柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成14年1月11日(金)9時53分~10時22分)

【閣議案件等】

本日の閣議ですが、塩川財務大臣がラオス・カンボディアをご訪問になられたその報告がございました。1月15日の閣議は取り止めまして、17日に財政演説等に関する閣議を行うということです。

坂口厚生労働大臣、川口環境大臣、村井国家公安委員長、石原行政改革担当大臣の各大臣が海外ご出張になりまして、坂口、川口両大臣の臨時代理に武部農林水産大臣、村井国家公安委員長の代理に中谷防衛庁長官、石原行革担当大臣の臨時代理に森山法務大臣が指名されました。

閣僚懇では格別ご発言はありませんでした。私も発言いたしませんでした。以上です。

【質疑応答】

問)

ダイエーについての再建計画が表面化して来ておりまして、これは大手銀行の経営に直結する問題だと思いますが、監督当局としての今現在でのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

答)

まあ、これは個別銀行のさらに個別の貸出先ということになりますので、それについて私はそれほどの用意もありませんし、また、そもそもそういうことについてコメントは出来ないということでございます。

問)

こういうケースの場合、不良債権処理を懸念してということだと思いますが、昨日から銀行の株が結構下がっておりまして、不良債権処理という観点と、話題になっています公的資金の投入という件について、今現在のお考えを改めてお聞かせいただけませんでしょうか。

答)

不良債権の処理は、予ての考え方に基づいて、これは促進をするということでございます。その一環として、いろいろな施策をしているわけです。検査について通常検査を強化する、フォローアップをすると。さらに特別な検査というか債務者に着目した検査もすると。こういういろいろな手立てを講じておりまして、それが不良債権の処理のオフバランス化にも結び付いて行くという格好で、その処理の促進を図っているわけです。

それはこの前も申したように、当然金融機関の体力というか、具体的に言えば自己資本比率というようなものに影響を及ぼすことが可能性として十分あるわけでありますけれども、その見通しとしては、私共としては、何と言うか、十分なそれに耐えられるだけの体力は持っていると、こういう認識であるということは、かねがねですね、これは通期見通しの問題で、6兆4,000億円とかという話との絡みで申し上げているわけですけれども、それはそうした体力は持っているという認識ですということを予て申し上げているわけであります。

問)

公的資金に関するお話なのですが、今日一部報道にありました中で、15兆円の危機対応勘定の拡大について政府の方で検討に入るという話がありまして、こういったことも含めて、現在での準備段階というか準備の状況についてお話いただきたいと思います。

答)

それは我々はそういう制度を持っているわけですから、準備と言うか、準備と言うと何か具体的な日程があっての準備ということ、そういう意味だろうと思うのですが、そういうことではなくて、常に、こういう制度を持っている当局としては発動をする場合について、いろいろと考えておくというのは当然のことで、私はもしそういうことを考えていないとしたら、それはやはり事務方の怠慢だと思いますね。そういうことで申し上げざるを得ないわけで、常にどんな制度でも、制度を持っている限りその制度の運用について研究をし、日々怠りなくその発動のいろんな考え方、問題点というようなものについて検討しておくのは当然だと思っておりまして、別にそれはその発動をしなければならん状況だとか、あるいは発動が目前に迫っているとかというように、我々はそういうことがあるからどうこうということではないということでご理解をいただきたいと、こう思いますね。

それから15兆円を増額ということについては、何かそういう新聞報道があったように今朝聞きましたけれども、何とも報道で知ったということでございます。そういう報道があったということを知ったということでございます。

問)

仮に公的資金の再投入というケースになった場合、預金保険法では経営責任の追及ということを一つの条件にしていると思うのですが、経営責任というのは、いずれのケースでも明確にとっていただくということになるのでしょうか。そのようにお考えになっていますでしょうか。

答)

経営責任を考えなければならないということは法律に書いてあるわけでしょ、今のご指摘の通り。だから、そういう場合には法律の条項に照らしていろいろ考えると。しかし、行政の法律の適用というのは、必要的なことで書いてなければ、そこでまた判断するということになるのだろうと思いますよ。要するに何のインプリケーションもありませんからね。皆さん何か具体の状況を前提にしたご質問をなさっているのかもしれませんが、私の方はごくごく一般論を言っているということです。

問)

今年の4月1日から、店を開けるのは全てが健全な金融機関にしていくと予て大臣は仰っていますが、地域金融機関、例えば信用金庫とか信用組合が破綻した場合、預金は全額保護されるというふうなお考えなのでしょうか。

答)

預金保険法102条に照らし、これはもうケースバイケースで判断するとしか言いようがないのではないでしょうか。それから、それはあくまで法律の適用でしかあり得ないわけで、その地域経済の信用の秩序について重大な支障が生ずるおそれがあるということが前提になりますよね。

問)

例えばその地域でシェアの高い信用金庫が潰れた場合には、保護するとかそういうことですか。

答)

まあ、そういうようなことも可能性として否定できないですね、法律の条項から言うと。それはもう考えるということではないですか、具体的な事案への法律の条項の適用の問題としてね。

問)

信金、信組がそうなら、地銀、第二地銀も当然あり得るということですよね。

答)

だって法律に書いてあることを私は言っているだけなんですよ。

問)

では大臣は、システミックリスクというのはどういう状況だと考えていらっしゃるのですか。

答)

それはこの前から言っているように、個々に考えるから建設的な曖昧さでご勘弁いただいているということです。

問)

ペイオフを導入する目的は何ですか。

答)

今の質問は、逆に、原則と例外をひっくり返して、「原則はどうしてあるのですか」というような議論なんで、「例外はどうしてあるのですか」というなら答えようがあるけれども、「そういう原則はどうしてあるのですか」と言っても、これはなかなか難しいですね。これは原則ですということです。

問)

よく巷間で「ペイオフの凍結は解除するけれども、運用面では全額保護するんだ」というようなことを言われているので、そういうような運用の仕方を本当にして良いのかという大臣のお考えをお聞きしたいのですけれども。

答)

ペイオフというのが原則ですと。だから予て言っているように、ペイオフを凍結しているというのは、これは臨時異例の措置ですと。だから原則に戻るのですということを言っているわけです。

それに対して、セーフティーネットとして金融危機に対して対応できる措置が定められているという制度がありますということです。

だからその通りに私は考えているわけです。

問)

前回の資本注入を振り返っていただきたいのですけれども、確かにあれから3年経って経済が良くならなかったという事情もあるのですけれども、前回の資本注入のやり方、それから量の問題があれで良かったのかと。当時、陣頭指揮を執られた柳澤大臣として、「ああしておけば良かった」、あるいはもう少し突っ込んで「こうしておけば良かった」というような反省点についてお伺いいたします。例えばですね、資本注入の量を当時もっと増やしておけば良かったとか、貸し渋り対策と抱き合わせにしたことがうまくなかった、あるいはリストラの問題・・・まあリストラはその後フォローアップという形でやっていますけれども、そのフォローアップの問題にしても良かったのかどうなのかと、この辺をちょっと振り返っていただきたいのですけれども。

答)

まず、我々は基本的に資本注入については、あれは2度目だったわけですよね。ですから、第一回目のいわゆる佐々波委員会ですね、そういうような時の状況を踏まえて、出来るだけ資本の増強額というものを大きくしようと、つまり何か公的資金だから出来るだけ注入額というのは少なくありたいというような考え方というのは、むしろなかったのですね、考え方として。出来るだけ、この際十分なというか、そういう資金を受け入れるようにというのが基本的な考え方であって、それに応じて、そういう考え方というのを非常に銀行に理解させるように、金融機関にですね、そういう考え方で入れて行ったと、こういうことで、その結果がああいう金額になったと、こういうことなんです。

ですから、そのことについて何か非常にこちらが公的資金なんだから、やはりそんなに大盤振る舞いは出来ないとか、必要最小限のところでと、そういう考え方ではなかった。これはもう皆さん、あるいはその時のことをいろいろ最近議事録でも出ているので、ご認識いただけるだろうと思うのですよね。

問)

その当時の判断、その後の銀行に対するフォローアップは、これで良かったと、十分だったとお考えでしょうか。その後の当局としてのフォローアップについてですが。

答)

フォローアップは健全化計画に基づいての我々のフォローアップなんですよ。

問)

当時の判断は良かったと、当時は当時であれ以外は出来なかったということで良いのでしょうか。

答)

あれ以外に何があったかということですね。要するに考え方が、こういう考え方でやりましたということなんですよ、我々は。それに尽きるのではないですか。

問)

当時の再生委員会に携わった人間、あるいは監督庁の方にいた方々と話をすると一部の人から、銀行に貸し渋り対策という大義名分を与えてしまったが故にリストラが十分に進まなかったと、経営責任も十分に追及できなかったということをお話しする人が一部にいるのですけども、大臣はこの点はいかがですか。中小企業対策はやはり通産省がやるべきだったんだと、そこを一緒くたにしたことが一つのボタンの掛け違いにつながっているという指摘があるのですが、どうでしょうか。

答)

これは何て言うか、再生法が作られたそもそもの理由なんですね。つまり、当時預金保険法の全額保護だけでいいんですよ、普通だったらね。ところがそれでは善意かつ健全な借り手の保護ということに欠けるところがあるという認識を国民全体が持ったわけでしょう。それでその認識の結実が再生法だったわけですよ。だから、それは国民の英知の結晶ですよね、国民代表の英知の結晶なんだから。それを今、あげつらうということは…。もうちょっと歴史のですね、時間が経過する、時間の濾過が行われた後にいろんな評価というのは、私歴史の問題というのは常にあり得ると思うんですけれども、そこのところはやはりなかなかそうではないのではないですか。それは非常に厳しく行けばね、「何言ってるんだ。善意かつ健全な借り手だったら絶対に他に貸し手は出てくるはずだ」と。やはり何と言うか貸し手を見つけられなかったというのは本当の意味で善意かつ健全な借り手ではなかったのだろうなんていうような議論だって、それはあり得るかもしれませんけれども、それはそうではないと。当時皆で考えたのではないですか。

問)

大臣の仰っている善意かつ健全な借り手を、ある種選別するために今度、特別検査をやっているかと思うのですが、その辺の変化というのは大臣の中では景気情勢とかいろいろあると思うのですが、どういう変化でそういうスタンスの変化に結びついているとお考えでしょうか。

答)

これはやはり、非常にいろんな要素があるわけですよね。今言ったように、マーケットはそういう善意かつ健全な借り手ということで保護をしたと、できるだけそういうものの融資を継続するようにしていたと、してきたわけですよね。それに対してやはりマーケットで打たれた例が出てきたということで、今回はと言うか、そういうものに対して十分な備えがないというのは非常に金融機関の信頼ということに関わりがあるということで今度、特別検査をするということですね。

だから、それは変化と言えば言えるのかねえ、ちょっと難しいところだと思いますね。今は事実を言っただけですね、考え方を言っているわけではないのですね。

問)

ペイオフが4月から実施になって、よく言われるんですが1年から1年半くらいの間は出来るだけ平穏に過ごしたいと。そのためにもいろんな政策を打っているという感じで考えているんですが、先程の最初の発言では、ある程度地域的な中小とか、信金とか信組とか具体的な話なのですが、そういう個別の対応も積極的にやりながら、そういう地均しをしていくと、そういう認識で宜しいのでしょうか。

答)

要するに、4月1日に店を開く金融機関については御信頼頂けるようなものでないと困るわけですね。それは基本的なところですよ。その後について、どういうふうに考えるかということでありますが、これについてはやはり経済のことで生き物ですから、あんまり予断を持っていろいろと考えるというわけにはいかないと思いますね。ですからやはり1年、1年半というのはどこの話か、ここで別に申し上げた記憶もないですけれども、要するにそうなると、またそういうことを言えばというか、あなたの言うことをエンドースすればエンドースしたで、それではまたそこで全部救っちゃうんですねと。これまた例外の方に戻ってしまうのではないですか、そういうシステムだということになればですね。

ですからやはり我々としては基本的に健全なもので、それなりの経済の推移に耐えられるようなものにしておくということを考えていると。しかし、例外的にいろいろな状況が発生するということに対してはセーフティネットとして個別にケースバイケースで判断して、適切な措置を講じていく、セーフティネットの発動をしていくと、こういうことに尽きるのではないかと思っています。

問)

一点、お考えを確認しておきたいのですが、今、公的資金で持っている優先株について、普通株への転換ということについてはどういうふうにお考えなのでしょうか。

答)

これは今現在どう考えているかと言えば、今現在は、かつて「基本的考え方」で言った通りのことを考えていると、こういうことです。やはり基本のところでは普通株を入れるというのは、あれは過少資本の場合だと思いますね。過少資本に陥っている場合という基本的な考え方です。

問)

預金保険法102条というのは、大きな枠組みとしては1号措置ができなければ2号措置、2号措置ができなければ3号措置と、そういうような流れで書かれていると思うのですが、信金・信組に対して2号措置があり得るということは1号措置も当然あり得ると、そういうような考えで宜しいのですか。

答)

1号措置がだめなら…、「だめ」というその意味がよく分からないんだけれども、そこまでリジッドにはなっていないのではないですか、法律の読み方として。

問)

可能性はあり得るけれども、組み立てはそういう組み立てになっているということですか。

答)

まあ一応組み立てはそういう組み立てであるかのごとく書いてあるようですね。

問)

ここの趣旨から言って、信金・信組に2号措置をやるんだったら、「やる」と今、大臣仰いましたよね、「やれる」と、「やれる可能性はある」と。

答)

ケースバイケースです。

問)

そうしたら1号措置はもう当然あり得ると、そういうことですね。

答)

ケースバイケースです。ないとは書いてないですよ。

問)

信金・信組の経営危機で、システミックリスクで資本注入というのはちょっとその…。

答)

ただ、信金の中には、規模が大きい所もあるんですね。業態では言えませんよ、これは、業態では。それは某紙が、業態で何か◎、○と、こういうことをやるとですね、バイアスというか、世の中の人に私はかなりミスリーディングなことになると思いますよ。

問)

大臣の発言をそのまま受け取るとですね、「私は信組に預けているけれども、どうやら資本注入もやるらしい、破綻しても全額保護してくれる」と、そう期待しますよね。

答)

いや、モラルハザードが起きないように言っているつもりですよ。ケースバイケースで判断してと、法律の条項に照らしてと。

問)

公的資金の乱用を避けるために、例えば大臣はどういう規律を考えていらっしゃいますか。

答)

だからそれは法律によると言っているではないですか。

問)

ケースバイケースでは全然分からないではないですか。

答)

だから分からないように言っているんですよ。予て言っているように。それはもう水掛け論になってしまいますよ。

問)

全然安心しませんよ。

答)

誰がですか。

問)

預金者が。

答)

安心できませんよ、自己責任の世界なのですから。だから、それは言っているように、やはりシステミックリスクが起こった時というか、あの法律の条項に照らして我々は判断するということを言っているわけです。総合的に考えて。

問)

では、我々が持っている認識よりも相当緩く運用するということなのでしょうか。

答)

要するに法律通り運用するということです。

問)

大臣のお言葉から規律というものを感じないのですけれども、いかがですか。

答)

いや、そんなことはないですよ。今言ったように、「自己責任の世界ですよ」と、「原則的な考え方ですよ」と言っているわけです。しかし、今の時に○、×、△でこれはもうないんですということを言って、「この業態の場合はあるんです、◎です」とやったらどういうことが起こりますか。それはもうまさに建設的な曖昧さということではないですか、それは。ただ業態別に◎、○、△というふうにやったら、それはもう逆に言ったら、それはディスプリンの問題ではないでしょうか。

問)

業態と規模というのは概ね一致しているけれども、多少ダブりますよね。そういうことを仰っているのですか。

答)

そういうことも言っているんです。

(以上)

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