金子晃公認会計士・監査審査会会長 記者会見要旨

(平成16年4月1日13時45分~14時15分 金融庁会見室)


(記


者)初めに本日が公認会計士・監査審査会発足ということでありますので、会長から抱負、それから本日の議事の内容についてお話いただきたいのですが。


(金


子会長)本日、内閣総理大臣の方から公認会計士・監査審査会会長に任命されました金子でございます。それからこちらが常任の委員の脇田さんです。
 最初に私の方から一言申し上げます。
 我が国の監査制度の充実・強化のために、非常に重要な役割と責任の一端を担うことになりまして、私に寄せられました責任の重大さに身が引き締まる思いでございます。ご承知のとおり、国際的に監査体制の信頼性及び質の向上が強く求められているところでありまして、そうした中で昨年5月に公認会計士法の改正が行われ、監査法人などの監督体制の充実・強化等の観点から、これまでの公認会計士審査会を改組し、体制の充実・強化が行われ、当公認会計士・監査審査会が設置されたわけであります。
 本日、発足いたしました公認会計士・監査審査会が、従前の公認会計士審査会から大きく変わりました点は何かと申しますと、新たな業務として日本公認会計士協会が実施しております品質管理レビューに対するモニタリングを行うという点であります。品質管理レビューとは、監査に対する社会的信頼を維持・確保するため、公認会計士協会が自主規制として実施してきているもので、公認会計士及び監査法人が行う監査の品質管理状況をレビューする制度であります。当審査会は、この品質管理レビューについて、自主規制機関が行う制度としての一層の機能発揮及び監査法人等の品質管理の適切な整備・運用といった観点から、法的に位置づけられた行政としてのモニタリングを行うものであります。私たちはこれまでと同様、公認会計士試験を厳正に実施していくと共に、新たな業務であるモニタリングについて公認会計士協会とも連携を図りながら、その自主規制を尊重しつつ着実にこれを遂行することにより、我が国における監査の質の確保と実効性をより一層図り、我が国資本市場の公正性・透明性の確保により、投資者の信頼の向上に資して参りたいと考えております。
 今後、与えられた職務を誠実に実行していくことが国会の同意を得たことに応えることになると思います。また、国民の信頼に応えていくことになるとも考えております。
 皆さま方におかれましても、審査会に対してのご支援、ご協力の程をお願いしたいと思います。
 先ほど、「抱負を」ということだったのですが、非常に重要な任務ですので、この任務を粛々と実行していきたいと考えております。特に最近、公認会計士の監査の信頼性に対する疑念、あるいは企業の財務状況を表す財務諸表の信頼性に対する疑念を示すような事態が出てきているわけですが、これは社会の変化、それから社会の変化から出てくる社会あるいは企業のニーズと現在の公認会計士制度あるいは公認会計士の仕事との間の乖離によるものであり、現代社会に共通の事柄だろうと思います。
 今回の公認会計士・監査審査会というのは、こうした乖離を埋める重要な役割を果たす機関だと認識しております。我々が与えられた任務を果たすことが公認会計士の仕事の信頼性を深め、そして公認会計士によって監査された企業の財務情報の信頼性を高め、そのことが産業、日本経済の信頼性を高めることに繋がっていくだろうと、我々に与えられた任務を粛々と、と申し上げたのはそういう趣旨で申し上げたわけでございます。


(脇


田委員)常勤の委員に任命されました脇田でございます。よろしくお願いいたします。
 これまで、私自身が監査の勉強をしてきたということもありますし、企業会計審議会等々で監査基準の改訂にも参加させていただきましたし、今般の公認会計士法の改正の検討過程においても参加しました。たまたま常勤の委員という役割で任命されるとは思いませんでしたが、只今、金子会長が言われましたようにこの職責は重大でございますし、常勤の委員として金子会長を補佐して、他の委員の方々と協力してこの審査会ができた法改正の趣旨を全うするように努力するつもりでありますので、どうぞよろしくお願いいたします。


(記


者)本日、初会合ということですが、どのようなことについて議論されたのでしょうか。


(金


子会長)本日が初めての会合なものですから、最初に委員の方々の自己紹介をして頂きました。その後、審査会の今後の運営のあり方について基本的な事柄をいくつかお諮りをして、それを決定したと、そういうことでございます。


(記


者)本日決定した内容についてご説明いただけますでしょうか。


(金


子会長)特にご説明するようなことではありませんが、例えば週に一回程度定例的に審査会を開催し、なおかつ必要があれば随時審査会を開催していくと。
 それから必要な場合には、関係省庁あるいは必要な人に来ていただいて色々と説明を受けるということをするとか。
 それからもう一つはですね。これは議事・運営に係ることではありませんが、初会合なものですから、我々の職務及び審査会の業務についての概要説明を事務局の方からして頂いたということで、まず最初の出発として基本的な事柄について話し合いを行なったところです。


(記


者)週一回という頻度で今後開催していくということですが、当面の課題もしくはテーマで重要なものについて、具体的にご説明いただけますか。


(金


子会長)まだ始まったばかりでして、私自身も一昨日、昨日の国会で承認をされて、今日午前中に任命をされて、具体的に今後の運営について動くというような立場にはありませんでした。今日、任命されてこれから具体的に動いていくという形になるわけです。ただ、当面すでに公認会計士試験の仕事は進んでおりますので、そちらの方の事務が一つあると思います。
 それから品質管理レビューの問題については、これは内閣府令で月一回報告を受けるという形になっております。公認会計士協会の方から、公認会計士の監査についての品質管理レビューが月一回の形であがって来ますので、それらの審査をしていくという仕事が始まっていくと思っております。


(記


者)レビューのモニタリングですと、公認会計士に対する検査の体制はワンクッション置いた形になっているわけですが、その実効性についてどうお考えになっていますか。


(金


子会長)私自身は、やり方としては審査会が直接、個々の監査法人なり公認会計士なりの監査業務に対する監査の状況をチェックするという方法は、一つ有り得るだろうと思います。それからもう一つの方法としては、公認会計士協会の方ですでに品質管理レビューというものを行ってきているわけで、それはそれとして定着をしているわけでありますから、これを活用していくという方法が有り得るわけですね。今回の公認会計士法の改正によって採られた方法というのは、後者の方法になっているわけです。
 私自身の考え方としては、内部コントロール体制というのは、非常に重要なものだと認識しておりまして、この内部コントロールによって個々の監査法人それから公認会計士に対するレビューというものをしっかり行っていく。そして、そのレビューが本当に機能しているのかどうか、適切に行われているのかどうかということを外部機関としての審査会がチェックをしていく。こういうシステムというのは、私は非常に効果的であろうと思っております。
 私自身、会計検査院におりまして、公の会計についてのチェックを行ってきたわけですが、内部コントロールをいかに充実させるかということが、不適切な事態を排除するためには不可欠なわけです。そういう意味で、私は今回のシステムというのは効果的に機能し、実効性を十分にあげることができるものと考えております。
 当然、我々がきちっとしたレビューに対するモニタリングを行っていくということが前提となり、我々の取り組みによって実効性というものが確保されてくることになると思いますので、その点で私は非常に責任のある立場にあると理解しているわけです。


(記


者)前半の方で審査会が直接、監査法人に対して審査・検査するというのが有り得るとおっしゃったのですが。それは方法として今、審査会が権限を持っているということではないのですか。


(金


子会長)そういうことではありません。ただ、チェックの仕方としてはそういう方法があるだろうと。ただし、今回の公認会計士法での方法は、内部のチェックである公認会計士協会による「品質管理レビュー」があり、それを前提にしてそのレビューを審査するということになっておりますが、公認会計士協会がレビューをするに当たっては、当然個々の監査法人及び公認会計士に対してその監査をレビューしているわけです。我々審査会は、公認会計士協会がどういうレビューをしたのかということをチェックしなければいけませんから、その公認会計士協会の行っているレビューを審査するという過程の中で、個々の監査法人なり公認会計士のところに行って調査をするということ、これは有り得るわけです。


(記


者)そのレビューですが、現在、協会の方では、確か7人ぐらいの方が担当されていると思うのですが、それに対して審査会は今回確か29人ぐらいの体制で、こちらの方が非常に重厚な布陣で、どちらかと言えばもっとレビュー体制の方をしっかりしてくれというような思いはあるかと思うのですが、そのあたりについても法を適用されていくのですか。


(金


子会長)もちろん、実際にやってみて体制が不備であるとか、レビューが不十分であるという場合には、レビューのやり方について我々として勧告していくことは、有り得ることです。当然、それは我々の重要な仕事の一つと考えています。


(記


者)冒頭のご挨拶で、社会あるいは企業のニーズとその実際の会計士の仕事との乖離を埋めていくというお話をされていましたが、現時点での問題意識というか、もう少し詳しくお聞かせ下さい。


(金


子会長)一般的な問題として、私もお話したのですが、現在の我々の社会あるいは経済とそれに係わる色々なシステムというものの中に、実態に合わないもの、あるいは乖離しているものがあると。公認会計士の監査に関しては、最近色々とその信頼性に疑念を呈するような事件が起こっているわけです。そして、これは日本だけの問題ではなくて、世界的な形で生じてきている。そのようなことを申し上げたわけで、もう少し踏み込んで言うとすれば、そういう社会あるいは経済の変化があって、そういう変化の中で公認会計士に対して企業の方から、従来の会計監査の対象あるいは範囲を拡大した形での色々なサービス提供を要請するという事実があると思うのです。そうした時に、従来の公認会計士の本来の会計監査というところから、例えばコンサルティング業務であるとか、あるいはアドバイザリー機能であるとかそういうものが提供されていく。そのような現状から実は本来業務である会計監査に対する様々な問題というものが発生してくる余地、それは諸外国でも同じだと思うのです。そういうものに対する対応については、公認会計士法の体制によって、そういう対応を一方でしているわけです。我々審査会の方としては、その疑念が生じている公認会計士の会計監査に対して、問題が無いかどうか、問題があるとすればそれはどこをどう改善していかなければいけないのか、言い換えれば、公認会計士の会計監査の信頼性を高めていく役割を我々は与えられている。その意味で、そういう社会の変化あるいはそれに伴う社会的なニーズ、それに対する公認会計士あるいは公認会計士協会との間の様々な問題というものに対して、我々は我々の権限の範囲内で対応するという形になるのだろうと、そういう趣旨で話をさせて頂きました。


(記


者)9人の委員の方がご就任されて、国会の同意人事でも一部異論があったと聞いておりますが、公認会計士協会の現職の会長が委員に加わるということについては、自主規制機関とはいえ、モニタリングされる当事者の会長が入るのは如何なものかという意見が一部にあるようですが、それについてどうお考えですか。


(金


子会長)私自身は、任命権者が今回の審査会の委員としてふさわしいという形で、任命されたと理解しております。
 私は審査会を運営するに当たって、それぞれの委員、学者は別として組織に属している方が委員として入られる場合に、組織の代表者として入られているという認識はしておりません。それぞれ会計監査に関して、また広い意味で会計監査に限定されずに、知識と経験をお持ちの方が入ってきていると理解しておりますので、審査会の運営としては、利益代表的な意見は述べて貰いたくないと。それぞれ個人として、知識と経験を有する方々の集まりというところで、そうした知識と経験を前提にした議論をして頂いて、その合意の上で運営をしていきたいと考えておりますので、特に会長であるからといって、私は偏見を持つということはしておりません。


(記


者)疑念という言葉を使われておられましたが、昨年、監査法人の会計監査に対する疑念を膨らました案件として、りそな銀行や足利銀行の問題があったかと思います。いずれも監査法人の姿勢が豹変したと言われてですね。それによって、公的資金の注入や一時国有化という事態に発展しているわけですが、この案件について、会長としてどう考えているか、率直なお考えをお聞かせ願えませんでしょうか。


(金


子会長)個別の案件についてどう思われているかと言われても、お答えする立場にないのですが、審査会として、そういう問題にどういう形でアプローチするのかということをお答えさせて頂きたいと思います。色々と社会的に話題になったような事例があるわけですが、そういった事例に対して、どういう形での会計監査がなされたのか、それは監査をするにあたって監査基準というものが、ご承知のとおり設けられているわけで、そういう監査基準に基づいて監査がなされたのかどうか。そして、その監査に対して、先程から申し上げております公認会計士協会のレビューがどのように行われたのか。これについては審査会が当然チェックをする事項になってきます。そして、個々の監査法人の監査が監査基準に則って行われていたのかどうかについて品質管理レビューの中で、チェックがなされているのかどうかというあたりは、モニタリングを通じてしっかりと見ていきたいと考えております。


(記


者)審査会の役割というのは、協会のレビューをモニタリングするということなのですが、例えば金融の話ですと金融機関の自己査定というものを金融検査でチェックするというのが一般論として行われていますが、実態面としてガチガチになっておりまして、金融機関の自主性がなかなか無いと、指摘されている面もございます。
 非常に難しい問題ですけれども、厳格さが必要だと思いますし、かといってレビューの自主性という機能も尊重しなければならない。そのあんばい加減と言いますか、そのあたりどのように考えていらっしゃるかお聞かせ下さい。


(金


子会長)あんばい加減と言いますか、公認会計士協会の方で内部的なコントロールシステムを持ち、それを機能させているわけです。そういうものがきちっと機能しているのかどうかを我々は、やはり厳格に見ていく必要があるだろうと。適正にきちっと働けば、我々はそれほど口出ししなくても良いわけです。自主規制だから我々が口出ししないということではなくて、自主規制がきちっと機能しているかどうか我々がチェックしましょうと。その意味で、自主規制というのは実質的に向こう側がやることである。そういうことだと私は理解をしております。


(記


者)この審査会というのは行政組織ではあるのですが、一方で金融ですと監査法人と金融行政との関係で、金融行政の手先になっているのでないかという指摘もございました。あるいは別の面から言うと、今後、行政機関にも外部監査という考え方が出てきますから、いわゆる政府といいますか、行政と独立した立場を堅持するということも非常に重要になってくると思うのですけれども、そのあたりの会長のご意見をお聞きしたいと思います。


(金


子会長)公認会計士法によっても、この審査会は独立して職権を行使するという形になっておりますし、それから組織上、金融庁の中に設置されていますが、金融庁の直接の業務上の支配を受けるというものではない。そして、我々の職務が独立して行われることが、公認会計士の会計監査の信頼性を確保することになるわけです。
 それは、まさに基本だと思います。国の場合についても、会計検査院が独立機関として国の予算執行それから業務執行に対してチェックをする。そういうことについて、5年間厳しくやってきましたし、そういう基本的なスタンスというのは、今回も繋げていきたいと強く考えております。


(記


者)会計検査院でお仕事された時の経験を踏まえてというわけではないのですが、今後、介入めいた色々なことというのは、起きる可能性は排除できないのでしょうか。


(金


子会長)それは介入めいたことはあるでしょうね。それに対してやはり、毅然たる態度をとるということが、独立性を維持していくことにあたると思っています。そのことについては、単に理想的な形で今申し上げたのではなくて、今までの経験に基づいて独立性ということについては、厳格に維持をしていきたいと思っております。


(記


者)制度上は、公認会計士協会のレビューをチェックするということですけれども、監査に対して疑念が生じるような事態が起きたときは、それに対処する場合は、レビューを待っていたら信頼回復にかなり時間を有するかと思うのですけれども、審査会として何か調査を行ったりという必要はあるのでしょうか。


(金


子会長)先程申し上げたように、公認会計士協会の方からは月一回の形でレビューがあがってきますし、そういうレビューが適切なレビューとして行われた結果であるものなのかどうかということについて、随時、我々の方はチェックをするわけです。そして必要な場合には、本当にチェックがなされたかどうかということを、個々の監査法人にも行って調査するので、そうした時に出た情報に基づいて、随時、改善の措置は要請していきたいと思っております。ですから、レビューが出されてきて事後的にすべて動くということではなくて、レビューに対してモニタリングをするけれども、そのモニタリングの過程の中で、現実に行われている監査というものに対して、我々はタッチしていくわけですので、その過程の中で問題があれば、権限の中で対応していくつもりであります。


(了)

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