平成11年4月23日(金)


公認会計士審査会

第1回会計士監査に関するワーキンググループ議事録


於 大蔵省第四特別会議室
(本庁舎4階)


大蔵省金融企画局市場課


午後2時0分開会

○三原座長 それでは、予定の時間も参りましたので、ただいまから「会計士監査に関するワーキンググループ」の第1回会合を開催いたします。
 私、公認会計士審査会で会長代理を務めております三原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 このワーキンググループは、本年3月23日に開催されました公認会計士審査会におきまして、近年の会計士監査を取り巻く環境などを踏まえますと、会計士監査の在り方についてもその見直しが必要になっているのではないかと、こういう認識の下に、公認会計士審査会及び企業会計審議会の委員の方々を中心とするワーキンググループを発足させて、米国の会計士監査の状況なども参考にしながら、幅広い検討を進める。そして、審議の終了予定時期を明示することは困難ではありますが、必要に応じて公認会計士審査会などにその検討状況及び主な論点についての報告をしてもらうと、こういう決定が審査会においてなされましたことを受けまして開催することになったものでございます。
 この趣旨を内々に皆様に御相談申し上げましたところ、御賛同をいただくことができまして、本日ここに最初の会合を開催することができましたことを厚く御礼申し上げます。
 ここで、ワーキンググループの委員の方々を御紹介いたします。
 初めに、奥山章雄委員を御紹介いたします。

○奥山委員 奥山でございます。よろしくお願いします。

○三原座長 次に、葛馬正男委員を御紹介いたします。

○葛馬委員 葛馬でございます。よろしくお願いします。

○三原座長 次に、岸田雅雄委員を御紹介いたします。

○岸田委員 岸田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○三原座長 次に、関 要委員を御紹介いたします。

○関委員 関でございます。

○三原座長 次に、中島公明委員を御紹介いたします。

○中島委員 中島です。よろしくお願いします。

○三原座長 次に、永嶋久子委員を御紹介いたします。

○永嶋委員 永嶋でございます。よろしくお願いします。

○三原座長 次に、中村芳夫委員を御紹介いたします。

○中村委員 中村でございます。よろしくお願いします。

○三原座長 次に、林 興治委員を御紹介いたします。

○林委員 林です。よろしくお願いします。

○三原座長 次に、山浦久司委員を御紹介いたします。

○山浦委員 山浦でございます。よろしくお願いします。

○三原座長 次に、脇田良一委員を御紹介いたします。

○脇田委員 脇田でございます。よろしくお願いします。

○三原座長 このほか、安藤英義委員、中原 眞委員にも御参加いただくこととしておりますが、本日は御都合により御欠席でございます。
 また、若杉 明企業会計審議会会長にも御出席をいただいております。若杉企業会計審議会会長を御紹介いたします。

○若杉企業会計審会長 若杉でございます。よろしくお願いいたします。

○三原座長 さて、このワーキンググループの座長につきましては、公認会計士審査会の片田会長の御指名を受けましたことから、御立派な方々おそろいの中で大変僭越でございますが、私が務めさせていただくことになりました。大変微力でございますが、この大事な会合の交通整理役として最善を尽くすつもりでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、座長代理には、企業会計審議会の第二部会会長代理をされておられる脇田委員にお願いしたいと考えておりますが、脇田委員、よろしゅうございましょうか。

○脇田座長代理 未熟でございますけれども、引き受けさせていただきます。

○三原座長 どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、このワーキンググループにおける検討の進め方について申し上げます。
 月2回程度のペースで開催することといたしまして、まず、何回かにわたり、各界の方々から、現行の会計士監査の在り方に対する御意見や御感想を伺うことで、具体的な検討を進めてまいることではどうかと考えております。まず、各界の専門家の方々から御意見や御感想を伺いながら意見を交わしていきたいと、これが一つでございます。
 それから、大蔵省におきましては、各種審議会における審議の透明性を確保するなどの観点から、その議事録及び会議資料を対外的に公表する方向で検討を進めております。このワーキンググループにおける審議状況につきましても、皆様から御異論がなければ議事録及び会議資料を公表することとしたいと考えております。もちろん、議事録は公表する前に皆様にはチェックしていただくことになっておりますが、このようなことでいかがでしょうか。進め方といたしまして、よろしゅうございましょうか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○三原座長 それでは、そのような形で検討を進めていきたいと思います。
 それでは、ここで、事務局の金井東京証券取引所監理官から御挨拶をいただきたいと存じます。

○金井東証監理官 ただいま御紹介いただきました金井でございます。
 本日は、お忙しい中、この会合に御出席をいただきましたことに対しまして厚く御礼を申し上げます。
 我が国の公認会計士制度は、昭和23年の発足以来50年余りが経過しております。企業の経済・金融活動の国際化や複雑化等を背景にいたしまして、会計士監査によります適正なディスクロージャーの確保ということが従来にも増して重要になってきておるわけでございます。
 また、監査に対しますニーズは質的にも量的にも拡大してきておりまして、監査業務の難度も飛躍的に上昇してきておるところでございます。
 こうした監査環境の変化や難度の上昇に対応すべく、自主規制機関であります日本公認会計士協会を中心といたしまして各種の具体的な改善策が講じられてきているところでございますが、近年の金融機関や事業会社の破綻問題等に端を発しまして、企業経営者の責任を明らかにすべきであるというような御指摘とともに、会計士監査の在り方につきましても十分に機能していないのではないかといった大変厳しい指摘が一部になされておるところでございます。また、他方、複雑な企業経営の監査を行う公認会計士業界におきましても、適正な監査手続とはどのようなものであり、どのような監査手続を実施することによってその責任を全うすることになるのかということにつきまして、今一度検討する時期が来ているのではないかというような御意見もあるところでございます。
 私ども公認会計士法を所管いたします立場にある者といたしましても重要な課題であるというように認識しておるところでございます。
 このワーキンググループにおきまして、現行の会計士監査の問題点などにつきまして幅広く検討を進めていただきまして、何らかの方向性をお示しいただければ幸いであると考えております。どうかよろしくお願い申し上げます。

○三原座長 ありがとうございました。
 それでは、本日の議事に移らせていただきます。
 本日は、事務局から、会計士監査の現状につきまして簡単に御説明をいただき、続いて、参考人として御出席をお願いしております実務界の方々、お三方の御意見をいただくことといたしまして、その後に質疑応答に移らせていただきたいと存じます。
 それでは、最初に事務局から、会計士監査の現状につきまして御説明をいただきたいと思います。

○内藤大臣官房参事官 参事官の内藤でございます。よろしくお願いいたします。
 お配りしております資料1を御覧いただきたいと思います。現行の公認会計士制度につきまして、かなり基礎的なことでございますので、もう十分承知であるというふうなことであろうかと思いますが、若干お時間をいただきながら、一応ざっと全体像を御説明させていただきまして、今日お越しの参考人の方々からのお話に譲らせていただきたいと思っております。
 資料1でございますが、まず、1ページを御覧いただきますと、現在、公認会計士、そして監査法人、それぞれについての制度の枠組みがございます。基本的には公認会計士の制度が基本になっておりまして、1.に「公認会計士」。この業務でございますが、(1)のマル1に財務書類の監査証明の業務。これがいわゆる2条の1項業務と呼んでいます。それから、マル2に財務書類の調製、財務に関する調査、立案、相談の業務ということで、いわゆるアドバイザリー業務等々でございまして、これを2項業務というふうに呼んでおりまして、会計監査以外の業務というものを指しております。
 (2)で、公認会計士の業務を行うためには、第3次試験に合格をし、公認会計士名簿に登録をすると、こういう必要がございます。現在、登録者数が約1万2,000人という数でございます。
 それから、2.に「監査法人」がございますが、基本的には公認会計士制度を受けた制度になっておりまして、「監査法人の要件」というのが(2)にございますが、社員は、公認会計士のみである。5人以上である。そしてまた、マル4のところで社員の無限連帯責任等、基本的には商法の合名会社の規定を準用しておるようなことになっております。
 監査法人数は、平成11年3月末現在で142ございまして、この中で社員数が400名以上という、いわゆる大法人というものが5法人ございますが、全体の数からいきますと非常にごくわずかというようなことでございます。
 それから、(3)で「監査法人の業務範囲」がございますが、さらに(4)で「大蔵大臣の認可事項」ということで、行政の監督の立場に大蔵大臣がいるわけでございまして、監査法人の設立、定款の変更、解散、合併、こういったものについては認可という形で監督しておる立場にございます。
 それから、3.で「監査証明業務の制限」というものがございまして、公認会計士とか監査法人が、被監査会社、顧客との間で監査を行うという場合には、利害関係についてこれを有する場合には、監査証明業務を行うことは禁止されているというものでございます。
 具体的には、2ページを御覧いただきますと、公認会計士法とそれに基づく公認会計士法施行令、政令で事細かく規定がございまして、本人とか配偶者がその会社と特別の関係を有するというような場合には、監査証明を行ってはならないという形で、非常に厳しくその中立性というものについての規定がなされております。監査法人も同様でございます。
 (2)で、上記以外の利害関係を有する場合であっても、その内容を監査報告書に明記するという形でディスクローズするという規定がさらに付け加わっております。
 3ページは「公認会計士の登録状況」でございまして、先ほど申し上げたような数になっております。公認会計士の登録者数であるとか、監査法人の数というのは、御覧のとおりでございます。
 それから、4ページを御覧いただきますと、「主な法定監査の状況」ということで、主に証券取引法に基づく監査と、それから、商法の特例法に基づく監査というものがございます。
 それで、証券取引法に基づく監査は、基本的には有価証券を上場しておる、あるいは店頭登録をしている、あるいはマーケットに公募すると、こういう形で、いわばマーケットに対する責任を明確にするという形で開示がなされ、その開示書類についての会計監査が行われる。こういうふうな仕組みでございまして、現在その会社数は、4,100ということでございます。
 それから、商法についても、特例法で資本金5億円以上又は負債総額200億円以上の大会社について商法監査というものが行われておりまして、証取法監査を除きまして会社数が約5,800と、こういうことでございます。
 そのほかに、3.でございますが、金融機関につきましても会計監査が義務付けられておりまして、信用金庫、信用組合、労働金庫、農中、こういったところについても、一定の規模以上の協同組織の金融機関においても会計監査が義務付けられているということでございます。
 それから、下に証券取引法の規定がございますが、(公認会計士又は監査法人による監査証明)ということで、上場している等々の会社は、貸借対照表、損益計算書その他の財務書類について、特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査を受けなければならないと、こういう規定が証取法にございます。
 それを受けまして、さらに、「監査証明省令」と呼んでおりますが、省令がございます。(監査証明の手続)というふうに書いてございまして、財務書類についての監査証明は、公認会計士又は監査法人が作成する監査報告書により行う。その監査報告書は、一般に公正妥当と認められる監査に関する基準及び慣行に従って実施された監査の結果に基づいて作成されなければならない、こういう規定でございます。
 5ページにまいりますと、そういう監査の基準というのはどこで定めるかというところの規定がございまして、企業会計審議会により公表された監査に関する基準、これは前項に規定する一般に公正妥当と認められる監査に関する基準に該当するものとすると、こういう規定になっております。
 それから、監査報告書でございますが、どういうものを記載するのか。これは基本的には簡潔明瞭に記載をしなければなりませんが、この中に、「一 監査報告書」というところにイ、ロ、ハ、ニとございまして、監査の概要、それから、その監査に当たりまして意見、さらに特記事項、そして、公認会計士あるいは監査法人の有する会社との関係の利害関係、こういったものを記載しなければならないという形になっているわけでございます。
 それで、6ページを御覧いただきますと、「監査基準の概要」というものがございます。
 監査基準は、2.に「監査基準の体系」というのがございまして、一般基準と実施基準、そして報告基準。一般基準というのは、精神的な基本的な理念というようなものでございまして、それから実施基準、その下に監査実施準則というものが規定されておりまして、報告基準の下にまた報告準則というものがございます。
 実は、監査基準は下の四角の中に入っておるものが全てでございまして、非常に概念的といいますか、基本的な規定になっております。ですから、これだけではなかなか実際の監査はできないということで、後で申し上げますが、事細かくマニュアルというものが定められるような構成になっております。
 それで、7ページを御覧いただきますと、7ページに「監査基準等」。実は、その「等」というものが非常に事細かいマニュアルで構成をされておりまして、恐縮でございますが、8ページを御覧いただきますと、日本基準、米国基準、国際監査基準という横の比較をしておりますが、これは何をもって比較をしたのかというと、(注)の3.のところに、国際監査基準は別途その国際の公認会計士の団体が委員会を作りまして監査基準というのを定めております。それを内容的に並べたものでございますが、日本については、監査基準、監査実施準則、監査報告準則及び公認会計士協会が作成する監査基準委員会報告等でございまして、これが非常に網羅的なものがございます。それから、米国におきましても、米国公認会計士協会が作成・公表する監査基準書、SASと呼んでいますが、これ等をそれぞれ参照としております。
 恐縮でございますが、7ページに戻っていただきますと、左側に各項目がございます。基本原則とか、監査契約書とか、監査作業の品質管理等々ございます。日・米・国際監査基準。国際監査基準は、そういう意味での国際的な団体の委員会が作ったものでございまして、これが直ちに各国に適用されているというわけではございませんで、いわばスタディされた一つの成果物であるというふうにお考えいただきたいと思いますが、実際には日米それぞれ各国の基準が適用されておりますが、御覧いただきますように、基本的には日米そう大きな変わりはございません。
 例えば×印ですと、「初年度監査項目」と下にございますが、最初に監査に入ったというようなときには、かなり細かい項目をチェックするというのが米国基準にあるようでございますが、特段日本にないというぐらいのことであって、大きな問題はそれほどないのではないかというふうに思います。
 8ページでございますが、最近指摘されております一つの点といたしまして、継続企業というものがございます。これは、当監査する会社が、いろいろ取引先あるいは関連会社等々におきまして、企業経営として継続するかどうかということが非常に疑わしいというような場合、あるいは重要な悪影響を与えるおそれがある、こういうような場合には、監査を明確にし、また、報告書に明記する必要があると、こういうことが米国基準にはございますが、これは日本基準ではないということがございます。
 それから、下の方は×がかなり並んでおりますが、これは実は会計監査そのものというよりは、例えば「比較財務情報」というふうに呼んでおりますのは、例えばそれぞれのいろんな経営指標的なもののようでございまして、こういったものについては、通常、日本の会計監査の外の問題でございますので、これまでそれについてのルールというのは特段なかったということで、米国の場合にはそれをも監査するといいますか、チェックすると、こういうふうなことでこの基準があるようでございます。
 それで、9ページ以下でございますが、現在の監査報告書というのはどういうふうな書きぶりになっているのかというふうに、ちょっとひな形で御紹介をいたしますと、まず9ページは、無限定の適正意見ということで、ちょうど真ん中あたりのところに記述がございますが、「監査の結果、会社の採用する会計処理の原則及び手続は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠し」と、こういうことを書いてございまして、下から3行目あたりですが、「適正に表示しているものと認める。」と、こういうことで合格と、こういうふうな規定になっておるわけです。
 それから、10ページは、限定付の適正意見ということで、一部限定的な意見が付されているというものでございます。「記」というところにいろいろ幾つかの具体的な指摘がございまして、下から4行目あたりですが、「よって、上記事項はあるが、総合的に判断して私たちは、……適正に表示しているものと認める。」と、こういうようなものもございます。
 それから、11ページにまいりますと、不適正意見の事例でございまして、これは非常に問題があって認められない、こういうことで×というふうな規定ぶりになっているものでございまして、「記」というところにいろいろ具体的な指摘がございまして、それを受けて「したがって、」というところで、次の行ですが、「……事業年度の経営成績を適正に表示しているものとは認めない。」ということが書いてございます。
 それから、12ページは、意見差控という場合がございます。つまり、十分監査をし得るそういう状況にはなかった。また、取れなかったということで、そもそも意見を出すという状況ではなかったと、こういう指摘でございまして、アンダーラインのところで、「上記財務諸表に対し全面的な心証を得るに足る重要な監査手続を実施することができず、」「十分な監査証拠を得ることができなかった。」「よって、……意見の表明を差控える。」と、こういうふうな場合がございます。
 それから、13ページは、先ほど申し上げました公認会計士協会でいろいろ作成をしております「監査マニュアル」でございまして、(参考)というところに事細かく書いてございます。いろいろ監査の計画とか実施の内容、それから、監査の報告についての様式とかチェック・リストといったものがございます。こういったものが一つのひな形として発表されているわけでございます。
 2.で、各監査事務所では、こういったひな形を受けまして、実情に則した監査マニュアルをそれぞれ独自に作成をして、そして実際の監査に当たっているというようなことでございます。
 14ページを御覧いただきますと、ある監査法人の監査マニュアルの事例でございますが、監査の契約をいたしまして、それを受けて監査計画の策定をいたします。そこで内部統制、いわば会計のいろんな仕組みについてのチェック・システム、その有効性の検証手続を実施いたしまして、テストの実施もいたします。それを経て監査の完結ということで監査報告書の作成に入ると、こういうふうな流れでございます。
 それから、15ページは、実際の監査におきまして、どのような分担でなされるのかということで、監査法人の代表社員、いわば役員クラスの方、それから統括関与社員、監査チームのヘッドでございます。それから主席関与社員がおりまして、主査という補助者がいる、こういうふうなことで体制が出来上がっておりますが、○が入っておりますのが実際の実施に当たる。△はレビューとかあるいは承認をする。こういう形で責任の分担がそれぞれ行われているということでございます。
 それから、16ページでございますが、「公認会計士の責任について」ということは、法律的な枠組みの中でどのような責任の体制がとられているかということで、2.を御覧いただきますと、「公認会計士は、会社が重大な虚偽のある財務書類を作成した場合において相当の注意を怠り、重大な虚偽のないものとして証明した際には、以下のような虚偽証明の責任が生じる。」ということで、まず(1)としては、証取法とか商法あるいは民法で定めてれております外部の利害関係者に対する損害賠償責任、株主とか債権者といったものに対する損害賠償責任ということで、この基本的な理由付けとしては、故意又は過失ということを前提としております。
 それから、(2)で刑事責任というものがございます。これは故意犯というものを前提にしております。
 それから、行政責任ということで、証取法においては1年以内の監査証明の不受理という、そこからの証明を受けないと、こういうふうなペナルティが規定されております。それから、公認会計士法におきましても、懲戒処分ということで、公認会計士個人と監査法人、それぞれについて故意・過失、それぞれ重い・軽いというのがございますが、それぞれ規定をされております。
 それから、17ページは、公認会計士法に基づいて懲戒処分を行う、行政処分でございますが、このときの全体の流れ、手続でございます。
 これは、大蔵大臣がそういう問題があるというふうに考える場合、それから、第三者から問題があるぞという形で申立てが行われる場合、それから、日本公認会計士協会から報告がある場合、こういったそれぞれについての手続がまず始まるわけでございまして、そういったものがございますと、申立てについての調査が行われ、審問とか、あるいは鑑定とか、あるいは帳簿書類等の提出命令、あるいは立入検査、こういったものがいろいろ行われます。その上で、懲戒処分に相当する事実があるというときには、聴聞をし、公認会計士審査会へ諮問いたしまして、公認会計士審査会で検討した上で、答申というものを大蔵大臣に提出していただきまして、大蔵大臣がそれを踏まえて懲戒処分というものをするかどうかということでございます。した場合には公告と。こういうふうなものが一連の手続で定められております。
 18ページは、これまでの処分の事例でございます。
 それから、19ページでございますが、これは前回、実は公認会計士審査会の方のメンバーの方々には御説明済みのことでございますが、9年の4月に公認会計士審査会から「会計士監査の充実に向けての提言」ということで、公認会計士監査のいろいろ反省を踏まえて、より改革をしていく場合にどうすればいいかと、こういうことで提言が出されております。
 20ページを御覧いただきますと、この監査の10の提言というものの中身がございまして、下の方の箱の中に書いてございますが、大きく三つにカテゴリーとして分かれておりまして、投資家と発行体を正しく結ぶ会計士の監査というもののための改革ということで、例えば監査の難度に対応した監査手法を高度化していくとか、あるいは監査役との相互補完というようなものが規定されております。
 それから、会計士監査のグローバリゼーションということで、監査のクォリティコントロール、あるいは実務指針というものを体系的に整備をして、国際監査基準と整合性のあるようなものにより改善していくといったものがございます。
 それから、会計士協会の指導監督機能ということで、監査の事後的な審査、継続的な専門教育。特に会計士、会計監査の中身がどんどん変化をしておりますので、それに合わせた研修を行っていくということがございます。
 21ページは、これを受けてどういうふうな対応をしておるのかということで、対応済みのものもございますし、現在さらに対応中というものもございます。
 実は先般の公認会計士審査会におきまして、公認会計士協会の中地会長の方からは、特にマル8の「監査法人・会計士の監査に対する事後的審査の実施」ということで、いわば監査法人同士がお互いにチェックしていくということで品質管理のレビューをしていくと、こういうことを既に導入してやっておると、こういうふうなお話がございました。
 それから、「継続的専門教育制度の実施」ということで、これも10年の4月から実施をして進めていると、こういうようなことがございまして、そういうような御紹介がございました。
 長くなりましたが、以上でございます。

○三原座長 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、会計士監査を利用する立場から参考人として御出席をいただいております日本格付投資情報センター格付本部の中塚冨士雄副部長及び三浦毅司チーフアナリストを御紹介し、御意見を伺いたいと存じます。

○中塚参考人 中塚でございます。よろしくお願いいたします。

○三浦参考人 三浦でございます。よろしくお願いいたします。

○中塚参考人 私どもは、両名とも現場のアナリストでございまして、本来、このような席にはやや不釣り合いかと存じますけれども、有価証券報告書のユーザーの立場から日頃感じていることを報告せよという御指示を事務局の方からいただいておりまして、お許しを得て、約20分ほどお話をさせていただきたいというふうに思います。
 お手元に資料2といたしまして、私どもが格付調査の過程でどういった項目を追加で伺っているのかという資料をお配りしております。これを御説明することが、私どもが格付作業上認識している企業の経営実態と、それから、有価証券報告書上に記載している企業の計数等の差を考える上で有用ではないかと思いましたので、今回御提示するということにいたしました。
 格付作業では、一番最初に調査に入る前の準備段階では、まず有価証券報告書の分析をいたします。ですが、その後調査先へまいりまして、資料の要請あるいはヒアリング、あるいは控除実査を行う過程で、こうした有価証券報告書上の計数に修正を加えてまいります。その修正を加えた結果として、最終的な格付判断のためのデータをまとめるという作業を日常的にやっております。
 まず、こうした項目、比較的多いというふうにお感じになるかもしれませんけれども、実はこの項目は日増しに増える方向にあります。と申しますのは、昨今の決算でもお分かりのとおり、非常に特別損失等の発生の件数あるいは額というものが増えておりまして、これが企業の収益実態及び財務構成から見て無視できないというケースが多発しているということから、そういう対応をとらざるを得なくなっているという状況にございます。
 まず、先ほどの事務局様の御用意いただいた資料の中でも、適正意見等についてのデータがございましたけれども、例えば東京証券取引所でまとめられている毎期の監査状況についての調査報告書を見ましても、概ね上場企業について出されている限定意見というのは、いわゆる2号限定。継続性についての項目というものが多いということでございます。しかるに、98年についても約200件程度の限定意見、いわゆる適正な限定意見といいますか、内容として正しいという限定意見が出ているわけですけれども、結果として、今年度に入りまして、中間決算あるいは本決算前の業績修正という形で非常にさまざまな損失が計上されているという状況にございます。
 なぜそういった問題が起きるのかという問題が一つ。それから、もう一つは、期末ではBS/PL、これが正しかったのかどうかという問題。概ねこの二つの問題があると思うわけですけれども、全くの粉飾決算、これは論外といたしましても、企業が将来のリスクとして評価し、その当時の経済環境においては正しいと、あるいは適切であろうというふうに考えた計数。これがわずか1年以内の間に適正ではなくなってしまうというケースがこれほど多いのだろうかという印象を持たざるを得ません。私も20年近く有価証券報告書に接してまいりましたけれども、特にここ数年、こうした過年度の有価証券報告書と当年度の発生するリスクの乖離、これがここまで拡大したというのは、過去ちょっと考えられなかったことではないかと考えております。
 やや刺激的な表現となるかもしれませんけれども、私ども現場の調査に入るアナリストといたしましては、やはりこういうことが非常に多いということになりますと、実際に有価証券報告書が作成される際に、今の事業環境に照らして、作成者すなわち上場会社ですけれども、これがどういう意図を持ってこの計数をお作りになっているのかというところまで考えざるを得なくなってしまうということになります。例えば問題のある資産の評価、あるいは、若杉先生も「会計ディスクロージャーと企業倫理」の中で指摘されております売掛債権の取扱い、あるいは簿外取引の利用、あるいは連結対象範囲の調整等々、非常に複雑化する企業取引の中で、実はさまざまな会社と、あるいは外から見た、あるいは環境変化に伴って発生する齟齬、これが非常に大きくなっているのではないかというふうに感じております。
 ちょっと言葉は悪いですけれども、中には、一般的な財務分析の手法では経営の変化が見えないような方法で財務諸表を組み立てておられるのではないかといった例もございまして、先ほどの例えば売掛債権も、投資その他の項目に入る、あるいはそれが株式ないしは貸付金に変化してしまうということになってまいりますと、例えば売掛債権の回転率、こういったようなものを算出いたしましても全く意味がなくなってしまうということになります。ですから、例えば【2】の「評価作業」のところに若干書いておいたんですけれども、営業債権のリスク把握の部分では、事前の有価証券報告書のチェックの段階では、いろいろな項目を合成いたしまして合成回転率を計算しないと適正な把握ができなくなっているという状況にございます。
 特に会計上で、最近大きな問題となっているのではないかと私どもが認識しております問題を二つ挙げますと、一つは、時価の評価あるいは実質価値の問題、もう一つは、子会社及び関係会社の問題でございます。
 まず、時価あるいは実質価値の評価という問題でございますが、例えば財務の安定性を図る上で、自己資本比率というのが日本においては非常に重要な指標というふうに認識されてきたわけですけれども、これも、実は資産評価が的確でなければ自己資本比率自体が意味を持たないということになります。例えば私どもの作業の中で、財務リスクの評価の最初の作業でございますが、資産の実質価値あるいは換金可能性、こういった点から手を付けます。その上で、もちろん不良債権の引当額の妥当性が重要であると、これは言うまでもない点であると思います。
 公認会計士さんの責任範囲論、これを無視して考えるのであれば、一つは、重要性の原則あるいは注記事項の必要性の有無、こういった問題を企業寄りに立って考えられるのか、それとも投資家の側に立って考えられるのかといった面でも、実は何がしかの違いが出てくるのではないかというふうに感じております。
 また、資産の質の把握という問題、特に子会社の株式の評価等も最近は非常に大きな問題になっていると思うんです。この問題については、また後で若干述べさせていただきます。
 それから、簿外取引。例えばバランスシートのスリム化であっても、リース取引であれば、これまたリース取引についても、基準の変更等によりまして開示が強化されているところではございますけれども、私どもの調査の過程では、ややもう少し広目のお話を伺うことにしております。と申しますのは、将来的に定期的に発生するキャッシュアウトという面においては、実は長期借入金と何ら変わりない。従って財務リスクとして存在し得る問題であります。
 それから、偶発債務の認識でございますが、この点についても、いろいろな会社、契約についての開示強化という方向性は出されているわけでございますが、例えば子会社に対してキープウェル契約を結んだ上でデリバティブ取引を子会社がやっていた場合、これをどのような形で偶発債務と認識するのかという問題等、やはり金融の複雑化によって、チェックしなければならない項目というのは極めて多岐にわたるようになってきているというふうに考えております。現実に私どもが調査の過程で、デリバティブ取引についてキープウェル契約が入っているのか入っていないのかということを、1回目の調査でお伺いしたときには「それはありません」というお答えをいただいても、2回目にもう一度確認におじゃまをいたしますと、「実はありました」というお答えが返ってくると。このことは、会社さんが一つは認識されておられるのかどうかということ自体、実は問題がございまして、デリバティブ取引の契約書というのは、非常に分厚いものが英文で書かれているということでございまして、そこまで果たして会社あるいは公認会計士自体もチェックをかけられるものなのかどうかという問題は確かにあると思っております。  
 ただ、デリバティブ取引の場合には、多くの場合、失敗の理由といたしましては、内部統制が不十分であったというお話を伺っております。それから、特に子会社の問題でございますが、これに関しましても、たまたま大きな損失の発生した子会社についてお話を伺っている際に、実は前の年度のその子会社についての監査が不十分であったというようなお話を伺うことがございます。こういった点に関しましては、一つは、やはり内部統制に問題があるのではないかと。最近のダイヤモンド・ハーバード・ビジネスにもございましたけれども、やはり企業のリストラに伴って、経理部門あるいは財務部門についての人の配置というのが非常に薄くなってきているという状況がございまして、その中で多様なリスクをどこまで把握できるのかというのは、これはなかなか難しい問題ではないかと思いますし、また、そうした中で内部統制を厳正にかける組織というのが果たして作れるのかという問題も存在していると考えております。
 あと、やや違う問題になってまいりますが、例えば連結決算の開示にいたしましても、単独決算と連結決算とでは、実は商品別あるいは部門別のセグメントが異なっていて連・単の比較ができないといったようなこともございますし、あるいは関係会社というものを、どこまでを関係会社と認識するのかといったような問題。あるいは、アメリカでは公認会計士に対する訴訟として多く見られております個人による不正経理のチェック。この問題は、日本の場合には、やや公認会計士の責任範囲という捉え方はないのではないかなと。過去の高裁判決等を見ましても、そういった認識を持っておるんですけれども、これも実は過年度のチェック等の内部統制の問題が残っているのではないかというふうに考えております。
 見方を変えますと、イレギュラーな特別損失ないしは倒産に至るバランスシートの齟齬の多くは、一つは、外部監査と内部監査の責任範囲、あるいは作業上の限界の隙間の部分で起こっているのではないかというふうに考えております。ですから、米国流の内部監査と外部監査の連携性を高めるという手法が、独立性の問題からいったらどうなのかという問題は確かに残るかとは思いますが、現行の公認会計士あるいは会社の体制ということを考えますと、やはりそうした効率化、あるいは監査強化という方向性をとらざるを得ないのではないだろうかというふうに考えております。
 あと、若干将来のリスクについての問題でございますが、私どもが一番重視するのは将来のリスクということになるわけですけれども、日本の特に連結決算についての開示の弱さということは、これは重要な問題ではないかというふうに考えております。例えば米国の企業であれば、連結ベースで今後1年後、2年後、3年後のそれぞれの年限別にどういった負債の返済が生じるのか。あるいは、売掛債権は1年後、2年後、3年後それぞれの年限に幾ら返ってくるのかといったような詳細な開示がございます。実は私どもが格付先の日本の会社の海外法人について、その国における連結決算をいただきますと、概ねそういった項目が既に入っております。従って、その国における連結決算の中ではそういったものが把握されておりながら、なぜ日本ではそうしたものが開示されないのか。格付判断上は、やはりキャッシュアウトというのは非常に重要な問題でございますので、こうした点が改善されますと、私どもとしても非常に喜ばしいことではないかというふうに考えております。
 以上、ややまとまりのないお話になりましたけれども、公認会計士の責任範囲論というのは当然ございますけれども、やはりディスクロージャー、特にこういう直接金融の役割が非常に高い時代になってまいりますと、会計監査について社会的に期待される役割というのは非常に大きいものであると思いますし、あるいは昨今の金融市場の混乱の一部には、そうしたいわば会計についての不信感を逆手にとって、風説を流布し、それに対して貸株借株等を使って売りあびせをかけるといったような動きも見られますので、やはり喫緊の課題ではないのかなというふうに考えております。
 やや長くなりましたが、以上でございます。ありがとうございました。

○三原座長 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、会計士の監査を受ける産業界の立場から参考人として御出席をいただいております信越化学工業の金児昭常務取締役を御紹介し、御意見を伺いたいと存じます。

○金児参考人 金児昭でございます。どうぞよろしくお願いします。
 今日は、お手元にある資料では、JICPAジャーナルの2月号に私が書きましたものと、日本経済新聞の「大機小機」に1年ほど連載しました中の一つをお手元に差し上げてございますが、私は結局、会計士の先生も人間であることを知ることが大切だと思います。それから、もっと実務の勉強が必要だと感じております。それからもう一つ、倫理観というとちょっと大げさですが、使命感が必要ではないかというふうに、この三つ、人であるという点と、実務の勉強不足、それから使命感が必要だという3点を軸足にしまして、ふだん感じていることをお話ししたいと思います。
 公認会計士の先生方を「会計士」と、今日は略して呼ばせていただきたいんですが、まず、会計士の2次試験も、3次試験も、筆記試験の段階から難し過ぎると常々感じております。それで学ぶことが多くなり、ますます深くなりますと、勉強する時間は限られておりますし、その中で計画的であるにせよ勉強していくのは大変だというふうに感じております。企業会計原則も昔のものですし、原価計算基準も勉強するといっても、昭和37年から全然変わっていないというような中で、一体何を勉強して会計士の先生になっていったらいいかということも、戸惑っておられるのではないかと思います。
 実は、私は、今から何十年も前なんですが、会社に入ってから、20代の時に公認会計士の第2次試験を3回受けたんですが、3回とも落ちたんです。自分でそれは歯が立たなくて落ちたので、そのままサラリーマンとして今に至っているんですけれども、実力がなかったと思っております。若い時代の話なんですけれども、仮に今受けてもきっと落ちると思います。やはり、今のこの年になって考えても、少し難し過ぎると思います。
 それで、米国のCPAの試験の方も少し見てみますと、英語力は必要ですが、内容的に易しいんです。そうすると、そちらの方が易しくて日本は難しいとなります。一体、なるべく難しいことをやっていく中で、人間が果たして育っていくのでしょうかと常々感じております。それから、商法や監査の方の勉強も必要ですので、日本で246万社あって、簡単に言って1万社は大きな会社、証券取引法の方の関係だと考えますと、あとの245万社は、大中小あるでしょうけれども、証券取引法の関係ではないわけです。それで私は、商法を二つに分けるべきだと常々主張していますが、このような問題点をかかえた商法などを、どのように勉強していいか分からないというふうに私は感じております。
 実は、JICPAジャーナルの2月号に、大きな項目とすれば、まず、企業会計の変革で今感じていることと、それから2番目は、外国人投資家が企業を見る目(私は今まで20年間に延べで4,300人ほどの外国人投資家及びアナリスト(国内・海外)の方にお会いしております)、3番目は、本当の実務力、高潔な使命感をもって取り組むということがいかに大事かということ、これらを述べて会計士を励ましたかったんです。
 それにしても、これは会計士に言うだけではなくて、我々企業の人間も、金融機関の方々も、それから学者の方々も、メディアの方々も――メディアというのは、新聞記者の方とか雑誌の方とかいろいろございますけれども――、それからアナリストの方々も、お役人の方々も、みんなやっぱり今は企業実務の勉強不足だと一旦は感じていただいた方がいいと思います。どんどん企業実務が先行してしまいまして、後から追いかけて理論を作っていくという状態では、やはり日本の将来は危ういというふうに、私は個人的に考えております。
 グローバル企業の中では、制度会計と管理会計との区分は意識されなくなっています。そして、管理会計の実務が分からなければ制度会計の監査はできません。現に、例えば持株会社とかカンパニー制とか事業部制とか、そういうことがいろいろ言われておりますが、それは制度会計のセグメント情報に必ずつながりますから、管理会計が分かれば制度会計のよい監査ができます。
 それから、二つ目には売上高で、先ほど申しました別紙にありますように、例えば標準原価計算制度というのにつきまして、私どもは、標準売上高をやっております。例えば輸出ですが、前月の世界の市場の一番円高の数値で当月の売上高を、1ドル例えば110円だとすれば、その数値で会社内部での売上を計上して、そして会社のリスクを排除するというようなことをやっております。会計士の試験の中にも、税理士の試験の中にも、アナリストの試験の中にも、売上がないんですね。ところが会社にとってみれば売上が一番大事で、会社にお金が入ってくるところを一番大事にして監査しなければならないはずのものが、それが学問といいますか公認会計士試験の試験科目の中に入れるべきだと私は主張したのです。そうすれば国際的な営業の内容の理解ができるようになると思います。
 それから、3番目としますと、M&Aですね。これの実務力が会計士に非常に不足しております。デューディリジェンスとか、アフターM&Aのアドバイス力が極めて小さい。これは資格を持っているから力があるわけじゃないんですね。
 それから、4番目に、移転価格税制は管理会計の知識が必須ですが、そのとき、必要な日米欧の税務申告書を自分で初めから書いて終わりまで作成ができるという力が会計士に要求されます。そういう税務についても、もう公認会計士の2次試験あたりからそういうものが入っていいのではないかと思っております。
 5番目としまして、例えば税効果会計など多くの実務指針、そういうものが出ますね。出ても、会社の人間の方がよっぽど早く勉強して、それでそれを会計士の方が追いついていくという状況が多くの会社でみられています。勉強会も、私はいろいろな勉強会で、例えば新聞社とか、それから監査法人とか、研究所とか、そういうところへ行ってお話ししますけれども、やはり皆さんいっぱい勉強することがあり過ぎて、どれを勉強していいか分からないというのが実態でございます。これをどういうふうに効率的に勉強していくかということが大事だと思います。
 6番目は、世界各国の設備投資、メーカーであればフィジビリティ・スタディとか、友好的(フレンドリー)や敵対的(ホスタイル)両方のM&Aの実務で、株価の値段を設定するというところまでは会計士の方々のお力を借りられます。その先、アフターM&Aという経営が待っているんですが、そういうときにアドバイスする力は、現代の日本では非常に力が不足しているというふうに感じております。
 普通、会社の仕事を10年ぐらいしてから会計士になればよいわけですけれども、ほとんどそういうことは不可能です。できれば、これは身勝手な考え方ですけれども、会社員を何年かやって会計士を受ける人には、少し易しい問題にしていただきたいなというふうに思っております。大切なことは、会計士の試験とかアナリストの試験とか、税理士とかいろいろありますけれども、試験に受かったからといって、本当の意味での経営指導がすぐできて、監査する能力とか、識見とか倫理観が備わっているとは言えないわけですね。そういうことをしっかりと認識する必要があると思います。
 私は、94年から97年まで筆記と口述の会計士の第3次試験委員をさせていただいたんですが、個人としてもいろいろと考えさせられることがございました。それから、現に今、金融監督庁の顧問をいたしておりますが、金融監督庁では、全国の財務局の幹部の方々に、研修で、連結の経営という観点からお話をする機会が多いんですが、やはり検査監督の方々の勉強は、今ものすごい勢いで熱心にやっておられます。それを会計士の先生も見習ってほしいというふうに思うくらいに一生懸命勉強されています。一方、お役人のこういう方々も、ぜひ企業の中へ来て勉強される機会を持たれることが望まれます。会計士の先生も同じです。また、第2次試験と第3次試験の間の3年間は、会計士補の方々は会社へ来て勉強されるというのが私はいいと思っております。聞くところによると、英国では――これは確かめていないのですが、当局の方が会社へ来て勉強し、会社の人が当局へ行って勉強するということで、移転価格税制を円満に乗り切っていくそうですが、わが国もそういうことが必要じゃないかと思います。
 私の会計士の先生の方への熱い希望は、お手元のJICPAジャーナルの2月号のこれをお読みいただければ御理解いただけると思いますが、最後に、3点、会計士の方に期待してお話を終わろうと思います。
 1番目。企業と国と世界が全く結び付いてきまして、マクロとミクロ経済が結び付きました。ですから、会計も経営も経済についても、みんながたくさん勉強しなきゃいけないので、そのために全体的に勉強不足になっています。2番目は、先ほど申しましたように、会計士補の方は、企業の経理部門ないしは営業でもよろしいですから3年は働いて、要するに、そこではまず若い方が働く。それからベテランの会計士の方も、一生の間に10年に1度ぐらいでいいですから、1回当たり3カ月間ぐらいずつ会社の経理部長付になって、実務を企業の中で勉強されたらよいと思うんです。外から批判するだけではなくて、実際の経営とか管理会計、制度会計をどういうふうに実際にやっているかということも勉強されたらよいと思います。ですから一生勉強ですね。企業の我々もそうですけれども。
 それから、3番目に、企業性悪説ではなくて、人間は誰でも弱い面があるという認識をした上で、企業性善説をベースにして、正義感のある勇気とか、細心の心の備わった実務を知った上での倫理観といいますか使命感ですね。倫理観をベースにした使命感を持つように会計士の方に努力していただきたいと私は思っております。
 以上、簡単でございますが、私の意見でございます。あと、お手元の資料を何かの機会にさっと一べつしていただければうれしゅうございます。ありがとうございました。


[続きがあります]

 

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