「監査制度を巡る問題点と改革の方向」
~公認会計士監査の信頼の向上に向けて~

平成12年6月29日

公 認 会 計 士 審 査 会

監 査 制 度 小 委 員 会

 

  はじめに
1. 審議の経緯
  (1)  近年、わが国企業の活動の複雑化や資本市場の国際的な一体化等を背景に、公認会計士監査を通じた適正なディスクロージャーの確保とともに公認会計士監査に対する国際的な信頼の向上が、一層重要になってきている。また、公認会計士監査に対する社会的な期待の高まりを反映して、そのニーズは質的にも量的にも拡大してきており、同時に監査証明業務に関し求められる公認会計士の社会的責任も厳しいものとなってきている。

 更に、監査対象会社における企業活動の複雑化や国際化が進む中で、会計基準の抜本的改革が行われてきていることから監査におけるより実質的かつ高度な判断への要望もますます強くなってきている。

 公認会計士審査会は、平成9年4月に、「会計士監査の充実に向けての提言(日本公認会計士協会(以下、「公認会計士協会」という。)の提案を基礎とした10の具体的諸施策)」を取りまとめ、この提言を受けて公認会計士協会は、継続的専門研修制度や品質管理レビューの導入等、公認会計士監査の充実のため様々な取組みを行ってきているが、公認会計士監査のあり方並びにその信頼の向上に対しては、なお様々な問題提起がなされている。

  (2)  このような現状を踏まえ、公認会計士審査会は、平成11年4月に、公認会計士審査会委員や企業会計審議会委員を中心とした「会計士監査に関するワーキング・グループ」を設置し、公認会計士監査のあり方について、幅広い観点から検討を行うことになった。
 同ワーキング・グループは、各界の専門家から意見を聴取しながら、議論を重ね、平成11年7月に、「会計士監査のあり方についての主要な論点」を取りまとめている。
  (3)  同ワーキング・グループが取りまとめた主要な論点については、各論点の内容に関係の深い企業会計審議会、公認会計士審査会、公認会計士協会において、それぞれ具体的・専門的な検討を進めていくこととされた。
 このうち、公認会計士監査の制度に関する論点については、公認会計士審査会の下に「監査制度小委員会」を設置し、同小委員会において有識者並びに関係者からのヒアリング等を通じ、諸外国の制度も参考としながら、現行制度の問題点等について具体的・専門的な検討を行うとともに、その改善措置等について幅広く審議することとされた。

 当小委員会は、平成11年12月13日の第1回会合以来、これまで10回、精力的に審議を重ね、今般、「監査制度を巡る問題点と改革の方向」~公認会計士監査の信頼の向上に向けて~について取りまとめた。
2 基本的視点
  (1)  「会計士監査の充実に向けての提言」から約3年が経過し、公認会計士監査を取り巻く環境も以下のように大きく変化してきている。
    [1]  証券市場がその市場機能を有効に発揮するための基礎となるディスクロージャーの適正性を確保するためには、公認会計士監査を一層充実させ、厳格な監査を実施することが必要であるとの認識が従来以上に社会に浸透してきたこと。
    [2]  とりわけ、資本市場の国際的な一体化の進展等を背景として、企業財務内容等のディスクロージャーに対する国際的な信頼を高め、ひいてはわが国企業の国内外における円滑な資金調達等を図る観点からも、公認会計士監査を充実・強化し、その国際的な信頼の向上を図っていくことが強く求められてきていること。
    [3]  連結中心のディスクロージャー、退職給付会計、金融商品の時価評価等、国際的な会計基準との調和も踏まえつつ、会計基準の抜本的な改革が進められてきており、監査人のより実質的でかつ高度な判断を求められる局面が多くなってきていること。
     このような公認会計士監査に対する社会の認識や要望を背景に公認会計士監査に係る諸制度のあり方についても多くの問題が指摘されているところである。
  (2)  当小委員会は、以下のような基本的視点に立って、公認会計士監査に係る諸制度について具体的な問題点を指摘するとともに解決の方向性を示すこととした。
    [1]  公認会計士監査は、その充実・強化を通じてディスクロージャーの適正性を確保し、もって証券市場の信頼を高め市場機能の活性を維持することにより公益の目的に資することができる。法が公認会計士に監査証明業務の独占を認めている理由もここにあり、公認会計士監査制度の改革も、このような公益性の視点に立って進められるべきであると考えられる。
    [2]  公認会計士監査の充実と信頼の向上は、基本的にはまず何よりも公認会計士自身が公益性の視点に立って主体的に取り組むべき課題であるが、このような課題を抜本的に解決するためには、公認会計士のみならず、行政機関、監査対象会社等、全ての関係者による総合的な取組みが重要であると考えられる。
  (3)  公認会計士の監査証明業務が、その公益性という使命から、法により公認会計士の独占業務として行うことが認められていること等を考慮すれば、公認会計士及び自主規制機関である公認会計士協会がより一層の公認会計士監査の充実・強化を図ることが必要であり、また、同協会においても、自主規制により自律性が十分に確保されていることについて、常時、対外的に広範な理解が得られるよう積極的に対応していく責務があると考えられる。
 公認会計士協会は、これまで公認会計士監査の充実のため様々な取組みを行ってきているところであり、その自主的な取組みは評価されるところであるが、一方、公認会計士監査制度のあり方に関し様々な課題が指摘されている現状を踏まえると、なお改善すべき点も多いと考えられ、より一層の取組みが求められる。

 公認会計士監査の信頼の確保にあたっては、行政の役割も重要である。特に公認会計士監査に係る基本的な制度を整備し、また、公認会計士の自主規制に委ねられる分野においても自主規制が有効に機能することを担保しつつその自主的な取組みを支援するよう行政が適当な措置を講ずることが必要と考えられる。

3. 本報告の論点の構成
  (1)  本報告は、会計士監査に関するワーキング・グループが、会計士監査のあり方についての主要な論点において指摘した個別の検討事項を中心として、当小委員会がまとめた以下の3つの論点とそれに対応する具体的な措置を基本として構成されている。
  (2)  論点
    [1]  適正・公正な監査の確保に向けて
 適正なディスクロージャーの確保と公認会計士監査に対する信頼の向上を図るためには、監査証明業務に係る監査人の独立性の保持、責任の明確化等を担保するための措置を早急に講じる必要があるという観点から、独立性確保のあり方、同一監査人の継続的監査及び公認会計士単独による監査に係る問題、監査証明業務に対する内部管理・審査及び外部審査体制のあり方、監査報告書の署名のあり方、行政による公認会計士及び監査法人の処分のあり方、適正な監査日数等の確保と監査報酬のあり方、自主規制機関としての公認会計士協会のあり方について検討を加えた。
    [2]  公認会計士の質の向上に向けて
 公認会計士監査が社会の期待に応え、社会的信頼を維持する上で、公認会計士がその専門的能力と幅広い識見を維持・向上させていくことが重要であり、公認会計士の質の向上を図るための措置を早急に講じる必要があるという観点から、継続的専門研修制度のあり方、公認会計士の登録制度のあり方、公認会計士協会への強制入会制度のあり方について検討を加えた。
    [3]  環境の変化に適合した監査法人制度及び業務範囲等のあり方
 監査法人の大規模化、公認会計士や監査法人の業務範囲の拡大等の状況を踏まえ、監査の質の維持・向上及び監査証明業務に係る責任の明確化等という観点から、監査法人制度のあり方、業務範囲のあり方、広告規制のあり方、公認会計士法の目的規定等の要否等について検討を加えた。
 

監査制度を巡る問題点と改革の方向

I

 適正・公正な監査の確保に向けて

 適正なディスクロージャーの確保と公認会計士監査に対する信頼の向上を図るためには、監査人の独立性の保持、監査の品質管理の充実・強化、監査に係る責任の明確化等の観点から、以下のような措置を早急に講じ、国際的にもアピールしていくことが必要と考える。

  1.  独立性確保のあり方
    [1]  基本的考え方
 公認会計士が、監査人として被監査会社のみならず何人からも独立していることは、監査証明業務の公正性を保ち、また、監査結果に対する利害関係者の信頼を得るためにも不可欠の要件であることは当然であるが、改めて監査人の独立性確保のための方策を見直す必要があると指摘されている。
    [2]  求められる対応
 独立性を確保するためには、法令等で独立性の一定の要件を定めるだけでは足りず、独立性の要件を自主規制機関としての公認会計士協会がその倫理規則や指針でより詳細に規定し、この規定を常時見直すとともに、監査担当者の独立性に関して各監査法人や会計事務所での明確な人事管理の目標と位置づけ、実際に管理しているか否かの審査を品質管理レビュー基準等で明確にする必要があると考えられる。
 また、公認会計士協会においてはアメリカ公認会計士協会と同様の内部機構として、監査人の独立性を監視する機能を持つ組織を設置する必要があると考えられる。
  2.  同一監査人の継続的監査及び公認会計士単独による監査に係る問題について
   
 
公認会計士監査が社会から高い信頼を得るためには、公認会計士及び監査法人の監査において被監査会社からの独立性を実質的にも外観的にも維持するとともに、厳正かつ組織的な監査による監査の品質の維持・向上を図ることが不可欠であると考えられる。
    (1)  監査法人における同一関与社員の継続的監査の問題
      [1]  基本的考え方
 
前述のとおり、被監査会社からの独立性は、監査人の適格性として最も重要な要件の一つであり、これは、監査人が監査を行っていく環境を整え、ひいては監査人が行う監査証明業務に係る社会からの信頼を確保するための条件である。
 監査法人において同一の関与社員が、同一の企業の監査を長期間にわたって担当することは、一般的に、被監査会社との間に過度に親密な関係を築きやすいと指摘される。
 このような関係が生ずることにより、緊張関係が希薄化し、監査の実務において公正不偏な判断ができなくなるという問題が生じ得ることになり、また、外部の利害関係者から馴れ合いになっているのではないかと推測され、監査に対する信頼が低下するという問題が生じ得ると考えられる。
 従って、関与社員の一定の明確な交替ルール(米国ではSEC登録会社の監査担当社員は7年を超えて同一被監査会社を担当することはできない。)を定めるとともに、その交替ルールを何らかの方法で強制するなどの対応が必要である。
  現在、公認会計士協会の「品質管理基準」の「監査の品質管理」において、監査法人に対しては証券取引法監査における関与社員の交替ルールの策定を求めているが、これによれば、最長期間を「例えば、概ね10年」としている。
 なお、公認会計士協会は、倫理に関する規則の制定を予定しており、監査証明業務の主要な担当者が、長期間継続して同一の関与先の監査証明業務に従事している場合には、同協会の審査を受けて自らの独立性を証明すること等を求める措置を講ずることとするとの考えを示している。
      [2]  求められる対応
 監査法人における関与社員の交替ルールについては、当面、公認会計士協会の自主規制に委ねることとし、現行の自主規制ルールにおける関与社員の交替期間を米国と同様に「最長7年」とするなど国際的に遜色のないものに強化を図り、法令による規制と実質的に同等の効果を自主規制により確保することを求めることが考えられる。
 なお、当面は公認会計士協会の自主規制による実施状況をフォローすることとし、改善がみられない場合には法令上の措置を講ずることになるが、この場合には、公認会計士法等の法令等で規制を行うことが考えられる。
    (2)  公認会計士が単独で行う監査の問題
      [1]  基本的考え方
 企業活動が複雑多岐にわたる大規模企業に対し、わが国の公認会計士監査に対して要求されている水準を満たす監査を行うためには、共同監査もしくは監査法人により適切な規模の監査チームを編成して組織的な監査を実施する必要があると考えられる。
 このような要求に応えるためには、少なくとも、一定規模以上の企業で証券取引法が適用される会社等の法定監査については、公認会計士が単独で監査を行うことを何らかの方法で規制するなどの対応が必要であり、また、一定規模に満たない企業を公認会計士が単独で行う場合であっても外部審査制度を整備して監査の実効性を担保する措置が必要と考える。

 現在、公認会計士が単独で行う監査については自主規制等の対象になっていないが、公認会計士協会は、倫理に関する規則の改正において、一定規模以上の企業の監査を個人単独で行っている場合には、できるだけ共同で組織的監査を行うように求める等の措置を講ずることとするとの考えを示している。
 なお、共同監査については、上記のような監査法人の関与社員の交替ルールと平仄を取るとの考え方を取れば、共同監査に参加する個人の監査人が一定期間を超えて同一被監査会社の監査を行うことを制限する等の措置も必要であるとの指摘がある。

      [2]  求められる対応
 この問題については、個人ということのみを理由として、一方的に規制することは適当ではないとの指摘もあるが、少なくとも一定規模以上の企業で証券取引法が適用される会社の監査の場合は、被監査会社の企業活動の複雑化等から高度化・専門化した監査の実施が求められており、また、その公益性の高さ等の観点からも、法令等により公認会計士が単独で監査することを制限することも必要と考えられる。
 また、上記の一定規模以上の証券取引法適用会社の監査以外の監査であっても、公認会計士が単独で行う監査についてはその実効性を担保するため公認会計士協会の自主規制により外部審査制度等の利用を義務付けることが必要である。
 なお、共同監査に上記のような監査法人の関与社員の交替ルールと同様の考えを適用すれば、該当する公認会計士は被監査会社について監査を継続することができなくなることから、関与社員と同様の交替ルールを適用することは困難という面もあるが、この場合においても、独立性を確保し、監査の実効性を担保する措置が検討される必要があると考えられる。
  2.  監査証明業務に対する内部管理・審査及び外部審査体制のあり方
  
 監査法人又は個人公認会計士事務所(以下、「監査法人等」という。)にかかわりなく監査の品質を維持・向上するとの観点からは、監査証明業務に対する内部管理・審査及び外部審査体制の整備が不可欠と考えられ、会計士界全体としてその業務の公益性・重要性を再認識するとともに、一層の充実・強化に取り組むことが求められている。
    (1)  監査証明業務に対する内部管理・審査体制の充実・強化
      [1]  基本的考え方
 公認会計士監査に対する社会的信頼を確保するためには、監査法人等が行う監査の品質管理が適正に行われ、これにより監査証明業務の適切な質的水準の維持・向上が図られることが重要である。
 監査法人等の内部管理・審査体制については、公認会計士協会による品質管理基準の制定、品質管理レビュー制度の導入等により、既に相当程度整備されてきているものと考えられる。
 しかし、組織としての体制整備は行われているものの有効適切に機能していない面がみられるのではないか、また、中小監査法人あるいは個人事務所においては、事務所の人数等の問題から、品質管理基準において要請されているレベルの内部審査体制を採ることが現実には困難な状況にあるのではないかとの指摘もある。
 この点については、監査法人あるいは個人に関わりなく監査の品質を維持する観点から、監査人自らが内部管理・審査の公益性と重要性を再認識し、その一層の充実・強化に取り組むことが必要である。
 また、内部管理・審査体制を自らの力で整備することができない監査人は、本来、監査の公益性から監査証明業務を引き受けるべきではないと考えられ、監査人自らが整備に取り組むとともに会計士界全体としても体制の整備を徹底するための自主規制が社会から求められている。
      [2]  求められる対応
 監査法人等の内部管理・審査体制については、公認会計士協会による品質管理レビュー制度による品質管理基準の準拠状況のモニタリングと是正措置によって、適正かつ厳正な指導監督が行われることが必要と考えられる。
また、監査事務所の規模の関係などから、審査体制を必要レベルまで整備できない場合には、事務所外の公認会計士又は監査法人を「審査担当員」として利用できる制度を公認会計士協会として構築するとの考えが示されているが、早急に措置を講ずる必要がある。
    (2)  外部審査体制の充実・強化
      [1]  基本的考え方
 公認会計士協会による品質管理レビュー制度が導入され、監査法人等が行っている監査の品質管理の状況に対する外部審査が実施されているが、その目的は、審査結果に基づく指導監督等を通じ監査の質的向上を図るとともに公認会計士協会の自律性について社会的信頼を得ることにある。
 この外部審査制度は、監査の公益性に照らしても妥当なものであり、公認会計士協会で設けたレビューチームの人員面での増員、改善勧告に対する改善措置についてのフォローの徹底等、より一層の充実・強化を図ることが必要である。
 更に、レビュー結果に基づく指導監督については、同協会内部での措置に終わらせることなく、その内容等を投資者等に知らせることにより、制度を導入した意義がより一層満たされるものであると指摘されている。
なお、米国等においては監査法人等同士のピアレビュー制度が導入されているが、わが国においても同様な制度の導入について検討する必要があるのではないかとの指摘もある。
      [2]  求められる対応
        イ.  自主規制としての品質管理レビュー制度の充実・強化
 監査法人等の内部審査体制等の充実・強化については、公認会計士協会の品質管理レビュー制度による品質管理基準の準拠状況のモニタリングと是正措置によって適正かつ厳正な指導・監督が行われることが必要と考えられ、公認会計士協会においては、品質管理レビューによる改善勧告事項について会員に対して必要な是正策を採らせることができるようにするなど、実効性を担保するための権限を強化する等の措置を早急に講じ、米国等と同等の水準の確保を図る必要があると考えられる。
        ロ.  品質管理レビュー結果の行政当局に対する報告
 監査法人に対し、監査事務所としての品質管理及び個々の監査業務の品質管理のレビュー結果について公認会計士制度を担当する行政当局及び有価証券報告書等の受理審査を担当する行政当局への報告を何らかの方法で義務付けることにより、自主規制の実効性を担保するとともに、行政当局が監査法人等に対して必要に応じ内部審査体制等に係る改善措置等を求めることができるよう検討する必要があると考えられる。
 また、公認会計士協会においても、品質管理レビュー結果について重大な問題が認められた場合等には行政当局への報告を適宜、適切に行う必要があると考えられる。
        ハ.  品質管理レビュー結果の公表等の充実
 監査に対する信頼性の維持及び透明性を確保するとともに監査法人等における品質管理体制等の改善を促進するという観点から、公認会計士協会においては、品質管理レビュー制度の導入後間もないが、個別の監査法人等の具体的な品質管理結果を含めたレビュー結果の対外的な公表のあり方について早急に検討を進める必要がある。
 また、レビューによって把握された問題点及び改善措置等の具体的内容を協会員に周知することにより同様の問題の改善を促進するという観点から、レビュー結果等の協会員への周知を制度化することも併せて検討する必要があると考えられる。

 

  4.  監査報告書の署名のあり方
    [1]  基本的考え方
 現行制度では、監査法人が監査証明をする場合には、監査法人名 の記名とともに監査法人の業務を執行した社員(以下、「関与社員」という。)が署名・押印をすることになっているが、監査証明の責任は第一義的に監査法人にあることをより明確にする必要があり、また、監査報告書に関与社員名を自署させることは、監査対象会社と署名する関与社員との関係を強調することになり、関与社員の交替を妨げる要因の一つとなっているとの指摘もある。
 また、現在の監査は、いわば個人の職人芸というよりは、監査法人による組織的な監査が行われ、審査体制も監査法人として整備されており、監査の実務もマニュアル化されていることなどから、監査法人が責任を負っていることが明確になるような署名のあり方が世界の流れになっているとの指摘もある。
 一方、監査報告書の署名の問題は監査法人及び関与社員に対する責任追及の問題とも関わってくるものであり、監査報告書において法人としての責任と関与社員の責任の所在を明らかにする必要があるとの考えもある。
    [2]  求められる対応
 現行の監査法人が行った虚偽証明等に係る監査法人及び関与社員に対する責任追及のあり方等を維持することを前提として、監査報告書の様式を、
      イ.  監査法人名及び代表者の記名・押印とする(この場合、監査に 関する情報の開示事項等として関与社員名を記載することとなる。)、
      ロ.  監査法人名及び代表者の記名・押印とし、関与社員名を監査報告書の記載事項とする、
      ことが考えられ、適切な様式について、引き続き検討する必要があると考えられる。

 

  5.  行政による公認会計士及び監査法人の処分のあり方
    [1]  基本的考え方
 公認会計士又は監査法人の監査証明に虚偽の証明があると認められた場合、行政当局において法律に基づいた厳正な懲戒処分が行われる必要がある。
 また、近年における監査法人の大規模化や監査対象会社の拡大等の環境の変化等により、証券取引法監査と商法特例法監査との関係において、処分内容の整合性等に留意する必要があるとの指摘もある。
 さらに、公認会計士及び監査法人の懲戒処分を行う機関として、例えば、国家行政組織法第3条委員会のような行政機関組織、公認会計士協会内部の審査機関等が考えられるとの指摘があるが、公認会計士及び監査法人に対する懲戒処分は、公認会計士制度に対する信頼を維持・向上していくことを目的に行政機関が行う処分であり、公認会計士協会の会則上の責任、民事責任及び刑事責任とは異なる責任追及であることから、公認会計士法を所管し、公認会計士制度の最終的な監督責任を負う行政機関において公認会計士法に基づいた厳正な懲戒処分が行われる必要がある。
    [2]  求められる対応
 公認会計士法による処分が、問題の内容に応じてより一層有効なものとなるよう業務改善命令の導入等処分形態の多様化を検討するとともに、公認会計士制度を指導・監督する部署の充実を図っていく必要があると考えられる。
 また、これらに関連して、商法監査特例法の規定においては、監査法人の社員が一人でも公認会計士法上の業務停止処分を受けた場合には監査法人自体が会計監査人の資格を喪失することになるが、このような法律上の関係のあり方についても検討を行う必要があると考えられる。

 

  6.  適正な監査日数等の確保と監査報酬のあり方
    [1]  基本的考え方
 現在の監査は、各被監査会社についてそれぞれの監査責任者が通常実施すべき監査手続きを構築していくことにより行われており、適正な監査日数を定量的かつ画一的には判断できず、また、当然に標準的な監査報酬も決まるものではない。むしろ被監査会社の内部管理体制の状況等の関わりで、適正な監査日数と適正な費用を見積もった上で当事者間の協議で決定されるべきものであり、そのような観点から現行の標準監査報酬制度の撤廃がなされるべきではないかとの指摘がある。
 一方で、監査業務の効率性の向上を前提として、企業の活動の多角化、複雑化等に伴い、監査をより一層充実・強化するため監査日数を十分確保する必要がより強まっているとの指摘がある。
 なお、標準監査報酬制度については、監査対象会社の増大や過当競争による監査の質の低下を防ぐためにも、当面の間は維持する必要があるとの考えもあるが、被監査会社側にも監査制度に対する理解が深まり、更に、監査の質の低下は監査人自身に対する責任追及の問題となることから標準監査報酬制度を維持する必要性は薄れてきており、各方面の理解を得ることが困難になってきているとの指摘もある。
    [2]  求められる対応
 監査報酬は、適正な監査日数と適正な費用を見積もった上で当事者間の協議で決定されるべきものと考えられ、標準監査報酬制度についてはこれを廃止すべきと考えられる。
 なお、この点については、新たに監査の対象とされた公的団体等との契約に関し、限定的に監査報酬について参考となるものを示す余地を残しておくことについて検討することが考えられるのではないかとの意見もある。
 他方、監査報酬等の監査に関する情報の開示を行うことは、企業のコーポレートガバナンスの向上等に資するとの意見も強く出されており、さらに適正な監査日数の確保のためにも有効であることから、標準監査報酬制度の廃止と併せて、監査に関する情報(例えば、監査日数、監査報酬等)を何らかの方法で開示することを検討する必要があると考えられる。

 

  7.  自主規制機関としての公認会計士協会のあり方
    [1]  基本的考え方
 監査証明業務が、その公益性という使命から、法により公認会計士の独占業務として行うことが認められていること等の観点からは、自主規制機関である公認会計士協会のより一層の機能の充実・強化を図るとともに、自主規制により自律性が十分に確保されていることについて、常時、対外的に広範な理解が得られるよう積極的に対応していく責務があると指摘されている。
 また、監査法人等が法令等に違反する行為を行った場合には、公認会計士協会としても、適切な規律を確保する観点から、会則等に照らしより厳正に対処していく必要があるとも指摘されている。
    [2]  求められる対応
      イ.  自主規制機関による処分の透明性の確保等
 公認会計士協会が会員に対する規律保持を担保することを目的に行う会則に基づく懲戒については、厳正に対処するとともに、自主規制機関としての規律保持の徹底や透明性・中立性等の向上の観点から、第三者機関に委ねることなどを検討することが考えられる。
      ロ.  個別事案の公表のあり方
 監査手続きの不適切な適用や誤った監査判断等が問題となった個別の事案について、具体的な監査の状況を開示することは透明性の向上や公認会計士間の情報の共有化を通して監査の改善に有益であると考えられることから、このような個別事案の公表について早急に検討する必要があると考えられる。
      ハ.  財務状況等の開示
 認可法人としての公認会計士協会は、既に、「認可法人に関する調査結果に基づく勧告」に基づき貸借対照表等の要旨の公開を官報等により実施しているところであるが、自主規制機関としての役割とその活動状況について一般の十分な理解を得る必要があることから、引き続き、業務内容及び財務状況について開示内容や方法のより一層の充実を図ることが必要と考えられる。

 

II

 公認会計士の質の向上に向けて
  
 公認会計士が社会の期待に応え、公認会計士監査に対する社会的信頼を維持するうえで、公認会計士が資格取得後もその専門的能力と幅広い識見を維持・向上させていくことが重要であり、継続的専門研修制度の見直し等により監査の担い手である公認会計士の質の向上を担保する必要がある。
 また、これに関連して公認会計士の資格登録制度の導入を検討し、更に公認会計士協会の強制入会制度について見直す必要がある。
  1.  継続的専門研修制度のあり方
    [1]  基本的考え方
 公認会計士が社会の期待に応え、公認会計士監査に対する社会的信頼を維持するうえで、公認会計士の資格取得後も社会経済環境の変化等に対応し、継続的な専門研修の受講等により、自らがその専門的能力と幅広い識見を維持・向上させていくことが重要であることは言うまでもない。
 こうした観点から、公認会計士協会においては、既に継続的専門研修制度を導入しているところであるが、現在の制度では、各公認会計士の自発的参加が前提となっている点や事後評価のない自己学習でも可能としている点等、改善すべき点も多いと考えられ、今後とも同協会においては継続的専門研修制度の充実・強化について検討する必要がある。
    [2]  求められる対応
      イ.  履修の義務付け
 現行の継続的専門研修制度は、各公認会計士の自発的参加が前提となっているが、これを諸外国の制度に倣い、早急に履修を義務付けることが必要であると考えられる。
      ロ.  研修形態・内容の充実等
 研修の履修を義務付けるとともに、研修の受講の事実並びにその取得単位数を客観的に確認できる制度とし、事後評価のない自己学習は除外するなどの見直しを行うことが必要であると考えられる。
 また、社会経済環境の変化を踏まえ、研修内容(カリキュラム等)の充実並びに研修形態の多様化等を図る必要があり、特に、研修内容としては、監査に必要な最新の会計基準・実務知識、新しい法律、ケースワークの他、IT関連技術や職業倫理面に関係した事項等が重要であると考えられる。
      ハ.  履修を担保するための措置
 研修の履修を担保するための措置を講ずることが必要であると考えられ、例えば、履修義務を果たしていない者に対しては、氏名等の公表や会則上の懲戒(戒告、会員権の停止等)の適用を含めた制裁措置を検討する必要があると考えられる。

 

  2.  公認会計士の登録制度のあり方
    [1]  基本的考え方
 前述のとおり、公認会計士が、公認会計士の資格取得後も、継続的な専門研修の受講等により、自らがその専門的能力と幅広い識見を維持・向上させていくことが重要である。
 このことを担保する観点から、諸外国において既に制度化されて いる公認会計士資格登録更新制度並びに業務登録制度(ライセンス)を導入すべきとの指摘がある。
 また、資格登録更新の条件として、更新を受けようとする者が行った監査証明業務についてピアレビューを受けることを将来的に加えることでその制度の意義を一層向上させることができるという指摘もある。
 一方、職業自由の問題、規制緩和等により行政の関与を縮小するという観点からは、登録更新制を法制化することは慎重に検討すべきではないかとの指摘や急激に制度を変えるよりは、まず自主規制により対応し、登録 更新制の法制化についてはその効果を見つつ検討すべきとの指摘もある。
    [2]  求められる対応
 公認会計士の資格登録を数年ごと(例えば、3年)の更新制に改めるとともに、更新の必要要件として継続的専門研修制度の履修を義務付け、併せて業務登録(ライセンス)の制度を法令等により導入することが考えられる。
 しかし、自主規制による継続的専門研修制度の義務付けとそれを担保するためのペナルティ等の必要な措置を講ずることにより、資格登録更新制度と同様の効果を確保することができるとの主張もあり、当面、自主規制によることとし、その効果を見つつ、資格登録更新制度及び業務登録(ライセンス)制度の法制化については将来的に検討することが適当と考えられる。

 

  3.  公認会計士協会への強制入会制度のあり方
    [1]  基本的考え方
 公認会計士協会は、公認会計士の自治統制機能を通じて公認会計士制度の健全な発展及び監査体制の強化を図ることを目的として公認会計士法に基づいて設立された認可法人であり、自治統制機能が十分に発揮しうるよう公認会計士となるためには、資格者は公認会計士協会の会員として登録しなければならないという強制入会制度が採られている。 
 しかし、一方で、強制入会制の下では、資格者間の自由競争が制限される等の弊害が生ずるおそれがあるなど、強制入会制のあり方を見直すべきとの指摘がなされているところである。
    [2]  求められる対応
 近年、公認会計士監査による適正なディスクロージャーの確保と公認会計士監査に対する国際的な信頼の向上が一層重要になってきており、こうした観点から、公認会計士協会においては、継続的専門研修制度や品質管理レビューの導入、倫理に関する規則の全面的な見直し等、公認会計士監査の充実のため様々な取組みを行っているところであり、自主規制機関としての役割や外国の会計専門家団体との連携・情報交換などにより監査の質の向上を図るための窓口としての役割など、その役割は、極めて重要であると考えられる。
 自主規制機関である公認会計士協会が公認会計士監査の充実のために様々な取組みを行っている状況に鑑みれば、公認会計士の自治統制機能が十分に発揮しうるよう全ての公認会計士が会員となる強制入会制度は、これを維持することが適当であると考えられる。
 なお、公認会計士協会は、公認会計士法により、上記のような役割が果たせるよう強制入会の単一の機関として組織の存続が保証されているとも考えられることから、今後とも、より一層の機能の充実に努めるとともに、その業務運営に係る自律性と透明性が十分に確保されていることについて、常時、対外的に理解が得られるよう社会に対する説明を行っていく必要があると考えられる。
 また、これに関連して、公認会計士協会が自主規制機関として会員に対する役割を適切かつ積極的に果たすことを前提として、例えば、監査法人の定款記載事項である「社員の氏名及び住所」の変更等を認可から届け出にするなど、行政当局による認可事項の範囲を見直すことを検討することも考えられる。

 

III

 環境の変化に適合した監査法人制度及び業務範囲等のあり方
  
 近年、被監査会社の大規模化や業務内容の多様化に対応するため、公認会計士監査の専門化や高度化が急速に進展し監査法人が大規模化せざるを得ない状況にある。また、公認会計士や監査法人に対しては、監査証明業務だけでなく、いわゆるコンサルティング等多様なサービスの提供が求められているなど、公認会計士及び監査法人を取り巻く環境が、公認会計士法制定時から著しく変化している。このような環境の変化を踏まえ、監査証明業務の質の維持・向上という観点から、監査法人制度のあり方、公認会計士等の業務範囲のあり方等を見直す必要がある。
  1.  監査法人制度のあり方
    [1]  基本的考え方
 現行監査法人制度は、合名会社に準じ、法人の債務について社員が無限連帯責任を負う制度となっているが、このような制度は公認会計士監査の専門化や高度化等に対応した監査法人の大規模化に適合しにくい制度になってきているとの指摘がある。また、元来合名会社形態は社員の相互監視ないしは相互牽制による業務運営が期待されているが、監査法人の大規模化等に伴い事実上十分に機能せず、むしろ、責任の所在が稀薄化している状況が生じているとの指摘もある。
 このような監査法人を取り巻く環境等を踏まえ、例えば有限責任制の導入など監査法人の組織・責任形態のあり方等について検討を加える必要がある。
 有限責任制は、必要な資本調達や専門家の確保を容易にし、監査法人内の責任の明確化による監査に対するモラルの向上に資するなど監査の質の向上にもつながるのではないかと指摘されている。
 また、欧米の主要国において監査事務所に有限責任パートナーシップ(Limited Liability Partnership:LLP)制等の有限責任制が導入されており、これらに比してわが国の監査法人がこの制度を採用していないことは国際的にも整合性を失し、更に、監査法人の国際競争力の保持という観点からも望ましいこととは言えないとの指摘もある。
 なお、この場合においても、監査法人の組織・責任形態のあり方等に係る検討としては、経営破綻した企業の監査を担当した監査法人に対して社会から厳しい指摘や批判がなされている現状を踏まえ、監査証明業務の大規模化等に対応した品質管理体制の充実・強化、監査に対するモラルの維持、監査証明業務における独立性の確保等の視点から、社会からの理解が得られるように慎重に検討を行う必要がある。
 更に、現在の監査法人はその業務内容において公益性が極めて高く、その規模においても一般の事業会社と遜色ない法人も多いと考えられることから、監査法人においても事業内容や財務内容について何らかの開示が必要との指摘がある。
 また、監査法人が有限責任制を採用する場合においては、一般の事業会社に準じた外部監査制度を導入すべきとの指摘がある。
    [2]  求められる対応
      イ.  監査法人の社員の有限責任制の導入
 公認会計士監査の専門化や高度化に対応し、さらには国際競争力をつけ、また、公認会計士及び監査法人の業務範囲の拡大、更に、監査証明業務における訴訟リスクの増大という監査法人を取り巻く環境の著しい変化に対応した監査法人の組織・責任形態として、現在の無限連帯責任を負う社員のみからなる合名会社形態に加え、LLP制等の導入について、検討を加える必要があると考えられる。
 なお、その検討に際しては、わが国の会社法制との関係も踏まえ、いかなる有限責任形態が考えられるかという検討が必要である。
 また、被害を被った投資家等にとっては損害賠償請求の履行が現行制度に比して限定されることになることから、例えば最低出資金の法定化等賠償責任能力の維持・向上策等の社会の理解が得られるような、具体的方策を併せて講じることなどが必要であると考えられる。
      ロ.  監査法人の社員資格の拡大
 監査証明業務の充実・強化を図る観点からは、公認会計士以外の専門家(例えば、弁護士、不動産鑑定士、年金数理人、コンピュータ技術者等)が有する特定分野の高度な専門的知識、技能等を有効に利用することが、監査における意見形成の充実に資するものと考えられ、このような専門家が一定範囲内で監査法人の社員として監査法人へ参加できる制度を検討する必要があると考えられる。
      ハ.  損害賠償責任等に係る措置の検討
 近年、経営破綻した企業の監査を担当した監査法人に対する損害賠償請求訴訟が提起されている現下の状況に鑑みれば、損害賠償請求に対する履行能力を高めるため、賠償責任保険への加入の義務付け等をすべきとの指摘があり、一方、損害賠償の上限額の法定化、会社役員と会計監査人の比例責任制度の導入を検討すべきとの指摘もなされているが、これらについては、監査法人等における品質管理体制の充実・強化の取組みや監査法人の責任のあり方に関する検討と併せて慎重に検討を行う必要があると考えられる。

 

  2.  業務範囲のあり方
    [1]  基本的考え方
 監査法人等の業務範囲の拡大等により、監査とは保証水準を異にするレビュー業務や財務書類以外の監査証明業務などが拡大してきており、このような業務範囲の拡大や保証業務の多様化等に対応した公認会計士法上の業務範囲の見直しと責任の明確化を検討する必要があると指摘されている。
 また、監査法人等の行うコンサルティング業務の対象の多様化・拡大化を求める指摘があるが、一方、監査証明業務との関係において、独立性の欠如をきたす可能性が懸念される現状にあり、米国においても監査部門と経営コンサルティング部門に厳格な障壁を設け、監査部門の独立性を強化するルールの導入が検討されているなど見直しが進められていることから、監査法人等の行うコンサルティング業務の多様化については、公認会計士法上の業務としての位置づけや範囲、その規制の要否等について国際的な動向も十分に注視しつつ、慎重に検討を行う必要があると指摘されている。 
 以上のような監査法人等の業務範囲のあり方の検討に当たっては、監査証明業務における独立性の確保、非監査業務に係るリスクの回避といった観点から、監査法人等自らが行い得る業務範囲及びその責任を明確にする必要があり、業務内容等の開示を通じて、社会からの信頼を確保するとともにこれらの業務を適正かつ公正に遂行し得る枠組みを検討する必要がある。
 なお、現在、監査法人は税務業務を行うことはできないが、個人の公認会計士と同様に監査法人も税務業務を行えるようにすることが望ましいとの指摘がある。
    [2]  求められる対応
      イ.  レビュー業務等への対応
 現行の公認会計士法では、公認会計士又は監査法人の業務は、第2条第1項において「財務書類の監査又は証明業務」を公認会計士の独占業務として定義し、同条第2項において「財務に関する調査、立案等の業務」を定義している。
 上述のとおり、近年、財務書類以外の監査証明業務、財務書類に係るレビュー業務等が拡大しており、これらの業務については、公認会計士法第2条第1項の業務又は第2項の業務としてどのように位置づけていくか、また、現行の規定を見直す必要があるかどうかを検討する必要があると考えられる。
      ロ.  監査法人等における監査証明業務の独立性等の確保
 コンサルティング業務に係る業務範囲等のあり方の検討に当たっては米国等国際的な動向も十分に注視しつつ慎重に検討を行う必要があり、監査証明業務の独立性の確保及び監査の品質の維持・向上の観点から、少なくとも監査証明業務と非監査業務との間に人事及び組織上の隔離措置(ファイアウォール)を設け、更には監査業務に影響を及ぼすコンサルティング業務を回避する等の一定の措置を講ずることを検討する必要があると考えられる。

 

  3.  広告規制のあり方
    [1]  基本的考え方
 広告は、利用者が自己責任において公認会計士又は監査法人を選択する際の情報として考えるべきであり、虚偽、誇大、比較広告等、諸外国においても禁止されているような職業としての品位を損なう不適当な広告や利用者を欺くおそれのある広告以外は、法律又は自主規制機関により制限する必要はないと考えられ、基本的には自由化をすべきものと指摘されている。
    [2]  求められる対応
 公認会計士法では、監査法人等の名称・所在地等許容される広告のみを規定しているが、上記の虚偽・誇大広告等一定のもののみを禁止して他は原則自由とすることとし、これを公認会計士法による規制から公認会計士協会の自主規制に委ねることが考えられる。

 

  4.  公認会計士法の目的規定等の要否等
    [1]  基本的考え方
 現行の公認会計士法は、法律の「目的」又は資格者の「使命・職責」に関する規定が設けられていないが、公認会計士の社会的存在意義の理解を深めるため、また、公認会計士自身の責任モラルの自覚を促すためにも、公認会計士法に「目的」ないしは公認会計士の「使命・職責」の規定を設けることを検討する必要があるとの指摘がある。
    [2]  求められる対応
 認会計士の業務の多様化・拡大化等の現状を踏まえ、公認会計士法の「目的」ないしは公認会計士の「使命・職責」を明確にし、これを公認会計士法に規定する方向で検討を行う必要がある。
 

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