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竹中内閣府特命担当大臣(金融、経済財政政策)記者会見要旨

(平成15年10月24日(金) 10時01分~10時33分 金融庁会見室)

1.発言要旨

おはようございます。

閣議がございました。今日の閣議では私に関連する問題としましては、15年度の年次経済財政報告、いわゆる経済財政白書を提出してご報告いたしました。次のように発言しております。

「本報告は我が国の経済と財政の現状と課題を総合的に分析し、経済財政諮問会議での審議に分析的基礎を与えると同時に、この経済や財政に関する政府の見方を幅広く国民に情報提供を行う、そういうことを目的としている。日本経済は2002年に入って底入れをして、景気は持ち直しに向かっている。しかし、景気回復力には脆弱性が見られて、事実的な景気回復を実現するためには構造改革を更に進めることが必要である。こうした考え方を踏まえて今年の報告では特に金融と企業の再構築、それと高齢化、人口減少の下での経済成長や財政、社会保障制度における課題について分析をしているわけです。以上のような問題意識に立っておりますので、今年の経済財政報告の副題も、過去2回に続きまして「改革なくして成長なし III 」といたしました。」

以上のような報告を、閣議では私の方から行っております。

閣僚懇でありますけれども、閣僚懇について1点、経済財政諮問会議での大臣イニシアチブですね、集中審議について発言を求めて発言をいたしました。「基本方針2003」の早期実現に向けて、制度政策の改革に取り組んでいただくために、10月17日の諮問会議で次のようなことを決定しました。

11月下旬に、例年通り関係閣僚の参加を経て集中審議を実施する。この集中審議は今後の「予算編成の基本方針」の策定ですとか、「改革と展望」の改定などに向けて、先の小泉内閣組閣時の基本方針も踏まえて精力的に議論を行うということを考えている。

「具体的な審議のテーマとしては、『官から民へ』に関連して、規制改革等、国から地方へに関連して三位一体改革等、経済活性化に関連して雇用創出等、それと財政改革に関連して公共事業等の歳出改革等、社会保障制度改革に関連して年金制度改革等、以上のようなことを考えている。関係大臣におかれては、構造改革を一層進める観点から、各大臣のイニシアチブを十分に発揮されて、更なるご協力をお願いしたいと。詳細は別途事務的にご連絡をさせていただく。」以上のような発言をさせていただきました。11月の下旬に諮問会議で関係大臣をお招きして、その大臣イニシアチブ、集中審議を行うということであります。

閣議、閣僚懇に関連しては以上でありますけれども、ご承知のように、その後、第1回の地域再生本部が開かれました。今日の閣議で総理の方から地域再生本部を設けるというお話がありまして、金子大臣が担当大臣としてこれに当たられるということであります。この地域再生本部では、本部長はもちろん総理でありますが、私自身も副本部長の1人でありますので、冒頭、次のような発言をさせていただきました。

「日本経済には明るい兆しが表れているところではあるけれども、こうした明るい兆しを国と地方が一体となって日本経済の隅々にまで浸透させていくことが必要な状況になっている。そうした意味で、この時点で地域再生本部が開かれるということは大変意味のあることであると思う。地域再生については、経済財政諮問会議で、これまで地域活性化と雇用創出に向けてということで4つの観点から議論を進めてきた。第1は行政サービスの徹底した民間開放が必要である。アウトソーシングの問題です。2番目は、地域の基幹産業の事業転換を積極的に進めなければならない。これは農業とか建設業とかであります。第3は、観光などの地域の新しい産業を創出していかなければいけない。第4は、地域の雇用対策を抜本的に強化すべきであると。そのような観点から議論を行ってきたわけでありますけれども、ご承知のように、今、内閣府において、10月中を目途に行政サービスの民間開放、アウトソーシングを阻害する要因は一体何なのかということを調査をしているところであります。この調査も踏まえて、11月下旬の経済財政諮問会議の集中審議の場では関係大臣も交えて具体的な方針を議論することにしている。諮問会議、地域再生本部、力を合わせてこの地域再生に取り組んでいきたい。」以上のような発言をさせていただきました。

閣議、閣僚懇及び地域再生本部に関して、私から申し上げることは以上でございます。

2.質疑応答

問)

白書なんですが、ある意味その当面の景気、それから見通しとして不良債権問題、それから高齢化とか、かなり幅広い内容になっていると思うんですけれども、その中でも特に大臣が注目すべきポイントとお考えになるのはどこなのか、強調すべき力点、それはどういうところなのか。その辺をお願いします。

答)

白書は、経済財政を総合的にしっかりと分析的な基礎に基づいて分析をしていく、それを諮問会議等々での議論に反映させていくということを目的としていますので、当然のことながら、非常に幅広く分析を行っています。その中で特にというふうに言われると少し困るところもあるんてすが、最初の3分の1位のところでは、非常に幅広くマクロ経済の状況分析をしていて、私たちがよく申し上げる、芽が出始めているということに関して、非常に興味深い幾つかの分析的な視点からの指摘があると思っております。そうした点を是非しっかりと幅広く国民に見ていただければありがたいなと、これが第1点です。

第2点は、今この改革を進めていく中で、非常に重要な局面を迎えている、正に金融と企業の再生、これも改革の芽が非常にはっきりと出始めているところでありますけれども、これが中だるみすることなく、しっかりと進めていくために今何が必要なのかといった点、すなわち、バランスシート調整の具体的な考え方とその進捗について、非常にしっかりとした分析が行われていると思っております。

第3番目は、これは人口の高齢化、それと人口の将来の減少という問題に向けて、これはデモグラフィックな問題というのは、人口学的な要因というのは、非常に中長期的に経済社会の枠組みを規定する問題であると思っておりますが、その問題を、ある意味で実は初めて白書では正面から取り上げて、大変厳しい問題ではあるけれども、だからこそ構造改革を進めなければいけない。悲観論に陥るだけではなくて、構造改革を進めることによって問題の克服は可能であるということをも積極的に議論していると思っておりますので、そうした点に是非関心を持っていただいて、この白書を幅広く読んでいただきたいと思っております。

問)

その中で、特に第2章の中で過剰債務企業の問題がありまして、試算をなさっているわけなんですけれども、インタレスト・カバレッジ・レシオというのは1以下の企業ですね。利払いが営業利益より多くなっちゃっていると。だけれども、メインバンクの支援はないということで、ある意味放置されている企業というのは全体の132社、上場企業の6%という、かなりショッキングな数字がここにあるんですけれども、裏返すと、これをどうするのかという問題、特にこれは白書でも指摘しているんですけれども、促すインセンティブが今働いていないのではないかということを報告しているわけなんですけれども、これは金融庁の対応ですね、この検査が甘いのではないかと、その辺に関してどういうふうに問題解決していけばいいのかということをお願いします。

答)

ご指摘のように、今回の白書の分析の中で、企業と金融の一体的な再生の中で、企業部門に関して、不良債権というのは、銀行から見ると不良債権でありますが、企業から見ると過剰な債務であると、そうした観点から、一定の水準よりも財務内容が悪いところ、かつその収益が更に低下しているところ、そういうマトリックスを作って、特にその両面で悪くなっているところ、加えて再生等々で色々議論されているところ、加えて大体130社位について、今後対応が必要になってくるのではないだろうかということを指摘をしております。

これはしかし、今幾つかご指摘がありましたけれども、このための再建の取り組みというのを今正に「金融再生プログラム」を策定してから、我々も政府も、また銀行部門も非常に中心的な課題として取り組んできているところだと思っております。政府としては産業再生機構を立ち上げてこれを動かしている。各メガのグループの中ではそれぞれがこの再生に向けたスキームや仕組みを色々工夫を凝らして、今作って稼動させつつある。そういうところを正に積極的に活用して再生を進めていくということが重要なポイントになっているんだと思います。この130数社というのは、再生等を含めた何らかの対応が必要であるということでありますから、ここが全部悪くなるということではないわけですね。正に何とか再生に向けて努力をしなければいけないというところを洗い出しているわけであります。そのための枠組みというのは、ご承知のように産業再生機構であり、各メガのグループの再生のスキームというのが出来上がって、これをしっかりとやっていくということだと思います。

インセンティブがあるかどうかということに関しては、検査局の中に再建計画の検証チームを作ってしっかりと見ていくと。これは追う側の、プッシュする側の非常に強いインセンティブにはなるんだと思います。同時に、引っ張り上げる、プルの側のインセンティブというのも、必要になるわけでありますが、正にそこはそういった銀行部門、企業部門の再生をどのようにマーケットの側がプラスに評価していってくれるかということだと思います。私は、マーケットを見る目というのは非常に厳しくなって、その意味では、良い再生をやれば、それは株価に跳ね返るし、企業の評価に跳ね返ると、そういうインセンティブが働きつつあると思っておりますので、これは市場、証券市場全体の活性化、資本主義の活性化と連なる問題でありますが、そういったインセンティブを活用してこの問題を何とか着地させたいと思っております。

問)

もう一つ、白書のあり方というようなものに関してなんですけれども、この白書を見ると、非常に現状分析というのは優れているなと、よく分かるわけなんですけれども、一方、特に総選挙も近いというのも、国民からすると、もう分析はいいから改革策を早く示してくれと、具体的な手順に移ってくれと、そういう気持ちがあると思うんですけれども、そういう点で言いますと、この白書というのはなかなかそこまでは踏み込み不足ではないかという印象があるんですが、その白書のあり方ということについてどういうふうに大臣は考えているか聞かせてください。

答)

これは実は2年前に随分いろいろと皆さんにご議論をいただいたところだと思います。2年前から経済財政白書になりました。それまでは経済白書だった。それが2年前から経済財政白書になった。その時点でこの白書の性格というのを非常に大きく私たちは変えております。どういうふうに変えているかというと、単に現状分析だけではなくて、積極的に政策を議論するようにしようと、政策論議、政策提言型に持っていこうと。

第2としては、単なる現状、過去の分析だけではなくて、フォワードルッキング、未来志向、将来志向でやっていこうではないかと。

第3番目に、これは非常に専門的な分析を多々行っておりますが、決して専門家だけに読んでいただくのではなくて、非常に分かり易くそれを表現しようではないか。大きくいえばその3つ位の大きな改革を行っているわけです。2回前の白書では、むしろ各省庁からはその提言、政策論議をやり過ぎるというご批判を受けているわけですね。しかし私はそういった白書の性格というのは、この3回目になって非常に定着してきたと思います。具体的な提言がないというふうなご指摘なのかもしれませんが、実はこういった分析を受けて、これは諮問会議と一体化して議論いただくものでありますから、諮問会議の「改革と展望」や「骨太の方針」の中等々で、実はかなり具体的な政策イシューになっているわけですね。そこは白書での分析を受けて諮問会議で提言していくというものもあるだろうし、場合によっては白書そのもので大きな方向性を出していくというものもあるのだと思います。そういう意味では、今の時点では、小泉構造改革3年目を迎えて、非常に幅広い、「改革と展望」と「骨太の方針」を続けることによって、政策提言が、なされているのではないかと思っております。今回の白書はそうした提言が非常に優れて、多くなされていて、そうした方向に政策が向かいつつあるということを前提、更に今後考慮すべき問題について分析をしておりますので、一体としての提言型の白書に、私はなっているのではないかと考えております。良い機会でありますので、経済白書から経済財政白書に変わって3回目でありますけれども、そういった白書の性格付けというのも新しいのだということを是非定着させていきたいと思っています。

問)

金融審議会第一部会だけ今進行中で、証券市場改革の残り、仕上げをやるというようなことのようですが、取引所のあり方とか投資家教育とかディスクロージャーとかSECの色々な規制とか、テーマ自体はいろいろあるようなんですけれども、大臣の期待される、あるいはご関心の高い分野について、一言いただければと思うんですが。

答)

私の政策的な関心事というのは、ある意味で「金融再生プログラム」と、それを実行する「工程表」の中に示されておりますので、そうしたスケジュールに従って、今政策は粛々と実行しているつもりです。それと、金融審議会との関連ということになりますと、ご承知のようにワーキンググループで重要な問題がまだ2つ審議をされておりますから、そのワーキンググループでの議論が当面大変重要になってくると思っております。

一方で、非常に中期的な観点から、絶え間なく改革を続けなければいけない問題としては、これは資本市場の問題があると思います。政策的に、非常にアージェントな政策トピックとしては、銀行部門に問題意識が大きく置かれていますけれども、同時に貯蓄から投資へ証券市場の活性化、それがあって初めて金融部門の改革も進むわけですから、そういった意味では、今ご指摘のような証券市場のたゆまざる改革というのは、私たちにとっても大変大きなテーマになっていると考えております。我々としては、前の国会で証取法を改正して公認会計士法を改正して、それをしっかりと政省令も含めて定着させて実行していくということが重要だと思っておりますので、そうした観点で是非政策をご評価いただきたいと思います。

問)

白書なんですけれども、今回、特に社会保障のところに枠を割いていて、年金、介護等、総合的解決策が不可欠であるというような提言があるんてすけれども、それはそれでもっともだと思うんですけれども、ただ、実際年金改革も今年の年末に迫っていて、更に今度医療、介護は来年以降と。そうすると、結局五月雨式で総合的解決策は無理じゃないかと思うのですけれども、そこら辺どう考えていらっしゃるんでしょうか。

答)

そこはしかし総合的にやっていかないと問題は解決しない。実は、1つの重要な縛りは、潜在的国民負担率であると思っております。本当に総合的にやって、全てを整合的かつ強力に進めていかないと、先の「骨太の方針」で書かれた潜在的国民負担率を50%程度に抑えるということは出来ません。幾つかの試算によっても、やはり全てをやっていかなければいけないということが明らかになっているわけで、そこでの大きな1つの縛りを私たちとしては念頭に置きながらこれをしっかりと進めていきたいと思います。時間がないというご指摘はその通りだと思うんですが、時間はありませんけれども、まず年金改革について、経済財政諮問会議で幾つかの給付と負担、もっぱら給付と負担の関係に焦点を当てて、幾つか私たちの選択の道があるということを示して、それを政治的な判断に基づいて絞り込んでいくと。それを受けて、来年は医療や介護といった問題を踏まえた社会保障改革の仕上げの段階に近づいていかなければいけないのだろうと思っております。ご指摘、ご心配のように、時間的制約も踏まえて難しい問題が山積しておりますけれども、マクロ的な縛りの中で是非しっかりとやっていきたいと思います。

問)

金融と企業の再生というところでダイエーの福岡3事業について、銀行団、それからダイエー側の方が産業機構の活用を断念する意向を固めたと。本来ならば金融機関が40位の中で、産業再生機構が調整の働きをやるべきじゃないかなと思うんですけれども、これは正式に発表されていませんが、これについて伺えますか。

答)

新聞報道は承知しておりますけれども、特に正式の決定があったというふうには聞いておりません。各関係者は非常に厳しい状況の中で今意思決定をしようとしているのだと思いますが、再生を前進させるために全力を尽くして欲しいと思っております。

問)

白書なんですけれども、先程あった企業の再生の途上にある上場企業の132社という数字なんですけれども、具体的な数字は出たと、かつてその何社リストとかというような問題になったことがありましたけれども、それと似たような風評とか、いらぬ問題が生じることは考えなかったのでしょうか。

答)

これは常に両方の要因があるわけですね。一体、実態はどうなっているのかと、もっときちんと数まで含めて知らせろと、情報をもっときちんと分析して国民に知らせろという、非常に強い要望があるということも、事実だと思います。しかし、これは一般に、例えば不良債権の額がこれだけあるというのを公表している、不良債権の比率がこれだけあるというのを公表している、それではその不良債権というのは一体どことどこの会社かと、そのような議論を皆さん本当になさるのかと。結局はそれと同じ問題なんだと思うんですね。私は、マクロの状況を分析するという観点から、その全体のボリュームについて1つの目安を今回示したわけで、これ調整そのものはミクロの問題、当事者の問題でありますから、それはそれでしっかりとやっていっていただくと。全体としての改革がどのように進捗しているかと、どういう問題が残されているのかということを把握する意味で今回の分析が行われておりますので、これは是非皆様方にもその趣旨をご理解いただきたいと思います。

問)

りそなの業績予想修正の中で、引当て強化というのが大きなポイントであったんですけれども、その大幅な引当て強化を受けまして、他行の引当てに関して、足りているのか足りていないのかというところでまた問題視されている、問題視というか、どうなんだろうという声が上がっているんですが、現状その大手行の引当ての状況に関して、十分なのか、それとも改善されているのか、どのように見られていますでしょうか。

答)

同じ質問を何度もお答え申し上げているつもりですけれども、りそながこうしたから他のところはどうだというような単純な議論から、卒業しないと、そういう単純な議論から卒業しないと、本当の意味でこの国のバランスシート調整に向けた建設的な議論は出来ないと思います。

足りているか足りていないかに関しては、最低限満たさなければいけない、いわゆるミニマム・リクワイアメントというのは、これはガイドライン等々含めてしっかりと決まっているわけで、それは当然満たされているわけです。それが満たされていなければ、これは検査でしっかりとそういうものは引っかかってくるわけで、後はそこをどのぐらい強化してやっていくかというのは、これは正に経営の判断の問題だと思います。経営の判断というのは、引当てを積んで財務をソリッドにすることというのは1つの経営の目標でありますけれども、経営の目標の中ではワン・オブ・ゼムであって、ソリッドにすれば全て良いということではない。そういうことをやらないで、そこまでやらないでその力を、例えば貸出しを増やすとか、別途その成長といいますか、拡大に向けるという、経営戦略もあるわけで、それはその経営主体が置かれた立場、立場、その時の経済環境によって選んでいく、これが正に経営判断の問題でありますから、そこは様々な経営判断があると。しかし、ミニマム・リクワイアメントが満たされているかということに関しては、これはもちろん満たされているとご理解いただくべきだと思います。

問)

地域再生本部なんですけれども、本日の議論の内容と、今後のスケジュール、課題等、もうちょっと具体的に。

答)

今日は初回でありますので、地域再生本部の基本的な考え方について事務局から提案がありまして、それを基本的に了承したという形になります。地域再生の今後の進め方については、まず地域再生本部を設置する。基本的な考え方としては、「構造改革なくして日本の再生発展はない」、「地方に出来ることは地方に」、等々を踏まえて、地域が自ら考え行動する、国はこれを支援する、そういう哲学的な、基本的な考え方について確認をしたと。構造改革特区等で培われた地域の自立の精神と活性化の芽を今後大きく育てていくと。まずそのためには地域自らが意欲を持って色々なことに取り組んでいくと。それで地域の活性化等、地域経済の創造に取り組むことが必要なのである。そうした観点から、効率的かつ総合的な支援を行うということが重要である。また、国は行政サービスのアウトソーシングを阻害している要因をしっかりと把握して対策を採っていく必要がある。それに関連して地域再生本部の業務はどういうことなのか。この中で特に重要な問題としては、地域再生に関する基本方針を策定すると。基本方針は地域の声と要望を踏まえて年内に策定することを目途に作業を進める。そういった点が重要な今日の確認事項であったと思います。

問)

間もなく衆院選ということで、前回の衆院選からおよそ3年数か月が経っているわけですけれども、改めて、この3年数か月というのは、日本経済にとってどういう3年間であったかという認識をお聞かせいただけますでしょうか。

答)

日本の経済は、バブル崩壊後、失われた10年という言葉に集約されているように、様々な負の遺産を背負ってしまった10年であったと思います。その負の遺産を何とか抜け出したい、負の遺産を何とか解消したいということで、その対応策を考えていくと、結局「民間で出来ることは民間で」、「地方で出来ることは地方で」行い、経済の体質そのものを強化していくしかないと。財政を効率化して、子供達のために無責任な形で財政を次世代に引き継ぐことは出来ない。そういう幾つかの確認事項があったのだと思います。この小泉内閣が出来てから2年半というのは、少なくともそういう意味では改革はもう後戻り出来ないのだと。私は色々な問題、非常に大きな負の遺産を抱えていますから、経済運営は引き続き大変難しいわけでありますけれども、しかし、冷静に冷静に突き詰めて考えれば考えるほど、この改革以外に道はないんだと。改革はもはや後戻りできない、それ以外に道はないのだということが定着してきた、それがこの2年半であったというふうに思います。そこで、今幸いにして改革の芽が出始めた。この芽をいかに地域に浸透させていくか、総理の言葉によれば大きな木にしていけるか、これがやはり問われている。構造改革というのがそのような段階を迎えたということだと思っています。この点は是非国民の皆さんには訴えたいと思いますし、ご理解をいただきたいところだと思います。

問)

改革に伴う痛みという部分に関してはどういうふうにお考えでしょうか。

答)

痛みの議論というのは2年半前からずっとあるわけですけれども、何度か申し上げておりますけれども、改革しなかったら痛みはなかったのかというと、これは誰が考えても、もし不良債権の問題について何も手を打たないでやっていたら、本当に金融危機が起きていたかもしれません。その意味では、実は改革をしなかったら国民の痛みというのはとてつもなく大きくなっていた可能性がある。財政を拡大無制限にし続けていたならば、今の国債相場はどうなっていただろうか。そうすると、それが銀行の経営等々にも跳ね返って、その時の改革の痛みはどうなっていただろうか。そう考えると非常に空恐ろしいものがあると思います。改革の痛みというのは、つまり改革しなければその痛みはとてつもなく大きかったというのが、私なりの非常に強い実感であります。しかし、改革というのは現状否定の部分がどうしても出てきますから、それに伴っては、その痛みを和らげるためのセーフティネットをしっかりと作っていかなければいけない。その点で言いますと、セーフティネットですから100%、100点満点のセーフティネットというのは、なかなかないわけでありますが、実は昨年の秋にそのセーフティネットの1つとして、正にセーフティネット保証の制度を作った。セーフティネットの保証の制度を作って中小企業の金融に対する1つのセーフティネットを作ったその瞬間から企業の倒産件数は低下し始めて、13か月連続企業倒産は減少をしている。そういう意味でのセーフティネットの効果というのも、間違いなく表れているんだと思います。痛みを和らげるためには例えば、不良債権の処理をしなければいけない、これは後戻りはできないんだけれども、しっかりと再生型の企業のバランスシートの調整をやっていかなければいけない。清算型の場合はやはり非常に痛みが大きくなるわけでありますけれども、再生出来るものは再生させる、その再生型のものをやっていかなければいけない。結果的に見ると私的整理ガイドラインの制度が整備をされて、産業再生法が作られて産業再生機構が作られて、私たちの予想を上回る形で再生型の不良債権の処理が進んできた。その結果、昨年度11兆を超える不良債権のオフバランス化をしているわけですけれども、それによって生じた失業というのは予想の半分程度にとどまった。そういう観点からいうと、そのセーフティネットの充実に関しては、これからも細心の目配りをしてしっかりとやっていかなければいけない問題であると思っています。

問)

白書に戻るのですけれども、白書の中では少子高齢化によって労働力、生産年齢人口が減るということで試算をしているわけなんですけれども、2010年台以降は、実質経済成長率は0.2とか0.3とか、ゼロ成長に近いような、このままいけばそうなってしまうということを出しているわけなんですけれども、一方で、「改革と展望」では、2006年度に経済成長率2%になると。2010年にも2、3パーセントの、かなり高い成長が見込めるということになっているのですが、同じ政府が出している中でちょっと違う、かなり違うと。この整合性はどういうふうに考えたらいいのか。

答)

今手元に正確な数字がありませんが、それは改革しなかったらという試算ですよね。改革をしなかったら成長率は当然低いわけですね。「改革と展望」というのは、改革を進めることによって具体的にいうとトータル・ファクター・プロダクティビティが過去どのくらいの水準かに戻ってきて、それによって成長率を支えていくと、そういうシナリオになっていると。そういう前提の違いであると思います。

(以上)

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