地域金融機関に対する資本増強の審査結果について

金融再生委員会
平成11年9月

I . 検討の経緯
 
 金融再生委員会においては、地域金融機関の資本増強について、本年5月以来、合計22回にわたり検討を重ねてきたが、この間、6月10日に「地域金融機関の資本増強についての基本的考え方」を公表した。
 
 その後、早期健全化法第4条第6項に基づき、日本銀行及び預金保険機構から意見を聴取するとともに、申請が予定されていた4行(注)について予備的な審査を行った。
 
(注) 足利銀行、北陸銀行、琉球銀行、広島総合銀行
 
 予備審査においては、金融監督庁監督部から4行の概況説明、同庁検査部から4行の直近の検査結果、日本銀行から広島総合銀行を除く3行の考査結果について説明を受け、「経営健全化計画」の素案の書面審査を行い、更に、各行の代表者から直接ヒアリングを行った。これらを踏まえ検討した結果、8月26日、申請予定行に対し「資本増強を前提として、今後の手続きを進めて差し支えない」旨通知した。
 
 更に、9月2日には、予備審査を経た4行からの正式な申請を受け、代表者に対するヒアリングを行うなど、検討を重ねてきたところである。審査は、11年3月に申請のあった15行と同様の考え方に加え、6月10日の「地域金融機関の資本増強についての基本的考え方」を踏まえて行った。

 

II . 基本的考え方
 
(1 )財務内容の健全性
 
 申請のあった4行について、その財務状況の健全性を審査したところ、11年3月期において債務超過ではなく、健全な自己資本の状況の区分にあることを確認した。
 
 また、11年9月期の公的資本増強を行う前の状況においても、業務純益や自力調達等により、これらの金融機関は相当の自己資本を確保できるものと考えられ、早期健全化法第7条第1項第2号前段に規定するその存続が極めて困難であると認められる場合ではないものと考えられる。

 

(2 )資本増強額
 
申請金融機関が、不良債権の処理を基本的に終了し、金融市場において十分な信認が得られ、地域の金融システムの安定化が図られるよう十分な額の資本増強を行った。その際、単に国内基準行としての最低限の水準を満たすとの考え方ではなく、今後発生するリスクにも対応できる水準とすることを目指した。
 
 具体的には、11年9月期以降、公認会計士協会の実務指針に従い必要にしてかつ十分な償却・引当が行われることを前提として、有価証券の含み損や、税効果について相当程度保守的に見積もった場合を考慮してもなお十分な資本勘定が確保されるよう配意した。

 

(3 )経営健全化計画
 
 経営健全化計画の具体的な記載内容については、地域金融機関の実態に配慮し、11年3月に申請のあった15行の場合に比べて簡素化する一方で、地域経済における申請金融機関の位置付け等に関する項目を追加した。
 
 業務の再構築やリストラ等については、基本的には11年3月に申請のあった15行の場合と同様の項目を評価したが、地域金融機関の場合は特に地域金融の安定化への貢献を評価することとし、申請金融機関が地域の信用供与に主要な役割を果たしている場合、地域の金融市場の適正な競争確保のために必要な場合、地域経済活動活性化等へ寄与している場合等を評価した。

 

(4 )商品性
 
 商品性については、基本的には11年3月に申請のあった15行の場合と同様の考え方に基づき決定したが、特に、申請金融機関の地域金融の安定化への貢献についても評価を行い、配当率等に反映させた。

 

(5 )まとめ
 
 以上のような考え方に則り、申請のあった4行について、その申請内容、経営健全化計画などを精査した結果、これらの申請を承認することが適当であるとの結論に至った。今後、所要の手続きを経て資本増強が行われることになるが、これにより、地域の金融システムの安定化及び地域経済の活性化が図られるものと考えられる。
 
 資本増強を受けた金融機関においては、資本増強の趣旨・目的を踏まえ、経営健全化計画に沿った健全な経営が行われ、収益力が向上することを期待する。なお経営健全化計画の履行状況の報告等のフォローアップについては、6月29日に公表した「早期健全化法により資本増強を受けた金融機関のフォローアップ(骨子)」等に従って着実に行っていくこととする。

 

III . 今後の地域金融機関による申請について
 
 今後の厳しい経営環境の中で地域金融機関がその役割を担っていくためには、経営の健全性を確保することはもとより、より一層の収益力強化、経営の効率化が求められる。
 
  今回承認を行った4行以外の地域金融機関についても、各金融機関の自助努力とともに、早期健全化法に基づく資本増強制度が活用されることにより、収益力の強化、経営の効率化が図られるのであれば、できる限り早期に必要な資本増強が行われることが望ましい。またこうした資本増強は、地域における信用供与の円滑化を通じて地域経済の活性化に貢献することとなる。
 
 こうした点を踏まえ、資本増強の申請を行おうとする地域金融機関に対しては、決算期末にとらわれず、迅速に審査等を行なっていくこととする。

 

問い合わせ先

金融再生委員会事務局金融危機管理課(TEL)

杉本、小野、井上、向後

早川、渡邉、市川、林、西川


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