平成12年2月21日(月)

公認会計士審査会 第3回監査制度小委員会議事録

於 大蔵省第三特別会議室(本庁舎4階)

大蔵省金融企画局市場課 午後3時0分開会


 

○三原小委員長 それでは、予定の時間も参りましたので、ただいまから、「監査制度小委員会」の第3回会合を開催いたします。

本日は、岸田雅雄委員及びオブザーバーの泰田検事が御都合により欠席でございます。

本日は、前回会合時に御同意いただきましたとおり、当小委員会の検討事項を大きく三つのグループに分けました一つ目のテーマであります「適正・公正な監査の確保に向けて」ということにつきまして、事務局から簡単に概要及び考えられる論点について説明を行っていただき、その後に参考人の方々から御意見を伺い、意見交換を行いたいと思います。

それでは、最初に、「適正・公正な監査の確保に向けて」の各検討事項につきまして、事務局から簡単に概要及び考えられる論点について説明をお願いいたします。

 

○大藤大臣官房参事官 参事官の大藤でございます。それでは、私の方から、本日の検討事項でございます「適正・公正な監査の確保に向けて」という問題についての概要及び考えられる論点について、簡単に御説明申し上げます。

「資料1」を御覧いただきたいと存じます。「適正・公正な監査の確保に向けて」ということで、個別には五つの項目が考えられておりますが、それぞれにつきまして御説明させていただきます。

まず、第1が「単独・同一監査人の継続的監査に係る問題について」でございます。

まず、制度の概要でございますが、単独の監査人により監査を実施することは、特に制限されていないところでございます。

ただ、同一の監査人による継続的な監査の実施に関しましては、日本公認会計士協会監査基準委員会報告書第12号「監査の品質管理」におきまして、監査法人は、関与社員の交替ルールを策定することとされておりまして、例示によれば「最長の期間は、例えば概ね10年」というようなことにされているところでございます。

監査人自体の継続的な監査の実施には、特に制限がないところでございます。

考えられる論点でございますが、まず、第1点といたしましては、一定規模以上の企業に係る監査については、個人の公認会計士が単独で行うことを禁止し、これを関係法令に規定すべきとの考えがあるがどうかということでございます。禁止するというところまではいかないまでも、いわゆる企業の規模によって監査できる公認会計士ないし監査法人について一定の制限を加えてはどうかという考え方でございます。

それから、第2点でございますが、監査法人における関与社員のローテーションは、アメリカのSEC基準と同様に、例えば最長7年とし、これを法令あるいは何らかの形で義務付けていくべきではないかというような考えがあるがどうか。

それから、3点目でございますが、監査人自体あるいは監査法人自体の交替についてもルールを策定すべきとの考えがあるがどうかということでございます。

これに関する資料といたしましては、4ページに監査基準委員会報告書第12号を添付させていただいているところでございます。

それから、2番目の項目でございますが、「監査法人の内部審査及び外部審査体制のあり方」ということでございます。

制度の概要でございますが、監査法人の内部審査体制については、日本公認会計士協会監査基準委員会報告書第12号「監査の品質管理」におきまして、「監査事務所がどのような審査体制を確立・維持するかは、監査事務所の規模、監査対象会社数等を総合的に勘案して、それぞれの監査事務所が決定する。」ということになっております。

それから、監査法人の外部審査体制につきましては、日本公認会計士協会によりまして、「品質管理レビュー制度」が実施されているところでございます。

この項目につきましての考えられる論点でございますが、監査法人の内部審査体制については、一定規模以上の監査法人に対して独立・専担者による審査部門の設置等を義務付けることなどにより、監査法人の審査体制の充実・強化を図るべきとの考えがあるがどうか。

それから、監査法人の外部審査体制につきましては、日本公認会計士協会によりまして実施されております「品質管理レビュー」の一層の充実・強化を図るとともに、このレビュー結果につきまして対外的な公表をすべきとの考えがあるがどうかということでございます。

それから、3点目といたしましては、アメリカにおきましては、監査法人同士、監査事務所間によるレビューというものがピア・レビューということで行われているわけでございますけれども、日本公認会計士協会による「品質管理レビュー制度」に代えて「ピア・レビュー制度(事務所間レビュー)」の導入を検討すべきとの考えがあるがどうかということでございます。

これに関する資料といたしまして、5ページに品質管理レビューのいわゆる仕組みを整理した資料を添付しているところでございます。

それから、3番目の項目でございますが、「監査報告書の署名のあり方」ということでございます。

制度でございますが、現行公認会計士法は、監査証明は監査法人が行うが、その証明に係る業務を執行した社員の責任を責任を明らかにするために、当該社員は、証明書にその資格を表示して自署し、かつ自己の印を押印するということにされているところでございます。

考えられる論点でございますが、監査法人の監査証明に係る責任を明確にするため、監査法人名のみの署名、押印にすべきとの考えがあるがどうかということでございます。アメリカ等は監査法人名のみの署名ということになっておりますので、そこら辺との関係でどう考えていくのかということでございます。

これにつきましては資料といたしましては、6ページに監査報告書のひな型を添付しているところでございます。

それから、4番目の項目でございますが、「公認会計士・監査法人の処分・責任のあり方」ということでございます。

制度の概要でございますが、公認会計士又は監査法人が、故意又は過失によりまして、重大な虚偽等のある財務書類を重大な虚偽等のないものとして証明した場合には、公認会計士法、証券取引法に基づきまして、行政、民事、刑事上の責任を問われることになっております。このうち、行政上の責任につきましては、大蔵大臣が、公認会計士法に基づいて懲戒処分をすることができるということになっているわけでございます。

この辺の責任の相互関係につきましては、資料の7ページに整理しているところでございます。                                それに加えまして、検討事項の概要の2)でございますが、日本公認会計士協会は、会員に法令、会則等の違反事実が認められた場合には、同協会の会則等に基づき会員に対する処分を行うことができるということになっているところでございます。

考えられる論点でございますが、まず、商法特例法との関係も含め、現行公認会計士法の処分形態の多様化等を検討すべきとの考えがあるがどうかということでございます。

資料の8ページを御覧いただきますと、いわゆる商法監査特例法という法律でございますが、この第4条に(会計監査人の資格)という項目がございます。その2項で、「次に掲げる者は、会計監査人となることができない。」ということにされているところでございます。その3号で、「業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者」、それから、第4号で、「監査法人でその社員のうちに前号に掲げる者があるもの又はその社員の半数以上が第2号に掲げる者であるもの」ということになっておりまして、大蔵大臣が、公認会計士法に基づきまして監査法人に対する業務停止等の処分をいたしますと、反射的に商法監査特例法によりまして、その監査法人は、いわゆる会計監査人となる資格を喪失するという効果が生じることになっております。ですから、いわゆる公認会計士の処分あるいは責任を考える際には、公認会計士法とともに商法監査特例法も一体として考えていく必要があるわけでございます。

それから、第2点でございますが、日本公認会計士協会における綱紀案件の調査審議等における一層の透明性等を確保すべきとの考えがあるがどうかということでございます。

それから、第5番目の項目でございますが、「適正な監査日数等の確保と監査報酬のあり方」ということでございます。

制度の概要等でございますが、まず、欧米諸国における監査実施時間及び監査報酬と比較いたしまして、日本の監査実施時間及び監査報酬は少ないとの指摘があるわけでございます。

それから、現行公認会計士法は、日本公認会計士協会の会則に「会員の受ける報酬に関する標準を示す規定」を会則記載事項としているところでございまして、日本公認会計士協会は、証券取引法監査を含む各種監査の標準報酬を定めているところでございます。

考えられる論点でございますが、まず第1に、監査対象企業の規模別に監査実施時間の最低時間数を定めるなど、適正な監査日数を確保するための措置を検討すべきとの考えがあるがどうか。本来、監査法人、公認会計士と企業間で決められるものでございますので、どこまでこういう形の取扱いができるかは、要検討でございますが、いずれにしても、このようなことが考えられないかという問題提起でございます。

それから、第2点目といたしましては、監査報酬は、適正な監査日数と適正な費用の見積もりの関係において当事者間の協議で決定されるべきものと考えられ、また、公正有効な競争の確保等の観点から、現行標準報酬制度を廃止すべきとの考えがあるがどうかということでございます。

これにつきましては資料の10ページを御覧いただきますと、現在、行政改革推進本部の規制改革委員会で、いろいろな項目について検討が進められているところでございます。昨年12月14日の「規制改革についての第2次見解」というところで、「公正有効な競争の確保や合理性の観点から、報酬規定の在り方を見直す。」ということが指摘されているところでございまして、この中でいわゆる公認会計士につきましても標準報酬制度の取扱いが問題提起されているところでございます。

それから、3点目でございますが、いずれにしても、監査報酬や監査人に関する情報の開示をすることがこういう適正な監査日数の確保や監査報酬の推進という観点から、意味が大きいのではないかという問題提起でございます。

資料11ページに公認会計士協会でおまとめになっております「監査実施状況調査」委員限ということで、いわゆる監査時間数でありますとか、監査報酬の実態に関する資料を添付しているところでございます。

以上が本日のテーマでございます「適正・公正な監査の確保に向けて」ということで、考えられる論点を御紹介したわけでございますけれども、いずれにしても、レジェンド問題でも、会計基準とともに、監査のプラクティスの点が指摘されているところでございまして、かなり対外的にもアピールする形で監査の充実に向けての具体的なあり方というものを示していく必要があるのではないかというふうに事務局としては考えているところでございます。

本日の議論の参考といたしまして、検討事項の概要と考えられる論点を説明させていただきました。

以上でございます。

 

○三原小委員長 どうもありがとうございました。

それでは、次に、参考人の方から御意見を伺いたいと思います。初めに、経済界から参考人として御出席いただいておりますオリックス株式会社の牧 康一専務執行役員を御紹介申し上げます。

牧さんには、公認会計士の監査を受けておられる経済界の立場から御意見をお伺いしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

 

○牧参考人 牧でございます。よろしくお願いいたします。

初めに、当社の状況についてちょっと御説明をさせていただきます。

当社は日本の会計基準に従いまして財務諸表を作成しておりまして、これについては、朝日監査法人の会計監査を受けております。と同時に、米国の会計基準による連結財務諸表を作成しておりまして、もう30年以上にわたって監査を受けておりますが、これは米国のアーサーアンダーセン・アンド・カンパニー、こういう監査人の名前で監査報告書をいただいております。先ほどのお話しにありましたとおり、私ども会計監査を受けておる立場でお話しさせていただきたいと思いますが、ただいま会計監査に係るいろんな論点についてお話がありましたけれども、私の経験から、重要と思われる項目についてだけとりあえずお話しさせていただきたいと思います。

特に米国の会計基準による連結財務諸表の点では、これは日本経済の変革とともに、当社も会計の問題に際して大変厳しい局面を何回も経験しております。会計基準が大変厳しいということ。開示項目が非常にたくさんございまして、それに開示をする必要があるということで、正直申しまして、大変に困難な局面を経験しております。経営として経験してまいりました。

ただ、会計の問題を基本的に経営の問題ということで対処せざるを得ないということでやってまいりました。特にバブルの弾けましたこの10年間につきましては、米国の会計基準のルールが一段と我々にとっては厳しいルールということ。その開示も非常にたくさんの項目の開示を迫られているということで、経営としては難問に直面を何回もしたというのが実情でございます。

当社は海外で事業展開をしておりまして、海外の所要資金を調達するという経営上の大きい問題がありまして、この資金調達のために財務諸表を米国の基準で作成して、格付機関に格付をしていただく前提としてこれを用意するということをやらざるを得なかったということが一番の理由でございます。

それから、国内におきましても、これまで金融機関からの間接調達で資金を調達してまいりましたけれども、間接調達では良質な資金の調達が非常に難しいということで、コマーシャル・ペーパーの発行、社債の発行等の直接調達に切り替えました。そういうことで、これも格付機関から一般に世界的にも通用するという名目で、米国会計基準の財務諸表とその開示項目を必要とされまして、そういうことでこれをやってまいりました。

ただ、これは大変会計の問題が厳しく、私どもの経験では、やはり企業経営のトップが会計の基本について一応理解をして、これを受け入れる。開示項目についてもこれを受け入れるという理解がないと、なかなかできないということで、トップの理解が必要ではないかというように思います。

皆さんの方がもう既にいろいろ御検討いただいて、御承知のとおりでございますけれども、やはり米国の会計基準が広い範囲にわたって具体的に細かく規定をしております。もちろん日本でもいろいろルールが出てきておりますけれども、中身が極めて具体的で細かく規定しているというのが特徴でございます。

それから、開示項目が非常に多いということ。特に経営の弱点といいますか、どういうリスクを持っているかと、そのリスクについて開示することを非常に強く迫っております。これは経営としては、全部リスクを開示するということで一応責任は逃れるわけですけれども、そういうものを開示せざるを得ないということについて非常に困惑するという局面が何回もございました。

しかし、私が申し上げたいのは、基本的に会計の問題を経営の問題としてやっていかざるを得ないんではないかということで、以下、私は、ここに非常にたくさんの論点を出していただいておりますが、私どもにとって実際監査を受ける立場で一番重要と思われることを書き出させていただいたわけでございます。

それでは、まず最初に、「開示及び監査の内容の充実」というこのテーマに従って出させていただきますと、一つは、会計基準の整備が重要。

これは我が国においても過去10年遡りましても、いろんな会計の問題について基準をもう既に定めております。特に最近、国際会計基準の流れに従って、項目は非常にたくさん、しかも精細に進められております。産業界が全部これを理解するという、細かい点を別にしましても、これを徹底しませんと、会計監査がスムーズに行われないというように思います。整備が重要。そしてこれを周知徹底するということでないと、会計監査もスムーズに行われないんではないかというように思います。

それから、もう一つ、開示でございます。開示項目が米国の場合には非常にたくさんあるというように申し上げましたけれども、特にその中では、単なる会計の問題以外に、企業経営に関する将来リスクを開示するということがございまして、これが非常に重要ではないか。

当社は、下の方に例示としてごく簡単なものを出させていただいていますが、日本の会計基準による連結財務諸表が入っております有価証券報告書を提出しておりますが、それと米国の会計の開示項目を非常に簡単に例示しております。

私がここで申し上げたいのは、企業情報という点では、双方いろいろなことを書いておりますが、さて、会社の経営状態についてどうかというときに、日本の場合には通常、営業の状況とかいうような形で非常に一般的な規定になっておりますが、米国の場合には、一番最初にリスク情報、Risk Factorsというのがございまして、これが当社の場合ですけれども、11項目出されております。どういう項目が出ているかと申しますと、これは各企業によって違ってくると思いますが、私どもの場合には基本的にリース取引、それから、貸付取引ということで、与信業務をやっているわけなので、与信リスクという問題が基本的にあると思います。それが一つですね。

それから、もう一つは、資金を調達しておりますので金利のリスク。これがどういうリスクがあるのか。それから、海外取引をやっていますので、為替のリスクというようなことが考えられるわけです。これは当然だと思っておりましたところ、当社の場合については、当社が不動産関連の会社、不動産関連に投資しているもののポートフォリオが幾らあるかということ。それの損失リスクが幾らあるか。それはオリックス全体のポートフォリオの中でどのくらいの割合を占めているかということを出しなさいと、こういうことなんですね。会社としてはそういうことについては十分な対応をしておりますということを申し上げているんですが、こういうものをリスクファクターとして開示することを要請されました。

それから、海外取引では、アジアに投資しておりまして、アジアに投資しておりますポートフォリオの金額が幾らあるか。それは全体のポートフォリオのうち何%になっているかと、こういうことを開示するように迫られました。

それから、貸倒引当金等については、一定の基準で引当金を設定しているわけですが、そういう引当金が不足する可能性のリスクについて細々と書くというようなことで、この項目が当社の場合に11項目にわたっております。これは多分、日本の企業に対する会計とつながって、経営情報としては、こういうリスクの情報を開示することが迫られているんじゃないかということを米国の会計基準による情報の開示で我々痛感したところでございます。

それから、もう一つ、「経営業績」というふうに書きましたけれども、これは英語では、皆さん御存知のようにManagement's Discussion and Analysis of Operationsということで、これが実に詳細に各セグメント別に記載するようになっています。どの事業が収益を上げているか、どの部門が収益を上げていないか、どの部門が残念ながら赤字になっているということを開示させられるということです。

これは日本の財務諸表のセグメント情報でも、当然取引種類別に、どこの部門がどうだということは開示しているので、これは同じだと思うんですが、その項目が実に細かく要求されて、私どもはもっと大きい部門で概括的にお話をして、そういう記載を考えておりましたけれども、それでは十分ではない、ディスクローズとしては十分でないということで、非常に細かい業績の説明を要求されております。

特に我々の場合は延滞債権が取引の種類ごとに、どの部門で幾ら発生しているんだということの記載を要求されております。要するにこういう会計とは直接的にはつながらないんですが、全体としては、経営としていろんな問題について開示を要求されている。

それから、会計方針と脚注でございますけれども、これも一応会計方針については、我が国の会計でも同様に基本的な項目は全部網羅されております。しかし、米国の場合には、重要な会計方針について、各項目ごとに記載するようになっておりまして、当社の場合は重要な会計方針についてということで、23項目ございます。23項目重要な会計方針であるのに加えて、脚注項目がこの重要な会計方針を加えて、24項目書くようになっております。

その内容は、当社の年次報告書のページで申しますと、39ページというのがありますが、この39ページ以下に、連結財務諸表の注記がございまして、以下、重要な会計方針と、これが私先ほど申し上げた、これだけで23項目ありまして、その後ページで申しますと、42ページに注記の2番目が、買収というのがございまして、以下、セグメント情報までございまして、これは最後のページが57ページ、セグメント情報が入っております。

そういうことで、日本の会計方針、それから、注記も基本的な項目が入っておりますけれども、米国の場合が、より具体的で、実際どこで、どういう会計処理をしている、どういう問題が出るだろうかということがここからつかめるような細かい規定を要求されております。

セグメント情報について一つ申しますと、日本の場合には基本的に、経営情報として取引種類別にどうかということがありますけれども。それと、もう一つ、地域的にはどうか。つまり日本ではどういう状況になっていて、海外は、アメリカとかアジアとかヨーロッパとかでは、どういう状況になっているかと、こういう記載になっておりますが、当社が米国の会計基準で要求されたセグメントは、実際の経営上使っております経営管理用のセグメントを開示しなさいということでございますので、私どもが社内でこれによってどの部門が収益を上げている、どの部門は収益が非常に少ない、どの部門は赤字であるというのが分かるような開示を出しておりまして、それが即、経営の方にはね返るように、そういう記載を要求されております。

私ここで当社のことをるる申し上げて大変恐縮なんですが、要するに投資家にとって、この会社がどういう状況になっているか、どういうリスクがあるかということを分からせないといけないんではないかということです。これが最初でございます。

それから、次のページ、2ページ目でございますが、監査法人において文書化された監査マニュアルの充実。

私どもは会計監査を受ける立場で、実際にどういう監査マニュアルを私どもの監査法人がお使いになっているかということは私どもは存じないわけです。ただ、毎年、若い公認会計士の先生をはじめ、いろんな方が替わっていらっしゃいます。いらっしゃいますが、監査が非常に能率的に同じようにどんどん進むということから、監査マニュアルが整備されているんではないかということを感じているわけでございます。そういうことで、やはり監査を適正に行うということから、マニュアルの充実ということがどうしても必要なのではないかという気がいたします。

それから、3番目に、監査法人の本部における審査体制の強化。

これにつきましては、論点整理のところで既に述べられておりますが、私ども米国の会計基準では30年近い監査を受けているんですが、これは日本の東京にありますアーサーアンダーセン事務所で監査を受けているんですが、米国の本部から、全然別の会計監査人がやってまいります。私どもにどういう監査をしましたか、どういう議論をしたかということについて調査をしたいということで、調査を受けております。そういうことで、監査法人の内部で内部監査といいますか、そういうのが行われているのではないかなというように思いました。そういうことで我々も、結局、大変厳しい局面に至らざるを得なかったというのは、監査が本部と一貫して行われているということかと思います。

それから、4番目に、監査人が監査以外に経営上の諸問題について意見を述べる。

実はこれは、私ども監査を受けまして、監査が終わる途中、いろんな過程で幾つかの問題の指摘がございます。会計以外のいろんな指摘がございます。具体的には、私どもの営業の体制のあり方について、こういう点が効率を落とす理由になっているんじゃないか。それがいろんな会計上の問題にも影響するのではないか。人員とか会社の組織体制に対しても意見を述べるということがございました。特に不採算部門あるいは投資のよくない部門については、会計監査人が意見を述べられる。これは経営改善提案書というような形で、監査報告書とは全然別のところでそういう経営改善提案書というのが別途経営陣の方に、こういう問題が発見されたと、ついてはこういう点について改善をされた方がいいと思うと、こういうのが出ております。

実はこれはもう大分前のお話でございまして、ごく最近は、どういう理由か、監査以外のことについて意見を述べるということは非常に少なくなってきております。それはどういう理由か、ちょっと存じません。私どもがそういう意味で問題が少なくなったわけではないと思いますけれども、そういう意見を述べるのが非常に少なくなってきているということでございます。

いろんな論点があります中で、とりあえず私ども当社が監査を受けておる立場で、これはと思う項目について、余り整理されておりませんが、申し上げたところでございます。

以上でございます。

 

○三原小委員長 どうもありがとうございました。

ちょっと確認させていただきたいのですが、最後の経営改善提案書を出すのが最近少なくなったということですが、前は件数といいますか、どの程度出ていたのかということと、それから、これは監査契約の中に入っているんでしょうか、それとも別の契約でやっておられるのか。折角の御説明なので、ちょっと確認させていただきます。

 

○牧参考人 監査契約書の中には、そういう規定はございません。改善について意見を述べるというようなことは全くございません。

それから、経営改善提案書というものは、オリックスについては、ここ10年ほどの間に、ほんのわずか意見をいただいた程度で、それ以前は、実は毎年、改善提案書というのをいただいておりました。10年前まではいただいておりましたけれども、ごく最近は、一部子会社等でいただくことがあったと思いますけれども、ここ10年ぐらいは、そういうのがほとんどなくなりました。

 

○三原小委員長 どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、学界より、明治学院大学の脇田良一教授が参考人として御出席いただいておりますので、御紹介申し上げます。

脇田教授は、現在、「監査基準の一層の充実」というテーマで御審議いただいております企業会計審議会第二部会の部会長でもいらっしゃいますので、その立場も踏まえまして、御意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○脇田参考人 脇田でございます。よろしくお願いいたします。

今御紹介いただきましたように、いろいろお手伝いをさせていただいていますので、今日は、1人の監査を勉強している者として述べさせていただきたいと思います。

早速でございますけれども、与えられた時間もございますので、私が日頃思っておりますところで、余り資料的に裏付けがなくて申し訳ないのですが、まとめてお話を申し上げたいと思います。

資料、項目だけで大変恐縮でございますけれども、一応事務局から参考資料としてお見せいただいたものに基づいて作ってきましたけれども、まず、「単独監査人もしくは同一監査人の継続的監査に係る問題について」ということで、今、こちらの事務局での問題整理を先ほど拝見しながら、いろいろまた考えておりましたけれども、まず第1に、この最初の単独の監査人の問題。

これは恐らくこのお考えでは、個人の公認会計士さんが監査を行うということについての問題だというように考えさせていただきますと、これは基本的には監査のいろいろな場合がございますから、小規模監査もあるでしょうし、あるいは監査のあり方で様態が違う、そういうものもあるかと思います。ですから、一概に単独の、つまり単独と申しますのは、恐らく個人の公認会計士さんが監査をなさることについてだと理解しておりますけれども、しかし、常識的に申せば、一定規模以上の企業について、現在の我が国の公認会計士監査で要求されている水準を保つためには、ある一定規模の監査チームの編成が必要でございますし、また、個人であるというよりは、共同監査もしくは監査法人による監査というように、いわゆる監査の質を高める必要がありますから、それは常識的にそういうことが申せるのだろうと思います。

しかし、一概に個人の公認会計士さんの監査を禁止する。現在、論点整理にございましたけれども、規定はないわけでありますけれども。しかし、今申しましたように、常識的に考えれば、ある一定規模以上の企業の監査、特に証券取引法等の法定監査については、そのような規制があってしかるべきだろうと思います。

ただ、個人の公認会計士さんの監査につきましても、先ほど申し上げましたように、公認会計士協会でもお作りになっている「監査の品質管理」にもございますように、ある一定の補助者によって支えられた監査であって、しかも、その場合に必要なことは、恐らくは被監査会社あるいはその他の企業体などがあるかと思いますが、そこからの独立性の問題だろうと思います。従って、その点については、むしろ、例えばその事務所の収入の中に占める監査報酬、そのクライアントからの監査報酬の比率等を加味した上での規制というものが考えられるのではないか、そのように思っております。

いずれにいたしましても、やはり個人の公認会計士の方々の監査については、今後、ある種の規制がなされるべきであろうというように思っております。

そして、第2番目でございますけれども、同一監査人の継続的監査に係る問題でございますけれども、ここについてすぐ思い出しますことは、これはやはり独立性の問題だろうと思います。御承知のように日本の監査基準、一般基準の1は、独立の立場を有する者ということを監査基準の一般基準の1に規定しております。2が精神的独立性の基準でございます。監査基準と申しますのは、監査人が監査を実施していく上での監査のあり方を規制していく、そういう基準だろうと思いますが、いろいろ御理解はあると思いますけれども、そのように解されるだろうと思います。

その場合に、例えば監査人が専門的能力、実務経験を有する、要するに適格性のある者でなければならないということは当然でございます。それから、2番目で、独立性を保持しなければいけない。第3番目で、正当な注意をもって監査を行わなければいけない。これがそれぞれの監査人のあり方、監査に臨む監査人のあり方を規定しているわけでございます。

その中で独立の立場というのが、我が国の監査基準の場合には、一般基準の1に載っているわけでございまして、適格性の基準の一つに入っているわけであります。つまり専門的能力と実務経験を有する者であって、かつ、独立の立場の者。監査をする、監査に臨む監査人の資格要件、適格な監査人の資格要件の一つとして位置づけられるような規定をしております。

しかし、これはどちらかと申しますと、一部には、精神的独立性の基準のところに入れるべきではないかという御意見もあるように思いますけれども。ただ、若干今申しましたように、その独立の立場といいますのは、精神的独立性、監査人として最も重要な職業基準である独立性を保持するための一つの要件であると思います。従って、むしろこれらはそういった監査人が監査を行っていく環境を整える条件でございますから、従って、またそれは概観的なものですから法律の中で、つまり公認会計士法とか、その他の省令等において、あるいは商法特例法等において決めて事ができているわけでありますけれども、そういうもので徹底をすべきだろうと思います。

そういう点で、同一監査人の継続的監査に係る問題についても、そういうこととの関わりで考えてみれば、より詳細な外見的独立性については、法律の方で手当てをすべきではないか。あるいは会計士協会の規律、その他の指針で示されるべきではないかというように思います。ですから、これはこう申すと何なんですけれども、一般基準の1に独立の立場というものが、どちらかというと非常に俗人的な規定の仕方でございますので、こういった環境的な要件になかなか及ばない、そういう解釈にならないということで、基準とこういう規制との関係は、これから考え直すべきではないかというように思っております。

いずれにいたしましても、結論として申せば、長期にわたって特定の監査人が特定の会社と長い関係が保たれるということは、やはり緊張関係を欠くということで、監査にそれなりの悪影響を及ぼす。独立性の点で悪影響を及ぼすだけでなくて、監査の実務の中にもある程度の今申しましたような、繰り返しになりますけれども、緊張関係が欠けてくるということもあるとすれば、そういった一定のルールに従った交替を明確にすべきではないかと思います。特に個人の公認会計士さん、あるいは共同監査の場合においては監査人の交替がございますし、監査法人の中であれば、まず関与する会計士さんの交替であり、また、でき得れば、極端に言えば、大きな面で監査法人の交替ということもあってよろしいのではないかというように思います。

そこで、この第1の問題につきましては、特に論点整理のところで申し上げましたように、個人の公認会計士さんが監査に関わるということについては、ある一定の水準を示すとともに、監査報酬との関わりなどを考慮して、規制を設けたらどうかというように思っております。

それから、第2番目の「監査法人の内部審査及び外部審査体制のあり方について」ということでございまして、これも論点整理できれいに整理がなされておりますので、ある意味では付け加えることはほとんどございませんし、もう既に議論がなされてまいりました。ただ、ちょっと考えてみますと、現行の公認会計士の監査について、審査と申しますか、チェックをするチャンスが幾つかあるわけでございます。

第1は、証券取引法における監査で、監査概要書の提出が求められております。監査証明書令第5条でございますし、その様式が整えられております。

また、商法特例法監査におきましては、商法特例法の第13条あるいは第14条で、要するに監査役が会計監査人の監査の方法とその結果を審査するという体制をとっております。そしてまた、これは私、たまたま監査役協会の「監査役と会計監査人との連携を保つための実務指針」などを拝見しますと、その中でその付録に、会計監査人の方が、まず、監査を始めるに当たって、監査役会に監査計画概要書を提出になる、そういうひな型が載っております。また、監査が終わりましてから、会計監査人が監査役に対して、その監査の方法と結果を説明するに当たって、監査実施説明書というものを用意なさっているということになっておりますし、そのひな型も載っております。そういった形で一つのチェックの機関が、監査役によるチェックの機関が制度としては存在しているわけであります。

そしてまた、今、論点整理等において出てまいりましたように、十分御説明がありましたし、この後、会計士協会からの御説明があると伺っておりますので述べませんけれども、要するにもう一つは、会計士協会における監査業務審査会による審査制度あるいはレビュー制度というものが設置されているわけでございまして、それぞれについて、また、今、牧参考人からの御説明の中にも米国の例をお引きになりましたけれども、そういった体制が存在しているわけでございます。

その点について、私は今むしろ会計士協会の業務審査あるいはレビュー制度について、あるいは各監査事務所における内部審査等については、もう既に述べられておりますので、むしろ私は今制度として存在する二つの制度。つまり監査概要書の提出を求めている。それから、監査役による審査があるという、この二つの制度については、やはり注目されるべきではないのか。その実効性を高めるということが必要なのではないかというように思います。

ただ、今日、商法の岸田委員がお見えになってないようなので、申し上げると一方的になるといけませんけれども、あるいは逆に言えばお話ししやすのかもしれませんが、そういった点で、日頃思っておりますのは、やはり私は、公認会計士といいますのは、要するに民間の自由職業人でございますから、そして、監査というある意味ではどちらかというと、本来はその意義が議論されなければならないにもかかわらず、企業にとっては忌避される、そういう業務でございます。従って、それを実効性を高めるには、やはり行政機関の後ろ盾というものが絶対に必要であるというように思っております。

その一つの例として、このことは非常に申し上げるのが荒っぽいかもしれませんけれども、例えば、商法特例法監査がある程度の水準を持っているのは、証券取引法監査が行われているからだろう。そして、同一の公認会計士の方々が、あるいは監査法人が監査を担当されて、それに対して大蔵省による審査あるいは監督といったようなものが働いているということ。あるいは公認会計士協会の指導が行われていることによって商法の水準が保たれて、つまり商法自体はそういった仕組みを持っておりませんから。そしてそれをもし何もそういった行政の介入がないとすれば、あるいはその他の監督機関の介入がないとすれば、私はその水準を保つことは難しいのだろうというように思います。そういう意味で、証券取引法における監査概要書の提出というのは、大きな意味を持っているというように思っております。

従って、その商法特例法監査における監査役の審査は、日本監査役協会でいろいろと監査役の方々が御研究になっておられるように伺っておりますけれども、ここは一応そういった期待を申し述べるだけに止めさせていただきます。そしてまた、今申し上げました監査役の監査役会に監査実施説明書をお求めになっているわけですが、これはほとんど監査概要書を模倣なさっているわけで、大体似通っております、内容的に。ただ監査報酬の記載がないというところが違うかと思いますが、そういった違いがございます。

ですから、ここでは私の期待は、証券取引法に基づく監査概要書に対しての記載でございます。この様式を拝見すると、もう少し監査の実施状況がより適切に把握できるように内容を改善されるべきではないか。

と申しますのは、例えば具体的に申しますと、監査手続につきまして、立会と確認についての記載を要求されているわけでございます。ただ、こういった状況は、我が国の公認会計士の監査制度が導入されてまいりまして、御承知のように昭和40年前後に大きな粉飾決算事件がございまして、そこにおいて立会とか確認というのが必ず実施されなければならない手続であるということが改めて、当時の言葉では「正規の監査手続」といったような言葉を使っておりましたし、「通常の監査手続」という言葉を使っておりましたけれども、そういったものとして監査の実施をクライアントにも理解していただく。会計士さんにも必ずやっていただくということで、恐らくそういうような様式ができたんだろうと思います。私もそれ以前の昭和20年代、30年代のそういったことに余りつまびらかでないのですけれども、恐らくそうだったんだろうと思います。これは古く遡れば、1930年代のあのマッケソン・ロビンス会社事件というアメリカの非常に有名な粉飾決算事件において、棚卸資産と売掛金の架空計上で、確認の実施、棚卸資産の棚卸の立会、これを実施していたら粉飾を発見できだろうと、そういった歴史的な事情から強調されて、恐らくなっているんだろうと思いますけれども、そしてまた、現在でも恐らく監査の中で、特にアメリカの監査をはじめとして、我が国の監査においても確認と立会は非常に重要な手続、監査実務であるんだろうと思います。

しかし、御承知のように平成3年に我が国の監査基準、準則等は、リスク・アプローチというものを頭に置いて、通常実施すべき監査手続という考え方を作り、そして、その多くを日本公認会計士協会の監査基準委員会報告等において、さらに規範を広げるという形で実務が展開しております。ですから、そういったものに見合った内容の監査概要書にこれを改められてしかるべきなのではないだろうか。

ただし、私が行政機関による、つまり大蔵省によるこういった審査が監査概要書の提出を求めていらっしゃるその位置づけを行政の立場でどうお考えになっているのかということは、全く理解しておりませんから、これは私の一方的な申し方でございますけれども、そういった点で考えられてよろしいのではないかということを一つ申し上げておきたいと思います。

他のレビュー制度あるいは業務審査制度につきましては、他に述べられておりますので、時間がございませんので省略させていただきます。

その次に、「監査報告書の署名について」ということでございますけれども、これについては、私、ここでは監査報告書署名だけでございましたけれども、ついでに三つ申し上げたいと思います。

一つは宛名でございまして、もう一つは日付でございまして、もう一つは署名ということで、まず宛名でございますけれども、これは現在の公認会計士のお書きになる宛名は、全て監査契約の相手方と申しますか、クラリファイの代表者でございます。これが非常に分かりやすいことだと思いますけれども、ですから、これをそういった法的な根拠と申しますか、あるいは形式的にそれがなじむんだとおっしゃられれば申し上げるまでもないんですけれども、しかし、監査報告書が働きかける人は誰かということを実質的に考えてみますと、これは具体的に言えば投資家であり、投資家という言葉が一般性があれば株主であり、そういった監査報告書利用者の人たちへの働きかけであります。この点は監査というのは難しいところがございまして、報酬をもらうのは会社でございますけれども、その働きかけると申しますか、メッセージを伝える相手というのはどちらかというと、監査を受けた会社というよりは、むしろその監査報告書を利用する、契約関係も何もない、そういう人たちであります。そういった点で宛名についても、これは考える余地があるのではないか。ただ、これは慣習でございますから、どこにも書いてないかと思いますが、宛名につきましては会計士協会で標準ひな型をお書きになるときの問題だろうと思います。

この点は監査役協会で、監査役会の監査報告書が宛名をお書きになってないのは、以前は代表取締役に対する宛名をお書きになっている会社が多かったんですけれども、監査役の立場ですと、代表取締役に対して報告するというのはおかしいということで、現在は協会のひな型には載っておりません。そういった意味で、やはり宛名も考えることが必要なのではないかというように思います。

それから、次は監査報告書の日付でございますけれども、これは監査証明省令では、文字通り作成の年月日になっております。しかし、この作成の年月日でよろしいのかどうか。監査人の責任ということから考えて、期日的に監査の期間が離れてしまっているとすれば、その辺について、これから責任問題がさらに大きくなってきたときに問題になるのではないか。現在、監査証明省令が作成の年月日となっておりますので、制度の問題としても、ただ慣習ということでは済まないわけでございますので、お考えいただく必要があるのではないかと思います。

それから、第3点目の署名でございますけれども、私は現在のように記載する、監査責任者である会計士の署名・押印があるのがよろしいのではないかというのが結論でございます。これはやはり監査の責任関係を明確にするということからいけば、こういったものがあるのが、現在の我が国の慣行というものは捨てがたいものがあると思います。ただ単に監査法人の名称だけでよろしいかどうかは、考え直したいと思います。

このことは、会計士協会の監査基準委員会報告書の第12号に、「監査の品質管理」で、こんな文章がございます。「監査業務の質的水準は究極的には、当該業務に従事する者の専門的能力及び実務経験等の職業専門家としての資質に依存する」という言葉がございまして、監査が法人という組織によって監査が行われたとしても、やはり実際に指揮され、指導されたチームを率いた監査責任者の資質に由来するものが大きいと思いますし、そういう点ではやはり個別性といいますか、監査人の方の名前が左右されるのは意味があることなのではないかというように思っております。

それから、第4番目でございますけれども、第4番目につきましては非常に大きな問題でございまして、先ほど申し上げましたように、処分・責任のあり方につきましては、まずは日本公認会計士協会の十分な指導・監督、そしてそれを受けて、大蔵省等の行政機関による審査あるいは処分の体制を徹底されるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。

ただ、もしできるならば、これまでは幸いにと申しますか、それほどの大きな例がなく、特に法定監査等においては訴訟等が行われていませんので、幸いなことだと思いますけれども、しかし、決して大蔵省は眠れるシシではないわけでございまして、実際に処分事例がかなりの数あるわけでございます。そういった処分について必ずしも明らかにされてない。これはいろいろな問題があるのでしょうけれども、今後検討されるべきなのではないか。この点は先ほど論点の中でも整理なさったところに指摘されていたことで、私も同感でございます。

ただ、一つ問題になりますのは、やはり商法の監査との関係でございまして、商法において、商法特例法という枠で同じ資格を持つ公認会計士又は監査法人が、会計監査人として監査を行い、しかもその監査の対象は全く同じでございます。その場合に、証券取引法と商法との処分、損害賠償責任等については一括されましても、こういった責任追及の体制が必ずしも一体化されてないのではないか、整合性をもって整備されていないのではないかというふうに思います。

例えば、一つの例でございますけれども、商法監査で、現在起きていないと思いますけれども、処分は確かに監査として適切ではないものであったとしても、結局、株主総会においてそれが通過し、そして、例えば決算の承認の無効の訴えも起きなかったというようなことで終わってしまうこともあるわけでありますし、それが実際に事例があるかどうか、そういう企業についてのデータがございませんし、触れるのも問題かと思いますけれども、そういった証取法監査と商法監査と水準が違うのか、責任追及の体制の水準が違うのかといったような整合性のないことが起きてくるのではないか。そういう点で、もし会計士の、あるいは監査法人の責任を明らかにするということを徹底していくのであれば、そういったところでの整合性を検討される必要があるというふうに思います。

それから、第5番目の「適正な監査日数等の確保と監査報酬のあり方について」でございますけれども、これについては先ほど申し上げました、例えば監査役による審査において、どういう監査をしたのか、何日行ったのか、どんな手続をとったのかと。監査報酬については、なぜか、私の手元にありました資料では、監査役に会計監査人が提出する説明書の中には記載がございません。現在あるのかどうか、私一番新しいのを持っておりませんので分かりませんけれども、監査概要書の方には報酬がちゃんと書いてあるわけであります。そして監査の日数等も書いてあるわけでございますので、こういった資料が、今までも実際の公認会計士監査はこういう状態だということが把握されてきたはずでございます。とすれば、一体どれだけの監査をすれば十分な監査であるのか。これもデータ的になかなか作り得るものではないのではないかと思います。このことは私ども非常にいらいらするわけでございまして、充実した監査のあるべき姿をイメージすることが恐らく不可能なわけであります。その不可能を求めておりますから、非常に精神的にいらいらしてしまうわけでございます。

この点については、例えば標準監査報酬制度とかいうのがございますけれども、先ほど申し上げましたように、現在は監査人が監査業務を構築するのは、あくまで通常実施すべき監査手続として、自らの注意義務に従い、監査人の判断でそれぞれに構築なさっているわけであります。そういう意味で、標準報酬が再検討されているかどうか、この点もよく分かりませんけれども、やはり見直しがなされるべきでございましょうし、そういった制度を使って、全てが監査人の職業判断。先ほどちょっと牧参考人からも御指摘ありましたマニュアルの問題ですけれども、一定のマニュアルに基づいて、そのマニュアル自体が手続ではございませんけれども、それに基づいて各クライアントについて、それぞれの監査責任者が通常実施すべき監査手続を構築なさっていく。それであるがために、この審査というのは非常に重要になってくるわけでございまして、やはり確保のあり方というのは審査制度の充実をもってしかできないわけで、データ的に、計量的に何日ということで機械的には済まない。あるいは監査報酬として幾らということが決まるものではないのではないかということでございまして、むしろ審査体制の拡充等の関わりで、もちろんその中で日数や監査報酬が一つのチェックポイントになるであろう。重要な指標にはなるであろうということは申し上げられるのだろうと思います。

大体時間が尽きてまいりましたけれども、最後に申し上げておきたいことは、背景についてということなんですけれども、これはかなり冗長的な問題で恐縮ですけれども、第1は、私、30冊近い国語の辞書を調べましたところ、公認会計士がちゃんと定義されている辞書は余りありませんでした。これはどうしてかと思いまして、「ぜいりし」と引きますと税理士は出るんですが、公認会計士は必ず「こうにん」と引かないと出ないんです。その中の一つのところに線が引っ張ってありまして、「会計士」なんであります。それはそれで構わないんですけれども、しかし、その説明も必ずしも経理さんとの区別がつかない説明であったり、いろいろあるわけで、これは冗長的な御説明なんですが、何を申し上げたいかといいますと、今こういうときになっても、日本社会において公認会計士を正しく理解されているということは、まだまだだろうと思うんです。

そしてしかも、今度いろいろな事件が起きてきますと、何か悪を挫く正義の味方みたいな、そういう期待を全部与えてしまったというようなことでございまして、こうなりますと、つまり摘発というような、これは司法当局あるいは警察当局といったようなものとの類似性と申しますか、違いというものが際立たないわけでありまして、大変残念なことになっているのではないか。つまりあくまでも会計士は、職務としては、企業が発する情報の信頼性というものを確かめて、つまり正しいということが前提だろうと思いまして、そういった会計士の機能がもうちょっと制度的に明確にされてしかるべきではないかと思います。

その点で、もう一つそれに絡んで申し上げておきたいのは、このところ、金融大改革が行われてまいりましたし、そこでは市場の透明性、いろいろな面で、何も金融だけではなくて、地方自治体のものから全て含めてでございますけれども、あらゆる世界で、だんだん日本の社会が透明性を高めてくる。その中で公認会計士の役割がそういう透明性と申しますか、発信される情報に対する信頼性を付与するというサービスを提出しているんだと、前向きに保証していくという業務を果たしているんだということを、もう少し制度として何らかの形で会計士協会あるいは大蔵省の立場での確立といいますか、何らかの措置が必要だというように思います。

と同時に、もう一つ申し上げたかったのは、その結果、会計士の業務が非常に広くなってまいりました。現在、公認会計士法におきますと、業務は、1項業務は、監査又は証明という業務になっておりますが、それで包括しておりますけれども、現在いろいろな監査の場があって、先ほど御紹介いたしましたが、思いがけずも、第二部会で中間監査基準の設定という作業をさせていただきましたが、その中で、いわゆる決算監査を中心とする証券取引の本来の財務諸表監査との関わりで、この間は作ったわけであります。つまり監査の中で中間財務諸表というものについての監査を位置づけてまいりました。ある種の保証水準が手続的に区別がつくような、そういう工夫をして、ようやく位置づけたわけでございますけれども、そういった範囲で、これからもう少しいろいろな会計士さんの保証業務と申しますか、証明業務と申しますか、そういったものについての範囲が広がって、需要が増えてきているわけですから、そこにおける制度的な検討も、これは第二部会の問題、「監査とは」という問題かもしれませんけれども、制度的にも公認会計士法との関わりで御検討いただければと思います。

以上でございます。

 

○三原小委員長 どうもありがとうございました。

参考人として御出席賜りましたお二方には、大変御多忙中のところ貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。

ただいまの御意見に関しまして御質問等をお伺いしたいと存じますが、その前に、日本公認会計士協会においては協会内に専門のプロジェクトチームを設置して、当小委員会の検討事項に関しましても検討を行っておられると伺っておりますので、「適正・公正な監査の確保に向けて」というテーマに属する項目につきまして、まずは公認会計士協会の御意見をお伺いしたいと存じます。

日本公認会計士協会の常務理事でもいらっしゃる富山委員からお願いいたしたいと思います。

 

○富山委員 富山でございます。

会計士協会としましては、公認会計士制度の改革がそろそろ始まるだろうという予測の下に、去年からプロジェクトチームを作りまして、具体的に検討を始めております。ここにお出ししました「資料4」は、そこのプロジェクトチームである程度検討して作成した文書でございまして、それなりに協会としての意見をまとめたもので、理事会等を通っておりませんので、まだ最終段階でありませんが、この程度の改革は必要であるという認識を示す文書でございます。

まず、1)の「単独・同一監査人の継続的監査に係る問題について」というテーマでございますが、この問題につきましては、単独の監査人による監査や、同一監査人が同一の会社等の監査に継続的に関与する事態は極力防止する必要があるというような認識でおります。

しかし、一方では、業務の自由化を進めるといいますか、規制を緩和するという観点からは、こういう事態を一方的に規制することはできないだろうということで、現在会計士協会で考えていますのは、今年の7月の総会で改正を予定している倫理規則でその扱いを定める予定であります。

その中で、このテーマについては、監査業務の主要な担当者が、長期間継続して同一の関与先の監査業務に従事している場合には、協会の審査を受けて自らの独立性を保証してもらうように努めるということを要求しようと考えております。また、一定規模以上の企業等の監査を単独で監査している場合には、独立性保持の視点からできるだけ共同で組織的監査を行うように努めるなどの措置を講ずることを求める予定であります。別の観点でこれ以上に規制するかどうかということは、これからの検討課題でございます。

それから、協会の品質管理レビューに基づく是正措置ということですが、「品質管理基準」12号の「監査の品質管理」におきましては、証取法監査における関与社員の交替を求めております。そこでは、例示としまして、10年と書いてあります。これはたまたま、この基準を作るときに、この制度を導入している法人がございまして、そこでの規定が10年だったので、10年ということを例として入れているだけでございます。現実にそれ以降、各法人が導入してきておりますが、例えば私どもの監査法人では、7年ということで導入しましたので、先ほどの論点で示された7年という考え方はあながち否定できないかなというふうに考えています。

品質管理レビューでは、交替制度でもちゃんと機能しているかどうかを重点審査項目でチェックすることになっております。そういう意味では、今後、品質管理レビューが導入されるに伴って、これについては着々と実行されていくというように考えております。

それから、内部・外部の審査体制の問題でございます。

まず、審査制度といいますと、論点整理の方にありましたが、独立の部署としての審査体制が理想的でございまして、大手の監査法人ではそういう形が多分できているというように考えております。ところが、中小の監査法人あるいは個人事務所では、人数的な制約から、こういう審査体制を敷くのは現実は難しいというように思われます。

そこで、会計士協会として、品質管理レビューを進めていくうちに、審査体制をどうやって構築すべきかということが逆に協会に問いかけられたということもありまして、現在協会の中で、事務所外の公認会計士又は監査法人所属の公認会計士を審査担当員として利用できる制度を検討し、こういう制度を新たに構築しようと考えております。これが実現すれば、人数の制約から独立した審査員を準備できないとしても、外部の審査員に委託するという形でやっていけると考えております。

それから、品質管理基準への準拠状況のモニタリングと是正措置ということでは、去年の4月から品質管理レビューが始まりました。私どもの法人が第1号のレビューを受けまして、十分自信をもって対処したんですが、結果的にはいくつかの指摘を受けまして、この品質管理レビュー制度は非常に効果があるということを実現しています。

大手監査法人は去年の4月から3年に1回の個別の調書レビューを含む全般的な審査、中小の事務所については、最初の3年間は「品質管理規程」の整備・運用状況の審査を受けることとなりますが、今後、審査の結果、意見形成のための審査がちゃんとできていないということがあれば、審査担当員をつけなさいというような指導も含めた改善措置をとらせる方向で改善してはどうかというように考えております。現在の制度では、そこまでの要求はできません。

このほか、会計士協会としましては、新聞等で問題が指摘されるような事案があれば、これについて、監査上の問題がないかどうかということを従来から検討しておりまして、これを「監査業務審査」というように呼んでおります。監査業務審査は、毎月、十数件の対象会社をチェックしており、その効果はありますが、これをもっと効果的にやろうということで、2年ほど前に監査問題特別調査会という制度を設けました。去年、ゼネコンを中心にした建設業について検討を進めまして、一つのレポートを出しておりますが、こういう形の活動を含めて、これらの制度を充実していきたいというように考えております。

それから、監査業務審査制度については、内々で審査して、内々で解決して、その結果を外部に公表してないという問題点を指摘されておりますので、外部の専門学識経験者の導入によるモニタリングを導入していかざるを得ないと考えております。これも今後の検討課題としております。

それから、監査報告書の署名のあり方についてですが、現行では、例えば監査法人の場合は関与社員が個人名で記名・押印する。すなわち、監査法人名と個人名を記名・押印するという形をとっていますが、欧米では、監査事務所の名前を記載するだけで、基本的に個人名を書くということはございません。個人名を書かせること自体が会社とその会計士との関係を非常に強調することにつながるということもありまして、基本的に個人名を記載することはやめるべきだというように考えております。

監査を実施した責任は、第一義的に監査法人にあります。確かに個人の資質というものは非常に重要ですし、どの方が監査されているかということは重要なことですが、法人としては、担当する個人がどうだというのではなくて、監査意見は審査をして、そこで客観的に認められたものを監査法人の意見として公表するわけで、個人がどのように主張しても、審査を通らなければ認められないという仕組みになっております。そういう意味で、監査報告書にはやはり監査法人の名前だけを書くべきだというように考えています。

その場合に、日本の慣行としまして、会社名だけ記載ではどうもなじまないというのであれば、監査法人名と代表者名、すなわち理事長等の代表者の名前を記載するのではどうだろうかというように二つの案が考えられます。

それから、実際の監査責任者の問題については、監査概要書等その他への記載で十分カバーできますし、法人の中では誰が関与社員かということは明確でございますので、そういう意味での心配は要らないと考えております。

それから、公認会計士・監査法人の処分・責任のあり方ということでございますが、これにつきましては、我々をどう処分するかということなので、我々が積極的にこうして欲しいという提案はできにくいと考えております。

一応考えられる案としましては、現在の仕組みのように大蔵省が処分をするという方法と、当協会の会長の案なのですが、例えば第3条委員会のような行政機関組織で審査するやり方はできないか。あるいは会計士協会内部に審査機関を設けて、その場合は、条件としまして、外部の学識経験者などによるモニタリング制度、場合によっては審査員そのものを外部の方に相当委託するという形でやる方法はないだろうかということなどがあります。

それから、前回のこの委員会でお話ししましたように、イギリスでは新しい枠組みを現在検討しておりまして、公認会計士協会が資金負担はするが、実際の審査は、完全に協会から独立した機関にお任せするという形が考えられます。アメリカのピア・レビューでのオーバーサイト・ボードも全く同じ仕組みなんですが、資金は拠出するが、運営は一切任せるという仕組みがいいかなというように考えています。いずれにしましても、今後、実態に合わせて検討すべき事項だというように考えています。

それから、現在の商法特例法、先ほど御指摘ございましたように、その第4条によりますと、監査法人の関与社員の誰かが処分を受けますと、監査法人が会計監査人になれないということですから、全ての会社の会計監査人の地位を返上しなければいけないことになり、現在の実態に合わない仕組みになっていると思います。現在、 200~300 名の社員を抱える監査法人は珍しくないわけでして、その中の1人でも処分を受けると、全ての仕事を返上するしかないということは実態に合わないと思いますので、この規定は改正する必要があると考えています。

処分の方法はいろいろあると思います。例えば証券会社が処分を受けるときに、一部の営業について停止するというような考え方がありましたから、監査法人については、新規業務の取得を停止するとか、そういう処分であればこういう問題は生じないと考えております。

それから、綱紀事案の審査制度でございますが、現在、協会内で綱紀事案の審査をしております。これについても、先ほど言いましたように、内々で審査して、外部からは一切チェックできないという制度に批判がございますので、外部の学識経験者によるモニタリング制度というものを導入する必要があると考えております。

それから、処分・責任のあり方ということを考えます場合に、損害賠償責任をどう担保するかという問題があると思います。

現状では、一切の規制がありませんから、会計士としては、保険に入ろうと入るまいと関係ないということです。事件が起こり、訴訟で確定して初めて払えるかどうか分かるという形です。例えば、協会の監督の下に、損害賠償責任を担保するために、損害賠償責任保険へ強制加入させるということも一つの解決案かなと思っています。

それから、ドイツとオーストラリアに事例がありますが、損害賠償責任に関して上限額を法定する。例えばオーストラリアの場合ですと、確か監査報酬の10倍とか、そんな形の制度がありまして、上場会社の場合の最高額で確か9億円程度ですが、このように金額を法定するという考え方があります。そんな解決法でいいかという指摘もあり得ますが、この制度のメリットは、上限額を決めることによって、保険制度に上限額をリンクさせて、最低限そこまで保険を加入させることを可能にするということでは意味であると思います。このような制度を導入して、必要な訴訟を促進するとともに、意味のない訴訟の乱発を防止するということができるというように考えています。

それから、会社の役員と会計監査人が訴えられた場合に、日本の場合では相互に無限連帯責任になりまして、会社の役員が自己の負担分を払えない場合には会計士に払わせるという仕組みになっておりますが、アメリカでは比例責任制度という考え方がありまして、お互いの責任分担を裁判所で決めて、自己の負担分以外の負担の必要はないというやり方がございます。実態としまして、日本の裁判制度での運用も比例責任制度みたいな考え方があるようなんですが、こういう制度を検討した上で、可能であれば導入していただけたらというように考えております。

次に、「適正な監査日数等の確保と監査報酬のあり方」ということでございます。

現在、去年のレジェンド問題から、会計士協会としては非常に危機感を持ちまして、一つの指摘として、監査体制が弱いというように言われておりますので、現在実態調査を進めております。3月の理事会に出せると思うんですが、アメリカとドイツ、アメリカは英米、ドイツはヨーロッパの代表として二つの国を選択して、ビッグ・ファイブの各事務所に対して金融・製造・サービスの3業種を指定しまして、規模も大会社とそれ以外を指定しまして、これについて監査の時間を教えてくれるように調査をお願いしております。集計作業をやっておる最中ですが、監査時間が圧倒的に足らないということがはっきりしてきております。特に金融機関については、どうしてこんなに差があるのかというぐらい時間差があります。一つは、向こうでは、別に内部統制の監査をやるというのがございますので、その部分が影響しているかなとも思いますが、一般企業で見ましても、やはり倍以上の差があるというように見られます。

どうしてそういうことが起こるかということですが、欧米では訴訟事件が多いということもございまして、業務を効率的にやるよりも、裁判でどうやって立証をするかと、どうやって完全にやったということを立証するかということですね。それから、人の異動が非常に多いので、内部統制に時間をかけてチェックしております。日本が終身雇用で、そういう意味で言うと余りその辺に気を使う必要ないという要素もあると思います。

これに対して我が国では、従来で言えば、単体決算が中心だったということ、それから、日本企業の業績が堅調であったということで、監査リスクが相対的に低かったということもあって時間が少ないのかなというように考えており、最近では、業績悪化に伴いまして倒産事例も大幅に増加しております。訴訟事件も非常に最近多発しております。そういうことと、連結決算へ重点が移行したこと、あるいはリスクアプローチに基づいて監査するということを徹底するために内部統制の有効性の監査に比重を置く必要がある。あるいは、従来から言われていますが、監査調書のドキュメンテーションが不十分であるということ等を全て解決するためには、監査実施時間を拡充する必要があると考えております。別の委員会で検討されているようですが、資格取得者の増加を図る必要があるというように考えております。

それから、監査報酬のあり方でございますが、会計士協会は各種の標準報酬を公表しております。欧米ではこういう事例はありませんで、基本的には各事務所がそれぞれの会計士個々にチャージ・レートを決めておりまして、これで報酬額を積算する。その額をもって相手方と交渉するというやり方が一般的であると思われます。

現在、日本の監査環境を考えますと、新規の監査対象がどんどん増えています。信用金庫、信用組合その他公的機関という、新たなクライアントが増えていまして、現在はこういう標準報酬規程があった方が相手のためにも分かりやすいという部分があります。

それから、過当競争で質を落とすということも避けたいので、当面の間、この制度を継続した方がいいというように考えております。

ただ、ずっとこのままでいくべきだとは思っておりませんで、監査日数及び監査報酬の額が社会的に十分理解される状況になった場合には、現行制度の廃止を含めた抜本的な見直しを行うことが考えられるというように思っております。

以上が会計士協会の意見でございます。

 

○三原小委員長 どうもありがとうございました。

折角の機会でございますので、ただいまの公認会計士協会の御意見も含めまして、参考人の方々の御意見に関しまして、あるいは本日のテーマに関しまして、御質問等がございましたらお伺いしたいと思います。

時間が大分限られてきましたので、かつ、本日のテーマは項目が非常に多うございます。なるべく多くの項目に多くの方々の御意見を頂戴したいと思いますので、その辺どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、どうぞお願いいたします。

 

○白石委員 よろしいですか。

 

○三原小委員長 はい、白石委員。

 

○白石委員 牧参考人にちょっとお尋ねしたいんですが、連結決算はアーサーアンダーセンですね。

 

○牧参考人 はい、そうでございます。

 

○白石委員 これはいわゆるアメリカ基準でなさっていると。

 

○牧参考人 はい。

 

○白石委員 大蔵省には日本基準の連結決算を出しておられるということでございますね。

 

○牧参考人 はい。

 

○白石委員 連結決算の監査の仕方と、それから、いわゆる監査報酬につきまして、アーサーアンダーセンの方も日本人の方がやっておられるのか、外国の監査報酬を適用されるような方がしておられるのか。日本基準、アメリカ基準の連結決算監査のあり方と監査報酬の決め方が2本立てなのか、1本立てなのか、そのあたりを教えていただきたいと思います。

 

○牧参考人 当社は朝日監査法人と日本の基準で監査契約をいたしております。それから、英文で、アーサーアンダーセンと当社との間にまた監査契約をやっております。

それで、まず、日本の会計基準による監査から始まってまいります。これが日本の公認会計士の先生方で1カ月近く。これは監査契約に基づいて、日数、予算とを一応決めまして、これでいたします。

それから、米国の会計基準につきましては、一部日本の会計基準と同じ監査の部分がございます。現預金の勘定とか、借入金の勘定とか、共通のところは省くということにやりまして、会計の基準が違う部分については、また改めて監査が始まります。米国の会計基準につきましては、米国人の公認会計士が、これは年によって代わりますけれども、2名ないし3名、関与されます。従いまして、全体として相当の監査報酬が当社としては予想されます。これは高齢者ということも全部入ってまいりまして、従って、朝日監査法人に監査報酬を支払いする分とアーサーアンダーセンに払う分と、こういう形で両方でたくさん出てくると、こういうようになっております。

 

○白石委員 ということは、標準報酬規程に基づく日本の場合と、外国の場合にはやはり個別交渉でお決めになっていると、こういうことですね。

 

○牧参考人 ここにもちょっと論点でいろいろ書いてございますが、米国の会計基準による場合は、会計上の問題がございました場合は、それを解決するまでということで、会計問題、それから、ディスクロージャーの問題等につきまして、問題が全部解決するまでということでございますので、予算をかなりオーバーするということが非常に多いということで、実際はいろいろ問題によって予算をかなり超過せざるを得ないという状況でございます。これは私どもも問題について、一応了解をせざるを得ないという場合には、そういうことでオーバーするということになっております。

 

○白石委員 ありがとうございました。

 

○三原小委員長 どうぞ。

 

○伊藤委員 私もちょっと牧さんに御質問というよりは、いろいろ気がついたところなんです。

私どもも実は朝日監査法人なんですね。これは連結決算を含めて全部朝日監査法人。我々はSEC基準をやっていませんので、国内基準なものですから。やはりSECというか、牧さんのところはアメリカに上場しているものですから、ずっと拝見していまして、大きく違うのはリスクマネジメントに関するところが大変明確になっているということ。それから、コーポレート・ガバナンスに関しての見解が出ているということで、このあたり、今の日本の会計基準に従う監査のやり方と、相当込み入ったところに入っているなという感じがいたしましたね。

そういう点では、今後の日本の会計基準が変わってきた段階ではそういったものも入るかもしれません。我々の場合は、全て海外を含めて朝日監査法人に一括契約をしてやっていまして、ただ、個別にそれぞれの海外の子会社がいろんな問題を抱えてやる場合には、別途また、これはアーサーアンダーセンを中心にプライスウォーターとか、いろいろ使っていますが、その都度個別にお支払いする。これは監査報酬というよりは、いわゆるコンサルティング報酬に近いもので出ていっています。

そういう形でございまして、今の考え方からいきますと、日本の報酬制度をやっぱり前提として、基本的には、先ほどお話がございましたけれども、監査役会と相談をして決めているというのが現状ですね。

その点に関しては、私はさほど問題に思ってないわけですね。ただ、こういう新しいアメリカの実態を踏まえたリスクアナリス分析だとか、コーポレート・ガバナンスに対する対応とか何かは、これからむしろ増えてくれば、それに応じてやはり報酬は出していくべきではないかとは思っております。

それで、それに関連して、公認会計士協会の御意見とか、あるいは大蔵省の論点整理の話も出たわけでございますけど、ここで最長の期間を7年とか、あるいは概ね10年とされていることに対する「考えられる論点」ということで、7年ぐらいがいいんじゃないかというお話もございまして、これは私は、諸外国と比べて問題を言われないようなところがやっぱり妥当ではないと思いますね。少し長いと問題がある。

ただ、私は、このあたりは皆さんの御意見を聞かなければいけないんですけれども、つまり監査人の名前のサインの問題なんですけど、確かに監査法人という形で、代表取締役がサインをされるということがいいんじゃないかという御意見もいただいていますが、やはりその監査に携わった代表社員の名前があった方が、よりいいのではないかというふうに思うわけですね。しかし、問題が起こったときには、じゃ、監査法人が処罰を受けた場合、その監査法人がしばらくの間、対応できないとかなると大変だし、その代表社員の方々がおられるわけですから、その方が実際に監査をしたんだというところが明確になるべきじゃないかというふうに思いますけれども、これは会社の側としての意見なんですけど、そういうように感じます。

以上です。

 

○三原小委員長 今の伊藤委員の御質問に対して、牧さんの方から何かございますか。

 

○牧参考人 私ども、特に最近そういうことで一部お願いを大蔵省にもしているところでございますけれども、日本の会計基準も、ほぼ米国の会計基準にいろんな点で近づいてきております。そういうこともありまして、連結財務諸表もほぼ国際会計基準ということで同じになっておりますので、できれば、会計監査も1本にして、特に証券取引法に基づく連結財務諸表については1本で、商法はまだ単独でございますので別ですけれども、そちらの方は一つにしていただいて、監査報酬、監査契約も一つにして、簡略していただければというように希望しているところです。

 

○三原小委員長 ただいまの伊藤委員の最後の署名のところなんですが、監査法人の署名と、それから、関与社員の署名といいますか、両方の意見を出すという考え方はないんですか。つまり法人としての責任はもちろん明確にするわけですが、同時に関与社員としての責任を明らかにしておくと、両方書くという考え方は。何かどっちかというような意見のように今までは聞こえたんですが、どんなものでしょうか。

 

○伊藤委員 いや、私は両方書いていただいた方が、より明確になると思いますね。

 

○三原小委員長 どうぞ。

 

○富山委員 基本的には、監査法人の中では誰がどの会社の関与社員かというのは明確に決められており、ローテーションもそれを前提としてやっているわけです。処罰対象者を確定することは可能なんですが、ただ、何らかの事故があって、裁判を受ける場合は、基本的には監査法人が全面的に対象となるという形になります。結果として、関与社員個人の問題となる問題もありますが、審査上の問題となる場合もありますし、そういう意味で言うと、単純に個人の名前ではないんですね。監査法人は審査をした上で結論を出しますが、たまたま関与社員にサインさせるという仕組みになっているからサインしているだけであって、ある事故が起こった場合に本当の責任者は誰かというと、必ずしも関与社員だけではないかもしれないという意味で、法人名だけを記載させることが一番明確ではないかということでございます。

 

○三原小委員長 では、山浦委員。

 

○山浦小委員長代理 実は今の署名の問題については、現在の監査というのが、いわば職人芸というよりは、むしろ法人等でも組織的に監査をする。それから、審査体制も法人として持っていますし、ですから、事実上、実務上もかなりマニュアル化されておりますし、そういった意味では、流れからすると、法人が全部責任を負うような、そういう署名のあり方が大体の世界の流れだと思うんです。

恐らくこれは今の責任を追及する法体制の問題とも関わってくるかと思いますけれども、できれば、そういう方向でこの制度を見直すのがいいのではないかと私は思っております。

 

○伊藤委員 その場合に、そうすると、例えば処罰のときに、不適切であったという事態が起こった場合、その監査法人そのものを替えなきゃいけないという事態になりますね、企業としては。そういう形までやるのか、ということに絡んでくるわけですね。つまり代表社員の方がたまたま、もちろんその人じゃなくて、内部で牽制手段があって、行われているんだが、最終的にはその監査法人がオーソライズして認めたにしても、その中心人物は誰かということがあって、その人が仮に責任をとって、次の新しい人に切り替えれば済むものが、監査法人自体を企業としては替えなきゃいけないということになる可能性があるわけですね。

もちろんその場合、例えば監査法人そのものを企業が、アメリカの場合は適宜替えているということがありますけど、基本的には、しかし、それでも長くみんな使っているわけですね。従いまして、そういう処分との関係において、そこを決めていかないと、そこのところの関連性が断ち切られてしまうと、企業としては年中、まあそういうことはないと思いますけど、現実問題として、今既にそういう問題になった会社については監査法人が替わっているのかどうか。そのあたりもちょっとお伺いしたいところなんです。

 

○三原小委員長 今の署名の問題、確かに大きなテーマですけど、またこの次に論点整理のところでじっくり議論する。ほかの項目を少し議論してみたいと思います。

 

○伊藤委員 はい、それは結構です。ここで結論を出していただく必要は毛頭ありません。

 

○三原小委員長 いかがでしょうか。

 

○宮島委員 今の責任のところで、一言だけ。

 

○三原小委員長 どうぞ。

 

○宮島委員 恐らく一般論で言うと、二重責任なんで、関与社員も法人もくると思うんです。だから、あとは例えば商法の特例法みたいな法律が制度としていいかどうかという、そちらの方で考えなければいけないのかなという、そんな点だけ一つ。

 

○三原小委員長 ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

奥山委員、どうぞ。

 

○奥山委員 脇田先生のところで一つ確認といいますか、もう一度御意見をお話ししていただきたいんですけれども、一つは、単独・同一監査人の継続的監査というところで、同一監査人の継続について、これはむしろ独立性の問題だから、精神的な独立性というよりは、規定を明確にしたらどうかと。法律に規定することも考えていいのではないかということをおっしゃっていたような気がするんですが、そういう御意見かどうか、もう一度確認させていただきたいということです。

それから、監査報告書の署名で日付も検討すべきというようなことをおっしゃったんですけど、ちょっとここは分からなかったのは、監査人の責任との関係で考えるべきというところは、どういう日付がどういうように問題だという御指摘なのか、ちょっとよくそこは理解できなかったものですから、その二つをお願いします。

 

○三原小委員長 どうぞ。

 

○脇田参考人 まず、後の方から、すぐ分かりますので。

日付というのは、文字通り作成の日付ですと、監査報告書に奥山先生が公認会計士としてサインなさった日というように機械的になってしまうのではないか。実質的に会計士の方がこの監査について責任を負い得る日付をお考えになってもいいのではないかということです。ですから、それは具体的には、どの日ということは、要するに監査証明省令ですと、作成の日付という文書でして、文字通りに解釈されているのではないかなということであります。それは責任の時間が、監査の意見形成のときから離れているということはないのかなということです。

それから、これは後発事象とか、偶発事象とか、そういうこととの関わりも、特記事項との関わりも出てくるものですから、日付をもう少し検討すべきではないのかなということでございます。よろしいでしょうか。

それから、前者につきましては、今の監査基準は御承知のように一般基準の1で、独立の立場という規定が置かれてあります。そして2に精神的独立性、公正不偏な態度を保持しなければならないという規定になっております。その場合、どちらかというと、精神的独立性というのは、先ほど申し上げましたように俗人的で、その監査人が自ら監査に臨むに当たって、常に独立性を維持しなければならないということです。

それに対して、独立の立場というのはどちらかといいますと、今度は1の方で、適格性ある監査人の専門的能力、実務経験と独立の立場という、資格要件みたいに位置づけられておりますね。ですから、むしろ適格性要件なのかどうか。独立の立場というのが。日本の場合の基準はそういう非常に俗人的なことで、一般的な監査環境といいますか、もっと広く。結局、もっと簡単に申せば、独立の立場については、具体的には監査証明省令とか公認会計士法で規定しておりますから、それと同じような領域で、同一監査人の継続的な監査というものも扱われるのではないだろうか、こういうことを申し上げているんです。

もう一度申しますと、現在、要するに役員であってはならないとか、国家公務員としての関わりがあってはならないとか、いろいろ規定がございますね。それと同じように規制、あるいは税理士として関与したとか、利益供与を受けたとか、そういうことが法規で決められていますけれども、それと同じ中に取り込めるのではないか、そういう意味です。

 

○三原小委員長 どうぞ。

 

○奥山委員 そうすると、実は私どもは、これからいろいろな実際の問題としては起こり得るというようには理解しているんですけれども、法律等で規定すべきということは諸外国にも例がありませんし、これはやはり実態に任せるべきでないか。どんどん監査法人そのものが交替するということもやむを得ないというか、これから起こり得るというようには思いますけれども、法律で規定しなければならないかどうか。

 

○脇田参考人 法規で規定しなければならないという意味合いではなくて、つまり監査基準の外で、会計士協会の一つの規律・規則の中に、今度新しく倫理規定の中で決めるとか、あるいはその解釈で決めるとかと、そういう慣行形成ではないのかということです。

つまり本来の精神的独立性そのものに関わった形での規定ではなくて、その外側の規定として、省令とか、会計士協会の規則だとか、申合せだとか、そういった形で慣行化されることだろうというように申し上げました。ただ、こういう方向はとられるべきだろうということです。

○三原小委員長 どうぞ。

 

○富山委員 監査日付の件なんですが、現行では、株主総会終了後に証取法の監査証明をするという形になっております。アメリカでは実際の監査が終了した日に、監査報告書を作成する制度になっております。現行の制度では、株主総会が終わらないと監査証明できませんから、現行法の下ではほとんどの作業が終わっていても、株主総会の日まで延長して後発事象をチェックするとか、そういう作業をやらざるを得ないというのが実態です。

 

○三原小委員長 山浦委員、どうぞ。

 

○山浦小委員長代理 今日の論点、かなり盛りだくさんなので、実はそれぞれについて議論を重ねる必要があるところが多いと思うんですけれども、一つだけ、大蔵省の方でまとめられましたこの論点について、この監査の問題というのは、もちろん産業界、つまり監査を受ける側、それから、会計士業界、それに合わせ行政の役割というのが非常に重要な、監査制度を機能させるためには行政の役割は非常に重要なんですね。

例えば、アメリカで言いますと、SECは典型的な行政機構、これは良い悪いという話とは別に、少なくとも今ここで論点に挙げている監査のいろんな意味での充実のためには、やはり行政自身の審査体制をもう少し強化したり、あるいはモニタリングの体制をもう少し頻繁に行うような、そういった要望も大蔵省自身が作る文書にはなかなか入れられないのかも分かりませんけれども、この委員の1人としては、ぜひともその点を盛り込んでいただきたいと、こう思っております。

 

○三原小委員長 伊藤委員、どうぞ。

 

○伊藤委員 私もその点に関しては非常に賛成なんですね。ぜひそういうことを進めていただきたいと思っております。

それから、もう一点は、これは基本のところに属するんですけど、商法と証券取引法の問題なんですけど、つまり会社の取締役は、要するに忠実義務もあり、海外も含めて全部を見ているということになっていますが、商法の規制で言えば、社内監査役というのは基本的には国内に限定されているわけですね。

しかしながら、今や日本の企業はボーダーレスエコノミーの中で、海外に工場を持たない企業は少ない。それは中小のところはあるかもしれませんけど、基本的には電力、ガスだって、多少いろいろな事務所を持ったり、別会社を持ったりしてやっているわけですね。そういう実態の中で、海外を含めて連結ベースというのは証券取引法で認められていろいろやっているということは大変結構なんで、それに対する監査も、会計監査人が海外を含めてやっている。これは国内の会計原則に基づく会社の場合も当然のことながら連結決算というわけですけれども、そうすると、先ほどの社内監査と会計監査人との関係で、いわゆる企業の会計数値に関しては会計監査人に依存をより強くするという形で監査体制が企業の場合できているわけですね。

ですから、そこのところが海外の子会社だとか、海外の実態監査がブラックボックスになって。会計監査人に全部背負ってもらうわけですね。ですから、このあたりのところについては、行政サイドでも含めて御検討いただきたい。この論点の中に若干それが入ってないので、あえてお願いをしたい。宮島先生はじめ商法の先生もいらっしゃるので、いろいろ御意見はあろうかと思いますが、ここのところは我々産業界としては、今後、社内の監査体制を充実させていかなければ、内なるコーポレート・ガバナンスを強くする必要もあると私は思っているんですが、それと同時に、法制度面においても、ぜひ再考をお願いしたいと、こういうことであります。

以上です。

 

○三原小委員長 ありがとうございました。

ほかに。

 

○関委員 署名の問題については、委員長の御裁定通り、次回にまた議論をさせていただきますが、今、山浦小委員長代理がおっしゃった、要するに行政の全体の監査制度をワークさせていく支えというものが行政上どの範囲でやったらいいかということについては、私、前回、そういう問題提起をしたつもりでありまして、その意味では全く同感に思います。その点はなお議論する必要があるんじゃないかと思います。

それは申し上げておきますが、私申し上げたかったのは、「資料4」で富山さんの方から御説明いただいた説明の中で、最初の方で、いわゆる監査法人の審査体制がどうなっているかと、品質管理をほかの同業の方がやられるというあの仕組みでありまして、それで、それについては自分の方は自信を持ってやっていたんだけど、非常に厳しいものがあったと、これはそういう枠組みがうまく作動し始めているんだということで結構だと思うんですが、その結果がいろんな専門家同士の御議論で、ここが不足、ここが問題があるというようなことが出てきたときに、その対象になった監査法人でいろいろな改良が行われるという問題はもちろんのことでありますが、そこでどういう問題が起きたということが、これは一般の監査に参考になるように外に、例えば公認会計士協会の何らかのルール、制度を使って、こういうところが問題になっているから、皆さん注意してやりましょうというような感じで、あるいはそれに基づいて、こういう点、こういう点の改善しましたということを外に訴えていくとか、そういうように結び付けるということが必要なんじゃないかなという感じがちょっとしたわけであります。それが第1点で、その辺どういうようにお考えか。

それから、2点目は、これはひょっとすると今の署名の問題なんかとも関連するかもしれませんが、今後損害賠償にいろいろ見舞われるかもしれないから、強制的な損害賠償加入制度を作ると、これは非常に良いことじゃないかと私は思うんですね。ただ、この場合の損害賠償責任制度というのは、監査法人の場合は、監査法人が加入になるんですか。それとも、監査法人の所属しているそれぞれの公認会計士が加入するという仕組み、どちらになるのかということをちょっとクラリファイをお願いしたい。

それから、同じように、「資料4」の4ページの処分の問題ですけど、ここにわざわざ最初の2行目に、「現行制度の大蔵省のほかに、……」というように書いてあるわけですが、こういった処分の体系を重畳的にやっていくということですね。公認会計士協会も持っている、第三者機関も持っている、大蔵省も持っている。これは一体どういうふうなすみ分けというか、区分になって運営していくというお考えなのか、その辺は、大蔵省のほかにと、大蔵省の中には当公認会計士審査会も多分職務の一つに入っているわけでありますから、その辺はどうなっているんだろうか、追加的に御説明いただければと思います。

 

○富山委員 最後の処分の問題については、大蔵省のほかにという文章がまずかったんですが、大蔵省が処分することをやめてという意味で書いています。今の形を残すのもいいし、それ以外にこういう方式でどうだろうかという意味で並べて書いた文章でして、表現が悪かったと思っています。

 

○関委員 「ほかに」だと読めませんね。

 

○富山委員 すみません。私が直すのを忘れたものです。

 

○関委員 「代えて」ですか。

 

○富山委員 はい、「代えて」です。

それから、品質管理レビューに関しましては、現在も品質管理の審査会というのがございまして、この審査会で外部の学識専門家にレビューの状況を御説明するということになっております。その中で、個別の法人名を出すことを予定していませんが、1年間の調査した概要を、こういう問題があったという形での報告が出ます。そういう意味で、最低限の外部報告は予定しております。

将来的な形を考えれば、アメリカでやっているように、個別事務所に対する意見を公表するという形に将来持っていく必要があるかもしれません。現行制度を導入したばかりで、今やりますと非常に混乱を来たしますので、先々の検討事項だというように考えるべきかと思います。

それから、損害賠償責任につきましては、基本的に監査法人がまず全額負担して、それで、払えなければ個人が無限連帯責任を負う形になっておりますので、現在の保険制度では、監査法人が入っております。個人が賠償責任に入るという形は今のところ、制度的にはありません。

○関委員 ここに書いてある、「新しい制度を導入」すると書いてあるのは、どういう仕組みですか。

 

○富山委員 これは法人です。法人が負担できるようにする。要するに個人はなるべく関係なくして、組織体として、法人が損害賠償責任をちゃんと担保できるようにすべきであるという趣旨で書いてございます。

 

○関委員 趣旨は分かりました。

 

○三原小委員長 今の関委員の御意見に関連しまして、私も今の外部有識者によるモニタリングということに代えて、何か外部に公表するということを考えられないのか。そうすると、非常に一般の人は理解が深まるし、監査のあり方を、問題点を考えるのに参考になるのではないか。

それで、先週、例の綱紀委員会で住専の監査をめぐって、検討した結果を公表されましたよね。結論的には、処分に当たらないということで、それについての意見はまたいろいろあるかもしれませんが、私はこういうことで処分に至らなかったということを公表したことは、非常に大きな前進だというふうに評価しているんですよ。今までは確か、処分にいかないものは公表しなかったという取扱いだというふうに私は記憶しているんですが、そういうことでなくて、ああいうように公表することによって、会計士監査に対する信頼性を維持することに非常にプラスになるんじゃないか、もともとそういうように考えているものですから、できるだけ公表の方向に向かって検討していただきたいという私の意見です。

○奥山委員 ちょっとよろしいですか。

 

○三原小委員長 はい。

 

○奥山委員 第1回のときにも御説明したと思うんですが、品質管理審議会という今の外部の方をお招きしてやるそれは、公表を前提としています。ですから、そこの5人の方の了承を得た形で、こういう形で公表しますと。ですから、あくまでも今年も公表する予定でいます。それは制度化しているというように思っておりますので、そこは御理解いただきたいと思います。

 

○三原小委員長 綱紀委員会のは、たまたま今回公表したということですか。

 

○富山委員 綱紀委員会については、外部のチェックは今入らないような形になっています。そういう意味で言うと、外部のチェックが入った上で、公表すれば一番理想的な形かなと思いますが、その辺を変えるべきだという提案を今しているわけです。現状のままでは十分とはいえず、当然ある程度はやるべきだというように考えています。

 

○三原小委員長 申し訳ありません。時間が大分過ぎましたので、どうしてもという方。

どうぞ。

 

○新原東証監理官 ちょっと大事なことなので、確認だけさせていただきたいのですが、先ほど伊藤委員から、リスクマネジメントとコーポレート・ガバナンスの二つが会計基準で一番違うんじゃないかというお話があったんですが、私の理解では、これは会計基準の問題ではなくて、開示基準の問題ではないか。

 

○伊藤委員 そうです。開示基準です。

 

○新原東証監理官 開示基準ですね。そうすると、開示基準であるとすると、これは日本の場合、書いてはいけないということじゃなくて、書いてもいいんじゃないか。書く必要はないかもしれないけど、書いてもいいんじゃないかと思うんですが、もし違っていれば、ちょっと教えていただきたいんです。

それで、従って、これを書いたとしても、そこが監査の仕方の違いになるということはないんじゃないかということと、それから、日本ではこれは会計監査の対象になってないんじゃないかと思いますので、もし違うとすれば、アメリカでは監査の対象だけど、日本では監査の対象でないというところが違うのかどうか。

 

○伊藤委員 そのとおりですね。と私は思います。

 

○新原東証監理官 そうすると、会計基準じゃなくて、監査の範囲の問題。

 

○伊藤委員 だから、そこが一体となっているような感じを私はちょっと覚えたんですがね。そのあたり牧さんに。

 

○新原東証監理官 それは何が違うのか、私どもの事務方なのか、会計士協会なのか、教えていただければと思うんです。

 

○牧参考人 ちょっとよろしゅうございますか。

 

○三原小委員長 はい。

 

○牧参考人 当社はアーサーアンダーセンの米国の会計基準の監査については、今、新原監理官おっしゃったように監査の対象になっているんですね。

 

○伊藤委員 このリスクマネジメント。

 

○牧参考人 ええ。ディスカッション・アンド・アナリスのところがですね。ですから、ここの会計に関する情報以外に、今御指摘のリスクファクターとか、あるいはコーポレート・ガバナンスに関する件とか、そこで言っていることが監査の対象になっているんですね。ですから、そこの記載については、アーサーアンダーセンは大変細かくその内容を我々に間違いないかどうかということをチェックして、自分たちも納得されて終わるというようになっていますが、監査の対象になっています。会計の問題ではない。

 

○伊藤委員 ディスクローズの問題。

 

○牧参考人 今おっしゃったようにディスクローズの問題、監査の対象になっています。

 

○三原小委員長 もう時間が経過したわけでございますが、どうしても一言何か聞きたいという方がいらっしゃいますか。

 

○山浦小委員長代理 一つだけよろしいですか。

 

○三原小委員長 はい。

 

○山浦小委員長代理 協会の方で先ほど外部公表というお話があったんですけど、実は二つ意味がありまして、一つは、まさに外部の方に公表していただくということと、もう一つは、いろんな監査の失敗の事例等を内部の協会員といわば情報の共有化というんでしょうか、そのための努力をもう少しやってもらいたい。これは要望なんですけど。

以上です。

 

○伊藤委員 ちょっとお伺いしたいんですけど、もう一回先ほどの新原さん、それから牧さんの。つまりリスクマネジメントとか、それから、コーポレート・ガバナンスについての言及をしないと、やっぱりビッグ・ファイブはレジェンドクローズみたいなものをつけてくるのかどうか、そのあたりの感触を聞きたいんですね、我々としては。

つまり、我々は同じ朝日監査法人で、牧さんと同じところなんだけれども、うちにはレジェンドクローズがついてきた。前にも申し上げたので、財務体質がうちは悪いと思ってないわけですね。格付から言えば、AA+もらっていて、A2をムーディーズからもらって、なぜレジェンドクローズがつくのかという話をいろいろ我々もやっているわけですから。ですから、今日ここで御意見をいただく必要はないですけれども、一遍御検討いただきたいと、こういうことの問題提起を申し上げたい。つまりこれは個別ファームの問題として処理すべきなのか。ディスクローズのあり方の問題なのか、会計原則の問題なのか、このあたりが一番大きな問題じゃないかと思っています。

 

○大藤大臣官房参事官 そこら辺は事務局も共通の問題認識を持っておりまして、レジェンド問題、会計基準の指摘もさることながら、監査のプラクティスが日本独自のものだということが言われておりまして、何が独自のものなのか。ですから、ある意味で言うと、監査の充実というところを、今までの延長線上で考えていたのでは何らの解決にもならないという可能性もあるわけで、そこら辺は本当に強い問題意識を持って臨まないと、今までの延長線で考えていたのでは、という問題意識は強く持っております。

 

○伊藤委員 はい、分かりました。

 

○三原小委員長 どうもありがとうございました。

予定の時刻が参りましたので、本日の会合はこの辺で終了させていただきたいと思います。

次回は、当小委員会の検討事項を大きく三つに分けました二つ目のテーマであります「公認会計士の質の充実に向けて」につきまして、今回と同様に、事務局から簡単に概要説明を行っていただいた後に、各界の方々からの御意見を伺い、意見交換を行いたいと考えております。

なお、次回会合は3月17日(金曜日)に開催させていただく予定ですが、会場を当初御案内の国際会議室から、この第三特別会議室に変更させていただき、時間は、午後2時から4時まで開催させていただきたいと思いますので、御出席くださいますようによろしくお願いいたします。

以上をもちまして、本日の小委員会を終了いたします。

どうもありがとうございました。

午後5時11分閉会

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