平成23年5月24日

金融庁検査局

監督局

「平成23年東北地方太平洋沖地震による災害についての金融検査マニュアル・監督指針の特例措置及び運用の明確化について」に関するよくあるご質問(FAQ)

<目 次>

1.全体

  • (1-1)今般の措置は平成23年3月期決算限りのものでしょうか。

  • (1-2)「災害の影響」、「地震の影響」というのは、具体的にどの範囲まで含めているのでしょうか。

  • (1-3)今般の措置に基づく金融機関の対応を検査でどのように検証するのでしょうか。

2.金融検査マニュアル(特例措置)

  • (2-1)今般の特例措置に基づいて、自己査定を行わないといけないのでしょうか。また、今般の措置に基づく自己査定を行う場合、自己査定基準を見直す必要はあるのでしょうか。

  • (2-2)「一時的に当該債務者などの実態把握が困難」とありますが、「一時的」をどのように解釈すれば良いでしょうか。

  • (2-3)「それまでに把握している情報」とありますが、12月末の仮基準日での自己査定結果を用いることはできるのでしょうか。

  • (2-4)「財務諸表等への注記が必要となる場合がある」とありますが、注記には何を書けばよいのでしょうか。また、「開示債権」についても注記の対応は必要なのでしょうか。

  • (2-5)非上場の有価証券についても、合理的な判断が困難な場合は、それまでに把握している情報により査定してもよいのでしょうか。

  • (2-6)経営再建計画の策定猶予期間中に、今般の震災の影響で、連絡が一時的に取れないこと等により債務者の実態把握が一時的に困難となった場合にはどのようにすればよいのでしょうか。

  • (2-7)債務者の信用状況に変化があった都度査定を行なう随時査定を実施している場合において、債務者との連絡が一時的に取れないこと等により、当該債務者の業況及び今後の見通しについて把握することが一時的に困難である場合、債務者の実態把握ができ次第、速やかに信用格付及び債務者区分判定を行う対応で問題ないでしょうか。

  • (2-8)中小企業である債務者の返済能力を判断するにあたって、これまで、金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕を参照し、代表者の固定資産を加味してきましたが、今般の震災の影響により、当該固定資産の評価が一時的に困難である場合には、震災前の固定資産税評価額等に基づき、これまで同様、当該固定資産を債務者の返済能力に加味することは可能でしょうか。

  • (2-9)原子力発電所の事故により、実態把握が困難な債務者の査定はどのように行えば良いのでしょうか。

  • (2-10)債務者が直近の決算書を作成できない場合、昨年の決算書で正常運転資金の判断を行っても差し支えないでしょうか。

  • (2-11)再評価・実査が困難な担保物件の評価について、それまでに把握している情報を用いて査定した場合は、「財務諸表等へ注記が必要」とされていますが、想定している担保物件とは具体的にどのような物件でしょうか。

3.金融検査マニュアル(運用の明確化措置)

  • (3-1)赤字・延滞の「一過性」とは、今般の明確化措置の場合、どの程度まで認められるのでしょうか。仮に計画停電や原材料の調達難等の影響が長期に及ぶ場合も「一過性」といえるのでしょうか。

  • (3-2)「震災による赤字・延滞を『一過性』のものと判断できる場合には債務者区分の引き下げを行わなくてもよい」としている一方で、別表1「自己査定結果の正確性の検証」の要注意先にかかる債務者区分の検討においては、「生産活動の停滞等により赤字となっている債務者で、返済能力について特に問題ないと認められる債務者」を正常先と判断して差し支えないとしています。「一過性」による赤字であっても、返済能力がなければ「要注意先」とすべきということでしょうか。
    上記のとおりとする場合、例えば、地震の影響で売上が減少し、かつ設備修繕費が増加したことによる赤字が「一過性の赤字」であったと判断できる場合、返済能力の検証方法はどのように行うのが適切でしょうか。

  • (3-3)正常先の債務者が、震災の影響による「一過性」の延滞により、3カ月以上延滞した場合、要注意先とする必要はないのでしょうか。

  • (3-4)3カ月以上の延滞を一過性のものと判断した結果、リスク管理債権の3カ月以上延滞債権や、再生法開示債権の要管理債権の判定はどうなるのでしょうか。

  • (3-5)3カ月以上延滞債権は金融再生法開示債権の要管理債権に該当するが、債権の全部又は一部が要管理債権である債務者は「要管理先」としなくてもよいのでしょうか。

  • (3-6)実質破綻先にかかる債務者区分の検討において、「『実質的に長期間延滞している』ものに該当しない」とは、マル1震災後に初めて延滞が発生し、その後、6カ月以上経過後も延滞が継続している場合を想定しているのか、マル2震災時点で既に5カ月の延滞があり、震災後に6カ月以上延滞となった場合も含め想定しているのか、教えてください。

  • (3-7)「延滞とみなさなくとも差し支えない」とは、状況によっては延滞とみなしても問題ないということでしょうか。

  • (3-8)団体信用生命保険付債権について、平時とは異なり、当該保険による貸出金回収に要する期間が見通せない中、最終的な回収可能性を勘案し、震災による債務者の死亡確認及び特別失踪宣告等の事実をもって、分類対象外債権とすることは可能でしょうか。また、可能であるならば、どのような条件が整えば良いのか教えてください。

  • (3-9)異常値控除について、「その他の債務者に対する貸倒実績率又は倒産確率に影響しない場合について」とはどういう意味でしょうか。

  • (3-10)今般の震災による貸倒等の損失は全て異常値として控除していいのでしょうか。

  • (3-11)一般貸倒引当金については、予想損失率の算定に際して、震災の影響による損失額又は倒産件数は異常値控除やグルーピングの対象となる旨、今回の措置により明確化されていますが、破綻懸念先III分類の貸倒実績率に関しても、一般貸倒引当金と同様の取扱いは適用できるのでしょうか。

  • (3-12)今般の震災の影響による貸倒等の実績を異常値として、震災の影響がない貸出金の貸倒実績率等に算入しない場合、予想損失率をどのように算定して、貸倒引当金を計上すれば良いのでしょうか。

4.監督指針(特例措置)

  • (4-1)今般の特例措置(計画策定の猶予)を適用して経営再建計画の策定を猶予した(中小企業以外の)債務者が、「最長1年以内」に計画を策定できなかった場合、貸出条件緩和債権に該当することとなるのでしょうか。

  • (4-2)震災前に貸出条件の変更を行い、貸出条件緩和債権に該当するとしていた中小企業以外の債務者に対する貸出金について、今般の特例措置(計画策定の猶予)を適用することはできますか。

  • (4-3)今般の特例措置(計画策定の再猶予)について、最長1年間の再猶予の起点はいつになるのでしょうか。

  • (4-4)震災後に貸出条件の変更を行い、経営再建計画の策定を猶予した中小企業の債務者に対して、今般の特例措置(計画策定の再猶予)を適用することはできますか。

  • (4-5)今般の特例措置(計画期間の合理的延長)について、「合理的な期間」とは具体的にはどの程度なのでしょうか。

  • (4-6)今般の特例措置(計画期間の合理的延長)について、震災前に経営再建計画を策定していた場合についても適用することは可能でしょうか。

  • (4-7)震災前に策定していた経営再建計画の遂行が、震災の影響により困難となり、同計画の見直しを要する債務者がいます。当該債務者に対し再度の貸出条件の変更を行った場合、新しい計画が策定されるまでの間、当該再度の貸出条件の変更が行われた貸出金は貸出条件緩和債権に該当することとなるのでしょうか。

  • (4-8)震災前に策定していた経営再建計画の遂行が、震災の影響により困難となり、同計画の見直しを要する債務者がいます。計画の見直しを行うまでの間、貸出条件緩和債権に該当することとなるのでしょうか。

  • (4-9)震災の影響を受けた債務者からの申込みを受け、元本等の返済一時停止を行った場合、当該一時停止以降の期間も延滞とし、3カ月以上延滞した場合には開示の対象となるのでしょうか。

「平成23年東北地方太平洋沖地震による災害についての金融検査マニュアル・監督指針の特例措置及び運用の明確化について」に関するよくあるご質問(FAQ)

<本 文>

1.全体

  • (1-1)今般の措置は平成23年3月期決算限りのものでしょうか。

    (答)

    今般の特例措置等は、東日本大震災の影響による被害を対象としたものであり、必ずしも平成23年3月期決算限りのものではありません。

  • (1-2)「災害の影響」、「地震の影響」というのは、具体的にどの範囲まで含めているのでしょうか。

    (答)

    地震の被害を直接受けた場合のみならず、計画停電や取引先の被災等による原材料の調達難など、間接的な影響を受けた場合も対象としています。

    なお、原子力発電所の事故の影響についても、対象としています。

  • (1-3)今般の措置に基づく金融機関の対応を検査でどのように検証するのでしょうか。

    (答)

    今般の措置を踏まえた自己査定が行われていたとしても検査で問題とすることはありません。また、通常どおりの自己査定が行われていたとしても検査で問題とすることはありません。ただし、債務者等の実態を把握していたにもかかわらず、これを自己査定に反映していなかった場合には、問題となることもあります。

2.金融検査マニュアル(特例措置)

  • (2-1)今般の特例措置に基づいて、自己査定を行わないといけないのでしょうか。また、今般の措置に基づく自己査定を行う場合、自己査定基準を見直す必要はあるのでしょうか。

    (答)

    金融機関は、債務者の実態把握などを通じて得た情報を自己査定結果に正確に反映させる必要があります。したがって、通常どおりの自己査定が可能な金融機関は通常どおりの自己査定を行うことが原則であり、これが困難な場合に限って、今般の特例措置を適用するものです。

    また、各金融機関は自ら定めた自己査定基準等に基づき自己査定を行うこととなり、現行の自己査定基準が今般の措置に基づく自己査定を許容する内容であれば自己査定基準等を見直す必要はありません。

    この場合、今般の措置は震災に伴う異例な事態への対応であることを踏まえると、責任の所在を明確化する観点から、例えば、取締役会で決算と同時に今般の措置に基づく自己査定を行ったことの承認を得ておくことが考えられます。

  • (2-2)「一時的に当該債務者などの実態把握が困難」とありますが、「一時的」をどのように解釈すれば良いでしょうか。

    (答)

    「一時的」とは、被害の全容が把握できない等、客観的に実態把握が行えない期間を想定しています。具体的には様々なケースが想定されますが、例えば、被災地で、一時避難を余儀なくされている方々については、避難所での実態把握には自ずと限界があるケースが多いのではないかと想定しています。

  • (2-3)「それまでに把握している情報」とありますが、12月末の仮基準日での自己査定結果を用いることはできるのでしょうか。

    (答)

    「それまでに把握している情報」とは、基準日(3月31日)までに把握している情報を指しますが、被災地に本社や主な生産拠点を置く債務者等については、実態把握が一時的に困難であることにより、結果として3月11日の震災前までに把握している情報(例えば、仮基準日における情報)を用いて査定せざるを得ないケースが生じても、検査において問題とすることはありません。

    なお、「それまでに把握している情報」を用いて査定した場合にはその旨の注記が必要となる場合があります。

  • (2-4)「財務諸表等への注記が必要となる場合がある」とありますが、注記には何を書けばよいのでしょうか。また、「開示債権」についても注記の対応は必要なのでしょうか。

    (答)

    金融検査マニュアルの特例措置では、「少なくとも、それまでに把握している情報を用いて査定した事実を記載する」としています。

    「注記」するか否かは重要性の原則で判断すべきものと考えられることから監査人にご相談下さい。また、注記が必要となる場合には、「少なくとも、それまでに把握している情報を用いて査定した事実」が定性的に記載されていれば、検査において問題とすることはありません。

    なお、「開示債権」については、それまでに把握している情報で区分した旨を「注記」する必要はありません。

  • (2-5)非上場の有価証券についても、合理的な判断が困難な場合は、それまでに把握している情報により査定してもよいのでしょうか。

    (答)

    貴見のとおりです。

  • (2-6)経営再建計画の策定猶予期間中に、今般の震災の影響で、連絡が一時的に取れないこと等により債務者の実態把握が一時的に困難となった場合にはどのようにすればよいのでしょうか。

    (答)

    ご質問のような場合でも、それまでに把握している情報により査定することが考えられます。

  • (2-7)債務者の信用状況に変化があった都度査定を行なう随時査定を実施している場合において、債務者との連絡が一時的に取れないこと等により、当該債務者の業況及び今後の見通しについて把握することが一時的に困難である場合、債務者の実態把握ができ次第、速やかに信用格付及び債務者区分判定を行う対応で問題ないでしょうか。

    (答)

    貴見のとおりです。

  • (2-8)中小企業である債務者の返済能力を判断するにあたって、これまで、金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕を参照し、代表者の固定資産を加味してきましたが、今般の震災の影響により、当該固定資産の評価が一時的に困難である場合には、震災前の固定資産税評価額等に基づき、これまで同様、当該固定資産を債務者の返済能力に加味することは可能でしょうか。

    (答)

    震災前の固定資産税評価額等が、それまでに把握している直近の情報であれば、これを返済能力に加味しても差し支えありません。

  • (2-9)原子力発電所の事故により、実態把握が困難な債務者の査定はどのように行えば良いのでしょうか。

    (答)

    原子力発電所の事故の影響により、「債務者との連絡が一時的に取れないこと等により、一時的に当該債務者などの実態把握が困難」という事情であれば、金融検査マニュアルの特例措置に基づき、「それまでに把握している情報」により査定することが考えられます。

    また、実態把握が進んだ結果、経営再建が必要であるものの、直ちに経営再建計画を策定することが困難な債務者については、監督指針の特例措置を活用することも考えられます。

  • (2-10)債務者が直近の決算書を作成できない場合、昨年の決算書で正常運転資金の判断を行っても差し支えないでしょうか。

    (答)

    平成23年3月末までに金融機関が把握している情報が、昨年の決算書のみであるならば、差し支えありません。なお、例えば、仮基準日における査定で勘案した情報等が他にあれば、これを勘案することが考えられます。

  • (2-11)再評価・実査が困難な担保物件の評価について、それまでに把握している情報を用いて査定した場合は、「財務諸表等へ注記が必要」とされていますが、想定している担保物件とは具体的にどのような物件でしょうか。

    (答)

    例えば、震災の影響による道路の遮断や立入制限などが行われている場合などを想定しており、担保の種類を問わず、再評価・実査が困難であれば、今般の措置の対象となります。

3.金融検査マニュアル(運用の明確化措置)

  • (3-1)赤字・延滞の「一過性」とは、今般の明確化措置の場合、どの程度まで認められるのでしょうか。仮に計画停電や原材料の調達難等の影響が長期に及ぶ場合も「一過性」といえるのでしょうか。

    (答)

    個々のケースに応じて判断すべき事項であり、統一的な判断基準を示すことはできませんが、例えば、平成23年3月期においては、地震発生日が本年3月11日と決算期末日に近接していることを踏まえると、計画停電や原材料の調達難等から財務状況が悪化している債務者については、「一過性」は広く認められる場合が多いと考えられます。

    なお、今後の決算においても、震災の影響による赤字・延滞を「一過性」のものと判断できるかについては、現時点では将来を見通すことは困難であることから、各決算期において判断する必要があると考えられます。

  • (3-2)「震災による赤字・延滞を『一過性』のものと判断できる場合には債務者区分の引き下げを行わなくてもよい」としている一方で、別表1「自己査定結果の正確性の検証」の要注意先にかかる債務者区分の検討においては、「生産活動の停滞等により赤字となっている債務者で、返済能力について特に問題ないと認められる債務者」を正常先と判断して差し支えないとしています。「一過性」による赤字であっても、返済能力がなければ「要注意先」とすべきということでしょうか。

    上記のとおりとする場合、例えば、地震の影響で売上が減少し、かつ設備修繕費が増加したことによる赤字が「一過性の赤字」であったと判断できる場合、返済能力の検証方法はどのように行うのが適切でしょうか。

    (答)

    一過性の赤字・延滞と判断できる債務者については、そもそも返済能力があるものと考えます。「返済能力について特に問題ないと認められる債務者」と記載した趣旨は、「生産活動の停滞等により赤字」となっていたとしても、諸般の事情を勘案すれば返済能力に問題がないと判断できる債務者については、正常先と判断して差し支えないことを明確化したものです。

    なお、返済能力の検証方法については、従来どおり、債務者の実態把握を行い、金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕も参照いただきながら、個別に検討下さい。

  • (3-3)正常先の債務者が、震災の影響による「一過性」の延滞により、3カ月以上延滞した場合、要注意先とする必要はないのでしょうか。

    (答)

    本年3月31日に公表した「今般の措置の概要」では、「震災による赤字・延滞を『一過性』のものと判断できる場合には債務者区分の引き下げを行わなくてもよいことを明確化」しています。

    金融検査マニュアルにおいては、要注意先の判断にあたって、画一的な延滞期間を要件としておらず、「履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者」か否かを実質的に判断することとしています。

    したがって、今般の措置の趣旨を踏まえ、各金融機関が3カ月以上延滞した債務者についても「一過性」の延滞であると判断できる場合には、正常先に区分していても検査において問題とすることはありません。

  • (3-4)3カ月以上の延滞を一過性のものと判断した結果、リスク管理債権の3カ月以上延滞債権や、再生法開示債権の要管理債権の判定はどうなるのでしょうか。

    (答)

    金融再生法等に定められた「三カ月以上延滞債権」については、今般の措置により、延滞を「一過性」と判断して、債務者区分を要注意先(要管理先)に引き下げなかったとしても開示の対象となります。

  • (3-5)3カ月以上延滞債権は金融再生法開示債権の要管理債権に該当するが、債権の全部又は一部が要管理債権である債務者は「要管理先」としなくてもよいのでしょうか。

    (答)

    金融検査マニュアルにおいては、「要注意先となる債務者については、要管理先である債務者とそれ以外の債務者とを分けて管理することが望ましい」としており、あくまでも要注意先と判断したものの中で要管理先を分けて管理することを想定しているものです。

    この場合、要注意先の判断については、画一的な延滞期間を要件としておらず、実質的に判断することとしていますので、各金融機関が、3カ月以上延滞債権を「一過性」の延滞であると実質的に判断できる場合には、その債務者を正常先に区分しても検査において問題とすることはありません。

  • (3-6)実質破綻先にかかる債務者区分の検討において、「『実質的に長期間延滞している』ものに該当しない」とは、マル1震災後に初めて延滞が発生し、その後、6カ月以上経過後も延滞が継続している場合を想定しているのか、マル2震災時点で既に5カ月の延滞があり、震災後に6カ月以上延滞となった場合も含め想定しているのか、教えてください。

    (答)

    基本的にはマル1のケースを想定していますが、震災の影響による一過性の延滞と認められる限りにおいて、マル2のケースを完全に排除しているものではありません。

  • (3-7)「延滞とみなさなくとも差し支えない」とは、状況によっては延滞とみなしても問題ないということでしょうか。

    (答)

    貴見のとおりです。

  • (3-8)団体信用生命保険付債権について、平時とは異なり、当該保険による貸出金回収に要する期間が見通せない中、最終的な回収可能性を勘案し、震災による債務者の死亡確認及び特別失踪宣告等の事実をもって、分類対象外債権とすることは可能でしょうか。また、可能であるならば、どのような条件が整えば良いのか教えてください。

    (答)

    団体信用生命保険付債権については、支払事由の事実が生じていることが確認でき、保険金の支払いが確実と認められるのであれば、分類対象外債権として差し支えありません。また、保険金の支払いが確実か否かを判断するにあたっては、保険金支払いに係る契約内容等を踏まえて、判断する必要があると考えます。

  • (3-9)異常値控除について、「その他の債務者に対する貸倒実績率又は倒産確率に影響しない場合について」とはどういう意味でしょうか。

    (答)

    各金融機関は、引当金を計上するにあたっては、過去の貸倒損失等を基に予想損失率を算出し、これを債権額に乗じて必要な貸倒引当金を算定します。

    「その他の債務者に対する貸倒実績率又は倒産確率に影響しない場合について」とは、今般の震災の影響を受けていない債務者の債権に対する貸倒引当金を算定する場合には、今般の震災の影響により生じた貸倒損失等を勘案せずともよいことを明確化したものです。

  • (3-10)今般の震災による貸倒等の損失は全て異常値として控除していいのでしょうか。

    (答)

    「その他の債務者に対する貸倒実績率又は倒産確率に影響しない」限りにおいて、今般の震災の影響による貸倒等の実績を異常値として控除しても差し支えありません。また、業種・地域・被害状況等に応じてグルーピングすることも考えられます。

  • (3-11)一般貸倒引当金については、予想損失率の算定に際して、震災の影響による損失額又は倒産件数は異常値控除やグルーピングの対象となる旨、今回の措置により明確化されていますが、破綻懸念先III分類の貸倒実績率に関しても、一般貸倒引当金と同様の取扱いは適用できるのでしょうか。

    (答)

    破綻懸念先について過去の貸倒損失等を基に予想損失率を算出し、これをIII分類とされた債権額に乗じて必要な貸倒引当金を算定している場合には、震災の影響による損失額又は倒産件数の取扱いは、「一般貸倒引当金」と同様に「個別貸倒引当金」についても適用されます。

  • (3-12)今般の震災の影響による貸倒等の実績を異常値として、震災の影響がない貸出金の貸倒実績率等に算入しない場合、予想損失率をどのように算定して、貸倒引当金を計上すれば良いのでしょうか。

    (答)

    例えば、金融機関が、要注意先(その他要注意先)に対する債権に係る貸倒引当金の算定方法として、過去3算定期間の貸倒実績率の平均値に基づき予想損失率を算出し、今後1年間の予想損失額を見積もる方法を採用している場合、今般の措置を勘案した平成23年3月期における貸倒引当金の算定方法としては、以下の方法が考えられます。

〔貸倒引当金の算定方法(例)〕

【前提】

  • 平成23年3月期末の要注意先(その他要注意先)の債権額は400,000百万円。

    このうち、震災の影響を受けたものの未だ損失が実現していないものとしてグルーピングを行うこととした債務者の同期末の債権額は8,000百万円(期初においては10,000百万円)。

  • 第3算定期間(平成22年4月~平成23年3月)に発生した全体の損失額は、15,800百万円(うち震災の影響による損失が4,375百万円で、当該損失額=期初債権額)。

単位:百万円
  期初債権額(ⓐ) 震災の影響を受けたものの未だ損失が実現していないものとしてグルーピングを行うこととした債務者の期初債権額(ⓓ) 貸倒実績率
ⓑ-ⓒ/ⓐ-(ⓒ+ⓓ)
  損失額(ⓑ)
  異常値控除の対象と判断した損失額(ⓒ)
第1算定期間
(H20/4~H21/3)
250,000 5,000     2%
第2算定期間
(H21/4~H22/3)
280,000 8,400     3%
第3算定期間
(H22/4~H23/3)
300,000 15,800 4,375 10,000 4%
  • (1)第3算定期間(平成22年4月~23年3月)の貸倒実績率(毀損額÷債権額)の算定にあたって、異常値控除の対象とした債務者の損失額(=債権額)を分子・分母から控除するとともに、震災による影響を受けた債務者の債権額を分母から控除する。

    • 上記前提の場合、(15,800百万円-4,375百万円)÷(300,000百万円-4,375百万円-10,000百万円)=4%。
  • (2)予想損失率を(第1算定期間の貸倒実績率+第2算定期間の貸倒実績率+上記(1)により求めた第3算定期間の貸倒実績率)÷3により算定する。

    • 上記前提の場合、予想損失率は、(2%+3%+4%)÷3=3%。
  • (3)震災の影響を受けていない債務者に対する貸倒引当金を、震災の影響を受けていない債権額に上記(2)により求めた予想損失率を乗じて算定する。

    • 上記前提の場合、震災の影響を受けていない債務者に対する貸倒引当金は、(400,000百万円-8,000百万円)×3%=11,760百万円。
  • (4)グルーピングを行うこととした債権8,000百万円については、業種、地域又は被害状況等を勘案して必要があれば更に細かくグルーピングを行う。その上で、グループ毎に予想損失率を乗じて貸倒引当金を計上するが、この場合の予想損失率については将来の損失発生見込に係る修正を要する場合がある。修正の具体的な方法については、把握し得た各グループに係る事情を踏まえ、決定することとなる。

  • なお、上記に示す方法は、あくまで例示です。

4.監督指針(特例措置)

  • (4-1)今般の特例措置(計画策定の猶予)を適用して経営再建計画の策定を猶予した(中小企業以外の)債務者が、「最長1年以内」に計画を策定できなかった場合、貸出条件緩和債権に該当することとなるのでしょうか。

    (答)

    最長1年以内に経営再建計画を策定できなければ、貸出条件緩和債権となります。ただし、震災による直接の被害等やむを得ざる事情により、例えば、1年後に再度の貸出条件の変更を行った場合には、その時点から「最長1年以内」に経営再建計画を策定する見込みがあると判断されれば、その間は貸出条件緩和債権に該当しないものと判断して差し支えありません。

  • (4-2)震災前に貸出条件の変更を行い、貸出条件緩和債権に該当するとしていた中小企業以外の債務者に対する貸出金について、今般の特例措置(計画策定の猶予)を適用することはできますか。

    (答)

    今般の監督指針の特例措置のうち、計画策定の最長1年間の猶予措置は、適用対象として「震災の影響により貸出条件の変更時に直ちに経営再建計画を策定できない債務者」を想定しています。従って、ご質問にあるような、震災前に条件変更を行い、計画を策定していなかった中小企業以外の債務者に適用することはできません。

  • (4-3)今般の特例措置(計画策定の再猶予)について、最長1年間の再猶予の起点はいつになるのでしょうか。

    (答)

    経営再建計画の再猶予を行う場合における「最長1年以内」の起点は、「当初、経営再建計画を策定すると見込まれていた日」となります。

  • (4-4)震災後に貸出条件の変更を行い、経営再建計画の策定を猶予した中小企業の債務者に対して、今般の特例措置(計画策定の再猶予)を適用することはできますか。

    (答)

    今般の監督指針の特例措置のうち、計画策定の再猶予措置は、適用対象として「地震の発生前に貸出条件の変更」を行った債務者を想定しています。従って、ご質問にあるような、震災後に貸出条件の変更を行い、経営再建計画の策定を猶予した中小企業には計画策定の再猶予措置を適用することはできません。

    ただし、震災による直接の被害等やむを得ざる事情により、計画策定猶予期間中に経営再建計画の策定に至らなかったものの、再度の貸出条件の変更が行われた場合、貸出条件の変更を行った日から最長1年以内に経営再建計画を策定する見込みがあるときには、その時点から最長1年間、計画の策定が猶予されることとなります。

  • (4-5)今般の特例措置(計画期間の合理的延長)について、「合理的な期間」とは具体的にはどの程度なのでしょうか。

    (答)

    震災による影響度合いは、個々の債務者により異なるため、経営再建計画の計画期間の「合理的な期間の延長」については、各金融機関において、個別具体的に検討することとなります。

  • (4-6)今般の特例措置(計画期間の合理的延長)について、震災前に経営再建計画を策定していた場合についても適用することは可能でしょうか。

    (答)

    震災前に、経営再建計画を策定していた債務者についても、今般の特例措置により経営再建計画の計画期間を合理的期間延長して差し支えないこととしております。

  • (4-7)震災前に策定していた経営再建計画の遂行が、震災の影響により困難となり、同計画の見直しを要する債務者がいます。当該債務者に対し再度の貸出条件の変更を行った場合、新しい計画が策定されるまでの間、当該再度の貸出条件の変更が行われた貸出金は貸出条件緩和債権に該当することとなるのでしょうか。

    (答)

    震災による直接の被害等やむを得ざる事情により、震災後に再度の貸出条件の変更を行った場合、貸出条件の変更を行った日から最長1年以内に当該経営再建計画を策定する見込みがあるときには、当該債務者に対する貸出金は当該貸出条件の変更を行った日から最長1年間は貸出条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えありません。

  • (4-8)震災前に策定していた経営再建計画の遂行が、震災の影響により困難となり、同計画の見直しを要する債務者がいます。計画の見直しを行うまでの間、貸出条件緩和債権に該当することとなるのでしょうか。

    (答)

    今般の特例措置においては、震災前に貸出条件の変更を行い、計画策定を1年猶予していた中小企業について、震災の影響により当該中小企業を取り巻く環境が激変し、当初の期限内に計画を策定できなくなった場合には、(最長1年間)計画策定を再猶予できることとしています。

    ご質問にあるような、震災前は順調に進捗していた債務者(中小企業以外も含む。)の経営再建計画について、震災の影響により当該債務者を取り巻く環境が激変し、その見直しが必要となり、かつ、当該見直しに時間を要すると見込まれるケースについても、(震災発生の日から最長1年間)計画の見直しを猶予して差し支えありません。

    なお、当該猶予期間中において、金融機関は、

    • コンサルティング機能を発揮し、債務者に対して実現可能性の高い抜本的な経営再建計画の策定支援を行うことや、
    • 貸出条件の変更を含む支援を債務者に対して積極的に行うこと

    が求められることにご留意ください。

  • (4-9)震災の影響を受けた債務者からの申込みを受け、元本等の返済一時停止を行った場合、当該一時停止以降の期間も延滞とし、3カ月以上延滞した場合には開示の対象となるのでしょうか。

    (答)

    金融機関において、今般の震災の影響を受けた債務者からの条件の変更等の申込みを口頭又は文書等で受け付け、今後、合理的な期間内に具体的な貸出条件の変更を行うべく検討の手続きを踏んでいる中で、債務者の経営再建又は支援を図る観点から、とりあえず元本等の返済一時停止の実施について債務者と合意に至っている場合であれば、当該返済一時停止を貸出条件の変更に該当するものとみなして差し支えありません。この場合において、債務者が企業であり、経営再建が必要なものの、直ちに経営再建計画を策定することが困難な場合には、監督指針の特例措置を活用することも考えられます。

参考1

1.金融検査マニュアル

【特例措置】(震災により一時的に実態把握が困難な債務者)
  • 資産査定は、決算期末日(3月末)を基準日として、債務者の実態を踏まえ行う

  • 震災により、実態の把握が困難な債務者への貸出金等については、それまでに把握している情報に基づき査定し、その旨を「注記」

  • 担保物件の評価に当たっては、決算期末日を基準日として、当該物件を実地に確認(実査)する等、現況に基づく評価を行う

  • 再評価・実査が困難な担保物件は、それまでに把握している情報に基づき査定し、その旨を「注記」

【運用の明確化】(被災地に限定されず震災の影響を受けている債務者)
  • 一般的な取扱いとして、赤字の原因が一過性のものであり、短期間に黒字化することが確実と見込まれる債務者については正常先と判断することとしているが、今般の震災による赤字・延滞を「一過性」のものと判断できる場合には、債務者区分の引き下げを行わなくてもよいことを明確化。

  • 貸倒引当金実績率の算定に当たっては、今般の震災の影響による貸倒等の実績は異常値として、震災の影響がない貸出金の実績率等に算入しなくてもよいことを明確化。

2.監督指針の特例措置(被災地に限定されず震災の影響を受けている債務者)

  • 中小企業に限って、条件変更時の経営再建計画の策定を最長1年間猶予

  • この取扱いを中小企業以外にも適用

  • 既に条件変更に応じた中小企業の経営再建計画の策定猶予期間については再延長も可

  • 計画期間については、中小企業以外は3年、中小企業は5年が原則

  • 震災による被害を考慮した合理的な期間の延長も可(金融検査マニュアルも併せて措置)

参考2

監督指針の特例措置(貸出条件緩和債権の取扱い)

※ 下記表で○を付している項目に一つでも該当すれば、貸出条件緩和債権に該当しないものと判断して差し支えありません。
企業規模 中小企業 大・中堅企業
条件変更の時点 震災前
(~3/10)
震災後
(3/11~)
震災前
(~3/10)
震災後
(3/11~)
特例措置マル1
計画策定の1年猶予
○適用可能
(従前どおり)
○適用可能
(従前どおり)
×適用不可
(従前どおり)
○適用可能
(特例措置)
特例措置マル2
計画策定の再猶予
○適用可能
(特例措置)
特例措置マル3
計画期間の延長
○適用可能
(特例措置)
○適用可能
(特例措置)
○適用可能
(特例措置)
○適用可能
(特例措置)
  • (注1)特例措置マル1は、適用対象として「今般の同地震の影響により貸出条件の変更時に直ちに経営再建計画を策定できない債務者」としている。従って、震災前に条件変更を行い、計画を策定していなかった大・中堅企業に適用することは不可(ただし、震災後に再度条件変更を行えば、適用可能)。

  • (注2)特例措置マル3は、金融検査マニュアルも併せて措置しており、震災前に策定された計画の期間の延長も可能。

  • (注3)上記の他、震災前は順調に進捗していた債務者(中小企業以外も含む。)の経営再建計画について、震災の影響により当該債務者を取り巻く環境が激変し、その見直しが必要となり、かつ、当該見直しに時間を要すると見込まれるケースについても、(震災発生の日から最長1年間)計画見直しの猶予が可能。

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