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柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成14年7月12日(金)9時45分~10時17分)

【閣議案件等】

本日の閣議ですけれども、外務省と並んで、外務省の方は大使の退任の閣議決定だったのですが、私ども金融庁の閣議了解の人事もそこにかかりまして了解を得ました。それから「沖縄振興計画」、この前の沖縄振興の会議で決定された事でございますけれども、閣議にも報告がありまして了承されました。

閣僚懇に移りまして、政官のあり方という事についてフリートーキング的なものが若干行われました。以上でした。

【質疑応答】

問)

一昨日の地域金融機関の合併促進策において、自己資本充実のための公的資金の再注入についても検討するというような事でしたが、従来は、大臣はこれまで金融危機、勿論現行では金融危機のおそれがある場合にしか公的資金は再注入できないということで、いわゆる金融行政の方針転換ではないかというような見方もあるのですけれども、この公的資金の注入の位置付けについて大臣のご見解をお願いします。

答)

これはどういう時に私が公的資金の投入について否定的だったかということは、一々は必ずしも記憶していませんが、基本的にはやはりそれぞれ話題になった段階で預金保険法102条を使って公的資金を入れるということについては、まあ必要がないのではないか、更にそういう事をやれば、折角緊張感を持って経営の強化、健全性の向上等に真剣な努力をしているところが、やはりそれが弛緩してしまうと、そういう意味でのモラルハザードというのですか、そういうようなことがあるではないかとか、あるいは広い意味では収益性に必ずしも貢献するものではなくて、逆に収益性の足を引っ張ってしまうというような事も考えられるというような諸々の事をその都度指摘しておいたと思いますが、まあ総じて言えば、まだ他にもありますけれども一々ここでは申さない事にして、そういう事を指摘して私はそういう事はしないのだということでこれまでやって来たわけであります。それはもうご指摘の通りですね。

今回、合併等の促進策ということで、自己資本の充実のための施策、こういう事を謳っているわけですが、その中で、まだこれは検討課題というか検討項目ということですから、別に我々は結論を出しているわけではありませんが、そういう合併等を行った時に、かなり当初、いろいろな意味でコストがかかることが予想されます、正直言って。リストラであれば、退職金がいる、店舗の統合、これも場合によっては除却損が相当立つ。まあ別途いろいろ他には手当てしようと思っていますけれども、システムの統合だって相当お金がかかるというようなことで、そういうコストがかさむ事について出来るだけ早く合併等の効果を出そうとすると、これは一気にやらなくてはいけないということになりまして、それはやはり場合によっては、ケースによっては自己資本に対して負担になるというか、そういう事が考えられまして、ですから、そういう事のために今言ったような合併等の効果を出すのに時間がかかるだとか、あるいは合併そのものに対して逡巡してしまうだとかというような事はやはり防がなくてはいけないと。つまり、先程言った事との関連で言うと、非常に将来は健全性も高めよう、それから収益性も高めようという、そっちの努力がまずある。そういう時にそれを後押しするということが考えられないかと、こういう事であります。

それで、要するに今は金融危機の時に102条があるわけです。かつても金融危機の時に対応するものとして健全化法が存在して、公的資本注入が出来る事になったのですが、平時、そういう金融危機でない時に何があるかと言うと、今は破綻金融機関を引き受けた時、それに伴って自己資本比率が低下した時に、破綻金融機関を引き受ける前の自己資本比率に回復するために必要な自己資本増強のために公的資金を使うという事が出来るようになっています。ですから、その隣と言うか、その領域にもし位置付けようと思えば、今度の合併等促進策としてのものも位置付けられるのではないか、位置付けられるであろうと、こういう考え方をして、検討の俎上に載せてご議論をいただこうと、こういうふうに考えているということです。

問)

確認ですが、いわゆる引き受ける側の銀行が注入の対象という事で良いのですか。

答)

いや合併だから、対等合併もあるのだから、新しく出来る銀行です。

問)

金融行政の転換ではないかというご指摘については大臣はそうではないと仰っているのですか。

答)

今言った通りです。

問)

三井住友銀行がいわゆるグループ会社を傘下に収める持株会社構想というものが出ておりますが、先日の塩川大臣のコペンハーゲンでの発言等もあって、何かそういう動きが今後強まって行くのかとか、それから会社設立の認可という作業もあると思うのですけれども、この点については今、どういう状況なのでしょうか。

答)

三井住友のお話は、報道で私も今朝ほどから、まあ正確に言えば昨日の夜回りから聞かされていますけれども、それ以外には何ら聞いておりません。聞いておりませんので、これはコメントのしようがありませんし、全く聞いていない話です。ですからこれはそういう事としてご理解していただきたいと思います。

従って、それ以上コメントするというのも変な話なんですが、結局、今いろいろ経営戦略を考える中で、いろんな動きが出ているわけです。そういう動きもその一環かもしれないし、特に地域金融機関ではかなりいろいろ統合の動き等も出ておりますので、まあ何と言うか、それはいろいろ将来の厳しい環境を想定して自分達が一つの経営戦略を描く中で、今言ったような経営の組織そのものに係るような動きが出ているのだろうと、こういうように思っております。

塩川大臣のご発言は私はちょっとコメントを差し控えさせていただきたいと思います。

問)

合併促進策の資本注入ですけれども、資本注入する際の条件としてですね、大臣として考えていっしゃることはありますか。

答)

ですからさっきも言ったように、基本はこれから検討していただくということですが、基本的に先程言ったように経営のいろいろな効率化、あるいは健全性の向上、あるいは収益性の向上と言ったようなことが緩んでしまうような話というのはないですよ、ということです。それを推進するような話を後押しするというか、その時に必要かと言われれば、必要だと言わないことは十分ありえるわけですけど、道具としては必要だという時に、我々が見てこれは相当なものだと、今言ったような方向性ですね、経営戦略の点からそういうものについて必要だと、そういうことを実現するために必要だということについては、そういう道具立てを持っているのがいいではないかとこういうことです。

ですからさっき転換ではないかと言われたのですが、そこは全然ひっくり返っているわけですね。話題になった時にやると、そういう努力を弛緩させてしまう、緩めてしまうようなことになることを我々は懸念したということでございまして、あくまでも狙いは日本の金融の健全性の向上だし、収益力の強化だし、というところにあるということであります。

問)

支援策を時限措置にされていますけれども、それは要するに時限措置の間に必要な再編は済ませて欲しいという、そういった思いもあるのしょうか。

答)

それはないですね。ないというか、要するに予め何か再編の絵があって、それに合わせようということで、いわゆるアメとムチですか、そういうようなものを考えているかと言えば、そういう発想をしていません。そうではなくて、今後非常に厳しい中で競争が行われるわけですが、そうした時に自分たちの金融機関の将来展望に立って、さっき言ったように経営戦略の新たな展開を考えると、それは個々の金融機関のということですが、そういう経営判断がある場合にそれに対して、それが我々の方から見てもさっき言ったような理念に照らして合致しているというときに、どういう手立てで支援というか応援しましょうかという、そういう発想です。

問)

一連の税制とか財政の支援策、これから作ってですね、スピードなんですけど、次の臨時国会なのか、それとも通常の予算のように通常国会なのか、その方向感はどうなのでしょう。

答)

できるだけ早くやりたいけれども、これはやはり相手のあることでですね。我々が期限を切ると値切られちゃうというかそういう恐れもあるんですね、これはまあ戦術上も言わないでおきたいと、こう思いますね。

問)

それからもう一つ塩川さんに対してコメントを差し控えたいと仰いましたけれども、この件についてデンマークから帰られてからお話になられましたでしょうか。

答)

しましたよ。しましたというか別に対談ということではなくて、「こう言ってきたからね。」と言って、まあいつもの塩川大臣の調子で、横に座った時なんかにどういうことだったんだというのはご説明いただきました。

問)

大臣、これは三年前大臣が再生委員長の時の話に似ているんですけれども、あの時は例えば地域金融機関はもっと経済圏位の大きさとか、まあ一県に二行、その時委員長は否定していましたけれども、その位の覚悟でやる必要があると仰っていたと思うんですけれども、それでその後再生委員会の議事録でもこの話が三年前にあったと出ていますけれども、この話は何故、まあたぶんそこですっとんでしまって、またペイオフの前に出てきたのですけれども、その間はどうなっていたのですか。

答)

まあ再生委員会の時にですね、地域金融機関に対する資本注入もあるということでいくつかの例はありました。いくつかの例はあったんだけれども、まあ結局健全化法が効力を持っていた時に大きな進展があったというまでには至らなかったと、これはまあ認めざるを得ないというように思います。考え方としては、金融危機が起こって、その後協同組織金融機関については一年延長したりしていますので、ちょっとそこのところの色合いというのが少し薄らいで、平時の資本注入ではなかったのかという見方というかそういう評価もあるかもしれませんが、基本的には1997年、98年の金融危機対応の一環だったわけですよ。ですから今度はそういうことではなくて、いわば新しい環境条件の中で今起こっていること、あるいは今起こっているようなことがさらにどんどん出てくるということを考えた時に、もう少し政府としても手立てを考えておいていいではないかと、こういうことでございまして、最近も皆さんお気づきの通りかなり出ているんですよね、現実問題。そういうのを本当に強いものにしていくということで、もし当事者というか、当事者の金融機関がそういうことを望めば、いろいろ手立てをこちらが設えて置いてそれを活用してもらうと、そういうことをまあ考えているということですね。

問)

ですが、三年前と今の考えはやはり、大臣はあの時もうちょっと強く仰っていた感じがするのですけれども、今の施策はちょっと弱くなった感じがしますけれども。

答)

現実は動いているのではないですか、あの時よりも遥かに。現実は。現実は動いているし、また今後とも動くということが展望されるのではないでしょうか。

問)

実際に打診があるのですか、これがあればぜひ使いたいという。

答)

そういう打診はないのだけれども、国会の議論等聞いていると、やはり何と言うか例えば人材、経営者としての人材というものを見た時に、やはりそんなに沢山はいないということの中で、それぞれの金融機関をどう持っていくのだというような意見の開陳もあって、私もそれはその通りだというふうに思ったりしておりまして、従ってこれから本当に本格的な競争の時代に入ってくるということの中では、これは非常に大きなテーマになっていくだろうと思っておりまして、それに対して政府側もいろんな道具立てを揃えておきたいとそういうことです。

問)

その時はまあ例えば地域金融機関でも8%位が望ましい、やはりその位あるいはそれ以上の目標があるべきだと思うのですか。

答)

今まだ詰まってませんからね、その結果例えば出来上がりがどのくらいであるべきかというようなことについては、そういう画一的な基準をここで申し上げられるだけ、まだ話がそこまで詰まっていないということです。

問)

ペイオフの全面解禁を睨んで、その前に金融機関の、特に信金・信組の足腰を強くしておきたいと、そういう狙いはないのですか。

答)

これはペイオフとは関係なく考えていたんですけれどね。だけど、まあ確かにペイオフになれば、先程から言っている競争というようなこととかですね、そういうものが厳しくなる中でその要請が一層強まるという、そういうことはそこまでは否定しません。ただ我々はこのことについて、そういうことではなくてあの発表の時点を考えて、4月12日の時点を考えて、要するに新しい施策というかそういうものの一環で公表させていただいて検討させていただきますということを言ったわけで、直接の関係は正直言ってないです。

問)

今日将来ビジョン懇の発表があると思うのですが、大分資料が厚そうなので、大臣なりのポイントをちょっとお聞かせいただければと思うのですが。

答)

これは、非常におもしろい議論を聞かせていただきました。私もかなりいろいろ私が日頃仕事をしている中で感じていたりしたことを申させていただきまして、それについてそういう有識者の皆さんにまあいろいろ問題を整理してもらったりというようなことでございました。

中身ですけれども、まあ基本的に、大前提はやはり日本経済が持っていたリスクというものがですね、これだけキャッチアップの頃に比べてフロントランナーになって、そういう経済的な発展段階を考えると、日本経済が持つリスクそのものが、総量がですね増えているんではないかという認識がまず前提です。具体的に言えば、要するにフロンティアの新規事業は、当然のことながら当たる当たらないというリスクはあるわけだし、それから伝統的なそういう産業分野でもですね、途上国あるいはいろいろなアジアの近隣の国から追い上げられていくということですから、それがいつまでも安泰かという意味では全然リスクは昔と違って高いわけです。まあ日本の場合キャッチアップであったということと、周囲の諸外国の経済が非常にまだ発展していなかった時なものですから、非常にリスクの少ない経済であったということが言えようかと思います。そういうなかで、これからリスクが非常に大きい経済の中で、金融機関というのはどうしていったら良いかと言うと、基本的にはいわゆる産業銀行モデルと言うか、預貸の業務を中心にして、それから貸金を金融機関がじーっと持っていると、そういうようなことではなかなかそこに生まれてくるリスクにですね、銀行として耐え切れないというようなことがあるのではないかと。そこでもっと貸出金債権を流動化するような市場というようなものを持って、それを流動化するというようなこと等を含めてですね、要するに銀行の機能分化、銀行にしろ証券会社にしろ機能分化する。つまり金融商品を生産する製造業とそういう生産された金融商品をディストリビュートする、そういう流通業とをそれぞれ分けていくということをこれから考えていかないといけないのではないか、そういうことによって市場金融型のビジネスモデルに、先程言った産業金融型のビジネスモデルに対して市場金融型のビジネスモデルという命名をしてもらっているわけですけれど、そういうところにかなり転換していくということが考えられる。では今までの産業銀行型のモデルというものは全くなくなってしまうのかというと、それはそうではないと。それはそうではなくて、例えば地域金融なんかでは、例えば債務者企業とのリレーションシップという言葉もかなり出てくるんですけれども、そういうリレーションシップを重視したようなそういう産業金融型のビジネスモデルも十分存在の価値を持っていると。ただウェートとしては、やはり市場金融型のモデルが大きいだろうと。そこで最終的には、一つのビジョンとしては市場型金融モデルを中核とした複線型の金融システムと、こういう言い方をしております。複線型だから両方ありますよと、ただ中核、重要性をより大きく持っているのは市場金融型のビジネスモデルだろうと。そういう中で、各論において、それでは仲介金融機関はどういうことに直面するだろうか、あるいは企業はどういうところに直面するだろうか、資金を出す個人はどういう問題に直面するだろうか、というようなことをできるだけ整理したと、こういう形になっているのです。全体としてはまずビジョンが書いてあって、それで現状とそのビジョンにブリッジしていく、架橋していく時の問題点、その中に不良債権問題というのも位置付けられている、こういう構成になっております。大体そんなところです。

問)

あと政府の基本方針がありましたよね、あれへの反映というのはどうやっていくのですか。

答)

ですからまあ、言ってみると事務局のほうにも叱られるかもしれないし、蝋山先生にも叱られてしまうかもしれないけれど、結局中間製品的な位置付けになっていると。それを更にエラボレートして、何と言うか政府の公式のビジョンにしていくということです。大体蝋山先生なものですから、両方とも主導者は。そこは蝋山先生が心得てやってくださるのではないかと、こういうふうに思っています。

問)

要するにこれはリスクに合う貸出金利・・・。

答)

そういうことも書いてあります。

問)

それがやはり公に言えばそういうことですか。

答)

先生方がそう仰ったということです。私も中に入っていましたけどね、一応。

問)

やはりこういう議論というのはかなりもう出尽くしていると思うんですけれども。

答)

出尽くしてはいるんだけれども、ただ政府の議論もありましてね、ビジョンってどういう機能を期待されているんだろうかと言った時に、こういうふうに政府の近くにいらっしゃる方のというか、政府のビジョンと言ってもいいんですが、「そういうものがバンと出ることによって、国民全体の認識というかカルチャーというか、そういうものを受け入れていかなければいけないんだ、これからは。」というそういうものが醸成されると。さもなくば、いろいろ議論されていても国民全体の一つの通念にはならないと。やはり国民全体の通念になるということがとても大事で、それをビジョンという形で打ち出すというのが効果があるというか、そういうことに近づく効果を持っているのではないかと、こういうことですね。

問)

これが架橋になると仰ったのですけれども、やはりかなり具体的に区切りとか年限とかつけるんですか。

答)

これは当初から私共がお願いしたんですけれども、やはりこう一つ一つの行政の施策を打っていく場合もですね、こういうビジョンがはっきりあると考えやすいんですよね、一つ一つが。そういうことでありますから、このビジョンそのものが、「いつまで」という、そういう考え方をとっていないと私は受け止めています。

(以上)

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