竹中金融・経済財政担当大臣記者会見録

(平成14年12月20日(金)9時43分~9時58分 於)金融庁会見室)

1.発言要旨

おはようございます。

閣議でございますけれども、今日は予算に関連して主として財務大臣からのお話がございました。補正予算を閣議決定いたしました。本日、15年度予算案の財務原案内示でありますけれども、それに関する大枠の報告、税制とともに財務大臣からございました。

閣僚懇では、その予算との関連で、この予算を中心に、ないしは税制を含めてですけれども、この仕組みが国民に伝わらないといけませんので、広報についてやはり分かり易く国民に理解していただけるように各省が努力をしようという話が数人の閣僚からなされました。

私の方からは以上です。

2.質疑応答

問)

来年度の予算なんですけれども、常々日本経済が弱い中で、この程度で十分かという意見がつきまといますけれども、それとあわせて、国債依存度が極めて高いという一面もあります。来年度の経済運営の観点から、大臣はどのようにご覧になっているかということをまずお願いします。

答)

基本的には、今ご質問の2つの日本経済に対する制約が、これは小泉政権発足以来ずっとつきまとっているわけです。一方で、経済を刺激するために財政を活用することは出来ないだろうかというようなニーズが、潜在的な声があると。しかし、一方で公債依存度が今回の場合は特に44%ということでありますから、そういう状況の中でもっと大胆に財政再建をすべきではないか。そのぎりぎりの間の狭い道、ナローパスを歩んでいるわけで、今回の予算編成も正にそれを象徴しているというふうに思っています。

大変、不確実性が高くて厳しい状況でありますが、その予算編成においては、そのナローパスの上にいるというふうに思っています。

問)

今月中に決めると仰っていた金融問題タスクフォース、この人選について現在の進捗状況を教えてください。

答)

今、まだご当人の最終確認を含めまして議論をしております。金融庁の中でもいろいろな方々の意見を伺いながら調整をしているところです。今週も週末ですので、来週早い時期に確定をしたいというふうに思っています。

問)

昨日、金融審の方で公的資金などや税効果会計について新しくまた考えるということで決定しましたけれども、実際、大臣の最近のご発言の中でも、金融システムには問題がないとか仰っていて、非常に最近は前大臣の路線に立ち戻っているのではないかというような指摘がありますが、これについて大臣のご見解を教えてください。

答)

間違った指摘だと思います。

一貫して就任以来同じ考え方で政策を進めておりますし、「金融再生プログラム」で方向を示して、「作業工程表」を作って、その「作業工程表」に則って今きちっと醸成をしておりますので、特に来年の3月期決算では、新しい仕組みの下でいろいろなことをやっていかなければいけない。そのための準備が着々と進みつつあるというふうに思っています。

問)

昨日、産業再生機構の基本指針が決まったわけなんですけれども、この運営に関して、いずれ5年後の存続期間後に2次的な損失が出るんじゃないかと、国民負担が伴うんじゃないかという指摘があるんですけれども、その点に関して、大臣の感触といいますか、見通しについて教えてください。

答)

昨日も同じようなご質問をいただきましたけれども、制度の詳細をこれから作っていく過程で、そういう問題はきちっと議論がなされていかなければいけないのだと思います。もちろん、組織を効率的に運営して、ロスを最小化する、収益を最大化するというのは、これは経営の主体の努力としては大変重要なことであります。しかしながら、今同時に考えなければいけないのは、ある程度の柔軟な意思決定を機構に与えることによって、産業再生の正に実を上げるということでありますから、そこは一種の柔軟性と同時に、一方での規律との間で1つのバランスをとって考えなければいけないという、これは答えはそれしかないのだと思います。

制度の詳細の中で、そういうバランスがとれるようにぜひしていきたいと思います。

問)

バランスをとれば、銀行は産業再生機構に債権を持ち込むようなスキームになるのか。一部には、なかなか銀行が持ち込み辛いんじゃないかという声もありますが。

答)

基本的には銀行の側から見ますと、資産査定をしっかりとしていくということでありますから、正に資産の査定価格が時価になっていくわけであります。時価で査定がなされていて、同時にオフバランス化についてのルールがあって、オフバランス化を進めていくに当たって、受け皿としての機構がある場合には、これはそれを躊躇するような特別の理由は私はないと思います。

結局のところ、機構の仕組みをどうするかということに加えて、資産査定をきちっと厳格化していく、オフバランス化のルールをきっちりと守っていく、そういうことが一体となって産業再生を進めるわけですから、1つの仕組みだけでこれは出来るわけではありませんから、正に総合的にやっていく。我々の責任はその意味では大きいと思っています。

問)

タスクフォースなんですけれども、再度確認させていただきたいんですけれども、プロジェクトメンバー、竹中プロジェクトのメンバーの5人全員に、タスクフォースか、あるいは金融審の方に散っていただくと、そういうことでよろしいんでしょうか。

答)

前々回もお話ししましたように、あのメンバーの方というのは、改革のDNAを持っておられる方々で、プロジェクトチームの意見に基づいて「金融再生プログラム」が作られていて、それを実行するための仕組みとしてのタスクフォース、実行に移す仕組みとしてのタスクフォース、それとワーキンググループがあるわけですから、その方々にぜひそういうDNAを実行部隊にも伝えて欲しいというふうに思っています。

ただこれは個々人の都合等々もありますので、私としてはそういう気持ちでやっておりますので、今お願いをしているところであります。

問)

全員にお声はかけられているということですね。

答)

そういうことです。

問)

株価なんですけれども、またちょっと先行きが怪しくなってきているんですけれども、現状、先行き、これどういうふうに見ていらっしゃいますか。

答)

この株価、本当に非常に読み辛い状況であるというふうに思っています。ここ1週間ぐらいの間の動きも、基本的にはアメリカの動きにこの1週間を見ても分かりますように、強力に引きずられていると思います。その要因というのは、どうも見ていると2つあって、根底にあるのはアメリカの対イラク行動等々を含む非常に大きな意味での、政治的な意味での不確実性、それと短期的な要因としてはハイテク企業の業績の変化、そういう中で、もともと不安定な日本の相場も影響を受けているということだと思います。

繰り返しになりますが、我々としては、そういうふうにアメリカの不確実性に影響を受けている経済及び株式市場の中で、日本として取り除ける不確実性というのをしっかりと取り除いていくと。そのためには、やはり金融に関して言うならば、不良債権の処理を加速するというプログラムを着実に実行していくことである。

その意味では繰り返しになりますけれども、政策のスタンスというのは当初から全く変わっておりませんし、それを実行する中で、我々も形を見せていきたいし、銀行業界にも形を見せて欲しいというふうに思っております。

問)

その形という話で、産業界で一部再編の動きが出ていますけれども、これについてどういうお考えかというのをお聞きしたいんですが。

答)

個別的にはいろいろな動きが出て来ています。まず、個別に動きが出て来ていることそのものは銀行自身が健全化に向けて、不良債権処理の加速に向けて非常にポジティブに取り組んでいるということの1つの証明であると思います。しかし、これはやはり競争ですから、競争をしていると、ないしは競争をし始めたというのが現状であります。競争は結果でありますから、そうした競争の中で結果を出していただきたい。

しかし、そもそも競争しないと結果は出ませんですから、その意味ではそういう動きが出て来ているというのはポジティブな動きであると思っています。

問)

諮問会議として予算にかかわって2年目が終わるわけですけれども、その点について、今年の評価とか去年と違うところなどは。

答)

去年は予算編成をするに当たって、そもそも骨太の方針を作ると。どうしてこんなものを作るんだと。「予算編成の基本方針」を作ると。どうしてそんなものを作るんだという、その1つ1つの行動に対してなかなかバリア、それぞれに障壁といいますか、越えなければいけない壁があったわけでありますけれども、今年に関して言うならば、骨太方針を閣議決定して、「予算編成の基本方針」を閣議決定して、それぞれに対して2年目でありますけれども、やはりこういうやり方が定着し始めたという点は評価して良いのではないかと思います。

もう1点、重要な点は、今回実は予算の全体像というのを決めているわけです。予算の全体像というのを、全体の仕上がりのイメージをまず決めて、これがあったからこそ何が起こったかというと、概算要求の時に20%高い、正確に言うと去年の実績よりも20%高いところで持ってきて、オープンな形で査定を行えるという仕組みが定着した。その意味では、この点は今年の1つの予算編成プロセスのイノベーションだったというふうに思います。

もう1点の今年の大きな特徴というのは、8月から行った大臣イニシアティブ、各大臣にそれぞれ制度・政策改革についてイニシアティブを発揮してもらいました。それが具体的な予算の形になってきているということだと思っています。経済産業大臣の方から、エネルギー特会を環境省と共管するというような、これはやはりかなり画期的な発想転換だと思いますけれども、そういう問題提起がなされ、更には国と地方の関係でも、補助金の削減、それと交付税の改革、税源の移譲という何十年も議論されて進まなかったことが、三位一体の改革としてやるんだということが決まって、その芽を出すための1つの改革というのが15年度予算に反映される。現実にそれについてはそのような芽を出すということについては、非常にささやかな一歩かもしれませんけれども、私は成功したというふうに思っています。

その意味では、大臣イニシアティブが具体的に予算に反映される。大臣イニシアティブ型予算だと私は思っておりますけれども、そういうものも評価であろうかと思います。

しかし、同時にこれはやはり時間をかけて不断の努力を重ねて、いかなければいけないというふうに思っています。予算改革というのは90年代の先進主要国の大政策課題の1つであったと思いますけれども、それにおいて、比較的成果を残している国、ニュージーランド、スウェーデン、カナダ、オーストラリア、そういうところを見ますと、気が付いてみるとほとんど同じことをやって成功していると。それはまさにニューパブリックマネジメントと言われるものでありますけれども、その政策の評価の問題、更には単年度の壁をどのように打ち破って、一種の行政における経営改革を行っているか。私はこの行政における経営改革という発想だと思います。今回の予算編成の中でも、そうした意味では、一歩か半歩は前進を間違いなくしていますので、こういう地味な努力を今後も続けていくことが重要だと思います。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る