伊藤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成17年5月10日(火)9時49分~10時05分 場所:金融庁会見室)

【大臣より発言】

閣議がございまして、私からは米国訪問について発言をさせていただきました。その中で今回の米国の訪問は、米国の金融当局の要人と直接意見交換を行い、そして両国当局間の連携を一層強化することができ非常に有意義であった旨発言をさせていただいたところでございます。

以上でございます。

【質疑応答】

問)

アメリカの訪問でありますけれども、米国当局の方々を訪問されたと思うのですが、どういう議論があって、そこで具体的に今後どのような両国間での連携というか協力というものをやっていくのか、その辺はどういう話があったのかお伺いしたいのですけれども。

答)

4月29日から5月4日にかけてアメリカを訪問させていただいたわけでありますが、今回の訪問の中でイェレン・サンフランシスコ連邦準備銀行総裁、そしてガイトナー・ニューヨーク連邦準備銀行総裁及びドナルドソン・米国証券取引委員会(SEC)委員長と会談をさせていただき、またニューヨークのジャパン・ソサエティーにおいて我が国の金融セクターの状況や今後の金融行政における取組みについて講演もさせていただいたところでございます。

それぞれの会談につきましては、私からは、我が国の金融を巡る状況が不良債権を巡る緊急対応から脱却をして、そして未来志向の新しい局面へ転換しつつあるということを説明させていただき、先方からはこうした我が国の最近の動向を歓迎するといった反応があったところでございます。

更に金融分野における国際化、この進展に伴い当局間の協力関係というものを一層強化することで意見の一致がみられました。特にSECとの間では、定期的な対話の場を設けるということで一致をしたところでございます。こうしたことからも両国間の相互理解というものを深め、そして当局間の連携というものをより一層強化することができたものと考えております。

問)

SECとの対話の場なのですけれども、これは今後どういった形でやっていくのかという点と、具体的にテーマとしてどういったものを今後議論していくのかという点について教えていただけますでしょうか。

答)

SECとの間につきましては、お互いの当局としての協力関係というものを一層強化していくために、新たに3つの対話のチャンネルというものを創設していくということで合意をいたしたところでございます。

まず金融庁とSECとの間でハイレベルでの定期的な対話の場を設けることで合意をいたしました。日米ハイレベル証券市場対話と言われるものであります。

またこれに加えて日米証券関係者の6者対話というものを進めていきたいと考えておりまして、必要に応じて取引所や、或いは証券業協会といった自主規制機関も含めた対話を行うことについても合意をいたしたところであります。

更に両国の会計基準設定主体、即ち我が国の企業会計基準委員会(ASBJ)とそれから米国財務会計基準審議会(FASB)、この間の対話の強化を支持するということについても合意をいたしたところでございまして、日米の会計対話というものを積極的に進めていくと、そうしたことについてそれを支持するということを合意いたしたところであります。

問)

今後こういったその3つのチャンネルを持って議論されていくテーマなのですけれども、大臣としてはどのような、現在の日米の環境からしてどういうテーマが今後この中で議論されるべきだとお考えでしょうか。

答)

具体的な内容については、今後事務的に調整をしていくことになろうかと思いますけれども、国際化が進展していく中で両国の証券市場に共通する課題といたしましては、例えば投資家保護と投資サービスの問題、或いは会計基準の問題、そして上場企業のガバナンスの問題、自主規制機関のあり方、こういったことがテーマとなり得るのではないかと考えております。

問)

こうした対話を通じて日本としてはどういうふうにこれを活かしていくという形になっていくのでしょうか。

答)

国際化の進展の中で我が国の証券市場の信頼性というものをしっかり確保していくことはこれは言うまでもなく非常に重要なことでありますし、また市場の魅力を向上させていくということもとても大切なところであります。日本の市場、或いはアメリカの市場というのは世界の主要な市場でありますので、その市場の関係者が国際化の大きな流れの中で対話を促進し、協力関係を強化していくということは今お話をさせていただいたことに資することになりますので、そうした対話というものを強化していきたいと思っております。

問)

関連するのですが、上場企業のガバナンスだとかそういった情報開示の問題でカネボウが粉飾決算という問題があって、東京証券取引所はそれについて上場をどうするかということについて検討していると思うのですが、上場問題については、虚偽記載していた西武鉄道は上場廃止ということになっております。粉飾決算は投資家に対する大きな背任と言うか、投資家に対して非常に許されない問題だと思うのですが、カネボウの上場問題について大臣としてどのように見ていらっしゃるのか、これについてお考えをお聞かせ願えますか。

答)

今の御質問は個別事案に関わることでありますので、コメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げれば、東京証券取引所等は自ら行う調査の結果や、或いは有価証券報告書の訂正報告書の開示を踏まえ、上場廃止基準に該当するか否かを判断することになると承知いたしております。今後自主規制規則に従って東京証券取引所等において適切に対処されるものと考えているところでございます。

問)

盗難カードの問題なのですが、金融庁のスタディグループでも大分議論になったと思うのですが、金融機関と預金者の過失に応じた補償というような考え方も出てきているようですけれども、金融機関の補償のあり方について、偽造カードはある程度議論は進んでいると思うのですが、盗難カードについてはどういう補償のあり方が今後検討されるべきかということについて大臣のお考えをお聞かせいただきたいのですが。

答)

御承知の通り4月15日に盗難キャッシュカードの問題についてもスタディグループにおける検討項目に加えていただきたいということを私からもお願いさせていただいたところでございますが、現在スタディグループにおいては過失相殺を認めた判例でありますとか、或いは金融機関で行われている実務の実態を踏まえて損害保険の例等も参考にしつつ議論を深めていただいているものと承知いたしております。今後盗難キャッシュカードの問題も含めて引続きスタディグループで御検討いただき、可能な限り速やかに取りまとめを行っていただきたいと考えています。

問)

旧明治生命が顧客に対してリベートを渡していたということで国税局から指摘されているようですけれども、これは保険業法に違反する可能性も十分あるということなのですが、明治安田生命は行政処分を受けましたけれども、こうしたようなことが出てくると生命保険業界に対する信頼というのが非常に失われるのではないかということも考えられると思うのですが、こうした件についてどのように受け止められているのでしょうか。

答)

今の御質問でありますけれども、旧明治生命の代理社に所属する営業職員が大口顧客との契約に際して手数料の名目で約2億7000万円を当該顧客に提供して、国税当局が追徴課税を行ったということについては承知いたしております。本件につきましては平成12年12月に明治生命から不祥事件の届出がなされております。同時に本件の事故者であります営業職員については、同社により生保募集人の登録抹消の手続が行われているところであります。本件行為につきましては明治生命から当局に対して組織的な関与はないとの報告がなされております。本件については既に不祥事件届出が行われ、当該営業職員に対して行政処分と同等の生保募集人の登録抹消の手続が行われております。これまでのところ明治生命及び代理社の組織的な関与は認められないことから、同社に対して行政処分を行っていないところであります。なお明治安田生命に対しましては、本年2月の行政処分において適正な保険募集管理態勢の確立及び実効性のある法令等遵守態勢の構築を命じておりまして、同社において策定された業務改善計画で対応されているところであります。金融庁といたしましては当該計画に掲げられた諸施策が着実に実行されていく実施状況について注視いたしているところでありますが、そのような取組みの中で本件について新たな事実が確認された場合にはこれは厳正に対処していきたいと考えております。

問)

既に国税局の指摘の件については金融庁としては報告を受けて、それで登録抹消という形での行政処分に類似した形のものが既に終わっているという御認識でよろしいのでしょうか。

答)

先程お話をさせていただいた通りです。

問)

当局の方が未来志向に移ったことに対して最近の動向を歓迎するという先程のお話だったのですけれども、不良債権問題で10年以上、いつになったら解決するのか、金融機関に対してもそうですし、金融当局に対してもやはり結構厳しい指摘を受けてきたのではないかと思うのですけれども、そういう観点からアメリカの日本の金融当局それから金融機関に対する見方というのは変ったのか、それともまだ疑いの眼で見ているのか、その辺はいかがでしょうか。

答)

私が2年7カ月前、金融担当の副大臣として金融行政に携わり、そして海外の当局者の方々と様々な意見交換をさせていただいた時と比較いたしますと、今回のアメリカに限らず、大臣に就任させていただいて、中国、ヨーロッパにも訪問させていただいておりますけれども、我が国の金融を巡る状況、金融セクターの動向、金融行政の取組みということについては極めて高い評価を海外当局の方々はされておられると実感いたしております。個別具体的なことについてのお話は差し控えさせていただきたいと思いますけれども、私から不良債権問題を含む金融システムの安定性の強化についての取組み、或いは主要行を中心とした各金融機関の取組みや中小地域金融機関の取組みも含めてお話をさせていただいているところでありますけれども、そうした取組みとその取組みにおける成果については極めて高い評価をいただいていると思いますし、またその取組みから得られる成果に対する信頼性についても今まで以上に高い信頼感というものを寄せていただいていると感じております。

(以上)

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