竹中金融・経済財政担当大臣記者会見録

(平成14年12月24日(火)10時57分~11時19分於)金融庁会見室)

1.発言要旨

おはようございます。

閣議がございました。今日の閣議の基本的な決定事項は、15年度の政府予算案であります。

まず、財務大臣から予算案の決定に関して皆様のご協力に感謝するというお話があり、総務大臣から定員削減等の問題についてメリハリを付けたというご報告がありました。その後、私の方から、平成15年度予算は、経済財政諮問会議の答申を踏まえて決定された「予算編成の基本方針」に基づいて編成されたものである。ここには、関係閣僚が大臣イニシアティブを発揮した制度・政策改革についての論議と、諮問会議による改革への取り組みの成果が盛り込まれている。今後とも四本柱の構造改革を進めることが重要であり、その意味でも今回の予算は14年度に引き続き、改革断行予算として位置づけられる。15年度においても安定的なマクロ経済運営と財政規律の確保を両立させることを基本に経済財政運営を行っていく、と発言をいたしました。

閣僚懇では、扇大臣の方から、観光のグローバル戦略についてのご報告がありました。

また、総理の方から、予算編成に当たって、順調に予算が編成できたことに関して、閣僚、各省庁に感謝するというご発言がありました。

閣議に関しては以上でありますが、1点、金融関係でご報告をさせていただきます。

「金融再生プログラム」において、重要な施策の一つとして再建計画の厳格な検証を行うチーム、再建計画検証チームを設置するとしておりますが、本日、このチームを発足、設置することといたしました。

後ほど事務局から正式な発表資料をお配りいたしますが、このチームは、主要行における大口債務者を対象として、債務者区分の前提となる再建計画の妥当性、進捗状況等を総合的、重点的に検証することを目的とするものであります。今後とも着々と改革を進めていきたいと思っております。

私の方からは以上です。

2.質疑応答

問)

検証チームのメンバーは決まっているんでしょうか。

答)

決まっております。先程も申しましたが、後ほど正式なメンバー等の発表資料をお配りいたします。

問)

予算編成に関して、義務的経費が増えて、政策的経費が削られる中で、政策の自由度がどんどん失われているような感じがするんですけれども、その辺についてはいかがでしょうか。

答)

そういった観点からも、諮問会議が提唱して、義務的経費云々の区別を今年から始めたわけです。昨年度も我々は提唱したのですが、きっちりとした区分を基にした予算編成の議論はなされませんでした。その意味では、変な話ですけれども、議論は一歩前進したのだと思います。

しかし、ご指摘のように、予算がどんどんいろいろな意味で窮屈になっているということは、事実だと思います。これを改善するためには何が必要かというと、制度・政策の抜本改革が必要であるということですので、やはり大臣にイニシアティブをとってもらって、制度の根幹から議論しなければいけないということになるわけです。

今回の予算案は、制度・政策改革に一歩切り込んだのですが、それはまだ僅かなものです。結局、ご指摘のような問題を解消していくには、政策成果の目標をしっかりと立てて、それに基づいて各大臣がイニシアティブをとって、しっかりと予算を管理していくというスタイルを作っていかなければいけないと思います。来年度は、それを今年以上にしっかりとやりたいと思います。

問)

諮問会議のあり方なんですが、与党の方から批判が出ているという報道も一部ありますが、その辺についてはいかがでしょうか。来年度の諮問会議の運営ということに関しては。

答)

基本的には大いに諮問会議のあり方は議論をしていただきたいと思います。諮問会議のあり方については、常にやり過ぎである、不十分である、という両極端なご意見をいただいております。

我々として、この2年の間で諮問会議の運営については、1つのパターンが作れたと思っています。

具体的には、まず年前半の議論で政策の中身をしっかりと議論し、「骨太の方針」という形で6月末にとりまとめる。年後半においては、それを予算に反映させていくということで、「予算の全体像」「予算編成の基本方針」などの予算に関するいくつかの作業を行う。また、それと同時に、マクロ経済全体についての中期ビジョンを「改革と展望」という形で示す。

私はこのようなスタイルを作ったことは、2年間の成果の一つであったと思います。

また、当然のことながら、政策の基本方針を決めるに当たっては、今年の「骨太2002」で特区に関する議論が出て来たように、時には税制のことを議論しなければいけないですし、規制改革のことも議論しなければいけない、そういう幅広い議論については、引き続き、しっかりとやっていきたいと思っています。諮問会議を構造改革の中核として、ぜひ従来以上にパワーアップさせたいと思っています。

問)

再建計画の厳正な検証なのですが、これは再建計画が不適当と判断されれば、その再建計画の見直しなり打ち切りなりがあるのかどうか。また、産業再生機構との関係はどう考えていらっしゃるのか。そこをお聞かせください。

答)

そもそも、なぜこのようなことをするかというと、資産査定を厳格に行うためにやる、これに尽きているわけです。その意味で、再建計画の妥当性、進捗状況をしっかりと検証して、結果をきちっと検査の結果に反映させていくために、検査局にこのチームを設置して、ぜひともしっかりと稼動をさせたいと思います。

問)

産業再生機構との関係については。

答)

産業再生機構そのものは、債権買い取り、再生を目的としていますから、今回の検証チームの仕事というのは、産業再生機構がいろいろ判断をする前提となる資産査定の厳格化を行うわけです。資産査定が厳格に行われていて初めてその次のステップである産業が再生可能か、どのように再生するかという判断が可能になるわけです。産業再生機構をうまく機能させる意味でも、資産査定の仕事は大変重要であると思っています。

問)

日銀との政策協定について、大臣から総理に進言して、総理は行動を開始したという報道がありましたけれども。

答)

そのような報道があったということは承知しておりますが、総理がそのようにお考えであるとは承知しておりません。

我々としては、現時点ではあくまでも金融は金融でしっかりとやっていく。財政も補正予算、先行減税を含めてしっかりとやり始めている。それに加えて、金融政策についてもしっかりとやっていただきたいと。政府・日銀が一丸となってやる方法をしっかりと考えたい、という問題提起をしているという段階でありますので、ここはしっかりと議論を深めたいと思います。

問)

では総理との間では政策協定の話はされたことがないということでよろしいですか。

答)

政府・日銀のアコードについては、私は国会でも答弁を申し上げているし、諮問会議でも議論をしておりますので、そういう議論があるということは総理もご承知だと思います。ですが、アコードについて、具体的にどうするとかというような段階まで議論はまだ踏み込んでおりません。

問)

その関連で、日銀の次期総裁について、そのアコードに対して否定的でないという人がやはり望ましいというふうにお考えですか。

答)

アコードというのは、日銀と政府がきっちりと協力関係を結びましょう、こういう政策目標は共有をいたしましょう、というものです。逆に、政府は、ここから先は日銀の政策手段については立ち入りません、という一種の紳士協定でもあります。

私が以前から主張していることは極めて常識的であると思っておりますので、その具体化をしっかりとしてくれる方にぜひやっていただきたいと思っています。

問)

予算関連で、全体像としてどういう評価をされるか。今回いろいろ景気に対する心配という声もありますが、本日の一応正式な決定を受けて、それに対する評価を教えていただきたいのですが。

答)

いつもよく使っている言葉ですけれども、本当にナロー・パスだと思います。これだけ大きな借金を抱えて政権運営をしていかなければならない。これだけ大きな不良債権があるところで政権運営をしていかなければいけない。さらに、対外的にはアメリカの不確実性も含めて世界経済が厳しい状況になっている。日本の国債に対する厳しい格付け評価も見られる。その中で我々がとり得る手段というのは、本当に限られています。

マクロ的な観点からのご質問だと思いますので、マクロに限って申し上げると、今年度から来年度にかけて、政府が相対的に民間に対して与える、負担増とか、昨年の第2次補正の効果が落ちるところ等の、GDP比1%くらいの負のインパクトについては、そのマイナス効果をぜひともこういう不確実な状況下でオフセットしておきたいというのが一番の関心事でありました。その点からいいますと、補正予算で実質3兆円、来年度の先行減税で約2兆円ですから、ほぼ1%のオフセットができ、ぎりぎりの運営が何とかできる状況であるというふうに思っています。

しかし一方では、赤字国債発行を拡大させ過ぎることに対するリスクがあるわけで、今年度末のプライマリーバランスは、GDP比5%ないしは5%を若干超えるぐらいの赤字になると思います。これを大きく超えてしまうと、今度は10年以内でプライマリーバランスを回復させるというシナリオが難しくなるわけですから、中期的な財政の健全な運営と、当面の経済の運営、そのぎりぎりのバランスを保つことに引き続き注意をしながら、経済を見守っていきたいと思っています。

問)

来年度の経済財政諮問会議について、先程あり方の話がありましたが、具体的なテーマではどういうことをやられるのか、段取りも含めて教えていただきたいんですけれども。

答)

これは予算の問題等を踏まえた上で来年度何を、どういうことをやるべきかということを話し合っていきたいと思いますが、基本的には、やはり大きく2つのことをやらなければいけないと思っています。

1つは、根本的な意味での財政改革を引き続き行うということです。来年6月までに三位一体の改革の、しっかりとした工程表を作るというふうに約束しているわけですから、国と地方のあり方を含む財政改革をしっかりと見直さなければいけない。更には、公的な資金の流れについて、しっかりと改革をしていかなければいけないと思っています。民間の金融部門の改革と公的な資金の流れの改革というのは裏腹になっています。この10年間で、マーケットに占める国債の比率はますます高まって、郵貯と政府の部門を経由する資金の流れはますます太くなっています。このような流れをしっかりととらえた上で、そのあり方を改革していくことが民間の金融の活性化にも資するというふうに思っております。更には、我々は「骨太の方針」を基に、大臣イニシアティブという形で、新しい予算編成のプロセスを作りつつありますが、それを更にしっかりとしたものとするために、諸外国の事例等も参考にしながらしていきたいというふうに思っています。今申し上げたのは例示ですが、そういった広い意味での財政改革をしっかりとやっていく必要があると思っています。

第2のテーマは、経済活性化のフォローアップであります。経済活性化に関しては、今年の骨太第2弾で30のアクションプログラムを作っておりますが、それらをしっかりと軌道に乗せていくことです。例えば、特区にしても、一応しっかりと動き出しつつありますが、病院、学校に対する株式会社の導入等、まだ不十分なところが多い。そういうものを着実に形にしていくというのがこの経済活性化のフォローアップであります。

大きくはこの2つのことを諮問会議の中で取り上げていきたいと思います。

また、先程ちょっと言い忘れましたが、来年後期の財政改革に関する論議の中では、年金の改革、医療の改革も大きなテーマの一つになってくると思います。

問)

公的金融の話で、政府系金融機関に関しては、この間ご報告いただいたかと思います。郵貯に関しては、首相の諮問機関が選択肢を示しているということで、一応の結論、方向性は出ていると思うのですが、大臣の問題意識というのは、具体的な意味でどういうことを仰っているわけですか。

答)

郵貯に関しては、郵政公社がしっかりとフォローしていくというのが政策上の大前提ですが、我々はマクロ経済運営の観点から考えていく必要があります。資金の流れが今どうなっていて、それがどのように変わっていくべきなのかというのは、民間の金融を活性化させるという上でも避けて通れないテーマです。公的なお金の流れが非常に分かり難くなっているという面がありますから、しっかりと議論をしていきたいと思っています。

問)

ちょっと確認なのですが、次期日銀総裁とそういう合意、アコードは考えていないということでよろしいですか。

答)

合意はこちらだけではできません。日銀には日銀の独立性を保つという重要な立場がありますから、そこは余り拙速にならないで、しっかりと問題意識を共有して、お互いの役割分担を議論するというプロセスは、やはりちゃんと踏まなければいけないと思います。

問)

総理もこういう合意をしたいという考えをお持ちであるこということでよろしいですか。

答)

まだ諮問会議等で問題提起をしている段階ですから、それについてどのような形の合意が必要なのか、こういう合意はすべきではない等の踏み込んだ議論はまだしておりません。

私としては、問題意識を共有して、諸外国の例にも見られるように、政策目標については政府がしっかりと掲げて日銀に協力を求める。しかし、政策手段の選択については日銀が独立性をしっかりと確保していただく、ということだと思っています。

現状は、見方によっては、その政策目標の共有がまだ必ずしも十分に出来ておらず、逆に、政策手段について、時々政府が口出しをし過ぎる場合もある。私はそのように認識をしておりますので、そこは政府にも日銀にも節度ある協力体制が、将来的には出来ていってほしいと思っています。繰り返しになりますが、現在はそういう問題提起をしている段階でありまして、やはり時間をかけて議論をしなければいけないと思っています。

問)

本日のメンバーの中に木村剛さんは入っておられるんですか。

答)

後で発表されますが、木村さんは入っていなかったと思います。

問)

それはなぜでしょうか。

答)

本日公表するのは検証チームですから、金融タスクフォースではありません。金融タスクフォースのチームはまだ発表しておりませんが、それぞれご本人のご希望、ご意向をお伺いしながら、重要なワーキンググループ、タスクフォース等で協力していただけるところでは、協力をしていただきたいということです。なぜ入るかなぜ入らないかというのは、これはなかなか難しいといいますか、一概には言えませんけれども、本人のご希望も、またご協力いただけるか、こちらとしてどういうことをお願いしたいかということで、総合的に、いつも申し上げている5名の方々等には、役割を分担していただければありがたいと思っています。

問)

タスクフォースのメンバー発表は今週中というふうに考えてよろしいんですか。

答)

日にちが迫っておりますので、出来るだけ、早く、御用納めまでには発表できるようにしたいと思っております。

(以上)

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