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竹中経済財政政策・金融担当大臣記者会見要旨

(平成15年8月26日(火)10時49分~11時08分 於)金融庁会見室)

1. 発言要旨

おはようございます。

閣議がございました。久しぶりの閣議であります。

閣議決定としては、銀行等保有株式取得機構に関する政令が私たちの直接関連ではございましたが、特にコメントを申し上げることはございません。

閣議では、先般の米国出張について、私の方から以下のような報告をいたしました。

「私は、8月5日から8日まで米国ワシントンを訪問し、マンキュー大統領経済諮問委員会委員長と定期経済協議を行ったほか、スノー財務長官、フリードマン大統領経済政策担当補佐官、グリーンスパン連邦準備制度理事会議長、ドナルドソンSEC委員長等と会談をいたしました。

一連の会談では、私から日本経済の現状、構造改革の進捗状況及び今後の政策のあり方について説明を行いました。これに対して先方からは、日米両国の経済は好ましい方向に向かっており、日米両国それぞれが成長を高めていく政策を取っていくことが重要であるという認識が示されました。また、小泉内閣の構造改革努力に対して強い支持が表明されました。今後とも我が国としては構造改革をさらに進めて、持続可能な成長を実現することが重要と考えます。」以上のような報告を行いました。

閣僚懇では総理から、「自民党の総裁選等様々な政治のスケジュールがあるけれども、政治に小休止なしであると、各閣僚は行政に精励してしっかりと行政上の仕事をしてもらいたい」と、そのようなお話がございました。

私の方からは以上であります。

2. 質疑応答

問)

それではまず、金融絡みで2点ほど伺いたいと思います。

まず、繰延税金資産についてなんですけれども、日本公認会計士協会が地銀の監査法人に対しまして、大手行並みに繰延税金資産の扱いを会計ルール、厳正に則って扱うべきだという方針を打ち出すとしています。この動きにつきまして、まず伺いたいんですけれども。

答)

地方銀行及び第二地方銀行の監査責任者を対象として、金融再生プログラムから会長通牒等の公表に至る経緯、及び主要行における今3月の決算の監査の状況について説明会を開催すると、そのようには聞いております。一般論としては、公認会計士による監査というのは、監査基準や実務指針に従って厳正に行われると、これは当然のことであるというふうに思っております。

質問のご趣旨を必ずしも正しく理解していないかもしれませんが、会計基準というのは一般に厳正に適用されるものでありますので、そのような趣旨ではないかというふうに思います。

問)

今の関連で、2月に会長通牒が出まして、ある種その余波もありまして、前回、りそなというのもありまして、今回、地銀の監査法人に対しても会計ルールを厳正にということであると、9月決算でその影響というのも考えられるんじゃないかと思われるんですけれども、そういう観点からはいかがでしょうか。

答)

これはどうでしょうか。公認会計士協会の奥山会長も言っておられますが、これまでも監査法人、公認会計士はしっかりと今までのルールを運用してきたと。今後ともしっかりと運用していく、それに尽きるのではないでしょうか。厳正に運用しない方がいいというような理屈はどこからも出てこないというふうに思いますし、そこは、これまでも公認会計士は社会的責任を果たしてきたと思いますが、当然のことながら、ルールに則って粛々とやっていただくということに尽きるんだと思います。

問)

もう一点なんですけれども、先月広島で行われたタウンミーティングの後に行われた記者会見で、この夏、夏期休暇を使って、今後の市場活性化に向けた中長期的なプランをじっくりお考えになりたいと確か仰っていたと思うんですね。実際、休暇が明けまして、今後の大臣なりのアイディアないし構想あたりはどのようなものを今お持ちなのか、できればご披露いただきたいと思います。

答)

正直言いまして、まだ勉強中であります。引き続き、しっかりと勉強したいと思います。

ただ、これまでの経済政策、構造改革というような方向としては、正しかったというふうに思っておりますし、それを更に強化する、そういうことに関していろいろまだ知恵を出す余地はあるのだろうなと思っています。これは、経済財政諮問会議の民間議員の方々にもお願いしておりますけれども、まだその意味では、国会等々が始まりますとスケジュール的にも大変厳しいですが、それまでそういった勉強の時間があるうちに、引き続き更に勉強していきたいと思います。機を見てまた諮問会議等々の場で、どういう議論が必要か、どういうことが必要かということについては議論をして、これは是非ともオープンに議論したいと思います。

問)

内閣府クラブサイドから幾つかお伺いしますが、外遊されるというお話がありますけれども、今日は閣議で何がしか了承されたのでしょうか。

答)

8月28日から3日間、28、29で30日に帰ってまいりますが、香港特別行政区、深圳(シンセン)経済特別区を訪問するという予定について、今日、閣議で了承をいただいております。

問)

そのご日程ですと、次の閣議にかかるような形になりますけれども、何がしかのアージェンシーがあるのか、この時期に行く狙いとその意味をご説明ください。

答)

金融担当大臣を兼務してから、実はなかなか海外出張の機会がありません。前回申し上げましたけれども、アメリカも1年半ぶりだったんでありますけれども、金融担当大臣として、特にアジアの金融の中心地である香港、シンガポール等々で、できれば関係者との意見交換をしたいと。彼らから見ますと、日本の金融について常に非常に注目して見ているわけですから、そうしたことについてもきちんと説明する機会を持ちたいとかねがね思っておりましたんですが、なかなか行けない。今回も、本当はもう少し多くの場所を訪れたかったんですが、日程的な関係でどうしても2泊ぐらいしかできないという関係でありまして、香港にとりあえず行くということにさせていただきました。

問)

深圳(シンセン)にもいらっしゃるのですか。

答)

ええ、いい機会でありますので、深圳(シンセン)の経済特別区ですね。これは、特区等々の関係とも少し重ね合わせて考えておりますけれども、経済特別区について、いい機会でありますので勉強させていただきたい。そこで、特に実物経済と金融経済の関係等々について、関係者からの意見もお伺いしたいというふうに思っております。

問)

あと、9月8日が今年の総裁選挙ですけれども、大臣サイドから総裁選の公約の落とし込み、この進捗状況について現状はどうでしょうか。

答)

これは、総裁選でありますから、総裁候補である総理がいろいろとお考えになるということだと思います。既に、もう2年半の行政を通じて、「骨太の方針」、「改革と展望」等々、そういった意味で総理とはいろんな経済の論議をさせていただいて、総理ご自身、非常に十分ないろいろなお考えがあるのだろうというふうに理解しております。

問)

何か、新しい観点からのサジェスチョンというものはされているのでしょうか。

答)

これは、総理がいろいろとお考えになっておられるというふうに思います。

問)

先程、繰延税金資産の話があったので、それに追加で2点お伺いしたいのですが、繰延税金資産については、先の金融審議会で繰延税金資産の計算の根拠等を情報開示したらどうかということで、今、議論が進んでいると思うんですけれども、まず大手行かと思っていたのですが、今のお話だと、繰延税金資産の会計的な適用も大手行、地銀、同じように厳格にということですと、情報開示についても、いずれ地銀、第二地銀にも求めていくことになるのでしょうか。

答)

まず、誤解があってはいけませんけれども、これは会計ルールでありますから、この会計ルールを差別的に適用するということはこれまでもやって来なかったと思いますし、これからもそういうことではないのだろうというふうに思っております。

あと、繰延税金資産に関する情報開示ですけれども、これは今、どのような形で実務としてやっていくのがよいのかということは検討しております。基本的には、我々は金融再生プログラムに則ってやる問題だというふうに思っておりますので、金融再生プログラムというのは大手行を中心としたものでありますから、まずはそういうことを対象にして、どういうことが可能であるかということを検討しているところであります。

いずれにしましても、ご質問の点も含めて、幅広くどのような形がよいのかということは検討していきたいと思います。

問)

関連でもう1点なんですけれども、再三お伺いしているのですが、週末に税制の要望もあるとは思うんですけれども、繰延税金資産に係る不良債権処理促進税制、いわゆる3点セットですね。これは、財務省は無税償却については前向きですけれども、あとはちょっと消極的だとも言われていますし、これは金融庁としては、要するにゼロか100かどちらか、部分的な妥協というのはあり得るのか、あるいはあくまで3点セットで、そうでなければ金融界は3点セットでなくては困ると言っていますけれども、その辺のご所見は現在どういうものでしょうか。

答)

繰延税金資産の制度が今もたらしている問題というのは、過去における税務会計と財務会計の違いから、1つの大きな調整勘定としての資産項目が非常に多額に至って、それに対する回収可能性が様々に議論されているということだと思うんですね。その意味では、本来の趣旨からいいますと、ゼロか100かというふうに仰いましたけれども、これは繰戻還付を含む3つのことをやらないと、問題の解決にはなりません。そこは、論理的にも極めて明らかだというふうに思っておりますので、我々としては3つの点、3点セットという言い方で結構だと思いますけれども、そこをやはりしっかりと変えていただかないと、問題解決にはならないというふうに思っています。

問)

これは、余計かもしれませんけれども、一部だけ認めようという財務省の姿勢というのは、そこを理解しないということですか。

答)

例えば、一部だけ認めた場合に、繰延税金資産の計算というのは非常に複雑です。例えばある意味で、ちょっと極端な例ですけれども、今、無税償却を認めて税金を安くするということは、技術上、計算上、それだけであるならば、繰延税金資産の額を小さくしてしまうわけですね。将来の回収可能性を小さくしてしまうという計算になってしまいますので、そこは調整勘定ですから、この調整勘定としての性格を考えるならば、部分的にということは問題の解決には資さないというふうに思います。

問)

更に今のに絡むのですが、金融審議会のワーキンググループでの繰延税金資産、自己資本比率に関する検討というのは、今いったん中間報告が出て中断したわけですが、再開の目処と、最終的な結論はいつ頃までに出して欲しいというご希望はあるのでしょうか。

答)

ちょっとまだ日程的なことは確認しておりませんけれども、皆さん夏の間、小休止しておりますが、これは程なく再開しなければいけない問題であるというふうに思っております。

それと、その再開については、程なくというふうに私は思っておりますけれども、税制改正でありますとか新BIS規制がどうなるかということを、これは議論していかなければいけませんので、そういうことの進捗、新BIS規制がどうなるかということを視野に入れながら議論しないと意味がないことになりますので、その意味では現時点で取りまとめはどうなるかという期限について、明確なことを申し上げるのは難しいというふうに思っております。

問)

日本の場合は──これはもう審議会の方で散々議論されたことだと思うんですけれども、米国などと違って要するに会計基準というものがそのまま監督基準に反映されているものであるので、例えばりそなのような問題が起きてしまうということを考えると、会計士側からすれば、監督規制というものが独自にないのは監督の方の怠慢であるという意見もあるようですけれども、大臣のご意見として、監督規制が独自にあった方がいいのかどうかということについては、大臣としてはどういう見通しを考え、意思をお持ちなのですか。

答)

いや、監督基準というものがあるわけですね。この監督基準は何かというと、公正な会計慣行に則ってみるのが一番いい監督の基準であるというふうに我々は判断しているわけです。それは、取りも直さず会計基準というのが非常にしっかりしたものであって、それにのっとって判断するのが一番混乱がないというふうに我々自身が判断しているわけです。むしろ、そういう公正なる会計慣行と非常にかけ離れたところで何か監督の基準があるということの方が、むしろ不自然なのではないでしょうか。

問)

もう1点、生命保険の話なんですけれども、生命保険の改正法が日曜日に施行されました。ガイドラインも発表になったのですけれども、これは大臣が国会でガイドラインを作るよと言って表明されたものですが、あそこに保険業界で慣行になっている10年の将来収支分析、これを1つの参考にするとあって、更に10年以上の分析についても自治の精神に則ってと──ちょっと書きぶりはあれなんですけれども、排除しないというふうに書いてあります。10年以上の分析というのが合理的な予想になり得るのかですね。大臣は常々、国家の経済予想については、10年以上なんてというのは保証できないということで会見でもよく言及されていたのですけれども、生命保険会社の経営予想というのは、10年以上でも予測できるのでしょうか。

答)

これは、どのぐらいの年限かというのは、本当にケース・バイ・ケースだと思うんですね。例えば、正にキーワードになるのは蓋然性ですから、蓋然性が認められる場合も認められない場合も、それはいろいろあるのだと思います。それは、従って年限の問題ではなくて、正にどのような環境下でどのような将来に対する想定が行われるかということに私は尽きているのだと思います。

今、例えば10年以上のものは予測できないのではないかというふうに仰いましたけれども、例えば住宅ローンで35年の貸し付けがあるわけですね。あれは予測できないのかというと、必ずしもそうではないわけですよね。しかしながら、例えば政治的な責任ということになると、政治というのは、その政治の主体というのは常にいろいろな形で変わるリスクがあるわけであって、その意味では政治の責任を例えば非常に長く語るというのは、私は適切ではないというふうに思います。

ただ、これは経済活動としては、我々は70年、80年生きていくわけで、70年、80年の人生を想定していろんなことを考えているわけですから、それは経済活動としてのそういうことというのは、これは当然のことながら十分にあり得るのだと思っています。だから、その10年以上は無理だ、10年以下なら可能だと、そういうふうに一律に言えるものではないと思います。

問)

それは、それでも合理的と言えるのですか。

答)

だから、そこはケース・バイ・ケースですね。合理的だというふうに判断される場合もあれば、これは経済の変数にもよりますけれども、半年先のことだってなかなか読めない場合もあるでしょうから、蓋然性というのはそういった様々な要因を考慮した上で総合的に判断されるものである、これは国会で何度も答弁した通りだと思っています。

問)

あと1点ですけれども、ということは、まだこの保険の制度が適用されたところはないですが、その5年とか6年先の蓋然性において、うちは保険業の継続が困難になるというところよりも前にですね、では20年先にはこのままだとうちはだめになりそうだからというところが最初に適用になる可能性も排除できるのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

答)

それは、ちょっと仮定の問題ですので、余りきちっとお答えできる性格のものではないというふうに思います。ただまあ、蓋然性というのがどのような形で確認されるかというのはケース・バイ・ケースで、これを最初から余り縛ってしまうと、この法律の本来の趣旨が生かされなくなるんではないでしょうか。

問)

冷夏の景気への影響ですけれども、これは小売りの7月の成績がかなり落ちたと。電器なんかが、悪かったですよね。ただ、8月に入って幾分暑くなってきているわけですけれども、今、年率2.3%に位置しているということに対して、この冷夏、大臣はどういうインパクトがあるのか、どう思っていますか。

答)

ご指摘の通り、幾つかの小売りの統計で見る限り、スーパー、百貨店等々で見る限り、その冷夏の影響というのが少しはあるのかなと、やはりそれなりの懸念があるということは示されているのだと思います。

しかし、同時に、これはその他のサービスとかですね、スーパー、小売りのカバレッジというのは、今の我々の消費生活全体の中では大変限定的でありますから、この点についてはもう少し、そういった問題意識を持ちながら様々な消費統計を総合的に見ていかなければいけないなと。今朝も、正にそのように思ったところです。

(以上)

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