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竹中金融・経済財政担当大臣記者会見要旨

(特別検査等の実施結果について)

(平成15年4月25日(金) 17時07分~17時23分)

【冒頭大臣より】

特別検査を実施した結果をご報告させていただきたいと思います。詳細は佐藤検査局長の方から報告させていただきますけれども、冒頭に私の方から、以前から申し上げています銀行の監督・検査行政に対する全体的な考え方を再度少し整理させていただきたいと思っております。

以前「3つのS」のことを申し上げました。「strategic」か、「sound」か、「sincere」かと、金融再生プログラムを受けて、様々な形でのご努力を銀行にはしていただいておりますけれども、そうした点を「strategic」か、戦略的かと、「sound」か、健全かと、「sincere」か、誠実かという観点からチェックして行きたいということを申し上げました。4月4日に普通株の転換のガイドラインを出して、今回、特別検査の結果を出して、更には増資に関するコンプライアンスの検査等々も行いましたので、少しまとめて整理をさせていただきたいという趣旨でございます。

まず「strategic」かどうかということに関しては、収益性にポイントを置いたレビューを進めているつもりであります。具体的には、先程も申し上げた、特にこの分野では2点強調したいと思いますが、普通株転換ガイドラインを作成し、これを厳格に適用して行くということをぜひ行っていきたいというふうに思います。3割ルールに該当するような場合は、厳正にこれに対応して行くということであります。

「strategic」かどうかということの第2点は、早期警戒制度によるモニタリングの強化というものをこれまでも行って参りましたけれども、ぜひしっかりと行っていきたいというふうに思っているところであります。

第2の「sound」かということに関しては、これは特に資産の健全性という観点から、繰延税金資産の正確性等をしっかりとレビューして行くということが重要だと考えております。繰延税金資産に関する検査の実施、これが第1。それと自己資本比率に関する外部監査の実施・導入等、こうした点が重要な点になって来るというふうに思っております。

第3の「sincere」かどうかに関しては、増資の手続きの適法性等のレビューを行うということであります。持株会社集中検査を実施しておりますが、この中で第三者割当増資に関する法令などの遵守状況、コンプライアンスのチェックを厳正に行うと、コンプライアンス検査を行うと。これは昨日、立入りの調査も始めたところでございます。更には、この点で言うならば財務諸表の正確性に関する経営者による宣言等も、主要行については今の決算から適用を要請しているわけでありますけれども、そのような点を改めて、我々としてはしっかりやって行くということを確認させていただきたいと思います。

厳格な資産査定の関連での特別検査でございますけれども、昨年の金融再生プログラムに基づいて、特別検査の再実施を行いました。カバレッジがどれだけかと、結果がどれだけかということは検査局長の方から報告をしていただきますが、私の方から1~2点申し上げたいのですが、特別検査は非常に厳格に行えたと思っております。昨年の特別検査で相当の洗い出しを行ったところでありますけれども、昨年の洗い出しを行ったその上で、今回の特別検査で更に27の取引先が下方遷移したということでありますから、昨年、一旦深堀りしているわけでありますけれども、そこを更に掘り下げたというふうに思っております。とりわけ厳格に行ったということでして、ディスカウントキャッシュフローの適用によりまして、相当、大口要管理先に関する引当率が高まったと、この点は後で検査局長の方からご報告をさせていただきます。

一方で厳しく行ったということと同時に、その結果を受ける形で不良債権の処理は進んでいるという点もぜひ申し上げたいと思っております。不良債権処分損を今回も、これらの対象先に関しては非常にしっかりと各行が計上するということ、これと見合う形で、実は下方遷移の例を申し上げましたが、上方遷移も相当の程度出て来ていると。上方遷移するということは企業の再生が進んでいるという一つの証左であろうかと思いますので、こうした点についても後程報告いたしますので、ぜひ見ていただきたいと思います。

私の方からは以上でございます。

【質疑応答】

問)

今回の特別検査の結果で、27社が下位遷移ということですけれども、これ自体をどう見るかというのが一つあると思うのですが、一つは大手行が自己査定を非常に厳格化した結果であるという見方なのか、それともまだまだ甘くて炙り出したらこれだけ出てきたという見方なのか、大臣の見方というのを伺いたいのですが。

答)

特別検査の結果の詳細は、私が退席した後検査局長がいろいろ対応してくれると思いますが、私は特別検査は昨年も厳しく行ったと、今回も更に厳しく行ったと、その結果今のような数字が出てきているというふうに思っております。これはある意味で昨年厳しく行ったわけですから今回は下方遷移の数は前回よりは少なくなって、これは当然なわけでありますけれども、その意味ではその中で27社と、我々が厳しく行った結果としてこういう姿が出てきたのだというふうに思っています。

問)

特別検査の狙い自体が自己査定、査定を厳格化してその部分に対する不信感というものを、市場の不信感というものを取り除くということだったと思うのですが、2回目の特別検査をやっても実際株価はどんどん下がっている。最初の目的にきちんと果たして対応できているのかという疑問も出て来ると思うのですが、この辺についてはいかがでしょうか。

答)

特別検査と株価の問題を直接結び付けるのは少しミスリーディングであろうと思います。これは検査・監督の業務は我々としてしっかりやっていく。株価の問題というのは大変重要な問題だと受け止めておりますけれども、これは経済全体の問題であり、更には世界全体の株価の動向に影響されている問題であり、日本の特殊事情としては、むしろかつては銀行や生保という大手のプレイヤーがいたわけですけれども、そうしたプレイヤーが今いなくなる段階で、リスクマネーに十分資産が回らなくなっていると、そういうメインのプレイヤーが、10年前にいたメインのプレイヤーが消えて、非常に短期的な需給に過度に影響されるというような一種の構造問題を抱えていると、そういう中で株価の問題というのを理解して、それに対する対応は対応としてしっかりとやっていかなければいけない。そういう問題であろうかと思います。

問)

特別検査によって、自己査定に政府が介入して行くということによって、逆に金融機関側の査定能力に対する信頼感を崩すのではないかという見方もあると思うのですが、その辺はいかがでしょうか。

答)

そんな見方があるのでしょうか。少なくとも私はあまり聞いたことのないような気がいたしますが、これは自己査定が大事だということはご指摘の通りだと思います。そこはしっかりとやっていただきたい。これは決算期に我々がその時期に一緒に資産査定に加わることによって、我々なりの査定の結果を示して、前回もそうでありましたように自己査定と我々の査定についてギャップがあればそれを出していく。その中で自己査定が非常にしっかりしたものになってくるという、そういう性格のものだと思います。現実にいろんな査定を一巡目二順目我々の検査を重ねる中でそのギャップは縮まる傾向にありますので、我々が資産の厳格化を求めて検査をしっかりとやっていくと、その中で自己査定そのものが大変しっかりしたものになりつつあると、そのように理解すべきなのではないでしょうか。

問)

繰り返しになるかもしれませんが、本日株価がバブル後最安値ということになったのですが、改めて大臣のご所見を伺いたいのですが。

答)

これはちょっと今申し上げた事とは別の次元としてお答えしなければいけないと思いますが、実体経済そのものは実質成長率等々に見られるように、厳しい中にありながらも当初の政府の想定、14年度ゼロ%成長という政府見込みを上回るところで何とか推移していると。厳しい状況であることは間違いありませんけれども、実体経済は大きく崩れているわけではないというふうに理解をしています。しかしながら世界的な、ここ2年くらいの株安のトレンドの中に日本が置かれている。加えて日本の場合、先程申し上げましたように、10年前ですと銀行が、平成の初期ですが、株式市場の取引の内で4分の1くらいを銀行が占めていた時期がありました。しかしその銀行の取引のウエイトが今1%になっています。生保もかつては5%とか多い年は9%くらい占めていたわけですが、それも1%強くらいになっている。国内のそういったリスクマネーが、安過ぎる時は買うし高過ぎる時は売るという形で価格形成の安定を図っていたというふうに思うのですが、そういうプレイヤーが今いなくなってリスクマネーに十分資金が回らないというような、資本市場そのものの構造問題を抱えているというふうに思っております。そうした点も踏まえて、先日の経済財政諮問会議でこの問題について連休明けに改めて議論したいという民間議員からのご指摘もありましたので、今申し上げたような問題意識も含めてしっかりと対応していきたいと思います。

問)

特別検査の話ではありませんけれども、公的資金の新制度の必要性の現時点でのお考えと、再生プログラムの大きな目標である04年度末の不良債権比率の半減、これの達成見通しについての2つについて改めてですが現時点のご所見をお聞かせください。

答)

新たな公的な資金の枠組みが必要かどうかということについては、これはその必要性も含めて、今、金融審議会のワーキンググループの中で議論をしていただいております。これはそのような形で議論するというのは、昨年の金融再生プログラムに掲げた通りです。この結論が今年前半ですので6月にはワーキンググループから出て来るというふうに思います。今、日本を代表する専門家に集まっていただいて、こうした枠組みの必要性も含めて検討をしていただいておりますので、私の方から予断を与えることなくしっかりと議論をしていただきたいと思っています。

不良債権比率を2年で半分にすると、8%台を半分程度にするという目標に向かって、正に資産査定を厳格化して、オフバランスをしっかりと進めて、コーポレートガバナンスを発揮してもらうということを今、銀行にも一生懸命やっていただいているわけでございます。これは今回の決算の数字が出揃った段階で、不良債権の数値の確定というのは決算よりも更に若干遅れるわけではありますけれども、それと歩調を合わせる形で具体的にどのようなシナリオで、どのようなパスでと言いますか経路で不良債権の半減を目指して行くかということは、ぜひ明確にして行きたいと思います。基本的には私は今の資産査定の厳格化とオフバランスルールを厳格に適用することによって、この目標は達成できるというふうに思っております。

問)

特別検査について、今後どうされるのか。来年の3月期にまたもう1回やるのかどうか、その点についていかがでしょうか。

答)

理想的には特別検査をしなくて良い状況が出現するというのが理想であろうかとは思います。ただ、今の時点ですぐにこれを止めるのが良いことかどうかというのは、直ちには判断できないと思っております。繰り返し言いますが、我々としては2年後にこの問題の終結を図りたいと、その目標に向かって資産査定の厳格化、自己資本の充実、コーポレートガバナンスの強化、これをしっかりとやって行っていただきたい。そのための検査・監督を続けたいと思います。

問)

1年前の特別検査の会見で、前の金融担当大臣は「不良債権処理は一つの山を越えた」という言い方をされたのですね。それから1年経ちましたけれども、今はどういう状況なのか大臣なりにお答えいただけますでしょうか。

答)

柳澤大臣の会見のお言葉は、ちょっと私は今の時点ではよく承知をしておりませんですけれども、基本的に柳澤大臣が始められた特別検査というのは大変重要な第1歩であったと思います。その第1歩があったから今回もそれを踏まえて前向きの成果が出つつあるというふうに思っております。問題の終結に向けて、道のりはまだまだ険しいと思いますけれども、我々としては前には進んでいるという実感をもっておりますので、ぜひしっかりとやって行きたいと思います。検査の詳細については佐藤検査局長の方から説明をさせていただきたいと思います。

ありがとうございます。

(以上)


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