柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成13年1月12日(金)9時22分~9時42分)

【閣議案件等】

おはようございます。本日の閣議ですけれども、総理を加えて4名の閣僚が海外出張している関係で人数が非常に少のうございましたけれども、臨時代理の福田官房長官主催の下で開催されました。最初に土地対策閣僚会議、年金問題関係閣僚会議、この2つについて省庁再編に伴う形式的なものですけれども閣議了解の修正がありました。それから、交通安全の関係で死者は9,066人ということで、9,000人のレベルを維持したんだけれども、怪我をした人達なんかを加えますと非常に悪い状況、最悪の状況になっているということで、更に一段と交通安全対策を進めていくので宜しくという話がありました。それから一番早く今回の一連の閣僚の海外視察に出た町村文部科学大臣の出張報告が行われました。谷津農水大臣が近く海外出張をするということで、高村法務大臣が臨時大臣に指名されました。閣僚懇談会に移りまして、北アフリカの訪問をした町村さんが更に感想を述べられて、沖縄サミットで日本がIT関係の支援をするという話は、アフリカ諸国にも非常に正しくというか広く伝わっているので、期待も大きいということの話がありました。大体以上でございます。

【質疑応答】

問)

まずマーケットの方なのですけれども、これまで株の下落が進んでおり、為替の方もかなり円安水準ですけれども、マーケットの現状について、大臣はどのようなご認識でしょうか。

答)

認識としては、今指摘のあったようなことをそのまま受け止めているということですけれども、基本的にはアメリカの経済の先行き、そしてまた日本経済の先行きに対する弱気な見方というようなものに起因したマーケットの動きであろうと、こういうように基本的に思っています。

問)

株安でですね、今後とも不良債権の処理等、金融機関への影響を懸念する声もかなりあるのですけれども、金融機関への影響については、どうお考えでしょうか。

答)

そうですね、基本的に不良債権の処理、これは私度々、年が改まってから皆様に申し上げているのですが、私どもの処理というのはですね、貸倒引当金の繰入れと及び部分償却を含むオフバランス化というものの合計額なんですよね。つまり、オフバランス化に当たっては、このような手当ての両方を含んでいるわけで、不良債権の処理上、損失、損金になると言っているのです。ですから不良債権の処理というものは、必ずしも不良債権残高の減少に結びついていないということですね。これも非常に大事なところなのですが、不良債権の残高が減っていないから、不良債権の処理が進んでいないというそういう言い方は誤りだということ、ちょっとまあここでもう一度確認しておきたいと思います。不良債権の処理の中に、貸倒引当金を積むということがありますので、手当てがしてあるのですが、残高が減らないということは十分あり得るわけでございまして、その点を一つ確認した上で話を進めたいと、こういうふうに思います。

そこで不良債権の処理というのが損失というか損金になるということを伴う処理ということになるものですから、その財源はどこから出てくるかという話になるわけです。通常はその財源は、主として業務純益から出ると、こういうことになっておりまして、我々としてはそれで十分処理できると、こういうように考えております。

9月期もそうであったし、3月期もそうです。そこで問題は、それでは株価の下落というのはこういう問題に対してどういう影響を及ぼすかということでございますけれども、業務純益を使うだけではなくて、株から益出しをしてですね、それで損に備えるということがなかなか難しくなるということであります。加えてそれが含み益の減少、あるいは含み損の発生というようなことになると、やはり金融機関としては、あまり望ましいことではないという影響を受けるということであります。ですから今この段階で我々は、不良債権の処理がこのことの故に進まなくなる、必要なことが出来なくなるというふうには思っていません。

問)

それからこれだけ株価が下がってきますと、また株価対策ということの話題が出て来ると思うのですけれども、経済界の中には、自社株の取得や保有の自由化を求める声が上がっていますけれども、大臣は具体的には何か株価対策をお考えになっておりますでしょうか。

答)

ずっとこの点については、私が就任して以降ですね、株価が余り右肩上がりというのではなくて、逆になって右肩下がりに傾向的になっているということの中で皆さんからご質問を頂いているわけですが、基本的にですね株価対策というと、すぐにPKOというかですね、そういう公的資金による株式の取得というようなことが話題になりがちなのですが、我々はそういうことはすべきでないということを考えているということですね。

しかし、誤解のないように言うと、株式市場を支えるインフラストラクチャーについて、欠陥がないのか、欠けたところはないのかというようなことについては、これは常に考えていかないといけないというふうに私は考えております。この前から例に挙げているように、例えば個人株主の株式譲渡益の課税といったようなものについても、私は前回の税制改正でも何年にするかはともかくとして中長期的に持っているもの、そういう長期保有株の売却から発生した譲渡益といったようなものについてどういう税率を適用すべきか、あるいはそこで損失が発生した時にその損失については、後年度への繰り越しといったようなことを認めるべきではないかと、こういうようなことについてはもっと十分な手当てをすべきだというふうに考えています。それで今年は間に合わなかったわけで、今年は勢いこれまでの税制の源泉分離の維持ということに力点が置かれたので、間に合わなかったのですが、検討事項として明確に、この譲渡損の繰り越しというようなことについては自民党の税制改正大綱に謳ってもらうと、こういうようなことについて一歩というか半歩前進しているということについて、是非皆さんにもご理解を頂きたいということを申しました。こういうようなインフラストラクチャー、つまりマーケットメカニズムというものに沿ったですね、インフラの強化ということについては、私はどちらかというと積極的な考え方を持っていると、こういうことでございます。

問)

経団連が言っております金庫株の解禁についてはですね、この考え方についてはどういうような考え方をお持ちでしょうか。

答)

そうですね、まだ確たる具体的な考え方を固めているわけでないのですけれども、私予てから、バランスシートの上で負債側に立つものとして、借入金とかそういうものがあるわけですね。そういうものと資本の部分というものがあって、これが負債側を主として構成するわけですが、この債権者保護ということと、株式の保有者重視ということとの、言わばせめぎ合いがあるわけで、法制上もせめぎ合いがある。そのせめぎ合いの中で、皆様ご承知の通り、その債権者保護というのは、商法が主として受け持っている部分ですね、それから今言った株主の関係というのは、企業会計原則であるとか、あるいは証券取引法というようなものが受け持っている分野なのですが、せめぎ合いがあり、そういう中で私の感じを申しますと、やはり従来どちらかと言うと、債権者保護というか商法の側の主張が相対的に強いという側面があったのではないかなということですが、これが私の今のご質問の金庫株、トレジャリーストックの問題そのものに対するお答えと受け取られてもちょっと困るわけですが、基本的にちょっとそういう感じを私は持っています。やはり従来、商法というのは法制審か何かで重々しい審議を行って、「ダメ」とか言われるような…、最近若干変わってきたわけですけれども、そういうようなことでどちらかというと、債権者保護と株主重視というか、株式の保有主重視ということのせめぎ合いの中でですね、債権者保護にちょっと傾いているのかなという感じを、まあ持っております。そういう感じの下で、これからどう考えていくのかなと考えますが、まだ考え方を固めるに至っていません。まあ、いろいろ商法上難しい問題があるという話をむしろ聞かされたところです。

問)

そもそも外資攻勢に対する防御のためという発想らしいですが、株価対策もこれは一定の効果というのはあるというふうに現段階ではお考えでしょうか。

答)

何と言うか基本的にTOBや何かに対する対策というか安定株主対策みたいなものでしょうけれども、そこである程度保有が行われるということになればそれだけ需要ですから、それは全く影響がないとも言えないでしょう。そうかといってですね、やはり外国の例などを見ると、そこには一定のルールがあるわけで、そういうことも留意して評価しないといけないのではないかと、こういうふうに思っております。

問)

大臣はインフラには力を入れると仰るのですけれども、速効性はないわけですよね。今、緊急に株価が下落してて、何か対策が必要という意味合いにおいて何か別のことをお考えでしょうか。

答)

要するに、何と言うか、マーケットの発信しているシグナルをどう読むかということだと思うんですね。先程言ったように、基本的には景況観が反映しているんでありますから、私は日本の場合にはしっかりした予算を…景気配慮の予算が組んであるわけですから、そういうものを早く国会で成立させるということだと思います。

また、ただもう一つは、私は耳を澄まして聞いたらいいんじゃないかと思うシグナルとしては、もっと構造改革を進めなさいという側面があると思うのです。そういう部分、構造改革を求めているという部分に対しては、きちっと応えていく必要があるんじゃないかというふうに思います。その関連で敢えて言えば、やはり銀行株が一斉に下がっているわけではなくて、銀行株はかなり総体としては、何と言うか、むしろ上がっている部分もありまして、銀行株だけについて言う必要はないんですが、ただ銀行も自分の保有株の問題に着目すれば、やはりリストラをもっとやって、そういったものについて、少々の減価が起こったからと言って、世間から銀行は大丈夫かどうかという目を向けられないようにするということが、基本的に大事だと思います。

それから先程、不良債権の残高の処理などについて、特に別段すぐに不良債権の処理が進んでないということにはならないということを言ったのですが、それはただ、引当金さえ積んでおけば、それで良いというふうにはならないわけで、これは貸出先の問題なんですが、貸出先について、もっと決断をしていくと、そういうことによってオフ・バランス化を図っていくというようなこと、これは銀行そのもののリストラではないんですが、貸出先のリストラですね、こういうものをもっとどんどん求めて進めていくと、そのことによって不良債権のオフ・バランス化もまた自分の方で進められると、そういうことなんで、そういうことを進めるということも、私はやはりマーケットが求めて、マーケットの声に答える所以かなあというふうに思っています。

問)

貸出先のリストラを進めるということで、他省庁への働きかけということを就任当時仰っていたと思うのですが、これは実際に実行に移されているのでしょうか。

答)

実はこの中央省庁の再編の前ですけれども、若干そういうことを他省庁の首脳に働きかけております。

問)

反応は…。

答)

反応は金融担当大臣の言う通りでしょうと。

(以上)

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