柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成14年8月27日(火)10時33分~11時10分)

【閣議案件等】

閣僚の発言を紹介しますが、平成14年度の人事院勧告が出まして、給与担当関係閣僚会議で引き続き検討ということになっておるということでございます。

総合防災訓練が行われるというご報告がありました。

閣僚から海外出張のご報告がありました。

文化審議会委員の任命について了解がなされました。

川口大臣が現在海外出張中ですが、福田官房長官が臨時代理を務めているという話もございました。

閣僚懇に行きまして、村井大臣の方から食品安全委員会の新設がなされるにあたって、機構定員・予算の概算要求が行われるという話とともに、基本法の準備もしているという話がありました。それと裏腹な関係の面があるようですが、農水省の再編の話がございました。

それから「日本海」か「東海」かということについて、外務省の適切な対応を求めるという話もございました。

日本ハム・日本フードの事件についての若干のご報告がありました。以上です。

【質疑応答】

問)

昨日の政府与党連絡会議の席上で、野田党首から決済性預金の保護の件で、技術的にも分かりにくいしコストもかかるということで、ペイオフの解禁の延期をまた改めて求める声があったということですが、業界の方からも同じような意見というのがあると聞いています。そういう意見が出ていることについて、大臣のご感想を伺いたいのですが。

答)

今検討中なので、その過程の中でいろいろとご意見が出るということは当然ですし、そういうことにも、言わんとする所にも配慮して制度を作り上げて行かなければいけないと、こういうように考えております。

問)

昨日の同じ会議で、生保の予定利率の件で、公明の冬柴幹事長から意見があったようなのですが、その時の大臣の説明を聞くと、どうも慎重に取り組むべきだというような印象を受けたのですけれども、この件について大臣の真意を伺いたいのですけれども。

答)

これについては、その問題が予てあるということで、我々としては金融審にご検討をお願いしたのです。しかし最後の段階でパブリック・コメントにかけたところ、反対という声が多くて今それをすぐに実施に移せなかったということであります、という経過報告を私からしたわけです。しかしこの問題についてはやはり勉強の一環で、今後とも勉強の対象にしていく考えでありますと、こういうことを説明したということでございます。

問)

以前お聞きした時から大臣の姿勢は変わったというわけではないのですね。

答)

全然変わっていません。

問)

2週間位前の石原都知事のインタビューの記事の中で、都が行ったみずほ銀行の検査で、金融庁が解明できなかったことがいろいろあったと仰っていたのですが、それでいろいろ大臣にも説明して、それでもっとしっかりして下さいというような発言があったようですけれども、その詳しい内容をもう少し教えていただけますか。

答)

そういう話は聞いた記憶があまりないのですけれども。

問)

ですが、金融庁も知らなかったようなことが都の検査で分かったと仰っていたのですが。ただ都の方で公開すると良くないので、例えば預金の動向ですとか、システムが実際どこが問題だったとか、そんなことを知事が仰っていたのですけれども。

答)

ちょっと昔のことなので正確な記憶になっていない部分もありますが、預金の動向等については確かにお触れになりましたので、私の方からはそうしたことは他でも起こっているというような指摘をしたような記憶がありますが、それはあまり定かではありません。いずれにせよ、我々は我々で我々の検査の視点からきちっとした検査をやっているということでございまして、都が感じることがあればそれはそれで承ればよろしいと、こういうように思っております。

問)

2週間前、都の指定金融機関の見直しで、例えば不良債権の処理等いろいろなものを考慮すると仰っているのですが、これについては大臣はどうご覧になっていますか。

答)

それぞれの大事な公金を預かっている立場、更にそれぞれの地域で金融機関が果たしている役割、こうしたことに配慮して指定金融機関をいろいろとお考えになるということは当然なことであるというふうに考えています。

問)

そうなると、知事とみずほの問題についてどこかでいろいろお話をされたのですか。あるいは預金だけの話が出たのですか。

答)

話はしておりません。お越しになられたのです。それだけのことです。

問)

それでその場でそのような話が出たのですか。

答)

いえ。にこやかにお話になっておられました。

問)

ペイオフの問題なのですが、いろいろ報道が出ておりまして、例えば普通預金を金利ゼロにすれば保護の対象になるというようなことになると、多ければ預金の4割が対象になります。当座預金を入れると半分近くになるのですが、大臣の想定としてはこれはちょっと多すぎると思いますか。ここまで行くと、やはりこれで骨抜きになるという批判にも当たるかと思うのですが。大臣が想定しているのは、半分まで対象にはしたくないというお考えですか。

答)

今のペイオフの論議については、骨が抜かれるのではないかというのと、初めから骨なしで行こうということとがあるわけですよね。つまり全部、今のまま延長していこうということがありますね。私は基本的にペイオフというものがやはり構造改革を促進するために、一つのプレッシャーとして機能するという側面を、今の日本の金融機関の状況を考えると重視して行かなければならないと考えております。しかしまた金融というのは、実態ではなくて何とは無しの風評みたいなものに対して、我々金融当局としては「実態はこうです」と、なかなか個別の金融機関のことは言えないのですね。そういう所にジレンマがあって、風評というのが結構大きな影響を持つのですけれども、そういう風評によっていろいろ混乱が起こる、特にそれによって一番大事な決済機能というようなものに支障が生ずる、これは避けなければならないということですね。ですからその二つの要請、つまり構造改革のプレッシャーは取り下げるということはしたくないと、同時に金融の安定ということについて、特に決済機能はガタガタ混乱させるべきではないと、こういうことを念頭において考えているということであって、定量的に現在どうこうということは、これは今先生方にご議論をいただいているところの結果どうなるかということであると、こういうことであります。

問)

ペイオフなのですが、何故、構造改革に繋がるかという所をもう少しご説明いただけますか。

答)

これは予て言っているように、預金者の目というものを、株主であるとかの目以上に、沢山の目でありますし、そういう厳しい目に晒されるということがプレッシャーになって、金融機関それぞれがリストラ、更には新しい事業展開、こういったようなものをプッシュされると、こういう側面のことを指した訳です。

問)

当初言われていた「新型」の決済性預金を創設するといったようなアイデアは、今かなり縮小しているのでしょうか。

答)

「新型」とは何かということですけれども、金利ゼロの預金というもの、それで当座預金でないもの、ということになれば、それは新しい形ということにもなるし、我々は質の問題ということを大事に考えているわけで、それがどういう名称であるかとか、どういう経緯からそういう勘定が、あるいは預金口座が出来上がるかというような経緯であるとかにはあまり関心がないのですね。つまり少なくともそういう金利ゼロ、これ金利ゼロの預金ですよ、というものが当座預金以外にできれば、それは「新型」の預金と言う人は言うだろうし、それはこちらから来た経緯がこうだから、いやあ「新型」ではないと言う人もいるだろうし、それはもう我々としてはあまり関心がないことで、お任せしたいということになる訳です。

問)

今ある普通預金を無利子化したものも「新型」の預金に入るというお考えですか。

答)

そうなるのではないですか、どう思われますか。つまり「新型」とは何ぞや、なのですが、完全にこれは金利を付けませんというのは、今までの普通預金ではないですよね。

問)

大臣の仰るように市場の規律を働かせるのだ、預金者の目を厳しくしてということなのですけれども、多くの部分の預金を全額保護すれば、結果としてそういう市場規律というのは働きにくくなってしまうのではないですか。

答)

まあ数量的にはいきなり、例えば当座預金なら当座預金というふうにした方がいいよということも、成り立ち得ないことはないですね、確かにそれはね。ですけれども、何と言うかやはりこれはこの制度の実態の問題として、では当座預金が開けない法人事業者、あるいは個人事業者はどうするのかというような話にもなるし、そうだったら我々サラリーマンも口座振替に使っている口座があるけれども、あれはどうしてくれるというような話もありますね。だからその辺りのことを今ご検討いただいていると、こういうことなのです。だから決済に使われるということと、それから言ったように手数料が取られる、いやしかしその手数料を改めて取るのではなくて、余資の運用でコンペンセイトできる、償うことができるので金利ゼロでトントンと考えて行こう、というような考え方もあり得ない訳ではないという意味で言っている訳ですね。

問)

決済云々という話の背後に、金融システムが万全ではないという実態が実はあるのではないかなと思うのですが。

答)

そうではないのですね。実態とは何かということなのですが、先程もちょっと言ったように、金融というのは信用なものですから、「実態はこうです。私は本当は健康なのです」と言っても、実態と違う所でいろいろな風評を立てられるということはあるのです。それが現実なのです。つまり自己資本比率でパスしていても、資金繰りで駄目になってしまう、その二つの道があるということは法律にも書いてあるのです。そういう金融の難しさがあるのです。「実態はしっかりしています」と、いくら言ってみてもそれだけで貫徹できるわけではないというのが金融の難しさですね。

問)

噂で潰れた金融機関というのはあるのですか。

答)

個別のことは申しませんけれども、別に債務超過でなくても資金繰りで破綻ということはあります。

問)

その場合、日銀の役割というのがあると思うのですが、そういう風評による混乱というのを第一義的に日銀が面倒を見るということになっていますが、これに頼らないということですか。

答)

そこは非常にポイントなのですけれども、まあ日本銀行の役割も我々はちゃんと位置付けておりますけれども、現実の勢いということが大きく物を言ってしまうケースもないとは言えないというのが、金融の難しさですね。

問)

ペイオフ解禁によって、金融機関が緊張感を持って収益性や健全性を高めるということが目的の一つだったと思うのですが、今回このように決済性預金の保護ということを打ち出して、その目的が多少なりとも損なわれるということはどうお考えでしょうか。

答)

決済性預金を保護するということが、健全性であるとか収益性の向上ということへのプレッシャーを軽減するかというご質問ですね。これは決済性預金を保護しない場合との比較で見れば、プレッシャーはそれだけ少し和らぐということは認めざるを得ないと思うのですね。ただし、では何故そこのところをやるかというと、決済性預金も危なくなるんですよ、といった時にはプレッシャーもすごくかかるけれども、例えば風評等に対してすごく神経質になる行動が起こる度合いというのも強くなりますね。決済性預金は大丈夫だということになれば、「ただの風評だよ」という話で済みます。決済もできなくなると言ったら、自分の企業や事業が倒れてしまうという話になりますから、そこは両方の要請というか理念というか、そういうものをどこでバランスさせていくかという問題だと考えております。

問)

検査とか監督で非常に不健全な金融機関を退出させて、4月には大臣も健全性の基準を満たしているというような発言をされましたけれど、なかなか信頼されていないというような思いも持っていらっしゃるのでしょうか。そういう風評を恐れなければいけないほど。

答)

信頼されていないということ、そういう見方をあなたがされるとすれば、それを私としては信頼して欲しいと言うしかありません。ありませんが、3月の末まで、正直言ってもう少し早めに破綻処理は終えたいというのが本当の気持ちだったのですが、段々仕事も難しいところへ来て、本当に3月の末に近いところまで破綻処理をせざるを得なかったのですが、それを現実に日本国民は見たわけですね。そういう破綻が起こるということを見たわけですから、それである時に私が「これから後に残っているのは皆健全な指標を満たしています」と言っているわけですけれども、その一言で全てが解消されるか、あるいは自分の近くでもついこの前まで破綻したところがあるという記憶の方が残っていて、常にそういうものに敏感でなければいけないということ、これは暫くの間は記憶が残っているということは人間の心理の有り様として認めざるを得ないのではないでしょうか。

問)

先程の保護の関連ですけれども、定義ということに関心があって、後はお任せしたいというお話をされていたのですけれど。

答)

お任せしたいというのは、皆さんが「新型」の預金と見るか、経緯がこうだからとか、拠って来るところがこういうことだから「新型」ではないと見るかはお任せしたいと申し上げたのです。

問)

民間金融機関に対してそこは任せるということでしょうか。

答)

そこまでを言っているのではなく、皆さんの見方についてはお任せしたいということであって、今そこのところはご検討頂いているということを申し上げているのです。

問)

何れにしても金融機関に相当システムの負荷が掛かりますけれども、そのシステムについて神経質になっている今の局面で、その点の心配は無いのでしょうか。

答)

そこはよく検討をするようにということについては、私は言っているわけです。特に普通預金を2つに分けた先例を持つ銀行もありますから、そういったところの経験をよく聞くようにということを指示しておりまして、そこは慎重にやっていきたいと思っています。

問)

そこは今後の半年とかそこらの準備期間で、来年4月に間に合うというご認識ですか。

答)

そこをよく検討するようにと言ってあります。

問)

場合によっては・・・。

答)

そこまでは考えておりません。

問)

どういうものを選ぶのか、「新型」の預金と仮に言いますけれど、どういうものを選ぶのかということは、金融機関のシステム上の負荷がどういうふうに掛かるかということも一つの判断基準になるのでしょうか。

答)

「ならない」とまでここで言い切る自信はありませんが、それは色々なファクターが働くわけで、そのファクターをどのぐらいウェートをかけて見ていくかということだと思います。

問)

圧力ですけれども、大臣によると、プレッシャーも弱まるけれど、プレッシャーも掛かるという両方ということでよろしいのですか。

答)

そうです。プレッシャーを掛けないというのは、今を延長すればプレッシャーは掛からないのですよ。私はプレッシャーを掛けておきたいのです。掛け続けたいのです。ただし、非常に金融というのは、信用という特に預金者の心理にも影響されることなので、それが実体経済に大きな影響を与えるということについて、どう防御措置を講じておくかという考え方です。

問)

決済システムがそこまで大事だと仰るのならば、なぜ今までその御検討をされなかったのでしょうか。半年前の今になって始めなければいけないような事態の変化というものがあったのでしょうか。

答)

それはそうではありません。私の頭の中には少額保護、言わば弱者保護という社会政策的な保険と、実はもっと金融システムでどこが大事なのだという保険とは、全然別のところから考えられている保険の考え方であると私はかねて整理をしておりましたけれど、そういう考え方は私の中には少なくともあって、いよいよ現実にそこのところについて保険が外れるということの中で、検討しようという決断をしたということです。

問)

「弱者保護」という言葉が出ましたが、なぜこのタイミングで出て来たのか。ちょっと広い、例えば経済の先行きが不透明であるとか、金融に対する信頼がまだ無いという説明をされると非常に分かりやすいのですけれど、なぜこのタイミングで出てきたのかという理由を、もう少し距離を離して広い目で見た場合の説明をしてもらいたいのですけれど。なぜ決済性預金を保護するのか。

答)

なぜ決済性預金を保護するのか、これは金融の中で、保険で保護するのは決済性預金こそであるという考え方というのは、これはあるのですね。皆さんあまり注目されていなかったかもれませんけれど、元から有りまして、私は非常にそこのところを常に考えていました。突如ではありません。当時はナローバンキング論と言われていたのですね。この話が金融学界から論じられるようになった時は。だから、そこのところが私は非常に気になっていたのです。

問)

何時ごろから気になっていたのでしょうか。

答)

ずっとです。数年前からです。

問)

昨日、磯部さんから英文の声明文を頂いて、その後お話ししたのですけれど、これはやはり政治問題になって、政治決着になっていると仰られていたのですけれど、色々と理由を付けても、最終的には与党と自民党の中の圧力で総理が配慮して、これだけやれば全面延期にはならないということに尽きるのではないのですか。

答)

先程から申し上げているのは、私はしっかりした考え方の下で政府の施策として打ち出されたものだということを、縷々時間を費やして説明をさせて頂いたわけです。それに尽きます。その他の見方というものは、それぞれの方に任せるしかないでしょう。私は責任者として今までずっと説明してきたわけで、それに対して「こういう見方もありますよ」と言われたら、何人も人がいるのですから、そういう見方の人もいらっしゃるかと思います。

問)

私は大臣をこの数年間をずっと見ていますが、かなり苦しい立場に置かれていると思うのですけれど。今まで言ってきたことと、やはり少し違うと思うのですが。

答)

それはありません。それはずっと今時間を費やして説明してきて、久しぶりの会見ですから時間も掛けて、できるだけ分かって貰いたいという気持ちで、場合によっては個人的な考え方も含めてご説明させて頂いたということです。

問)

今のペイオフ解禁と新型預金の関連なのですけれども、大きな目で見ると大臣が前から金融市場全体で見た場合、例えば新しい預金ができたり、保護の対象になるとかならないという預金者の判断が働いた場合に、他の金融商品に資金全体が銀行などからシフトするというのも頭の中にあってお考えになっていることなのでしょうか。

答)

決済というのは、多分今後とも金融機関が、今のバンキングが受け持っていくところだと思うのですね。ところが、貯蓄というか、資産運用というところは、私は元々ばらけて行ってもらいたいと、預金ばかりというところでやってもらうということではなくて、もう少しリスクがあるところとか、ハイリスク・ハイリターンのところ、ミドルリスク・ミドルリターンなところ、ローリスク・ローリターンなところというようなところに、それぞれもう少し向いて行って貰いたいと、アンバンドリングという言葉が良いかどうか判りませんが、もう少しばらけて行ってもらいたいというのはあります。けれど、そうでないところ・・・事業用の決済のところはそうではないのですよ。ばらけられたのでは困るところなのですよ。そういうところはしっかりしていないと困る。それで少額預金のところは少額預金者のために守ろうというのが予てからの考えなのだから、それはそれで良いでしょうということです。しかし、その他のところはもっとばらけてもらいたい。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る