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竹中金融・経済財政担当大臣記者会見の概要

(平成14年10月3日(木)22時16分~22時35分)

【大臣より発言】

今、金融分野緊急対応戦略プロジェクトチームの第1回の会合を終えました。今日は初めての会合でありますので、私なりの問題意識を皆さんにお伝えしまして、その参加者の皆さん、これは民間の委員の方及び金融庁の幹部のメンバーの方、皆さんでそれなりの立場からこの問題にどのような姿勢で臨んで行くかという事について意見交換をいたしました。

まず冒頭私から、チームの設置にあたって皆さんに申し上げた事を紙にしておりますので読み上げさせていただきます。

今回の内閣改造に際し、総理は、これからの半年間で構造改革を加速させるための政策強化を行って行くと同時に、日本経済を取り巻く不確実性を除去し、政府・日銀が一体となってデフレ克服に取組み、平成16年度には不良債権問題を終結させるという方針を示された。日本経済が抱える最大の不確実性の一つが金融システムの問題である事を勘案すると、総理の方針を実現するためには、金融行政を一層進化させ、変えるべきは変える事が不可欠である。

このためプロジェクトチームを設置し、外部の有識者の皆様のご知見を拝借しつつ、集中的に議論していくこととした。金融システムのみならず、金融庁に対する市場の信頼も磐石であるとは言い難い面もある。顧問に就任された皆様方におかれては、こうした状況を踏まえた上で、総理の方針通り、平成16年度には不良債権問題を終結させるとともに、預金者、投資家、借り手企業など、国民のために金融に対する信頼を取り戻すための方策について、忌憚なく議論していただきたい。

その際、グローバルバンキングについては、徹底した競争の促進による体質の強化が強く求められている一方で、地域中小企業金融については、それとは異なる強固なセーフティネットの確立が急がれていることから、双方の問題について積極的に議論していただきたい。構造改革を加速するためには金融システム改革、税制改革、規制改革、歳出改革という四位一体の改革をより早く、より大きく、より分かり易く実現しなければならない。そして、昨年の骨太の方針で、不良債権問題の抜本的改革が経済再生の第一歩とされているように、金融システム改革は最優先で取り組むべき課題である。プロジェクトチームでの議論により、その道筋が明らかになる事を切に希望している。

そういうふうに私自身の問題意識を申し上げました。各委員の方々からは、極めて活発に今の問題意識に対して開陳がございました。基本的には、ここはブレインストーミング的に議論を進めて、最終的に私なりの政策判断の素材として使わせていただくという事でありますので、集中的に議論して、毎回毎回、誰がどういうふうな事を言ったというような紹介の仕方は控えさせていただきます。今回は初回でありますので、大まかな方向だけ申し上げておきますと、多くの方々が今、日本経済にとって不良債権問題を解決する上で極めて重要な時期であるという強い問題意識が示されました。非常に大きなこの問題を解決するためのチャンスを迎えている。しかし、逆に言うと、このチャンスを逃すと極めて大きな問題に直面するという危機感もある。これまでの経験を踏まえて、非常に積極的に行動する、アクティビズムを持った解決をしていきたいと、そういうような趣旨の発言が、もちろんこれは専門的な事も含めてでありますけれども、各委員から表明されました。

就任以来、この問題を大きく3つの問題に分けて考えていきたいというふうに申し上げて来たつもりであります。1つは資産査定が厳格に行われているだろうか。2番目は自己資本は十分であるのかどうか。第3番目は銀行のガバナンスは十分か。こうした考え方については、概ね議論の方向としてはご賛同いただきまして、次回以降、この資産査定の問題を皮切りに順次議論をしていく。必要に応じて専門家及び当事者のヒアリングを重ねて行くということで、次回以降、議論を深めて行くという事で合意いたしました。

なお、実質事務局長として、伊藤達也副大臣に、いろいろと取り仕切っていただくという事に相なりました。私の方からの報告は以上でございます。

それとお願いなんでありますけれども、これはやはり一気に議論するという事に意味がありますので、毎回毎回、大変申し訳ありませんが、今日はどういう事を議論したというのは、逆にいろんな憶測を招きかねないので、記者会見は控えさせていただく。途中で一度中間報告的な議論の取りまとめを2週間後ぐらいにさせていただく。最終的な報告を4週間後ぐらいにさせていただく。その間、委員の方々に聞いても、おそらく委員の方々もノーコメントと言わざるを得ませんので、取材の方はそのような立場で一つご理解をいただいた上で、皆様にも議論をしていただきたいと思います。以上です。

【質疑応答】

問)

今回のチームのメンバーの選出なのですけれども、どういった観点から大臣の方で選ばれたのか。あと、木村氏については予てより金融庁に対して非常に厳しい意見を述べておられるのですけれども、この方を入れられた事の意味について改めてお聞きしたいのですが。

答)

まず、これは以前も申し上げたかもしれませんけれども、やはり、この政策は本当に日本経済の現在と将来のために失敗は許されない。非常に重要な政策論議であるというふうに思います。そうした点を踏まえて、私自身はまず金融庁の幹部の方を中心に参加していただきたいということで、長官、局長にお願いしたいと。それと外部の方に関しては、この金融システム問題に関して、私がこれまでの経験から、どうしてもこの方の意見は聞く必要があると、そういう方を私自身の判断でノミネートして、金融庁長官にも同意してもらって、それで集まってもらいました。従って判断基準というのは、一言で言えば、私がどうしてもこの人の話は聞く必要があると思ったということです。

今、木村氏の名前が挙がりましたけれども、今日お集まりの方は、皆さん多かれ少なかれ政策に対して建設的な危機感を持って、こうあるべきだというふうに、まあ建設的な批判をして来られた方ばかりだと思います。そういう声を聞くがためにメンバーになっていただいているわけでありますから、私は良い人選が出来たと思っています。

問)

資産査定、自己資本の問題、ガバナンスの問題、この3つの問題について、概ね方向が出たということですが、金融庁の幹部の方々もこの認識では一致していると見て良いのでしょうか。

答)

これはやはり、この問題が重要であるという事に関しては、皆さんは合意してくださっていると思います。特に、とりわけ資産査定が重要だというようなご意見も出ましたし、これは金融庁の幹部の方から出ましたし、極めてこの問題を考えるにあたってはリーズナブルな議論のポイントなのではないかというふうに思っています。

問)

先程の大臣のお話にあったグローバルバンキングの展開をしている銀行と、地域の銀行を分けて問題設定をするという事について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか。

答)

これは私が予てからいろいろ申し上げている事ですけれども、やはりグローバリゼーションの中で、グローバルな競争環境にある銀行及び企業は、厳しいでしょうけれども、やはり競争促進の中で、より強くなって行っていただかなければいけないと思います。しかしながら、世界のどの国でもいわゆるリレーションシップバンキングですね、具体的には地域金融、中小企業金融ですけれども、そういうところは全ての企業がROAとROEを大切にして運営しているわけではなくて、やはり別の、より生活をベースにした部分というのが、これはもう現実問題としてどこの国にもあるのだと思います。この辺については、はっきりとやはり線引きをしていかないと、議論が混乱するというふうに私自身は予てから思っておりますので、そういう事を金融行政に現実反映させたいと思っておりますし、その視点、そういう観点から今日も挨拶の中で申し上げました。

問)

ペイオフの問題ですけれども、ペイオフ解禁のあり方についても議論の対象になるというふうに仰っていますが、今日はどういう議論だったのでしょうか。それと、今後はどのような展開になるのでしょうか。

答)

一部の方はこの問題について今日、発言をもちろんしておられますが、それを先程申し上げましたようなトータルのパッケージを、3つの問題を一体的に議論する中で、必然的に出て来る一つの問題であるというふうに思っております。まあ3つの問題を深めていく中で議論していくつもりです。

問)

議論を公開しないということですが、これまでオープンな議論を大臣は大事にされてきたと思うのですけれども、議論を公開しない理由をもう少し説明していただけますか。それから、中間報告段階で、これまで誰がどういう意見を言ったかということを後から公開するということもできると思うのですけれども、この二点についてお伺いしたいのですが。

答)

基本的にはこれは金融庁の内部の問題だということですね。それぞれのファンクションを持っている、例えば内閣府、財務省、経済産業省、そういうところが議論するという時には、これはやはりオープンディスカッションが必要だと思うのですけれども、内部の一つの意思決定主体の、その意思決定の会合というのは、これはどこを見ても、例えば財務省、経済産業省の省議がオープンにされている訳ではないですね。ここはやはり金融庁の内部の問題でありますから、いわゆるオープンなディスカッションのベースになる意思決定をしたいということですから、そこはやはり性格が少し違うと思います。

それでまあもう一つはやはり、資産査定の問題、自己資本の問題、やはりかなりそのパーツだけを聞くと誤解を与えかねないような問題もありますから、トータルな政策パッケージがどうであるかということを短期間で議論したいと思っておりますので、それは正に結果を見ていただきたい、聞いていただきたいというふうに思います。

問)

三つの問題なのですけれども、やはりどのような議論をされたか、出来る範囲で結構なのですけれども、どのような話を今日は議論されたのでしょうか。

答)

今日は「こういう問題点がある、こういうことを議論しなければいけない」というようなリスト的な議論をされた方もいらっしゃるし、特に一つの問題について「私自身は予てからこういう思いを持っていて、いかに大切であるか」という議論をされた方もいらっしゃいます。今日は今後の議論の進め方についてコンセンサスを得る、我々が何を目指すべきかということについてコンセンサスを得る、それに当たっての皆さんの問題意識の開陳をしていただいたということであります。そんなに系統的なご説明が出来るような議論ではございません。次回以降、テーマを絞ってより活発な議論をしたいと思います。

問)

金融庁の幹部の方から、資産査定は十分であるというような意見は出ましたでしょうか。

答)

もちろん資産査定を非常に厳格な手続きで行っているというような話はございました。しかしその上で、今のやり方について更にどういう改善点があるかということを議論したいということでありますので、そういった精神に則って次回以降は議論をして行くことになると思います。

問)

トータルな政策パッケージということなのですけれども、とりあえずこの場では金融に限った話をするのか、現在のデフレの状況を考えると、雇用の問題とか他の省を巻き込んだいろいろな政策パッケージというものが更に必要だと思うのですけれども、そういう問題は置いておいてもう少し狭い、この場では金融に限っていくのか、その辺りをちょっとお聞きしたいのですが。

答)

これは金融庁として、更には私が金融担当大臣としてまずどういう意思決定をすべきかと、その意思決定をするために持たれている会議ですね。ですからその過程で金融庁としてはこういうことをしなければいけないと思う、しかしそのためには他の省にはこういうことをやっていただきたい、この政策はこういうことをやっていただきたいと、それは当然のことながら非常に強い要望として出てくることはあり得ると思います。

それはそれで経済財政諮問会議及びそのような場で、まさしく政府一体となって解決できるようにして行きたいと思います。

問)

日銀も当然含まれる訳ですか。

答)

もちろんそうですね。

問)

二つあります。一つはペイオフの延期についてはそういう議論が出たのかどうかという点と、もう一つはペイオフの延期については既に金利ゼロの普通預金を含む決済性預金と、当座預金については当初金融庁が柳澤大臣の時に来年9月を目途に5ヶ月程度遅らせるということだったのですけれども、延期というのはそういう5ヶ月を1年2年延ばすのか、それとも現在の状況ですね、つまり定期預金だけ解禁されているという、これを1年2年延ばすのか、その辺についてお話出来る範囲で結構ですからお聞かせ下さい。

答)

基本的にそういう細かい議論は、今日はペイオフに関して一切しておりません。ペイオフの問題もこの場で議論をする必要があるというような意見が出されただけです。

問)

リレーションシップバンキングということを仰られたのですが、この世界というのは、この地域の金融機関に関してはいろいろな政策とか規制を強くしてやっているという面があると思うのですね。そういう地域金融機関の制度問題というところまで踏み込んでお話になるのか、とりあえず地域の金融機関は切り離して考えようということなのでしょうか。

答)

リレーションシップバンキングをどのようにしたらよいのかということに関しては、私の知る限りそんなに説得的な議論というのはまだこの社会にはないと思うのですね。しかしまあ現実問題として、地域の中小企業の金融というのは大変厳しい状況に置かれているというふうに思いますので、我々は今当面この不良債権問題の解決に当たって何をすべきかということを1ヶ月位で結論を出す訳です。更に大きな制度改革をしなければならないという問題も当然残ると思います。それはそれで問題意識として、如何に結論は出なくても引き継いでいかなければならない。しかし緊急に問題を解決するために何かをしなければいけないという問題は、この1ヶ月の間でやはりパッケージの中で議論しなければならない。当然議論される部分と、更に議論を引き継がなければいけない部分と両方出てくると思います。

問)

現状認識について、今日の段階で金融システムはどういう状況なのかということに関しては一つなのか、それとも元々前段階で意見がまちまちだったのかという点と、それから今後のスケジュール、次回はいつで何回くらいあるのでしょうか。

答)

現状認識というテーマで話した訳ではありませんが、事後的に振り返ってみますと、やはり今、日本の最大の不確実性である金融システム問題を解決に向かわしめるのは極めて重要であるという点では、全員の意見が一致していたと思います。

それと次回以降でありますけれども、これは事務局の方で急いでおりますが、実は日程を合わせるのが大変なのですけれども、4週間で10回近くやりたいと思っておりますので、そうすると平均するとどの位のペースか想像いただけると思いますが、急いで今事務局に調整させております。

問)

先程の質問の回答漏れがあるのですけれども、議事録の公開の問題なのですけれども、時間が経ってから公開するお考えもないのでしょうか

答)

基本的には例えばですけれども、一つの問題を議論する時に固有名詞も出てくると思います。この固有名詞を当局の内部でどういう議論がなされたということをマーケットに明らかにするのは、私はやはり適切ではないと思います。

(以上)

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