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竹中内閣府特命担当大臣(金融、経済財政政策)記者会見要旨

(平成15年12月2日(火) 10時51分~11時14分 金融庁会見室)

1.発言要旨

それでは、おはようございます。

閣議がございました。閣議に関連して、特にご報告すべきことは、先般の金融危機対応会議に関連する報告を国会に提出することについて、私から発言をしたという点でございます。

報告を読み上げますけれども、「本報告は、内閣総理大臣が預金保険法第102条第1項に定める措置の必要性の認定を行った時に、同条第6項に基づき、当該認定の内容を報告するものであり、本閣議で決定をいただいた上で国会に提出するものであります。本報告書においては、株式会社足利銀行に対して行った同法第102条第1項第3号に定める措置を講ずる必要がある旨の認定の内容等を報告しております。

今回の同行に対する認定につきましては、同行が地域において果たしている金融機能の維持が必要不可欠であることなどを総合的に勘案し、当該措置を講ずることとしたものであります。同行においては、今後選任される新経営陣のもと、預金保険機構が全株式を所有する特別危機管理銀行として経営改革を進めることとなります。

金融庁としては、今後とも関係省庁、日銀と連携の上、我が国の金融システムの一層の安定に向けて万全を期してまいる所存であります」。以上のような発言をいたしました。

これに関連しまして、閣僚懇で官房長官から次のような発言がございました。「11月29日に開催された金融危機対応会議後に公表された内閣総理大臣の談話において、足利銀行が業務を行っている地域の金融及び経済の安定に万全を期すため、速やかに関係省庁と連絡会議を設置することといたしますとされたところです。これを踏まえ、本日12月2日午後、足利銀行の特別危機管理開始に伴う対応に関する関係省庁と連絡会議を開催することといたしましたので、各閣僚におかれてはご協力よろしくお願いいたします。」既に、昨日準備会合が開かれております。今日午後、正式に関係省庁等の連絡会議を開きます。

閣僚懇では、イラクに関する若干の情報交換、意見交換に加えまして、この足利に関しましては、この連絡協議会を中心に、地元経済に影響が出ないようにしっかりと対応して欲しいということについて、何人かの閣僚からご意見がございました。

私の方からは以上です。

2.質疑応答

問)

その国有銀行の足利銀行に関して、今仰っしゃられたこと以外に、足利銀行を巡る諸々の状況の変化、新たに講じられた措置などがあれば教えてください。

答)

基本的には、既に昨日、長官が色々ご報告しているかと思いますが、監視チームの派遣等、更には日常的な意味での市場動向のモニタリング、我々としての万全の対応をとっているつもりでございます。

更に、私の方からは、とにかくこの3号措置というのは、国がしっかり管理して、日常的に、日常的なしっかりとした営業を続けることであると、この趣旨に反しないように預金の受け入れ、貸し出し等、しっかりと続けるように指導してもらいたいということを、金融庁の幹部に指示をしております。

問)

この足利銀行の問題を巡りましては、9月から行われた15年3月期決算に対する金融庁検査で、主要行並みの厳格な資産査定が行われたという話があります。銀行の頭取が記者会見で仰っていますし、日本公認会計士協会の会長もマスコミのインタビューに対して答えております。この主要行並みの厳格な資産査定があったかどうか、その事実関係と理由を教えてください。

答)

報道は存じ上げておりますが、それがどういう趣旨であるのか、私はまだ十分に承知をしておりません。検査の内容でありますので、もちろん詳細について申し上げることはできないと思っておりますが、基本的な認識としては、検査はこれまでもしっかりと行ってきた。今回、何らかのその基準を変えたということではないと思います。

問)

これを機会に改めてお伺いしますが、主要行と地域金融機関の間で、検査の資産査定に違いがあるのかどうか、教えてください。

答)

基本的に主要行はしっかりとやって、地域銀行はそれに対してルースであって良いというような理由は全くありません。これは同じように、両方の銀行に預金者がいて、預金者を保護するためにも検査はしっかりと行わなければいけない。これは従来から一貫したスタンスです。

ただしその際、中小企業に関する評価に関しては、これも大手銀行、地方銀行に限らず、中小企業の債権に関しては、これは基準が違うわけではありませんが、考慮すべき事由が、留意すべき点はある。この点は中小企業に関するマニュアルの別冊でしっかりと明記されている。こうした点は、当然のことながら考慮されていると認識をしています。

問)

今回の足利銀行のケースでは、それは考慮されたと理解していいわけですか。

答)

もちろんです。マニュアル通りにやっていると認識をしています。

問)

今日の午後の会合とも絡むと思いますが、今回の件で、やはり地域経済が大分疲弊しているんじゃないかと。再生に努力すべきだという意見、声が大分出ていますけれども、経済を預かる大臣として、地域経済のてこ入れ策というのはどうお考えですか。

答)

そういう問題意識を持って、地域再生本部というのを内閣の中に設けているわけです。今のご質問は、当該地域だけじゃなくて、全国的なお話だと思いますけれども、前から申し上げておりますように、この地域再生本部で、私自身はとりわけ3つのことをやらなければいけないと思います。いわゆる例のアウトソーシングですね。これについては、内閣府でその阻害要因が何かということの調査が進んでおりますので、これを具体的な必要な法的措置があれば、どのように除去していくかという具体的な段階に入ってくると思います。

それと、地域の基幹産業である農業、建設業の問題。とりわけ建設業に関しては、先の諮問会議の集中審議で申し上げましたように、石原大臣ともご相談しながら、その実態調査を行って、必要な措置を講じると。これは諮問会議と石原大臣のところと共同で行うという方向で事を進めています。

更には、新しい産業を興さなければいけない。これに関しては、平成の新産業創造について、比較的早い時期に中川大臣の方で、そのプラン、計画を作るという表明も先般の集中審議でなされていますので、そういうことを活用しながら、やはり新産業を育てていく。一つの中心である観光については、既に動き始めているというふうに思っています。

問)

「三位一体」について、昨日の全国知事会でも強い意見が出されていましたが、首相が指示された1兆円の補助金削減を満たすために、各省庁の具体案に対して、地方からは権限をうやむやにしたままではないかと。単にツケを地方に回すだけではないかという強い批判が出ています。大臣は、今の各省庁の対応をご覧になっていて、どういうふうに評価されますか。

答)

基本的に、昨日の知事会でのご意見というのは、諮問会議で我々が議論していることと全く同じだと思います。諮問会議でも、権限の移譲ではない、単なるカットだけは困るということは、先般の民間議員のペーパーに明確に書かれていますし、権限の移譲、それが税源移譲に結びつくような形のものでなければいけない。これも一貫して諮問会議で議論してきたことですので、私としては、昨日、各知事が仰ったことに対して、全く違和感はありません。そのような方向で、まさに「三位一体」の改革は進んでいると認識をしています。

ご質問の今どういう状況にあるか。これはまだ、私自身詳細に聞いておりません。今日にも、どういう状況にあるかという何らかの報告を受けることになるだろうと思っておりますので、その時点で、先程申し上げましたように、諮問会議が目指している方向、これは知事さんが仰っている方向と同じだと思いますので、必要な調整があれば、更に調整をしていきたいと思います。

問)

そうしますと、地方の知事さんが求めている補助率の引き下げとか、そういったものではだめだという主張と同感というか、同じ立場でいらっしゃるということですか。

答)

基本的には、これも財務大臣がおっしゃいましたが、スリム化の要素も当然ありますから、そういうものが全くあってはいけないということでは、私はないと思います。スリム化の要素は当然にあると思います。しかし、それだけだと税源移譲に結びつかないわけですし、しっかりと税源移譲に結びつく、つまりそのためには権限委譲を伴って、税源移譲に結びつくようなものが、やはり中心になければいけない、それが「三位一体」改革の趣旨だと思います。

問)

その税源移譲ですけれども、政府税調や財務省などで今検討されているのがたばこ税の移譲ということのようですけれども。「骨太の方針」では、基幹税の充実をもって行うと書いてあって、たばこ税というのは基幹税に当たらないと思うんですけれども、初年度、そのたばこ税の税源移譲を実現した場合に、その「骨太の方針」に掲げられた考え方というのが損なわれるというふうにならないでしょうか。

答)

これはまだ色々ご検討しておられるということで、私は正式に聞いているわけではありませんので、コメントは差し控えさせていただきます。ただ、いずれにしても、今年度税源移譲を何らかの形で実行するということは、これは総理の指示でありますので、この点はやはり着実に実施に移していただきたいと思います。

問)

先程の奥山さんの話で、奥山さんは竹中大臣のチームの一員として「再生プログラム」の策定にも当たられた方ですが。今回の足利銀行の問題について意見交換なさったかどうか。もう一つは、地域金融機関の監査について、奥山さんとお話になったかどうか、事実関係と、あと大臣のこの問題に関する監査法人の金融機関への関わり方について見解をお願いします。

答)

まず、奥山会長は公認会計士協会の会長でいらっしゃいまして、会長としてこれまでもいろいろな金融行政の手助けをして下さっている方です。

しかしながら、例えば個別の銀行について何らかの話をしたということは一切ありません。それはあり得ないことであると思っております。

監査法人の対応について一般的なお尋ねでありますけれども、これは監査法人は今の法律の枠内で、更には実務指針等々、そのガイドラインに則って、独立した立場でしっかりと仕事をしておられると思っております。先般の公認会計士法の改正で、今後更に強い独立性を求められると、同時にクォリティーのチェックも行う仕組みがある。これは今そういうよりしっかりとしたシステムに移行しておりますので、我々としてはその新しい制度が定着していくようにやはりしっかりと努力をしていく、そういう立場にあると思っています。

問)

それに関連して、一応検査をした3月期決算というのは当然監査証明が出ている、もちろん正式な決算を検査局は検査したわけですけれども、それでその4.5%から検査を反映すれば債務超過という結果と大きく開きが出ているわけですが、これについての監査法人の責任論というのがどうしても出てきてしまう可能性があると思いますが、それについての大臣の見解を。

答)

現時点で、特に確定的なことを申し上げる状況ではないと思っております。少なくとも、繰り返し言いますが、監査というのは企業と一緒になってリアルタイムと言いますか、3月期の中で一緒に決算を作っていく立場にあります。我々の検査というのは、それから後で、今回も半年近く後で、その事後的な要素を含めて、それでその事後的な要素を加味して、事後的な見解としてのチェックを行うわけですから、これは自ずから違います。従って、その監査を行ったものと検査を行った場合で一緒であるということはまずないわけです。必ずこれは違うと言って良いと思います。そうした点も勘案して、監査法人においてはその時点での情報に基づいて、しっかりとした監査が行われたというふうに、現時点では認識をしております。

問)

加えてもう1点、今回1,050億円、優先株分はほぼ毀損するであろうと、足利分ですけれども。それで他に公的資金が入っている銀行は20ちょっとあるんですけれども、その公的資金は回収可能と現時点でお考えか。あるいは、毀損させないという意味で言うと、少しずつでも早めに回収していく、返済を受けていくようなことを促していくようなお考えはおありかどうか、その2点伺わせてください。

答)

他の金融機関については、この9月期でも健全性基準を満たしているということで、現時点でその再生に向けた経営をしっかりと続けているというふうに認識をしています。我々としては、当然公的資金が入っているということでありますから、そうした公的資金が入っている銀行に対して、先般、今年8月でありますけれども、必要な措置、業務改善命令を打ちました。一部には、「それは厳し過ぎるではないか」という話がかなり出されましたが、我々としてはこれは公的資金が入っている銀行であり、ガバナンスをしっかり強化していただくためにも、それは必要な措置であるというふうに判断をして、業務改善命令を打った。もちろんその中に足利銀行も入っていたわけです。引き続き、そうした意味での検査と監督の面からそうした金融機関についてはしっかりと見ていくつもりでおります。

問)

イラク問題なんですけれども、先日、日本人外交官が殺害されたということで、これを踏まえても、自衛隊のイラク派遣を支持できるかどうか。そしてあと、イラク派遣は国際貢献と捉えるのか、もしくは日米同盟の延長線上のものとして捉えるのか。その辺のご見解をお伺いしたいのでよろしくお願いします。

答)

担当でありませんので直接お答え申し上げる立場にはないと思っております。ただ、基本的な内閣の方針は、常に総理が言っておられるとおりであります。テロに屈しないということは大変重要なことであって、その意味では、状況を見て前向きに対応していくのだという総理のご指示は、これは、私は世界の中で生きる日本の方針としては当然のことであるというふうに思います。

問)

昨日、夜のテレビを拝見しました。それで、護送船団の時代とは違うから、銀行の決算とか経営には介入していませんと仰ったと思うんですけれども、今検討されている新しい公的資金制度、これは予防的注入というイメージで我々受け止めているのですけれども、それは場合によっては事前に注入して、追い詰められる前に注入するということで、護送船団的な性格を持つリスクがあると思うのですが、その点どういうポイントが重要だとお考えになっているんでしょうか。

答)

それは趣旨が全く違うと思います。昨日申し上げたのは、これはテレビでありますから、一般の皆様に分かりやすく事後的なチェックを行うということを申し上げるために、護送船団云々という例示を出したわけであります。基本的には、事前の介入ということはそういうことではなくて、ご趣旨は、その予防的注入は事前介入に当たるのではないかというご趣旨に聞こえますけれども、それは全く次元の違う話であります。事前的な介入というのは、例えば銀行が何らかの雇用をする場合に事前に相談に乗るとか、そういうことなわけですけれども、例えば予防的注入を例にとっても、予防的注入を求めるかどうかというようなそういう制度があったとしてですよ、それはあくまでも銀行の決定ですから、その意思決定の過程に金融庁が入ると、これは事前介入になりますけれども、そういうことではあり得ないと思っております。

従って、その予防的な注入と事前的な介入というのは、全く次元の違う話だということです。

問)

昔の大蔵省時代は、やはり強制したことあったんでしょうか。

答)

私は存じ上げませんが、そんな強制ということではなかったと思います。ただ、多くの専門家の指摘では、やはりその行政指導というのは、むしろ色々相談しながら色々なことを決めていくことであったと。これは既にそういった専門家の書き物もあると認識をしておりますけれども、そういうことは現実にはあったのではないでしょうか。

しかし、今そういうことを事前に、「今回の決算どうしましょうか」とか、そういうことを事前に相談しているという事実は全くありません。

問)

今の話とも少し関連ありますけれども、足利銀行のこういったことが起きて、先程のご発言でも、足利銀行以外の銀行は今のところ問題ないということですけれども、新しい公的資金を投入する制度を今提案なさろうとしている状態ですが、この足利銀行のこういった事態を受けて、改めてその必要性を強く感じておられるのではないかと思うんですが、その辺りのお考えをお聞かせください。

答)

よく私は、危機というのはいわば危篤の状態であると、そういう危篤の状態、危機的な状況ではないけれども完全な健康体ではないところがあると思っていると、そういう話をします。今回の場合は、そういうところが、危篤を通り越して、いわばより悪い債務超過という状況に行ってしまったわけです。そういう意味では、そういうグレーゾーンにあるところをできるだけ健全なところに引き戻しておく、そういう措置というのはいろいろな形でやはり考えられるべきであるというふうに思っております。これは資本だけで解決する問題ではありません。しかし、資本の増強というのは、その中のやはり重要な一部ではあろうと思っております。そうした観点からも、私自身は新たな何らかの枠組みが必要ではないだろうかという必要性を認識しておりますので、幅広く与党の皆さんとも議論をしていきたいと思っております。

問)

大臣先程、建設業について実態調査を行うと、国土交通省との相談もあるのでしょうけれども。どのタイミングでどういうことをしようと考えているのでしょうか。

答)

タイミングといいますか、具体的にそういう基本的なお話を諮問会議でした段階でありますので、調査にどのぐらい時間がかかるのか。実際、我々のキャパシティーとして、どのくらいの規模の調査ができるか。これはまだ今詰めているところですので、詳細についてはまだ何とも申し上げられません。

しかし、我々としては、やはり地域の再生というのは急がれますから、できるだけ速やかにやりたいというふうには思っています。

問)

先程地域再生本部の話を大臣されましたけれども、例えばそこで、今回の栃木県をケーススタディみたいな、プロジェクトみたいなものをやっていくという、そういう発想はおありでしょうか。

答)

現時点で、とにかく今日、今回の関係省庁の連絡会議は正式に昨日の予備会議に基づいて今日開かれるところですので、そうした中で各省庁で色々な議論をしていただきたいと思っています。

問)

足利銀行の関連で、融資と引き換えに出資を引き受けて、それで今回かなり損失額が多いという指摘がありますけれども、法的には彼らを救済することは難しいかと思うんですが、何らかの融資上とか何かで考慮するとか、そういう救済策のような可能性というのはお考えですか。

答)

まず、融資と引き換えに出資をということがもし事実であれば、それはそれでそのコンプライアンス上の一つの重要な問題なんだと思います。従って、そういう事実が本当にあったかどうか、私には今の時点では分かりません。もしそういう事実があったとすれば、それはそれで対処しなければいけない問題だと思います。

基本的には、その地域の中で皆さんが置かれた資金繰りの状況でありますとか、経済状況、そこに重大な問題が生じないように議論するというのが今回の連絡会議の重要な趣旨ですから、今ご指摘のような問題も含めて、連絡会議でしっかりと議論をしていきたいと思います。

(以上)

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