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竹中内閣府特命担当大臣(金融、経済財政政策)記者会見要旨

(平成16年1月13日(火) 11時02分~11時25分 金融庁会見室)

1.発言要旨

おはようございます。

閣議がございました。閣議で、私から先般のドイツ、スウェーデンの出張についての報告をさせていただきました。報告内容は以下のとおりです。

「私は、1月7日から11日にかけて、ドイツ、スウェーデンを訪問しました。ドイツでは、ツムヴィンケル・ドイツポストCEOと、スウェーデンでは、リングホルム財務大臣、ルンド国際経済金融担当大臣、ヘイケンステン・スウェーデン中央銀行総裁と会談をいたしました。また、スウェーデンの人材育成機関等を視察いたしました。

ドイツポストでの会談では、先進的に郵政事業の民営化が進められてきたドイツの経験を聴取し、現在我が国が取り組んでいる郵政改革について意見交換を行いました。また、スウェーデンでは、ニュー・パブリック・マネジメントの考え方を用いた財政改革や金融セクター改革等について、意見交換を行うとともに、人材育成機関を訪問し、地域の活性化に向けた雇用創出の取り組みについて視察をいたしました。こうした各国の経験を踏まえ、我が国の構造改革を更に進めていくことが重要であると認識を致しました。」

以上のような報告を行っております。

閣僚懇では、例の鳥インフルエンザ等々についての若干のご報告等がございましたが、私の方からご報告すべきことは特にありません。

この機会に1点だけご報告をさせていただきます。

明日、官邸経済コンファレンスを開催するということを既に発表させていただいておりますけれども、これは言うまでもありませんが、構造改革の一層の推進につながる有意義な議論がなされると期待をしております。なお、これに関連しまして、出席者として、金子大臣にもご出席いただくことになりました。これは、規制改革等々の関連の議論ということであります。また、与党関係者に対しても出席をお願いしているところ、額賀自民党政調会長には午後の部にご出席いただくということになりました。北側公明党政調会長については、現在日程の調整中でございます。

以上、ご報告でございます。

私の方からは以上です。

2.質疑応答

問)

まず先週のヨーロッパ訪問ですけれども、先程も閣議でご報告されたということですが、特にドイツポスト総裁との会談で、経験を色々聴取されたということなんですが、具体的にどういったところを伺ってきたのか。あと、今後どういった点を今後の郵政民営化の議論に反映させていかれるのか。その点を改めてお伺いしたいんですが。

答)

ドイツの場合は、非常に長い時間をかけて、これは1990年から民営化に着手して、それで95年に株式会社に移行をし、今もまだ、段階的に民営化を進めているわけで、一部その独占的な事業等を未だ行っているわけでありますので、2009年に完全民営化と、そういうプロセスになると理解をしています。

特に、我々としてお伺いしたかったのは、その中でどういう議論をしてきたのかと、どういう問題点に特に配慮をされたのかと。ツムヴィンケルCEOからは、その成功の秘訣というのは、やはり現実的な法律の制定なのだと。非常に現実的なフレームワークを作るということが重要なのだと。それと、その中にグッド・マネジメントを持ち込むことであると。そのようなご指摘をいただきました。

更に、短期間で非常に思い切った経営の効率化を行ったというようなお話も伺いました。これは、ドイツの事情、日本の事情、異なるところも多々ありますので、それをそのままというふうにはもちろん考えておりません。ただ、しっかりと議論をして現実的なフレームワークとマネジメントの独立性のようなものを重視されたと、そのような点は日本においても重要な示唆になるというふうに思っております。

問)

明日の官邸の経済政策コンファレンスですけれども、その中で大臣がどのようなことを主張されるのか。あと、有識者として参加されるハバードさんとリンゼイさんが、現時点でどのようなことをお話されるのか。現時点では正確なことはわからないでしょうけれども、大臣自身の現時点での見通しと言いますか、そういったものをお聞かせ願いたいんですが。

答)

私の報告は、午前中の一番最初、総理の御挨拶の後で基調報告という形で、小泉構造改革というのが全体としてどういう体系になっているのかと、どういう問題意識を持って進めてきたのかと、現状がどのように認識しているのかと、そのような枠組みについての説明をさせていただきたいと思います。キックオフですので、それに基づいて様々な角度から専門家に議論をいただくためでありますので、そういう枠組みをしっかりと是非提示するようなキックオフのスピーチをしたいと思っております。

それぞれの専門家の方がどのような発言をされるかというのは、これはちょっと私としてはよくわかりません。ただ、いずれにしても小泉構造改革、しっかりと進んでいる面は進んでいる面として広く認識をしていただきたい。同時に、更なる課題があるということも我々は十分に認識をしておりますので、その問題について忌憚なくその方向性、具体策等々について、ご意見を賜りたいと思っています。

問)

年金制度改革に関連してなんですけれども、年金を含めた社会保障制度全体の抜本的改革を与党だけじゃなくて民主党を含めた与野党で協議機関を作って協議しようというような構想も出ているようですけれども、その点について大臣どのようにお考えでしょうか。

答)

これは、与党として国会の中でどのような対応をされるかということでありますので、これは当然与党として責任を持った、しっかりとしたご対応をなされるというふうに思っております。そうした与党と力を合わせる形で、政府の中では引き続き諮問会議において、そのような枠組みについての議論をしっかりとやっていかなければいけない、これは変わらないと思っております。具体的に、今年の諮問会議の運営をどのように行っていくかと、そのテーマをどうするかということについては、これはまだ今年に入ってから諮問会議1回も開いておりませんので、2回目ぐらいになりますでしょうか、その中でしっかりと皆さんと議論をしていきたいと思います。

問)

公的資金注入新法ですが、大臣としては金融機関の3月期決算に間に合うように準備したいとお考えでしょうか。それとももう少しじっくりという考えでいらっしゃいますか。

答)

どの決算に間に合わせてとか、そういうことではないと基本的には思っております。ただ、制度を作る以上は、出来るだけ早く利用して頂くように、可及的速やかに早くやるということは、これは当然必要な努力であると思っております。

問)

新生銀行が来月にも再上場という情報があります。一時国有化銀行の出口として一つの姿だと思うんですが、お金がかかり過ぎたという評価もあろうかと思いますが、大臣としての評価はいかがでしょうか。

答)

これは、報道等々は承知しておりますけれども、正式な話はまだ特に、我々としてはお伺いをしておりません。いずれにしても、各金融機関において、そうした努力を今行って下さっていると思いますので、是非これは色々なことを前向きに努力をしていただきたいと思います。

問)

ドイツ、スウェーデンの訪問の中で、特にスウェーデンですけれども、金融と産業の一体再生、それから官業の民間への開放というあたり、色々見ていらっしゃったと思うんですけれども、その2つの点で実際に今後日本で十分取り入れるということができるのではないかとか、参考になった点というのはあったんでしょうか。

答)

ドイツ、スウェーデンともに、我々が構造改革で直面している問題について、かなり早い時期から色々な議論を行って、試験的な取り組みを行ってきたということだと思います。そういう政策ニーズが生じているという意味では、共通の問題を抱えて、共通の方向を目指しているということだと思います。

例えば、スウェーデンの場合等々では、ニュー・パブリック・マネジメントとか地域雇用再生とか、それに基づく公設民営の経営形態を用いた社会福祉機関の活動とか、日本では改革の中で議論されている芽が沢山あるわけですね。ただし同時に、それぞれの国情が違うということもこれまた事実であります。我々としては、その基本的な考え方をしっかりと確認して、日本の実情に合わせて、どのようにそれを取り入れていけるかと、ここは日本の我々の、しっかりとした判断をしていかなければいけないということだと思います。ご質問に直接、余りお答えになっていないかもしれませんが、その基本的な考え方とかというのは、非常に参考になるものがあると思っております。

問)

信金、信組の合併が相次いでいるので、ちょっと改めてお伺いしたいんですけれども、本当に過去と重複する部分もあるんですが、中小金融機関の不良債権問題の現状を、改めて今どのようにご覧になられているのかということと、どういった状況になれば安心できるような状況になるのか。この辺のご所見伺えますでしょうか。

答)

中小金融機関、地域金融機関の不良債権問題の現状認識について、ここ1年ぐらいの間に、私自身の認識が大きく変化したということではありません。以前から、この問題は地域に根差した金融機関として、まず地域の企業を再生する中で、企業が再生し、それによって銀行の財務基盤も強化されていくと。リレーションシップバンキングの考え方に則って、地道な努力を続けていく以外に方法はないと思っております。同時に、そうした金融機関の努力を助けるための枠組み、これは合併等々の、例の特措法がそれに当たるわけです。そういうものに関しては、政府はできることをしっかりと準備していかなければいけないというふうに思っています。そうした中で、主要行に関しては、不良債権の処理、不良債権比率の低下というのが、我々が期待していた方向でしっかりと進んでいる。そういうふうに金融システム全体が良い方向に向かう中で、地域の金融機関についても、より前向きな色々な対応をしようという、一つの可能性が、ムードが出てきているのだろうと思っております。しかし、これは時間をかけて、しっかりと地域の再生、企業の再生とともに行っていかなければいけないことでありますので、今のリレーションシップバンクの枠組み、これは昨年の8月に、最初の強化計画を、報告をまだ求めたばかりでありますから、それをしっかりと進めていただきたいし、我々はそれをしっかりと見ていきたいと思います。

問)

今のリレーションシップバンキングの機能強化のところですが、進捗状況については夏からどういう進捗があるというふうにご覧になられているのかと、あと今後、どのようなスタンスでその進捗状況について色々ご判断をされていくんでしょうか。

答)

これは報告を求めて、その報告のフォローアップというのを様々な形で現実的に行っていっているわけです。この計画をまず出してもらって、それをその計画通り実現してもらう、そのフォローアップをしていくというのが我々の基本的な姿勢です。

それとは別に、もちろん様々な形での早期警戒と言いますか、色々な指標から様々な形で早期の、アーリー・ウォーニングのシステムというのは現に起動しているわけでありますから、そういう問題、それはそれとして我々の監督の枠組みの中でしっかりとやっていく。それを組み合わせるということであると思っております。

問)

郵政民営化について、現実的なフレームワークが必要だということを強調と言うか指摘されたんですけれども、そうしますと日本の郵政民営化についても最終案に至る期間というのは相当長い期間にならざるを得ないという認識なんでしょうか。

答)

それはまだ、どのようなフレームワークで改革を行っていくかということ自体の議論、まだこれからするところでありますから、早急にどのような形になるということは、私自身想定をしておりません。

むしろ、私たちとしては今回の訪問を通して、我々が掲げた5つの原則、やはり原則を掲げたという方針は正しいと思っておりますし、その原則に忠実に色々なことを進めていくことが、現実的な枠組みになるのだと思っております。総理は民営化の期限を明示していらっしゃるわけですから、それに向けて我々としては当然のことながら、総理の基本方針に沿ってしっかりと努力をしていくということです。

問)

地域活性化の関係で、スウェーデンの人材育成施設をご覧になってこられたわけですけれども、まだおまとめになるのはこれからでしょうけれども、どのような点が日本に参考になるのかという感じで受けとめられましたでしょうか。

答)

ご承知のように、かなり早い時期からスウェーデンは、いわゆる積極的労働市場政策というのをとっているわけですね。労働市場というのは、非常にいわゆる需要と供給のミスマッチが生じやすい性格を持っている。これは、こういう考え方、だから職業訓練、トレーニングを中心として、人材の質的転換を図る、質的向上を図っていかないと、単にマクロ的な観点からの政策だけでは失業問題というのは容易に解消しないんだと。これは、今の日本及び諸外国の現状を見ていると、非常に先見性のある考え方だと思うんですね。これはしかし、いわゆる職業訓練の重視、需給のミスマッチの解消、これは言うは容易いですけれども、それをどのように行っていくかということに関しては、一つ一つのノウハウがあるんだと思います。そうした点に関して、先方で現場の最前線で努力しておられる方との話を聞いて、引き続き色々な資料の提出も含めて、ご協力をお願いできるということになりましたので、ご指摘になったように、これからその細部をまた詰めていかなければいけませんが、ただいずれにしても積極的労働市場政策というのが、非常に定着していると。それで、ある程度の成果をもたらしていると、その点は向こうに行って実感をいたしました。

問)

先程、公的資金新法の話が出たので、その関連ですけれども、2つあります。

まず足利銀行に預金保険法に基づいて3号措置をとりました。これはまだ損失が確定していませんし、その損失の時期にもよりますが、余り負担が出るようであれば預金保険法の原則に基づいて金融機関が負担金を集めて、それで措置をとることになっていますけれども、余り負担金が多過ぎると大きな銀行では1000億になるというような試算もあるようですけれども、やはり国の補助をしてほしいと、そういうような声が早くも金融界でも上っているんですけれども、これについての基本的なお考えは、現時点でいかがでございましょうか。

答)

これは今、その3号措置の枠組みを決めて、池田頭取が昨年の末に赴任をされて、今その経営の計画を作っている途中でありますので、その先の出口に関連する話、出口の更に先の勘定精算の話でありますから、そういうことを少し議論する時期ではないというふうに思っております。まずは、この3号措置の趣旨をしっかりと活かして、企業の再生と銀行の経営の健全化に向けて、足利銀行には努力をしていただきたい、我々はそれをしっかりと見ていきたいと思います。

問)

その関連で新法ですけれども、これは今後もし、公的資金注入等をして、トータルで損が出た場合の損の埋めというのは、これはもう政府の方でやるということでよろしいでしょうか。

答)

基本的には、これは早期健全化法の枠組みと同じだと。我々もちろん損が出るということは想定はしておりませんけれども、損は出ないように、当然のことながらしっかりとやっていかなければいけないというのが原則であります。しかし、万が一になったときには、これは当然のことながら財政当局とご相談をするということになるわけです。いずれにしても、早期健全化法と同じような枠組みでありますので、損が出ないように、これはしっかりとやっていただくということになります。

問)

相談して、財政当局が嫌だと言ったと財政措置を取るということですよね。

答)

それは財政当局とご相談するということです。それはご相談をして、しかし当然のことながら、それ以前としてはそういう損が出ないように、そこは我々としてもしっかりとやっていかなければいけないということです。

問)

というのは、日銀の山一の特融で、当時の宮沢さんは負担をかけないと言いながら、やっぱり手元不如意なのでお金は出せないというような、そういう引きずるような出来事があったのですが、私個人的にはもっとはっきり明記した方がいいのではないかと思うんですが、これは特措法だと新法は余りはっきり書かないというような慣習があるのかどうかあれですけれども、損が出た場合、得した場合は国庫に納付するという明記、今の法律でもって再編法でもしっかり書いてありますけれども、損した場合にはどうすると書いてないんですよね、今の法律も。わかりやすく書いた方がいいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

答)

基本的には法律でありますから、これは閣議で決めて各省が合意して決めているわけです。そこは、政府としてはその法律については政府全体とした責任を負っているわけでありますので、そこはその趣旨のようなものは十分にご理解をいただけるというふうに思います。

問)

スウェーデンに行かれて、今、積極的労働市場の政策に言及されたわけなんですけれども、今の年金論議とか、要するに中高齢者の方々が年金を貰ってぶら下がるという、そういう年金を貰う人と貢ぐ人というか、人間が2種類に分かれて、そういうイメージがどうしても抜けきれないので、非常に堅苦しい話になっていると思うんですけれども、いかがでしょう、例えば、スウェーデンでいえば、シルバーの人たちが日本よりももうちょっと生き生きと活動的に動いているというか、そういうのは非常に参考になるような部分はなかったでしょうか。

答)

老人ホームを向こうで見せていただいて、それぞれ非常に、実際に入っておられる方のご高齢の方にも直接お話をさせていただいたんですが、もちろんサンプル数は限られていますが、しかし本当に社会全体がそういった高齢者の面倒を見ていくと、そういう精神というのが色々な形で行き渡っているなと。これは福祉国家の伝統として、そういうものがあるなというのは感じました。

そこのご老人に「今困っていることはないですか、今何が欲しいですか」と聞いたんですけれども、ぱっと考えて「いや、特にない」とそのご老人はお答えになったと。恐らく、これは制度そのものが非常に良いということに加えて、やはり皆で分け合うんだから、その求める側も無限に何かを求めてはいけないんだと。しっかりとお互いが譲り合って、負担する側、負担を受ける側がお互いを譲り合って、社会で支えていくと、そのような社会全体のスピリットのようなものもあるのかなと、短い訪問ではありましたけれども、そのような印象は持ちました。

(以上)

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