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竹中経済財政政策・金融担当大臣記者会見要旨

(平成15年10月10日(金)17時34分~17時55分 於)金融庁会見室)

1.発言要旨

それではご報告いたします。

本日、りそなホールディングスは、グループの中間決算の業績予想修正と近畿大阪銀行及び奈良銀行への増資を発表いたしました。これは個別金融機関の業績予想修正でありますので、本来でしたら金融庁がこのような場を設けることではないのですけれども、ご承知のようにりそなには多額の公的資本が注入されているということを踏まえまして、また報道関係者からのご要請もありましたので、このような機会を設けさせていただいたところであります。

参考までに、りそなホールディングスが発表したプレスリリースを配付しておりますけれども、業績予想修正等の詳細については、これはりそなに直接お問合せをいただきたいと思います。

この業績予想修正の発表に当たりまして、りそなホールディングスの細谷会長が先程、4時ごろですけれども金融庁にお見えになりました。細谷会長からは、以下のような説明がありました。「6月に就任してから100日間、りそなの再生、企業価値の最大化に向けて取り組んできました。特に重点的に取り組んできたのが、ガバナンス改革を中心とした『内部改革』と『黒字経営への転換』であり、本日発表するこの『財務改革』は、『持続的な黒字経営への体質転換』、このための中核的な取組みである。この財務改革においては、従来の経営方針を大胆に転換して、例えば、関係会社・関連ノンバンクに対する方針変更、事業再構築引当金の計上、退職給付関連の不足金の前倒し一括処理、及びDCF法の適用範囲の拡大等によって、将来のリスクファクターを徹底的に排除することとしている」、このようなご説明がありました。

私の方からは次のようにお答えをいたしました。「これまでのりそな再生の取組みにおいて、いろいろな御苦労があったと思いますが、今般の財務改革・経営改革は、りそなの早期再生に向けた大きな第一歩であるというふうに評価をしております。いわば『攻めの決算によってV字型再生を目指す』というものであって、引き続き徹底的な経営改革を進めて頂きたい」と、このように申し上げました。

細谷会長からは、「これまでの取組みに併せて、『新しいビジネスモデルへの挑戦』を行うなど、りそな早期再生に向けて全力を尽くしたい」というコメントがありました。

これに関連して2点、是非申し上げておきたいと思います。今般、多額の赤字を計上したということに関して、15年3月期決算は債務超過だったのではないかというご指摘が一部にあるようでありますけれども、この点については、細谷会長からは、以下のような説明がありました。「15年3月期決算は、法令等に基づく適正な手続きに則って決算処理を行っている。監査法人からも適正との判断をいただいている。これに対して、今回の中間決算における大幅な赤字は、新たな経営方針に基づくものであって、従来の方針とは大きく異なっている。新経営陣の責任は、1兆9600億円の国民の投資に対して、どう報いるか、いかにりそなの企業価値を極大化させるかという点にあると考えており、こうした観点から、将来のリスクファクターを先取りして抜本的に排除したものである。いずれにしても、15年3月期決算は、監査法人の監査を経た適正な決算であったと考えている」と、そのようなお話がありました。金融庁としても、また私自身としても、全くそのように同じような認識をしております。

更にもう一点。「近畿大阪銀行等への増資は公的資金の流用ではないか」というご質問があるかもしれませんが、この近畿大阪銀行に対する増資について、細谷会長からは、「公的資金については8月7日に株式交換を実施した結果、りそなホールディングスが公的資金に対する責務を負っている。りそなホールディングスとしては、グループ内の資本を最大限に有効活用して、グループ全体の企業価値を極大化していくことが国民に対する責任と考えており、また、子銀行の健全性確保という銀行法上の責任も踏まえて、増資引受けを決定した」と。

更に細谷会長からは、「増資引受けのための資金については、りそな銀行から借入れを行うが、りそな銀行では、上期中に実施した株式売却の代金を貸出原資に充てる予定である」と、このような説明がありました。

当庁としても、今般の増資は、りそなグループの早期再生、グループ全体の企業価値の最大化を図るために実施されるものでありまして、公的資金により引き受けた株式の価値の向上、経済の活性化等を通じ、国民の利益に資するものであると考えている次第であります。

私の方からは以上です。

2.質疑応答

問)

りそなの資料を見ますと、繰延税金資産、あるいは引当て率、全てにおいて他行、大手銀行を大幅に上回る超保守的な決算をしようとしているということが伺えます。そういう超保守的な財務戦略について、大臣はどう評価されましたか。

答)

基本的にはこの決算はまだ確定したものではありませんし、修正でありますので、確定的なことを申し上げる立場にはないと思っておりますが、私の理解では基本的な考え方というのは、やはり企業価値を最大化させたいと。そのためには確固たる財務基盤が必要であると、これは正しいと思います。そのために財務改革を行うのだと。それによって将来のリスクファクターを徹底的に排除するのだと、そういう考え方なのだと理解しています。

結果的に言うと、そのために大きく、私は3つ位のことをおやりになっているのかなというふうに思うのですが、1つは再構築への積極的な取り組み。再構築への積極的な取り組みの中身としては、これは関係会社、関連ノンバンク等を見直すと。これは支援を継続するのか、そうではない清算をするのかということをしっかりと見定める。更に事業再構築引当金をしっかりと積む。それと退職給付関連不足金を前倒しに一括処理すると。これが再構築への積極的な取り組みということです。

同時に第2として、企業再生に向けた将来リスクへの引当て強化ということをやってるわけです。これはディスカウント・キャッシュフローの手法を今までよりもはるかに拡大して適用して、将来リスクを、リスクファクターを徹底排除する。

第3番目としては、保守的な会計、財務ということで、繰延税金資産の計上を非常に小さいものにしていくと。結果的に引当て率は主要行で最高水準を目指しているのだと思いますし、繰延税金資産への依存度を最低水準にしようというふうにしているのだと思います。いわばこれがまさしくバランスシート調整だと思います。

繰り返し言いますが、今後まだ決算の数字は確定しておりませんが、そういった攻めの経営、そういった点については評価できる点が多々あると思っております。

問)

そのバランスシート調整が、事実上はこれは投入した公的資金で行われる。お金に色はないにしても、公的資金で行われてその投入した分まではいかないけれども、それ位の赤字が出そうだという今回の発表ですけれども、ちょっと国民向けに、大臣から今回の意義を改めて、公的資金で結局やはり最高のBS調整をするということになりますから、是非わかりやすく説明と、今回の意義を語っていただきたいのですけれども。

答)

もう今申し上げたことが全て説明になっているというふうに思っておりますけれども、基本的にはこの投入した公的資金を活用して企業価値を最大化すると、それが国民負担を減らすことにもなるわけです。そのために確固たる財務基盤を作らなければいけない。その財務基盤を作るためのいわゆる財務改革を行おうとしているということ、それによって将来のリスクファクターを徹底排除しようとしているのではないだろうかと。そういうプロセスを通じて、企業というものは強くなっていくのだと思いますし、これはしかし、まだもちろん一歩でありますから、これはある意味でスタートでありますけれども、投入した公的資金を活用して、その経営手腕を発揮されて、財務基盤を強化すると、それによってV字型の回復を図ると、そのような戦略でいらっしゃるというふうに思います。

問)

非常に思い切った引当てと繰延税金資産に対する判断だと思うのですが、それをバランスシート調整というふうに大臣は評価なさったということなんですが、他の大手銀行に対してはですね、まだ引続き努力が必要な点があるというお考えなんでしょうか。

答)

おそらく努力を必要としているという意味では、銀行に限らずどの会社も努力を必要としているのだと思います。しかしそれぞれの経営の目標、それぞれの目標にも色んな目標がありますから、その目標のバランスを取ってそれぞれのウエイトを付けながら経営をしていくというのがまさに今求められている経営だと思います。

いずれにしましても、そのバランスシート調整というのは日本経済全体に課されている重要な課題でありますから、これは繰り返し言いますけれども、銀行にとっては不良債権の償却というかたちになるし、企業にとっては過剰債務問題からの脱却ということになるわけですけれども、これはそれぞれの立場で是非引続きしっかりとやっていただきたいと思います。

問)

国民からするとですね、1.96兆円の公的資金がムダ金に終わらないかどうか、これで本当にりそなが返してくれる目処が立とうとしているのかどうか、その点についてはどうですか。

答)

これはまさにこれからの経営次第だと思いますが、今回のこうした措置に対して、今日、例えば1日の動きでみても、りそなの株価は上昇しておりますし、これは企業価値を高める方向を志向しているものであるし、市場もそういう受け止め方をしているのではないかなというふうに思っております。

公的資金を投入して、何もしないのが良いのかですね、資本を投入した額を使ってV字型の回復を目指して思い切った財務リストラをする方が良いのか、これはやはりしっかりと見ていただきたい、我々も見たいと思います。

問)

そのムダ金にですね終わらないために、新しいビジネスモデルですとかですね、そういういかにお金を稼いで行くかということが一番重要になってくると思いますが、それはいつまでにりそなの経営陣に求めるというお考えなんでしょうか。

答)

これはそれぞれに基づいて、銀行がその業務の改善の計画を作っておりますし、それを必要に応じて更に見直していくということになりましょうから、その中で判断をしていくんだと思います。いずれにしても、これは早くやはり経過を見せていただきたいと思いますけれども、まずは新たな経営健全化計画については、りそなグループからは11月下旬の中間決算発表の頃を目途にして策定したいというふうに聞いておりますので、しっかりとそういう目標をまず立てていただきたい。その上でその目標を是非とも実現していただきたいというふうに思います。

問)

今年3月末に債務超過だったか、監査法人のやったことは適正だったかどうか、先程適正だと、細谷さんと同じ認識だと仰いましたけれど、もう一度改めて大臣の口からどこがどう同じだったのかということを明確に仰っていただきたいのですが。

答)

これは何度も記者会見で申し上げておりますけれども、利用可能な公式の決算というのは一つしかないと思っております。それはまずりそな自身がしっかりとそれを作成して、独立した監査法人が厳格に監査を行って作られた、それで適正と認められた決算。その過程においては我々も検査を行っておりますし、通年専担検査を行っておりますし、特別検査を行ってその資産評価にも反映させている。それが唯一の利用可能な正式の決算であって、その決算において、かつ独立した監査法人が適正と認めた決算において債務超過ではなかったということが示されているわけであります。それ以外の決算はありません。

問)

すると2兆円近い公的資金を使ってですね、それにほぼ匹敵する額の赤字が出たわけで、こんな銀行になぜ公的資金を入れたのかと、いうことを考える国民感情も多いと思うんですね。それに対して竹中大臣は、国民に対して理解を得られるのかどうか改めてお願いします。

答)

これは、会計の問題というのは中々専門家でないと分からない面もありますが、赤字が出たからその前が、今回赤字が出たからそれを3月に引き戻して債務超過であったというようなそういう間違った議論は是非私は専門家にやめていただきたいなと思います。つまり今回、資産の価値というのは、これは国会でも答弁をさせていただきましたけれども、経営方針によって、例えばその一つの会社を存続させるという経営方針の下で存続企業として価値を計るのか、清算するものとして価値を計るのか、これは全く違ってくるわけです。そうした観点から言いますと、今回まさに前回の決算を踏まえて今回新たな経営陣によって新たな経営方針の下に、その新たな経営方針に基づいて攻めの経営によって資産を評価しているわけでありますから、そこはまさにこれがバランスシート調整である。これが財務戦略であるとそのようにしっかりとご理解をいただきたいと思います。

問)

今そうは仰いますけれど、貸倒引当金見込み、この資料を見ますとですね、りそな銀行要管理債権50%弱、近畿大阪銀行約90%弱というですね、これは要管理と言うよりも破綻懸念、破綻懸念のところを見るとほとんど破綻先のようなですね、引当て率であると。これは自己査定ですけれども、従来からの金融庁の金融検査を盛り込んで自己査定をするわけですから、一体金融庁の金融検査結果というのは何だったのかという疑問が出てくると思うのですけれどもいかがでしょうか。

答)

その議論は非常におかしいんじゃないですか。たくさん引当てをしたからその債務者区分が悪いんだというのは、これは会計の考え方として誤っていると思います。債務者の区分に関しては、これはしっかりと検査にも同時に入って、特別検査でやっていると。最低限満たさなければいけないミニマム・リクワイアメントも確かにあります。それを上回って更にしっかりと将来のV字型回復を目指して引当てを積むというのは、これは攻めの経営として評価されるものであって、引当てを積んでいるから資産が悪いんだと、それは会計の考え方から言って、私は違うのではないかと思います。例えば日産のゴーン社長が就任された時ですね、事業再構築のための大幅な引当金を積んでそれによってV字型の回復を果たした。非常に極端に言えば、あれだけ引当金をたくさん積んだんだから、債務内容はもっと本当は悪かったんだと、そのような評価は私はないと思います。そこは決算というのは継続していくわけでありますけれども、しっかりと評価を、深堀りをした決算を行って、これはまさに財務改革だと思いますが、それに基づいてV字型の回復を是非図っていってもらいたいというふうに思っております。

問)

今の引当ての件ですが、他行はですね、りそなの引当て率に縛られないわけですが、これに準じた扱いをするのは望ましいというようなお考えはあるのでしょうか。

答)

これはミニマム・リクワイアメントは満たしていただかなければいけない。最低限のですね引当てていただかなければいけないような水準というのは、これは監督の立場からあるわけです。しかしそれを超えてどのように戦略的にですね、財務を深掘りしてその収益力を高めていくのかというのは、これは経営戦略の話ですから、どのような経営戦略を採るかというのは、ここはやはり経営判断に委ねられているんだと思います。しかしマーケットはそういうことも含めて、その経営を評価していくわけで、それはマーケットがしっかりと評価していけばよい話だと思います。

問)

今の件で、税務当局の方からですね、いわゆる過剰引当てという形で指摘されるようなレベルのものではないというふうに捉えればよろしいでしょか。

答)

(監督局長)引当てが過剰であるかというのは、会計上のですね監査において過剰な引当てなり、合理的根拠のない過大な引当てというのがあれば、監査人はこれを指摘する可能性はあると思うのですけれども、この件については会計監査人とも相談しながらやっておられると聞いております。税務上はこれは引当金は通常のケースですと有税の引当てでございますから、関係はないと思います。

問)

近畿大阪と奈良ですけれども、これは増資した後は7%台の自己資本比率ということなんですけれども、それ以前で言いますと、増資がなければおそらく4%割れということだったんじゃないかと思うんですが、これについては当局として早期是正措置というのは、これは今回は発動しているのでしょうか。

答)

財務に関連する命令その他については、私たちの方から申し上げないことになっておりますが、近畿大阪銀行におきましては、本日金融庁から早期是正措置の命令、第1区分を受けた旨発表したということは承知をしております。奈良も同じです。

問)

今日、日銀がですね、金融緩和をしているんですがこれをどういうふうに評価なさるのか。

答)

経済に新しい芽が出始めていると、そういった持ち直しの動きが見られていると、その持ち直しの動きを後押しするために、大きく日本銀行は三つの措置をとっております。これは経済の動きを後押しするものとして私自身も評価したいと思っております。

(以上)

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