長銀買収に係る基本合意書の概要

平成11年12月24日

.本基本合意書の基本的性格等
(1)  預金保険機構(以下、「機構」とする)、長銀及びニュー・LTCB・パートナーズ・CV(以下、「パートナーズ社」とする)は平成11年12月24日、長銀買収に係る基本合意書を締結した。〔前文〕
 
(2)  本基本合意書は諸手続き関係(第14条)を除き法的拘束力を持たない。〔14.1〕
 
(3)  本基本合意書締結の日から平成12年2月29日までの間、機構はパートナーズ社との間で、本基本合意書で企図されている取引について排他的に交渉する。〔14.2〕
 
(4)  本基本合意書は全当事者が延長する旨同意した場合を除き、最終契約締結日又は平成12年2月29日のいずれか先に到来した日に終了する。但し、相手方当事者が誠実な交渉を継続しない場合又は基本合意書の条項に重大な違反をした場合には機構又はパートナーズ社は本基本合意書を解除することができる。〔14.2〕>

 

.買収方式・買収金額等
(1)  パートナーズ社は既存長銀株式(普通株式約24億株、優先株式1億株(注))のうち普通株式の全株(単位未満株を除く)を10億円で機構より取得する。〔3.1、3.2〕
 
(2)  既存長銀優先株式のうち約7,453万株は引き続き機構が保有し、残りの約2,547万株は無償消却する。〔3.2〕
 
(注)  既存優先株式は廃止された金融安定化緊急措置法に基づき整理回収銀行(当時)が長銀より引き受けたもので、購入価格は1,300億円。長銀の特別公的管理開始に伴い対価0円で機構が取得。その現行条件は以下の通り。
 
 配当率は年1%。
 
 普通株式への転換権付きで、転換価格は本年10月1日より1株当たり180円となり、以後同額で固定。
 
 強制転換は2008年で、それまでの間も随時転換可能。

 

.新規増資・自己資本比率
 
(1)  パートナーズ社は新生長銀の新規発行普通株式3億株を1,200億円(1株当たり400円)で引き受ける。〔3.1〕
 
(2)  新生長銀は政府に対し、早期健全化法に基づき、健全な自己資本の状況にある旨の区分に該当する金融機関として(承認日現在で自己資本比率4%以上達成が条件)、新生長銀の新規発行無議決権優先無額面株式6億株を2,400億円(1株当たり400円)で引き受けるよう要請する。その他の主要条件は以下の通りであり、パートナーズ社は長銀買収後の申請日より10営業日程度の期間以内に以下とほぼ同一の条件による承認が得られない場合には最終契約を解除することが可能。〔3.2、3.4〕
 
 5年目から転換可能。
 
 転換価格は1株当たり400円又は市場価格(上場前は1株当たりの純資産額)のいずれか低い方(但し、300円が下限)。
 
 7年目に強制転換。
 
 配当は金融再生委員会が決定するが、パートナーズ社は可能な限りの最低水準を期待。
 
(注)  2(2)の既存優先株式と併せて、普通株式へ転換した後の機構の最大持ち分は33.0%。
 
(3)  自己資本比率は13%程度(後述の保有株式含み益実現後ベース)

 

.機構による損失補てん
 機構は長銀の単体ベースの貸借対照表をもとに損失補てんを行う。当該貸借対照表は長銀買収時の会計基準に基づき作成される。〔2.2〕

 

.長銀保有株式(政策保有株式)の取扱い(別紙参照)
 
(1)  長銀保有株式を下記(2)〜(6)に従って売却し、合計2,500億円の含み益を実現して新生長銀の自己資本の増強に充当する。
 
(2)  長銀は、判定期日(長銀買収前のいずれかの日)現在の保有株式の銘柄、数量、簿価及び同日現在の時価の一覧表をパートナーズ社に交付する。判定期日現在で含み損のある株式は、長銀買収前に機構に対して(当該株式が(5)に係る株式である場合)又は市場で売却する(機構に対する売却価格は一覧表記載の価格)。〔6.1〕
 
(3)  パートナーズ社は、一覧表の中から含み益の合計が新生長銀の自己資本比率を4%以上とするために必要となる金額になるような株式(「第一次売却株式」)、及びその含み益の合計が2,500億円から上記金額を控除した額となるような株式(「第二次売却株式」)をそれぞれ指定し、機構及び長銀に通知する。〔6.2〕
 
(4)  含み益を有する株式のうち第一次売却株式及び第二次売却株式以外の保有株式は長銀買収前に、第一次売却株式は長銀買収の当日の午後に、第二次売却株式は長銀買収後90日以内に、それぞれ機構に対して(当該株式が(5)に係る株式である場合)又は市場で売却する(これら3つの区分に属する個別の株式の売却予定先(市場又は機構)は(3)の指定の際に決定。機構に対する売却価格はいずれも一覧表記載の価格。)。〔6.2、6.3〕
 
(5)  新生長銀の営業上必要な株式は機構が購入し、これを長銀信託に信託する。長銀買収後5年間、機構は新生長銀の同意なく当該株式を売却せず、当該株式に係る名目上の所有権及び議決権は長銀又は長銀信託がこれを有し、新生長銀は、原則として随時、公正な価格で当該株式を機構から買戻すことができる(機構は売戻しを拒否しうるが、信託期間が5年目に入って以降に拒否した場合には当該株式に係る信託期間は拒否時から1年後まで延長される。延長期間中に機構が売戻しを拒否した場合も同様)。〔6.5〕
 
(6)  新生長銀の営業上必要ない株式は公正な価格で市場又は機構(下記(7)の場合)に売却する。機構が購入した場合には長銀信託への信託等は行われない。〔6.5〕
 
(7)  長銀保有株式を市場で売却しようとする時には長銀又は新生長銀は事前に機構と協議する。機構は株式の売却に反対はしないが、株式市場の状況等によっては株式の売却先を機構に指定して公正な市場価格で当該株式を購入することができる。〔6.4〕

 

.機構保有の新生長銀株式の売却
 
(1)  機構保有の新生長銀株式の時価総額が5,000億円を超えている場合には、新生長銀は機構に対し、その保有する新生長銀株式の一定の数量を市場において公正な価格により売却すること及び当該売却のために機構保有の優先株式を普通株式に転換することを求めることができる。〔3.5〕
 
(注1 )新生長銀の普通株式の価格が1株当たり440円になると、機構保有株式の普通株式換算ベースの時価総額は5,000億円に達する。
 
(注2 )新生長銀の普通株式の価格が1株当たり465円となっている時に、その価格で2 (2)の既存優先株式を普通株式に転換して全て売却した場合、この既存優先株式から得られる機構のキャピタルゲインの額は2,500億円となる。
 
(2)  機構は上記の要請に対し不合理に拒否しないものとする。〔3.5〕

 

.貸出関連資産の継続保有等
 
(1)  新生長銀は、金融再生委員会の資産判定により「長銀が引き続き保有することが適当」(以下、単に「適」と言う)とされた全ての貸出関連資産を引き続き保有する。〔第9条〕
 
(2)  パートナーズ社は、新生長銀が引き続き保有する貸出関連資産に係る債務者との良好な関係を保つため、少なくとも長銀買収時より3年間は、新生長銀に以下のような基本方針で融資の管理を行わせることを表明する。
 すなわち、特段の事情のない限り、( i )貸出関連資産を売却せず、( ii )急激な回収を行わず、かつ、( iii )借換え、季節資金等当該債務者の適切な資金需要に応ずることとする。〔第10条〕
 
(注1 )上記( ii )の「急激な回収を行わず」とは、契約上認められた債務者の期限の利益を守り、当該期限について債務者に不利な条件変更を行わないことをいう。
 
(注2 )上記(2)に関して、「特段の事情」のある場合とは、上記( i )については、債務者の保護の趣旨に反しない長銀の資金調達を目的とするローン・パーティシペーションや貸付債権の証券化を行う場合、( ii )及び( iii )については、回収を行わない場合や借換え等に応ずる場合に新生長銀に損害が発生することが合理的に予見できる場合をいう。

 

.当初引当金
 金融検査マニュアルに則った自己査定要領及び日本公認会計士協会実務指針に定められた基準に従って長銀買収時現在において適切に計上されることとする。

 

.貸出関連資産の瑕疵担保
 
(1)  長銀買収時において機構は新生長銀に貸出関連資産を売却・譲渡したものとみなす。〔7.1〕
 
(2)  長銀買収時から3年以内の間に、当該資産に瑕疵があり、2割以上の減価が認められた時は、新生長銀は当該資産の譲渡を解除することができる。〔7.1〕
 
(3)  解除の場合、機構は当該資産の返還と引き換えに当該資産の当初簿価(当初引当金控除後ベース。以下、同じ。)に相当する金額(それまでの間に返済額があれば、その額を控除した額)を新生長銀に払い戻す。〔7.2〕
 
(4)  (2)の「2割以上の減価」とは、同一債務者に対する全貸出関連資産のその時点での簿価(その時点での引当金控除後ベース。以下、同じ。)の総額が、それら貸出関連資産の当初簿価の総額に比し2割以上減額していることを言う。〔7.1〕
 
(5)  (2)の「瑕疵」とは、当該資産に関し金融再生委員会が「適」と判定した根拠について、長銀買収時から3年以内に変更が生じたか、又は真実でなくなったことが判明したことを言い、簿価の減価が長銀買収後の専らパートナーズ社又は新生長銀の責めに帰すべき事由によって生じた場合は「瑕疵」に含まれない。〔7.1〕
 
(6)  金融再生委員会が「適」と判定した根拠が明示されていない場合(例えば正常先の債権は原則として「適」と判定されている)等において、当該債務者に一定の客観的な事実が発生した場合には、新生長銀はそれを「瑕疵」と推定することができる。〔7.1〕
(注) 例:正常先の債権について長銀買収後から3年以内に元本又は利息の3カ月以上の延滞が発生している場合には、新生長銀は「瑕疵」の存在を推定できる。
 
(7)  債務者から債権放棄の正式要請を受けてこれに応じた時は、新生長銀は当該資産について解除権を持たないものとする。〔7.1〕
 
(8)  解除権の対象となる貸出関連資産は各債務者ベースで1億円以上のものとし、長銀買収後に更新借換及びロールオーバーされたもの等実質的に同一性のある貸出関連資産を含み、新規実行分を含まない。〔7.1〕
 
(9)  長銀買収時から3年以内の間に、戦争、自然災害、経済大恐慌等の不可抗力が生じ、その結果として債務者の状況が悪化したときには、機構の支払義務は制限を受ける。その際、機構と新生長銀は債務者の状況悪化がその不可抗力に起因するか否か等を含め公平な負担のあり方について誠実に協議する。〔7.2〕
 
(10)  解除権を行使する場合、新生長銀は四半期毎に機構に通知する。機構に異議があり双方の協議が整わない場合、双方が合意する会計事務所が検討を行う。新生長銀及び機構は当該検討結果を尊重するが、不服がある場合には裁判所に提訴することができる。〔7.3〕

 

10 .表明等
 最終契約は通常の企業買収契約に含まれる表明、担保及び補償を含む。これらの有効期間は、税務関係の表明違反については長銀買収日を含む事業年度の税務申告書の申告期限から5年間、税務関係以外については長銀買収後3年間とする。税務関係以外の表明違反に係る補償については、損害額の総額が50億円以下の場合は発生せず、総額が50億円を超えた後の1件1億円以上の表明違反について機構が補償する。〔第4条〕

 

11 .誓約
 最終契約は通常の企業買収契約に含まれる誓約を含むものとする。〔第5条〕

(本資料は「基本合意書」の概要を金融再生委員会事務局においてまとめたものであり、詳細については、「基本合意書」を御参照下さい。)


 別紙

長銀保有株式の売却方法(イメージ)


基 本 合 意 書
長銀買収に係る基本合意書の骨子

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