ディスカッションペーパー

16年度ディスカッションペーパー

2004年11月2日

  • 担保・保証と企業金融システム
    木下 信行   コロンビア大学日本経済経営センター客員研究員
    (金融研究研修センター特別研究員)

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2004年4月6日

  • 財務指標の時間依存を考慮した信用リスク評価モデル
    -デフォルト予測への応用
    安道 知寛   九州大学大学院数理学府
    山下 智志   統計数理研究所助教授
    CRD運営協議会顧問
    (金融研究研修センター特別研究員)

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ディスカッションペーパー要旨

担保・保証と企業金融システム

我が国の企業金融システムについては,担保・保証に過度に依存しており,企業の事業展開や銀行の金融仲介に弊害をもたらしているという指摘がなされている.筆者は,この問題については,担保・保証のみならず,債権と株式,企業の整理,企業会計等の広範な分野において,制度と実務が相互に絡み合ったものとして分析すべきものと考える.また,その際には,当事者の情報処理コストを中心に論ずることが現実適合的だと考える.

この観点から,本論においては,まず,関連する法制度について,当事者にとっての経済的機能という観点から概観する.すなわち,株式と債権を典型とする金融商品について,資金供給者の権利内容の変動と企業の経営に対する関与とのトレードオフの枠組みとして整理を行う.また,担保・保証についても,それが企業の整理において有する機能の切り口から整理する.

次いで本論では,企業と銀行等との間の情報量の格差に関し,当事者の情報処理コスト及び企業の経営規律について検討する.担保・保証がこれらに対して有する効果については,情報処理コストの節減の一方,状況変化に応じた能動的な事業革新や,経営困難に対する機動的な事業再構築には悪影響があると論ずる.

さらに本論では,こうした担保・保証に過度に依存した企業金融システムは,現在の我が国においては十分に機能しておらず,変革がすすみつつあるとしている.具体的には,民事法制や金融行政の変革等により,企業の状況把握,資金供給者への情報の伝達,資金供給者からの情報のフィードバック,企業の事業革新について,より早いタイミングでの情報処理が行われるようになってきていることを論ずる.

最後に,今後の展望として,ITの革新に伴って,企業整理の市場化,流動的な資産担保の活用などのビジネスの発展が見込まれることを指摘する.


財務指標の時間依存を考慮した信用リスク評価モデル
-デフォルト予測への応用

企業の財務指標などの情報から企業のデフォルトリスクを計測する財務アプローチについては、1960年代から数多くの研究がなされてきた。その長い歴史のなかで、多くの研究者が財務指標の時間依存を考慮すべきであると主張し、直近の時点で観測された財務指標のみならず、その変化率・時系列推移を表現する代替変数を併用することで予測精度の向上を試みてきた。しかし、経時情報の抽出方法やそれらをデフォルト予測へとリンクさせるモデルが未発達であったため、この重要な問題を根本的に解決するには至らなかった。

本稿では、関数データ解析の枠組みを利用し、財務指標の推移の代替変数等ではなく“財務指標の推移”そのものを説明変数とした新しい統計モデルを構成し、高精度なデフォルトリスク計測手法を提案する。実際のデータ解析を通じ、提案手法の予測精度は従来手法を優越し、その有効性が確認された。

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