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柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成14年2月5日(火)10時17分~10時38分)

【閣議案件等】

おはようございます。本日の閣議の閣僚発言としましては、地球温暖化対策推進本部のメンバーに、閣僚全員が指名されるという発表がありました。東ティモール難民の緊急援助の話がありました。H- II Aロケット打ち上げの状況についてのお話がありました。詳細はそれぞれの担当閣僚からお聞きいただければ良いと思います。以上です。

閣僚懇は特に発言はありませんでした。

【質疑応答】

問)

株安が今日も最安値を更新するような水準で続いておりまして、これは市場関係者などによりますと、昨日の首相の施政方針演説、いわゆる構造改革の部分などについての評価及び信用が出来ないというような評価があるとも聞きます。その中で、「2004年度に不良債権問題を正常化する」という部分と、「金融危機を起こさせないようにあらゆる手段を講じる」というくだりがありますが、この辺りに対する懸念も大きいように思われますが、大臣のご見解をお願いします。

答)

構造改革については、総理は冒頭特に付け加えて、「支持率の低下はあるけれども、自分の構造改革に対する決意はいささかも揺るがないし、確固とした信念の下でこれを前進させて行く」という、そういうメッセージがございました。従って、市場の見方がどういうものを根拠にしているかということは、ちょっと理解しかねるというのが私の見方です。

それから、2004年度、つまり集中調整期間の終了した次の年度になるのでしょうか、その時にはもう正常化しているように不良債権の処理を進めるということ、これは我々は方針は全然動かしておりません。そのつもりで、覚悟、決意でこれもまたしっかりやって行こうということでありまして、ここのくだり辺りについて何か、何と言うのですか、今仰られたような市場の受け止めがあるとしたら、それはよく分からないということですね。

それから、あらゆる措置、手段を使って金融危機には対応して行くのだということについては、これは法律的な枠組みもあるわけで、それはもういささかもそこには疑念を差し挟む余地はないというふうに思っていますので、市場の方々には一つ良く政府側の考え方、それから法的な枠組み、それからそれを運用する決意というようなものについて正しい理解をしていただければなと、こんなふうに思います。

問)

話は変わりますけれども、東京海上と朝日生命の件ですが、朝日生命の方にその後解約が出たりですとか、格付けを大幅に下げるといったような評価が出ておりまして、経営不安説といったような話も出ております。このことについてのお話を、今現在というところでお願いします。

答)

世情にそういう見方が、一種のレスポンスとして出て来るということは、ある意味で予想されることだと思います。あのようなことがちょっと予定通り進まないという事態が起こると、それに対してはそれぞれの経営者がきちっとした対応をして行くということは、これはもう私は経済界の常識だろうと、こういうように思います。従って、朝日生命の経営者の方には、そういう強い姿勢でこの局面に対処してもらいたいと、これは当然のことだと思います。

問)

朝日生命として銀行の方の支援を要請している向きもあるようですが、これは順調に行くというふうにお考えでしょうか。

答)

それは基本的にそうだと思います。

問)

昨日、経団連の今井会長が記者会見で「金融機関の時価会計について、適用を見送ったらどうか」という趣旨のご発言をされたのですが、この問題について大臣はどのようにお考えでしょうか。

答)

そうですね、仮に今井会長の言うお話が実現したとしても、それはもう分かりきったことなんですよね、数字的に言っても。そういうものというのはどういう意味を持つのかと。つまり売却益を使って、その資金を使って処理損を処理するというようなことが出来る、出来ないという話だろうと思うのですよね、実体的に言うと。だから、それが出来ないということで、あまりどういう効果があるのかなあということには私は疑問を感じます。

ただ、何か心配をしているのかなあと思いますが、我々としては株価は心配です、正直言って。株価の方が税の効果がないだけに、もろ評価損が自己資本に影響するという意味では、100%影響するという意味では心配ですけれども、前から言うように破局的なことでない限り、受け止められるだけの自己資本を持っているというふうに思っていますから、そういうことが非常に大きな援軍になるというふうには思っていないわけです。

問)

昨日の森長官の記者会見で株式の取得機構に関連して、銀行が取得機構に株を売却しても、BIS規制上のリスクアセットは減らないのだというような見解の説明があったのですけれども、そういうことを考えますと、取得機構の本来の目的である株価の変動と金融システムを切り離すという狙いが達成されないのではないかと危惧するのですけれども、大臣のご見解はいかがでしょうか。

答)

これは良く話を聞いてみないと分からないなあという気持ちが現在の気持ちで、これが終わってからでも適当な時間に説明を聞きたいなあというように思っています。どうもちょっと、BIS規制の方の話を聞かないとちょっと私もまだすっきりと、どこかの記事にもあったように思いますけれども、まだ十分咀嚼しきれていません。これは聞いてみたいと思います。

問)

話は変わりますが、アメリカのエンロンの問題に関連して、アーサー・アンダーセンという1社の問題に限らず、公認会計士や監査法人のモラルの問題であるとか、あるいは監査法人とコンサルティング業務のファイアーウォールの問題、あるいはオフバランス取引のディスクローズの問題といった企業会計全般に渡る問題が出て来ていると思います。これらの問題というのは日本にも共通する部分が多いと思うのですけれども、大臣はエンロンの問題というものをどういうふうに整理して受け止めていらっしゃるのかと、日本の金融行政にどのように活かして行くか、お考えをお聞かせください。

答)

これは私もちょっと記事でいろいろ読んでいるわけですけれども、前のSECのレビット委員長が「そこは非常に危ない」ということで改革をしようとして、議会筋の反対で改革出来なかったという経緯があったようですね。議会は今や、レビットさんをまた公聴会に呼んで「あなたは正しかった」と言って、今、レビットさんに兜を脱いだという話を聞いて、私は大変関心しましたね。

大体レビットさんの考えについて、予て私もいろいろの時に、彼とも会ったこともあって興味深く見ていますけれども、本当に公正な会計処理というようなものが、まさに資本主義社会のインフラ中のインフラなんだという、明快な哲学を持っているのですよね。それで、そういう理念に照らして、おかしなことはおかしいと、直そうということを勇気を持って言っているということを私も非常に彼の態度に感銘を受けて、受けるだけではなくて、我々もそういうことをして行かないといけないということで、時に応じて私も事務方にもそういうことを話したりしているのですけれども。

この受け止め方として、アメリカだって結局こうだったではないかというような受け止め方というのは、やはり正しくない。やはり本当に金融というか、そういうリスクの配分ということをして行く場合に、監査であるとか、あるいはディスクロージャーというようなものの重要性ですね、これをもう皆、肝に銘じてやって行かないといけないと思っています。

問)

ペイオフ解禁を控えて、地域の金融機関等が、財務体質の強化等の努力をしていると思うのですけれども、そういった中で中小企業に対して貸し渋りというか、そういうような事態が現在起こっているのか、それとも起こっていないと思われるか、現在のお考えをお聞かせ下さい。

答)

これは何て言うか、エピソード的にはちょっといろいろ記事で見たり、耳で聞かされたりというようなことがありますので、私も注意しなければいけないというようには思っています。ただ何というか、そういうことの中には最近の金融機関の態度について私も友人筋というか、予てから知っている中小企業の経営者などにもいろいろと「状況はどんなふうですか。」と聞いたりするのですが、私の友人たちは、「金利の上げを言ってくるんだよね。」というようなことで、信用リスク部分のスプレッドを取ろうという態度だということで、これはこれで一つ合理的だなと、こう思っています。

私は直接は具体の話としてなかなか聞いていないのですけれども、ただ一方、金融機関の貸出態度DIというものを日銀がずっと時系列的に発表していますね。これを見ると、最新のデータは12月でしたかね、最新のデータは12月で、総体はプラスマイナスゼロなんですよ。つまり、「厳しい」という人と「緩やかだ」という人がちょうど半分半分だと。それで、中小企業、大企業とあるのだけれども、中小企業のところは、やはりマイナス6なんですよね。ただ、それが最悪の時にはどれくらいだったかというと、マイナス22なんですね。そういう数字を見るとですね、若干厳しくなってきたのかなという感じがあるのですが、世の中で強く言われるほどには至っていないということを、その数字が意味しているのではないかとこういう受け止め方をしています。ただ、私は注意を払っていきたいと、こういうように思っています。

特に年度末を控えて、いずれ早い機会にその点はまた年末にもやったことですけれども、あらゆる金融機関に集まって頂いて、年度末金融についても注意を喚起したいとこう思っていますから、その際にでも特に金融機関側には、無用な…まあ無用なことをやっているとも思いませんけれども、そこはよく配慮をしてやるようにということは申し渡さないといけないと、こう思っています。

問)

株価の低迷の銀行への影響なんですけれども、かねがね9月末の9,774円ですか、それを下回るようでなければ心配は要らないみたいなことを仰っていましたけれども、最近ちょっとそれを割り込んでいるのですが、これとの関連で改めて銀行への影響についてどのようにお考えでしょうか。

答)

これはですね、この前の9月末の中間決算の時にどういう状況が起こったかというと、今御指摘のように9,774円だったわけです。その前の3月末はどうだったかというと、これは有名な数字ですけれども、12,999円70銭という数字だったわけですね。13,000円の声は聞けなかったけれども、ほぼそこに非常に近い日経平均だったわけですけれども、それから9,774円というのは、ほぼ25%ダウンなんですよね。計算は間違っていないと思うんだけれども、自分で計算したんです。

それが、銀行の自己資本にどのくらい影響したかというと、大手行に対する影響が0.6%なんです。という数字を持っておりまして、これは実際にあったことなんですが、それを基本にしてどう見るかということですね。これはTier2との関係…Tier1にアタックしますからTier1が減ると、Tier2も満杯までやっている時には影響を受けるものですから、そう簡単になかなか言えないわけですが、少なくともTier1に対する影響だけで言うと、1兆で0.17%でしたかね、評価損がですね、いろんな数字を言って恐縮ですが。これは主要15行を併せての話ということです。今はもっと少なくなっていますけれども、昔のベースで主要15行ということです。

そういうことですので、我々のシュミレーションというのはもっと厳しいことも含めてやっていますけれども、しかしいずれにせよ、そんなことだから大丈夫だなどというつもりは毛頭なくて、極めて、極めてというか我々は強い関心と懸念を持って相場の推移を見ているし、また何か反転をさせられることが、何かそういう出来事が起こってくれることを祈っているというか、そういう感じですね。

(以上)

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