ第1区分に係る連結レバレッジ比率の範囲を下回る最終指定親会社に対しては、原則として区分告示第2条第2項各号に掲げる資産について当該各号に定める方法により算出し、これにより修正した貸借対照表(様式は任意で可。)を提出させるものとする。

    • マル3早期是正措置は、連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率が最終指定親会社の財務状況を適切に表していることを前提に発動されるものであることから、いやしくも早期是正措置の発動を免れるための意図的な連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率の操作を行うといったことがないよう最終指定親会社に十分留意させることとする。

  • (8)区分告示第4条の表の区分に基づく命令

    区分告示第4条に基づく早期是正措置の運用については、必要に応じ、IV-2-2を参照するものとする。

IV-5-3-6 社外流出制限措置

IV-5-3-6-1 意義

金融システムにおける景気循環増幅効果又はシステミック・リスクの緩和を図るため、当局としては、最終指定親会社に対し、連結資本バッファー比率という客観的な基準を用い、状況に応じた社外流出制限措置命令を迅速かつ適切に発動することにより、最終指定親会社の信用供与の機能の維持を促していく必要がある。

IV-5-3-6-2 監督手法・対応

「区分告示」(IV-5-3-4-2において定義される。)において具体的な措置内容等を規定する社外流出制限措置について、以下のとおり運用することとする。

  • (1)命令発動の前提となる連結資本バッファー比率

    区分告示第1条第1項第2号の表の区分(以下、「社外流出制限措置区分」という。)に係る連結資本バッファー比率は、次の連結資本バッファー比率によるものとする。

    • マル1連結決算状況表により報告された連結資本バッファー比率(ただし、事業報告書の提出後は、これにより報告された連結資本バッファー比率、法第57条の17第2項の規定に基づき経営の健全性の状況を記載した書面の届出が行われた後は、これにより報告された連結資本バッファー比率)

    • マル2上記マル1が報告された時期以外に、当局の検査結果等を踏まえた最終指定親会社と監査法人等との協議の後、当該最終指定親会社から報告された連結資本バッファー比率

  • (2)社外流出制限措置区分に基づく命令

    • マル1資本バッファー第1区分から資本バッファー第4区分までに係る措置

      区分告示第1条第1項第2号の表に掲げる「社外流出額の制限に係る内容を含む連結資本バッファー比率を回復するための合理的と認められる改善計画の提出及びその実行の命令」は、計画全体として連結資本バッファー比率の回復を着実に図るためのものであることを重視する。また、社外流出額の制限に係る内容については、社外流出額が各区分に掲げた命令に応じた社外流出可能額の範囲内に確実に制限されるものであるものとし、その実行に当たって、制限の対象となる事由のうちいずれの事由を制限対象とするかについては、基本的に最終指定親会社の判断を尊重することとする。

    • マル2社外流出可能額

      区分告示第1条第5項に規定する「特別な理由がある場合」とは、例えば、最終指定親会社が、社外流出制限計画の実行に係る事業年度において普通株式等Tier1比率を増加させる資本調達を新たに行った場合で、当該資本調達した額を上限として社外流出可能額を超過して支出するような場合が考えられる。

    • マル3調整税引後利益の算出方法

      区分告示第1条第6項に規定する「当該相当する額が費用として計上されなかった場合に納付すべき税額に相当する額」の算出にあたっては、当該額の算出の簡便法として、実際に当該前事業年度において会計上の費用として計上された社外流出額(ただし、税務上の損金として算入されなかった額を除く。)に、納税単位における当該前事業年度末の法定実効税率を乗じて得られた額を前事業年度の実際の税額を加えることにより算出することができるものとする。

    • マル4賞与の意義

      区分告示第1条第5項第5号に規定する「賞与」とは、定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与、ボーナス、夏期手当、年末手当、期末手当等の名目で支給されるものその他これらに類するものをいい、給与等が賞与の性質を有するかどうか明らかでない場合、次のようなものは賞与に該当するものとする。

      • イ. 純利益を基準として支給されるもの

      • ロ. あらかじめ支給額又は支給基準の定めのないもの

      • ハ. あらかじめ支給期の定めのないもの。ただし、雇用契約そのものが臨時である場合のものを除く。

      • ニ. 法人税法第34条第1項第2号に規定する給与(他に定期の給与を受けていない者に対して継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づき支給されるものを除く。)

      • ホ. 法人税法第34条第1項第3号に規定する利益連動給与

      また、「賞与その他これに準ずる財産上の利益」とは、名目に関わらず、上記の性質を有する財産上の利益をいい、例えば、給与又は退職給付金等に上乗せして随時的に支給されるものも含まれるものとする。

    • マル5子法人等の意義

      区分告示第1条第1項第1号に掲げる表に規定する「子法人等」の該当性の判断に係る主要性の有無については、基本的に最終指定親会社の判断を尊重することとするが、指定親会社グループ(本監督指針IV-5の「指定親会社グループ」をいう。以下本号及び次号において同じ。)が形成されている場合、その財政状態又は経営状況に与える影響を勘案し、当該子法人等が重要な意義を有するか否かに留意するものとする。例えば、最終指定親会社の連結総資産に対する当該子法人等の総資産の割合が2%を超えない場合には、「子法人等」に該当しないものとするなど、具体的な基準を用いることが考えられる。ただし、当該子法人等の規模等が僅少であっても、グループの経営上重要な子法人等は「子法人等」に含めているかに留意するものとする。

    • マル6経営上重要な役員・従業員の意義

      区分告示第1条第5項第5号に規定する「経営上重要な」役員及び従業員については、最終指定親会社又は子法人等から高額の報酬等を受ける者であって、最終指定親会社及び子法人等の業務の運営又は財産の状況に重要な影響を与える者を選定するものとする。選定にあたっては、本監督指針IV-5-6-2(2)マル1 ロ.b.及びc.に記載の基準も参考にするものとする。

      また、「役員」については、最終指定親会社の判断により、当該最終指定親会社の社外取締役及び社外監査役を除くことができるものとするが、当該社外取締役及び社外監査役が、最終指定親会社から高額の報酬等を受ける者であって、最終指定親会社及び子法人等の業務の運営又は財産の状況に重要な影響を与える者に該当する場合には、「役員」に含めるものとする。

  • (3)計画の提出及び進捗状況の報告等

    社外流出制限措置区分に基づく命令に係る計画は、毎期(中間期を含む。)提出させるものとし、計画の進捗状況は、必要に応じて報告させることとする。

  • (4)その他

    • マル1区分告示第1条第1項第2号及び第3条の規定に係る命令を行う場合は、行政手続法等の規定に従うこととし、同法第13条第1項第2号に基づく弁明の機会の付与等の適正な手続きを取る必要があることに留意する。

    • マル2最終指定親会社の連結自己資本規制比率が、早期是正措置区分に基づく命令及び社外流出制限措置区分に基づく命令のいずれの区分にも該当する場合は、両者の区分に基づく命令を含む命令を発出するものとする。

IV-5-3-7 早期警戒制度

  • (1)基本的考え方

    最終指定親会社の経営の健全性を確保していくための手法としては、金商法第57条の21第3項に基づき、連結自己資本規制比率又は連結レバレッジ比率による「早期是正措置」が定められているところであるが、本措置の対象とはならない最終指定親会社であっても、その健全性の維持及び一層の向上を図るため、継続的な経営改善への取組みがなされる必要がある。このため、当局においては、早め早めの行政上の予防的措置(早期警戒制度)を講ずることとする。

  • (2)ヒアリング

    • マル1決算に関するヒアリング等により、収益性や収益管理態勢等の状況を常時把握し、分析等を行う。

    • マル2必要に応じ随時行うトップヒアリングにおいて、最終指定親会社の経営者に対し、収益性の改善に向けた経営戦略や業務再構築に向けた取組み方針等について確認する。

    • マル3最終指定親会社の「中期経営計画」等が策定されたときは、随時のヒアリングを行い、経営戦略や業務再構築にむけた取組み内容等を検証する。

  • (3)早期警戒制度

    基本的な収益指標を基準として、収益性の改善が必要と認められる最終指定親会社に関しては、以下のマル1からマル3の対応等を行い、必要な場合には法第57条の23に基づき報告を求めることを通じて、着実な改善を促すものとする。また、改善計画を確実に実行させる必要があると認められる場合には、法第57条の19に基づき業務改善命令を発出するものとする。

    • マル1当局における分析

      収益性のみならず、経営環境やビジネスモデルを含め、リスクテイク・自己資本が現在の状況にある背景・要因を総合的に分析し、最終指定親会社が抱えている課題及びその原因について仮説を構築する。

    • マル2対話を通じた課題の明確化と共有

      構築した仮説に基づき、最終指定親会社の自己評価を十分に踏まえながら、当局と最終指定親会社との間で深度ある対話を行い、課題及びその原因を明確化し、共有する。

    • マル3改善に向けた監督・対話

      共有された課題認識に基づき、原因への対応も含めて必要な改善対応策の策定を促す。必要に応じて、当該改善対応策の実行状況のフォローアップを行う。

IV-5-4 流動性に係る健全性

IV-5-4-1 意義

財務の健全性を確保するためには、自己資本の充実を図るだけではなく、流動性リスクにも備える必要がある。流動性リスクに対する短期的な備えとしては、流動性リスクに応じた十分な流動性資産を保有することにより、資金調達が困難な状況に陥っても、業務の継続を可能とする強靭性を高めることが重要である。当局としても、指定親会社グループの流動性リスクを把握し、必要に応じて十分な流動性資産の保有を促していく必要がある。

こうした観点から、最終指定親会社に対しては、連結流動性カバレッジ比率(金融商品取引法第57条の17第1項の規定に基づき、最終指定親会社が当該最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性のうち流動性に係る健全性の状況を表示する基準(以下「連結流動性比率告示」という。以下同じ。)第2条に定める連結流動性カバレッジ比率をいう。以下同じ。)及び連結安定調達比率(連結流動性比率告示第 73 条に定める連結安定調達比率をいう。以下同じ。)という客観的な基準を用い、十分な流動性資産の保有を求めるものとする。

IV-5-4-2 連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の計算の正確性

IV-5-4-2-1 意義

連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率については、最終指定親会社の流動性に係る健全性を示す基本的指標であることから、正確に計算されなければならない。

連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の計算の正確性については、連結流動性比率告示及びバーゼル合意の趣旨を十分に踏まえる必要がある。

IV-5-4-2-2 留意事項

連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の計算の正確性については、連結流動性比率告示上の規定に則って正確に計算されているか。特に以下の点に留意してチェックするものとする。

  • (1)最終指定親会社が具体的な計算方法及び資産・負債の特定方法を策定する場合の留意点

    連結流動性カバレッジ比率における資金流出項目のうち、連結流動性カバレッジ比率告示第28条に規定する適格オペレーショナル預金に係る特例、同告示第37条に規定するシナリオ法による時価変動時所要追加担保額及び連結安定調達比率の計測に係る同告示第99条に規定する相互に関係する資産及び負債に係る特例を適用する場合には、規定されている要件を満たす範囲で、最終指定親会社等が具体的な計算の方法を策定する又は対象となる資産・負債の特定を行うものとされている。この場合には、具体的な計算方法や資産・負債の特定方法が同告示を踏まえて適切に策定されているか、次の点について事前に確認するものとする。

    • マル1最終指定親会社等が適格オペレーショナル預金に係る特例を用いようとする場合には、適格オペレーショナル預金の額の推計方法が適格業務要件、オペレーショナル預金要件、定量的基準及び定性的基準を満たす形で設定されているか。

    • マル2最終指定親会社等がシナリオ法による時価変動時所要追加担保額を用いようとする場合には、そのストレスシナリオの設定及び金額の推計方法がストレスシナリオの選定基準、定量的基準及び定性的基準を満たす形で設定されているか。

    • マル3最終指定親会社等が相互に関係する資産及び負債に係る特例を用いようとする場合には、対象となる資産及び負債が連結流動性比率告示第99条に規定する要件の全てを満たす形で設定されているか。

  • (2)連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の計算における計算対象の判定について

    連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の計算においては、最終指定親会社等における内部管理等も踏まえつつ計算対象の設定を行う事項があるが、具体的には以下の項目について、適切な取扱いを行っているか。

    • マル1「金融機関等」の定義における「流動性に係るリスク管理の観点から重要性が低いと認められる者」の判断

      連結流動性比率告示第1条第19号に規定する「金融機関等」については、「流動性に係るリスク管理の観点から重要性が低いと認められる者」を除くこととされている。この際、例えば、資金流出額を減少させることによって連結流動性カバレッジ比率を高めることを目的として、または利用可能安定調達額を増加することによって連結安定調達比率を高めることを目的として、重要性が認められる者を恣意的に「金融機関等」の定義から除外するなど不適当な取扱いを行っていないか。

    • マル2規模の小さな連結子法人等の取扱い

      連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の水準への影響が極めて小さい小規模の連結子法人等については、算入可能適格流動資産をゼロとする又は利用可能安定調達額をゼロとするなど保守的であることが担保される場合に限り、簡便的な計算をすることも可能である。この際、例えば、連結総資産(連結総負債)に占める資産(負債)の割合が非常に大きな金融機関に対して当該計算を適用したり、オフ・バランスシートにおいて多額の資金流出が見込まれるにも関わらず、これを考慮しないまま小規模の連結子法人等であるとして当該計算を適用するなど不適当な取扱いを行っていないか。

  • (3)過去の流動性ストレス期の判定

    連結流動性比率告示第1条第32号に規定する「過去の流動性ストレス期」の判定においては、2007年以降(我が国においては、2008年以降)まで遡ることを基本としつつ、可能な範囲で1990年代後半のデータ等を参照することとされている。この際、データが入手可能であり、かつ過去の流動性ストレス期としての要件を満たしていた時期について、適切に判定の対象として含めているか。

  • (4)価格下落率等の確認

    連結流動性比率告示上のレベル2A資産及びレベル2B資産の判定においては、過去の市場流動性ストレス期における価格下落率若しくは担保掛目の下落幅を確認することが求められている。例えば、債券の格付及び残存期間について、十分に細分化した上で判定を行うなど適切に確認を行っているか。

  • (5)資金流出入項目の区分及び資金流出率設定の適切性

    連結流動性比率告示上、資金流出入項目に係る区分の設定並びにそれらに係る資金流出率(額)又は資金流入額の設定を行う項目、連結安定調達比率については利用可能安定調達額並びに所要安定調達額にかかる項目があるが、これらについては、最終指定親会社等による適切な設定及び検証を求めることとしている。具体的には、以下の項目について留意することとする。

    • マル1連結流動性比率告示第20条に定める「準安定預金」について、内部管理として追加的な区分を設定する必要があるか否かを検討し、必要があると認められる場合には適切な区分を行っているか。また、過去の流動性ストレス期における資金流出の割合の実績を踏まえた資金流出率の設定を行っているか。さらに、過去の資金流出率をそのまま適用することなく、現在の準安定預金の構成に当てはめた場合にも資金流出率が10%を超える蓋然性が十分に低いか等について検証を行っているか。

    • マル2連結流動性比率告示第52条に定める「その他偶発事象に係る資金流出額」及び同告示第98条第3号に定める偶発債務について、内部管理を踏まえた適切な区分を行っているか。また、その適切性について定期的な検証を行っているか。

    • マル3連結流動性比率告示第59条に定める「その他契約に基づく資金流出額」及び同告示第72条に定める「その他契約に基づく資金流入額」について、流動性リスクの管理上の重要性を踏まえた適切な設定を行っているか。また、その適切性について定期的な検証を行っているか。

  • (6)残存期間の設定方法の妥当性

    連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の計算において、残存期間を価格評価モデルにより計算している場合には、モデルが一定の前提の上に作られていることを理解し、定期的にモデルの前提やロジックを見直し、残存期間の見積もりの確からしさについても適切性を検証しているか。

  • (7)有価証券の割当方法の適切性

    連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の計算において、有価証券の調達元が不明な場合(例えば、有価証券のショート・ポジションやレポ形式の取引等の担保として差し出している有価証券の調達元が不明な場合)において、最終指定親会社等が定める任意の割当方法を使用している場合には、当該割当方法を文書により明確化するとともに、当該文書に従って適切に運用されているか。

  • (8)連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の計算方法の一貫性等

    例えば、連結流動性比率告示第34条第2項のネッティング(資金流出額及び資金流入額の計算過程において、一定の額との相殺を行うことをいう。)の取扱いや、同告示第28条に規定する適格オペレーショナル預金に係る特例、同告示第37条に規定するシナリオ法及び同告示第99条に規定する相互に関係する資産及び負債の特例を採用している場合にはそれらの取扱いなど、連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の計算方法に関して最終指定親会社等に一定の裁量が認められている場合、合理的な理由に基づく変更の場合を除き、一貫した、かつ保守的な計算方法を採用しているか。

IV-5-4-2-3 監督手法・対応

  • (1)オフサイト・モニタリング

    連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の詳細については金商法第57条の23に基づき定期的に報告を求め、計算の正確性等に問題があることが判明した場合には、必要に応じてヒアリングを行うものとする。

    また、連結流動性比率告示第28条に規定する適格オペレーショナル預金に係る特例、同告示第37条に規定するシナリオ法及び同告示第99条に規定する相互に関係する資産及び負債の特例を採用している最終指定親会社等に対しては、これらの取扱いについて、定期的に報告を求め、告示に定められた要件を充足しているか、前回から計算方法に変更がないか等について確認することとする。

  • (2)検査結果や(1)のオフサイト・モニタリングにより、連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の計算の正確性に問題があると認められる場合には、金商法第57条の23に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、金商法第57条の19に基づき業務改善命令を発出するものとする。

IV-5-4-3 連結流動性比率規制に関する監督上の措置

最終指定親会社の流動性リスク管理における取組みを補完する役割として、連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率という客観的な基準を用い、必要に応じた措置を迅速かつ適切に発動し、最終指定親会社の経営の改善を求めるものとする。

IV-5-4-3-1 監督手法

  • (1)定期的なモニタリング(月次又は四半期)

    最終指定親会社に対し定期的に連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の報告を求め、最終指定親会社等の流動性リスクの状況を常時把握する。

    • マル1連結流動性カバレッジ比率(月次)

      月末日又は最終営業日を基準日とした連結流動性カバレッジ比率について、翌月の第10営業日までに指定された様式に基づく報告を求める。その際、連結流動性カバレッジ比率の水準や変動の傾向を確認するとともに、連結流動性カバレッジ比率の分子・分母の内訳を把握することにより変動の要因・背景を分析するものとする。

      また、他のオフサイト・モニタリングデータや金融経済指標等を分析することにより、金融システム全体に流動性に関するストレスの兆候がないかを確認する。

    • マル2連結安定調達比率(四半期毎)

      四半期末日を基準日とした連結安定調達比率について、報告徴求により求める。その 際、連結安定調達比率の水準や変動の傾向を確認するとともに、連結安定調達比率の分子・分母の内訳を把握することにより変動の要因・背景を分析するものとする。
      (注)原則として連結流動性カバレッジ比率については月末日を基準日とするが、各最終指定親会社が採用している会計基準等により、最終営業日を基準日とすることもできるものとする。この場合、合理的な理由に基づき変更する場合を除き、一貫した基準日を採用することとする。

  • (2)随時のモニタリング

    (1)に加えて、必要と認められる場合においては、連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の状況について報告を求めるものとする。

IV-5-4-3-2 監督上の対応

  • (1)監督上の措置の前提となる連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率

    (2)に定める監督上の措置の前提となる連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率は、IV-5-4―3-1における定期的なモニタリング又は随時のモニタリングにより報告されたものとする。

  • (2)監督上の措置

    連結流動性カバレッジ比率又は連結安定調達比率が最低水準を下回った場合には、その理由や連結流動性カバレッジ比率又は連結安定調達比率の向上に係る改善策について、金商法第57条の23に基づき速やかに報告を求めるものとする。さらに確実な改善が必要であると認められる場合には、金商法第57条の19に基づき業務改善命令を発出するものとする。

    また、連結流動性カバレッジ比率又は連結安定調達比率が近い将来に最低水準を下回るおそれがあると見込まれる場合には、まずは理由や改善の見込み等についてヒアリングを行うものとする。ヒアリングの結果、なお問題があると認められる場合には、金商法第57条の23に基づき報告を求め、さらに確実な改善が必要であると認められる場合には、金商法第57条の19に基づき業務改善命令を発出するものとする。

    ただし、監督上の対応については、機械的・画一的に運用するものではなく、連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の最低水準を維持するために最終指定親会社が取る対応策の内容やその効果及びその対応策が金融システムに与える影響等に留意する必要がある。

    • マル1金商法第57条の23に基づく報告には、以下の内容を含むものとする。また、必要に応じて、追加的な内容を徴求することとする。

      • イ. 連結流動性カバレッジ比率又は連結安定調達比率が最低水準を下回った要因(特定の算入可能適格流動資産又は利用可能安定調達額の減少、特定の資金流出額又は所用安定調達額の増加等)及びその背景

      • ロ. 連結流動性カバレッジ比率又は連結安定調達比率が最低水準を上回る時期の見通し、及びそれまでの連結流動性カバレッジ比率又は連結安定調達比率の分子・分母の内訳の推移の見通し

      • ハ. 連結流動性カバレッジ比率について、算入可能適格流動資産に含まれないものの、緊急時において資金調達に用いることが可能な流動性資産の額及びその種類等

        (注)金商法第57条の23に基づく報告があった際には、報告内容等を踏まえ、例えば、以下の点を分析することが考えられる。

        • a. 連結流動性カバレッジ比率又は連結安定調達比率の低下が、主に一時的な要因に起因するものであるか、あるいは長期的・構造的な要因に起因するものであるか

        • b. 連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の最低水準を維持するための対応策を起因とした金融システムに悪影響を及ぼす可能性及びその経路等

    • マル2金商法第57条の19に基づく命令においては、合理的と認められる改善計画の提出を求めるとともに、その確実な実行を求めるものとする。改善計画には、以下の内容を含むものとする。また、改善計画の提出に併せ、上記マル1のイ、ロ及びハに関する報告及びその他の報告を徴求することとする。

      • イ. 既に講じた措置及び今後講じる予定の措置及びその時期

      • ロ. 改善計画に要する期間

IV-5-4-4 流動性に係る経営の健全性の状況の開示

  • (1)一般的な留意事項

    流動性に係る経営の健全性の状況の開示は、連結流動性カバレッジ比率及び連結安定調達比率の最低水準及び金融機関の自己管理と監督上の検証を補完し、市場による外部評価の規律づけにより金融機関の経営の健全性を維持することを目的としており、「金融庁長官が定める場合において、最終指定親会社が流動性に係る経営の健全性の状況を記載した書面に記載すべき事項を定める件」(以下「連結流動性比率開示告示」という。)の趣旨に従って適切に実施される必要がある。また、最終指定親会社は、開示の対象となる情報の重要性に照らしつつ、利用者にとって有益な情報開示のあり方を検討する必要がある。特に情報開示の省略等が当該情報の利用者による経済的な意思決定を変更させる可能性のある情報については、その適切な開示に留意するものとする。

    ただし、財産的価値を有する情報及び守秘義務に係る情報については、これらの情報を公開することで金融機関の地位に大きな損害を与えるおそれがある場合には、当該項目に関するより一般的な情報とともに、その特定の情報項目が開示されなかった事実及びその理由を開示することで差し支えないものとする。

    (注)着眼点の詳細については、必要に応じ、主要行等向けの総合的な監督指針III-3-2-5(2)を参照。

  • (2)連結流動性カバレッジ比率に関する定性的開示事項

    • マル1連結流動性比率開示告示第3条第3項第1号の「時系列における連結流動性カバレッジ比率の変動に関する事項」については、過去2年間の連結流動性カバレッジ比率の主要な変動及びその要因について定性的な説明が記載されているか。また、本項目を説明するに当たっては、連結流動性カバレッジ比率に関する定量的開示事項(直近の最終指定親会社四半期に係るものであり、かつ連結流動性カバレッジ比率開示告示別紙様式を使用して作成したもの)を使用しているか。

    • マル2連結流動性比率開示告示第3条第3項第2号の「連結流動性カバレッジ比率の水準の評価に関する事項」については、以下の内容が記載されているか。

      • イ. 最終指定親会社による連結流動性カバレッジ比率の水準に関する評価

      • ロ. 上記イにおいて課題があると評価された場合には、課題に対する実務上の対応策

      • ハ. 最終指定親会社による今後の連結流動性カバレッジ比率の見通しが開示された比率と大きく乖離することが想定される場合には、その見通しに関する定性的な説明

      • ニ. ハについて、実績値が当初の見通しと大きく異なる場合には、その異なった理由の追加的な説明

    • マル3連結流動性比率開示告示第3条第3項第3号の「算入可能適格流動資産の合計額の内容に関する事項」については、必要に応じ、例えば、以下の内容が記載されているか。

      • イ. 算入可能適格流動資産の通貨又は種類等の構成や所在地に著しい変動があった場合には、その変動に関する説明

      • ロ. 主要な通貨(例えば、当該通貨建て負債合計額が、金融機関の負債合計額の5%以上を占める通貨)において算入可能適格流動資産の合計額と純資金流出額の間に著しい通貨のミスマッチがある場合には、そのミスマッチに関する評価及びミスマッチへの実務上の対応策に関する説明

    • マル4連結流動性比率開示告示第3条第3項第4号の「その他連結流動性カバレッジ比率に関する事項」については、必要に応じ、例えば、以下の内容が記載されているか。また、以下の内容に限らず、重要な事項が記載されているか。

      • イ. 連結流動性比率告示第28条に定める「適格オペレーショナル預金に係る特例」を適用している場合には、以下の内容に関する説明

        • a. 適格オペレーショナル預金に係る特例の適用対象

        • b. 適格オペレーショナル預金の金額の推定方法

      • ロ. 連結流動性比率告示第37条に定める「シナリオ法による時価変動時所要追加担保額」を適用している場合には、シナリオ法による時価変動時所要追加担保額の推定方法に関する説明

      • ハ. 連結流動性比率告示第52条に定める「その他偶発事象に係る資金流出額」、同告示第59条に定める「その他契約に基づく資金流出額」又は同告示第72条に定める「その他契約に基づく資金流入額」に重要な項目がある場合には、当該項目に関する定性的な説明

        (注)連結流動性カバレッジ比率(日次平均の値をいう。)の内訳のうち、連結流動性カバレッジ比率に与える影響に鑑み、重要性が乏しく、かつ、実務上の観点(会計上の制約など)から日次データを使用しない項目がある場合には、その情報の利用者にとって有益であると考えられる項目について、日次データを使用しない内容及び説明について記載すること。なお、その日次データを使用しない項目については定期的に見直すこととし、見直しを行った場合にはその理由とともに記載すること。

  • (3)連結安定調達比率に関する定性的開示事項

    • マル1連結流動性比率開示告示第3条第4項第1号の「時系列における連結安定調達比率の変動に関する事項」については、過去3年間の連結安定調達比率の主要な変動及びその要因について定性的な説明が記載されているか。また、本項目を説明するに当たっては、「連結安定調達比率に関する定量的開示事項」(直近の最終指定親会社四半期及び前四半期にかかるものであり、かつ連結流動性比率開示告示別紙様式を使用して作成したもの)を使用しているか。

    • マル2連結流動性比率開示告示第3条第4項第2号の「連結流動性比率告示第九十九条各号に掲げる要件を満たす場合には、その旨」については、以下の内容が記載されているか。

      • イ. 連結流動性比率告示第99条に定める「相互に関係する資産・負債の特例」を適用  している場合には、その適用対象と相互関係性に関する説明

    • マル3連結流動性比率開示告示第3条第4項第3号の「その他連結安定調達比率に関する事項」については、以下の内容が記載されているか。

      • イ. 算入可能適格流動資産の通貨又は種類等の構成や所在地に著しい変動があった場合には、その変動に関する説明

      • ロ. 上記イ.において課題があると評価された場合には、課題に対する実務上の対応策

      • ハ. 最終指定親会社による今後の連結安定調達比率の見通しが開示された比率と大きく乖離することが想定される場合には、その見通しに関する定性的な説明

      • ニ. ハ.について、実績値が当初の見通しと大きく異なる場合には、その異なった理由の追加的な説明

  • (4)連結流動性リスク管理に係る開示事項

    • マル1連結流動性比率開示告示第3条第2項第1号の「流動性に係るリスク管理の方針及び手続の概要に関する事項」には、最終指定親会社等の流動性リスクを確実に認識し、計測・評価し、報告するための態勢が記載されているか。

    • マル2連結流動性比率開示告示第3条第2項第2号の「流動性に係るリスク管理上の指標に関する事項」には、必要に応じ、マル1において計測・評価するリスク管理上の主要な指標等の考え方や活用状況について、例えば、以下の指標等が含まれているか。

      • イ. 金融機関の内部管理上の流動性資産

      • ロ. オンバランス及びオフバランス項目の満期区分別の資金流入・資金流出に係るギャップ

      • ハ. 内部管理上モニタリングしているその他の主要な指標等

      • ニ. 上記イからハの指標等への限度値の活用状況

      • ホ. ストレステストの概要及びその活用方法

    • マル3連結流動性比率開示告示第3条第2項第3号の「その他流動性リスク管理に係る事項」については、必要に応じ、例えば、以下の内容が記載されているか。また、以下の内容に限らず、重要な事項が記載されているか。

      • イ. 流動性リスクを削減するための取組

      • ロ. 流動性ストレス時の対応策(コンティンジェンシー・ファンディング・プラン(CFP))

  • (5)最終指定親会社四半期の開示事項

    連結流動性比率開示告示第5条に規定する「連結流動性カバレッジ比率に関する定量的開示事項」及び「連結安定調達比率に関する定量的開示事項」について、バーゼル合意の趣旨を踏まえ、最終指定親会社四半期ごとの開示が適切になされる必要がある。なお、これらの開示事項(過去情報も含む。)をウェブサイト上に開示する場合には、その記載箇所を投資者等の利用者が容易に特定できるようにすることが適当である。

    また、開示に当たっては、対象となる最終指定親会社四半期の末日を基準日とする金商法第24条第1項若しくは第3項に規定する有価証券報告書、金商法第24条の4の7第1項に規定する四半期報告書又は金商法第24条の5第1項に規定する半期報告書の公表後、速やかに行うことが望ましい。

 IV-5-4-5 TLACに係る経営の健全性の状況の開示(TLAC規制対象会社)

  • (1)一般的な留意事項

    TLACに係る経営の健全性の状況の開示は、TLAC比率の最低水準及び最終指定親会社の自己管理と監督上の検証を補完し、市場による外部評価の規律づけにより銀行の総損失吸収力及び資本再構築力に係る経営の健全性を維持することを目的としており、開示告示に従って、以下の事項に留意し、適切に実施される必要がある。

    また、TLAC適用対象となる金融機関は、開示の対象となる情報の重要性に照らしつつ、利用者にとって有益な情報開示のあり方を検討する必要がある。情報開示の省略等が当該情報の利用者による経済的な意思決定を変更させる可能性のある情報については、その適切な開示に特に留意するものとする。

    ただし、財産的価値を有する情報及び守秘義務に係る情報については、これらの情報を公開することで銀行の地位に大きな損害を与えるおそれがある場合には、当該項目に関するより一般的な情報とともに、その特定の情報項目が開示されなかった事実及びその理由を開示することで差し支えないものとする。

    (参考)
    ・ バーゼル銀行監督委員会「開示要件(第3の柱)の統合及び強化―第2フェーズ」(2017年3月)

  • (2)個別の記載事項に関する留意事項

  • TLACに係る開示事項は、開示告示第3条第8項(第4条第6項で準用する場合を含む。)、第5条第1項第10号から第12号までに掲げる事項となる。具体的には以下の点について留意が必要である。

     ・ 定量的な開示事項について、前期から大幅な変化があった場合には、その要因に係る説明を行うこと。

     ・ 四半期ごとの開示事項について

    • マル1自己資本の充実の状況等(IV-5-3-3参照)に加え、TLACについても、開示告示第5条に規定する事項につき、バーゼル合意の趣旨を踏まえ、四半期ごとの開示が適切になされる必要がある。なお、これらの開示事項(過去情報も含む。)をウェブサイト上に開示する場合には、その記載箇所を預金者、投資家等の利用者が容易に特定できるようにすることが適当である。

      開示告示第5条に掲げる開示事項のうち、TLACに係る事項を同告示別紙様式第5号又は第10号に基づいて開示する場合には、対象となる四半期の末日を基準日とする金商法第24条第1項若しくは第3項の規定に基づく有価証券報告書、同法第24条の4の7第1項の規定に基づく四半期報告書又は同法第24条の5第1項の規定に基づく半期報告書の公表後、速やかに行うことが望ましい。

    • マル2開示告示第5条第1項第12号に掲げる「その他外部TLAC調達手段に関する契約内容の詳細」については、第5条第1項第11号に掲げる「その他外部TLAC調達手段に関する契約内容の概要」に加えて、当該その他外部TLAC調達手段に関する契約の具体的な内容を預金者、投資家等の利用者が容易に知ることができるように記載することが適当である。

      なお、これらのその他外部TLAC調達手段に関する開示事項については、金融機関がその他外部TLAC調達手段の発行、償還又は内容の変更等を行った場合には更新する等、利用者が最新の情報を参照できることが望ましい。

IV-5-5 リスク管理態勢

指定親会社グループのリスク管理態勢については、グループの規模および業務の複雑性を踏まえ、第一種金融商品取引業者単体のリスク管理態勢に関する評価項目 (IV-2-3からIV-2-5まで)に加えて、以下の点にも留意するものとする。

  • マル1グループベースで市場リスク、信用リスク及び流動性リスク等の管理の枠組みを整備している場合、当該枠組みにおいて海外拠点の実際の業務内容やリスク特性等も勘案しており、かつ、海外拠点に特有のリスクを適切に考慮することとしているか。

  • マル2グループベースでのリスク管理の枠組みを適用する場合において、海外拠点が担う役割や海外拠点に適用される管理枠組みは、海外拠点のグループ内での位置づけや、実際の業務内容やリスク特性等を踏まえて妥当なものとなっているか。

  • マル3グループベースで、ビジネスラインごとの縦割りの収益管理・リスク管理が行われている場合であっても、海外拠点等としても合理的に収益を確保し、リスクも適切に管理できる態勢を構築しているか。(継続的に赤字を計上するような体質の弱い海外拠点等はないか。)

  • マル4日本拠点で約定した取引について海外拠点の勘定で管理する場合は、特に、グループ全体において、関連する海外拠点の位置づけを明確にした上で、グループベースのリスク管理の枠組みにおいて適切に管理しているか。また、指定親会社と関連する海外拠点との間で、こうした取引に係る移転価格について、事前に、明確かつ合理的に設定しているか。

  • マル5海外拠点が約定した取引について日本拠点の勘定で管理することがある場合は、上記マル3のほか、特に、日本拠点において当該取引の内容・リスク等を適切に把握できる態勢となっているか。

    (注)着眼点の詳細については、必要に応じ、主要行等向けの総合的な監督指針 III-2-3-2-5、III-2-3-2-6、III-2-3-3を参照。

IV-5-5-1 統合リスク管理態勢

最終指定親会社告示第2条に基づき連結自己資本規制比率を算出する指定親会社グループに対しては、グループ内における統合的なリスク管理態勢を構築することにより、マーケットリスク相当額算定対象以外の資産及び負債に対する金利リスクや大口信用リスク等、連結自己資本規制比率に反映されないリスクをはじめ、各事業部門等が内包する種々のリスクを総体的・計量的に把握をしているか、また、こうして把握した総体的なリスクに照らして質・量ともに十分な自己資本の維持が図られているかについて確認することとする。

(注)着眼点の詳細については、必要に応じ、主要行等向けの総合的な監督指針 III-2-1及び III-2-3を参照。

IV-5-5-2 流動性リスク管理態勢

指定親会社グループ(特に、最終指定親会社告示第2条に基づき連結自己資本規制比率を算出する指定親会社グループ)の流動性管理については、以下の点にも留意するものとする。

  • マル1指定親会社は、海外拠点を含むグループ全体の経営方針・経営戦略及び資金調達能力を反映して、グループとして抱えることのできる流動性リスクの程度及び流動性リスク管理の方針を明確に定めるとともに、定期的に見直しを行っているか。

  • マル2海外拠点を含むグループ全体について、流動性の状況を的確に把握し、リスク管理部門と連携して適切に管理する態勢を整備しているか。たとえば、ストレス時に流動性が影響を受ける度合いを勘案し、資金調達コスト等を定量化した上で、予算プロセス、業績測定及び新商品の承認等に活用する態勢となっているか。

  • マル3海外拠点を含むグループ全体の資産の状況(資産の構成・特徴・分散の状況を踏まえ必要な安定資金の調達額)、現時点の資金調達の状況(調達源の構成・特徴・分散の状況)及び追加的な資金調達能力(保有資産に対する担保の状況や中央銀行等に担保として受け入れられる可能性を含む。)について、拠点及び通貨毎に、適切に把握できる態勢となっているか。

  • マル4資金移動に関する法的・事務的な制約も考慮した上で、拠点毎の日中の流動性の状況及びリスクを適切に把握できる態勢となっているか。

  • マル5指定親会社は、把握されたグループ全体の流動性の状況を踏まえ、各資金調達手段から調達が可能な水準について定期的に確認を行うとともに、資金調達の手段や満期の分散化を進めるなど、必要な取組みを行っているか。

  • マル6指定親会社は、海外拠点を含むグループ全体の流動性の状況について、定期的に、海外拠点のリスク特性や海外市場の状況についても適切に反映したストレステストを行い、潜在的なリスクを特定しているか。

  • マル7指定親会社は、ストレステストの結果も踏まえ、ストレス時においても流動性を維持するための多様・緊急の資金調達手段等を明示し、具体的な手続等も定めたコンティンジェンシー・プランを策定しているか。また、コンティンジェンシー・プランが適切に機能することを確保するため、定期的に、その内容の確認及び必要な更新を行っているか。

  • マル8連結安定調達比率について、最低水準を下回るおそれがあると見込まれる場合には、速やかに当局へ報告することとしているか。

    (注1)指定親会社は、グループとして抱えることのできる流動性リスクの程度、流動性リスク管理の方針及び流動性の状況について、国際的なベストプラクティスも踏まえつつ、積極的に、定期的な公表を行うことが望ましい。

    (注2)着眼点の詳細については、必要に応じ、主要行等向けの総合的な監督指針 III-2-3-4を参照。

IV-5-5-3 リスク管理に係るデータの集計能力及び取締役会等への報告に関する着眼点

IV-5-5-3-1 意義

大規模で複雑な業務を行う金融機関については、損失可能性の低減や財務の健全性の確保の観点から、グループ全体のリスク管理に係るデータ(以下、「リスクデータ」という。)の集計や、取締役会等へのリスク管理に係る報告(以下、「リスク報告」という。)を正確かつ迅速に行うため、リスクデータに係る経営情報システムやリスク管理態勢の整備を行うことが必要である。このような金融機関のリスクデータ集計能力及びリスク報告態勢の向上は、金融システムの安定性を確保する上で重要な点である。特に、強固なリスクデータ集計能力及びリスク報告態勢は、ストレス時・危機時において金融機関自身や監督当局が将来的な予測及びこれに基づく対応策を検討する上でも重要であり、金融機関の再建・破綻処理の実行可能性を高めることや、収益性の向上にも繋がる。

国際的にも、こうした観点から、バーゼル銀行監督委員会における合意(注)の下、G-SIBsについては、金融安定理事会により平成24 年までにG-SIBs に選定された銀行等は平成28 年1月まで、それ以降にG-SIBs に選定された銀行等については金融安定理事会による選定後3年以内、D-SIBsについてはその選定から3年後までに、リスクデータ集計能力及びリスク報告態勢を強化するための「実効的なリスクデータ集計とリスク報告に関する諸原則」を遵守することが求められている。我が国でも、このような国際的な動向を勘案しつつ、金融機関のリスク管理態勢や意思決定プロセスの向上を目的として、リスクデータ集計及びリスク報告に係るIT インフラやプロセス、態勢の整備・改善に向けた取組みを引き続き進めていく必要がある。

(注)バーゼル銀行監督委員会「実効的なリスクデータ集計とリスク報告に関する諸原則」(2013年1月)

IV-5-5-3-2 着眼点と監督手法・対応

バーゼル銀行監督委員会における合意等を踏まえ、G-SIBs又は最終指定親会社告示に指定されたD-SIBsについては、それぞれその選定の公表から3年後までに「実効的なリスクデータ集計とリスク報告に関する諸原則」を遵守し、取締役会等や当局への報告に必要となる情報がグループ全体で迅速に集計・報告できるよう、リスクデータ集計及びリスク報告に係るIT インフラやプロセス、態勢の整備・改善に向けた取組みの実施につき、特に以下の点への対応状況に留意して監督することとする。

  • (1)包括的なガバナンス態勢とITインフラ

    • マル1リスクデータ集計能力及びリスク報告態勢に関して、監督指針における他の着眼点や、バーゼル銀行監督委員会が定める原則・指針等と整合的かつ強固なガバナンスの枠組みが導入されているか。

    • マル2リスクデータ集計能力及びリスク報告態勢に関連するデータ構造やIT インフラについて、平時のみならず、ストレス時・危機時の対応も踏まえた上で、設計・構築し、維持しているか。

  • (2)リスクデータ集計能力

    • マル1平時及びストレス時・危機時の報告において必要とされる正確性及び完全性を満たすリスクデータを作成しているか。また、誤りの可能性を最小化するために、大部分のデータが自動集計されているか。

    • マル2全ての主要なリスクデータについて、グループ連結ベースで捕捉・集計しているか。また、エクスポージャー及びリスクの集中や発生を特定し、報告が可能となるよう、ビジネス部門、グループ会社、保有資産種類、エクスポージャーの業種・地域及びその他の重要な区分毎に集計できる態勢となっているか。

    • マル3最新のリスクデータが、必要とされる正確性や完全性、網羅性、適応性を満たしつつ、適時に集計されているか。なお、具体的なリスクデータ集計のタイミングについては、金融機関全体のリスクプロファイルにおける重要性のみならず、リスクの性質やその潜在的なボラティリティ、これらを踏まえた平時及びストレス時・危機時のそれぞれにおける報告頻度により決定されるべきであることに、留意する必要がある。

    • マル4ストレス時・危機時の対応や内部管理上の必要性の変化、監督当局からの要請を含め、随時の非定形な幅広い要請に対応したリスクデータを集計できる態勢が整備されているか。

  • (3)リスク報告

    • マル1リスク報告書は、集計されたリスクデータを正確に反映するものとなっているか。また、金融機関は報告内容について必要な検証を実施しているか。

    • マル2リスク報告書は、金融機関における全ての重要なリスクをカバーしているか。また、報告の深度と範囲は、業務の規模や複雑性、リスク特性、取締役会等のリスク報告書受領者からの要請と整合的なものとなっているか。

    • マル3リスク報告書は、リスク報告書受領者の必要性に応じた有意義な情報を、明確かつ簡潔な方法で包括的に伝えるものとなっているか。

    • マル4取締役会等は、取締役会等の必要性や報告対象リスクの性質・ボラティリティに加え、実効的かつ効率的な意思決定や健全なリスク管理の観点からの重要性に基づいて、リスク報告書の作成及び配布頻度を決定しているか。また、ストレス時・危機時の作成及び配布頻度は、平時よりも高頻度となっているか。

    • マル5リスク報告書は、取締役会等のリスク報告書受領者に対して、機密性を確保しつつ適切に配布されているか。

IV-5-6 報酬体系

IV-5-6-1 報酬体系に係る留意点等

指定親会社グループにおいては、国際的な雇用・報酬慣行も勘案して、報酬体系の設計・運用を行うことが考えられる。一方、その設計・運用次第では、役職員によるリスクテイクへのインセンティブを高めることとなり、こうした傾向が過度なものとなれば、グループ全体のリスク管理等にとって重大な問題をもたらす可能性もある。

国際的にも、金融安定理事会等の場において、金融機関の報酬体系の設計・運用に関する議論が進められており、指定親会社グループにおいては、こうした国際的動向も考慮しつつ、報酬体系が役職員の過度なリスクテイクを引き起こさないよう確保していくことが必要である。こうしたことから、監督当局としてもこれらグループの報酬体系について、金融安定理事会における国際的な指針(注)等も踏まえつつ、特に以下の点に留意して監督することとする。実際の監督に当たっては、グループの規模、業務の複雑性及び海外拠点の設置状況等も踏まえ、機械的・画一的な運用に陥らないように留意することとする。

なお、報酬体系に関して役職員による過度なリスクテイクが誘発されるおそれのほか、雇用慣行や人事評価制度等に関連して同様のおそれが見られないか等についても、配意するものとする。また、経営者は経営管理を始めとして重要な職務を担っており、そのための報酬を受けていることを踏まえ、適切な経営を行うことを当然に求められていることに留意するものとする。

(注)
  • 金融安定化フォーラム「健全な報酬慣行に関する原則」(2009年4月)
  • 金融安定理事会「「健全な報酬慣行に関する原則」実施基準」(2009年9月)
  • 金融安定理事会「健全な報酬慣行に関する原則及び実施基準の補完的ガイダンス-ミスコンダクトリスクに対処するための報酬手法の利用-」(2018年3月)
 


  • (1)報酬委員会等の役割

    • マル1グループの役職員の報酬体系について、その状況を監視する委員会等その他報酬体系の適切な設計・運用を確保するために経営陣に対する必要な牽制機能を発揮できる機関その他の組織(以下「報酬委員会等」という。)を含めた適切な態勢を整備しているか。また、報酬委員会等は、その監視・牽制機能を営業部門等(担当役員を含む。)から独立して発揮できるよう必要な権限や体制等を確保しているか。

    • マル2報酬委員会等は、報酬額全体の水準が、グループ全体の財務の健全性の現状及び将来見通しと整合的であり、将来の自己資本の十分性に重大な影響を及ぼさないことを確認しているか。

    • マル3報酬委員会等は、報酬体系の設計・運用の適切性の評価に関して、リスク管理部門と密接な連携を図る等、リスク管理の観点に十分留意しているか。

    • マル4報酬委員会等は、報酬体系の運用状況の監視を通じ、報酬額が短期的な収益獲得に過度に連動したり、過度の成果主義を反映したりするといった問題が生じていないか等を確認しているか。

  • (2)報酬体系とリスク管理等との整合性

    • マル1リスク管理部門やコンプライアンス部門の職員の報酬は、他の業務部門から独立して決定され、かつ、職責の重要性を適切に反映したものとなっているか。また、これら職員の報酬に係る業績の測定は、主として、リスク管理や法令等遵守の達成度に加え、リスク管理態勢や法令等遵守態勢の構築への貢献度が反映されたものとなっているか。

    • マル2役職員(職員においては、グループ全体のリスクテイクに重大な影響を与える職員。以下IV-5-6において同じ。)の報酬額に占める業績連動部分の割合は、役職員の職責や実際の業務内容のほか、グループ全体の財務の健全性やグループとして抱えることのできるリスクの程度に関する方針等も踏まえ、適切なものとなっているか。

    • マル3役職員の報酬額のうち相当部分を業績連動とする場合は、報酬額が確定するまでの間に生じうる財務上のリスクへの対応状況(必要な自己資本や流動性の確保の見込み)を踏まえた設計となっているか。

    • マル4役職員の報酬額のうち業績連動部分は、業績不振の場合には相当程度縮小する設計となっているか。

    • マル5役職員の職責や実際の業務内容に応じて、より長期的な企業価値の創出を重視する報酬支払方法(例えば、株式での支払いやストックオプションの付与)や、リスクが顕在化するまでの期間も考慮した報酬支払方法(例えば、株式で支払う場合の一定期間の譲渡制限、ストックオプションを付与する場合の権利行使時期の設定、報酬支払いの繰延べ・業績不振の場合の取戻し)を採用しているか。

    • マル6リスク管理に悪影響を及ぼしかねない報酬体系(複数年にわたる賞与支払額の最低保証、高額な退職一時金制度等)については、適切な改善策を検討・実施しているか。

    • マル7リスク管理と整合的な報酬体系を設計している場合であっても、役職員がその設計趣旨を損ないかねないような行為(表面的にリスクを減少させるような取引等)を行うおそれについて、適切に監視・牽制する態勢を整備しているか。

IV-5-6-2 報酬体系の開示

  • (1)一般的な留意事項

    報酬体系の開示は、「金融商品取引業等に関する内閣府令第208条の26第5号に規定する報酬等に関する事項であって、最終指定親会社及びその子法人等の業務の運営又は財産の状況に重要な影響を与えるものとして金融庁長官が定めるものを定める件」(以下「報酬告示」という。)に定められた事項について、市場や投資者等による外部評価の規律づけを通じ、報酬体系が役職員の過度なリスクテイクを引き起こさないことを確保し、金融機関の経営の健全性を維持するという趣旨を十分に踏まえ、適切に実施される必要がある。

    ただし、公にすることにより金融機関の競争上の地位等を大きく害するおそれのある情報、若しくは、個人が特定され、個人の権利利益が不当に害されるおそれのある情報、又は、金融機関の守秘義務に係る情報等については、より一般的な内容の記載に留めるとともに、その理由を記載することで差し支えないものとする。また、報酬告示に定められた事項に該当する事項がない場合には、該当する事項がない旨を記載することで差し支えないものとする。

    (注)着眼点の詳細については、必要に応じ、主要行等向けの総合的な監督指針III-3-2-5(2)を参照。

    • (参考)

      ・ バーゼル銀行監督委員会「第3の柱における報酬についての開示要件」(2011 年7月)

      ・ バーゼル銀行監督委員会「開示要件(第3の柱)の統合及び強化―第2フェーズ」(2017年3月)

  • (2)個別の記載事項に関する留意事項

    • マル1開示の対象となる報酬告示第2号イに規定する「対象役員」及び「対象従業者等」(以下この(2)において「対象役職員」という。)について、例えば、以下の点に留意して適切な記載がなされているか。

      • イ. 「対象役員」の範囲について

        • a. 「対象役員」から社外取締役又は社外監査役を除く場合は適切な注釈を加えているか。

        • b. 直近の事業年度中に退任した者が含まれているか。

      • ロ. 「対象従業者等」の範囲について

        • a. 「主要な連結子会社等」の範囲について

          「主要な連結子会社等」の範囲について、最終指定親会社が報酬体系の開示の趣旨を損なわず、投資者等の合理的な判断を妨げないよう、グループの財政状態又は経営成績に与える影響の重要性を勘案し、選定しているか。また、「主要な連結子会社等」の選定過程及び選定された「主要な連結子会社等」の範囲に関する説明が適切に記載されているか。例えば、「指定親会社グループの連結総資産に対する子会社等の総資産の割合が2%を超えない場合には、主要な連結子会社等に該当しないものとする。」などの具体的な基準を用いた記載が考えられる。ただし、子会社等の規模等が僅少であっても、経営上重要な子会社等は主要な連結子会社等に含めて記載しているかに留意するものとする。

        • b. 「高額の報酬等を受ける者」の範囲について

          • i)「高額の報酬等を受ける者」の選定に当たっては、対象役員が受ける報酬等の平均額を基礎とし、必要に応じ、過去の実績の変動等を勘案し、実態に即した適切かつ合理的な基準を設けて選定しているか。また、当該基準の設定根拠及びその合理性について適切に記載されているか。例えば、業績不振等により、対象役員が受ける報酬等が減少している場合、過去の実績の変動等を勘案し、調整の上、「高額の報酬等を受ける者」の基準を設定することが考えられるが、その際、当該基準の合理性について適切な注釈を加えているか。

          • ii)「報酬等」の範囲について、対象役員が従業者を兼務しており、従業者として賃金を支給されている場合で、当該賃金のうち重要なものがあるときには、これを含める等、報酬、給与、賃金、給料、手当又は賞与その他名称の如何を問わず、職務の執行の対価又は労働の対償として受ける財産上の利益が含まれているか。

        • c. 「最終指定親会社及びその主要な連結子会社等の業務の運営又は財産の状況に重要な影響を与えるもの」の範囲について

          対象従業者等のリスクテイクの状況について把握した上で、グループの業務の運営又は財産の状況に重要な影響を与える者が適切に選定されているか。また、その選定方法について適切な説明を行っているか。

    • マル2報酬告示第2号イに規定する「対象役員及び対象従業者等の報酬等の決定及び報酬等の支払その他の報酬等に関する業務執行の監督を行う委員会その他の主要な機関等の名称、構成及び職務に関する事項」として、例えば、以下の内容が記載されているか。

      • イ. 報酬委員会等の整備・確保の状況(報酬委員会等の名称、構成員、権限及び職務その他報酬委員会等がその監視・牽制機能を業務推進部門(担当役員を含む)から独立して発揮するための措置(報酬委員会等による監視・牽制の対象となる地域、業務部門又は対象役職員の範囲等))

      • ロ. 報酬委員会等が外部コンサルタントに報酬等に関する助言等の依頼・委託を行っている場合は、当該外部コンサルタントの名称並びに当該依頼・委託の趣旨及び概要

      • ハ. 報酬体系の設計・運用の適切性の評価に関し、報酬委員会等とリスク管理部門が連携している場合はその連携状況等

      • 二. 報酬委員会等の構成員に対して支払われた報酬等の総額(報酬委員会等の職務執行に係る対価に相当する部分のみを切り離して算出することが不可能である場合等は、記載することを要しない。)及び報酬委員会等の会議の開催回数

    • マル3報酬告示第2号ロに規定する「対象役員及び対象従業者等の報酬等の体系の設計及び運用の適切性の評価に関する事項」として、例えば、以下の内容が記載されているか。

      • イ. 対象役職員の報酬等の決定に関する方針(報酬等の種類及び支払方法に関する方針を含む。)を定めている場合はその概要、及び適用範囲(当該方針が適用される地域、業務部門又は対象役職員の範囲等)並びに当該方針を採用した趣旨及び背景

      • ロ. 対象役職員に含まれる者の類型の説明及びその区分ごとの人数(例えば、対象役員、対象従業者等のそれぞれの内訳及び各区分についての説明)

      • ハ. 報酬体系の設計・運用に重要な変更が生じた場合はその理由、概要及び当該変更が報酬等に与える影響

      • ニ. 報酬等の全体の水準が、指定親会社グループの財務の健全性の現状及び将来の見通しと整合的であり、将来の自己資本の十分性に重要な影響を及ぼさないことを確認している場合はその説明

      • ホ. 報酬体系の運用状況の監視を通じ、報酬額が短期的な収益獲得に過度に連動し、また、過度の成果主義を反映するといった問題が生じていないこと等を確認している場合はその説明

    • マル4報酬告示第2号ハに規定する「対象役員及び対象従業者等の報酬等の体系とリスク管理の整合性に関する事項」として、例えば、以下の内容が記載されているか。

      • イ. リスク管理部門・コンプライアンス部門の対象役職員の報酬体系の設計・運用が、被管理・監視対象である他の業務部門から独立して行われている場合はその説明(特に、リスク管理部門・コンプライアンス部門の対象役職員の報酬に係る業績の測定が、職責の重要性を適切に反映したものとなっており、また、リスク管理や法令等遵守の達成度に加え、リスク管理態勢や法令等遵守態勢の構築への貢献度が反映されたものとなっているかについての説明)

      • ロ. 対象役職員の報酬等の決定において、リスクを勘案している場合には、勘案するリスクの種類、当該リスクの計測・評価手法及び勘案方法の概要(前事業年度から重要な変更が生じた場合はその概要を含む)

    • マル5報酬告示第2号ニに規定する「対象役員及び対象従業者等の報酬等と業績の連動に関する事項」として、例えば、以下の内容が記載されているか。

      • イ. 対象役職員の報酬等の額のうち相当部分を業績連動とする場合について

        • a. 対象役職員の報酬等の額に占める業績連動部分の割合を決定する際、対象役職員の職責や実際の業務内容、グループの財務の健全性又はグループとして抱えることのできるリスクの程度に関する方針を勘案している場合はその勘案方法の概要

        • b. グループ、証券会社、業務部門又は当該対象役職員の業績を報酬等へ反映させる方法又は業績を測定する方法の概要

        • c. 業績に連動する報酬等の支払いを繰り延べている場合は、報酬等の額が確定するまでの間に生じうる財務上のリスクへの対応状況(必要な自己資本や流動性の確保の見込み)を踏まえた設計となっていることの説明

        • d. 当該業績連動部分を業績不振の場合に縮小させるための措置等の概要(特に、業績不振の該当性を判断するための基準についての説明)

        • e. 報酬等の額の算定にリスク調整後利益を用いることなどにより、リスク管理と整合的な報酬体系を設計している場合であっても、対象役職員がその設計趣旨を損ないかねないような行為(一時的にリスクを削減し、表面的にリスクを減少させるような取引等)を行うおそれについて、適切に監視・牽制するための態勢の概要

      • ロ. リスク管理に悪影響を及ぼしかねない報酬体系(複数年にわたる賞与支払額の最低保証や、業績やリスクの状況等に鑑み、不相応に高額な退職一時金等)を付与している場合は改善策・対応策の概要

      • ハ. 対象役職員の職責や業務内容に応じ、より長期的な企業価値の創出を重視する報酬等の種類(例えば、株式での支払いやストックオプションの付与)及びリスクが顕在化するまでの期間も考慮した報酬等の支払方法(例えば、株式で支払う場合の一定期間の譲渡制限、ストックオプションを付与する場合の権利行使時期の設定、報酬支払の繰延べ・業績不振の場合の減額又は取戻し)を採用している場合はその方針及び概要(対象役職員の所属部門により繰延報酬割合が異なる場合には、その割合及び割合を決定する要因に関する説明を含む。)

    • マル6報酬告示に規定する「定量的な開示事項」として、報酬告示の別紙様式に従った記載がなされているか。

    • マル7その他報酬等の体系に関する重要な事項がある場合には、報酬告示第2号ホに規定する「報酬等の体系に関し参考となるべき事項」として、当該事項を適切に記載しているか。

IV-5-7 監督手法・対応

なお、グループの財務の健全性等について、改善が必要と認められる場合には、報告に基づく深度あるヒアリング等を通じて状況の把握に努めるとともに、自主的な改善を促すこととする。

  • (1)グループベースの経営管理、業務の適切性、自己資本の適切性・十分性、リスク管理態勢及び報酬体系に関して、国際的な動向等を踏まえて特定される課題への対応状況について、定期的かつ継続的にヒアリングを行うこととする。また、海外当局との協力の枠組みを積極的に活用し、これを通じて把握した海外拠点に関する課題等について、深度あるヒアリングを行うこととする。

  • (2)指定親会社に対し、金商法第57条の23の規定に基づき以下の項目などについて報告を求めることとし、グループの財務の健全性等の把握に努めることとする。

    • マル1指定親会社グループのリスク管理方針(変更があった場合も遅滞なく報告。)

    • マル2指定親会社グループの予算配分・資金調達方針(年度ごとに報告。)

    • マル3最終指定親会社告示第3条に基づき連結自己資本規制比率の算出を行っている最終指定親会社にあっては、指定親会社グループの連結自己資本規制比率が8%を下回った旨の報告(8%を下回った場合、直ちに報告。)

    • マル4最終指定親会社告示第4条に基づき連結自己資本規制比率の算出を行っている最終指定親会社にあっては、指定親会社グループの連結自己資本規制比率が140%を下回った旨の報告(140%を下回った場合、直ちに報告。)

  • (3)上記(1)のオフサイト・モニタリング、検査結果及び事故届出等により、指定親会社グループの業務運営や内部管理態勢等に問題があると認められる場合には、必要に応じ、金商法第57条の23の規定に基づき報告を求める((2)に掲げる項目を除く。)。

  • (4)上記(2)、(3)の報告を踏まえ、更に、その改善のために必要と認められる場合には、金商法第57条の19の規定に基づく業務改善命令等を発出する等の対応を行うものとする。

IV-6 特別金融商品取引業者グループについて

IV-6-1 基本的考え方

大規模かつ複雑な業務をグループ一体として行う金融商品取引業者グループについて、連結ベースの規制・監督の対象とする観点から、大規模な金融商品取引業者については、当該金融商品取引業者とその子法人等に係る連結規制・監督(いわゆる「川下連結」)の対象とすることとされたところである。

この川下連結の対象となる特別金融商品取引業者グループの財務の健全性等については、IV-2に準ずるものとする。

なお、「特別金融商品取引業者グループ」とは、特別金融商品取引業者及びその子法人等で構成されるグループをいう。

(注)特別金融商品取引業者グループに対して、「特別金融商品取引業者及びその子法人等の経営の健全性の状況に係る区分及びこれに応じた命令の内容を定める件」において具体的な措置内容等を規定する早期是正措置を発動する場合に前提となる連結自己資本規制比率については、必要に応じ 、IV-5-3-4-2(1)を参照。

IV-6-2 監督手法・対応

  • (1)グループベースの財務の健全性等について、必要に応じ、定期かつ継続的にヒアリングを行うこととする。

  • (2)特別金融商品取引業者に対し、金商法第56条の2第1項の規定に基づき以下の項目などについて報告を求めることとし、グループの財務の健全性等の把握に努めることとする。

    なお、グループの財務の健全性等について、改善が必要と認められる場合には、報告に基づく深度あるヒアリング等を通じて状況の把握に努めるとともに、自主的な改善を促すこととする。

    • 特別金融商品取引業者グループの連結自己資本規制比率が140%を下回った旨の報告(140%を下回った場合、直ちに報告。)
  • (3)上記(1)のオフサイト・モニタリング、検査結果及び事故届出等により、特別金融商品取引業者グループの業務運営や内部管理態勢等に問題があると認められる場合には、必要に応じ、金商法第57条の10の規定に基づき報告を求める((2)に掲げる項目を除く。)。

  • (4)上記(2)、(3)の報告を踏まえ、更に、その改善のために必要と認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令等を発出する等の対応を行うものとする。

IV-7 外国持株会社等グループの日本拠点である第一種金融商品取引業者について

外国持株会社等グループ(外国持株会社等がその経営を管理する金融グループをいう。以下IV-7において同じ。)においては、グループ本部等(グループ全体または日本拠点を含むグループ各社を管理・統括する立場にある社をいう。以下IV-7において同じ。)が行う経営管理やリスク管理に関する問題が顕在化することとなれば、当該グループの日本拠点である第一種金融商品取引業者にも、直接の影響が及ぶおそれがある。過去には、資金調達の相当部分を市場に依存しつつ、過度なレバレッジにより業務を拡大していた金融機関グループにおいて、不十分なリスク管理の下で過大な短期利益の追求が行われたこと等を背景として、財務の健全性や流動性に問題を抱えることとなったものも見られ、その日本拠点である第一種金融商品取引業者の業務の継続性に深刻な影響が及んだ例もある。

したがって、外国持株会社等グループの日本拠点である第一種金融商品取引業者について、IV-1からIV-4までの項目に沿って監督を行う際には、特に以下の点にも留意することとする。

なお、外国持株会社等グループの態様は様々であり、リスクの特性や波及過程の多様性を反映して、グループ全体の管理態勢も異なる特色を有している。日本拠点が担う役割等についても、相応の人員・資産規模を有しているものやリスクの大きいビジネスモデルを展開しているものもあれば、人員・資産ともに小規模であって主に母国向けのサービスに特化しているものもある。また、国内拠点である第一種金融商品取引業者が外国法人の支店等の形態をとる場合は、我が国の金商法その他の関連法令諸規則が直接的に適用されない場合がある外国法人に直接従属するといった特性にも、注意が必要である。こうしたことから、実際の監督に当たっては、各グループの経営上の特色や日本拠点の業務等の特性を十分に踏まえ、機械的・画一的な運用に陥らないように留意することとする。

IV-7-1 経営管理

外国持株会社等グループの日本拠点である第一種金融商品取引業者の経営管理については、以下の点にも留意するものとする。

  • マル1グループ本部等が策定するグループ全体の経営方針・経営計画等において、日本拠点を設置する意義やそのグループ内での位置づけが明確にされているか。日本拠点の業務戦略・業務計画は、こうしたグループ全体の方針・計画と整合的であり、かつ、持続可能なものとなっているか。

  • マル2グループ本部等と日本拠点の経営陣との間で責任分掌の明確化が図られるとともに、グループ本部等から日本拠点の経営陣に付与された権限は日本拠点の適切な運営を確保するために必要なものとなっているか。また、日本拠点内においても、経営陣が適切な経営管理を行えるよう、権限及び責任が適切に配分されているか。

  • マル3日本拠点の内部監査部門は、日本拠点の業務内容やリスク特性等を勘案の上で、適切に内部監査を実施する態勢となっているか。また、日本拠点の経営陣は、内部監査の結果等を踏まえて適切な措置を講じているか。

  • マル4日本拠点の内部管理態勢は、グループ内での日本拠点の位置づけやその業務戦略・業務計画を踏まえ、実際の業務内容やリスク特性等も勘案して、十分なものとなっているか。

  • マル5グループ本部等は、日本拠点の業務・財務内容を把握し、日本拠点の抱えるリスクの特性を十分に理解した上で、日本拠点のリスクの状況を適切に把握し、必要な対応を行うこととなっているか。

  • マル6日本拠点の経営陣は、上記マル1マル5に照らして不十分な点がないかを確認し、必要に応じ、グループ本部等と協議の上で適切に対応しているか。

IV-7-2 業務の適切性

外国持株会社等グループの日本拠点である第一種金融商品取引業者の業務の適切性については、以下の点にも留意するものとする。

(注)日本拠点として、第一種金融商品取引業者のほかに銀行等も設置されており、両社を兼職する役職員がある場合における業務の適切性等については、別途 、IV-3-1-4を参照。

  • マル1金商法その他の関連法令諸規則の遵守を徹底するため、日本拠点として、たとえば必要な人的構成の確保や規程類の整備など、適切な法令等遵守態勢を確立しているか。特に、グループ本部等が我が国の金商法その他の関連法令諸規則や取引慣行に精通していない可能性も踏まえ、それらに精通した役職員の配置等の対応を行っているか。

  • マル2日本拠点の役職員による金商法その他の関連法令諸規則の精通度合いを継続的に確認し、必要に応じて研修・教育を適切に実施するための態勢を整備しているか。

  • マル3法令違反その他の不適切な業務運営を未然に防止する観点から、グループ本部等と日本拠点の役割分担も明確にしつつ、日本拠点が営業部門等への牽制機能や監視機能を適切に発揮できる態勢となっているか。

  • マル4日本拠点における問題を把握した場合には、グループ本部等と日本拠点との間の情報共有及び必要な対応を迅速に行うとともに、我が国及び関連する監督当局にも速やかに報告を行う態勢を整備しているか。

IV-7-3 自己資本の適切性・十分性

外国持株会社等グループの日本拠点である第一種金融商品取引業者の自己資本の適切性(質)・十分性(量)については、以下の点にも留意するものとする。

  • マル1グループ本部等において、日本拠点の財務状況を適切に把握し、自己資本の適切性・十分性を確保するために必要な態勢を整備しているか。

  • マル2グループ内取引が相当規模に達しているような日本拠点においては、日本拠点の自己資本の適切性・十分性の確保にあたり、グループ全体の自己資本の適切性・十分性も考慮しているか。

  • マル3自己資本の適切性・十分性に関するストレステストやコンティンジェンシープランの策定等をグループベースで行う場合、日本拠点のリスク特性や我が国市場の状況を適切に反映しているか。

  • マル4日本拠点の自己資本の適切性・十分性を検証する際には、海外拠点の勘定を用いて行われる取引に係るリスクのうち、潜在的に日本拠点に帰着しうるリスク等についても、適切に反映しているか。

IV-7-4 リスク管理態勢

外国持株会社等グループの日本拠点である第一種金融商品取引業者のリスク管理態勢については、グループの規模および業務の複雑性を踏まえ、日本拠点である第一種金融商品取引業者単体のリスク管理態勢に関する評価項目 (IV-2-3からIV-2-5まで)に加えて、以下の点にも留意するものとする。

  • マル1グループベースで市場リスク、信用リスク及び流動性リスク等の管理の枠組みが整備されている場合、当該枠組みにおいて日本拠点の実際の業務内容やリスク特性等も勘案しており、かつ、日本拠点に特有のリスクを適切に考慮することとしているか。

  • マル2グループベースでのリスク管理の枠組みを適用する場合において、日本拠点が担う役割や日本拠点に適用される管理枠組みは、日本拠点のグループ内での位置づけや、実際の業務内容やリスク特性等を踏まえて妥当なものとなっているか。

  • マル3グループベースで、ビジネスラインごとの縦割りの収益管理・リスク管理が行われている場合であっても、日本拠点としても合理的に収益を確保し、リスクも適切に管理できる態勢となっているか。(日本拠点として、継続的に赤字を計上するような体質となっていないか。)

  • マル4日本拠点で約定した取引について海外拠点の勘定で管理する場合は、特に、グループ全体における日本拠点の位置づけを明確にした上で、グループベースのリスク管理の枠組みにおいて日本拠点が適切な役割を担っているか。また、グループ本部等と日本拠点との間で、こうした取引に係る移転価格について、事前に、明確かつ合理的に設定しているか。

  • マル5海外拠点が約定した取引について日本拠点の勘定で管理することがある場合は、上記マル4のほか、特に日本拠点において、当該取引の内容・リスク等を適切に把握し、適切に管理を行う態勢となっているか。

IV-7-4―1 流動性リスク管理態勢

外国持株会社等グループの日本拠点である第一種金融商品取引業者の流動性リスク管理態勢については、以下の点にも留意するものとする。

  • マル1グループ本部等において、日本拠点の財務状況を適切に把握し、流動性の適切性・十分性を確保するために必要な態勢を整備しているか。

  • マル2外国グループの日本拠点である第一種金融商品取引業者は、グループ各社からのグループ内の日本拠点に対する流動性の供給状況を適切に把握するとともに、日本拠点の流動性の適切性・十分性が確保されるよう、必要な取組みを行っているか。

  • マル3特にグループ内取引が相当規模に達しているような日本拠点においては、日本拠点の流動性の適切性・十分性の確保にあたり、グループ全体の流動性の適切性・十分性も考慮しているか。また、ストレス時におけるグループ全体の流動性への影響見込みも踏まえ、日本拠点として業務継続が可能な日数を想定した上で、コンティンジェンシープランの策定等の必要な対応を行っているか。

  • マル4流動性の適切性・十分性に関するストレステストやコンティンジェンシープランの策定等をグループベースで行う場合、日本拠点のリスク特性や我が国市場の状況を適切に反映しているか。

  • マル5日本拠点の流動性の適切性・十分性を検証する際には、海外拠点の勘定を用いて行われる取引に係るリスクのうち、潜在的に日本拠点に帰着しうるリスク等についても、適切に反映しているか。

IV-7-5 報酬体系

外国持株会社等グループの報酬体系の設計・運用については、一義的には母国当局において、役職員によるリスクテイクへのインセンティブが過度なものとならないよう、グループベースで適切な監督が行われるものである。

一方、母国当局による監督に適切に協力する等の観点から、日本拠点である第一種金融商品取引業者の報酬体系の設計・運用の状況についても、モニタリングを行うこととする。特に、日本拠点の役職員による過度なリスクテイクを誘発するおそれ等が見られる場合は、リスク管理上の問題についてより深度ある検証を行うとともに、母国当局に対する積極的な問題提起など、必要な対応を行っていくこととする。

(注)当該モニタリングを行うに当たっての着眼点については、必要に応じ、上記IV-5-6を参照。

IV-7-6 監督手法・対応

  • (1)日本拠点である第一種金融商品業者の経営管理、業務の適切性、自己資本の適切性・十分性、リスク管理態勢及び報酬体系に関して、当該日本拠点の業務等の特性も踏まえつつ、必要に応じ、定期的かつ継続的にヒアリングを行うこととする。また、グループ本部等と直接的に対話を行う機会をとらえ、グループ全体及び日本拠点における課題等に関する認識の共有に努める。さらに、海外当局との協力の枠組みを積極的に活用し、これを通じて把握したグループ全体の課題等について、日本拠点に関する対応状況について深度あるヒアリングを行うこととする。

  • (2)上記(1)のオフサイト・モニタリング、検査結果及び事故届出等により、日本拠点である第一種金融商品取引業者の業務運営や内部管理態勢等に問題があると認められる場合には、必要に応じ、金商法第56条の2第1項又は第2項の規定に基づき報告を求める。更に、その改善のために必要と認められる場合には、金商法第51条等の規定に基づく業務改善命令等を発出する等の対応を行うものとする。

 IV-8 秩序ある処理等の円滑な実施の確保

IV-8-1 意義

先般発生した世界的な金融危機への反省を踏まえ、グローバルなシステム上重要な金融機関を迅速かつ秩序立って処理するための枠組みを整備する取組みが、国際的に行われてきた。

かかる枠組みは、世界規模で活動している巨大金融機関が無秩序に破綻すれば、各国の金融・経済システムに極めて深刻な悪影響(システミック・リスク)が生じることが予想されるために、これらを破綻させることができず、公的資金の注入によってかかる金融機関を救済せざるを得ないという、いわゆる「大きすぎて潰せない問題」(too big to fail)を解決することを目的としている。

まず、2011年11月、G20カンヌ・サミットにおいて、金融安定理事会(Financial Stability Board)から報告された「金融機関の実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性」が、破綻処理制度の新たな国際基準として了承された。これは、破綻した場合にシステム上重要な影響を及ぼす可能性がある金融機関に対して、再建計画の策定や一定の要件を満たす破綻処理制度の適用を求めるものである。さらに、2015年11月、G20アンタルヤ・サミットにおいて、金融安定理事会から報告された、「グローバルなシステム上重要な銀行の破綻時の損失吸収及び資本再構築に係る原則」(以下、2017年7月に金融安定理事会から追加的に公表された「グローバルなシステム上重要な銀行の内部総損失吸収力に係る指導原則」と総称し、「TLAC合意文書」という。)が了承された。

これを踏まえ、主要各国においては、金融機関の秩序ある処理に対応するための制度整備等が行われてきた。本邦では、平成25年6月に、預金保険法の改正(平成26年3月施行)により「金融システムの安定を図るための金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理の枠組み」が導入された。さらに、国内のシステム上重要な金融機関を対象とした本邦TLAC規制の枠組み整備の方針を公表(「金融システムの安定に資する総損失吸収力(TLAC)に係る枠組み整備の方針」平成28年4月初版公表、平成30年4月改訂)したうえ、「金融商品取引法第五十七条の十七第一項の規定に基づき最終指定親会社が最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める総損失吸収力及び資本再構築力に係る健全性の状況を表示する基準」(以下、「TLAC1柱告示」という。)等の新設等により、平成31年3月、本邦におけるTLAC規制の適用を開始した。さらに、「金融商品取引業等に関する内閣府令第七十条の二第五項の規定に基づき、親会社が外国会社である金融商品取引業者等のうち金融庁長官が指定する者が整備しなければならない業務管理体制として金融庁長官が定める業務の継続的な実施を確保するためにその親会社との間においてとるべき措置」(以下、「外証TLAC告示」という。)等の新設等により、令和2年3月、海外G-SIBsの主要子会社を監督する現地当局としてのTLAC規制の適用も開始した。

しかしながら、「大きすぎて潰せない問題」の解決のためには、制度上の対応のみならず、金融機関による平時の対応が必要不可欠である。かかる平時の対応には、そもそも危機から破綻に至ることを防ぐための計画の策定のほか、破綻に至った場合の破綻処理可能性(resolvability)(注1)を高めるための態勢(以下、「破綻処理準備態勢」という。)の整備等が含まれる。

この点、上記「金融機関の実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性」は、各国当局が金融機関の破綻処理可能性を評価し、必要な場合には当該金融機関に対して破綻処理可能性を向上させるための対応を求める権限を持つべき旨を規定している。本邦では、平成25年6月の預金保険法改正で導入された規定において「内閣総理大臣(中略)は、金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理が必要となつた場合におけるその円滑な実施の確保を図るために必要な措置が講じられていないと認めるときは、金融機関等に対し、その必要の限度において、期限を付して当該措置を講ずるよう命ずることができる」こととされた(第137条の4)。

上記の趣旨を踏まえ、金融機関においては、秩序ある処理等(注2)の円滑な実施の確保に向けた対応を行うことが求められる。当局は、金融機関に求められる破綻処理準備態勢等の優先順位やその態勢整備の時間軸は当該金融機関のシステム上の重要性に応じて異なることに留意しつつ、金融機関の取組みを監督していく。また、秩序ある処理等の円滑な実施の確保のために必要な場合には、国際的な議論等を踏まえつつ、以下に掲げる事項以外にも対応を求めていくものとする。

(注1)金融機関が破綻処理可能(resolvable)であるとは、金融システムの著しい混乱を回避しつつ、金融システム上重要な業務を保護し、納税者を損失の危険にさらすことなく、当該金融機関の破綻処理を行うことが実現可能であり、その信頼性が高い状態を指す。

(注2)IV-8において、「秩序ある処理等」は、預金保険法第126条の2第1項第2号に規定する特定第二号措置を用いた破綻処理を含むが、これに限られない。

IV-8-2 再建・処理計画の策定等

IV-8-2-1 意義

大規模で複雑な業務を行う金融機関については、当該金融機関が危機に直面した場合、その影響が当該金融機関のみならず、金融システム全体にも及びかねないことから、監督上、危機管理の一環として、これをできる限り未然に防止していくことが重要である。

国際的にも、こうした観点から、金融安定理事会における合意(注)の下、グローバルなシステム上重要な金融機関(Global Systemically Important Financial Institutions; G-SIFIs)及び破綻時に金融システムの安定性に影響を及ぼす可能性があると母国当局によって判断された金融機関に対して、堅牢かつ信頼性のある「再建・処理計画(Recovery and Resolution Plans; RRPs)」を策定することが求められている。

我が国でも、このような国際的な動向を勘案しつつ、RRPsの策定に向けた取り組みを引き続き進めていく必要がある。

(注)金融安定理事会「金融機関の実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性」(2011年11月)

IV-8-2-2 着眼点と監督手法・対応

  • (1)金融安定理事会における合意等を踏まえ、G-SIFIsに選定された金融機関(最終指定親会社告示に指定されたG-SIBsを含む。)及び必要に応じてその他のシステム上重要な金融機関に対して金商法第57条の23に基づき、年1回又は事業やグループ構造等に重要な変更があった場合に、再建計画の策定・提出を求めるものとする。再建計画の内容は、各金融機関のグループ構造やビジネスモデルの実態に応じて異なるものとなるが、金融安定理事会の議論等を踏まえ、最低限、以下の項目が含まれているか確認するものとする。

    • マル1再建計画の概要

      • イ. 当該金融機関における再建計画の位置付け

      • ロ. 再建計画の策定体制

    • マル2再建計画策定に当たって前提となるべき事項

      • イ. 事業概要及びグループ構造の概要

      • ロ. 財務の健全性及び流動性に係る平時におけるリスク管理態勢

    • マル3再建計画発動に係るトリガー

      • イ. 危機時の対応が手遅れとならないような十分に早い段階のトリガー(財務の健全性及び流動性それぞれに係る定量的・定性的トリガーを含む。)

      • ロ. 通常よりも高いストレスを想定したストレステスト及びリバース・ストレステスト(市場全体のストレスシナリオ及び当該金融機関固有のストレスシナリオの双方を含む。)

      • ハ. トリガー抵触についての判断及びトリガー抵触時の対応策の検討における内部意思決定プロセス

      • ニ. 通常時における危機の程度に応じたリスク管理運営と再建計画発動時のリスク管理運営との関係

    • マル4グループの子法人等、海外拠点及び各事業部門の概要

      • イ. 各子法人等及び海外拠点のプロファイル

        • a. 事業概要・財務情報・金融システム上の重要性(市場シェア等を踏まえたビジネスや子法人等のグループにとっての重要性(コア度)及び金融システム上の重要性(クリティカリティ)の分析)

        • b.  海外子法人等や海外拠点の経営戦略上の位置付け

      • ロ. 主な子法人等、海外拠点及び事業部門相互の連関性

        グループ内の資本関係・グループ内の資金取引関係・グループ内の保証関係・ITシステムの相互依存性・クリティカルな機能を有する部門等へサービスを提供する子法人等の特定・人事上の関係

    • マル5リカバリー・オプションの分析

      • イ. ストレスシナリオごとの各リカバリー・オプション(流動性対策、財務の健全性対策)の有効性・適切性・十分性(定量的評価を含む。)

      • ロ. 各リカバリー・オプション実行に当たっての留意点と実行可能性の評価

    • マル6その他

      • イ. 経営情報システム

        再建計画の策定及びリカバリー・オプションの実行の検討に必要な情報の一覧並びに当該情報の入手に要する期間

  • (2)金融安定理事会における合意等を踏まえ、G-SIFIsに選定された金融機関(最終指定親会社告示に指定されたG-SIBsを含む。)及び必要に応じてその他のシステム上重要な金融機関について、当局にて処理計画を策定することとなるが、当該計画の見直し及びこれらの処理の実行可能性の評価を、年1回又は当該金融機関の事業・グループ構造等に重要な変更があった場合に、当局にて実施するものとする。

IV-8-3 外国法準拠の契約に対してステイの決定の効力等を確保するための対応

IV-8-3-1 意義

2013年6月の預金保険法改正により、内閣総理大臣は、預金保険法第137条の3第1項に規定する関連措置等が講じられたことを理由とする契約の特定解除等(同条第2項に規定する特定解除等をいう。)を定めた条項(以下「特定解除等の条項」という。)について、同条第1項に規定する措置実施期間中は、その効力を有しないこととする決定(以下「ステイの決定」という。)を行うことができるようになった。併せて、事業譲渡等における債権者保護手続の特例等に係る同法第131条の規定が改正された。我が国の金融システムの著しい混乱が生ずるおそれを回避するためには、同法第126条の2第1項に規定する特定認定の対象となる第一種金融商品取引業のうち有価証券関連業を行う者等(同条第2項第3号に掲げるものをいう。以下同じ。)は、外国法準拠の契約に対しても、ステイの決定の効力及び同法第131条に規定する債権者保護手続の特例等(以下「ステイの決定の効力等」という。)を及ぼすための適切な管理態勢を整備する必要がある。

IV-8-3-2 主な着眼点

外国法準拠の契約における早期解約条項等の一時停止の効力の確保に向けた国際的な動向を踏まえ、外国法準拠の契約の管理態勢(注)に係る検証において、個々の取引状況等を考慮しつつ、以下の点に留意することとする。
(注)指定親会社については、指定親会社グループ、特別金融商品取引業者については、特別金融商品取引業者グループで管理態勢を整備する必要がある。

  • (1)契約締結等に係る留意事項

預金保険法施行規則第35条の18に規定する「取引所の相場その他の市場の相場がある商品に係る取引又はこれに準ずる取引」のうち、店頭デリバティブ取引、金融等デリバティブ取引、有価証券の買戻又は売戻条件付売買、有価証券の貸借、選択権付き債券売買取引、先物外国為替取引、店頭商品デリバティブ取引及びこれらの取引に類似する取引(これらの取引の担保の目的で行われる取引を含む。以下総称して「対象取引」という。)に関して、中央清算機関を除く取引の相手方との間で、特定解除等の条項を含む外国法準拠の契約を締結する場合(既存の契約内容を実質的に変更する場合を含む。)及び既存の契約に係る新規の取引を行う場合、取引の相手方が所在する法域にかかわらず、ステイの決定の効力等が当該契約に及ぶことを可能とするために必要な対応(注)を行っているか。

(注)以下のような対応が考えられる。

マル1 ステイの決定の効力等が外国法準拠の契約に及ぶことを目的とする国際的に共通のプロトコルを採択するとともに取引の相手方が当該プロトコルを採択していることを確認する対応

マル2 対象取引にステイの決定の効力等が及ぶことを契約書に明記する対応

  • (2)既存の契約に係る留意事項

対象取引に係る特定解除等の条項を含む外国法準拠の既存の契約(当該契約に係る新規の取引を行う場合を除く。)についても、ステイの決定の効力等が当該契約に及ばない場合の影響の重要性を勘案した上で、必要に応じ、上記(1)の対応を行うことが望ましい。

IV-8-3-3 監督手法・対応

上記の監督上の着眼点に基づき、第一種金融商品取引業のうち有価証券関連業を行う者等の管理態勢について深度あるヒアリングを行い、必要な場合には指定親会社に対し、金商法第57条の23及び預金保険法第136条の規定、第一種金融商品取引業のうち有価証券関連業を行う者に対し、金商法第56条の2及び預金保険法第136条の規定に基づき報告を求めることとする。
また、報告徴求の結果、秩序ある処理等の円滑な実施の確保の観点から重大な問題があると認められる場合には、指定親会社に対し、金商法第57条の19の規定に基づく業務改善命令及び預金保険法第137条の4の規定に基づく命令、第一種金融商品取引業のうち有価証券関連業を行う者に対し、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令及び預金保険法第137条の4の規定に基づく命令の発出を検討するものとする。

IV-8-4 秩序ある処理等において金融システム上重要な業務の継続性を確保するための対応

IV-8-4-1 意義

金融機関の破綻処理において、当該金融機関が行う金融システム上重要な業務の継続性を確保することは、システミック・リスクを回避しつつ破綻処理を行うための必要条件であり、国際的にもこの点を重視した議論がなされてきた。我が国でも、2013年6月の預金保険法改正によって特定第二号措置が導入され、金融システム上重要な業務の廃止による我が国の金融システムの著しい混乱を防ぐ観点から、かかる業務を承継機関等に引き継ぎ、継続性を確保することを可能とする仕組みが設けられている。

しかしながら、金融機関の行う業務がグループ内外から提供される各種サービスと連関している状況を踏まえると、破綻処理の過程において金融システム上重要な業務の継続性を確保するためには、当該業務の維持に不可欠なITインフラ等のサービス及び清算機関等の金融市場インフラへのアクセスが、秩序ある処理等の過程においても維持されることが必要である。

金融機関においては、これらの趣旨及び金融安定理事会におけるガイダンス(注)を踏まえ、秩序ある処理等の過程において金融システム上重要な業務の継続性を確保するための対応を行うことが求められる。

(注)金融安定理事会「破綻処理時の業務継続の支援に向けた取極めに係るガイダンス」(2016年8月)、「金融機関の破綻処理時における金融市場インフラへのアクセスの継続に係るガイダンス」(2017年7月)等

IV-8-4-2 主な着眼点及び監督手法・対応

G-SIFIsに選定された金融機関(最終指定親会社告示に指定されたG-SIBsを含む。)及び必要に応じてその他のシステム上重要な金融機関に対して、当該金融機関の金融システム上の重要性等を考慮しつつ、秩序ある処理等の過程において金融システム上重要な業務の継続性を確保するための以下の対応を求めるものとする。また、監督手法・対応については、IV-8-3-3と同様とする。

  • (1)クリティカル・ファンクションの特定

金融安定理事会によるガイダンス(注)及びIV-8-2-2(1)マル4イ.に基づき再建計画の策定の一部として行う子法人等についての分析を踏まえ、グループ内の法人が提供するクリティカル・ファンクション(グループ外の第三者に提供される業務であって、その停止が金融システムの著しい混乱を生じさせるおそれのある業務を指す。)を特定すること。

(注)金融安定理事会「クリティカル・ファンクションの特定に関するガイダンス」(2013年7月)
 
  • (2)クリティカル・シェアード・サービス(CSS)の継続性の確保

秩序ある処理等の過程におけるクリティカル・ファンクションの継続性を、それを支えるサービスの面から確保するための対応として、以下の事項を求めるものとする。

マル1 上記(1)で特定された各クリティカル・ファンクションについての深度ある分析に基づき、また、IV-8-2-2(1)マル4ロ.に基づき再建計画の策定の一部として行うクリティカルな機能を有する部門等へサービスを提供する子法人等の特定を踏まえ、クリティカル・シェアード・サービス(クリティカル・ファンクションを提供する金融機関又はそのグループ内の法人に対して提供されるサービスであって、その停止により当該クリティカル・ファンクションの提供が不可能となる又はそれを提供する能力に重大な支障が生じることが想定されるサービス。グループ外の法人により提供されるサービスを含む。以下、「CSS」という。)を特定すること。/p>

マル2 上記マル1で特定された各CSSについて、その提供者との間で締結されている当該CSSの提供に係る契約上、CSSの受領者又はそのグループ内の法人に秩序ある処理等に係る措置又はそれに伴う親会社の変更等の関連する措置が講ぜられたことをもって当該CSSの提供が停止されるおそれがある場合は、これらの措置が講ぜられた場合であっても当該CSSの提供が継続されることを確保するための契約上の対応を講ずること。
かかる対応としては、契約に基づく支払義務についての不履行がない限り、これらの措置が講ぜられたことをもって当該CSSの提供に係る契約上の解除事由、解約事由その他の終了事由に基づき当該契約を終了させることができない旨を当該契約又は別途の覚書等に定めることが考えられる。

マル3 CSSの提供の継続性を確保するための財務上の措置を講ずること。かかる措置としては、以下の点を財務上確保するための態勢の整備が考えられる。

  • イ.グループ内の法人により提供されるCSS 秩序ある処理等の過程を通じてCSSの提供者が当該CSSの提供を継続できること

  • ロ.グループ外の法人により提供されるCSS 秩序ある処理等の過程を通じてCSSの提供者への対価の支払義務を履行できること 

  • (3)クリティカルFMIサービスへのアクセスの継続性の確保

秩序ある処理等の過程におけるクリティカル・ファンクションの継続性を、それを支える金融市場インフラへのアクセスの面から確保するための対応として、以下の事項を求めるものとする。

マル1 上記(1)で特定された各クリティカル・ファンクションについての深度ある分析に基づき、クリティカルFMIサービス(清算機関、資金決済機関、証券決済機関、振替機関、カストディアン等の金融市場インフラが提供する清算、資金決済、証券決済、カストディ業務等のサービスであって、そのサービスへのアクセスの停止によりクリティカル・ファンクションの提供が不可能となる又はそれを提供する能力に重大な支障が生じることが想定されるサービス。グループ内外の直接参加者を通じて間接参加するサービスを含む。)を特定すること。

マル2 上記マル1で特定された各クリティカルFMIサービスについて、当該クリティカルFMIサービスへのアクセスを維持するために必要な財務上その他の要件(間接参加の場合に直接参加者との関係において生じる要件を含む。)並びに当該クリティカルFMIサービスに関連して提供される信用供与(間接参加の場合に直接参加者から提供される信用供与等)の有無及びその内容を把握すること。

マル3 クリティカルFMIサービスの提供者と協議の上、グループ内の当該クリティカルFMIサービスへの参加者又はその他のグループ内の法人に秩序ある処理等に係る措置又はそれに伴う親会社の変更等の関連する措置が適用された場合に当該クリティカルFMIサービスの提供者が当該参加者に対して講ずると想定される措置(アクセスの継続・停止に係る措置、及び証拠金の追加拠出等の追加的要件がある場合にはその内容を含む。)を把握すること。

マル4 秩序ある処理等の過程においてクリティカルFMIサービスへのアクセスを維持するための計画(コンティンジェンシープラン)を策定すること。コンティンジェンシープランには、最低限以下の内容が含まれていることを確認するものとする。

  • イ.上記マル1マル2及びマル3で把握した情報

  • ロ.上記マル3においてクリティカルFMIサービスの提供者が求めると想定される追加的な要件がある場合には、それに対する対応策

  • ハ.クリティカルFMIサービスへのアクセスを維持するために求められる財務上の要件への対応策

  • 二.コンティンジェンシープランにおける対応策を実行する際の意思決定プロセス

  • ホ.上記ロ.及びハ.の対応策にも関わらずクリティカルFMIサービスへのアクセスが停止した場合に生じ得るクリティカル・ファンクションの継続性に対する影響の分析、及びその影響を軽減するために講じ得る代替措置等の対応策が想定される場合にはその内容

IV-8-5 秩序ある処理等の円滑な実施の確保に向けた流動性モニタリング・報告態勢の整備

IV-8-5-1 意義

秩序ある処理等の円滑な実施のためには、その一連の過程において必要となる流動性所要額やその所要額を充足するために利用可能な流動性資産の把握など、粒度の細かい流動性モニタリングを行うことが重要である。例えば、秩序ある処理等の過程においてクリティカル・ファンクションの継続性を確保するためには、CSSの提供者に対する支払債務の履行やクリティカルFMIサービスの提供者に対する証拠金等の拠出のために利用可能な流動性資産を把握することが重要となる。また、当局等が金融機関の実質破綻状態の認定等を行うにあたっては、金融機関が流動性の枯渇状況を当局等に対して適時に報告できることが重要である。

金融機関においては、これらの趣旨及び金融安定理事会によるガイダンス(注)等を踏まえ、秩序ある処理等の円滑な実施の確保に向けた流動性モニタリング・報告態勢の整備を進めていく必要がある。

(注)金融安定理事会「グローバルなシステム上重要な銀行の秩序ある破綻処理の支援に必要な一時的資金調達に係るガイダンス」(2016年8月)

IV-8-5-2 主な着眼点及び監督手法・対応

G-SIFIsに選定された金融機関(最終指定親会社告示に指定されたG-SIBsを含む。)及び必要に応じてその他のシステム上重要な金融機関に対して、当該金融機関の金融システム上の重要性等を考慮しつつ、秩序ある処理等の際に利用可能な流動性資産を適時に把握するための流動性モニタリング・報告態勢の整備を求めるものとする。

かかる対応の例としては、各法域での規制及び内部管理上の制約を加味した上での、法人及び法域間を自由移動可能な適格流動資産(連結流動性カバレッジ比率告示第1条第14号等で定義する「適格流動資産」を指す。)をグループ内の主要法人・主要拠点別及び主要通貨別に適時に把握し、当局等に報告できる態勢の整備が考えられる。

また、監督手法・対応については、IV-8-3-3と同様とする。

IV-8-6 損失吸収力等の充実

IV-8-6-1 損失吸収力等の適切性・十分性・正確性

IV-8-6-1-1 意義

TLAC合意文書は、G-SIBsに対して予め十分な総損失吸収力(Total Loss-absorbing Capacity)の確保を求めている。これは、万一G-SIBが危機に陥った場合に、当該G-SIBの株主・債権者に損失を負担させ、かつ資本の再構築を行うことにより、当該G-SIBの重要な機能を維持したまま、納税者負担によらずにシステミック・リスクを回避する秩序ある処理を行うことを目的としている。

具体的には、当該G-SIBグループにおいて、当局が破綻処理権限を行使する対象となる会社(以下、「破綻処理対象会社」という。)が外部から調達した損失吸収力・資本再構築力(以下、「損失吸収力等」という。)を予めグループ内部の主要な子会社に配賦しておき、当該子会社が破綻の危機に瀕していると関連当局が判断した際は、生じた損失を破綻処理対象会社に集約して処理する一方、当該子会社は通常どおり営業を継続することが想定されている。この場合、クロスボーダーでの処理が行われるときには、損失が生じた子会社が所在する国の当局(現地当局)と、損失の集約先である破綻処理対象会社が所在する国の当局(母国当局)との連携が重要である。

IV-8-6-1-2 主な着眼点と監督手法・対応

  • (1)母国当局としての金融庁のTLAC規制への対応

  • マル1 TLAC規制の適用対象となる金融機関

 TLAC合意文書を踏まえ、告示に指定されたG-SIBsは本邦TLAC規制の対象とする。さらに、国際的に活動する金融機関グループに関しては、海外の子会社について破綻処理が開始された場合、当該子会社に生じた損失が母国である本邦の親会社に集約され、グループ全体の破綻につながるケースが考えられる。その際、本邦金融システムに特に重要な影響を与えることが想定される金融機関については、いわゆる「大きすぎて潰せない問題」(too big to fail)への対応の必要性が高いため、G-SIBsであるか否かに関わらず、破綻時の十分な損失吸収力等の確保を求めるべきと考えられる。

 したがって、我が国においては、告示に指定されたG-SIBsに加え、告示に指定されたD-SIBsのうち、国際的な破綻処理の枠組みに対応する必要性が高く、かつ破綻の際に我が国の金融システムに与える影響が特に大きいと認められる金融機関(以下、告示に指定されたG-SIBsと総称して「本邦TLAC対象SIBs」という。)をTLAC規制の適用対象とする。

 本邦TLAC対象SIBsとして選定した金融機関グループについては、後述する望ましい処理戦略に従って、国内における破綻処理対象グループ(以下、「国内処理対象グループ」という。)及び処理時における損失の集約が必要な先である国内における破綻処理対象会社(以下、「国内処理対象会社」という。)をTLAC1柱告示に基づき指定し、外部TLACの調達・維持及び内部TLACの分配を求めることとする。

 新規の選定・指定にあたっては、当該対象金融機関グループの自己資本の充実状況や資金調達構造等を踏まえ、あらかじめ十分な期間をかけて検討するものとする。さらに、所要水準の達成に必要な外部TLACを市中から調達するために要する期間を考慮し、本邦TLAC規制の適用対象とする旨を、当該金融機関グループの望ましい処理戦略と併せて、事前に公表するものとする。

(注)MPEアプローチを望ましい処理戦略とする海外G-SIBグループに関し、海外の関連当局と協議の上、本邦の最終指定親会社を一の破綻処理対象会社とすることが合意されたような場合にあっては、上記マル1を準用し、その国内処理対象会社及び国内処理対象グループをTLAC1柱告示に基づき指定することを検討することが想定される。

  • マル2 望ましい処理戦略の選択

 システム上重要な金融機関の処理戦略としては、(i)単一の当局が、金融機関グループの最上位に位置する持株会社等に対して破綻処理権限を行使することで、当該金融グループを一体として処理する方法(SPE(Single Point of Entry)アプローチ)と、(ii)複数の当局が、金融機関グループの各法人に対してそれぞれ破綻処理権限を行使することで、当該金融グループを構成する法人を個別に処理する方法(MPE(Multiple Point of Entry)アプローチ)が挙げられる(FSB「再建・破綻処理計画の策定に関するガイダンス」(2013年7月)等)。

 本邦TLAC対象SIBsの望ましい処理戦略を決定するに当たっては、当該金融機関グループの組織構造(グループ内の相互連関性や相互依存性を含む。)を踏まえた処理可能性を考慮し、SPEアプローチとMPEアプローチのいずれかを選択するものとする。SPEアプローチを選択した場合、通常、国内処理対象会社は当該金融機関グループの最上位の持株会社となり、国内処理対象グループは当該金融機関グループと一致することとなる。

 なお、望ましい処理戦略としていずれを選択した場合であっても、実際にどのような処理を行うかについては、個別の事案毎に当該本邦TLAC対象SIBの実態を考慮のうえで決定すべきことに留意する。

  • マル3 外部TLACの充実 

 望ましい処理戦略を実効的に実現するためには、破綻処理対象会社及びそのグループ会社は、子会社に生じた損失を破綻処理対象会社が吸収した後、最終的に破綻処理対象会社の株主・債権者によって当該損失が吸収されることを可能とする資金調達・分配構造を、予め構築しておくことが必要である。

 これを踏まえ、TLAC1柱告示においては、本邦TLAC対象SIBsの国内処理対象会社に対し、外部TLACとして、損失吸収力等を有すると認められる資本・負債の最低所要水準を満たすよう求めている。

  • イ.所要水準

  • a.適用のタイミング

     平成31年4月1日以降に「告示に指定されたG-SIBs」となった場合における当該金融機関グループの国内処理対象会社については、告示においてG-SIBsとして指定してから3年後を目処にTLAC規制の適用を開始するものとする。この場合、適用開始時における国内処理対象グループ連結の最低所要リスク・アセットベース外部TLAC比率は18%、最低所要総エクスポージャーベース外部TLAC比率は6.75%とする(TLAC完全適用)。

  •  また、平成31年4月1日以降に「告示に指定されたD-SIBs」が新たに本邦TLAC対象SIBsとなった場合における当該金融機関グループの国内処理対象会社については、適用開始時における国内処理対象グループ連結の最低所要リスク・アセットベース外部TLAC比率は16%、最低所要総エクスポージャーベース外部TLAC比率は6%とした上(TLAC段階適用)、3年後を目処に最低所要リスク・アセットベース外部TLAC比率は18%、最低所要総エクスポージャーベース外部TLAC比率は6.75%とする(TLAC完全適用)。

  •  なお、最低所要総エクスポージャーベース外部TLAC 比率について、TLAC1柱告示第1条第11号ただし書の規定に基づき金融庁長官が別に比率を指定する場合には、当該比率とする。

  •  ただし、これらの適用については、機械的・画一的に運用するものではなく、当該金融機関グループがTLAC規制対応に要する期間、外部TLAC比率の最低水準を達成するために当該国内処理対象会社が採る対応策の内容やその効果及びその対応策が金融システムに与える影響等に留意する必要がある。

  • b.外部TLACの充実度の評価

  • (i)本邦TLAC対象SIBsは、外部TLACの充実度を評価するに当たって、外部TLACの量のみならず、少なくとも以下の点を含む外部TLACの質について分析を行うことが必要である。

  • ・ その他外部TLAC調達手段が、TLAC1柱告示に規定する要件を全て満たしており、TLAC合意文書の趣旨を十分に踏まえた内容となっていること。

  • ・ 国内処理対象会社がその他外部TLAC調達手段の保有者に対して取得に必要な資金を直接又は間接に融通しておらず、また、当該その他外部TLAC調達手段を当該国内処理対象会社の子法人等が取得していないこと。

  • ・ 令和4年3月30日までの間、その他Tier1資本調達手段及びTier2資本調達手段のうち、海外に設立された子会社等から発行されたものである場合又は主要子会社から発行されたものであって、所定の場合に普通株式への転換が行われる特約その他これに類する特約が定められているものについては、当該資本調達手段を外部TLACに算入することにつき関係当局が同意していること。 

  • (ii)外部TLACはあくまで破綻時における損失吸収・資本再構築力であって、金融機関の健全性の観点からは平常時の自己資本が充実していることこそが重要であるため、外部TLACの充実を優先し、自己資本の質・量の低下を招くような事態は本末転倒であり、避けなければならない。

     もっとも、本邦TLAC対象SIBsが万一破綻まで至った場合には、普通株式等Tier1資本及びその他Tier1資本調達手段(以下、「ゴーイング・コンサーン資本」という。)による損失吸収・資本再構築力には期待できない状況となっていることが想定されることから、本邦TLAC対象SIBsにおいては、かかるゴーイング・コンサーン資本のみに依存することなく、十分な額のTier2資本調達手段及びその他外部TLAC調達手段(以下、総称して「ゴーン・コンサーン資本等」という。)が維持されていることが望ましい。

     また、金融機関の破綻時においてその株主が被る損失は、株主有限責任の原則の下、自らの出資額が上限となり、特に危機時にはモラル・ハザードを招く可能性があるため、債権者による監視を通じて金融機関の意思決定に影響力を及ぼす必要がある。さらに、負債は発行体が危機に近づくにつれて利払い等のコストが増大するため、平常時から負債を発行することによって、自らが危機に陥らないようにするためのインセンティブを強めることも期待されている。

     したがって、外部TLACの充実度については、かかるゴーン・コンサーン資本等の十分性を踏まえて評価することとする。

     具体的には、TLAC合意文書の記載も踏まえ、例えばゴーン・コンサーン資本等が外部TLAC所要水準の概ね33%を上回っている場合には、平常時から金融機関が危機に陥らないようにするためのリスクを減少させるインセンティブを維持しており、危機時における損失吸収・資本再構築力も有しているものと評価するが、下回っている場合には、ゴーン・コンサーン資本等の外部調達の計画の立案・実施及びモラル・ハザードが起きないようなガバナンスの枠組みの構築を含め、危機時における損失吸収・資本再構築力を高めるための方策を十分に講じているか継続的にモニタリングしていくこととする。 

  •  c.十分な外部TLAC維持のための方策

  • ・ 国内処理対象会社は、上記の外部TLACの充実度の評価を踏まえて、質・量ともに十分な外部TLACを維持するための適切な方策を講じていることが必要となる。

  • ・ 国内処理対象会社は、仮に資本市場へのアクセスが一時的に阻害された場合であっても十分な外部TLACを維持できるよう、特定の時期に満期の到来が集中しないようにする等、外部TLAC調達手段の構成を適切に管理することが必要となる。

  • ・ 国内処理対象会社は、仮にその他外部TLACが不足した場合のその他外部TLAC調達手段と調達可能額について、資本市場における自行の評価、予想外の損失が発生し業績が悪化する局面等において通常よりも調達が困難になる可能性等も踏まえた上での評価・検討をあらかじめ行うことが必要となる。

  • d.監督上の措置

     外部TLAC比率が最低所要総エクスポージャーベース外部TLAC比率を下回った場合には、その理由や外部TLAC比率の向上に係る改善策について、金商法第57条の23に基づき速やかに報告を求めるものとする。さらに確実な改善が必要と認められる場合には、金商法第57条の19第1項に基づき業務改善命令を発出することとする。

     なお、最低所要リスク・アセットベース外部TLAC比率の計算においては、外部TLACが不足する場合にはまず資本バッファーが外部TLACに充当されることから、外部TLAC比率が最低所要リスク・アセットベース外部TLAC比率を下回った場合には、既に資本バッファーはゼロとなっており、社外流出制限措置(所要自己資本を下回っている場合には早期是正措置命令も併用)に従い健全性を回復することが期待される。これらの監督上の対応については、機械的・画一的に運用するものではなく、TLAC規制対応に要する期間、外部TLAC比率の最低水準やゴーン・コンサーン資本等の額を維持するために最終指定親会社がとる対応策の内容やその効果及びその対応策が金融システムに与える影響等に留意する必要がある。

  • ロ.外部TLAC調達手段の適格性の確認

    外部TLACの充実度の評価に関連して、その他外部TLAC調達手段について、金商法第57条の23に基づく報告徴求命令に応じて借入れ又は社債の発行に関する報告があった場合等において、これが規制上のその他外部TLAC調達手段として適格であるかについて、TLAC1柱告示及びTLAC合意文書の趣旨を十分に踏まえ、以下の点に留意して確認するものとする。

    • a.TLAC1柱告示第4条第3項第2号ただし書に従った無担保シニア債としてのその他外部TLAC調達手段については、以下の点に留意するものとする。

      • ・ 発行者たる国内処理対象会社の債権者が当該国内処理対象会社グループの他の会社の債権者よりも構造的に劣後している状態である(以下、「構造劣後性を有する」という。)と認められるためには、発行者単体での既存の外部TLACの総額(発行者の貸借対照表における純資産の部に計上される額に、発行者のTLAC適格その他Tier1資本調達手段に係る負債の額、TLAC適格Tier2資本調達手段に係る負債の額及びその他外部TLAC調達手段の額を加えた額とする。)に占める、無担保シニア債と法的若しくは経済的に同順位である又はこれに劣後する除外債務の総額の割合(以下、「除外債務比率」という。)が、原則として5パーセントを超えていないことが必要である。

        ・ 除外債務比率は以下の除外債務比率によるものとする。
        (i)決算状況表(中間期にあっては中間決算状況表)により報告された除外債務比率
        (ii)事業報告書により報告された除外債務比率
        (iii)法令又は金融商品取引所の規則に基づき除外債務比率を公表している場合には、これにより報告された除外債務比率
        (iv)上記(i)から(iii)までの報告がされた時期以外に、当局の検査結果等を踏まえ臨時に当該国内処理対象会社から報告された除外債務比率

        ・ 国内処理対象会社についていったん構造劣後性を有すると認められた後、除外債務比率が5%を超えるおそれがある場合には、その理由や除外債務比率の低下に係る改善策について、金商法第57条の23に基づき速やかに報告を求めるものとする。さらに除外債務比率が5%を超えた場合には、国内処理対象会社が構造劣後性の維持を引続き求めるか確認の上、金商法第57条の19第1項に基づき業務改善命令を発出することとする。

        ・ 秩序ある処理を円滑に実施するため、国内処理対象会社においては、除外債務比率が5%以下であっても、除外債務に該当せず、かつ、外部TLAC適格性を有しない無担保シニア債務を負担することは可及的に避けるべきことに留意する。その上で、国内処理対象会社に対しては、決算状況表(中間期にあっては中間決算状況表)において、外部TLAC適格性を有しない、グループ外の第三者に対して負っている負債の総額につき報告を求めるものとする。

        ・ IV-8-6-2-2マル1ハに記載の通り、無担保シニア債としてのその他外部TLAC調達手段は、秩序ある処理において、倒産処理手続を通じてその全部又は一部の支払を受けることができないリスクがある。発行者においては、かかるリスクを保有者が十分に認識した上で購入するよう、契約書・発行要項又はその附属書類(目論見書等)においてかかるリスクについて適切に記載を行うのみならず、必要に応じて販売者をして購入予定者の理解度等に応じた十分な説明をさせることが求められる。 

    • b.TLAC1柱告示第4条第3項第8号に従い償還等に関する契約内容が定められている場合、かかる国内処理対象会社の任意(オプション)による償還等についての事前確認に当たっては、TLAC1柱告示の規定に留意するほか、主要行等向けの総合的な監督指針III-2-1-1-3(3)の自己資本に係る記載をその他外部TLACに係る記載に適宜読み替えて対応するものとする。

      c.TLAC1柱告示第4条第3項第9号に従い外国の法令に準拠する旨の定めがある場合には、必要に応じて、発行者たる国内処理対象会社の損失吸収又は資本再構築のために有効に用いることができることについての法律専門家の法律意見書及び関連する資料の提出を求めることとする。

  • ハ.意図的に保有している他の金融機関等のその他外部TLAC調達手段についての該当性判断

    金融システム内で外部TLAC比率向上のためにその他外部TLAC調達手段(これに相当するものを含む。このハにおいて同じ。)を相互に意図的に保有することは、最終指定親会社及び他の金融機関等の双方において実体の伴わない総損失吸収力等が計上されることとなり、金融システムを脆弱なものにすることから、バーゼル合意に従い、連結自己資本規制比率告示第8条第6項等において、本邦TLAC対象SIBs及び他の金融機関等との間で相互に外部TLAC比率を向上させるため、意図的に当該他の金融機関等のその他外部TLAC調達手段を保有していると認められ、かつ、当該他の金融機関等が意図的に当該本邦TLAC対象SIBsのその他外部TLAC調達手段を保有していると認められる場合(以下、「意図的持合」という。)、最終指定親会社等が保有するその他外部TLAC調達手段については、その全額を自己資本の調整項目として自己資本(Tier2資本)から控除しなければならないものとしている。この意図的持合については、資本調達手段の意図的持合に係るIVー5ー3ー2ー1(1)も踏まえ、具体的に以下のような場合を指すこととする。

    • ・ 本邦TLAC対象SIBsが、他の金融機関等(我が国の預金取扱金融機関に限られない。)との間で、相互に総損失吸収力等の増強に協力することを主たる目的の一つとして互いにその他外部TLAC調達手段を保有することを約し、これに従い、本邦TLAC対象SIBs が当該他の金融機関等のその他外部TLAC調達手段を保有し、かつ、当該他の金融機関等が本邦TLAC対象SIBs のその他外部TLAC調達手段を保有している場合

  • マル4 内部TLACの充実

     国内処理対象会社においては、外部TLACで確保した損失吸収力等を、当該国内処理対象会社グループにおける主要子会社(子会社グループを含む。)に対し、その規模等に応じて内部TLACとして分配することが求められる。 

  • イ.内部TLACの分配先となる主要子会社の選定

    内部TLACの趣旨は、処理対象グループにおける主要な子会社(子会社グループを含む。以下本マル4において同じ。)の損失を持株会社等に集約し、当該子会社が担う金融システム上重要な業務が破綻処理時にも継続することを確保する点にある。これを踏まえると、本邦でも、国内処理対象会社グループ全体を危機に陥れる程度の損失を発生させ得る一定規模以上の子会社であって、かつ金融システム上重要な業務を提供する国内子会社については、主要子会社として内部TLACによる損失集約力の確保を求めることが必要である。

    具体的には、TLAC合意文書を踏まえ、対象先の選定に当たっては、以下の基準マル1を基本とし、基準マル2を補完的に用いることとする。

    基準マル1:リスク・アセット、総エクスポージャー、又は営業収益がグループ全体の5%超であること

    (注)採用している会計基準等において営業収益の科目が存在しない場合にあっては、採用している会計基準等において用いられる収益の総額を示す科目を用いることとする。

    基準マル2:当該子会社の行う業務の本邦金融システム上の重要性及び本邦金融システム上重要な業務の継続に支障を生ずる程度の損失が発生する蓋然性

    選定した国内の主要子会社については、TLAC1柱告示に基づき、国内処理対象会社による内部TLACの分配先として指定する。

    選定先は毎年1回見直すこととし、金商法第57条の23に基づき、原則として毎年3月末時点でのデータ提出を報告徴求することとする。また、グループ構造の変更等がある場合には、可能な限り事前に変更後の予想計数の提出を求めることとする。

    なお、海外における主要子会社については、当該子会社が設立された現地の当局が選定することとなるため、必要に応じて海外の関連当局と協議するものとする。 

  • ロ.所要水準

  • a.平成31年4月1日以降に本邦TLAC対象SIBsに指定された金融機関に対する適用のタイミング

    平成31年4月1日以降に「告示に指定されたG-SIBs」となった又は「告示に指定されたD-SIBs」が新たに本邦TLAC対象SIBsとなった金融機関グループの国内における主要子会社については、当該金融機関グループの国内処理対象会社について外部TLACの最低水準の適用が開始された日と同日に適用を開始するものとする。

    また、平成31年4月1日以降に新たに指定された国内における主要子会社については、指定から3年後を目処に内部TLACの所要額の適用を開始するものとする。

  • b.内部TLAC水準調整係数

    国内における主要子会社については、当該主要子会社に適用される自己資本規制をベースとして、仮に当該主要子会社が国内処理対象会社であったと仮定した場合の所要外部TLAC水準を算出し、さらに75%以上90%以下の範囲で当庁が設定した内部TLAC水準調整係数を乗じて内部TLACの所要額を求める。

    内部TLAC水準調整係数を決定するに当たっては、国内における主要子会社については、その処理が原則として国内で完結すること、平時よりグループとして本邦当局による一体的な監督が可能であることから、その損失吸収力等を事前配賦する要請は高くないため、国内における主要子会社の内部TLAC水準調整係数については、原則として75%としたうえ、マル1当該金融機関グループの望ましい処理戦略、マル2当該主要子会社のシステム上の重要性・資本構成・ビジネスモデル等を踏まえ、事前配賦の必要性に応じた調整を行うものとする。

    決定した内部TLAC水準調整係数については、TLAC1柱告示に規定したうえ、必要に応じて見直すものとする。

    なお、海外における主要子会社については、当該子会社が設立された現地の当局が主導して内部TLAC水準調整係数を決定することとなるため、本邦当局は必要に応じて海外の関連当局と協議することが想定される。仮に、本邦当局の事前の関与なくして現地当局が所要内部TLAC額を設定・適用した場合においては、当該金融機関の危機管理グループ(CMG)における海外関連当局との協議を行い合意が形成されるまでの間は、当該基準はTLAC1柱告示第2条第3項に規定する「最低所要内部TLAC額に係る基準に準ずる基準」に該当しないものとする。

  • c.内部TLACの充実度の評価及び十分な内部TLAC維持のための方策

    ・ 内部TLACの充実度の評価及び十分な内部TLAC維持のための方策については、(1)マル3イb(i)及びcの外部TLACに係る記載(取得者に関する事項を除く。)を内部TLACに係る記載に適宜読み替えて対応するものとする。

    ・ グループ外部の第三者が保有するバーゼルIII適格その他Tier1調達手段及びTier2資本調達手段が存在する場合、当該商品の株式転換の結果、主要子会社の支配権構造が変更されることにより、経営管理等に影響が生じる可能性があることから、そのような資本調達手段はトリガー時に株式転換されるのではなく、元本削減がなされるようになっていることが望ましい。

    ・ 国内処理対象会社が主要子会社に対して直接内部TLACの配賦をせず、他の子会社を通じた間接的な配賦を行っている場合には、主要子会社についてその実質破綻認定時における内部TLACの元本削減等(以下、「内部TLACのトリガリング」という。)が行われた際に、最終的に国内処理対象会社にその損失が確実に移転されるようになっていることが必要である。主要子会社の親法人等ではない者を通じた配賦は、内部TLACのトリガリングによる支配関係の変更が生じないと考えられるような場合を除き、原則として認められないものとする。

    ・ 主要子会社が国内処理対象会社又はその子会社等に対して発行する負債性の規制資本については、内部TLAC適格資本としての適格性を有するためには、主要子会社の実質破綻認定時においてその元本の削減等が行われる旨の特約が定められていることが必要であることに留意する。また、債権のヒエラルキーを維持する観点から、国内処理対象会社がTLAC規制の適用前から保有している主要子会社の負債性の規制資本については、必要に応じて契約内容を変更し、主要子会社の残余財産の分配又は倒産処理手続における債務の弁済若しくは内容の変更について、その他内部TLAC調達手段に該当する債務に対して劣後的内容を有する旨を規定することが必要であることに留意する。

  • d.余剰TLAC

    国内処理対象会社が調達した外部TLACについては、必ずしも全額を内部TLACとして分配する必要はないため、国内処理対象会社には余剰分が生じることも想定される。かかる余剰分(いわゆる「余剰TLAC」)が生じた場合の取扱いに関しては、国際的な議論の進展及び各国での実施状況を踏まえて検討を続けていくこととする。

  • e.監督上の措置

    内部TLACの所要額を満たしているか否かも踏まえ、当該主要子会社が存続不能に陥った場合の損失吸収力等が不足するおそれがあると認められるときには速やかに報告を求めた上、さらなる改善が必要と認められる場合には国内処理対象会社に対する業務改善命令等を発し、内部TLACの追加配賦を求めるものとする。

  • ハ.内部TLAC調達手段の適格性の確認

    • 内部TLACの充実度の評価に関連して、その他内部TLAC調達手段が規制上のその他内部TLAC調達手段として適格であるかについて、TLAC1柱告示及びTLAC合意文書の趣旨を十分に踏まえ、以下の点に留意して確認するものとする。内部TLACの充実度の評価に関連して、その他内部TLAC調達手段が規制上のその他内部TLAC調達手段として適格であるかについて、TLAC1柱告示及びTLAC合意文書の趣旨を十分に踏まえ、以下の点に留意して確認するものとする。

      • ・ TLAC1柱告示第7条第3項第9号に従い償還等に関する契約内容が定められている場合、かかる主要子会社の任意(オプション)による償還等についての事前確認に当たっては、TLAC1柱告示の規定に留意するほか、主要行等向け監督指針III-2-1-1-3(3)の自己資本に係る記載をその他内部TLACに係る記載に適宜読み替えて対応するものとする。  

(2)現地当局としての金融庁のTLAC規制への対応

TLAC合意文書では、クロスボーダーでの破綻処理に対応するため、G-SIBグループのうち破綻処理対象会社の属する法域外において設立された主要な子会社に損失が生じた場合に、当該子会社の損失等を破綻処理対象会社に引き渡すための法的な確実性のある損失吸収力等を予め準備しておくことが求められている。
 これを踏まえ、海外G-SIBsの主要な本邦子会社についても、現地当局として内部TLAC規制の適用対象としている。

マル1 内部TLAC規制の適用対象となる主要子会社の選定

(1)マル4イに記載の内部TLACの趣旨を踏まえ、本邦でも、海外G-SIBsの我が国の法令に準拠して設立された子会社のうち、金融システム上重要な業務を提供する子会社であって、かつグループ全体を危機に陥れる程度の損失を発生させ得る一定規模以上の子会社(以下「海外G-SIBsの本邦主要子会社」)については、内部TLACによる損失集約力の確保を求めることが必要である。

具体的には、TLAC合意文書を踏まえ、対象先の選定に当たっては、以下の基準マル1を基本とし、基準マル2を補完的に用いることとする。

基準マル1:リスク・アセット、総エクスポージャー、又は経常収益がグループ全体の5%超であること

基準マル2:当該子会社の行う業務の本邦金融システム上の重要性及び金融システム上重要な業務の継続に支障を生ずる程度の損失が発生する蓋然性

海外G-SIBsの本邦主要子会社として選定した金融商品取引業者等については、必要に応じて母国当局を含む海外関連当局との協議を行った上、外証TLAC告示に基づき、その親会社との間で所定の内部TLACを維持するよう指定する。

 選定先は毎年1回見直すこととし、金商法第56条の2に基づき、原則として毎年3月末時点でのデータ提出を報告徴求することとする。また、グループ構造の変更等がある場合には、可能な限り事前に変更後の予想計数の提出を求めることとする。

マル2 内部TLACの充実

イ.所要水準

a.適用のタイミング

令和2年4月1日以降に新たに外証TLAC告示で指定された海外G-SIBsの本邦主要子会社については、指定から3年後を目処に内部TLACの所要額の適用を開始するものとする。ただし、母国当局との協議の結果等により、適用開始までの期間を短縮することがあり得る。

b.内部TLAC水準調整係数

海外G-SIBsの本邦主要子会社については、当該主要子会社に適用される自己資本規制をベースとして、仮に当該主要子会社が国内処理対象会社であったと仮定した場合の所要外部TLAC水準を算出し、さらに75%以上90%以下の範囲で当庁が設定した内部TLAC水準調整係数を乗じて内部TLACの所要額を求める。

この点、各国の破綻処理制度の整備には進展が見られるものの、その度合は法域によって異なっており、破綻処理実行に係るリスク等が完全に解消されているわけではない。そのため、海外G-SIBsの本邦主要子会社の内部TLAC水準調整係数については、当該金融機関グループの望ましい処理戦略への信頼性及び各国の破綻処理制度の整備状況を踏まえた破綻処理可能性を考慮した事前配賦の必要性に応じて決定を行うものとする。

c.内部TLACの充実度の評価及び十分な内部TLAC維持のための方策

海外G-SIBsの本邦主要子会社たる金融商品取引業者等は、内部TLACの充実度を評価するに当たって、内部TLACの量のみならず、少なくとも以下の点を含む内部TLACの質について分析を行うことが必要である。また、かかる内部TLACの充実度の評価を踏まえて、質・量ともに十分な内部TLACを維持するための適切な方策を講じていることが必要となる。

・ その他内部TLAC調達手段が、外証TLAC告示に規定する要件を全て満たしており、TLAC合意文書の趣旨を十分に踏まえた内容となっていること。

・ 当該主要子会社がその他内部TLAC調達手段の保有者となる親会社に対して取得に必要な資金を直接又は間接に融通していないこと。

・ 破綻処理対象会社が当該主要子会社に対して直接内部TLACの配賦をせず、他の子会社を通じた間接的な配賦を行っている場合には、内部TLACのトリガリングが行われた際に、最終的に破綻処理対象会社にその損失が確実に移転されるようになっていることが必要である。主要子会社の親法人等ではない者を通じた配賦は、内部TLACのトリガリングによる支配関係の変更が生じないと考えられるような場合を除き、原則として認められないものとする。

・ 当該主要子会社が破綻処理対象会社又はその子会社に対して発行する負債性の規制資本については、内部TLAC適格資本としての適格性を有するためには、当該主要子会社の実質破綻認定時においてその元本の削減等が行われる旨の特約が定められていることが必要であることに留意する。また、債権のヒエラルキーを維持する観点から、破綻処理対象会社がTLAC規制の適用前から保有している当該主要子会社の負債性の規制資本については、必要に応じて契約内容を変更し、当該主要子会社の残余財産の分配又は倒産処理手続における債務の弁済若しくは内容の変更について、その他内部TLAC調達手段に該当する債務に対して劣後的内容を有する旨を規定することが必要であることに留意する。

d.監督上の措置

内部TLACの所要額を満たしているか否かも踏まえ、当該海外G-SIBsの本邦主要子会社が存続不能に陥った場合の損失吸収力等が不足するおそれがあると認められるときには速やかに報告を求めた上、さらなる改善が必要と認められる場合には当該主要子会社に対する業務改善命令等を発し、内部TLACの追加配賦を求めるものとする。

ロ.内部TLAC調達手段の適格性の確認

内部TLACの充実度の評価に関連して、その他内部TLAC調達手段が規制上のその他内部TLAC調達手段として適格であるかについては、(1)マル4ハを準用する。

IV-8-6-2 TLACを利用した秩序ある処理等

IV-8-6-2-1 意義

TLAC規制の適用を受ける金融機関グループの主要子会社が、経営悪化等により金融システム上有する重要な機能の継続が困難となった場合で、資産の売却・親会社による資本増強その他の代替的手段を採り得ないと当局が判断したときには、最終的な手段として、当該主要子会社に係る内部TLACのトリガリングにより、その健全性を回復させることが想定される。

内部TLACのトリガリングにより破綻処理対象会社に損失が集約された結果、金融機関グループとしての破綻処理が必要と当局が判断した場合には、主要子会社自体の営業は継続させつつ、破綻処理対象会社の株主や債権者にその損失を負担させることとなる。

以下では、本邦でのTLACを利用した秩序ある処理の手続の具体例を記載する。

IV-8-6-2-2 手続の具体例

  • (1)母国当局としての金融庁の対応

  • マル1 本邦TLAC対象SIBsの国内主要子会社に危機が生じた場合

 SPEアプローチを前提としたTLACを用いた場合の処理としては、例えば以下のイ~ニのような流れが考えられる。イ~ハについては、市場の混乱を避けるため、休業日である週末にかけて迅速に実施し、主要子会社は通常どおり営業を継続することを想定している。

(注)市場参加者に対する透明性を高め、破綻処理制度の信頼性を向上させるとともに、適時の破綻処理を可能とするためには、当局の望ましい破綻処理戦略を予め公表しておくことが有用である一方、実際にどのような処理を行うかについては、個別の事案毎に関係する当局が当該本邦TLAC対象SIBの実態を考慮のうえで決定すべき問題である。したがって、以下のようにSPEアプローチに基づき国内処理対象会社について特定第二号措置を講じる以外の処理として、内閣総理大臣が、預金保険法に基づき、国内処理対象会社について特定第一号措置に係る特定認定(預金保険法第126条の2第1項第1号)を行うことや、国内の主要子会社について特定第一号措置に係る特定認定又は第一号措置に係る認定(同法第102条第1項第1号)等を行うことがあり得ることに留意する。

  • イ.国内主要子会社の内部TLACによる損失吸収

  • そもそも、内部TLACのトリガリングは当該金融グループ全体に大きな影響を与えうることを踏まえ、国内主要子会社について内部TLACのトリガリングを行うべき場面は、監督当局が当該主要子会社に対して金商法第51条等に基づく業務改善命令を発出してもなお財務状況の改善が見込めず、かつ、グループ会社からの支援等による当該主要子会社の健全性の回復が困難又は期待できない等適切な代替手段もないような場合や、その財務状況の急激な悪化により業務改善命令や他の代替手段を実行する時間的余裕がなく緊急性が高いような場合に限られることに留意する。

    やむを得ず内部TLACのトリガリングを選択する場合においては、損失が発生した国内の主要子会社に分配されている内部TLACについて、国内処理対象会社に当該主要子会社の損失を移転するための措置を講じることとなる。

    具体的には、当庁が、国内の主要子会社の債務超過若しくは支払停止又はそれらのおそれがあると認めた場合(破綻処理対象会社及び主要子会社から当庁に対し、当該主要子会社に債務超過若しくは支払停止又はそれらのおそれがあるとの申出があった場合を含む。)に、前述のような代替手段の有無及び緊急性等を考慮したうえで、金商法第57条の19第1項に基づく命令のうち、内部TLACを用いた主要子会社の資本増強及び流動性回復を含む健全性の回復に係る命令を国内処理対象会社に対して発したとき(「主要子会社の実質破綻認定時」)は、内部TLACの条件(ローン契約等)に従い元本の削減又は株式への転換が行われることとなる(注1)。

    命令発出に当たっては、グループ会社からの支援等による当該主要子会社の健全性の回復が困難又は期待できない状況であるか否かを考慮するものとする。また、当該命令を発出した際はその旨を公表する。

    なお、仮に内部TLACのトリガリングが行われた場合であっても、持株会社及びグループ全体の財務状況等によっては、ロ以降に規定するグループ全体の破綻処理を行わないことも考えられる(注2)。かかる場合には、グループ全体の破綻処理が開始されるとの誤解を防ぐため、市場とのコミュニケーションに十分留意するものとする。

    (注1)「主要子会社の実質破綻認定時」について、当庁が金商法第57条の19第1項に基づき発出する命令においては、特定の国内主要子会社につき財務危機事由が存在すると認めた旨を記載したうえで、「内部TLACを用いた主要子会社の健全性の回復に係る命令」との文言を含めることとする(したがって、金商法第57条の19第1項に基づく命令であっても、当庁が特定の国内主要子会社につき財務危機事由が存在すると認めた旨が記載されていない場合や、「内部TLACを用いた主要子会社の健全性の回復に係る命令」との文言が含まれていない場合には、「主要子会社の実質破綻認定時」には該当しないこととなる。)。

    (注2)例えば、国内処理対象会社と主要子会社のいずれについてもこれ以上の預金保険法上の措置を講じない場合のほか、国内処理対象会社について特定第一号措置に係る特定認定(預金保険法第126条の2第1項第1号)を行う場合や、国内の主要子会社について特定第一号措置に係る特定認定又は第一号措置に係る認定(同法第102条第1項第1号)等を行う場合もあり得る。

  • ロ.内閣総理大臣による特定認定

  • 内部TLACのトリガリングが行われた場合において、主要子会社から損失を吸収した国内処理対象会社が預金保険法に規定する特定第二号措置の適用要件を満たす場合には、当該国内処理対象会社に対して、金融危機対応会議の議を経て、内閣総理大臣が、預金保険法に定める特定第二号措置に係る特定認定(同法第126条の2第1項第2号)及び特定管理を命ずる処分(同法第126条の5)を行う(以下、かかる特定管理を命ずる処分を受けた国内処理対象会社を「破綻持株会社」という。)。特定認定等が行われた場合、破綻持株会社が発行済みのその他Tier1資本調達手段・Tier2資本調達手段(いずれもバーゼルIII適格であるものに限る。)について、当該資本調達手段の条件(社債要項等)に従い、破綻持株会社の他の負債(外部TLAC適格性を有する社債等を含む。)に先立ち、元本の削減等(元本の削減又は普通株式への転換をいう。以下同じ。)が行われる。

    また、破綻持株会社の業務に係る動産又は債権のうち、下記ハにおいて特定承継金融機関等に対して譲渡されるもの(内閣総理大臣が指定するものに限る。)は差押えが禁止される(預金保険法第126条の16)。

    (注)本邦TLAC対象SIBsが平成25年3月31日以降に国内処理対象会社から発行した負債性のその他Tier1資本調達手段については、告示に従って算出される国内処理対象会社の連結普通株式等Tier1比率が5.125%を下回った場合にも、元本の全部又は一部について元本の削減等が実施される。

  • ハ.事業等の譲渡

  • 特定認定を受けた破綻持株会社は、内閣総理大臣による特定事業譲受け等を行うべき旨の決定(預金保険法第126条の34第1項第2号)の下、株主総会の特別決議に代わる許可を裁判所から得たうえで(預金保険法第126条の13第1項第3号)、預金保険機構が設立した特定承継金融機関等(同法第126条の34第3項)に対し、そのシステム上重要な取引に係る事業等(破綻持株会社が保有する主要子会社の株式を含む。以下同じ。)の譲渡を行う。

    このとき、外部TLAC適格性を有する社債等(残存期間が1年未満のものを含む。)に係る債務は、特定承継金融機関等が引き受けることなく、破綻持株会社が引き続き負担することが想定される。

    (注)特定承継金融機関等は、国内処理対象会社に対する特定第二号措置に係る特定認定から原則として2年以内に、受皿となる金融機関等に対し、その事業等の譲渡を行うことが想定されている(預金保険法第126条の37、第96条第1項、第126条の3)。

  • ニ.破綻持株会社の法的倒産手続

  • 事業等の譲渡を行った破綻持株会社について、預金保険機構が法的倒産手続開始の申立てを行う。破綻持株会社は、再生型の法的倒産手続ではなく、清算型の法的倒産手続(具体的には破産手続)によって処理されることが想定される。

    この場合、破綻持株会社の債権者(外部TLAC適格性を有する社債等の債権者を含む。)は、破産法等に従い破産財団の範囲で配当を受けるため、当該破産手続において損失を吸収することとなる。

  • マル2 本邦TLAC対象SIBsの海外主要子会社に危機が生じた場合

 本邦TLAC対象SIBsの海外主要子会社については、当該子会社が設立された現地の当局が内部TLACのトリガリングの実施を判断することとなる。かかる判断に際しては、TLAC合意文書に従い、一定期間を定めて本邦当局の同意の有無の確認を求められる場合があることが想定される。かかる場合においては、グループ会社からの支援等による当該主要子会社の健全性の回復が可能か否かを考慮の上、同意の有無を決定するものとする。

 なお、仮に海外主要子会社について内部TLACのトリガリングが行われた場合であっても、持株会社及びグループ全体の財務状況等によっては、マル1ロ以降に規定するグループ全体の破綻処理を行わないことも考えられる。かかる場合には、グループ全体の破綻処理が開始されるとの誤解を防ぐため、市場とのコミュニケーションに十分留意するものとする。

(2)現地当局としての金融庁の対応

海外G-SIBsの本邦主要子会社についても、(1)同様、内部TLACのトリガリングを行うべき場面は、監督当局が当該主要子会社に対して金商法第51条等に基づく業務改善命令を発出してもなお財務状況の改善が見込めず、かつ、グループ会社からの支援等による当該主要子会社の健全性の回復が困難又は期待できない等適切な代替手段もないような場合や、その財務状況の急激な悪化(金融グループ全体に危機が生じている場合を含む。)により業務改善命令や他の代替手段を実行する時間的余裕がなく緊急性が高いような場合に限られることに留意する。

やむを得ず内部TLACのトリガリングを選択する場合においては、当該主要子会社に分配されている内部TLACについて、当該グループの破綻処理対象会社に当該主要子会社の損失を集約するための措置を講じることとなる。この場合、関連海外当局にも実務上可能な限り事前に連絡し、情報提供を行った上で、対応を協議する。

具体的には、当庁が、当該主要子会社の債務超過若しくは支払停止又はそれらのおそれがあると認めた場合(当該主要子会社から当庁に対し、債務超過若しくは支払停止又はそれらのおそれがあるとの申出があった場合を含む。)に、金商法第51条に基づく命令のうち、内部TLACを用いた当該主要子会社の資本増強及び流動性回復を含む健全性の回復に係る命令を当該主要子会社に対して発したとき(「海外G-SIBsの本邦主要子会社の実質破綻認定時」)は、内部TLACの条件(ローン契約等)に従い元本の削減又は株式への転換が行われることとなる(注)。

当該主要子会社の債務超過若しくは支払停止又はそれらのおそれの有無を判断するに当たっては、グループ全体の財務状況等も考慮するものとする。

また、命令発出に当たっては、グループ会社からの支援等による当該主要子会社の健全性の回復が困難又は期待できない状況であるか否かを考慮するものとする。その判断に際しては、海外の母国当局に対して通知の上、原則として24時間以上48時間以下の期間を定めて内部TLACのトリガリングへの同意の有無を確認することとする。所定の期間内に母国当局の同意があった場合又は通知から所定の期間が経過した場合には、グループ会社等からの支援による当該主要子会社の健全性の回復が困難又は期待できない状況であると判断する。

ただし、母国での破綻処理の開始や他法域での内部TLACのトリガリングが実施された場合であって、当該金融グループの状況及び本邦の金融システム等への影響に鑑み緊急性を要すると認められるときは、例外的に同意の確認期間を短縮すること又は同意確認手続自体を省略することもあり得るものとする。

母国当局に内部TLACのトリガリングに係る通知を行う際には、併せて当該金融機関の危機管理グループ(CMG)に参加している海外関連当局にも実務上可能な限り通知する。

(注)「海外G-SIBsの本邦主要子会社の実質破綻認定時」について、当庁が金商法第51条に基づき発出する命令においては、特定の海外G-SIBsの本邦主要子会社につき財務危機事由が存在すると認めた旨を記載したうえで、「内部TLACを用いた主要子会社の健全性の回復に係る命令」との文言を含めることとする(したがって、金商法第51条に基づく命令であっても、当庁が特定の海外G-SIBsの本邦主要子会社につき財務危機事由が存在すると認めた旨が記載されていない場合や、「内部TLACを用いた主要子会社の健全性の回復に係る命令」との文言が含まれていない場合には、「海外G-SIBsの本邦主要子会社の実質破綻認定時」には該当しないこととなる。)。

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