竹中内閣府特命担当大臣(金融、経済財政政策)記者会見要旨

(平成15年12月16日(火) 9時38分~9時57分 金融庁会見室)

1.発言要旨

おはようございます。

閣議がございました。私の方の関連では、公認会計士法の施行令の一部改正を閣議決定して頂いております。

16年度予算及び15年度補正予算について、官房長官と財務大臣がご発言をしておられます。官房長官は、今後の予算の日程について、「昨年と同様のペースで進めていく」というご発言がありました。財務大臣からは、「補正予算については義務的経費を中心としたやむを得ざる追加財政需要への対応に限る。国債を増発しないとの方針で編成作業を進めてまいりたい」というお話がありました。ご承知のように、これは先般の経済財政諮問会議で財務大臣がご発言されたことであります。円滑な予算編成に向けて、ご協力をお願いしたいという趣旨であります。

これを受けまして、総理からも、「今の官房長官と財務大臣の発言に沿って、しっかりと予算編成していくように」というお話がございました。

閣僚懇等々で、特に私の方からご紹介することはありません。

以上です。

2.質疑応答

問)

イラクのフセイン元大統領の拘束ですが、市場では昨日まではかなり好感されて、株価を押し上げる要因になったのですが、今日に入って、そのテロ懸念というのは払拭されていないという見方が強まっているようです。大臣ご自身は、どういう受けとめていらっしゃいますか。

答)

地政学的な不確実性というファクターに関しては、市場の中でも非常に多くの不安と期待が交錯する要因だと思っております。そうした点が、短期の相場にも反映されているのだろうと思いますが、私は中・長期的には、これは決してマイナス要因ではない、プラス要因に働くはずだと思っております。しっかりとそういった点を踏まえて見ていきたいと思います。

問)

予算編成に絡んで、焦点の1つの「三位一体」について、昨日、政府税調が出した答申の中では、来年度は税源移譲についてはたばこ税でやるのが現実的であるという内容だったのですけれども、これに対して与党の方は、基幹税でやるべきだと、見方が完全に割れているのですけれども、「骨太の方針」とか総理の裁定に照らすと、基幹税である所得税及び消費税でやるのが筋かなというように考えるのですけれども、大臣はどのように考えていらっしゃいますか。

答)

我々としては、諮問会議で調査、審議する過程で、そうした基幹税本来の趣旨を活かしていただきたいという点の議論と、一方で、とにかく平成16年度に芽を出すのだと。その芽を出すには、技術的な難しさもあります。従って、それをどのように調整するかということに関しては、様々な意見が出ていたと思っております。正にそうした点が、政府税調、党税調、様々な点で、様々な観点から今議論がなされていると思っておりますので、これはどちらにしても難しい問題であると思いますから、その過程で議論が収れんしていくものと思っております。

問)

たばこ税で移譲することに対しては、自治体からかなり強い批判があるわけですけれども、そのたばこ税の移譲でも、芽を出したことにはなるのでしょうか。

答)

これは、今後の税源移譲のスケジュールをどのように認識するかというようなこととも関連してきますから、この項目がマル・バツというような単純な話ではないと思っています。しかし、とりあえず重要なことは、なかなか動かすのが難しいこの「三位一体」について、税源移譲をとにかく16年度からやるのだという総理の指示が活きて、今のような議論になっていると思いますので、これは時間の制約はありますけれども、ぎりぎりまでしっかりとした調整がなされるものと思っています。

問)

あと、もう1つの年金改革も、今日、大詰めの交渉というか調整が行われるわけですけれども、大臣は前回の会見では、保険料率の設定というのは、直接、経済に対する影響というのがあるのだというお話をされたかと思うんですが、与党内で焦点となっている18.5という数字なのですけれども、その18.5という数字自体はどう受け止めていらっしゃるかということを伺えればと思うんですが。

答)

そのコンマ幾つの数字について、今の時点で私がコメントすべきことはありません。

ただ、やはり国民から見て、非常にその制度そのものが受益と負担の関係ですっきりと理解されて、同時にそれが持続可能性を持っていると判断してもらうことが大変重要なことだと思っております。その過程で、当然のことながら保険料率は極力抑えていくという姿勢は、これは当然必要でありますから、今その方向で議論の調整がなされていると思っています。

問)

足利銀行の件ですが、新経営陣の選考の進捗状況を教えてください。

答)

前回及び週末等々にお話ししたことと変わっておりません。できるだけ早く経営陣に着任していただいて、そのガバナンスの空白期間を短くするということが重要だと思っておりますので、今日も一生懸命調整をしたいと思います。

問)

前回の閣議後とかで今週の前半を目途に合意をされるということを大臣は話されていたと思いますが、そうしますと、今日、明日中に決定という理解でよろしいわけですか。

答)

それを目指して努力をしています。

問)

先週末にマスコミで、一部地方銀行の出身の方の具体的な名前が報道されました。それに対して、地元選出代議士や知事の方から地方銀行出身者が好ましいというコメントがマスコミで報道されているんですけれども、大臣は足利銀行のトップの方に地方銀行出身の方がなるということについては、どういうようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

答)

今まだ人事の真最中でありますので、具体的な、ともすれば誤解を与えかねないようなコメントは差し控えたいと思います。前から申し上げていますように、金融の分かる方、願わくばやはり地域の金融が分かる方、再生に通じた方、そういう方は大変人選上望まれる人選であるというように、これは以前から申し上げるとおりであります。

問)

次に、金融審議会の第一部会で審議されている証券仲介業を金融機関に解禁するという件についてお伺いしたいのですけれども、先週の金融審議会第一部会で、金融庁側が提案した証券仲介業を金融機関に解禁すべきではないかという提案に対して、証券業界の方から反対の意見が出されました。大臣はこの証券仲介業を金融機関に解禁するということについては、どういうご所見を持っていますでしょうか。

答)

審議会の議論そのものの詳細は申しわけありませんが、私まだ把握をしておりません。当然のことながら、これについては様々な意見があると思っておりますので、その様々な意見の取りまとめを、今、審議会で行っていると思っております。私としては、金融仲介業の本来の趣旨を十分に踏まえて、できるだけ幅広く参入していただけるように、各方面が調整をしていただけるということを期待しています。

問)

一部報道で、埼玉県の地元の県やら市とかが、埼玉りそなに出資する提案を金融庁やりそなにしたいと考えているという報道がありました。それは受け入れ可能かどうかについて、現時点での大臣のお考えを。

答)

報道は、承知をしております。ただ、具体的にどういう内容なのかというのは、これは直接お伺いしたわけではありませんので承知をしておりません。内容を承知しておりませんので、それに対する具体的なコメントは差し控えるべきだと思っております。

問)

その関連なのですけれども、これまでりそなグループの経営というのは、細谷会長をはじめ経営陣の方に、所有は国がしているけれども、経営は経営陣の方にという姿勢を貫いてこられたと思うのですけれども、こういう自治体が関わる資本参加の件については、大臣はどういうお考えなのか、あくまで経営陣の方にお任せになるのか、あるいは大臣も含めて検討されるのか、その辺はいかがでしょうか。

答)

これは、2つの側面があるのだと思います。まず1つは、これは非常に重要な経営戦略であろうということだと思います。特に、りそなホールディングスの場合は、経営健全化計画を発表しておりますけれども、集中再生期間の17年3月期までは、傘下の銀行が自立した銀行となることが優先課題であると、この点は大事だと思います。

一方で、長期的な観点からいいますと、国民負担を最少化するために我々としては何をすべきかと、これは一方で考えていかなければいけない。この2点を我々としてはしっかりと守っていくことだと思っています。

問)

関連でもう1点なのですけれども、もし地方自治体が出資したいという希望があった場合は、政府の保有株式を譲渡すると、事実上ですね。埼玉りそなは子会社ですから、直接政府保有株とリンクはしないと思うのですけれども、それと繋がるような形で株式のやり取りをするということも、1つの選択肢ということなのでしょうか。

答)

基本的には、先程言いましたように、これが具体的にどういうことかというのが分かりませんので、今のは大変具体的な質問でありますので、ちょっとお答えはできないと思います。先程私が申し上げた2つの視点を踏まえて、しっかりと監督行政をしていくということに尽きると思っています。

問)

足利銀行の新経営陣を選ぶ条件と言いますか着眼点なのですけれども、あくまでも新しい受け皿銀行に行くまでの暫定的なトップの方という位置付けなのか、それとも新しい株主が現れた時以降もその人たちに任せられるのか、どういう人を選ぶのか、どういう観点で選ばれるのでしょうか。

答)

今のご質問は時々質問が出ること、つまり出口をどのように想定しているのかということと関連している話だと思います。いつも申し上げていますように、今の時点で出口が想定されるわけではありません。その意味では、我々としては何はともあれ、まず今の経営の建て直しをして、新しい受け皿に引き継ぐ基盤を作っていただく、もうそれが経営者の当面の役割だと、この点に尽きていると思います。

問)

昨日公開された10日の諮問会議の議事録を拝見したのですけれども、大臣のご発言で予算に絡んで、プライマリーバランスを2010年代初頭にイーブンにしていこうという発言で、今年度から来年度にかけて1つ節目になるようなことを考えていらっしゃるという、あれをもう少しかみ砕いて、どういうことなのかお聞かせいただけますか。

答)

我々は、長期の財政運営の指針として、2010年代初頭にプライマリーバランスを回復させると。それが、財政を持続可能にする必要条件であると、このことはもう最初の「骨太の方針」から一貫して貫いているところです。そうした中で、そのプライマリーバランスがどの程度毎年解消していくかということを、やはり国民に見てもらうのが大変重要だと思います。これは、ちょうど不良債権の比率を減らさなければいけない、それが半期ごとに着実に減っていくことを見ていただくことが大変重要だということと似ていると思います。そうしたことを、今まだ「改革と展望」の計数的な面では整理をしておりますけれども、来年度の予算に関しては、経済の持ち直しの動き、それと歳出のまさに「改革断行予算」の実行、それを組み合わせてプライマリーバランスが回復されるということをしっかりと示さなければいけない、そういうことを期待して、私自身発言したわけです。

問)

そうしますと、一定の数値的なものを国民に開示していこうと、進捗度を数値化して出していったらどうかというご趣旨の発言だったと。

答)

プライマリーバランスは、これまでも出しております。新たな数字を、今度ローリングで出しますから、その過程でしっかりとそういうことを示していきたいということです。

問)

そうすると、これまで出してきた数字でと、本年度から来年度にかけてはということを強調なさっていたので、何か出し方だとか、要するにより突っ込んだ出した方をしたいというようなご趣旨ということですか。

答)

プライマリーバランスの出し方を変えるということは、技術的にはあり得ないのだと思います。プライマリーバランスはプライマリーバランスであるし、それをこれまでも示してきたつもりであります。結果として、そういうことが読み取れるようになるように期待をしているということです。

問)

税制改正の関係でお伺いしたいのですが、昨日出された自民党の税制大綱の原案だと、いわゆる3点セット、これは非常に厳しいと言いますか、繰越控除は2年間延長ですが、そのほかはかなり冷遇されている印象を受けるのですが、大臣の現時点でのご所見をお伺いしたいと思います。

答)

昨日の自民党の党税調で、金融機関に係る欠損金の繰戻還付は、16年の繰戻還付については措置しないという方向が示されたということは私も承知をしております。これは大所高所から、税の体系全体のことを踏まえてご判断されたことでありますから、これは粛々と受け止めなければいけないと思っております。同時に、この繰延税金資産の3点セットの重要性というのは変わらないと私たちは認識をしておりますので、今後どのように対応していくか、これから適宜判断をしていきたいと思います。

問)

繰戻還付なのですが、2年間凍結するという文言が原案ではあったはずですけれども、この「2年間凍結」という釘を刺すような一言は、どう受け止めていらっしゃいますでしょうか。

答)

詳細は承知しておりません。繰戻還付ですか、繰越控除ですか。

問)

還付の方です。

答)

今凍結しているのを引続き凍結するという、そういう趣旨ですか。

問)

引続き2年間は凍結するという、何か先に釘を刺すような言葉が入っていたのですね。

答)

これは先程と同じですけれども、税全体の体系を考えて、金額の大きさ等々を考えて、党税調の方で判断されたものだということで、そこは粛々と受け止めなければいけないと思っております。

問)

ということは、その粛々と受け止めるということは、今回3点セットは、来年度の税制改正においてはもう残念ながらこれはやむを得ない、断念、こういうことでしょうか。

答)

どういう形で最終的な答申が出されるのかということを待って、我々としても判断をするつもりです。

問)

予算要求に絡んでなのですけれども、間もなくもう大詰めになっていると思うのですけれども、例の新法に関して、今2兆円の政府保証枠を金融庁は財務省に対して要求になっている最中だと思うんですけれども、これはなぜその2兆円なのかという根拠を教えていただきたいと。この額からすると、りそなに2兆円を投入したという額からすると、ちょっと我々が推測するには、これは大手銀行というよりも地方銀行を対象にしたというものなのかなという気がするのですけれども、そういう理解でいいのか、なぜこの2兆円なのかというところを教えていただきたいのですけれども。

答)

基本的な考え方というのは、今の特措法がありますね。再編特措法における資本増強の水準とか、それを更に対象を拡充することになりますので、その対象等々を踏まえて、2兆円を要求するというふうに総合的に判断したものです。それに予算ですから、積算根拠というのはあります。そうした技術的な問題については、恐縮ですが、事務的にお尋ねをいただければ、それなりのご説明はさせていただけると思います。

いずれにしましても、特措法等々における資本増強の水準と対象を拡充するという観点から、現状の水準を踏まえて2兆円というふうに総合的に判断しているということです。

問)

公認会計士法の施行令の一部改正なのですが、与党の部会の方では最後まで、そのローテーション制について、大手に関しては7年・5年でやるべきだというような声もあったのですが、協会の方の規制に合わせて7年・2年に落ち着いたようなのですが、その辺りに関して、大手の方は5年でも十分会計士のローテーションは可能ではないかという声もあるのですが、大臣はこの辺、どのように見ていらっしゃいますか。

答)

これはご承知のように、法改正の途中からも国会での審議の中でもいろいろなご意見がありました。ここはかなり実態、実務上の判断の問題でありますので、実務的には様々なご意見があると思いますし、その監査法人においても、その立場立場でいろいろな異なった意見がある、これは当然のことだと思います。ただ、さはさりながら、最終的に7年・2年ということで与党の側でも合意をいただいたというふうに認識をしておりますので、ここは民主主義的に最大公約数的なところから出発して、制度を少しでも良くしていく、改善の努力をしていくということなのだと思います。今まさにそうしたことが軌道に乗りつつあると思っています。

(以上)

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