柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成13年1月16日(火)10時27分~10時50分)

【閣議案件等】

おはようございます。本日の閣議ですけれども、税制改正要綱ですね、大綱を更に法律に近くしたものですが要綱。それから各海外視察大臣からその状況の報告。また、森総理の海外出張の報告。これは外務大臣臨時代理の官房長官から行われました。エルサルバドルの地震に対する緊急援助、ASEM神戸会議の報告。これらが閣議で報告されました。

閣僚懇に移りまして、防災担当大臣の神津島、新島、三宅島の現地視察の状況。加えて、先程の海外視察の一環として、笹川大臣の方から更に詳しくエピソード的な話を交えての視察先のご報告がありました。以上でございます。

【質疑応答】

問)

株価対策なんですけれども、亀井政調会長がハワイから帰ってきた途端ににぎやかになって参りましたけれども、その中に金庫株の解禁というのが報道されてます。それについて是非も含めてなんですが、株価対策としての有効性、即効性ということもあると思いますが、これについて大臣どうお考えか、お聞かせ頂きますでしょうか。

答)

金庫株というスキームというか、そういう制度があるということ、これらについてはアメリカの一部の州、それからヨーロッパは原則禁止ですが、実際上はいろいろな目的のために、そうしたことも全く不可能ではないというスキームがあるというようなことを承知致しております。そこで、経団連もそういうことを要望しようとしているというんでしょうか、そういう段階だということも伺っているわけであります。

我が国の場合、特別な目的、これは皆さんご承知の通り、自社株の買入れ、消却ですね、そういったことのために行う場合に限って自社株の取得が認められていること、これもご承知の通りですが、どうもその辺りの制度が十分活用されているのでもなさそうだという現状についての報告も聞いております。それに加えて、金庫株というような、かなりもちろんセーフハーバーというんでしょうか、そういうルールというものが当然明確に定められなくてはならないということを前提にしての要望があるということは承知しておりますけれども、これについてはいろいろな問題もあるということに加えて、今言ったような自社株の消却のための自社株の取得ということも、あまり行われてないという辺りをどう評価した上で、その上に金庫株というんだろうかというような問題もあるやに、事務当局からの説明も受けておりまして、今にわかに、私がここでどうこういうというような段階には至ってないというのが、率直なところであります。

問)

同じような株価対策として、構想としてですけれども、株式を預金保険機構の資金を使って買おうという話があるんですが、それの大義名分で金融システムに関わるからというようなご提案もなされていますけれども、そういう解釈、是非も含めて、この構想についての大臣の考え方を教えて頂けますか。

答)

何と言うか、金融危機というか、金融不安というか、そういうようなものに事寄せて、株価対策というのはありがたいご配慮だとは思いますけれども、何かちょっと今の状況を、そうした切り口から把握されるということについては、もしそういうことがあるとすれば、違和感を感じざるを得ないというのが、率直なところでございます。

私としては、やはり経済が弱いのに、あるいは弱いと見られている時に株が下がるのは当たり前で、客観的に経済が弱いのに株だけ上げるというようなことは、そもそもどういうことなんだろうかという感じがするということでございます。従って、私としてはやはり経済を強くするということが王道だというふうに思って、かねてからその面で、予算の面で需要の対策等を盛り込んでいると同時に、構造改革についても一生懸命やるということになるべきだというように考えていまして、私はそういう、まず日本の経済を強くするということが一番の肝心なことだと思います。

加えて、もし前から言うように株式市場を支えるインフラストラクチャー、インフラの面で諸外国のいろいろな経験に基づく制度と比べて欠けるところがあるとすれば、それは積極的にやらなくてはいけないし、またそれぞれの関係の省庁にはやってもらいたいと、こういうように考えているということであります。そういう中に、先程の金庫株も位置付られるのかどうか、こういう問題意識を持っているということであります。

問)

それに関して大臣の方で経済産業省とか、国土交通省とで連絡会議を設けたいというお話を伺ってますけれども、これについて具体的にどういった会議にしたいのかということと、それから連絡を取り合った上で、どういった案件を、処理を目指したいのかということを教えて頂けますでしょうか。

答)

これは正直申して、1月6日の省庁再編に当たっての記者会見でいろいろ皆さんからも聞かれることもあるだろうし、私自身も申し上げる機会があるかもしれないというふうに考えまして、その前日に、大臣がいらっしゃるところは大臣、それから代わりに事務次官というような方々に、「こういうラインでの話を私させてもらいますよ」ということを申し上げて、それぞれ相手の役所から、「我々もそういう問題意識を共有しているので、大臣がそういうご発言をすることについてはどうぞ」という感じの応答だったというふうに私記憶しているんです。結果としてはその発言の機会がなかったわけですけれども、私の考え方は、我々、不良債権と言われているものを持ってるわけですね。残高はほぼ横這いという、全国銀行ベースではほぼ横這いという状況にあるわけでございまして、これについて、私は年初から、これは十分に引当金等、あるいはその他の保全措置で十分備えがなされており、従って、残高がこうした水準にあるということが、即我が国銀行の不健全さに結びつくわけではないと、健全性に問題があるというところに結びつくわけではないということを申し上げてきたわけです。

そういうことで、私が残高を減らしていくということに何の問題意識もないのかというと、それはそうじゃないという第2の問題に移るわけですね。それでは残高をこれから減らしていくという時に、何があるんだろうかというと2つあって、それは例えばバルクセールに出すとかというようなことで、残高を減らしていくと、こういう方法もあると。しかし、それはマーケットというものが整備されなければならないという課題に結びついているわけです。

もう一つは、各貸出先企業が再編成される、再編成というか、悪いところと良いところを切り分けて、悪いところは自分で切り捨てていくと、そして良いところだけでもっと収益性の高い企業として生まれ変わっていくということがある場合には、これは今申し上げた悪いところを切るということの裏腹の問題として、我が方の貸出金債権が何らかの処理をされると、整理をされると、こういうことで残高が減っていくということがあるわけです。従って、私がこの2つの役所に申し上げたのは一番最後に申し上げた第2のルートによります。我々の方から言うと、不良債権残高の縮減ということに結びついていくし、私は先程冒頭に申し上げた構造改革というか、例えば株価、こういうようなものももっと収益力のある部分をきちっと残して、そして企業が生まれ変わっていくというようなことをやらないので、なかなか株価が上がってこない、日本経済の活力が顕在化してこないという側面が非常に強いと思っているわけです。そういうことをもっとアクセレレイトしないと駄目じゃないかというふうに問題意識を持ってまして、それは我が方の不良債権残高の縮減にも資するし、また何よりも日本経済の活力の復元というか、あるいは再生というか、そういうものにも資するということですから、その辺りのことについて、実体経済の所管官庁と我が方の金融の所管官庁が、言わば十分に緊密な連携をとりながら、問題意識を共有して、それでこれを進めていくということですね。別に具体的な権限というようなことはなかなかないのかもしれないけれども、やはり問題意識を共有して、そういったことについて、いろいろ行政としての考え方を表明していくということで、方向付けですね、民間経済に対する、民間経済の抱えている問題についての解決の方向付けをしていくということは、十分意味のあることではないかとこういう問題意識で、そういったことを申し上げたと、こういうことです。

問)

先程大臣は株価対策に絡んで、日本の経済が弱いということを仰ったのですけれども、まだ政府の見解としては、今は現状緩やかな景気回復が続いていると、それのスタンスを変えていないのですけれども、そろそろこの辺は怪しいというのか、多少雰囲気が変わってきたなという実感はお持ちでしょうか。

答)

そういうことではないのです。そういうことではなくて、今年度1%、来年度1.7%成長ですということで、それが本当に強い経済といえるかということですね。回復基調にあることは、それはそうなのですが、もっと日本の潜在的な成長力というものは強いじゃないかと、少なくともそれを下回っていることは確かではないかと、こういう意味で今言ったような表現をとらせて頂いたわけです。だから回復基調にあるということと私が言った表現とは矛盾はしていないというふうに思います。

問)

先程の不良債権の残高を減らすといった話なのですが、ゼネコンとか、商社等の流通部門では、債権放棄とかそういうスキームはよく出てくるのですけれども、大掛かりな再編というのは進んでいないと思うのですが、これはどういうところに問題があると思いますか。各省庁も問題意識は持っていると思うのですけれども、実際問題は進んで来なかったわけで、その辺りはどういうものが原因というか背景にあるというお考えですか。

答)

私は、必ずしも、再編という言葉がどういうことを含意しているかということですけれども、合併とか統合とかそういうことが、絶対伴わなければ駄目だとは申しません。私が本当に大事だと思うのは、そうした債権放棄とか何とかに伴ってというか、その基礎として作成される、いわゆる再建計画の確実性の問題に尽きるんだろうと思うんですね。再建計画の確実性を高めるためには統合・合併が必要だということになれば、そういうことが伴わなければならないはずだし、再建計画は現状の個別企業が生き残る形でも出来るということであれば、それで何ら問題はないと思います。いずれにせよ、再建計画というものの確実性、信頼度というものが本当にきちっとしないと、金融機関側もみだりに、債権放棄というものをやっていくというのは、私は望ましくないと思います。ですから、そうしたことで不良債権残高を縮減していくという場合はすべか、確実な、また信頼できる再建計画が策定されなければならない。そのためには、私はもちろんメインバンクが一番情報に通じているわけではありますけれども、やはり役所なども、我々として聞くべき意見があれば聞きたいなというように思いますし、そうしたことの情報で一定の方向が出てくるということは、決して悪いことではないというふうに考えているわけです。最終的にはもちろん経営判断の問題だということは十分承知した上で言っているわけですが、そうした役所の情報を、そういうことの経営判断とか、あるいは私どもの所管する金融機関の経営者が経営判断する時の参考にもしてもらえるのではないかと、そういうふうに考えているということです。

問)

残高減らしの第1のルート、不良債権の売買市場とかの整備、これは誰がやっていくべきだとお考えですか。

答)

これはサービサーというような制度もあるわけですね。それから何と言うか、私どもちょっと全然別の案件で、いろいろな話を聞いている中で、いわゆるファンドが、そうした不良債権を取得するというようなこともあるというふうに聞いてましてですね、そういうマーケットの中で、売る方は分かりきっているわけですが、買う方がもうちょっといろいろなバラエティーを持って出てきてくれるということがいいなと、こういうふうに思っていますが、法制的には今いろいろサービサーというような制度も出来ているわけですから、そうした人達がもうちょっとアクティブにやってくれるということが大事かなと、こういうように思っております。

問)

先程大臣は信認される債権放棄ということを仰いましたけれども、具体的でなくても結構ですから、最近の再建計画が発表された後でも株価が回復しないところが多いと思うのですけれども、そういった意味のマーケットの評価、株式市場での評価というものを、大臣が仰られた信認は得られているとお考えでしょうか。

答)

具体的な話は抜きです。一般論として申しますと、私はその通りだと思います。

問)

固有名詞は結構なのですけれども、最近の再建計画で、これはうまくいっているなと思うようなケースはありますか。

答)

私は予て言うようにですね、よく法的な整理は信頼が置けるけれども、私的な整理は信頼が置けないというようなことは、私はそういう分け方では、おそらく信頼という次元で区分けはできないだろうと思っているのです。もっと実態的なものだと思っているのです。だからどちらの場合についても、もっと信頼…個別の問題を言っているわけではないのですが、信頼がおける再建計画を作って、どんどん悪いところを切り捨てていくというようなことをやっていく必要があるだろうと。それでないと株価も、そういうことを進めるよとか、あるいは進んでいるよという事態が株価の回復にも、私は一番寄与するのではないかと思っております。

問)

お手本みたいなものはないですか、外国でもいいのですけれども。

答)

いや、そんなに詳らかではないのですが、ちょっと以前に、例えば…あまり名前は言えませんね、やっぱり…。あるんですね、あるんですね、それは必ずしも、合併とか統合を伴わなくても、なかなか巧くやっていますよというようなところ、それから売り上げもその後上がっていますよというようなところを私は聞いて知っております。

(以上)

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