平成13年9月3日


金融庁監督局銀行第2課金融会社室長 御中
(nal-05@fsa.go.jp)

照会者
 東京都日野市旭が丘四丁目7番地の127
 ジーイー横河メディカルシステム株式会社
 代表取締役 伊 藤 伸 彦
 東京都中央区日本橋浜町二丁目35番4号
 日本ジーイープラスチックス株式会社
 代表取締役 長 瀬 英 男

 上記2社代理人
 東京都港区赤坂2丁目14番32号
 赤坂2.14プラザビル
  三井安田法律事務所
  弁護士  安 田 三 洋
  弁護士  佐々木 弘 造



「貸金業の規制等に関する法律」に関する法令適用事前確認手続にかかる照会について


拝啓 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
 標記の件に関しまして、下記のとおりご照会申し上げますので、ご回答を賜ることができますと幸甚と存じます。

敬具






本照会にかかる法令(条項)が平成13年7月9日付け「金融庁における法令適用事前確認手続に関する細則」(以下「細則」という。)「1.対象」に該当することについて

   本照会にかかる法令(条項)は、「貸金業の規制等に関する法律」(昭和58法律第32号)(以下「貸金業法」という。)第2条第1項及び同法第3条であります。

 後記2.において詳しく述べますとおり、本件照会にかかる事案は、ある株式会社2社が、それぞれの親会社であり当該各株式会社の議決権ある発行済み株式の過半数を直接保有又は間接保有する本件米国親会社に対し、それぞれ独立に、金銭の貸付を行い、金利を徴収するというものであります。そして、後記2.において述べます具体的事情の下では、当該各株式会社によるかかる行為はいずれも貸金業法第2条第1項に規定する「貸金業」に該当せず、したがって同法第3条の適用はなく、当該各株式会社について同条に基づく登録はいずれも不要と解されるのではないかをご照会申し上げるものであります。
 ところで、貸金業法第3条は、「貸金業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては内閣総理大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該営業所又は事務所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない」と規定し、「貸金業を営もうとする者」に対し、細則が規定する「申請」すなわち「行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分…を求める行為」(行政手続法(平成5年11月12日法律第88号(以下「行政手続法」という。)第2条第3号)の根拠を定める条項であります。
 さらに、仮に、貸金業を営もうとする者が貸金業法第3条に基づく登録を受けることなく貸金業を行った場合には同法第11条第1項違反を構成し、同法第47条第2号により、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はそれらを併科されることとなりますことから、同法第2条第1項、3条、11条1号は、細則が規定する「当該条項に違反する行為が罰則の対象となる場合」に該当いたします。
 以上より、本照会にかかる条項は、細則「1.対象」「(1)対象法令(条項)の範囲」「(1) 当該条項が申請(行政手続法…第2条第3号にいう申請をいう。)に対する処分の根拠を求めるものであって、当該条項に違反する行為が罰則の対象となる場合」に該当すると思料いたします。




本照会にかかる取引の具体的内容

 本照会にかかる取引の具体的内容は以下のとおりであります。

(1)

 日本法に準拠して設立され東京都日野市旭が丘四丁目7番地の127に本店を有し、医療用機器の製造、輸入、販売及びリースを主たる営業とするジーイー横河メディカルシステム株式会社(以下「ジーイー横河」という。)は、米国法に基づき設立されジーイー横河の議決権ある発行済み株式のすべてを間接保有する法人であるゼネラル・エレクトリック・カンパニー(以下「本件米国親会社」という。)に対し、ジーイー横河の主たる営業の結果その時々において生ずる余剰資金を本件米国親会社の指示のもとに貸し付けることを予定している。なお、ジーイー横河の発行済み株式総数は11万7,600株(うち議決権ある株式が88,200株、議決権なき優先株式が29,400株)であり、本件米国親会社はそのうち議決権ある普通株式全てを直接保有又は間接保有し(間接保有の状況については別紙A参照)、その余の株式(すべて議決権なき優先株式)は第三者が保有している。

(2)

 日本法に準拠して設立され東京都中央区日本橋浜町二丁目35番4号に本店を有し、ビスフェノール及びその誘導品の製造及び販売並びにエンジニアリングプラスチックその他のプラスチックの製造及び販売を主たる営業とする日本ジーイープラスチックス株式会社(以下「ジーイープラスチックス」といい、ジーイー横河と併せて「本件貸付人」という。)は、ジーイー横河による上記(1)の貸付けとは独立して、ジーイープラスチックスの議決権ある発行済み株式総数のうち51%を間接保有する本件米国親会社に対し、ジーイープラスチックスの主たる営業の結果その時々において生ずる余剰資金を本件米国親会社の指示のもとに貸し付けることを予定している。なお、ジーイープラスチックスの発行済み株式総数は9万8001株(うち議決権ある株式が9万8000株、議決権なき優先株式が1株)であり、本件米国親会社はそのうち議決権ある普通株式4万9980株及び議決権なき優先株式1株を間接保有し(間接保有の状況については別紙B参照)、その余の株式(すべて議決権ある普通株式)は第三者が保有している。

(3)

 本件貸付人は、互いに独立に、本件貸付を行う。また、親会社の指示により将来、本件同様の貸付を行うこともあり得る。

(4)

 例外的なケースもあり得るものの、原則として、本件各貸付人のいずれにおいても、本件貸付における貸付期間は30日間から最長でも1年間程度である。

(5)

 本件各貸付人は、それぞれが行う本件貸付において本件米国親会社より金利の支払を受ける。例外的なケースもあり得るものの、原則として、その利率は実勢市場利率に準ずる水準である。

(6)

 本件米国親会社は本件貸付より得られた資金を自らの一般事業目的のために使用する。本件各貸付人による本件貸付は、各国にわたり活動をしている数々のグループ会社の最終的な親会社である本件米国親会社が行う世界規模の資金管理スキームの一環として行われる。本件各貸付人による本件貸付と同様に、本件米国親会社の多数の子会社及び関連会社が、その時々における余剰資金を本件米国親会社の指示のもとで当該親会社に対し貸し付け、最終的な親会社としての本件米国親会社がかかる資金を自らの一般事業目的に使用し、又はその一般事業目的の遂行のために必要な場合には、本件米国親会社のポリシーに従って、その関連会社(日本における他の子会社が含まれることもあり得る。)に再配分する。いずれの本件貸付人も、本件米国親会社がかかる方法によって管理する資金をいつどのように使用するか、又はいつ誰に対し再配分するかについて、いかなる意味における支配も有しない。更に本件貸付につき本件各貸付人は独立した意思決定権を有しておらず、本件各貸付人がいかに余剰資金を有していても、本件貸付人が、本件米国親会社による決定なしに、本件貸付を行うことはない。

(7)

 本件各貸付人は、本件米国親会社を除きいかなる者(日本法人であるか米国法人であるかを問わない。)に対しても、金銭の貸付行為を行わない。




適用の有無についての照会者の見解とその根拠

 照会者は、子会社からその議決権ある発行済み株式のすべてを保有する親会社への貸付を業として行わない場合はもとより、子会社からの貸付がその議決権ある発行済み株式の過半数を保有する親会社への貸付である場合においても、業として行わない限り、貸金業法の規制対象とはならない取引であると解せることから、かかる貸付行為は同法第2条が規定する「貸金業」には該当せず、同法の適用はないと思料いたします。したがいまして、本件におきましては、いずれの本件貸付人による貸付行為も同法第2条が規定する「貸金業」には該当せず、同法の適用はないと思料いたします。以下、詳細に申し上げます。

(1)

 親子会社間における金銭貸付について
 一般に、ある会社とその議決権ある発行済み株式の過半数を保有する親会社は、後者が前者に対して有する支配という観点に照らせば、経済的に一体とみるべき要素が強く、かかる親子会社間での取引は、単一の会社の内部での資金移動に類似する側面が多分にあると解されます。そして、単一の会社の内部での資金移動については貸金業法の規制は及びません。
 ところで、「親会社が子会社に対して、営業の資金繰りのため、融資を行う場合が多々あるが、この場合において、親会社の行為は貸金業に当たるか」との問題については、「資本上一定の親子関係(例えば、100%の株式を保有)にある親会社が子会社の資金繰りのために行う貸付けは、業として行わない限り貸金業法の規制対象とはならないと解されるが、グループ会社間の貸付けは規制の対象となると解される。」とされております(財団法人大蔵財務協会編「新訂 実例問答式 貸金業法のすべて」(平成10年)71頁)。
 かかる解釈の理由は上記引用文献中においては示されてはおりませんが、議決権ある発行済み株式の過半数を保有する親会社からその子会社への貸付は、前者が後者に対して有する支配という観点に照らせば、単一の会社の内部での資金移動に類似する側面が多分にあることによるものではないかと思われるのであります。
 そういたしますと、上記引用部分にあります例とは逆に、ある会社が、その議決権ある発行済み株式の過半数を保有する親会社に対して貸付を行う場合におきましても、「支配」についての理は同様にあてはまるのであり、かかる貸付は貸金業法の規制対象とはならないのではないかと思料いたします。上記引用部分が親会社から子会社への貸付についてのみ論じているのは、あくまで一般論として、子会社のほうが親会社に比して資金不足の状態にあることが多いことに基づいているのであり、同引用部分は、その逆の場合について解釈を異にすることを殊更に示す趣旨ではないと考えられるのであります
 また、上記引用部分には、「資本上一定の親子関係(例えば、100%の株式を保有)」とありますが、「例えば」という文言からも明らかでありますように、かかる見解は、完全子会社のケースにのみ限定して妥当するものではないと考えられます。あくまで、判断の観点は、一方の会社が他方の会社に対して「支配」を有するかどうかにあると解するのが合理的であり、「支配」の有無は、議決権ある発行済み株式の過半数を保有しているかどうかで判断されるものと考えます。つまり、「(例えば、100%の株式を保有)」との部分は、最も典型的なケースを一例として示すものであるに過ぎず、「支配」が認められるのである限り、保有比率が100%ではない場合において解釈を異にすることを殊更に示す趣旨ではないと解されるのであります。
 以上を本件各貸付人による貸付についてみますに、本件貸付人はいずれも、本件米国親会社によって議決権ある発行済み株式の過半数を直接保有又は間接保有されていること、したがいまして、本件米国親会社が本件各貸付人に対して有する支配という観点に照らせば、ジーイー横河と本件米国親会社、および、ジープラスチックスと本件米国親会社は、いずれも、それぞれ経済的に一体とみるべき要素が強く、かかる親子会社間での取引は、単一の会社の内部での資金移動に類似する側面が多分にあると解されます。

(2)

 本件貸付の具体的性質の分析
 本件各貸付人による貸付行為の性質ないし中身についてより詳細に検討いたしますと、かかる貸付行為は、本件米国親会社によって世界規模で適用される現金管理スキームの一環として実施されるものであり、これは、本件米国親会社が決定する企業団ポリシーによるものでありますほか、本件貸付人のいずれも、本件米国親会社がかかる方法によって管理する資金をいつどのように使用するか、又はいつ誰に対し再配分するかについて、いかなる意味における支配も有しません。更に本件貸付につき本件各貸付人は独立した意思決定権を有しておらず、本件各貸付人がいかに余剰資金を有していても、本件貸付人が、本件米国親会社による決定なしに、本件貸付を行うことはないというのであります。加えて、本件各貸付人は、医療用機器の製造、輸入、販売及びリース(ジーイー横河)並びにビスフェノール及びその誘導品の製造及び販売並びにエンジニアリングプラスチックその他のプラスチックの製造及び販売(ジーイープラスチックス)をそれぞれ主たる営業としているのであり、本件貸付は、それら主たる営業の結果その時々において生ずる余剰資金を、上記のとおり、本件米国親会社によって世界規模で適用される現金管理スキームの一環として本件米国親会社に対して貸し付けるというものであり、 本件各貸付人は、本件米国親会社を除きいかなる者(日本法人であるか米国法人であるかを問わない。)に対しても、金銭の貸付行為を行わないのであります。
 これらの事実に着目いたしますと、本件各貸付人が業として貸付行為を行っているとみることは不合理であり、本件貸付を貸金業法第2条第1項が規定する「貸金業」に該当すると解するののもまた不合理でありますほか、本件各貸付人において、貸金業法を脱法する意図を何ら有していないことも明らかであります。

(3)

 まとめ
 以上より、照会者は、本件の事実関係において子会社からの貸付がその議決権ある発行済み株式の過半数を直接保有又は間接保有する親会社への貸付である場合は、「貸付を業として行う」には該当せず貸金業法の規制対象とはならない取引であると解せることから、かかる貸付行為は同法第2条第1項が規定する「貸金業」には該当せず、同法の適用はないと思料いたします。




照会者名並びに照会及び回答内容が公表されることについての同意

 照会者は、本照会における照会者名並びに照会及び回答内容が公表されることについて同意いたします。

以上