II.清算・振替機関等の監督に係る事務処理上の留意点

II-1 一般的な事務処理等

II-1-1 一般的な監督事務

  • (1)定期的なヒアリング

    オフサイト・モニタリングの一環として、清算・振替機関等に対し、原則として以下のとおり、定期的なヒアリングを実施する。

    • マル1決算ヒアリング

      決算期ごとに、決算の状況や財務上の課題等についてヒアリングを実施する。なお、四半期開示を行っている場合には、必要に応じて四半期ごとの決算内容に係るヒアリングを実施する。

    • マル2総合的なヒアリング

      清算・振替機関等の経営計画及び業務展開方針、各種リスク管理・収益管理態勢、ガバナンスの状況等を総合的に把握するため、年に1回以上、ヒアリングを実施する。なお、必要に応じて、監督当局幹部による清算・振替機関等の経営陣に対するトップヒアリングを実施する。

    • マル3リスク管理ヒアリング

      清算・振替機関等のリスク管理の現状、課題、及び方向性について、年に1回以上、ヒアリングを実施する。その際、経営陣の認識、関与状況等についてもヒアリングすることとする。また、市場の動向等を踏まえ、必要に応じて随時リスク管理の状況についてヒアリングを実施する。

  • (2)随時のヒアリング

    清算・振替機関等の業績や戦略の変化、又は制度を取り巻く環境の変化、業務の健全かつ適切な運営に影響を及ぼしかねない事象の発生など、監督上の必要が認められる場合には、オフサイト・モニタリングの一環として、随時ヒアリングを実施する。

    また、清算・振替機関等のあり方については、清算・振替機関等が遵守すべき国際的な原則として、「金融市場インフラのための原則」が策定されていることも踏まえ、必要に応じ、清算・振替機関等の同原則への対応状況等についても、ヒアリングを実施する。

II-1-2 検査部局との連携

監督部局及び検査部局が、それぞれの独立性を尊重しつつ、適切な連携を図り、オンサイトとオフサイトの双方のモニタリング手法を適切に組み合わせることで、実効性の高い監督を実現することが重要であることから、検査部局との連携について、以下の点に十分留意する。

  • (1)オフサイト・モニタリングを通じて把握した問題点の検査部局への還元

    監督部局がオフサイト・モニタリングを通じて把握した清算・振替機関等の問題点については、次回検査においてその活用が図られるよう、検査部局に還元するものとする。

    具体的には、監督部局は、検査部局に対し、検査の前に以下のような現状等についての説明を行うものとする。

    • マル1前回検査から当該時点までの清算・振替機関等の主な動き(他社との提携、増資、経営陣の交代等)

    • マル2システム更改等を予定している清算・振替機関等については、そのスケジュ-ル等

    • マル3直近決算の状況

    • マル4総合的なヒアリングの結果

    • マル5監督上の措置(報告徴求、行政処分等)の発動及びフォロ-アップの状況

    • マル6監督部局として検査で重視されるべきと考える点

    • マル7その他

  • (2)検査を通じて把握された問題点に係る監督上の対応

    監督部局は、検査部局が実施した清算・振替機関等に対する検査について、その検査結果を監督業務に適切に反映させる観点から、 II-4に基づき必要な措置を検討する。

II-1-3 関係省庁、日本銀行、海外当局との連携

  • (1)関係省庁間の連携

    振替制度については、振替制度が金融実務面と社債等の発行、譲渡等に関する法制面の両面で十分機能することで円滑な実施が可能となるものであることに加え、国債等を扱うものであるほか、振替機関の所管省庁は、金融庁、法務省及び財務省との共管とされている。

    上記を踏まえ、振替機関に行政処分又は許認可等を行おうとする場合等その他監督上適切と認められる場合には、共管省庁との間において、必要に応じ情報共有・意見交換を行うなど、密接な連携を図ることとする。

  • (2)日本銀行との連携

    金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保という観点から、日本銀行においては、清算・振替機関等に対し「オーバーサイト」を行っている。

    上記を踏まえ、清算・振替機関等に行政処分又は許認可等を行おうとする場合等その他監督上適切と認められる場合には、日本銀行との間において、必要に応じ情報共有・意見交換を行うなど、密接な連携を図ることとする。

  • (3)海外当局との連携

    清算・振替機関等については、諸外国の金融機関等が参加者となる、諸外国に親会社等を有するなど、国際的な活動を行う等の動きが見られるところである。

    上記を踏まえ、清算・振替機関等に行政処分又は許認可等を行おうとする場合等その他監督上適切と認められる場合には、海外監督当局等との間で、必要に応じ情報共有・意見交換を行うなど、密接な連携を図ることとする。

II-2 法令解釈等外部からの照会への対応

II-2-1 法令照会

  • (1)照会を受ける内容の範囲

    照会を受ける内容の範囲は、金商法、資金決済法、振替法及びこれらに関連する法令であって金融庁が所管する法令に関するものとする。なお、照会が権限外の法令等に係るものであった場合には、コメント等は厳に慎むものとする。

  • (2)照会に対する回答方法

    • マル1本監督指針、審議会等の答申・報告等の既存資料により回答可能なものについては、適宜回答するものとする。

    • マル2金融庁担当課室長は、当庁が所管する法令に関し、当庁所管法令の直接の適用を受ける事業者又はこれらの事業者により構成される事業者団体(注)から受けた、次のア.及びイ.の項目で定める要件を満たす一般的な照会であって、書面による回答及び公表を行うことが法令適用の予測可能性向上等の観点から適切と認められるものについては、これに対する回答を書面により行い、その内容を公表することとする。

      (注)事業者団体とは、当庁所管法令の直接の適用を受ける、業種等を同じくする事業者が、共通の利益を増進することを主たる目的として、相当数結合した団体又はその連合体(当該団体に連合会、中央会等の上部団体がある場合には、原則として、最も上部の団体に限る。)をいう。

      • ア.本手続の対象となる照会の範囲

        本手続の対象となる照会は、以下の要件の全てを満たすものとする。

        • a.特定の事業者の個別の取引等に対する法令適用の有無を照会するものではない、一般的な法令解釈に係るものであること(法令適用事前確認手続制度の利用が可能でないこと。)。

        • b.事実関係の認定を伴う照会でないこと。

        • c.照会内容が、金融庁所管法令の直接の適用を受ける事業者(照会者が団体である場合はその団体の構成事業者)に共通する取引等に係る照会であって、多くの事業者からの照会が予想される事項であること。

        • d.過去に公表された事務ガイドライン等を踏まえれば明らかになっているものでないこと。

      • イ.照会書面(電子的方法を含む。)

        本手続の利用を希望する照会者からは、以下の内容が記載された照会書面の提出を受けるものとする。また、照会書面のほかに、照会内容及び上記ア.に記載した事項を判断するために、記載事項や資料の追加を要する場合には、照会者に対して照会書面の補正及び追加資料の提出を求めることとする。

        • a.照会の対象となる法令の条項及び具体的な論点

        • b.照会に関する照会者の見解及び根拠

        • c.照会及び回答内容が公表されることに関する同意

      • ウ.照会窓口

        照会書面の受付窓口は、照会内容に係る法令を所管する金融庁担当課室とする。

      • エ.回答

        • a.金融庁担当課室長は、照会者からの照会書面が照会窓口に到達してから原則として2か月以内に、照会者に対して回答を行うよう努めることとし、2か月以内に回答できない場合には、照会者に対してその理由を説明するとともに、回答時期の目途を伝えることとする。

        • b.回答書面には、以下の内容を付記することとする。

          「本回答は、照会対象法令を所管する立場から、照会書面に記載された情報のみを前提に、照会対象法令に関し、現時点における一般的な見解を示すものであり、個別具体的な事例への適用を判断するものではなく、また、もとより捜査当局の判断や司法判断を拘束しうるものではない。」

        • c. 本手続による回答を行わない場合には、金融庁担当課室は、照会者に対し、その旨及び理由を説明することとする。

      • オ.公表

        上記エ.の回答を行った場合には、金融庁は、速やかに照会及び回答内容を金融庁ホームページ上に掲載して、公表することとする。

    • マル3上記マル2に該当するもの以外のもので照会頻度が高いもの等については、必要に応じ照会者、日時場所、照会内容と回答等を記入した応接箋を作成した上で、関係部局に回覧し、金融庁担当課室に保存するものとする。

    • マル4照会者が照会事項に関し、金融庁からの書面による回答を希望する場合であって、II-2-2(2)に照らし法令適用事前確認手続の利用が可能な場合には、照会者に対し、法令適用事前確認手続を利用するよう伝えることとする。

II-2-2 法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)

法令適用事前確認手続(以下「ノーアクションレター制度」という。)とは、民間企業等が実現しようとする自己の事業活動に係る具体的行為に関して、当該行為が特定の法令の規定の適用対象となるかどうかを、あらかじめ当該規定を所管する行政機関に確認し、その機関が回答を行うとともに、当該回答を公表する制度であり、金融庁では、法令適用事前確認手続に関する細則を定めている。本項は、ノーアクションレター制度における事務手続を規定するものであり、制度の利用に当たっては必ず「金融庁における法令適用事前確認手続に関する細則」を参照するものとする。

  • (1)照会窓口

    照会窓口は、金融庁監督局総務課とする。

    なお、照会窓口たる金融庁監督局総務課は、下記(2)マル3の記載要領に示す要件を満たした照会書面が到達した場合は速やかに受け付け、照会事案に係る法令を所管する担当課室に回付する。

  • (2)照会書面受領後の流れ

    照会書面を回付された後は、担当課室において、回答を行う事案か否か、特に、以下マル1ないしマル3について確認し、当制度の利用ができない照会の場合には、照会者に対しその旨を連絡する。また、照会書面の補正及び追加書面の提出等が必要な場合には、照会者に対し所要の対応を求めることができる。ただし、追加書面は必要最小限とし、照会者の過度な負担とならないよう努めることとする。

    • マル1照会の対象

      民間企業等が、新規の事業や取引を具体的に計画している場合において、当庁が本手続の対象としてホームページに掲げた所管の法律及びこれに基づく政府令(以下「対象法令(条項)」という。)に関し、以下のような照会を行うものか。

      • ア.その事業や取引を行うことが、無許可業務等にならないかどうか。

      • イ.その事業や取引を行うことが、無届け業務等にならないかどうか。

      • ウ.その事業や取引を行うことによって、業務停止や免許取消等(不利益処分)を受けることがないかどうか。

      • エ.その事業や取引を行うことに関し、直接に義務を課され又は権利を制限されることがないかどうか。

    • マル2照会者の範囲

      照会者は、実現しようとする自己の事業活動に係る具体的行為に関して、対象法令(条項)の適用に係る照会を行う者及び当該者から依頼を受けた弁護士等であって、下記マル3の記載要領を満たした照会書面を提出し、かつ、照会内容及び回答内容が公表されることに同意しているか。

    • マル3照会書面の記載要領

      照会書面(電子的方法を含む。)は、下記の要件を満たしているものか。

      • ア.将来自らが行おうとする行為に係る個別具体的な事実が記載されていること。

      • イ.対象法令(条項)のうち、適用対象となるかどうかを確認したい法令の条項が特定されていること。

      • ウ.照会及び回答内容が公表されることに同意していることが記載されていること。

      • エ.上記イ.において特定した法令の条項の適用に関する照会者の見解及びその根拠が明確に記述されていること。

    • マル4回答

      照会書面を回付された課室の長は、照会者からの照会書面が照会窓口に到達してから原則として30日以内に照会者に対する回答を行うものとする。ただし、次に掲げる場合には、各々の定める期間を回答期間とする。

      なお、いずれの場合においても、補正期間を含め、できるだけ早く回答するよう努めることとする。

      • ア.高度な金融技術等に係る照会で慎重な判断を要する場合 原則60日以内

      • イ.担当部局の事務処理能力を超える多数の照会により業務に著しい支障が生じるおそれがある場合 30日を超える合理的な期間内

      • ウ.他府省との共管法令に係る照会の場合 原則60日以内

        照会書面の記載について補正を求めた場合にあっては、当該補正に要した日数は、回答期間に算入しないものとする。また、30日以内に回答を行わない場合には、照会者に対して、その理由及び回答時期の見通しを通知することとする。

    • マル5照会及び回答についての公開

      金融庁は、照会及び回答の内容を、原則として回答を行ってから30日以内に全て金融庁ホームページに掲載して公開する。

      ただし、照会者が、照会書に、回答から一定期間を超えて公開を希望する理由及び公開可能とする時期を付記している場合であって、その理由が合理的であると認められるときは、回答から一定期間を超えて公開することができる。この場合においては、必ずしも照会者の希望する時期まで公開を延期するものではなく、公開を延期する理由が消滅した場合には、公開する旨を照会者に通知した上で、公開することができる。

      また、照会及び回答内容のうち、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条各号に規定する不開示情報が含まれている場合、これを除いて公表することができる。

II-2-3 グレーゾーン解消制度

産業競争力強化法(以下、「強化法」という。)第7条第1項は、新事業活動を実施しようとする者は、その実施しようとする新事業活動及びこれに関連する事業活動に関する規制について規定する法律及び法律に基づく命令(告示を含む。以下、この項において「法令」という。)の規定の解釈並びに当該新事業活動及びこれに関連する事業活動に対する当該規定の適用の有無について、その確認を求めることができる制度(以下、「グレーゾーン解消制度」という。)を規定している。本項は、グレーゾーン解消制度における事務手続きを規定するものであり、制度の利用に当たっては、「「グレーゾーン解消制度」、「規制のサンドボックス制度」及び「新事業特例制度」の利用の手引き」(令和4年7月 15 日経済産業省)(以下、同省による改正後のものを含め、この項において「利用の手引き」という。)を参照するものとする。

  • (1)照会窓口

    照会窓口は、金融庁総合政策局総合政策課とする。

    なお、照会窓口たる金融庁総合政策局総合政策課は、下記(2)マル3の記載要領に示す要件を満たした照会書が到達した場合は速やかに受け付け、当該照会書の提出先が二以上の主務大臣であるときは、他の主務大臣に対し、その確認を求めるものとする。

  • (2)照会書受領後の流れ

    照会書を受け付けた後は、総合政策局総合政策課において、当該照会書を当該照会書に記載された確認の求めに係る法令を所管する担当課室に速やかに回付するとともに、当該担当課室と協議しつつ、回答を行う事案か否か、特に、以下のマル1からマル3について確認し、当制度の利用ができない確認の求めの場合には、当該照会書を提出した者(以下、この項において「提出者」という。)に対しその旨を連絡する。また、照会書の補正、追加書類の提出等が必要な場合には、提出者に対し所要の対応を求めることができる。ただし、追加書類は必要最小限とし、提出者の過度な負担とならないよう努めるものとする。

    • マル1確認の求めの主体

      以下のイ.及びロ.を満たすか。

      • イ.提出者は、新事業活動を実施しようとする者であること。

        (注)「新事業活動」とは、新商品の開発又は生産、新たな役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動のうち、当該新たな事業活動を通じて、生産性(資源生産性(エネルギーの使用又は鉱物資源の使用(エネルギーとしての使用を除く。)が新たな事業活動を実施しようとする者の経済活動に貢献する程度をいう。)を含む。)の向上又は新たな需要の開拓が見込まれるものであって、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがないものをいう(強化法第2条第4項、産業競争力強化法に基づく新技術等実証及び新事業活動に関する規制の特例措置の整備等及び規制改革の推進に関する命令(以下、「強化法命令」という。)第2条)。

      • ロ.提出者が、当庁所管の事業に係る新事業活動を実施しようとしている者であること。または、提出者が、その新事業活動及びこれに関連する事業活動に関する規制について規定する当庁が所管する法令の規定の解釈及び当該規定の適用の有無について、その確認を求めようとしている者であること。 

    • マル2照会の対象

      提出者が、その実施しようとする新事業活動及びこれに関連する事業活動に関する規制について規定する当庁が所管する法令の規定の解釈及び当該規定の適用の有無について、その確認を求めるものであって、以下のような照会を行うものか。

      • イ.その事業や取引を行うことが、免許または指定を受けた者が行うことができる業務にあたるか。

      • ロ.その事業や取引を行うことが、承認を受ける必要のある業務にあたるか。

      • ハ.その事業や取引を行うことによって、業務停止や免許または指定の取消等(不利益処分)を受けることがないか。

      • ニ.その事業や取引を行うことに関し、直接に義務を課され又は権利を制限されることがないか。

    • マル3照会書の記載要領

      強化法命令様式第九に従い、また利用の手引きを踏まえ、以下の事項が記載されているか。

      • イ.新事業活動及びこれに関連する事業活動の目標

      • ロ.新事業活動及びこれに関連する事業活動の内容

      • ハ.新事業活動及びこれに関連する事業活動の実施時期

      • ニ.解釈及び適用の有無の確認を求める法令の条項等

      • ホ.具体的な確認事項

    (3)回答

    •   照会書を回付された課室は、総合政策局総合政策課において回答を行う事案と判断した場合においては、提出者からの照会書が照会窓口に到達してから原則として1か月以内に提出者に対し強化法命令様式第十一による回答書を交付するものとする。

      また、照会書を回付された課室は、当該照会書に記載された確認の求めに係る法令の規定の解釈及び適用の有無についての検討の状況に照らし、上記期間内に回答書を交付することができないことについてやむを得ない理由がある場合には、当該回答書を交付するまでの間一月を超えない期間ごとに、その旨及びその理由を提出者に通知するものとする。

II-3 行政指導等を行う際の留意点等

II-3-1 行政指導等を行う際の留意点

清算・振替機関等に対して、行政指導等(行政指導等とは行政手続法第2条第6号にいう行政指導に加え、行政指導との区別が必ずしも明確ではない情報提供、相談、助言等の行為を含む。)を行うに当たっては、行政手続法等の法令等に沿って適正に行うものとする。特に行政指導を行う際には、以下の点に留意する。

  • (1)一般原則(行政手続法第32条)

    • マル1行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されているか。例えば、以下の点に留意する。

      • ア.行政指導の内容及び運用の実態、担当者の対応等について、相手方の理解を得ているか。

      • イ.相手方が行政指導に協力できないとの意思を明確に表明しているにもかかわらず、行政指導を継続していないか。

    • マル2相手方が行政指導に従わなかったことを理由として不利益な取扱いをしてはいないか。

      • ア.行政指導に従わない事実を法律の根拠なく公表することも、公表することにより経済的な損失を与えるなど相手方に対する社会的制裁として機能するような状況の下では、「不利益な取扱い」に当たる場合があることに留意する。

      • イ.行政指導を行う段階においては処分権限を行使するか否かは明確でなくても、行政指導を行った後の状況によっては処分権限行使の要件に該当し、当該権限を行使することがあり得る場合に、そのことを示して行政指導をすること自体を否定するものではない。

  • (2)申請に関連する行政指導(行政手続法第33条)

    申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続することにより当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしていないか。

    • マル1申請者が、明示的に行政指導に従わない旨の意思表示をしていない場合であっても、行政指導の経緯や周囲の客観情勢の変化等を勘案し、行政指導の相手方に拒否の意思表示がないかどうかを判断する。

    • マル2申請者が行政指導に対応している場合でも、申請に対する判断・応答が留保されることについても任意に同意しているとは必ずしもいえないことに留意する。

    • マル3例えば、以下の点に留意する。

      • ア.申請者が行政指導に従わざるを得ないようにさせ、申請者の権利の行使を妨げるようなことをしていないか。

      • イ.申請者が行政指導に従わない旨の意思表明を明確には行っていない場合、行政指導を行っていることを理由に申請に対する審査・応答を留保していないか。

      • ウ.申請者が行政指導に従わない意思を表明した場合には、行政指導を中止し、申請に対し、速やかに適切な対応をしているか。

  • (3)許認可等の権限に関連する行政指導(行政手続法第34条)

    許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合であるにもかかわらず、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせていないか。

    例えば、以下の点に留意する。

    • マル1許認可等の拒否処分をすることができないにもかかわらず、できる旨を示して一定の作為又は不作為を求めていないか。

    • マル2行政指導に従わなければすぐにでも権限を行使することを示唆したり、何らかの不利益な取扱いを行ったりすることを暗示するなど、相手方が行政指導に従わざるを得ないように仕向けてはいないか。

  • (4)行政指導の方式(行政手続法第35条)

    • マル1行政指導を行う際には、相手方に対し、行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示しているか。

      例えば、以下の点に留意する。

      • ア.相手方に対して求める作為又は不作為の内容を明確にしているか。

      • イ.当該行政指導をどの担当者の責任において行うものであるかを示しているか。

      • ウ.個別の法律に根拠を有する行政指導を行う際には、その根拠条項を示しているか。

      • エ.個別の法律に根拠を有さない行政指導を行う際には、当該行政指導の必要性について理解を得るため、その趣旨を伝えているか。

    • マル2行政指導について、相手方から、行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を記載した書面の交付を求められた時は、行政上特別の支障がない限り、原則としてこれを交付しているか(ただし、行政手続法第35条第3項各号に該当する場合を除く。)。

      例えば、以下の点に留意する。

      • ア.書面の交付を求められた場合には、できるだけ速やかに交付することが必要である。

      • イ.書面交付を拒み得る「行政上の特別の支障」がある場合とは、書面が作成者の意図と無関係に利用、解釈されること等により行政目的が達成できなくなる場合など、その行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を書面で示すことが行政運営上著しい支障を生じさせる場合をいう。

      • ウ.単に処理件数が大量であるだけの場合や単に迅速に行う必要がある場合であることをもって、「行政上特別の支障」がある場合に該当するとはいえないことに留意する。

II-3-2 面談等を行う際の留意点

職員が、清算・振替機関等の役職員等と面談等(面談、電話、電子メ-ル等によるやりとりをいう。以下同じ。)を行うに際しては、下記の事項に留意する。

  • (1)面談等に参加する職員は、常に綱紀及び品位を保持し、穏健冷静な態度で臨んでいるか。

  • (2)面談等の目的、相手方の氏名・所属等を確認しているか。

  • (3)面談等の方法、面談等を行う場所、時間帯、参加している職員及び相手方が、面談等の目的・内容からみてふさわしいものとなっているか。

  • (4)面談等の内容・結果について双方の認識が一致するよう、必要に応じ確認しているか。特に、面談等の内容・結果が守秘義務の対象となる場合には、そのことが当事者双方にとって明確となっているか。

  • (5)面談等の内容が上司の判断を仰ぐ必要のある場合において、状況に応じあらかじめ上司の判断を仰ぎ、又は事後に速やかに報告しているか。また、同様の事案について複数の相手方と個別に面談等を行う場合には、行政の対応の統一性・透明性に配慮しているか。

II-4 行政処分を行う際の留意点

II-4-1 清算機関

II-4-1-1 検査結果等への対応

  • (1)検査結果への対応

    検査部局が実施した清算機関に対する検査については、以下のとおり、その結果を監督業務に適切に反映させることとする。

    • マル1検査報告書において指摘のあった法令に抵触する行為、その他清算機関の業務の運営又は財産の状況、公益又は投資者保護の観点から問題のある行為又は状況、及び前回検査で指摘を受けた重要な事項で改善が認められない場合について、必要かつ適当と認められる場合には、清算機関に対し、当該検査報告書で指摘された事項についての事実確認、発生原因分析、改善・対応策、その他の事項を取りまとめた報告書を1か月以内(必要に応じ、項目ごとに短縮する。)に提出することを、金商法第156条の15の規定に基づき命ずるものとする。

      また、システムの変更等を予定している清算機関において、システム変更に係るリスクの管理態勢に関する指摘がある場合のうち、必要かつ適当と認められる場合には、当該システムの変更等の計画を的確に履行するための方策、システムリスクに係る内部管理態勢(内部監査を含む。)等についても、報告書の提出を命ずるものとする。

    • マル2報告書が提出される段階においては、清算機関から十分なヒアリングを行うこととする。ヒアリングに当たっては、検査部局とも緊密な連携を図るものとする。

    • マル3報告書に記載された改善・対応策の実施や、指摘事項の改善について、一定の期間を要すると認められる場合には、定期的なヒアリングを実施する等フォロ-アップに努めるものとする。

    • マル4立入検査の結果等を踏まえ、証券取引等監視委員会から、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき「行うべき行政処分その他の措置」について勧告があった場合には、監督部局においては、その内容の検討を行った上で、金商法第156条の15から第156条の17までの規定に基づく行政処分その他の適切な措置を検討することとする。

  • (2)オフサイト・モニタリング等に基づく報告徴求

    • マル1オフサイト・モニタリング等を通じて、清算機関の経営管理態勢、リスク管理態勢、法令等遵守態勢等に問題があると認められる場合においては、金商法第156条の15の規定に基づき、当該事項についての事実認識、発生原因分析、改善・対応策その他必要と認められる事項について報告を求めることとする。

    • マル2報告を検証した結果、更に精査する必要があると認められる場合においては、金商法第156条の15の規定に基づき、追加報告を求めることとする。

    • マル3上記報告を検証した結果、公益又は投資者保護の観点から重大な問題が発生しておらず、かつ、清算機関の自主的な改善への取組みを求めることが可能な場合においては、深度あるヒアリング等を通じて、報告された改善・対応策のフォロ-アップを行うこととする。

    • マル4さらに、必要があれば、金商法第156条の15の規定に基づき、定期的な報告 を求め、フォロ-アップを行うこととする。

II-4-1-2 金商法の規定に基づく行政処分(業務改善命令、業務停止命令等)

清算機関からの報告又は検査部局からの勧告等の内容について、本監督指針に掲げた評価項目等に照らして総合的に検証した結果、公益又は投資者保護の観点から重大な問題が認められる場合、以下(1)から(3)までに掲げる要素を勘案するとともに、それ以外に考慮すべき要因がないかどうかを吟味した上で、

  • 改善に向けた取組みを清算機関の自主性に委ねることが適当かどうか、
  • 改善に相当の取組みを要し、一定期間業務改善に専念・集中させる必要があるか、
  • 業務を継続させることが適当かどうか、

等の点について検討を行い、行政処分の内容を決定することとする。

  • (1)当該行為の重大性・悪質性

    • マル1公益侵害の程度

      例えば、業務方法書等に定められたリスク管理手続の主要な部分の実施を怠ることにより、金融商品市場に対する信頼性を損なうなど公益を著しく侵害していないか。

    • マル2投資者や市場参加者の被害の程度

      広範囲にわたって多数の投資者や市場参加者が被害を受けたかどうか。個々の投資者や市場参加者が受けた被害がどの程度深刻か。

    • マル3行為自体の悪質性

      例えば、投資者や市場参加者から継続的に多数の苦情を受けているのにもかかわらず、対応を怠り続けるなど、行為が悪質であったか。

    • マル4当該行為が行われた期間や反復性

      当該行為が長期間にわたって行われたのか、短期間のものだったのか。反復・継続して行われたものか、一回限りのものか。また、過去に同様の違反行為が行われたことがあるか。

    • マル5故意性の有無

      当該行為が違法・不適切であることを認識しつつ故意に行われたのか、過失によるものか。

    • マル6組織性の有無

      当該行為が現場の個人の判断で行われたものか、あるいは管理者も関わっていたのか。更に役員の関与があったのか。

    • マル7隠蔽の有無

      問題を認識した後に隠蔽行為はなかったか。隠蔽がある場合には、それが組織的なものであったか。

    • マル8反社会的勢力との関与の有無

      反社会的勢力との関与はなかったか。関与がある場合には、どの程度か。

  • (2)当該行為の背景となった経営管理態勢及び業務運営態勢の適切性

    • マル1役員の法令等遵守に関する認識や取組みは十分か。

    • マル2内部監査部門の体制は十分か、また適切に機能しているか。

    • マル3コンプライアンス部門やリスク管理部門の体制は十分か、また適切に機能しているか。

    • マル4業務担当者の法令等遵守に関する認識は十分か、また、社内教育が十分になされているか。

  • (3)軽減事由

    行政による対応に先行して自主的に事態の改善に向けた所要の対応に取り組んでいるなどといった軽減事由があるか。

II-4-1-3 標準処理期間

上記II-4-1-2の行政処分をしようとする場合には、検査部局からの勧告書若しくは報告徴求を行った場合の当該報告書を受理したときから1か月(処分が他省庁との共管法令に基づく場合は2か月)以内を目途に行うものとする。

  • (注1)「報告書を受理したとき」の判断においては、以下の点に留意する。

    • ア.複数回にわたって、法律の規定に基づき報告を求める場合(直近の報告書を受理したときから上記の期間内に報告を求める場合に限る。)には、最後の報告書を受理したときを指すものとする。

    • イ.提出された報告書に関し、資料の訂正、追加提出等(軽微なものは除く。)を求める場合には、当該訂正、資料の追加提出等が行われたときを指すものとする。

  • (注2)弁明・聴聞等に要する期間は、標準処理期間に含まれない。

  • (注3)標準処理期間は、処分を検討する基礎となる情報ごとに適用する。

II-4-1-4 業務改善命令の履行状況の報告義務の解除

業務改善命令を発出する場合には、当該命令に基づく清算機関の業務改善に向けた取組みをフォローアップし、その改善努力を促すため、原則として、当該清算機関の提出する業務改善計画の履行状況の報告を求めることとし、以下の点に留意するものとする。

  • (1)業務改善命令を発出している清算機関に対して、当該清算機関の提出した業務改善計画の履行状況について、期限を定めて報告を求めている場合には、期限の到来により、当該清算機関の報告義務は解除される。

  • (2)業務改善命令を発出している清算機関に対して、当該清算機関の提出した業務改善計画の履行状況について、期限を定めることなく継続的に報告を求めている場合には、業務改善命令を発出する要因となった問題に関して、業務改善計画に沿って十分な改善措置が講じられたと認められるときには、当該計画の履行状況の報告義務を解除するものとする。その際、当該報告等により把握した改善への取組状況に基づき、解除の是非を判断するものとする。

II-4-1-5 行政手続法等との関係

  • (1)行政手続法との関係

    行政手続法第13条第1項第1号に該当する不利益処分をしようとする場合には聴聞を行い、同項第2号に該当する不利益処分をしようとする場合には弁明の機会を付与しなければならないことに留意する(業法の規定において聴聞等を行わねばならないとされている場合には、当該規定に基づき聴聞等の機会の付与を行う)。

    いずれの場合においても、不利益処分をする場合には同法第14条に基づき、処分の理由を示さなければならないこと(不利益処分を書面でするときは、処分の理由も書面により示さなければならないこと)に留意する。

    また、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合には同法第8条に基づき、処分の理由を示さなければならないこと(許認可等を拒否する処分を書面でするときは、処分の理由も書面により示さなければならないこと)に留意する。

    その際、単に根拠規定を示すだけではなく、いかなる事実関係に基づき、いかなる法令・基準を適用して処分がなされたかを明らかにすること等が求められることに留意する。

  • (2)行政不服審査法との関係

    不服申立てをすることができる処分をする場合には、行政不服審査法第82条に基づき、不服申立てをすることができる旨等を書面で教示しなければならないことに留意する。

  • (3)行政事件訴訟法との関係

    取消訴訟を提起することができる処分をする場合には、行政事件訴訟法第46条に基づき、取消訴訟の提起に関する事項を書面で教示しなければならないことに留意する。

II-4-1-6 意見交換制度

不利益処分が行われる場合、行政手続法に基づく聴聞又は弁明の機会の付与の手続とは別に、清算機関からの求めに応じ、監督部局と清算機関との間で、複数のレベルにおける意見交換を行うことで、行おうとする処分の原因となる事実及びその重大性についての認識の共有を図ることが有益である。

報告徴求に係るヒアリング等の過程において、自社に対して不利益処分が行われる可能性が高いと認識した清算機関から、監督部局の幹部(注1)と当該清算機関の幹部との間の意見交換の機会の設定を求められた場合(注2)であって、監督部局が当該清算機関に対して聴聞又は弁明の機会の付与を伴う不利益処分を行おうとするときには、緊急に処分する必要がある場合を除き、聴聞の通知又は弁明の機会の付与の通知を行う前に、行おうとする不利益処分の原因となる事実及びその重大性等についての意見交換の機会を設けることとする。

  • (注1)監督部局の幹部の例:金融庁の担当課室長

  • (注2)清算機関からの意見交換の機会の設定の求めは、監督当局が当該不利益処分の原因となる事実についての法律の規定に基づく報告徴求の報告書等を受理したときから、聴聞の通知又は弁明の機会の付与の通知を行うまでの間になされるものに限る。

II-4-1-7 関係当局、海外監督当局等への連絡

報告徴求命令、業務改善命令若しくは業務停止命令を発出する又は免許等を取り消す等の不利益処分をしようとする場合には、必要に応じ、II-1-3にあるとおり、関係する当局等への連絡を行う。

II-4-1-8 不利益処分の公表に関する考え方

免許等の取消し等の不利益処分を行った場合には、清算機関が行う一連の機能の高い公共性に鑑み、また他の清算機関等における予測可能性を高め、同様の事案の発生を抑制する観点から、公表により市場に大きな混乱が生ずるおそれのある場合を除き、処分の原因となった事実及び処分の内容等を公表する(業法の規定において公示等の定めがある場合には、当該規定に基づき公示等の手続を行う)。

II-4-1-9 清算機関が提出する書類等における記載上の留意点

別紙様式集における代表者の氏名の記載については、法令の手続に従い、免許等の申請の際に旧氏(住民基本台帳法施行令(昭和四十二年政令第二百九十二号)第三十条の十三に規定する旧氏をいう。)及び名を申請者の氏名に併記した申請書等を提出した者の場合は、旧氏及び名を括弧書で併せて記載するか、又は氏名に代えて旧氏及び名を記載することができることに留意する。

II-4-1-10  電子申請可能な申請書等を提出するに当たっての留意点

  • (1)書面・対面による手続についての留意点

清算機関による当局への申請・届出等及び当局から清算機関に対し発出する処分通知等については、それぞれ情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(以下「デジタル手続法」という。)第6条第1項及び第7条第1項の規定により、法令の規定において書面等により行うことその他のその方法が規定されている場合においても、当該法令の規定にかかわらず、電子情報処理組織を使用する方法により行うことができることとされている。

こうしたデジタル手続法の趣旨を踏まえ、同法の適用対象となる手続に係る本監督指針の規定についても、当該規定の書面・対面に係る記載にかかわらず、電子情報処理組織を使用する方法により行うことができるものとする。

また、経済社会活動全般において、デジタライゼーションが飛躍的に進展している中、政府全体として、書面・押印・対面手続を前提とした我が国の制度・慣行を見直し、実際に足を運ばなくても手続ができるリモート社会の実現に向けた取組みを進めている。

金融庁としても、こうした取組みを着実に進めるため、清算機関から受け付ける申請・届出等について、全ての手続についてオンラインでの提出を可能とするための金融庁電子申請・届出システムを更改したほか、押印を廃止するための内閣府令及び監督指針等の改正を行うこと等により、行政手続の電子化を推進してきた。

更に、民間事業者間における手続についても、「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」を開催し、業界全体での慣行見直しを促すことにより、書面の電子化や押印の不要化、対面規制の見直しに取り組んできた。

このような官民における取組みも踏まえ、本監督指針の書面・対面に係る記載のうち、デジタル手続法の適用対象となる手続に係るもの以外についても、(2)に掲げる原本送付を求める場合を除き、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により行うことができるものとする。

以上のような取扱いとする趣旨に鑑み、本監督指針の規定に基づく手続については、手続の相手方の意向を考慮した上で、可能な限り、書面・対面によらない方法により行うことを慫慂するものとする。

  • (2)申請書等を提出するに当たっての留意点

(1)を踏まえ、清算機関による当局への申請・届出等については、原則として、金融庁電子申請・届出システムを利用して法令の定める提出期限までに提出を求めることとする。

ただし、公的機関が発行する添付書類(住民票の写し、身分証明書、戸籍謄本、税・手数料等の納付を証する書類等)については、原本送付を求めることとする。

II-4-2 資金清算機関

II-4-2-1 検査結果等への対応

  • (1)検査結果への対応

    検査部局が実施した資金清算機関に対する検査については、以下のとおり、その結果を監督業務に適切に反映させることとする。

    • マル1検査報告書において指摘のあった法令に抵触する行為、その他資金清算機関の業務の運営又は財産の状況、業務の適正かつ確実な遂行の観点から問題のある行為又は状況、及び前回検査で指摘を受けた重要な事項で改善が認められない場合について、必要が認められる場合には、資金清算機関に対し、当該検査報告書で指摘された事項についての事実確認、発生原因分析、改善・対応策、その他の事項を取りまとめた報告書を1か月以内(必要に応じ、項目ごとに短縮する。)に提出することを、資金決済法第80条第1項の規定に基づき命ずるものとする。

      また、システムの変更等を予定している資金清算機関において、システム変更に係るリスクの管理態勢に関する指摘がある場合のうち、必要があると認められる場合には、当該システムの変更等の計画を的確に履行するための方策、システムリスクに係る内部管理態勢(内部監査を含む。)等についても、報告書の提出を命ずるものとする。

    • マル2報告書が提出される段階においては、資金清算機関から十分なヒアリングを行うこととする。ヒアリングに当たっては、検査部局とも緊密な連携を図るものとする。

    • マル3報告書に記載された改善・対応策の実施や、指摘事項の改善について、一定の期間を要すると認められる場合には、定期的なヒアリングを実施する等フォロ-アップに努めるものとする。

  • (2)オフサイト・モニタリング等に基づく報告徴求

    • マル1オフサイト・モニタリング等を通じて、資金清算機関の経営管理態勢、リスク管理態勢、法令等遵守態勢等に問題があると認められる場合においては、資金決済法第80条第1項の規定に基づき、当該事項についての事実認識、発生原因分析、改善・対応策その他必要と認められる事項について報告を求めることとする。

    • マル2報告を検証した結果、更に精査する必要があると認められる場合においては、資金決済法第80条第1項の規定に基づき、追加報告を求めることとする。

    • マル3上記報告を検証した結果、業務の適正かつ確実な遂行の観点から重大な問題が発生しておらず、かつ、資金清算機関の自主的な改善への取組みを求めることが可能な場合においては、深度あるヒアリング等を通じて、報告された改善・対応策のフォロ-アップを行うこととする。

    • マル4さらに、必要があれば、資金決済法第80条第1項の規定に基づき、定期的な報告を求め、フォロ-アップを行うこととする。

II-4-2-2 資金決済法の規定に基づく行政処分(業務改善命令、業務停止命令等)

資金清算機関からの報告又は検査部局の立入検査等の内容について、本監督指針に掲げた評価項目等に照らして総合的に検証した結果、業務の適正かつ確実な遂行の観点から重大な問題が認められる場合、以下(1)から(3)までに掲げる要素を勘案するとともに、それ以外に考慮すべき要因がないかどうかを吟味した上で、

  • 改善に向けた取組みを資金清算機関の自主性に委ねることが適当かどうか、
  • 改善に相当の取組みを要し、一定期間業務改善に専念・集中させる必要があるか、
  • 業務を継続させることが適当かどうか、

等の点について検討を行い、行政処分の内容を決定することとする。

  • (1)当該行為の重大性・悪質性

    • マル1公益侵害の程度

      例えば、業務方法書等に定められたリスク管理手続の主要な部分の実施を怠ることにより、資金決済システムに対する信頼性を損なうなど公益を著しく侵害していないか。

    • マル2参加者等被害の程度

      広範囲にわたって多数の参加者等が被害を受けたかどうか。個々の参加者等が受けた被害がどの程度深刻か。

    • マル3行為自体の悪質性

      例えば、参加者等から継続的に多数の苦情を受けているのにもかかわらず、対応を怠り続けるなど、行為が悪質であったか。

    • マル4当該行為が行われた期間や反復性

      当該行為が長期間にわたって行われたのか、短期間のものだったのか。反復・継続して行われたものか、一回限りのものか。また、過去に同様の違反行為が行われたことがあるか。

    • マル5故意性の有無

      当該行為が違法・不適切であることを認識しつつ故意に行われたのか、過失によるものか。

    • マル6組織性の有無

      当該行為が現場の個人の判断で行われたものか、あるいは管理者も関わっていたのか。更に役員の関与があったのか。

    • マル7隠蔽の有無

      問題を認識した後に隠蔽行為はなかったか。隠蔽がある場合には、それが組織的なものであったか。

    • マル8反社会的勢力との関与の有無

      反社会的勢力との関与はなかったか。関与がある場合には、どの程度か。

  • (2)当該行為の背景となった経営管理態勢及び業務運営態勢の適切性

    • マル1役員の法令等遵守に関する認識や取組みは十分か。

    • マル2内部監査部門の体制は十分か、また適切に機能しているか。

    • マル3コンプライアンス部門やリスク管理部門の体制は十分か、また適切に機能しているか。

    • マル4業務担当者の法令等遵守に関する認識は十分か、また、社内教育が十分になされているか。

  • (3)軽減事由

    行政による対応に先行して自主的に事態の改善に向けた所要の対応に取り組んでいるなどといった軽減事由があるか。

II-4-2-3 標準処理期間等

清算機関に係るII-4-1-3からII-4-1-10の規定は、資金清算機関についてこれを準用する。この場合において、II-4-1-3の「検査部局から勧告書若しくは報告徴求を行った場合の当該報告書」とあるのは、「報告徴求を行った場合の当該報告書」とする。

II-4-3 振替機関

II-4-3-1 検査結果等への対応

  • (1)検査結果への対応

    検査部局が実施した振替機関に対する検査については、以下のとおり、その結果を監督業務に適切に反映させることとする。

    • マル1検査報告書において指摘のあった法令に抵触する行為、その他振替機関の業務の運営又は財産の状況、業務の適正かつ確実な遂行の観点から問題のある行為又は状況、及び前回検査で指摘を受けた重要な事項で改善が認められない場合について、必要と認められる場合には、振替機関に対し、当該検査報告書で指摘された事項についての事実確認、発生原因分析、改善・対応策、その他の事項を取りまとめた報告書を1か月以内(必要に応じ、項目ごとに短縮する。)に提出することを、振替法第20条第1項の規定に基づき命ずるものとする。

      また、システムの変更等を予定している振替機関において、システム変更に係るリスクの管理態勢に関する指摘がある場合のうち、必要と認められる場合には、当該システムの変更等の計画を的確に履行するための方策、システムリスクに係る内部管理態勢(内部監査を含む。)等についても、報告書の提出を命ずるものとする。

    • マル2報告書が提出される段階においては、振替機関から十分なヒアリングを行うこととする。ヒアリングに当たっては、検査部局とも緊密な連携を図るものとする。

    • マル3報告書に記載された改善・対応策の実施や、指摘事項の改善について、一定の期間を要すると認められる場合には、定期的なヒアリングを実施する等フォロ-アップに努めるものとする。

    • マル4立入検査の結果等を踏まえ、証券取引等監視委員会から、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき「行うべき行政処分その他の措置」について勧告があった場合には、監督部局においては、その内容の検討を行った上で、振替法第20条から第23条までの規定に基づく行政処分その他の適切な措置を検討することとする。

  • (2)オフサイト・モニタリング等に基づく報告徴求

    • マル1オフサイト・モニタリング等を通じて、振替機関の経営管理態勢、リスク管理態勢、法令等遵守態勢等に問題があると認められる場合においては、振替法第20条第1項の規定に基づき、当該事項についての事実認識、発生原因分析、改善・対応策その他必要と認められる事項について報告を求めることとする。

    • マル2報告を検証した結果、更に精査する必要があると認められる場合においては、振替法第20条第1項の規定に基づき、追加報告を求めることとする。

    • マル3上記報告を検証した結果、振替業の適正かつ確実な遂行又は投資者保護の観点から重大な問題が発生しておらず、かつ、振替機関の自主的な改善への取組みを求めることが可能な場合においては、深度あるヒアリング等を通じて、報告された改善・対応策のフォロ-アップを行うこととする。

    • マル4さらに、必要があれば、振替法第20条第1項の規定に基づき、定期的な報告を求め、フォローアップを行うこととする。

II-4-3-2 振替法の規定に基づく行政処分(業務改善命令、業務停止命令等)

振替機関からの報告又は検査部局からの勧告等の内容について、本監督指針に掲げた評価項目等に照らして総合的に検証した結果、振替業の適正かつ確実な遂行の観点から重大な問題が認められる場合、以下(1)から(3)までに掲げる要素を勘案するとともに、それ以外に考慮すべき要因がないかどうかを吟味した上で、

  • 改善に向けた取組みを振替機関の自主性に委ねることが適当かどうか、
  • 改善に相当の取組みを要し、一定期間業務改善に専念・集中させる必要があるか、
  • 業務を継続させることが適当かどうか、

等の点について検討を行い、行政処分の内容を決定することとする。

  • (1)当該行為の重大性・悪質性

    • マル1公益侵害の程度

      例えば、業務規程等に定められた手続の主要な部分の実施を怠ることにより、金融商品市場に対する信頼性を損なうなど公益を著しく侵害していないか。

    • マル2投資者や市場参加者の被害の程度

      広範囲にわたって多数の投資者や市場参加者が被害を受けたかどうか。個々の投資者や市場参加者が受けた被害がどの程度深刻か。

    • マル3行為自体の悪質性

      例えば、投資者や市場参加者から継続的に多数の苦情を受けているのにもかかわらず、対応を怠り続けるなど、行為が悪質であったか。

    • マル4当該行為が行われた期間や反復性

      当該行為が長期間にわたって行われたのか、短期間のものだったのか。反復・継続して行われたものか、一回限りのものか。また、過去に同様の違反行為が行われたことがあるか。

    • マル5故意性の有無

      当該行為が違法・不適切であることを認識しつつ故意に行われたのか、過失によるものか。

    • マル6組織性の有無

      当該行為が現場の個人の判断で行われたものか、あるいは管理者も関わっていたのか。更に役員の関与があったのか。

    • マル7隠蔽の有無

      問題を認識した後に隠蔽行為はなかったか。隠蔽がある場合には、それが組織的なものであったか。

    • マル8反社会的勢力との関与の有無

      反社会的勢力との関与はなかったか。関与がある場合には、どの程度か。

  • (2)当該行為の背景となった経営管理態勢及び業務運営態勢の適切性

    • マル1役員の法令等遵守に関する認識や取組みは十分か。

    • マル2内部監査部門の体制は十分か、また適切に機能しているか。

    • マル3コンプライアンス部門やリスク管理部門の体制は十分か、また適切に機能しているか。

    • マル4業務担当者の法令等遵守に関する認識は十分か、また、社内教育が十分になされているか。

  • (3)軽減事由

    行政による対応に先行して自主的に事態の改善に向けた所要の対応に取り組んでいるなどといった軽減事由があるか。

II-4-3-3 標準処理期間等

清算機関に係るII-4-1-3からII-4-1-10の規定は、振替機関についてこれを準用する。

II-4-4 取引情報蓄積機関

II-4-4-1 検査結果等への対応

  • (1)検査結果への対応

    検査部局が実施した取引情報蓄積機関及び取引情報蓄積業務の一部の委託を受けた者(以下「取引情報蓄積機関等」という。)に対する検査については、以下のとおり、その結果を監督業務に適切に反映させることとする。

    • マル1検査報告書において指摘のあった法令に抵触する行為、その他取引情報蓄積機関の業務の運営又は財産の状況、公益又は投資者保護の観点から問題のある行為又は状況、及び前回検査で指摘を受けた重要な事項で改善が認められない場合について、必要かつ適当と認められる場合には、取引情報蓄積機関等に対し、当該検査報告書で指摘された事項についての事実確認、発生原因分析、改善・対応策、その他の事項を取りまとめた報告書を1か月以内(必要に応じ、項目ごとに短縮する。)に提出することを、金商法第156条の80の規定に基づき命ずるものとする。

      また、システムの変更等を予定している取引情報蓄積機関等において、システム変更に係るリスクの管理態勢に関する指摘がある場合のうち、必要かつ適当と認められる場合には、当該システムの変更等の計画を的確に履行するための方策、システムリスクに係る内部管理態勢(内部監査を含む。)等についても、報告書の提出を命ずるものとする。

    • マル2報告書が提出される段階においては、取引情報蓄積機関等から十分なヒアリングを行うこととする。ヒアリングに当たっては、検査部局とも緊密な連携を図るものとする。

    • マル3報告書に記載された改善・対応策の実施や、指摘事項の改善について、一定の期間を要すると認められる場合には、定期的なヒアリングを実施する等フォロ-アップに努めるものとする。

    • マル4立入検査の結果等を踏まえ、証券取引等監視委員会から、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき「行うべき行政処分その他の措置」について勧告があった場合には、監督部局においては、その内容の検討を行った上で、金商法第156条の80、第156条の81、第156条の83及び第156条の84の規定に基づく行政処分その他の適切な措置を検討することとする。

  • (2)オフサイト・モニタリング等に基づく報告徴求

    • マル1オフサイト・モニタリング等を通じて、取引情報蓄積機関の経営管理態勢、リスク管理態勢、法令等遵守態勢等に問題があると認められる場合においては、金商法第156条の80の規定に基づき、当該事項についての事実認識、発生原因分析、改善・対応策その他必要と認められる事項について報告を求めることとする。

    • マル2報告を検証した結果、更に精査する必要があると認められる場合においては、金商法第156条の80の規定に基づき、追加報告を求めることとする。

    • マル3上記報告を検証した結果、公益又は投資者保護の観点から重大な問題が発生しておらず、かつ、取引情報蓄積機関の自主的な改善への取組みを求めることが可能な場合においては、深度あるヒアリング等を通じて、報告された改善・対応策のフォロ-アップを行うこととする。

    • マル4さらに、必要があれば、金商法第156条の80の規定に基づき、定期的な報告を求め、フォロ-アップを行うこととする。

II-4-4-2 金商法の規定に基づく行政処分(業務改善命令、業務停止命令等)

取引情報蓄積機関等からの報告又は検査部局からの勧告等の内容について、本監督指針に掲げた評価項目等に照らして総合的に検証した結果、公益又は投資者保護の観点から重大な問題が認められる場合、以下(1)から(3)までに掲げる要素を勘案するとともに、それ以外に考慮すべき要因がないかどうかを吟味した上で、

  • 改善に向けた取組みを取引情報蓄積機関の自主性に委ねることが適当かどうか、
  • 改善に相当の取組みを要し、一定期間業務改善に専念・集中させる必要があるか、
  • 業務を継続させることが適当かどうか、

等の点について検討を行い、行政処分の内容を決定することとする。

  • (1)当該行為の重大性・悪質性

    • マル1公益侵害の程度

      例えば、業務規程等に定められた手続の主要な部分の実施を怠ることにより、金融商品市場に対する信頼性を損なうなど公益を著しく侵害していないか。

    • マル2投資者や市場参加者の被害の程度

      広範囲にわたって多数の投資者や市場参加者が被害を受けたかどうか。個々の投資者や市場参加者が受けた被害がどの程度深刻か。

    • マル3行為自体の悪質性

      例えば、投資者や市場参加者から継続的に多数の苦情を受けているのにもかかわらず、対応を怠り続けるなど、行為が悪質であったか。

    • マル4当該行為が行われた期間や反復性

      当該行為が長期間にわたって行われたのか、短期間のものだったのか。反復・継続して行われたものか、一回限りのものか。また、過去に同様の違反行為が行われたことがあるか。

    • マル5故意性の有無

      当該行為が違法・不適切であることを認識しつつ故意に行われたのか、過失によるものか。

    • マル6組織性の有無

      当該行為が現場の個人の判断で行われたものか、あるいは管理者も関わっていたのか。更に役員の関与があったのか。

    • マル7隠蔽の有無

      問題を認識した後に隠蔽行為はなかったか。隠蔽がある場合には、それが組織的なものであったか。

    • マル8反社会的勢力との関与の有無

      反社会的勢力との関与はなかったか。関与がある場合には、どの程度か。

  • (2)当該行為の背景となった経営管理態勢及び業務運営態勢の適切性

    • マル1役員の法令等遵守に関する認識や取組みは十分か。

    • マル2内部監査部門の体制は十分か、また適切に機能しているか。

    • マル3コンプライアンス部門やリスク管理部門の体制は十分か、また適切に機能しているか。

    • マル4業務担当者の法令等遵守に関する認識は十分か、また、社内教育が十分になされているか。

  • (3)軽減事由

    行政による対応に先行して自主的に事態の改善に向けた所要の対応に取り組んでいるなどといった軽減事由があるか。

II-4-4-3 標準処理期間等

清算機関に係るII-4-1-3からII-4-1-10の規定は、取引情報蓄積機関についてこれを準用する。

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