○金融再生委員会告示第2号

被管理金融機関の貸出債権その他の資産の内容を審査し、承継銀行が保有する資産として適当であるか否かの判定を行うための基準を定める件

改正沿革 平成12年6月23日 金融再生委員会告示第6号

 基本的考え方
 

 円滑な業務承継を図る観点及び承継銀行の業務の健全かつ適切な運営を図る観点から、被管理金融機関の貸出債権その他の資産のうち次の条件を満たしているものは、承継銀行が保有する資産として適当であると判定するものとする。

(一)  判定の対象となる債権に係る債務者の債務の履行状況について、貸出条件の緩和(金利の減免、金利の支払猶予、元金の返済猶予、債権放棄、現物贈与、代物弁済の受入れなど。以下同じ。)が行われておらず、かつ、元金の返済又は利息の支払が延滞していないこと。または、速やかに貸出条件が正常化され、かつ、元金の返済及び利息の支払の延滞が解消されること。
 
(二)  債務者の財務内容(子会社等の連結対象会社を有する場合には、これらを含めた連結財務諸表によるものとする。以下同じ。)の健全性について、現に債務超過の状態又は繰越損失が生じている状態でないこと。または、債務超過の状態ではなく速やかに繰越損失が解消されること。
 
 二以下の判定に際しては、被管理金融機関が債務者の特殊事情(特許取得や保証など)に基づき将来の収益や債務の履行の確保を見込んできており、これが合理的なものと認められる場合には、これらの事情も考慮して判定するものとする。
 
 資産の判定は、被管理金融機関の自己査定のほか、金融監督庁による検査及び金融整理管財人による調査を踏まえて行うものとする。
 
 貸出金
 

(債務者の区分)
 貸出金に係る債務者については、その状況等により次のとおり区分し、判定する。
 
(一)

 正常先
 正常先とは、業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者をいう。
 

(二)

 要注意先
 要注意先とは、金利減免、棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者をいう。
 なお、創業赤字で当初事業計画と大幅な乖離がない債務者を除く。
 

(三)

 破綻懸念先
 破綻懸念先とは、現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者をいう。
 具体的には、現状、事業を継続しているが、実質債務超過の状況に陥っており、業況が著しく低調で貸出金が延滞状態にあるなど事業好転の見通しがほとんどない状況で、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者をいう。
 

(四)  実質破綻先
 実質破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者をいう。
 具体的には、事業を形式的には継続しているが、財務内容において多額の不良資産を内包し、あるいは債務者の返済能力に比して明らかに過大な借入金が存在し、実質的に大幅な債務超過の状態に相当期間陥っており、事業好転の見通しがない状況、天災、事故、経済情勢の急変等により多大な損失を被り(あるいは、これらに類する事由が生じており)、再建の見通しがない状況で、元金又は利息について実質的に長期間延滞している債務者などをいう。
 
(五)  破綻先
 破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実が発生している先をいい、例えば、破産、清算、会社整理、会社更生、再生手続、手形交換所の取引停止処分等の事由により経営破綻に陥っている債務者をいう。
 

(正常先に対する貸出金)
 正常先に対する貸出金は、承継銀行が保有する資産として適当とする。
 

(要注意先に対する貸出金)
 要注意先に対する貸出金は、原則として次のとおり判定する。
 
(一)  債務者について、直近の決算(中間決算のある企業において、判定時が中間決算確定期から決算確定期までの間にある場合には、当該中間決算とする。以下同じ。)において繰越損失が生じておらず、元金の返済及び利息の支払が当初の貸出契約どおり行われている場合には、当該債務者に対する貸出金は承継銀行が保有する資産として適当とする。
 
(二)  直近の決算において債務超過の状態にある債務者については、当該債務者に対する貸出金は承継銀行が保有する資産として適当でない。
 
(三)  (一)及び(二)以外の債務者については、当該債務者から経営の合理化等の企業経営の見直しにより判定時の二年後を含む当該債務者の会計期間の終了時(個人の場合には、判定時の二年後を含む暦年の年末とする。)までに次のすべての要件を満たすことを示す財務指標の資料等が提出され、その資料等を精査した結果、これらの要件の達成が実現可能であると判断される場合に限り、当該債務者に対する貸出金は承継銀行が保有する資産として適当とする。
 
(1)  元利金に係る貸出条件が正常化すること。
 
(2)  元金の返済及び利息の支払の延滞が解消され、新規の延滞が発生しないこと。
 
(3)  繰越損失が解消されること(子会社等の連結対象会社を有する場合には、これらを含めた連結財務諸表による。)。
 
(四)  (一)、(二)及び(三)にかかわらず、次に掲げる債務者に対する貸出金については、承継銀行が保有する資産として適当とみなす。
 
(1)  債務者に対する債権が住宅ローン等の個人向けの定型ローン等の貸出金のみの場合。
 
(2)  債務者に対する債権の総額が五、〇〇〇万円未満であり、元金の返済及び利息の支払が当初の貸出契約どおり行われている場合。
 

(破綻懸念先・実質破綻先・破綻先に対する貸出金)
 破綻懸念先・実質破綻先・破綻先に対する貸出金は、原則として承継銀行が保有する資産として適当でないとする。
 
 外国政府等に対する貸出金

 外国の政府、中央銀行、地方公共団体及び政府関係機関に対する貸出金については、前記二によらず、原則として、リスケジュール(債務の履行期限の延長)が成立している貸出金、元本の返済又は利息の支払が延滞している貸出金、債務不履行の宣言に係る貸出金は、承継銀行が保有する資産として適当でないとする。
 

 有価証券
 

(株式)
 株式については、業務の遂行上、必要不可欠なものは、承継銀行が保有する資産として適当とする。
 

(貸付有価証券)
 貸付有価証券については、貸出金に準じて判定する。
 

(債券その他の有価証券)
 債券その他の有価証券(投資信託の受益証券、貸付信託の受益証券等)(以下「債券等」という。)については、当該債券等の債務の履行及び当該債券等の発行会社の財務内容に関して安全性に特に問題があると認められず、業務の遂行上、必要不可欠なものは、承継銀行が保有する資産として適当とする。
 
 その他の資産(貸出金、有価証券以外)
 
 外国為替、仮払金、支払承諾見返(債務保証見返)、未収利息、未収金については、貸出金に準じて判定する。
 
 金融派生商品、動産、不動産については、業務の遂行上、必要不可欠なものは承継銀行が保有する資産として適当とする。
 
 その他の資産については、その資産の性質を勘案し、回収の危険性又は価値の毀損の可能性が特に高いと認められず、業務の遂行上、必要不可欠なものは承継銀行が保有する資産として適当とする。
 
 特別公的管理銀行の審査判定
 
 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第七十二条第四項に基づき、特別公的管理銀行の貸出債権その他の資産の内容を審査し、その保有する資産として適当であるか否かの判定を行うときは、この基準に基づいて行うものとする。この場合、前記の基準において「被管理金融機関」、「承継銀行」及び「金融整理管財人」とあるのは、「特別公的管理銀行」と読み替えるものとする。

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金融機能の再生のための緊急措置に関する法律(平成10年法律第132号)
 
金融機能の再生のための緊急措置に関する法律施行令(平成10年政令第338号)
 
金融機能の再生のための緊急措置に関する法律施行規則(平成10年金融再生委員会規則第2号)
 
資産を買い取る場合の価格を定めるための基準及び資産の買取りの決定に係る承認を行うための基準を定める件(平成11年金融再生委員会告示第2号)
 
金融再生委員会が承継銀行に対する預金保険機構の出資の承認を行うための基準を定める件(平成11年金融再生委員会告示第5号)
 
金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第59条の規定に基づき、金融再生委員会が指定するものを定める件(平成11年金融再生委員会告示第7号)

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